茸類栽培用ハウス及びその施工方法
【課題】柱となるパイプの下端がコンクリートで固まるまでの期間を待たず、短期間でハウスを建造することができる茸類栽培用ハウス及びその施工方法を提供する。
【解決手段】茸類栽培用ハウス10は、複数本のアーチ状パイプ18にシート部材28を被せると共に、このシート部材28の内側に断熱材(断熱部材26)を設け、内部を茸栽培のための所定の環境に管理する。パイプ18の両端部は所定寸法地面70に差し込んで固定されている。ハウス10内部にコンクリート床64が形成されている。
【解決手段】茸類栽培用ハウス10は、複数本のアーチ状パイプ18にシート部材28を被せると共に、このシート部材28の内側に断熱材(断熱部材26)を設け、内部を茸栽培のための所定の環境に管理する。パイプ18の両端部は所定寸法地面70に差し込んで固定されている。ハウス10内部にコンクリート床64が形成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遮光されたハウス内で茸類の人工栽培を行う茸類栽培用ハウス及びその施工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、茸類栽培用ハウスは、外気温度が低い冬季や外気温度が高い夏季などにおいても一年中茸類の栽培ができるように、所定の間隔でアーチ状に設けたパイプの周囲をビニールなどからなる遮光性シートで囲繞して安価に建造していた。係る茸類栽培用ハウスは、遮光性シートの内側に断熱材を設けて大型大容量の簡易断熱ビニールハウスを構成していた。そして、冷暖房装置や加湿装置などを用いてハウス内を茸類の好適な栽培環境に管理して、略一年中茸類の栽培が行えるようにしていた(特許文献1参照)。
【0003】
このような、茸類栽培用ハウス内で茸類の培養基材料作りから種菌の接種、培養、芽出し、生育、収穫、梱包、出荷等の作業が行われるため、茸類栽培用ハウスは奥行き約30m、幅約8m程度の大きなものであった。このため、ハウスの建造には大きな面積が必要となり、一般的に畑や山などの平地に建造されていた。そして、ハウスの柱となるパイプの下端を所定寸法コンクリートで固めて固定していた。これにより、ハウスの強度アップを図り、風や嵐などで破損してしまうのを防止していた。また、ハウス内は平地を固めた状態で使用されていた。
【0004】
【特許文献1】特開平10−66444号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ハウスの強度アップを図るため、柱となるパイプの下端をコンクリートで固めていたので、ハウスの完成はパイプの下端がコンクリートで固められて固定される迄の期間を待ってから、ハウスの次の建造作業を行わなければならなかった。このため、ハウスを完成させるまでの工期が長期化してしまうという問題があった。
【0006】
本発明は、係る従来技術の課題を解決するために成されたものであり、柱となるパイプの下端がコンクリートで固まるまでの期間を待たず、短期間でハウスを建造することができる茸類栽培用ハウス及びその施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
即ち、本発明の茸類栽培用ハウスは、複数本のアーチ状パイプにシート部材を被せると共に、このシート部材の内側に断熱材を設け、内部を茸栽培のための所定の環境に管理するものであって、パイプの両端部は、所定寸法地面に差し込んで固定されていると共に、内部にコンクリート床が形成されていることを特徴とする。
【0008】
また、請求項2の茸類栽培用ハウスの施工方法は、複数本のアーチ状パイプにシート部材を被せると共に、このシート部材の内側に断熱材を設け、内部を茸栽培のための所定の環境に管理するものであって、パイプの両端部を所定寸法地面に差し込んで固定すると共に、内部にコンクリート床を形成することを特徴とする。
【0009】
また、請求項3の茸類栽培用ハウスの施工方法は、請求項2において、硬質ウレタン或いは発泡合成ゴム等をシート部材の内側に噴き付け、所定の厚さにフリー発泡させることにより、断熱材を設けることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、パイプの両端部は、所定寸法地面に差し込んで固定されているので、例えば、従来のようにパイプの下端をコンクリートで固めて固定しなくてもハウスの強度アップを図ることができるようになる。これにより、ハウスが風や嵐などで破損してしまうなどの不都合を確実に防止することが可能となる。また、パイプを所定寸法地面に差し込んでいるだけなので、従来のようにパイプの下端がコンクリートで固められて固定される迄の期間待たなくても、ハウスの次の建造作業を行うことが可能となる。従って、茸類栽培用ハウスが完成するまでの工期を大幅に短縮することができ便利である。
