説明

茸栽培用子実体生育ガイド体と、茸栽培用子実体生育ガイド体の乾燥方法

【課題】茸収穫後の茸栽培用子実体生育ガイド体を再利用する際の乾燥処理時に上下に隣接する茸栽培用子実体生育ガイド体どうしの密着を防止し、乾燥処理時間を大幅に短縮する。
【解決手段】シート体12により逆円錐台状の筒体に形成され、茸栽培用瓶の瓶口肩部に載置して瓶口上方を囲むことで子実体の生育形状を規制する茸栽培用子実体生育ガイド体10において、上方の茸栽培用子実体生育ガイド体10の下部が下方の茸栽培用子実体生育ガイド体10の筒口内に進入するようにして積み重ねられた際、上下の茸栽培用子実体生育ガイド体10間に隙間30が生じるように、茸栽培用子実体生育ガイド体10の外周に、下方の茸栽培用子実体生育ガイド体10の筒口上縁10Aに係止される舌片20が設けられていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は茸の人工栽培において、茸の子実体の生育期に栽培容器に取り付けて成育ガイド体として用いる茸栽培用子実体生育ガイド体と、茸栽培用子実体生育ガイド体の乾燥方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エノキ茸等の茸は、子実体の生育に伴って茸の下部から上部に向けて緩やかに拡径するいわゆる逆円錐台状となるのが好ましいとされている。このため、子実体の生育期においては、子実体が好ましい形状に生育するように、茸栽培用瓶の瓶口肩部にシート体を巻きつけて、逆円錐台状に形成された茸栽培用子実体生育ガイド体が装着されている。
近年では、繰り返しの利用が可能であってしかも安価な茸栽培用子実体生育ガイド体として、合成樹脂製のシート材により形成された茸栽培用子実体生育ガイド体が好適に用いられている。このような茸栽培用子実体生育ガイド体としては、例えば特許文献1や特許文献2において提案されているようなものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】公開実用昭和62−142237号公報
【特許文献2】特開2009−195225号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
合成樹脂製のシート材により形成された茸栽培用子実体生育ガイド体は、繰り返し使用することが可能である。茸栽培に使用した茸栽培用子実体生育ガイド体には水分が付着していることが多いため、茸栽培用子実体生育ガイド体に付着した水分を乾燥処理する必要がある。具体的には、茸収穫後の茸栽培用子実体生育ガイド体を高さ方向に積み重ねた状態にして日光を照射する乾燥処理や、乾燥機からの乾燥温風を吹き付ける乾燥処理等が施されている。
茸栽培用子実体生育ガイド体を高さ方向に積み重ねると、茸栽培用子実体生育ガイド体に付着している水分により上下に隣接する茸栽培用子実体生育ガイド体どうしが密着してしまい、乾燥処理に時間がかかってしまうという課題がある。
【0005】
また、茸の子実体が生育する際には、子実体から分泌液が分泌され、茸栽培用子実体生育ガイド体に茸の分泌液が付着していることが多い。上下に隣接する茸栽培用子実体生育ガイド体どうしが密着したままの状態で乾燥処理が施され、茸栽培用子実体生育ガイド体に付着していた分泌液が乾燥すると、茸栽培用子実体生育ガイド体どうしが密着したまま離れなくなってしまう。このような場合には乾燥処理を施したにもかかわらず、茸栽培用子実体生育ガイド体を水洗いする等して、密着した茸栽培用子実体生育ガイド体どうしを分離させるか、密着した茸栽培用子実体生育ガイド体は廃棄処分されてしまうという課題もある。
【0006】
