説明

苦味調味剤

五味をバランス良く食品を調味するための苦味調味剤を提供する。更には、食経験が十分にあって安全な食材であるサンショウ由来の苦味化合物を有効成分として含有する苦味調味剤を提供する。本発明の苦味調味剤は、その適量を用いることにより、五味をバランス良く調味した食品を得るために有用である。さらに、本発明の苦味調味剤は、五味のうちの「苦」に分類されることから、小腸の働きを高める作用、血液の流れを良くする作用、消炎作用、便通を良くする作用などを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、新規化合物、及びこれらを含有する苦味調味剤に関する。
【背景技術】
食品には3つの機能、すなわち栄養機能(第1次機能)、味や香りなどの食感機能(第2次機能)、健康に良い効果をもたらす生体調節機能(第3次機能)があることが知られている。東洋では、古くから「医食同源(薬食同源)」の思想があり、生薬や薬膳と同様に、食物は「四気(五性)・五味」の法則性をもって分類されると考えられている。
四気(五性)とは、寒・涼・温・熱・(平)であり、食物が摂取後に身体を冷やす働きが強いか、温める働きが強いかを表している。身体が火照る人は寒・涼の性質の食材を、冷え性の人は温・熱の性質の食材を摂取すると良いとされている。
五味とは、酸・苦・甘・辛・鹹であり、食物の味、味覚によって身体にそれぞれ異なる作用を起こすことを表している。また五味は、各味が五臓(肝・心・脾・肺・腎)や五腑(胆・小腸・胃・大腸・膀胱)に対応しているとされている。すなわち、「酸」は、すっぱい味であり、肝に作用して肝を養い(胆嚢、目、筋肉、神経に良い)、筋肉を引き締め、寝汗、下痢、頻尿などに有効とされている。「苦」は、にがい味であり、心に作用して心を養い(小腸、血液に良い)、熱や体内の湿気をとる作用や、のぼせ症状、消炎、便通に有効とされている。「甘」は、あまい味であり、脾に作用して脾を養い(胃、筋肉に良い)、疲れや痛みをやわらげ、緊張を緩め、滋養強壮の働きがあるとされている。「辛」は、からい味であり、肺に作用して肺を養い(気管、大腸、皮膚に良い)、身体を温め、滞っているものを発散させ、風邪などに有効とされている。「鹹(かん)」は、しょっぱい味であり、腎に作用して腎を養い(膀胱、髮、骨、生殖器に良い)、しこりをやわらげ軟化する作用や、便秘、リンパ腺の腫れなどに有効とされている。
現代社会においては、食生活の変化や運動不足により、生活習慣病の増加が問題となっている。健康を維持するためには、医食同源の思想により、食材や食物がもつ性質や味をバランス良く配合した食品を日々摂取し、食品の第3次機能を十分に利用することが重要と考えられる。例えば、一日当たり30品目以上の食材の摂取が厚生労働省により推進されている。また、現代食風土においてもバランスのとれた食材を容易に摂取しうる手段として、五性の分類に偏りがなく、五味のバランスで調味された、食品素材30種のエキスを含有する食品組成物が開示されている(特開2002−34504を参照)。
食品の味を調整する調味料の代表例として、酸味では酢やレモン汁など、甘味では砂糖やハチミツなど、辛味ではトウガラシ、サンショウ、ショウガ、ワサビなど、鹹味では食塩などが挙げられる。しかし、苦味料という用途の食品添加物は存在するものの、調味料などとして一般家庭でも使用可能な苦味調味剤は市場に出まわっていない。
甘味成分として、ブドウ糖やショ糖などの糖質が代表的であるが、非糖質でも甘味を有する物質もある。例えば、アマチャに含まれるフィロズルシン(phyllodulcin)、ステビアに含まれるステビオシド(stevioside)、ラカンカに含まれるモグロシドV(mogrosideV)、カンゾウに含まれるグリチルリチン(glycyrrhizin)などが挙げられ、甘味料として利用されているものもある。また、辛味成分として、例えば、トウガラシに含まれるカプサイシン(capsaicin)、サンショウに含まれるサンショオール(sanshool)、ショウガに含まれるジンゲロール(gingerol)などが知られている。一方、苦味成分として、例えば、オウレンやオウバクに含まれるベルベリン(berberine)、トウヒに含まれるリモニン(limonin)、ニガキに含まれるクアシン(quassin)、センブリ、ゲンチアナ、リュウタンに含まれるセコイリドイド配糖体であるスウェルチアマリン(swertiamarin)やゲンチオピクロシド(gentiopicroside)などが挙げられる。しかし、サンショウを由来とする特定の化合物が苦みを有することは知られていない。
【発明の開示】
本発明は、下記式(1)、(2)、(3)および(4)で表される化合物および、五味のバランス良く、食品等を調味するための苦味調味剤を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、サンショウに含まれる新規化合物を単離し、該化合物が苦味を有することを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、下記式(1):