【0011】
また、ハウス内部にコンクリート床を形成しているので、例えば、作業者の移動や、茸類栽培用の棚の移動が極めて容易となる。これにより、ハウス内での作業効率を大幅に向上することが可能となる。この場合、棚の下にキャスターを設ければ、棚を1人でも容易に移動することができて、茸類栽培用ハウスの利便性を大幅に向上することができるようになる。
【0012】
特に、パイプの下端をコンクリートで固定せずに、所定寸法地面に差し込んでいるだけなので、ハウスの耐用年数終了後やハウスを使用せずハウスを解体する時には、地面からパイプを容易に抜くことができる。従って、ハウスの建造、及び、解体作業効率を極めて向上させることができるようになり、便利である。
【0013】
また、請求項2の発明によれば、パイプの両端部を所定寸法地面に差し込んで固定するので、従来のように、コンクリートでパイプの下端を固めなくても、ハウスを簡単に建造することができる。これにより、ハウス建造の作業性を大幅に向上することが可能となる。従って、茸類栽培用ハウスの建造を極めて短期間で行え便利である。
【0014】
また、請求項3の発明によれば、請求項2において、硬質ウレタン或いは発泡合成ゴム等をシート部材の内側に噴き付け、所定の厚さにフリー発泡させることにより、断熱材を設けているので、シートとパイプとに断熱材を固着させることができ、然も、ハウス全体の断熱を行うことが可能となる。これにより、ハウスの天壁や側壁を強固に形成することが可能となる。従って、高断熱、且つ、強固のハウスを建造することができ、茸類栽培用ハウスの更なる利便性を図ることができるようになるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明は、柱となるパイプの下端をコンクリートで固めるという面倒な作業を無くすことを特徴とする。パイプの下端をコンクリートで固めるという面倒な作業を無くすという目的を、パイプの両端部を所定寸法地面に差し込むだけの簡単な作業で実現した。
【実施例1】
【0016】
次に、図面に基づき本発明の実施例を詳述する。図1は本発明の一実施例を示す茸類栽培用ハウス10の斜視図、図2は同図1の茸類栽培用ハウス10の縦断側面図、図3は同図1の茸類栽培用ハウス10の要部を示す図をそれぞれ示している。
【0017】
茸類栽培用ハウス10の室内36には複数の棚50が設置されると共に、これらの棚20の上で例えば茸類の培養、芽出し、生育、収穫等の作業が行われる。ハウス10は、図1に示すように縦長矩形状に形成され、外側がビニール或いはポリエステルなどのシート部材28で覆われた所謂ビニールハウスにて構成されている。このハウス10は、ハウス10の骨格となる複数のパイプ18と、このパイプ18を固定する長尺の梁22(図2に図示)と、パイプ18の外側を覆うシート部材28と、このシート部材28の内側(室内36側)に設けられた断熱部材26とから構成されている。
【0018】
該パイプ18は、金属製のパイプが複数本接続されてアーチ状に形成され、このアーチ状のパイプ18がハウス10の長手方向に所定の間隔で複数配置されている。そして、このパイプ18の両端が、地面70に約300mm〜600mm差し込まれることにより、パイプ18は地面70に強固に固定されている(図3に図示)。即ち、ハウス10の大きさが例えば幅約7.2m、高さ約3.5mの場合、パイプ18の両端を約300mm〜600mm地面70に差し込んでいる。これにより、ハウス10が風や嵐などによって破損してしまうなどの不都合を防止している。
【0019】
また、ハウス10は、アーチ状に形成されたパイプ18と、梁22と、筋交24とが図示しないネジ、或いは、溶接などによって固定されることにより強固に構成されている。該梁22及び筋交24は、ハウス10の長手方向に略1.8m間隔で設けられている。尚、パイプ18は、野菜類の栽培等を行うビニールハウス、或いは外側を防水シート等で覆った建物(所定の品物を入れて保管する倉庫、或いは車庫等)等に一般的に使用される直径約22mmの金属製パイプにて構成されている。
【0020】
また、所定の間隔で複数本設置されたパイプ18には、補強パイプ20が設けられており、この補強パイプ20は、パイプ18より強度が強い直径約40mmの金属製パイプにて構成されている。この補強パイプ20は、パイプ18複数本に対して1本設けられると共に、パイプ18と所定の間隔を存してハウス10内側(室内36側)に設けられている。即ち、補強パイプ20は、例えばパイプ18が5本の間隔で1本設けられている。これにより、ハウス10の強度アップが図られている。
【0021】
