説明

茶刈装置

【課題】 茶葉の摘採や枝幹の剪除等を行う茶刈装置に関するものであって、種々の摘採条件、摘採状況にも対応できるよう更なる改良を施した茶刈装置の開発を試みたものである。
【解決手段】 本発明の茶刈装置は、適宜のフレーム11に対し、刈刃22を具えた茶刈機体と、この刈刃22後方に配した背面風Wの吹出口38とを支持させ、前記刈刃22を茶畝T長手方向に沿ってその上面を移動させ、茶枝葉Aの刈り取りを行い、この刈り取られた茶枝葉Aを吹出口38からの背面風Wにより適宜の収容位置へ移送するようにした茶刈作業を行う装置において、前記刈刃22と吹出口38との設置位置は、両者の間に位置設定手段60を介在させることにより、互いの設置位置を相対的に変更できるようにしたことを特徴として成るものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、茶葉の摘採や枝幹の剪除等を行う茶刈装置に関するものであって、特に本出願人が提案している画期的な茶枝葉移送手法に関し、更にその確実性を高めた改良に係るものである。
【背景技術】
【0002】
例えば茶葉の摘採を行う摘採機としては、いわゆる乗用型摘採機が存在する。このものは、摘採した茶葉の収容部として、大容量のコンテナを搭載したもの、あるいは複数の茶袋を吊り下げ状態に取り付けて収容部を形成するもの等、大量の茶葉を収容できるようにしたものが多い。
そして、このような摘採機にあっては、刈刃で摘採した茶葉Aを収容部まで移動するため多くは送風による手法が採られていた。
従来一般的であったものは、例えば図13に示すように、刈刃22′の前方側に茶葉移送のための分岐ノズル47′付きの送風管を配し、この分岐ノズル47′からの送風によって茶葉Aを移送するものであった(例えば特許文献1参照)。
この手法は、従来から長年に亘って用いられ、確立した技術手段として代替手段による改良の試みなど、正に想定されていなかった。しかしながら本出願人は、斯界における技術常識を打破することにより、派生的に従来甘受されてきた種々の不都合を改善し、種々の利点を奏し得るであろうとの着想の下、当該技術の改善に挑戦し、前記従来型の主要機材である送風管を不要とした手法を案出している。
このものは、特許出願公開2006−50963号公報(特許文献2)として開示されており、既にその実用機が市販の途についている。具体的には、刈刃後方にスリット状の吹出口を設け、ここから移送風(背面風)を吹き出し、その流れによって摘採された茶葉を吸い寄せながら且つ上方等の所定の位置に移送してゆくものである。
【0003】
ところで摘採作業自体、茶葉という自然の収穫物を対象としていることから、摘採条件、負荷等が各茶圃場、産地、天候等で著しく異なってくる。従って、この種の摘採装置は、その確実な作業性を得るため、常に改善の試みは続けられている。
この視点で予想される困難状況の一つに、雨天時に摘採作業を行わなければならないとき、茶葉が濡れて重くなり、その移送がスムーズに行えないという問題が指摘されている。また茶園管理の一環として、茶樹を刈揃える剪枝作業が行われるが、この際剪枝した枝幹が絡まって刈り取られることがあり、当然その移送は円滑に行われない場合もあり、その対応も求められていた。
【特許文献1】特開2001−95346号公報
【特許文献2】特開2006−50963号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、これらの種々の背景を考慮してなされたものであって、上記技術的要求に応えるべく、種々の摘採条件、摘採状況にも対応できるよう更なる改良を施した茶刈装置の開発を試みたものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の茶刈装置は、適宜のフレームに対し、刈刃を具えた茶刈機体と、この刈刃後方に配した背面風の吹出口とを支持させ、前記刈刃を茶畝長手方向に沿ってその上面を移動させ、茶枝葉の刈り取りを行い、この刈り取られた茶枝葉を吹出口からの背面風により適宜の収容位置へ移送するようにした茶刈作業を行う装置において、前記刈刃と吹出口との設置位置は、両者の間に位置設定手段を介在させることにより、互いの設置位置を相対的に変更できるようにしたことを特徴として成るものである。
【0006】
請求項2記載の茶刈装置は、前記請求項1記載の要件に加え、前記位置設定手段については、刈刃と、吹出口との前後方向の間隔を変更するものであることを特徴として成るものである。
【0007】
請求項3記載の茶刈装置は、前記請求項1または2記載の要件に加え、前記位置設定手段については、刈刃と、吹出口との上下方向の間隔を変更するものであることを特徴として成るものである。
【0008】
請求項4記載の茶刈装置は、前記請求項1、2または3記載の要件に加え、前記位置設定手段については、刈刃支持フレームを、吹出口の周囲における吹出ダクト部に固定する際の固定位置を変更して行うことを特徴として成るものである。
【0009】
請求項5記載の茶刈装置は、前記請求項4記載の要件に加え、前記固定位置の変更については、茶刈機体における刈刃支持フレームと、吹出ダクト部とのいずれか一方または双方において固定ボルトとの嵌め合い位置を変更して行うことを特徴として成るものである。
【0010】
請求項6記載の茶刈装置は、前記請求項5記載の要件に加えて、前記固定ボルトの嵌め合い位置を変更する構造については、複数のボルト締付部と、長孔状のボルト締付部とのいずれか一方又は双方の構造を採ることを特徴として成るものである。
【0011】