これらのような茸栽培用子実体生育ガイド体の再利用時の乾燥処理に関する課題に対しては、使用後の茸栽培用子実体生育ガイド体を筒状の状態で乾燥処理するのではなく、一旦シート体の状態に戻してからシート体を吊り下げて乾燥処理をすることが可能な茸栽培用子実体生育ガイド体も提供されている。しかしながら、栽培工程に応じてシート体と筒体との間で形態の切り替えが可能な茸栽培用子実体生育ガイド体の場合、茸栽培用瓶の瓶口肩部に装着する都度、茸栽培用瓶を取り出して、茸栽培用子実体生育ガイド体を瓶口肩部に巻き付けてシート体の側端部どうしを係止手段により係止処理しなければならない。このように茸栽培用子実体生育ガイド体の乾燥処理や再利用性に重点をおくと、茸栽培用瓶の瓶口肩部への茸栽培用子実体生育ガイド体の装着作業に手間がかかり、作業能率が低下すると共に、作業者に対する肉体的負担も過大なものとなってしまう。
このように、茸栽培用子実体生育ガイド体の乾燥処理および再利用性に関する課題と、茸栽培用瓶の瓶口肩部への装着作業性に関する課題はトレードオフの関係にある。
【0007】
そこで本願発明は、茸を収穫した後の茸栽培用子実体生育ガイド体を再利用するにあたり、乾燥処理時に上下に隣接する茸栽培用子実体生育ガイド体どうしの密着を防止することで、乾燥処理時間を大幅に短縮すること、および、乾燥処理後における茸栽培用子実体生育ガイド体の廃棄処分のリスク低減が可能であると共に、茸栽培用瓶の瓶口肩部への装着作業性が良好な茸栽培用子実体生育ガイド体の提供と効率的な茸栽培用子実体生育ガイド体の乾燥方法の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、シート体により逆円錐台状の筒体に形成され、茸栽培用瓶の瓶口肩部に載置して瓶口上方を囲むことで子実体の生育形状を規制する茸栽培用子実体生育ガイド体において、上方の茸栽培用子実体生育ガイド体の下部が下方の茸栽培用子実体生育ガイド体の筒口内に進入するようにして積み重ねられた際、上下の茸栽培用子実体生育ガイド体間に隙間が生じるように、茸栽培用子実体生育ガイド体の外周に、下方の茸栽培用子実体生育ガイド体の筒口上縁に係止される舌片が設けられていることを特徴とする。
【0009】
また、前記シート体は、上端縁と下端縁が円弧状をなす帯状に形成されていて、前記シート体の側端縁部が重ねられた重合部において固着されることによって逆円錐台状に形成され、前記舌片は、前記シート体の一方の側端縁部から延出されて形成されていることを特徴とする。これにより、シート体を打ち抜き加工する際にあらかじめ舌片部分を形成しておくことができ、低コストで茸栽培用子実体生育ガイド体の製造が可能になる。
また、前記舌片は、前記筒体の外周の上端縁位置に配設されていることを特徴とする。これにより、茸栽培用子実体生育ガイド体を積み重ねた際における高さの増加を最小限に抑えることができる。
【0010】
また、前記舌片は、前記筒体の外周の複数箇所に配設されていることを特徴とする。
また、前記舌片は、前記筒体の外周の上端位置と下端位置のそれぞれに配設されていると更に好都合である。これらにより、上下に隣接する茸栽培用子実体生育ガイド体の隙間を、各茸栽培用子実体生育ガイド体における高さ方向全体に形成することができる。
【0011】
また、前記舌片の下縁には、前記下方の茸栽培用子実体生育ガイド体の筒口上縁に係止可能な係止部が形成されていることを特徴とする。これにより、下方の茸栽培用子実体生育ガイド体に対して、上方の茸栽培用子実体生育ガイド体の係止状態を一定状態に維持することができる。
【0012】
また、逆円錐台状の筒体の外周に舌片が設けられた茸栽培用子実体生育ガイド体の乾燥方法であって、上方の茸栽培用子実体生育ガイド体の下部を下方の茸栽培用子実体生育ガイド体の筒口内に進入させるようにして積み重ねる際に、前記上方の茸栽培用子実体生育ガイド体の舌片を、下方の茸栽培用子実体生育ガイド体の筒口上縁に係止し、上下の茸栽培用子実体生育ガイド体間に隙間を形成した状態で乾燥させることを特徴とする茸栽培用子実体生育ガイド体の乾燥方法の発明もある。
【発明の効果】
【0013】
本発明にかかる茸栽培用子実体生育ガイド体と、茸栽培用子実体生育ガイド体の乾燥方法を用いることで、茸栽培用子実体生育ガイド体の乾燥処理および再利用性に関する課題と、栽培容器への装着作業性に関する課題の両方を同時に解決することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】第1実施形態における茸栽培用子実体生育ガイド体のシート体を示す平面図である。