このように、パイプ18(補強パイプ20を含む)を所定寸法地面70に差し込んで、ハウス10の骨格を建造することにより、従来のようにパイプ18の下端をコンクリートで固めて固定しなくてもハウス10の強度アップを図ることができる。これにより、ハウス10が風や嵐などで破損してしまうなどの不都合を確実に防止することができる。また、パイプ18(補強パイプ20を含む)を所定寸法地面70に差し込んでいるだけなので、従来のようにパイプ18の下端がコンクリートで固められて固定される迄の期間を待たなくても、ハウス10の次の建造作業を行うことができる。これにより、茸類栽培用ハウス10が完成するまでの工期を大幅に短縮することができ便利である。
【0022】
また、ハウス10室内36の床面となる箇所には、予め砕石65が平らに固められ更にその上面にコンクリート床64が略平面に敷設されている。コンクリート床64は内部にワイヤーメッシュ66が設けられ、これによってコンクリート床64の強度アップが図られている。尚、地面70に差し込んだパイプ18(補強パイプ20を含む)はコンクリート床64では固定していない。
【0023】
このように、ハウス10室内36にコンクリート床64を平面に設けることにより、棚50(図2に図示)の移動を行い易くしている。この場合、例えば棚50の下にキャスター(図示せず)を設ければ、棚50を1人でも容易に移動することができ極めて便利である。これにより、ハウス10室内36での作業効率を大幅に向上することができるようになる。
【0024】
また、シート部材28は、所定の厚さのビニール、ポリエステル或いは合成樹脂、天然繊維などからなる遮光性の防水シートにて構成されている。該シート部材28は、少なくとも一枚或いは複数枚が、熱融着或いは接着剤にて接続されて所定の大きさに構成されると共に、所定の間隔で設けられたパイプ18の外側を囲繞している。これにより、ハウス10室内36に風雨が浸入してしまうのを防止して、茸類の栽培に悪影響を与えないようになっている。
【0025】
また、断熱部材26は、前記シート部材28の内側全面に設けられると共に、約+40mm〜+150mmの厚さに形成されている。この場合、シート部材28の内側全体に断熱部材26として、発泡合成ゴム、又は、ウレタンを吹き付け、或いは、硬質ウレタン等からなる断熱材を設けることにより、確実にハウス10の室内36と室外との断熱を行っている。
【0026】
一方、図4に示すようにハウス10室内36には仕切壁38が設けられており、この仕切壁38は室内36を所定位置で仕切っている。そして、仕切壁38で仕切られた室内36の一方に機械室42、他方に茸類を生育するための生育室40を設けている。この機械室42には、冷房装置44や暖房装置46、或いは、ボイラー49や加圧ポンプ48などが設けられている。尚、47は制御装置で、冷房装置44、暖房装置46など制御して茸類栽培用ハウス10の室内36を所定の栽培環境に管理する。
【0027】
また、生育室40内には暖房用の温風ダクト56及び冷房用の冷風ダクト57が配設されると共に、加湿用の噴霧パイプ58などが配設されている。そして、冷風ダクト57は図5に示すように棚50の上方に配設されると共に、温風ダクト56は図6、図7に示すように各棚50の下部に配設されている。これらの暖冷風ダクト56、57は、暖房時には温められた空気を温風ダクト56から排出して冷風ダクト57から回収すると共に、冷房時には冷やされた空気を冷風ダクト57から排出して温風ダクト56から回収するようになっている。尚、図5、図6では冷風ダクト57を、各棚50上に直交して図示しているが、冷風ダクト57は実際には図7に示すように各棚50の上方に位置して各棚50の延在方向に配設されている。
【0028】
両暖冷風ダクト56、57は、ダンパー(図示せず)を介して機械室42内の冷房装置44及び暖房装置46に接続されている。両暖冷風ダクト56、57は、直径約100mm〜320mmの円筒形に形成され、生育室40内の所定位置に配設可能なアルミフレキ製、アルミニウム及び鉄板等のスパイラル製、或いは、ビニールフィルム製等にて構成されている。そして、両暖冷風ダクト56、57にはそれぞれ長手方向に所定の間隔で空気孔55が設けられている。これらの空気孔55は両暖冷風ダクト56、57の両側面を貫通して設けられると共に、水平より小許下方に向けて設けられている。該両暖冷風ダクト56、57に設けた空気孔55は、冷暖房用の空気を吹き出すと共に、吸い込めるようになっている。
【0029】
前記棚50には、茸類の種菌の培養や生育などを行うための紙、或いは、合成樹脂などの容器54を載置するための棚板52が所定の間隔を存して複数段(実施例では7段)設けられている。最下段の棚板52下方は、床面と所定寸法の隙間(この場合、複数段設けた棚板52と棚板52との隙間と略同等の隙間)を有している。そして、図7、図8に示すように前記温風ダクト56は、保持部材59にて最下段の棚板52に保持される。また、図9に示すように棚板52の上面には、茸類の生育に必要な豊富な栄養分を含んだオガクズ、フスマ、コーン、ブラン等多数の材料が混合された培地、及び、種菌などが入れられた容器54が載置される。