請求項7記載の茶刈装置は、前記請求項1、2、3、4、5または6記載の要件に加えて、前記刈刃については、刈刃支持フレームに刈刃体を支持させるとともに、刈刃の駆動部の一部であるエキセンボックスを一体に具え、このものがユニット化されて刈刃駆動モータと分断自在に形成されたカセット刃が適用されたものであることを特徴として成るものである。
【0012】
請求項8記載の茶刈装置は、茶畝を跨いで走行する走行機体と、この走行機体に取り付けられ摘採作業または剪枝作業を実質的に行う茶刈機体と、この茶刈機体の後方に設けられ摘採した茶葉を収容可能とする収容部と、刈り取った茶葉や枝幹等の茶枝葉を茶刈装置体から収容部まで移送する移送装置とを具え、目的に応じて摘採または剪枝作業が行えるようにした装置であって、前記装置は、請求項1、2、3、4、5、6または7記載の装置が適用されて成ることことを特徴として成るものである。
【0013】
請求項9記載の茶刈装置は、前記請求項8記載の要件に加えて、前記茶刈機体については、刈り取り高さを適宜変更し得る複数基の刈刃を具えるとともに、移送装置も各刈刃に応じて複数基設けられ、一回の走行によって多段階の刈り取りが一挙に行えるようにしたことことを特徴として成るものである。
【発明の効果】
【0014】
まず請求項1記載の発明によれば、刈刃と、吹出口との相対的な位置関係をそれぞれ茶刈作業の状態に応じた最適な位置に設定することができるものであり、常に安定した茶枝葉の移送が可能となる。
特にいわゆる雨天時に摘採する「雨茶」の場合、見かけ質量が重くなること及び水分による張り付き等により刈刃から吹出口まで移送がスムーズに行かない場合も予想されるが、このような場合刈刃の突出寸法を少なくし、刈刃と吹出口との間隔を狭めることにより円滑な移送が可能となる。
また例えば剪枝作業等の際、絡み合った状態で枝幹が刈り取られた場合には、刈刃の突出寸法を十分にとり、刈刃作用位置と吹出口との間隔を拡げることにより、その間で枝幹の絡み合いが解きほぐされ、円滑な移送が可能となる。
【0015】
また請求項2記載の発明によれば、特に前後方向の間隔を設定することが実作業考慮すると、最も適切且つ現実的な設定手法が得られる。
【0016】
また請求項3記載の発明によれば、刈刃と吹出口との上下方向の寸法を変更するものであり、例えば摘採する茶畝等の穂先が長い場合であっても、円滑な移送を図ることができる。
【0017】
また請求項4、5または6記載の発明によれば、吹出口周囲の吹出ダクト部を実質的な支持部材とした刈刃が、その固定位置を変更して、刈刃と吹出口との位置関係を設定するものであり、従来機構をほぼ踏襲したまま改良が可能である。
【0018】
また請求項7記載の発明によれば、刈刃体がいわゆるカセット式に分断されるものであり、取付用のボルト等の部材を利用して前記位置設定機構を実現でき、従来機構をほぼ踏襲した装置が得られる。
【0019】
また請求項8記載の発明によれば、いわゆる乗用式摘採機等に本改良技術を適用するものであり、実際の茶圃場における作業性を著しく向上させることができる。
【0020】
また請求項9記載の発明によれば、一挙にいわゆる二段刈りを行うことが可能となるものであり、その作業能率を更に向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明の最良の形態は、以下の実施例に述べる通りであり、更に本発明の技術思想の下に可能な改良した形態を含むものである。なお説明にあたっては、まず本発明の茶刈装置として摘採機を例に挙げながら説明する。また、この摘採機としては、刈り取った茶葉Aを上昇移送して収容部に収容する、いわゆる大型の乗用式摘採機(茶畝跨走型摘採機1)を例に挙げて説明する。
なお本発明は、茶芽を刈り取る摘採作業のみならず、樹形を整え樹勢の回復を図るために枝幹を剪除する剪枝作業にも利用でき、このようなことに因み、本発明の名称中や請求項等に記載した「茶枝葉」とは、摘採した茶葉Aと剪除した枝幹とを総称するものである(茶枝葉にも茶葉と同一の符号Aを付す)。また、「茶刈」もしくは「茶刈装置」とは、摘採(摘採機)と剪枝(剪枝機)とを総称するものである。なお剪枝作業の具体的形態については後述する。
【実施例】
【0022】
本発明を適用した茶畝跨走型摘採機1は、一例として図1、2に示すように、茶畝Tを跨ぐように走行する走行機体2と、この走行機体2によって茶畝T上面に位置するように支持される茶刈機体たる摘採機体3と、摘採機体3の後方に設けられ摘採した茶葉Aを収容する収容部4と、摘採した茶葉Aを摘採機体3から収容部4まで移送する移送装置5とを具えて成るものである。なお本明細書にいう前後方向とは茶刈作業が進行する方向を前方とし、その反対側を後方とする。以下、各構成部について説明する。
【0023】
まず走行機体2について説明する。このものは、茶畝Tを跨いで茶畝間の畝地を接地走行するものであり、走行方向から見て概ね門型状に形成されたフレーム11を骨格部材とする。このフレーム11は、畝間に立ち上げ状態に設けられる脚部フレーム11Aと、この脚部フレーム11Aを繋ぐ連結フレーム11Bと、脚部フレーム11Aに対し昇降自在に取り付けられる昇降ブラケット11Cとを具えて成るものである。そして、脚部フレーム11Aの下端には一例としてクローラを適用した走行体12を設ける。もちろん、この走行体12は、このようなクローラに限らず、畝地を過剰に押し付けないような空気タイヤ、あるいは双方を適用した形態(例えば前側に空気タイヤ、後側にクローラを適用した形態)等が適宜採り得る。
【0024】
更に連結フレーム11Bの上部には、摘採機に乗車した作業者が座る操縦者用シート13、操縦桿14、摘採機の制御や操作等を行うためのコントロールボックス15を設けるものである。そして操縦者用シート13の側傍には、例えばディーゼルエンジン等を適用した原動機16を搭載するものであり、一例として、この原動機16により図示を省略する油圧ポンプを駆動し、この油圧ポンプにより供給される作動油によって前記走行体12の駆動や、後述する摘採機体3の刈刃22の駆動、更には前記昇降ブラケット11Cの昇降動を担うシリンダ(図示略)等の駆動を行う。