で表される化合物、またはその塩に関する。
また、本発明は、下記式(2):

で表される化合物、またはその塩に関する。
また、本発明は、下記式(3)で表される化合物、またはその塩に関する。

本発明はまた、上記(1)、(2)、(3)、下記式(4):

で表される化合物、およびそれらの塩からなる群より選ばれる少なくとも1種を苦味成分として含有する苦味調味剤に関する。
以下に、本発明の実施の形態を詳しく説明する。
本発明に従って提供される化合物は、下記化学式(1)〜(3)で表される。



本発明の苦味調味剤は、上記式(1)、(2)、(3)、および下記式(4):

で表される化合物、およびその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種以上を苦味成分として含有するものである。
なお、化学式(1)〜(4)で表される化合物を以下、それぞれ化合物(1)、化合物(2)、化合物(3)および化合物(4)という。ここに言う塩としては、例えば、アルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩など)、アルカリ土類金属塩(マグネシウム塩、カルシウム塩など)、無機酸塩(塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩など)、有機酸塩(酢酸塩、クエン酸塩、マレイン酸など)、アミノ酸(アスパラギン酸、グルタミン酸など)との塩などが挙げられる。
これらの化合物(1)〜(4)は全て、本発明で苦味化合物として確認された化合物である。また、化合物(1)、(2)及び(3)の化合物は新規に見出された化合物である。
上記化合物(1)〜(4)を単一化合物として、または2種以上の混合物として本発明の苦味調味剤に使用することができる。
以下、化合物(1)〜(4)の製造方法について説明する。化合物(1)〜(4)は、例えば、サンショウ材料を溶媒を用いて抽出し、その抽出液から化合物(1)〜(4)を分離、精製して得ることができる。その際に使用する器具、装置、精製用樹脂などは食品または食品添加物の製造に使用可能であるものが好ましい。
サンショウ(山椒)は、ミカン科のサンショウ属(Zanthoxylum)の植物であり、多数の品種が存在する。例えば、サンショウ(Zanthoxylum piperitum DC.)、アサクラザンショウ(ブドウザンショウ:Z.piperitum DC.forma inerme Makino)、ヤマアサクラザンショウ(Z.piperitum DC.forma inerme brevispinosum Makino)、リュウジンザンショウ(Z.piperitum DC.forma ovarifoliolatum Makino)、カホクザンショウ(花椒、紅花椒:Z.bungeanum Maxim.)、イヌザンショウ(青椒、青花椒:Z.schinifolium Sieb.et Zucc.)、カラスザンショウ(Z.alianthoides Sieb.et Zucc.)、アコウザンショウ(Z.alianthoides Sieb.et Zucc.var boninshimae Yamazaki)、アマミザンショウ(Z.amamiense Ohwi)、トウザンショウ(Z.simulans Hance)、フユザンショウ(Z.planispinum)、イワザンショウ(ヒレザンショウ:Z.beecheyanum)などがある。
一般に、食用、香辛料としては、サンショウの成熟した果実を乾燥したものが用いられ、日本産のサンショウ(Zanthoxylum piperitum DC.)やアサクラザンショウ(ブドウザンショウ:Z.piperitum DC.forma inerme Makino)は和山椒と呼ばれる高級品であり、中国産のカホクザンショウ(花椒、紅花椒:Z.bungeanum Maxim.)などが一般的である。本発明に使用するサンショウは、いずれの品種を用いることもできるが、食経験が十分にあり、豊富に流通しており原料として比較的安価である中国産のカホクザンショウ(花淑、紅花椒:Z.bungeanum Maxim.)が好ましい。
用いるサンショウ材料の形態は特に制限されず、原型、粉砕したもの、または粉末のいずれを用いてもよい。また、抽出する際のサンショウ材料は、生のまま、または乾燥させたものでも良いが、保存の点から乾燥させたものが好ましい。用いる溶媒としては、水、エタノール、アセトン、酢酸エチル、ヘキサン、グリセリン、プロピレングリコール、食用油脂など種々の溶媒が挙げられる。また、これらのうち2種以上を混合して用いてもよいが、食品、食品添加物、医薬品などの製造、加工に使用可能である安全なものが好ましい。なかでも水、もしくはエタノール、またはこれらの混合溶媒が好ましい。溶媒抽出は、例えば、サンショウ材料を1〜20倍量(重量)の上記溶媒に浸し、攪拌または放置し、濾過または遠心分離などにより抽出液を得ることができる。抽出時の温度としては、0〜100℃で実施できるが、20〜60℃が好ましい。抽出時間としては、0.1時間〜1ヶ月で実施できるが、0.5時間〜7日が好ましい。抽出物から、化合物(1)〜(4)を分離する方法は、特に限定されず、イオン交換樹脂やODSシリカゲルなどを用いたカラムクロマトグラフィーなどで、分離、精製する方法が挙げられる。例えば、カラムクロマトグラフィーとして多孔質イオン交換樹脂ダイアイオンHP−20(三菱化学株式会社製)カラムクロマトグラフィーを用い、溶離液として30容量%メタノール、50容量%メタノール、80容量%メタノール、メタノール、エタノール、酢酸エチルを用いて順次溶出すると、化合物(1)〜(4)の混合物を50容量%メタノール画分から得ることができる。これらの混合物をさらに、カラムクロマトグラフィーとしてODSシリカゲルクロマトグラフィーを用い、溶離液としてアセトニトリル:水=1:3(v/v)を用いて溶出すると、化合物(1)〜(4)をそれぞれ単一化合物として得ることができる。