【0030】
そして、暖房装置46にて所定温度に温められた暖かい空気は、温風ダクト56の空気孔55から各棚50の下方に吹き出される(図8矢印)。各棚50の下方に吹き出された暖かい空気は、棚50及び棚50近傍を温めながら上昇し、上方に設けられた冷風ダクト57の空気孔55から吸い込まれる(図5)。冷風ダクト57に吸い込まれた空気は、暖房装置46に流入して再び温められ、各棚50下方の温風ダクト56の空気孔55より各棚50下方に吹き出されこれが繰り返される。これによって、各棚50の上段、及び下段近傍の温度差を殆ど同じ温度に維持することが可能となる。従って、各棚50の上段と下段の茸の生育が異なる等と言った不都合を防止することができる。尚、冷風ダクト57を床面近傍に設け、この冷風ダクト57によって床面近傍に淀んでいる冷気を回収するようにしても良い。これにより、更に好適に各棚50の上段、及び下段近傍の温度差を殆ど同じ温度に維持することが可能となる。また、冷風ダクト57は暖房時の空気の回収のみ使用している。
【0031】
また、冷房装置44にて所定の温度に冷やされた冷たい空気は、図6に矢印で示すように冷風ダクト57の空気孔55から各棚50の上方に吹き出される。各棚50の上方に吹き出された冷たい空気は、棚50及び棚50近傍を冷やしながら下降し、下方に設けられた温風ダクト56の空気孔55から吸い込まれる。温風ダクト56に吸い込まれた空気は、冷房装置44に流入して再び冷やされ、各棚50上方の冷風ダクト57より各棚50上方に吹き出される。これによって、各棚50の上段、及び下段近傍の温度差を殆ど同じ温度に維持することが可能となる。従って、各棚50の上段と下段の茸の生育が異なる等と言った不都合を防止することができる。尚、温風ダクト56を室内36上方に設け、この温風ダクト56によって室内36上方に淀んでいる暖気を回収するようにしても良い。これにより、更に好適に各棚50の上段、及び下段近傍の温度差を殆ど同じ温度に維持することが可能となる。また、温風ダクト56は冷房時の空気の回収のみ使用している。
【0032】
また、前記噴霧パイプ58は、霧或いは小粒子状の水を噴き出して生育室40内を所定の湿度に加湿するもので、鉄、鋼等の金属管或いは塩化ビニール管等にて構成されている。噴霧パイプ58の一方は機械室42に設けられた加圧ポンプ48に接続され、他方は生育室40内の長手方向に複数本配設されている。この噴霧パイプ58には所定の間隔で噴霧ノズル(図示せず)が取り付けられており、この噴霧ノズルより所定量の霧或いは小粒子状の水が噴霧されて、生育室40内は茸類の生育に好適な湿度に加湿される。尚、16は断熱材などにて構成されたドアである。
【0033】
他方、従来では一年中を通してハウス10内で茸類の栽培を好適に行うため、ハウス10室内36に電球を点灯していたので電力使用料金が高額になってしまう。そこで、本実施例の茸類栽培用ハウス10の室内36に、外部の自然光を取り入れるための採光用の窓30(図1)を設けている。茸類栽培用ハウス10は、側面に設けられた側壁14と、この側壁14の上側に設けられた天壁12とから構成されており、この側壁14に複数の窓30が設けられている。
【0034】
該窓30は、側壁14を貫通して室内36と室外とを連通して設けられている。また、窓30の両面(室内36側と室外側)には所定の厚さの透明ビニールシート、透明ポリエステルシート、透明合成樹脂板、透明ガラス板などの透光性部材34が設けられている。窓30の両面は、これらの透光性部材34によって密閉され、その間に空気層が形成されている。この空気層により側壁14の断熱効果を維持しつつ、窓30からハウス10外部の自然光を室内36に取り入れられるようになっている。
【0035】
このように、ハウス10の側壁14に採光用の窓30を設け、この窓30の両面を透光性部材34にて閉塞して空気層を設けているので、窓30の断熱効果を大幅に向上することができる。これにより、窓30及び側壁14の断熱効果を維持して室内36を茸類の好適な栽培環境に管理しつつ、窓30から室内36に自然光を取り入れることができる。従って、従来のようにハウス10室内36で電球を点灯させる必要もなくなるので、電力使用料金を大幅に節約することができるようになり便利である。
【0036】
特に、窓30から室内36に外の自然光を取り入れられるようにしているので、自然環境で生育した茸類の如き茎が短く自然な色の茸類を栽培することが可能となる。これにより、茸類が色白や茎長になってしまうなどの不都合を確実に防止することができるので、消費者に好まれる茎が短く自然な色の茸類を、一年を通じ安定して栽培することが可能となる。