【0025】
また前記連結フレーム11B上には、刈刃22によって刈り取った茶葉Aを風送するための送風機17を設けるものであって、この送風機17は前記原動機16により直接駆動される。そして、この送風機17からは送風ダクト18を介して圧力風が移送装置5(摘採機体3側)に供給される。なお送風ダクト18は、一部または全部が、フレキシブルダクト18Aによって構成され、移送装置5に接続されている。
なお本実施例では摘採した茶葉Aを茶袋Bに収容する形態を採るため、上記連結フレーム11Bには、茶葉Aでいっぱいになった茶袋Bを仮置きする回動アーム19(図2参照)が設けられ、茶袋Bを載置する際には、この回動アーム19を摘採機の側方に張り出すようにウイング状に拡げ、ここに載せるものである。
【0026】
次に摘採機体3について説明する。このものは茶葉Aの摘採を実質的に行うものであり、刈刃22を主要部材として成るものである。この刈刃22は、例えば上下一対の刈刃体22Aと、これら刈刃体22Aを摺動自在に支持する刈刃支持フレーム22Bと、刈刃体22Aを偏心板やエキセントリックシャフト等によって往復摺動させる駆動部220の構成部材であるエキセンクランクユニット220Eとを具えて成り、上下一対の刈刃体22Aを交互に往復動させることで、各刈刃体22Aに形成した刃(歯)のバリカン作用により茶葉Aを刈り取るものである(図2参照)。
【0027】
このように刈刃22は、刈刃体22A、刈刃支持フレーム22B、エキセンクランクユニット220E等を一体的に組み付けた、いわゆるカセット式替刃の形態を採り、刈刃22の取り替えにより、容易に摘採機から浅刈機・中刈機等の剪枝機に仕様変更できるものである。なお図中符号23は、このようなカセット式の刈刃22を着脱自在に保持する側板部であり、この側板部23が上記昇降ブラケット11Cに支持され、刈刃22とこれと伴って昇降する後述の刈刃駆動モータ220Mとの高さが自在に設定できる構成となっている。
【0028】
また、上記刈刃22の駆動部220も、前記油圧ポンプ(走行機体2に搭載された原動機16によって駆動される)から供給される作動油によって駆動することが望ましい構成であるが、刈刃22の駆動は別途エンジンによって行うことも可能である。なお、この駆動部220は、既に一部述べられているとおり、一例として駆動源となる刈刃駆動モータ220Mと、直接刈刃22に作用して往復動させるエキセンクランクユニット220Eとに分割できる構成とし、前記カセット式の替刃を実現している。
【0029】
次に上記刈刃22によって刈り取った茶葉Aを収容する収容部4について説明する。収容部4は、一例として図1、2に示すように、後述する移送ダクト6の吐出口33から吊り下げ状態に取り付けられた茶袋Bと、収容部4の枠組みを成すフレーム部26とを主要部材として成るものである。もちろん、フレーム部26は、収容部4の骨格を形成するだけでなく、茶葉Aを収容した茶袋Bを保護もしくはガードする作用も併せ持つものである。
【0030】
なお、本実施例では、摘採機を後方側から視て二つの茶袋Bを左右に並べるように取り付けるものであるが、茶袋Bの数やその配置等は、適宜変更可能である。また、ここでは、茶袋Bをほぼ鉛直方向に垂れ下げ状態に取り付けて収容部4を構成したが、茶袋Bは、摘採機を側面から視て、傾斜するように取り付けることも可能である。
更にまた収容部4としては、このような茶袋Bに収容する形態ではなく、コンテナ式のものを採用し、この中に茶葉Aを収容する形態を採ることも可能である。また、コンテナ式あるいは茶袋B適用タイプを問わず収容部は、走行機体2の適宜の空スペースを利用して設けることが可能である。
【0031】
次に移送装置5について説明する。移送装置5は、刈り取った茶葉Aを所定の位置に向けて移送する部位であり、ここでは茶葉Aを摘採機体3から収容部4まで中継移送するものである。具体的には刈り取り直後の茶葉Aを収容部4に向けて刈刃22のほぼ真上に上昇移送する形態を採る。ここで、茶葉Aの移送は空気流、つまりダクト内に圧力風を送り込んで収容部4に移送するものであり、ここでは複数のダクト部材を用いることに因み、これらをダクトユニット5Aと総称する。
【0032】
ダクトユニット5Aは、一例として図1〜3に示すように、移送ダクト6と背面ダクト7とを主要部材として成るものである。このうち移送ダクト6は、刈刃22の直上部からほぼ真っ直ぐに立ち上げられた後、収容部4上方に臨むように形成されるものである。また背面ダクト7は、刈刃22の後方側、すなわち摘採方向に対して後方となる刈刃22の背面側から、前記移送ダクト6内に上昇流となる圧力風(これを背面風Wとする)を送り込むものである。以下、これら移送ダクト6や背面ダクト7等について更に詳細に説明する。
【0033】
まず移送ダクト6について説明する。このものは、上述したように刈刃22のほぼ真上に立ち上げられ、刈り取り直後の茶葉Aを収容部4まで上昇移送するものである。ここで移送ダクト6において茶葉Aの移送が開始される部位(下部)を移送開始部31とし、茶葉Aの移送が終わる部位(上部)を移送終端部32とするものであり、この移送終端部32には収容部4に臨む吐出口33が形成される。また、本実施例では、移送開始部31は、下方側に開口され、刈刃22の全幅に亘る範囲に開口している。一方、移送終端部32は、吐出口33が収容部4に臨むように適宜湾曲形成されるものであり、更にこの吐出口33には茶袋Bの開放端側を取り付けるフック34が設けられる。