【図2】第1実施形態における茸栽培用子実体生育ガイド体を示す斜視図である。
【図3】図2の茸栽培用子実体生育ガイド体の運搬時における荷姿を示す斜視図である。
【図4】図2の茸栽培用子実体生育ガイド体を積み重ねた状態を示す斜視図である。
【図5】第2実施形態における茸栽培用子実体生育ガイド体を示す斜視図である。
【図6】第3実施形態における茸栽培用子実体生育ガイド体を示す斜視図である。
【図7】第4実施形態における茸栽培用子実体生育ガイド体の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明にかかる茸栽培用子実体生育ガイド体の実施形態について、図面に基づいて説明する。
【0016】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態における茸栽培用子実体生育ガイド体のシート体を示す平面図である。図2は、第1実施形態における茸栽培用子実体生育ガイド体を示す斜視図である。図3は、図2の茸栽培用子実体生育ガイド体の運搬時における荷姿を示す斜視図である。図4は、図2の茸栽培用子実体生育ガイド体を積み重ねた状態を示す斜視図である。
茸栽培用子実体生育ガイド体10は図1に示すように、扇形の中心部の一部が切り取られ、上端縁と下端縁が円弧状をなす湾曲帯状のシート体12に形成される。シート体12には、シート体12の厚さ方向に貫通する貫通孔14が複数形成されている。シート体12の材料としては、ポリプロピレンフィルム等の合成樹脂フィルムが好適に用いられる。
【0017】
シート体12の一方の側端縁18Aには、側端縁18Aの他の部分よりもシート体12の長手方向に延出する舌片20が配設されている。図1に示すように、舌片20は、湾曲帯状のシート体12の一方の側端縁18Aの外周側端部(逆円錐台状の筒体の外周面上端位置となる部位)に設けられている。舌片20はシート体12に一体形成されているので、シート体12と同程度の弾性を備えている。
舌片20の大きさは特に限定されるものではないが、作業者が手で容易につまむことができる程度の大きさに形成されていればよい。本実施形態における舌片20は、縦寸法が約20mm、横寸法が約15mmの大きさとした。このように、舌片20はわずかな大きさでよいため、シート体12に舌片20を配設する際における材料のロスはきわめてわずかで済む。このことから、従来技術における茸栽培用子実体生育ガイド体10のシート体12の製造コストに比較して、本実施形態にかかる茸栽培用子実体生育ガイド体10のシート体12の製造における残材の処理コストや使用材料の増加によるコストアップは無視できる程度である。
【0018】
図1に示すようなシート体12を形成した後、シート体12を長手方向に周回させ、舌片20が配設されている側端縁18Aを他の側端縁18Bの外側となるように側端縁18A,18Bどうしを所要幅寸法で重複させた重合部に形成して、この重合部を加熱圧着や超音波溶着等の公知の方法により固着させる。これにより図2に示すような逆円錐台状の筒体に形成された茸栽培用子実体生育ガイド体10を得ることができる。このようにして形成された茸栽培用子実体生育ガイド体10は、筒体の重合部において舌片20が外周面の接線方向に延伸した状態になっている。
【0019】
下方のキノコ栽培用子実体生育ガイド体10の筒口に、上方のキノコ栽培用子実体生育ガイド体10の下部を進入させた状態で積み重ねて集合体11を形成すれば、上方の茸栽培用子実体生育ガイド体10に形成された舌片20を下方の茸栽培用子実体生育ガイド体10の内周面によって押さえつけることができる。具体的には図3に示すように、従来における筒状体の茸栽培用子実体生育ガイド体10と同様に、高さ方向に積み重ねて集合体11を形成することができる。これにより集合体11において上下に隣接する茸栽培用子実体生育ガイド体10は、高さ方向における重複部分が多い状態で密着していることになり、工場からの出荷時や、運搬時においては、従来技術における茸栽培用子実体生育ガイド体10と同様に、集合体11の運搬容積を最小限に抑えることができる。