【0037】
また、本発明の茸類栽培用ハウス10では、窓30を多重構造(実施例では二重構造)に構成している(図3に図示)。即ち、窓30を厚さ方向(この場合、室内36と室外方向)の略中間に透光性部材34を設けて空気層を2分割して、二つの区画室32を設けている。即ち、窓30の両面に設けた透光性部材34の略中間に透光性部材34を一枚設けて、窓30内を厚さ方向に2分割している。これにより、透光性部材34を境に、窓30には室内36側と外側にそれぞれ区画室32を形成している。これにより、窓30内に区画室32による空気層を複数形成することができる。
【0038】
このように、窓30に複数の空気層を形成することにより、窓30の断熱効果を大幅に向上させることができる。これにより、ハウス10室内36の冷暖房効果を極めて向上させることが可能になるので、窓30の結露防止、及び、電力使用料金などを大幅に低減させることができる。尚、空気層を複数設けることにより断熱効果が向上する技術については、従来より周知の技術であるため詳細な説明を省略する。
【実施例2】
【0039】
次に、図10は本発明の一実施例を示す茸類栽培用ハウス10を示している。本実施例における茸類栽培用ハウス10は、前述の実施例1と略同じ構成を有している。以下、異なる部分について説明する。尚、前述の実施例と同じ部分にはこれと同じ符号を付し、説明を省略する。即ち、ハウス10内の各棚50の下側には金属製のパイプにて構成された温水配管62が配設されている。この温水配管62は、各棚50の幅方向に所定の間隔を存して配設されると共に、保持部材59保持されて、棚50の最下段の棚板52下側に固定されている。
【0040】
そして、温水配管62は、図10、図11に示すように棚50の幅方向一側から奥行き方向一側を他側まで延在し、そこで折れ曲がって奥行き方向他側まで延在し、そこで更に折れ曲がって幅方向一側まで戻るU字状に形成されている。この温水配管62の一方は、ボイラー49から機械室42の離間側まで延在して設けられた温水供給管60に接続されると共に、温水配管62の他方は、ボイラー49から機械室42の離間側まで延在して設けられた温水回収管61に接続されている。
【0041】
そして、加圧ポンプ48が運転され、ボイラー49で加熱された温水が温水供給管60から各棚50下の温水配管62に供給されることにより、温水配管62内の温水とその周囲の空気とが熱交換する。これによって、各棚50下の空気は所定の温度に温められる。熱交換して放熱した温水は冷却して温水回収管61内をボイラー49まで帰還し、そこで再度加熱されて温水供給管60に流出する循環を繰り返す。
【0042】
そして、温水配管62の放熱により各棚50下の空気が所定の温度に温められると、その空気は上昇して棚50全体を包むように上昇していく。温められた空気は上昇する過程で棚50に載置された茸類と熱交換して徐々に冷やされ、最終的に室内36の空気と略同じ温度になる。これにより、予めハウス10内に設けられた暖房装置以外に、棚50全体を下方から温めることが可能となる。従って、各棚50の上下の温度差を小さくすることができ、ハウス10室内36で栽培している茸類が、同一棚50の上下で成長が著しく異なってしまうなどの不都合を未然に防止することが可能となる。また、各棚50下の暖かい空気が上昇する際、棚50の上方の空気と下方の空気が対流をする。これによって、各棚50上の容器54で栽培している茸類に空気(酸素)を供給することが可能となる。従って、茸類の成長を大幅に促進することができるようになり、茸類の大幅な増収を図ることができるようになる。
【0043】
また、コンクリートを平面に設けてコンクリート床64としている茸類栽培用ハウス10では、外気が冷たい冬季などでは、特に床面となるコンクリート床64が冷えてハウス10室内36上下の温度差が大きくなってしまう。しかし、各棚50下に設けた温水配管62によって、下方から棚50を温めているので、外気温度が低下した場合でもハウス10室内36の下方と上方との温度差が大きくならず、棚50の上下を均一の温度に管理することができる。従って、茸類栽培用ハウス10の暖房費用を大幅に節約することができるようになる。
【0044】
また、各棚50に設けた一方の温水配管62の端部に温水供給管60を接続し、他方の端部に温水回収管61を接続し、ボイラー49で加熱した温水を温水供給管60に流入させている。これにより、どの棚50の温水配管62にも略同じ温度の温水を供給することが可能となる。従って、何れの棚50も同一温度で温めることができるので、各茸栽培棚50で栽培する茸類を均一に成長させることができ、茸類栽培用ハウス10の利便性を大幅に向上させることができる。尚、温水配管62の代わりに電気ヒータ(図示せず)を用いても差し支えない。この場合、電気ヒータは図示しない制御装置にて容易に温度制御することができる。これにより、温水配管62より更に棚50上下の温度を好適に管理することができ便利である。