【0034】
なお移送ダクト6は、移送開始部31から吐出口33(移送終端部32)に至る移送途中において、幅寸法や断面積等を急激に変化させないことが好ましく、これは移送に伴う茶葉Aの傷みを極力低減させるためである。また、移送路は、例えば図3(a)に示すように、途中部分が二股状に分岐するように形成され、この分岐部35に前記送風機17からの圧力風を背面ダクト7に取り込む導入部8が設けられる(導入部8については後述する)。分岐部35は、上昇移送する茶葉Aを左右に分ける部位となるため、分岐部35に茶葉Aが当たっても極力茶葉Aが傷まないように、滑らかなR状つまり移送路としては略U字状を成し、スムーズに茶葉Aを左右に振り分けるようにすることが好ましい。
【0035】
また、このような移送ダクト6(ダクトユニット5A)は、少なくとも一部が入れ子状もしくはフレキシブル状に形成され、刈刃22とともに上下動できる構成とする。
以上述べたように、本実施例では、茶葉Aを上昇移送するにあたり刈刃後方側への移送を伴わないため、移送装置5ひいては摘採機の前後長を短縮化できるものであるが、これに加え、摘採機を側面から視た場合、上記導入部8を、移送ダクト6とほぼ重なるように設けたことも、ダクトユニット5A(移送装置5)としての厚み(摘採機の前後方向に相当する寸法)を薄くすることができ、摘採機の前後長短縮化に寄与するものである。
【0036】
次に背面ダクト7について説明する。このものは、上述したように刈刃22の後方側から移送ダクト6(移送開始部31)内に背面風Wを送り込むダクトであり、移送ダクト6の背面側に密着状態に設けられる。ここで図中符号38は、背面風Wを移送ダクト6内に送り込む吹出口である。
なお、本実施例では、別体構成の移送ダクト6と背面ダクト7とを張り合わせ状に組み合わせてダクトユニット5Aを形成するものであるが、上述した構成上、これらは一体的に形成することも可能であり、その場合には、移送ダクト6の後方壁面は、背面ダクト7の前方壁面と共通化させることが可能である。
【0037】
また背面ダクト7は、摘採機の背面から視た場合、上方の導入部8を頂上とするような山形を呈し(図3(a)参照)、上方には、前記導入部8に連通する導入口39が開口されている。これによって、背面ダクト7は導入口39から圧力風を取り込むことができ、この圧力風を下方に導いた後、移送ダクト6(移送開始部31)に上昇流として送り込むものである。
因みに背面ダクト7は、ほぼ一定の薄い厚さに形成され、これも摘採機の前後長短縮化に寄与するものである。
【0038】
また背面ダクト7内には拡開案内体40が形成されるものであり、これは導入口39から取り込んだ圧力風を刈刃22の幅方向にわたって、ほぼ均一に流すための部材である。具体的には、一例として図3(a)に併せて示すように、断面L字状のブラケットを複数用い、これを導入口39から刈刃22に向かって末広がり状もしくは放射状に取り付けて構成される。そして、この拡開案内体40によって、一カ所の導入口39から圧力風を取り込んでも、刈刃22の幅方向にほぼ均一に案内し、刈刃22の全幅にわたって同程度の強さの背面風Wに変換し得るものである。
【0039】
次に、導入部8について説明する。このものは、前記送風機17からの圧力風を、背面ダクト7の導入口39に導くためのものであり、一例として図3(b)に示すように、舌片状のガイド板43を具え、このガイド板43を傾斜状態に設けることで、上述した空気流、すなわちフレキシブルダクト18Aによって送風機17から供給された圧力風を、導入口39から背面ダクト7内に送り込む送風を達成する。
なお導入部8は、ガイド板43と、これを両側から挟み込む移送ダクト6の両外側面とによって、導入部8の下方と左右が閉塞された状態となり、フレキシブルダクト18Aから供給される圧力風を、ほぼそのまま導入口39から背面ダクト7内に案内するものである。
【0040】
このようなダクトユニット5Aにおける吹出口38と刈刃22とは、互いにその設置位置を相対的に変更自在とするため、両者の間に位置設定手段60を介在させる。位置設定手段60は、刈刃22と吹出口38との位置関係を実質的に変更するための機構を総称するものであり、単一のユニット部材として観念されるものではない。
以下位置設定手段60の具体的な手法を図4、9〜11に示しながら説明する。
【0041】
<ボルト受け孔を複数形成した実施例: 図9>
まずこの実施例では、吹出口38を実質的に形成している吹出ダクト部380を刈刃22の支持部材として用いるものであり、その際前記吹出ダクト部380の上面吹出ダクト板380Aと、下面吹出ダクト板380Bの間に幅方向の一定間隔ごとに前後に並ぶ調整ナット65を設ける。即ち、前部調整ナット65Aと後部調整ナット65Bとを並設するものである。
そして、帯板状の刈刃支持フレーム22Bに設けたボルト受け孔66からボルトを挿入し、前記調整ナット65における前部調整ナット65Aと後部調整ナット65Bとのいずれかを選択的に利用して固定ボルト61を締め込む。即ち図9(a)に示すように前部調整ナット65Aを利用した場合、刈刃22の刃先と、吹出口38の前端部との突出寸法Lは、大きく突出寸法L1の寸法で突出した状態に設定される。また後部調整ナット65Bを利用した場合、図9(b)に示すように刈刃22は後方に退去するようになり突出寸法L2は、短く設定される。
なおこのような調整にあたっては、吹出ダクト部380側に位置調整用のナットを設けているが、これを逆にするように刈刃支持フレーム22B側に前後に並ぶようにボルト受け孔66を形成することによって、刈刃22と吹出口38との相対的な位置関係の変更ができるようにすることも可能である。要するに固定される両部材、即ち吹出ダクト部380と刈刃支持フレーム22Bとは、複数のボルト締付部により固定ボルト61の嵌め合い位置が変更される構造を採ればよい。