【0020】
茸栽培作業者は、図3に示す状態の集合体11から茸栽培用子実体生育ガイド体10を図2に示すように個別に分離し、茸栽培における抑制工程の後であり、子実体の生育工程の前に、図示しない茸栽培用瓶の瓶口肩部に茸栽培用子実体生育ガイド体10の下方側筒口を差し込むようにして装着することができる。これにより生育工程に入る茸栽培用瓶は瓶口上方の空間が所定空間に囲まれることになるから、生育工程における子実体の生育形状を所望の形状にすることができるのである。
【0021】
本実施形態にかかる茸栽培用子実体生育ガイド体10はあらかじめ逆円錐台状の筒体に形成されているので、作業者は水分の多い培地が充てんされた茸栽培用瓶を図示しない収納トレイから取り出して、茸栽培用子実体生育ガイド体10を巻き付けて、側端縁18A,18Bを係止した後に再度収納トレイに戻す作業が不要になる。このため、茸栽培用子実体生育ガイド体10を茸栽培用瓶の瓶口肩部に装着するための時間を大幅に短縮することができる。また、数百グラムの重量を有する培地入り茸栽培用瓶を持ち上げる必要がないため、作業者への肉体的負担を大幅に低減することもできる。
【0022】
子実体が十分に生育した後に、茸栽培用瓶から子実体(茸)と茸栽培用子実体生育ガイド体10を共に取り外す。子実体は茸栽培用子実体生育ガイド体10により、理想的形状とされる逆円錐台状に生育している。子実体と茸栽培用子実体生育ガイド体10を上下反対にすれば、茸栽培用子実体生育ガイド体10から子実体が滑り落ちて茸栽培用子実体生育ガイド体10と子実体とを分離させることは容易に行なうことができる。取り出された子実体は出荷される。
子実体から分離させた茸栽培用子実体生育ガイド体10は、生育工程において付着した水分や茸の分泌液を乾燥処理させた後に再利用される。
【0023】
子実体を収穫した後の茸栽培用子実体生育ガイド体10は、外周面に配設されている舌片20を筒体の径外方向に曲折させた状態にして高さ方向に積み重ねた集合体11の状態で乾燥処理される。図4には、茸栽培用子実体生育ガイド体10の乾燥処理時における集合体11の積み重ね状態が示されている。茸栽培用子実体生育ガイド体10の舌片20を径外方向に曲折させた状態で、茸栽培用子実体生育ガイド体10を高さ方向に積み重ねて集合体11を形成すると、上方の茸栽培用子実体生育ガイド体10の舌片20の下端部が下方の茸栽培用子実体生育ガイド体10の筒口上縁10Aに係止する。これにより上下に隣接する茸栽培用子実体生育ガイド体10の筒体部分の積み重なり深さが規制されることになる。茸栽培用子実体生育ガイド体10は逆円錐台状をなす筒体であるから、上下に隣接する茸栽培用子実体生育ガイド体10どうしの積み重なり深さが規制されれば、集合体11において下方の茸栽培用子実体生育ガイド体10の内周面と、上方の茸栽培用子実体成育ガイド体10の外周面との間に隙間30が形成されることになる。
【0024】
このような集合体11において上下に隣接する茸栽培用子実体生育ガイド体10,10間に形成された隙間30が貫通孔14と共に通気可能な部分となるため、従来技術(図3に示した状態)における乾燥処理に要する時間に対して大幅に短時間で茸栽培用子実体生育ガイド体10の乾燥処理を行なうことができる。
また、乾燥処理中は、集合体11において上下に隣接する茸栽培用子実体生育ガイド体10間には互いが常に離間する隙間30があるので、茸の分泌液が付着している場合であっても、上下に隣接する茸栽培用子実体生育ガイド体10どうしが完全に密着(接着)してしまうことがなく、廃棄対象となる茸栽培用子実体生育ガイド体10の量を大幅に削減することができる。
【0025】
乾燥処理させた後の茸栽培用子実体生育ガイド体10を再利用する際には、舌片20を筒体の外周面に沿わせた方向(工場出荷時の状態)に戻しても良いし、径外方向に曲折させたままの状態であっても良い。舌片20はシート体12と同じ材料により形成されているので柔軟性があるため、収納トレイに茸栽培用子実体生育ガイド体10を装着した茸栽培用瓶を収納した際に、隣り合う茸栽培用瓶に装着された茸栽培用子実体成育ガイド体10の舌片20どうしが接触した場合であっても、舌片20が適宜変形し、収納トレイ内における茸栽培用瓶の配列に不具合が生じることはない。