【実施例3】
【0045】
次に、図12は本発明の一実施例を示す茸類栽培用ハウス10の平断面図を示している。本実施例における茸類栽培用ハウス10は、前述の実施例1と略同じ構成を有している。以下、異なる部分について説明する。尚、前述の実施例と同じ部分にはこれと同じ符号を付し、説明を省略する。即ち、茸類栽培用ハウス10は、図12に示すように、冷房装置44に接続された冷水配管63を室内36に延在して設けている。
【0046】
この冷水配管63は、図13に示すように各棚50上方に配設されると共に、この冷水配管63の一方は冷房装置44から機械室42の離間側まで延在して設けられた冷水供給管72に接続され、他方は冷房装置44から機械室42の離間側まで延在して設けられた冷水回収管74に接続されている。冷水配管63(冷水供給管72及び冷水回収管74を含む)には凍結、或いは、沸騰しない不凍液などの熱媒体(本発明の冷水に相当)が封入されると共に、ポンプ(図示せず)が設けられており、このポンプによって冷水配管63内の熱媒体が循環するように構成されている。尚、冷水配管63には、図示しないが多数の放熱フィンが設けられており、このフィンから冷水配管63内を流通する熱媒体の冷気が放出されるようになっている。また、冷房装置44の冷媒を冷水配管63内に流通させて、そこで蒸発させて冷却作用を発揮するようにしても差し支えない。
【0047】
そして、ポンプが運転され、冷房装置44で冷却された熱媒体が冷水供給管72から各棚50上の冷水配管63に供給されることにより、冷水配管63内の熱媒体とその周囲の空気とが熱交換する。これによって、各棚50上方の空気は所定の温度に冷却される。この場合、各棚50上の空気は棚50全体を包むように下降していき、各棚50を所定の温度に冷やすことができる。これにより、各棚50だけを効率的に冷やすことができて便利である。そして、熱交換して放熱した熱媒体は温められて冷水回収管74内を冷房装置44まで帰還し、そこで再度冷却されて冷水供給管72に流出する循環を繰り返す。また、各棚50上の冷やされた空気が下降する際、棚50の下方の空気と上方の空気が対流をする。これによって、各棚50上の容器54で栽培している茸類に空気(酸素)を供給することが可能となる。従って、茸類の成長を大幅に促進することができるようになり、茸類の大幅な増収を図ることができるようになる。
【0048】
このように、各棚50上部に冷水配管63を設けているので、ハウス10内を茸類の栽培に適した所定の環境に管理するための冷房装置44にて冷却された冷水を、各棚50の上部に設けた冷水配管63に供給することができる。これにより、各棚50上方を同一温度の冷水で冷やすことができ、各棚50上方を冷やした後の冷水を冷水回収管74から冷房装置44に帰還させることができる。従って、ハウス10内に設置した各棚50の上方と下方とを略同一温度で好適に冷やすことができるので、外気が暖かい夏季などにおいても、各棚50の下方と上方との温度差を略均一に管理することができるようになる。
【実施例4】
【0049】
次に、図14は本発明の一実施例を示す茸類栽培用ハウス10を示している。本実施例における茸類栽培用ハウス10は、前述の実施例1と略同じ構成を有している。以下、異なる部分について説明する。尚、前述の実施例と同じ部分にはこれと同じ符号を付し、説明を省略する。図14は、本発明の他の一実施例の茸類栽培用ハウス10の斜視図である。即ち、茸類栽培用ハウス10は、図14に示すように側壁14に略接する天壁12に外部の自然光を室内36に採光するための複数の窓30を設けている。
【0050】
詳しくは、図15、図16に示すように実施例4では実施例1で側壁14に設けた窓30を天壁12設けている。他実施例1と同等に構成されている。これにより、実施例1同様各茸栽培棚50の上下で栽培する茸類を均一に成長させることができ、茸類栽培用ハウス10の利便性を大幅に向上させることができる。
【実施例5】
【0051】
次に、図17は本発明の一実施例を示す茸類栽培用ハウス10を示している。本実施例における茸類栽培用ハウス10は、図17に示すように基礎80上に所定の間隔(この場合約900mm間隔)で柱82が設けられ、隣接する柱82間にカラートタン(不透明トタン)、或いは、ベニヤ板などの外パネル84を設けた所謂プレハブハウスにて構成されている。即ち、ハウス10は、前述の実施例1のビニールハウス10をプレハブハウスに変えただけで、他は前述の実施例1と略同じ構成を有している。以下、異なる部分について説明する。尚、前述の実施例1と同じ部分にはこれと同じ符号を付し、説明を省略する。
【0052】