また、これらの化合物(1)〜(4)は、サンショウ材料から得る場合、単一化合物まで精製しなくても、2種以上の化合物(1)〜(4)を含む粗精製物を苦味成分として使用することもできる。
また、これらの化合物(1)〜(4)は、化学合成によって製造されるものも本発明の苦味調味剤に使用することができる。
本発明の苦味調味剤における苦味成分の含量は、使用用途により適宜選択できるが、好ましくは0.001〜100重量%、より好ましくは10〜90重量%であり、栄養、味、香り、風味などを向上する目的で他の素材を混合することができる。本発明の苦味調味剤の性状は、粉末状または液体状であり、混合する他の素材の性状によって調整することができる。本発明の苦味調味剤の使用法は特に限定されず、食材の下ごしらえ時や調理時、食品の盛り付け時や摂食する前などに用いることができる。その使用量は、特に制限されず、調理方法、または、好みに応じて適量を用いることができる。
本発明の苦味調味剤を使用したときの効果として、食品に苦味を適度に加えることにより、五味をバランス良く調味した食品を得ることができ、食品の第2次機能を高めることができる。さらに、本発明の苦味調味剤は、五味のうちの「苦」に分類されることから、小腸の働きを高める作用、血液の流れを良くする作用、消炎作用、便通を良くする作用などを有しており、食品の第3次機能を高めることができる。ひいては、高血圧、高脂血、糖尿病、肥満などの生活習慣病の予防及び/又は改善に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)サンショウからの化合物の抽出、単離
中国産サンショウ(カホクザンショウ、株式会社カネカサンスパイス)の粉末676gをエタノール2.5Lに浸し室温・遮光にて2日間抽出した後、濾過により抽出液を得た。その抽出液を減圧濃縮して溶媒を除去し、抽出物110gを得た。その抽出物を多孔質イオン交換樹脂ダイアイオンHP−20(三菱化学株式会社製)カラムクロマトグラフィーに付し、30%メタノール、50%メタノール、80%メタノール、メタノール、エタノール、酢酸エチル(各2L)にて順次溶出し、6つの画分をそれぞれ減圧濃縮し、画分1(4.4g)、画分2(9.2g)、画分3(23.0g)、画分4(35.0g)、画分5(10.8g)、画分6(23.2g)を得た。なお、辛味成分であるサンショオールは画分4に含まれていた。
画分2から、ODSシリカゲルカラムクロマトグラフィー(アセトニトリル:水=1:3,v/v)により、化合物A(38.2mg)、化合物B(16.7mg)、化合物C(18.4mg)、化合物D(19.7mg)、化合物E(28.8mg)、化合物F(15.6mg)を得た。
二次元NMR(H−H COSY,HMQC,HMBC)を中心としたスペクトル解析の結果、化合物Cを(2E,6Z,8E)−10,11−dihydroxy−N−(2−hydroxy−2−methylpropyl)−2,6,8−dodecatrienamide(C1627NO,MW 297)、化合物Dを(2E,6Z,8E)−10,11−dihydroxy−N−(2−hydroxy−2−methylpropyl)−2,7,9−dodecatrienamide(C1627NO,MW 297)、化合物Eを(2E,7E,9E)−6−hydroxy−N−(2−hydroxy−2−methylpropyl)−11−oxo−2,6,8−dodecatrienamide(C1625NO,MW 295)と同定した。なお、化合物C及び化合物Dは特開2002−363096及びEP1197495A2に、化合物Eは稲田和敏ら,日本生薬学会第50回年会講演要旨集,47頁,2003年において公開、発表されている既知化合物である。
化合物A、化合物B、及び化合物Fは新規化合物であった。
化合物Aは二次元NMR(H−H COSY,HMQC,HMBC)を中心としたスペクトル解析により、その構造を(2E,7E,9B)−6−hydroxy−11−methoxy−N−(2−hydroxy−2−methylpropyl)−2,7,9−dodecatrienamideと決定し、bungeanumamide Aと命名した。化合物Aの性状およびスペクトルデータを以下に示す。
化合物A:bungeanumamide A(C1727NO
HR−ESI−MS m/z:334.2024(計算値,C1727NONa:334.1994)
UV(メタノール)λmax:228(logε:4.34)
IR(film)cm−1:3322,2974,2930,2823,1670,1628,1551,1448,1369,1179,1103,1069,992,910,842.