また、茸栽培用子実体生育ガイド体10を運搬する必要がある場合には、舌片20を茸栽培用子実体生育ガイド体10の筒体の外周面に沿わせるように曲折してから茸栽培用子実体生育ガイド体10の高さ方向に積み重ねて集合体11を形成すればよい。これにより図3に示すように茸栽培用子実体生育ガイド体10の集合体11を工場出荷時の荷姿と同じ状態にすることができるから、運搬効率が低下してしまうことはない。
【0026】
(第2実施形態)
図5は、第2実施形態における茸栽培用子実体生育ガイド体を示す斜視図である。
本実施形態においては、第1実施形態にかかる茸栽培用子実体生育ガイド体10と同じ構成については同じ番号を付すことにより詳細な説明を省略し、本実施形態における特徴的な部分についてのみ説明を行うことにする。
【0027】
第1実施形態においては、茸栽培用子実体生育ガイド体10を図4に示すようにして積み重ねて集合体11とした際に、集合体11の上下に隣接した茸栽培用子実体生育ガイド体10において、上方の茸栽培用子実体生育ガイド体10の上部側に配設された舌片20が下方の茸栽培用子実体生育ガイド体10の筒口上縁10Aに係止されてぶら下がった状態になっている。この状態においては、集合体11の上下に隣接する茸栽培用子実体生育ガイド体10間に形成された隙間30により、ほとんどの部分が互いに離反した状態になっているが、上方の茸栽培用子実体生育ガイド体10の外周面下部が、下方の茸栽培用子実体生育ガイド体10の内周面に密着してしまう場合がある。これにより、わずかながらも乾燥処理時間が長引いてしまうということや、集合体11から茸栽培用子実体生育ガイド体10を個別に分離させる際に、力が必要になるという軽微な不具合が予想される。
【0028】
上記の軽微な不具合を解決するために、本実施形態においては、シート体12の側端縁18Aの複数個所に舌片20,22を配設した茸栽培用子実体生育ガイド体10の構成を採用している。
図5に示すように、本実施形態にかかる茸栽培用子実体生育ガイド体10は、シート体12の側端縁18Aにおいて第1の実施形態と同じ位置に配設した舌片20に加え、側端縁18Aの下端部位置(茸栽培用子実体生育ガイド体10の筒体下部位置となる部位)に第2の舌片22を配設した点が特徴である。
第2の舌片22の大きさは特に限定されるものではないが、舌片20の大きさ以下であることが好ましい。また、第2の舌片22も茸栽培用子実体生育ガイド体10の筒体の外周面に沿った状態と筒体の径方向に伸びる状態との間で曲折自在に構成されている。
【0029】
第2の舌片22の使用方法は、第1実施形態で説明した舌片20の使用方法と同様にして行なうことができる。茸栽培用子実体生育ガイド体10の乾燥処理時に、第2の舌片22を径外方向に曲折させた状態で茸栽培用子実体生育ガイド体10を高さ方向に積み重ねて集合体11を形成すると、上方の茸栽培用子実体生育ガイド体10の外表面は、舌片20により下方の茸栽培用子実体生育ガイド体10の筒口上縁に係止されてぶら下がった状態になると共に、第2の舌片22が下方の茸栽培用子実体生育ガイド体10の内周面に対して突っ張った状態になる。これにより、上方の茸栽培用子実体生育ガイド体10の外周面と下方の茸栽培用子実体生育ガイド体10の内周面との間には高さ方向に連通する隙間部分が形成され、更に通気が良好になる点において好都合である。
【0030】
(第3実施形態)
図6は、第3の実施形態における茸栽培用子実体生育ガイド体を示す斜視図である。第3の実施形態は、第1の実施形態の変形例である。ここでも先に説明した実施形態と共通する部分については同じ符号を付している。
図6に示すように、本実施形態における茸栽培用子実体生育ガイド体10はシート体12の側端縁18Aの一箇所に舌片20を配設している点においては第1の実施形態と同様であるが、舌片20の配設位置を、茸栽培用子実体生育ガイド体10の筒体の高さ方向における中途位置にした点で構成を異にしている。