実施例5のハウス10は、実施例1のハウス10同様縦長矩形状に形成され、上部には屋根86が設けられている。ハウス10は、図17に示すように、外パネル84の室内36側及び屋根86の裏面側には、実施例1で説明したビニールハウス10の如き所定の厚さの発泡合成ゴム、又は、ウレタンを吹き付け、或いは、硬質ウレタン等の断熱部材26が設けられている(屋根86部分は図示せず)。断熱部材26の内側には、内パネル85(図18に図示)が設けられて側壁14ができている。また、ハウス10には図19に示すようにドア16が設けられており、このドア16からハウス10室内36に出入りできるようになっている。
【0053】
また、側壁14には幅約900mm、高さ約1500mmの略縦長矩形状の窓30が設けられている(図17、図18)。これらの窓30にも前記実施例1同様の複数の区画室(図示せず)が設けられている。これによって、前述同様の効果を得ることができる。また、窓30は、室内36に外の自然光が入り易い側壁14上部で屋根86に近接して下側に設けられている。尚、25は屋根86を支えるための中柱である。
【0054】
ここで、各実施例では、ハウス10の側壁14及び天壁12に断熱材として所定の断熱部材26を設けたが、断熱材は発泡合成ゴム、又は、発泡ウレタンに限らず、予め所定の大きさの断熱部材(図示せず)を設け、この断熱部材を天壁12及び側壁14の室内36側(屋根86の室内36側を含む)に略隙間無く設けても差し支えない。この場合、茸類栽培用ハウス10を建造する現場で発泡合成ゴム、又は、ウレタンを噴き付けなることなく、ハウス10の天壁12や側壁14を断熱構造にすることができるので、現場で発泡合成ゴム噴き付け用の大がかりな装置が不要となり便利である。
【0055】
尚、実施例では本発明をビニールハウス及びプレハブハウスに適用したが、本発明はビニールハウス及びプレハブハウスに限らず、茸類を栽培するために建てられた茸栽培専用の茸栽培ハウスに適用しても有効である。
【0056】
また、各実施例では、茸類栽培用ハウス10の形状や寸法などを記載したが、ハウス10は本発明の要旨を逸脱しない範囲内で形状や寸法を変更しても良いのは言うまでもない。勿論本発明は、上記各実施例のみに限定されるものではなく、この発明の趣旨を逸脱しない範囲で他の様々な変更を行っても本発明は有効である。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の一実施例を示す茸類栽培用ハウスの斜視図である(実施例1)。
【図2】同図1の茸類栽培用ハウスの縦断面図である。
【図3】同図1の茸類栽培用ハウスの要部を示す図である。
【図4】本発明の茸類栽培用ハウスの平断面図である。
【図5】本発明の茸類栽培用ハウスを暖房する時の空気の流れを示す図である。
【図6】本発明の茸類栽培用ハウスを冷房する時の空気の流れを示す図である。
【図7】本発明の茸類栽培用ハウスに用いられる棚の正面図である。
【図8】同図7の茸類栽培用ハウスに用いられる棚の側面図である。
【図9】同図7の茸類栽培用ハウスに用いられる棚の平面図である。
【図10】本発明の一実施例を示す茸類栽培用ハウスの平断面図である(実施例2)。
【図11】同図10の茸類栽培用ハウスに用いられる棚の側面図である。
【図12】本発明の一実施例を示す茸類栽培用ハウスの平断面図である(実施例3)。
【図13】本発明の茸類栽培用ハウスに用いられる棚の正面図である。
【図14】本発明の一実施例を示す茸類栽培用ハウスの斜視図である(実施例4)。
【図15】同図14の茸類栽培用ハウスの縦断側面図である。
【図16】同図14の茸類栽培用ハウスの要部を示す図である。
【図17】本発明の一実施例を示す茸類栽培用ハウスの斜視図である(実施例5)。
【図18】同図17の茸類栽培用ハウスの縦断面図である。
【図19】同図17の茸類栽培用ハウスの側面図である。
【符号の説明】
【0058】
10 ハウス
12 天壁
14 側壁
18 パイプ
20 補強パイプ
26 断熱部材
28 シート部材
30 窓
32 区画室
34 透光性部材
36 室内
40 生育室
42 機械室
44 冷房装置
46 暖房装置
47 制御装置
48 加圧ポンプ
49 ボイラー
50 棚
52 棚板
54 容器
55 空気孔
56 温風ダクト
57 冷風ダクト
58 噴霧パイプ
59 保持部材
60 温水供給管
61 温水回収管
62 温水配管
63 冷水配管
64 コンクリート床
70 地面
72 冷水供給管
74 冷水回収管
82 柱
86 屋根
【技術分野】
【0001】