H−NMR(重クロロホルム)ppm:6.80(1H,ddd,J=15.2,6.9,6.9Hz,H−3),6.16(1H,dd,J=14.3,10.6Hz,H−8),6.15(1H,br s,NH),6.10(1H,dd,J=14.5,10.6Hz,H−9),5.81(1H,d,J=15.2Hz,H−2),5.62(1H,dd,J=14.3,6.6Hz,H−7),5.52(1H,dd,J=14.5,7.4Hz,H−10),4.41(1H,ddd,J=6.6,6.6,6.6Hz,H−6),3.71(1H,dq,J=7.4,6.4Hz,H−11),3.26(2H,d,J=6.0Hz,H−1’),3.20(3H,s,OMe),2.23(2H,m,H−4),1.63(2H,m,H−5),1.18(3H,d,J=6.4Hz,Me−12),1.17(3H x 2,s,Me−3’ and Me−4’).
13C−NMR(重クロロホルム)ppm:167.0(C−1),123.7(C−2),144.5(C−3),27.9(C−4),35.5(C−5),71.5(C−6),135.7(C−7),130.0(C−8),130.5(C−9),135.8(C−10),77.5(C−11),21.1(C−12),50.4(C−1’),71.0(C−2’),27.3 x 2 (C−3’ and C−4’),56.0(OMe).
化合物Bは、同様のスペクトル解析により、その構造を(2E,7E,9E)−11−hydroxy−6−methoxy−N−(2−hydroxy−2−methylpropyl)−2,7,9−dodecatrienamideと決定し、bungeanumamide Bと命名した。化合物Bの性状およびスペクトルデータを以下に示す。
化合物B:bungeanumamide B(C1727NO
HR−ESI−MS m/z:334.2024(計算値,C1727NONa:334.1994)
UV(メタノール)λmax:228(logε:4.44)
IR(film)cm−1:3329,2974,2929,1670,1632,1554,1367,1180,1097,993.
H−NMR(重クロロホルム)ppm:6.86(1H,ddd,J=15.2,6.9,6.9Hz,H−3),6.23(1H,dd,J=14.7,10.5Hz,H−9),6.18(1H,dd,J=14.6,10.5Hz,H−8),6.03(1H,br s,NH),5.84(1H,d,J=15.2Hz,H−2),5.78(1H,dd,J=14.7,6.2Hz,H−10),5.51(1H,dd,J=14.6,7.9Hz,H−7),4.38(1H,dq,J=6.4,6.2Hz,H−11),3.60(1H,ddd,J=7.9,6.9,6.9Hz,H−6),3.34(2H,d,J=6.0Hz,H−1’),3.27(3H,s,OMe),2.27(2H,m,H−4),1.75(1H,m,H−5a),1.65(1H,m,H−5b),1.32(3H,d,J=6.4Hz,Me−12),1.25(3H x 2,s,Me−3’ and Me−4’).
13C−NMR(重クロロホルム)ppm:167.0(C−1),123.5(C−2),144.8(C−3),27.8(C−4),33.9(C−5),81.0(C−6),137.7(C−7),128.5(C−8),132.2(C−9),133.6(C−10),68.3(C−11),23.2(C−12),50.4(C−1’),71.1(C−2’),27.3 x 2(C−3’ and C−4’),56.2(OMe).
化合物Fは、同様のスペクトル解析により、その構造を(2E,7E,9E)−11−hydroxy−N−(2−hydroxy−2−methylpropyl)−6−oxo−2,7,9−dodecatrienamideと決定し、bungeanumamide Cと命名した。化合物Fの性状およびスペクトルデータを以下に示す。
化合物F:bungeanumamide C(C1625NO
HR−ESI−MS m/z:318.1700(計算値,C1625NONa:318.1681)
UV(メタノール)λmax:273(logε:3.89)
IR(film)cm−1:3344,2974,2929,1670,1633,1551,1367,1180,999.
H−NMR(重クロロホルム)ppm:7.17(1H,dd,J=15.6,10.8Hz,H−8),6.84(1H,ddd,J=15.4,6.9,6.9Hz,H−3),6.38(1H,dd,J=15.2,10.8Hz,H−9),6.23(1H,dd,J=15.2,5.4Hz,H−10),6.18(1H,d,J=15.6Hz,H−7),6.14(1H,br s,NH),5.89(1H,d,J=15.4Hz,H−2),4.47(1H,dq,J=6.5,5.4Hz,H−11),3.33(2H,d,J=6.0Hz,H−1’),2.75(2H,t−like,J=7.2Hz,H−5),2.53(2H,q−like,J=7.1Hz,H−4),1.34(3H,d,J=6.5Hz,Me−12),1.24(3H x 2,s,Me−3’ and Me−4’).
13C−NMR(重クロロホルム)ppm:166.8(C−1),124.2(C−2),142.3(C−3),26.3(C−4),38.7(C−5),198.8(C−6),127.0(C−7),143.4(C−8),129.4(C−9),147.3(C−10),67.9(C−11),23.1(C−12),50.4(C−1’),71.0(C−2’),27.3 x 2(C−3’ and C−4’).
化合物A〜F及びサンショウの辛味成分であるサンショオールの構造式を表1に示す。