【0031】
このように舌片20を茸栽培用子実体生育ガイド体10の高さ方向の中途位置に配設することで、茸栽培用子実体生育ガイド体10を積み重ねる際の上下の茸栽培用子実体生育ガイド体10どうしの重複量を少なくすることができ、集合体11において上方の茸栽培用子実体生育ガイド体10の外周面と下方の茸栽培用子実体生育ガイド体10の内周面との隙間30が広がり、乾燥処理に要する時間を短縮させることができる。
この構成では、複数の舌片20,22を配設した茸栽培用子実体生育ガイド体10の使用状況に比較すると、乾燥処理時における茸栽培用子実体生育ガイド体10の積み重ね高さが高くなるものの、乾燥処理に要する時間については同程度以下にすることができる。
【0032】
(第4実施形態)
図7は、第4実施形態における茸栽培用子実体生育ガイド体の斜視図である。本実施形態にかかる茸栽培用子実体生育ガイド体10の舌片20は、舌片20の下端縁に係止部としての凹部20Aが形成されている点が特徴的である。この凹部20Aにより、茸栽培用子実体生育ガイド体10を積み重ねて集合体11を形成した際に、集合体11の上方の茸栽培用子実体生育ガイド体の舌片10の舌片20は凹部20Aの部分で下方の茸栽培用子実体生育ガイド体10の筒口上縁10Aに最初に係止された状態を維持することができる。このような舌片20の形態は、茸栽培用子実体生育ガイド体10の積み重ね数が増えた場合において、集合体11の下部における上下の茸栽培用子実体生育ガイド体10間の隙間10が茸栽培用子実体生育ガイド体10の自重によりつぶれてしまうことがない点で好都合である。
【0033】
以上に、複数の実施形態に基づいて本発明にかかる茸栽培用子実体生育ガイド体10について詳細に説明してきたが、本発明は以上に示した実施形態にのみ限定されるものではないのはもちろんであり、発明の要旨を変更しない範囲において各種改変を施したとしても本発明の技術的範囲に属する。例えば、第2実施形態においては、茸栽培用子実体生育ガイド体10の高さ方向の上端位置と下端位置に舌片20,22を配設した形態について説明しているが、舌片20,22の配設位置は、茸栽培用子実体生育ガイド体10の外周面上において高さ方向のいずれの位置に配設してもよいし、舌片20,22の配設個数も2つだけでなく3つ以上配設することもできる。
【0034】
また、舌片20,22は、シート体12の側端縁18Aにシート体12と一体形成した形態について説明しているが、舌片20,22は、シート体12の側端縁18A以外の部分に配設してもよい。
また、シート体12と別体に形成した舌片20,22をシート体12や逆円錐台状の筒体に形成した茸栽培用子実体生育ガイド体10に後付した形態としても良い。
さらに、舌片20,22はシート材と異なる材料により形成されていてもよい。要は、茸栽培用子実体生育ガイド体10の筒体の外周面に茸栽培用子実体生育ガイド体10の外周面に沿った方向と径に沿った方向(径外方向)との間で曲折自在な舌片20が少なくとも一箇所に配設されていれば、本発明にかかる茸栽培用子実体生育ガイド体10とすることができる。
【0035】
また、以上の実施形態においては、いずれもシート体12にシートの厚さ方向に貫通する円形の貫通孔14を形成した実施形態について説明しているが、貫通孔14の形状は円形形状に限定されるものではない。子実体の生育工程時において茸栽培用子実体生育ガイド体10の外部と内部とを連通させることができるような通気孔となる部分が形成されていればいかなる形状のものであっても良いのである。
さらには、シート体12の材料に通気性や透湿性がある場合には、貫通孔14の配設を省略することができる。
【0036】
さらに以上の実施形態においては、茸栽培用子実体生育ガイド体10は逆円錐台状をなす筒体にあらかじめ形成されている実施形態について説明しているが、これに限定されるものでもない。最初の使用時のみに培地が充てんされた茸栽培用瓶の瓶口肩部に茸栽培の作業者がシート体12を巻き付けて茸栽培用子実体生育ガイド体10とし、2回目以降の使用時には逆円錐台状をなす筒体の状態で使用するような形態であっても良い。このような使用形態を実現するためには、以上の実施形態におけるシート体12の側端縁18A,18Bに面ファスナー等のワンタッチで係止することができる繰り返し使用が可能な係止手段を配設しておけばよい。