【0042】
<長孔タイプの実施例:図10>
また図10に示すように、刈刃支持フレーム22Bにおけるボルト受け孔66を長孔状ボルト受け孔66Aとして形成し、前記刈刃体22Aの取付位置を前後にずらし得る構成してももとより差し支えない。要するに固定される両部材、即ち吹出ダクト部380と刈刃支持フレーム22Bとは、長孔状のボルト締付部により固定ボルト61の嵌め合い位置が変更される。
このような長孔状のボルト締付部とした構成の場合、固定ボルト61がねじ込まれ調整ナット65は、一個所のみ設けても、刈刃22の突出寸法Lの調整は充分可能であるが、図10に示したように調整ナット65を前部調整ナット65Aと、後部調整ナット65Bとの二個所等の複数とした場合、突出寸法Lの調整がより広い範囲で且つ無段階で行い得る。
もちろん、このような手法を吹出ダクト部380側の上面吹出ダクト板380Aと、下面吹出ダクト板380Bに設けることも可能であるが、この場合吹出ダクト部380自体は、その内部に強い圧力風が通過することからその漏洩を防ぐための何らかのシール手法を用いることが好ましい。
<上下寸法の変更>
なお以上述べた調整は、刈刃22の突出寸法Lを設定するものであるが、更に刈刃22と、吹出口38とを上下方向において、互いの相対位置、即ち上下寸法Hを変更することが可能である。
この手法は、図11(a)(b)に示すように前記吹出ダクト部380に対し、刈刃支持フレーム22bを固定するにあたり、その間に上下設定スペーサ67を設けることにより行う。なお上下設定スペーサ67を用いるか、あるいはこれを排除をするかのほか、上下設定スペーサ67を数段階の厚さを用意することにより、上下寸法Hを適宜設定することができる。
図11(a)に示す実施例においては、上下設定スペーサ67を用いないことから上下寸法H1は、低く設定され、図11(b)において上下設定スペーサ67を介在させることから上下寸法H2は、高く設定しているものである。
【0043】
更にいわゆるカセット式の刈刃22を想定した場合、その前後方向の移動にあたっては、駆動部220の一部である刈刃駆動モータ220Mも前後にずらす必要が生じる。
このため図12に示すように、刈刃駆動モータ220Mを支持するためのモータ取付ブラケット68を用意し、このものに横方向に延びる長孔680を形成し、これによって前記側板部23に対し刈刃駆動モータ220Mの取付位置を前後にずらすことが出来るように構成するものである。
なお以上述べたように刈刃22と、吹出口38との相互の設定位置の変更にあたっては更に次のような改変が可能である。即ち、先に述べた実施例においては、両者を固定するにあたりボルトを用いているが、ボルトについては吹出ダクト部380あるいは刈刃支持フレーム22Bに対して、予め植設したいわゆるスタッドボルトを適用することも可能である。また、いわゆる捻じ込みを行うボルトのほか、バヨネット状のクランプ機材を用いることも可能である。
また、吹出ダクト部380に対し、刈刃支持フレーム22Bが下面に密着するような形態で取り付けられるにあたり、例えば目視しやすい部位に、両者の相対位置を示すようなゲージ目盛を設けておくことも可能である。
【0044】
本発明を適用した茶畝跨走型摘採機1は、以上のような基本構造を有するものであり、以下、このような摘採機における茶葉Aの移送態様を説明しながら、実質的に本発明方法である茶枝葉の移送方法について説明する。なお、説明にあたっては、背面風Wの形成過程を説明した後、これによる茶葉Aの移送態様について説明する。
【0045】
(1)背面風の形成過程
背面風Wを生じさせるには、まず走行機体2上の原動機16を駆動し、送風機17によって圧力風を生起する。生起された圧力風は、その後、送風ダクト18(フレキシブルダクト18A)を通して導入部8に導かれ、ここでガイド板43に案内されて、導入口39から背面ダクト7内に取り込まれる。背面ダクト7内に導入された圧力風は、次いで、背面ダクト7内に設けられた拡開案内体40によって、刈刃22の幅方向にほぼ均一に拡がるようにガイドされ、刈刃後方の吹出口38から背面風Wとして移送ダクト6(移送開始部31)内に送り込まれる。この背面風Wは、刈刃22の後方から、ほぼ真上に向かう上昇流であり、少なくとも茶葉Aを移送ダクト6の吐出口33(移送終端部32)まで搬送する移送能力を有する。
【0046】
(2)茶葉の移送態様
このような背面風Wによって、茶葉Aは、一例として図4に示すように、刈り取り直後、まず刈刃22の後方側に引き寄せられる。これは、刈刃22の後方から背面風Wを吹き出すことにより、刈刃22の後方付近、具体的には、背面風Wの吹出口38近傍に負圧が形成され、茶葉Aが刈刃部分から吹出口38側に引き寄せられるものと考えられる(以下、これを背面風Wの負圧吸引作用と称する)。そして、吹出口38側に引き付けられた茶葉Aは、その後、上昇流を形成する背面風Wに乗って、移送ダクト6内を上昇し、吐出口33から収容部4に設けられた茶袋B内に収容される。
【0047】
<状況に応じた位置調整>
ところでこのような態様で摘採された茶葉Aが移送されてゆくが、この際例えば「雨茶」の場合、見かけ質量が重く、且つ茶葉表面の水滴により移送ダクト等に張り付きがちであり、その移送が比較的困難である。このような場合には、図9(b)に示すように刈刃22と吹出口38との間の突出寸法L2を短く設定することが好ましい。これにより、刈り取られた茶葉は、瞬時に移送に関与する背面風により吹き飛ばされて、適宜所定の位置に移送されていく。
【0048】