(実施例2)呈味試験
実施例1に使用したサンショウ(カホクザンショウ)の粉末、実施例1で得たサンショウ・エタノール抽出物及び化合物A〜F、並びにサンショウの辛味成分であるサンショオールについて、その味を評価した。すなわち、各サンプルの少量(1〜10mg)を指にとり、なめて、酸味(すっぱい)、苦味(にがい)、甘味(あまい)、辛味(からい)、鹹味(しょっぱい)のうち、いずれの味を感じるかを、5名がサンプル順不同で評価した。各味を感じた人数を表2に示す。

【産業上の利用可能性】
本発明によれば、食経験が十分にあり安全な食材であるサンショウ由来の苦味化合物を苦味成分として含有する苦味調味剤を提供することができる。本発明の苦味調味剤は、その適量を用いることにより五味をバランス良く調味した食品を得るために有用である。さらに、本発明の苦味調味剤は、五味のうちの「苦」に分類されることから、小腸の働きを高める作用、血液の流れを良くする作用、消炎作用、便通を良くする作用などを有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1);

で表される化合物、またはその塩。
【請求項2】
下記式(2);

で表される化合物、またはその塩。
【請求項3】
下記式(3);

で表される化合物、またはその塩。
【請求項4】
式(1)、式(2)、式(3)、下記式(4)で表される化合物、およびそれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種以上の化合物を苦味成分として含有する苦味調味剤。

【請求項5】
前記式(1)、(2)、(3)で表される化合物、及びそれらの塩からなる群より選ばれる少なくとも1種を苦味成分として含有する苦味調味剤。

【国際公開番号】WO2005/048737
【国際公開日】平成17年6月2日(2005.6.2)
【発行日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−515676(P2005−515676)
【国際出願番号】PCT/JP2004/017319
【国際出願日】平成16年11月15日(2004.11.15)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】