【0037】
このような係止手段を配設することにより、茸栽培用子実体生育ガイド体10の工場出荷時や運搬時においてはシート状にすることで容積を大幅に削減することができ、茸栽培用子実体生育ガイド体10の運搬コストを大幅に低減することができる。
また、これと同時に、茸栽培用子実体生育ガイド体10を所要回数茸栽培に使用した後には、係止手段の係止状態を解除して茸栽培用子実体生育ガイド体10を逆円錐台状の筒体からシート体12にして洗浄処理することで、茸栽培用子実体生育ガイド体に付着した茸の分泌液等を除去することができ、茸栽培用子実体生育ガイド体10の製品寿命を延ばすことができる点で好都合である。
【0038】
また、以上に説明した構成を適宜組み合わせた形態についても本願発明の技術的範囲に属することはもちろんである。
【符号の説明】
【0039】
10 茸栽培用子実体生育ガイド体
10A 筒口上縁
11 集合体
12 シート体
14 貫通孔
18A,18B 側端縁
20,22 舌片
20A 凹部
30 隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート体により逆円錐台状の筒体に形成され、茸栽培用瓶の瓶口肩部に載置して瓶口上方を囲むことで子実体の生育形状を規制する茸栽培用子実体生育ガイド体において、
上方の茸栽培用子実体生育ガイド体の下部が下方の茸栽培用子実体生育ガイド体の筒口内に進入するようにして積み重ねられた際、上下の茸栽培用子実体生育ガイド体間に隙間が生じるように、茸栽培用子実体生育ガイド体の外周に、下方の茸栽培用子実体生育ガイド体の筒口上縁に係止される舌片が設けられていることを特徴とする茸栽培用子実体生育ガイド体。
【請求項2】
前記シート体は、上端縁と下端縁が円弧状をなす帯状に形成されていて、前記シート体の側端縁部が重ねられた重合部において固着されることによって逆円錐台状に形成され、
前記舌片は、前記シート体の一方の側端縁部から延出されて形成されていることを特徴とする請求項1記載の茸栽培用子実体生育ガイド体。
【請求項3】
前記舌片は、前記筒体の外周の上端縁位置に配設されていることを特徴とする請求項1または2記載の茸栽培用子実体生育ガイド体。
【請求項4】
前記舌片は、前記筒体の外周の複数箇所に配設されていることを特徴とする請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の茸栽培用子実体生育ガイド体。
【請求項5】
前記舌片は、前記筒体の外周の上端位置と下端位置のそれぞれに配設されていることを特徴とする請求項4記載の茸栽培用子実体生育ガイド体。
【請求項6】
前記舌片の下縁には、前記下方の茸栽培用子実体生育ガイド体の筒口上縁に係止可能な係止部が形成されていることを特徴とする請求項1〜5のうちのいずれか一項に記載の茸栽培用子実体生育ガイド体。
【請求項7】
逆円錐台状の筒体の外周に舌片が設けられた茸栽培用子実体生育ガイド体の乾燥方法であって、
上方の茸栽培用子実体生育ガイド体の下部を下方の茸栽培用子実体生育ガイド体の筒口内に進入させるようにして積み重ねる際に、前記上方の茸栽培用子実体生育ガイド体の舌片を、下方の茸栽培用子実体生育ガイド体の筒口上縁に係止し、上下の茸栽培用子実体生育ガイド体間に隙間を形成した状態で乾燥させることを特徴とする茸栽培用子実体生育ガイド体の乾燥方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−110302(P2012−110302A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−264255(P2010−264255)
【出願日】平成22年11月26日(2010.11.26)
【出願人】(394001906)
【出願人】(501205599)
【Fターム(参考)】