一方剪枝作業等を行うにあたって、刈り取った枝幹が絡みついている場合もあるが、これに対応するには、図9(a)に示すように、刈刃22と吹出口38との間の突出寸法L1を長く設定することが好ましい。これにより刈り取られた位置と吹出口38との位置が離れ、この間で絡み付いた茶枝葉Aが解きほぐされるようになり、その結果茶枝葉Aが円滑に移送される。
なおこのように突出寸法L1を十分に確保した場合の副次的な利点として、次のことが挙げられる。即ち図9(a)に示すように上刃と下刃との間には、ボルトの捻じ込み加減によって、両者の接触状態を調整する刃圧設定部22Gが存在するが、突出寸法L1のように十分刈刃を突き出した場合には、このものが吹出ダクト部380の下面ダクト部よりも更に前方に露見する状態に設定されることとなる。この結果、刃圧設定部22Gの調整を行う場合にも刈刃22を取り外さなくともその作業が可能となるものである。
【0049】
また茶枝葉Aの丈が高い場合、図11(b)に示すように刈刃22と吹出口38との上下寸法を高く取るようにし、円滑に移送がされるようにするのである。
【0050】
〔他の実施例〕
本発明は、以上述べた実施例を一つの基本的な技術思想とするものであるが、更に適用対象として次のような改変が考えられる。
すなわち先の図1〜4に示した実施例では、刈刃22の後方から作用する背面風Wのみによって茶葉Aを移送するものであった。しかしながら、摘採する茶芽の生育状態、移送路の状況(上昇移送距離等)、背面風Wを生起させる送風機17の能力等によっては、例えば図5、8に示すように背面風Wに加えて、刈刃22の正面側(刈り取り方向正面側)からも移送風(これを正面風W1とする)を補助的に作用させることが可能である。この場合、正面風W1を生じさせる正面ダクト9を移送ダクト6の正面側に密着状態に設けることが好ましく、これに因み上記ダクトユニット5Aは、移送ダクト6、背面ダクト7、正面ダクト9とによって主に構成される。
【0051】
なお正面風W1を生じさせるにあたっては、例えば上記図5(b)に併せて示すように、導入部8のガイド板43を、二枚の傾斜板により、側面視、山形状に形成するものである。すなわち導入部8に取り込んだ圧力風をガイド板43(二枚の傾斜板)によって、背面ダクト7と正面ダクト9とに振り分けるようにするものである。なおここで二枚の傾斜板を各別に表示する場合には、その作用から背面ガイド板43Aと正面ガイド板43Bとして区別する。また、この場合、例えば背面ガイド板43Aと正面ガイド板43Bの合わせ位置、すなわちガイド板43の頂上の位置によって、背面風Wと正面風W1の流量バランスが決定でき、ガイド板43が、背面風Wと正面風W1との風量の調整作用をも担うものである。もちろん茶葉Aの上昇移送は、主に背面風Wが担うため、背面ダクト7に導入する風量(流量)が多く、大部分を占めるのが一般的である。
また、このようなことから正面ダクト9にも導入部8から圧力風を取り込む導入口46が、移送ダクト6側の壁面に開口されるものである。
【0052】
また正面ダクト9は、一例として図5(c)に示すように、正面視、導入部8付近では、ほぼストレート状をなし、刈刃付近で刈刃22の幅方向に広がるように形成される。また下端部では一例として図5(b)に示すように、斜め下方の刈刃22に指向する分岐ノズル47が刈刃22に沿って複数形成されている。
このように、本実施例では、背面ダクト7と正面ダクト9とを移送ダクト6に沿うように形成し、しかもその厚み寸法を、ほぼ一定の薄い厚さに形成するため、これが移送装置5ひいては摘採機の前後長短縮化に寄与する。もちろん、この短縮化については、上述したように、刈刃後方への水平移送が省略できることや、移送ダクト6の途中に分岐部35を形成し、ここに導入部8を設け、側面から視て、導入部8を移送ダクト6に重ねるように設けたことも短縮化の大きな要因である。
なお、上述した正面風W1は、あくまでも背面風Wをサポートする場合に設けられるものである。
【0053】
また、先に述べた基本の実施例では、移送ダクト6の背面側に背面ダクト7を設け、刈刃後側から移送ダクト6内に背面風Wを送り込むように説明したが、例えば図6に示すように、移送ダクト6の横つまり側面下部から圧力風を供給し、これを背面風Wに変換することも可能である。この場合、移送ダクト6の横から供給された圧力風の向きを上向き(背面風W)に変える風向体50を設ける必要があるが(例えば上記分岐ノズル47様の構造)、送風機17から圧力風を導入するフレキシブルダクト18Aや、上記風向体50等が実質的に背面ダクト7の作用を担うため、背面ダクト7そのものは省略することができる。
更に、この場合、送風機17から移送ダクト6に圧力風を導いてくる導入部8も省略することができるため、側面から視て、この導入部8を移送ダクト6に重ねるように設ける必要もなく、移送ダクト6を単管状(途中で分岐しない単一の管状)に形成することができる。
【0054】
また、先に述べた基本の実施例では、上昇移送を伴う摘採機の形態を例に挙げて説明したが、上述したように、本発明は摘採機のみに限らず剪枝機にも利用できる。この場合、剪除した枝幹は、例えば移送ダクト6内を上昇移送させた後、収容部4内を通過するように設けたシュート部材によって畝間まで導き、落下させる形態が可能である(例えば本出願人の出願に係る特開2002−136214号「茶畝跨走型茶刈装置における剪除枝幹の移送構造」参照)。もちろん剪除した枝幹は、必ずしも収容部4内を経由させて畝間まで導く必要はなく、例えば先に述べた基本の実施例の場合には、収容部4の枠組みがフレーム部26によって形成されることから、これと干渉しないように吐出口33から畝間までダクトを取り付け、剪除枝幹を畝間に落下させることも可能である。なお、摘採機を剪枝機に変更する場合、先に述べたカセット式の刈刃22を剪枝機用のものに変更すれば、摘採機体3を容易に剪枝機体に仕様変更できるものである。
【0055】
また、本発明は、刈刃22の後方側に水平移送部を形成しなくても、茶葉Aを刈刃22のほぼ真上に移送できることから、上昇移送を伴う摘採機に好適と考えられるが、刈刃22の後方側から圧力風(背面風W)を作用させて茶葉Aを移送する手法そのものは、極めて斬新且つ新規なアイデアであるため、必ずしも上昇移送を伴わない種々の機種への適用も考えられる。例えば図7に示すように、茶葉Aを刈刃22からそのまま後方に送って、寝かせた状態にセットした茶袋B内に収容する、いわゆる簡易型乗用摘採機または小型乗用摘採機と呼ばれるものへの適用が可能である。また剪除した枝幹を収容部4の内側を経由させずに、そのまま畝端部に向けて風送して畝間に落とし込む剪枝機にも適用することが可能である。そして、このような機種に、本発明を適用した場合、従来の刈刃前方から作用させていた移送風のエネルギーを低く抑えられる、もしくは従来の刈刃前方からの送風は全て不要になり得る点で、本発明は利用範囲が広く、また実現の可能性も高いものである。
【0056】
また先に述べた基本の実施例では、刈刃22を一基のみ設けた摘採機(一段刈摘採機)を例に挙げて説明したが、本発明は、刈刃22を上下方向に複数基設けた、いわゆる多段刈摘採機にも適用することが可能であり、例えば図8は本発明を適用した二段刈摘採機1Aの一例を示している。ここで、上下二基の刈刃22を区別する場合には、前方上側のものを上段刈刃22U、後方下側のものを下段刈刃22Dとして区別する。なお二段刈り(二段摘み)とは、例えば前方の上段刈刃22Uで新芽(ミル芽)の先端側2/3〜1/3を摘採してから、後方の下段刈刃22Dで残りの部分を摘採するという摘採手法である。このため通常は、上段刈刃22Uの方が下段刈刃22Dよりも高い位置に設定されることが多いが、例えば二基の刈刃22U、22Dを同じ高さに設定する場合もあり得る。
【0057】
また、ここでは上段刈刃22Uと下段刈刃22Dとについて、各々にダクトユニット5Aが形成されるものであり、これらも各々、上刃用ダクトユニット5AU、下刃用ダクトユニット5ADとして区別する。すなわち、ここでは上段刈刃22Uによって摘採した茶葉Aと、下段刈刃22Dによって摘採した茶葉Aとを、別々の茶袋Bに分けて収容できるようにしている。これは、上段刈刃22Uと下段刈刃22Dによって、性状の異なった茶葉Aを別々に摘採する場合、例えば上段刈刃22Uによって手摘み物に近い上質の茶葉Aを摘採し、下段刈刃22Dによって手摘み物よりは幾らか品質的には低下するが、良質の茶葉Aを摘採する場合等に好適な収容形態であり、これによって、その後の製茶加工においても茶葉Aの性状に応じた適切な加工条件が適宜採り得るものである。
【0058】
そして両刈刃22U、22Dは、昇降ブラケット11Cとともに昇降動される一方、刈刃間距離 (上下間隔)が変更できるように構成されている。具体的には、下段刈刃22Dが、昇降ブラケット11C側に取り付けられるとともに、この下段刈刃22Dに対して上段刈刃22Uが昇降動できるように取り付けられている。ここで図中符号51は、下段刈刃22Dに対して上段刈刃22Uを昇降動させるためのハンドルであり、これは手動、自動どちらでも駆動させ得る形態が好ましい。
なお図8に示す実施例では、原動機16によって駆動される送風機17も刈刃22に合わせて二基設けたが、搭載する送風機17は一基とし、このものから各々のダクトユニット5AU、5ADに圧力風を等分して送ることも可能である。
【0059】
次に、本発明を、上述した二段刈摘採機1A等の多段刈茶刈装置に適用する有用性について説明する。二段刈摘採機1Aでは、上段刈刃22Uと下段刈刃22Dとの前後間隔が空き過ぎると、茶畝地の凹凸面が摘採面に現れ易く、刈り取りが綺麗に行えないことがある。このような場合、摘採した茶葉Aの均一性が悪くなり、収穫した新芽に、本来摘採すべきでない部位(古葉や枝幹等)が混入することがあり、その後の製茶加工や値段に悪影響を及ぼすことがあった。
このため、このような二段刈摘採機1Aにあっては、上段刈刃22Uと下段刈刃22Dとの前後間隔をできるだけ狭めることが、能率的な摘採を行う上で非常に有効であり、この点において移送装置5の前後長を送風形態から短縮できる本発明は、二段刈摘採機1Aに好適なものと言える。逆に言えば、従来の二段刈摘採機では、水平移送を伴う分、上段刈刃22Uと下段刈刃22Dとの前後間隔が長くなることは否めず、綺麗に摘採を行うには、ある程度の限界が生じていた。
【0060】
なお、上述したように本発明を適用した複数段刈摘採機については、摘採機の前後長が短縮化できることや、これに起因して摘採作業時における摘採機の取り回し性が向上することに加え、複数段刈りが格段に綺麗に且つ能率的に行えるという新たな効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の茶刈装置(摘採機)を茶畝跨走型摘採機に適用した実施例を示す説明図である。
【図2】本発明の茶刈装置の一例である摘採機を示す側面図(a)、並びに正面図(b)である。
【図3】本発明の茶刈装置を示す斜視図(a)、並びに導入部を拡大して示す斜視図(b)である。
【図4】刈刃後方から上向きの背面風を作用させることによって、刈り取り直後の茶葉を刈刃のほぼ真上に上昇移送する様子を示す説明図である。
【図5】移送ダクトの前側に正面ダクトを密着状態に設け、刈刃前方側から正面風を補助的に作用させるようにした移送装置の他の実施例を示す背面図(a)、側面断面図(b)、並びに正面図(c)である。
【図6】移送ダクトの横から圧力風を供給する移送装置の他の実施例を示す斜視図である。
【図7】本発明を小型もしくは簡易型の乗用式摘採機に適用し、刈刃後方からの背面風によって、刈り取り後の茶葉を刈刃の後方側に移送するようにした他の実施例を示す説明図である。
【図8】本発明の移送手法を適用した二段刈摘採機を示す側面図(a)、並びに正面図(b)である。
【図9】刈刃と吹出口との位置関係を変更するための機構を示す縦断面図及び底面図である。
【図10】同上他の実施例を示す平面図及び底面図である。
【図11】刈刃と吹出口との上下方向の寸法を調整する実施例を示す縦断面図である。
【図12】刈刃駆動モータの取付位置を変更する機構を示す側面図である。
【図13】従来型装置の一例を示す側面図である。
【符号の説明】
【0062】
1 茶畝跨走型摘採機
1A 二段刈摘採機
2 走行機体
3 摘採機体
4 収容部
5 移送装置
5A ダクトユニット
5AU 上刃用ダクトユニット
5AD 下刃用ダクトユニット
6 移送ダクト
7 背面ダクト
8 導入部
9 正面ダクト
11 フレーム
11A 脚部フレーム
11B 連結フレーム
11C 昇降ブラケット
12 走行体
13 操縦者用シート
14 操縦桿
15 コントロールボックス
16 原動機
17 送風機
18 送風ダクト
18A フレキシブルダクト
19 回動アーム
22 刈刃
22U 上段刈刃
22D 下段刈刃
22A 刈刃体
22B 刈刃支持フレーム
220 駆動部
220M 刈刃駆動モータ
220E エキセンクランクユニット
22G 刃圧設定部
23 側板部
26 フレーム部
31 移送開始部
32 移送終端部
33 吐出口
34 フック
35 分岐部
38 吹出口
380 吹出ダクト部
380A 上面吹出ダクト板
380B 下面吹出ダクト板
39 導入口
40 拡開案内体
43 ガイド板
43A 背面ガイド板
43B 正面ガイド板
46 導入口
47 分岐ノズル
50 風向体
51 ハンドル
60 位置設定手段
61 固定ボルト
65 調整ナット
65A 前部調整ナット
65B 後部調整ナット
66 ボルト受け孔
66A 長孔状ボルト受け孔
67 上下設定スペーサ
68 モータ取付ブラケット
680 長孔
A 茶葉(茶枝葉)
B 茶袋
T 茶畝
L 突出寸法
L1 突出寸法
L2 突出寸法
H 上下寸法
H1 上下寸法
H2 上下寸法
W 背面風
W1 正面風

【特許請求の範囲】
【請求項1】
適宜のフレームに対し、刈刃を具えた茶刈機体と、この刈刃後方に配した背面風の吹出口とを支持させ、前記刈刃を茶畝長手方向に沿ってその上面を移動させ、茶枝葉の刈り取りを行い、この刈り取られた茶枝葉を吹出口からの背面風により適宜の収容位置へ移送するようにした茶刈作業を行う装置において、
前記刈刃と吹出口との設置位置は、両者の間に位置設定手段を介在させることにより、互いの設置位置を相対的に変更できるようにしたことを特徴とした茶刈装置。
【請求項2】
前記位置設定手段は、刈刃と、吹出口との前後方向の間隔を変更するものであることを特徴とする前記請求項1記載の茶刈装置。
【請求項3】
前記位置設定手段は、刈刃と、吹出口との上下方向の間隔を変更するものであることを特徴とする前記請求項1または2記載の茶刈装置。
【請求項4】
前記位置設定手段は、刈刃支持フレームを、吹出口の周囲における吹出ダクト部に固定する際の固定位置を変更して行うことを特徴とする前記請求項1、2または3記載の茶刈装置。
【請求項5】
前記固定位置の変更は、茶刈機体における刈刃支持フレームと、吹出ダクト部とのいずれか一方または双方において固定ボルトとの嵌め合い位置を変更して行うことを特徴とする前記請求項4記載の茶刈装置。
【請求項6】
前記固定ボルトの嵌め合い位置を変更する構造は、複数のボルト締付部と、長孔状のボルト締付部とのいずれか一方又は双方の構造を採ることを特徴とする前記請求項5記載の茶刈装置。
【請求項7】
前記刈刃は、刈刃支持フレームに刈刃体を支持させるとともに、刈刃の駆動部の一部であるエキセンボックスを一体に具え、このものがユニット化されて刈刃駆動モータと分断自在に形成されたカセット刃が適用されたものであることを特徴とする前記請求項1、2、3、4、5または6記載の茶刈装置。
【請求項8】
茶畝を跨いで走行する走行機体と、この走行機体に取り付けられ摘採作業または剪枝作業を実質的に行う茶刈機体と、この茶刈機体より上方に設けられ摘採した茶葉を収容可能とする収容部と、刈り取った茶葉や枝幹等の茶枝葉を茶刈装置体から収容部まで移送する移送装置とを具え、目的に応じて摘採または剪枝作業が行えるようにした装置であって、
前記装置は、請求項1、2、3、4、5、6または7記載の装置が適用されて成ることを特徴とする茶刈装置。
【請求項9】
前記茶刈機体は、刈り取り高さを適宜変更し得る複数基の刈刃を具えるとともに、移送装置も各刈刃に応じて複数基設けられ、一回の走行によって多段階の刈り取りが一挙に行えるようにしたことを特徴とする請求項8記載の茶刈装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2009−124944(P2009−124944A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−299593(P2007−299593)
【出願日】平成19年11月19日(2007.11.19)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 試験を行った日 平成19年10月11日 試験を行った場所 鹿児島県枕崎市別府127702
【出願人】(000104375)カワサキ機工株式会社 (30)
【Fターム(参考)】