本発明は、遮光されたハウス内で茸類の人工栽培を行う茸類栽培用ハウス及びその施工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、茸類栽培用ハウスは、外気温度が低い冬季や外気温度が高い夏季などにおいても一年中茸類の栽培ができるように、所定の間隔でアーチ状に設けたパイプの周囲をビニールなどからなる遮光性シートで囲繞して安価に建造していた。係る茸類栽培用ハウスは、遮光性シートの内側に断熱材を設けて大型大容量の簡易断熱ビニールハウスを構成していた。そして、冷暖房装置や加湿装置などを用いてハウス内を茸類の好適な栽培環境に管理して、略一年中茸類の栽培が行えるようにしていた(特許文献1参照)。
【0003】
このような、茸類栽培用ハウス内で茸類の培養基材料作りから種菌の接種、培養、芽出し、生育、収穫、梱包、出荷等の作業が行われるため、茸類栽培用ハウスは奥行き約30m、幅約8m程度の大きなものであった。このため、ハウスの建造には大きな面積が必要となり、一般的に畑や山などの平地に建造されていた。そして、ハウスの柱となるパイプの下端を所定寸法コンクリートで固めて固定していた。これにより、ハウスの強度アップを図り、風や嵐などで破損してしまうのを防止していた。また、ハウス内は平地を固めた状態で使用されていた。
【0004】
【特許文献1】特開平10−66444号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ハウスの強度アップを図るため、柱となるパイプの下端をコンクリートで固めていたので、ハウスの完成はパイプの下端がコンクリートで固められて固定される迄の期間を待ってから、ハウスの次の建造作業を行わなければならなかった。このため、ハウスを完成させるまでの工期が長期化してしまうという問題があった。
【0006】
本発明は、係る従来技術の課題を解決するために成されたものであり、柱となるパイプの下端がコンクリートで固まるまでの期間を待たず、短期間でハウスを建造することができる茸類栽培用ハウス及びその施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
即ち、本発明の茸類栽培用ハウスは、複数本のアーチ状パイプにシート部材を被せると共に、このシート部材の内側に断熱材を設け、内部を茸栽培のための所定の環境に管理するものであって、パイプの両端部は、所定寸法地面に差し込んで固定されていると共に、内部にコンクリート床が形成されていることを特徴とする。
【0008】
また、請求項2の茸類栽培用ハウスの施工方法は、複数本のアーチ状パイプにシート部材を被せると共に、このシート部材の内側に断熱材を設け、内部を茸栽培のための所定の環境に管理するものであって、パイプの両端部を所定寸法地面に差し込んで固定すると共に、内部にコンクリート床を形成することを特徴とする。
【0009】
また、請求項3の茸類栽培用ハウスの施工方法は、請求項2において、硬質ウレタン或いは発泡合成ゴム等をシート部材の内側に噴き付け、所定の厚さにフリー発泡させることにより、断熱材を設けることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、パイプの両端部は、所定寸法地面に差し込んで固定されているので、例えば、従来のようにパイプの下端をコンクリートで固めて固定しなくてもハウスの強度アップを図ることができるようになる。これにより、ハウスが風や嵐などで破損してしまうなどの不都合を確実に防止することが可能となる。また、パイプを所定寸法地面に差し込んでいるだけなので、従来のようにパイプの下端がコンクリートで固められて固定される迄の期間待たなくても、ハウスの次の建造作業を行うことが可能となる。従って、茸類栽培用ハウスが完成するまでの工期を大幅に短縮することができ便利である。
【0011】
また、ハウス内部にコンクリート床を形成しているので、例えば、作業者の移動や、茸類栽培用の棚の移動が極めて容易となる。これにより、ハウス内での作業効率を大幅に向上することが可能となる。この場合、棚の下にキャスターを設ければ、棚を1人でも容易に移動することができて、茸類栽培用ハウスの利便性を大幅に向上することができるようになる。
【0012】
特に、パイプの下端をコンクリートで固定せずに、所定寸法地面に差し込んでいるだけなので、ハウスの耐用年数終了後やハウスを使用せずハウスを解体する時には、地面からパイプを容易に抜くことができる。従って、ハウスの建造、及び、解体作業効率を極めて向上させることができるようになり、便利である。
【0013】
また、請求項2の発明によれば、パイプの両端部を所定寸法地面に差し込んで固定するので、従来のように、コンクリートでパイプの下端を固めなくても、ハウスを簡単に建造することができる。これにより、ハウス建造の作業性を大幅に向上することが可能となる。従って、茸類栽培用ハウスの建造を極めて短期間で行え便利である。
【0014】
また、請求項3の発明によれば、請求項2において、硬質ウレタン或いは発泡合成ゴム等をシート部材の内側に噴き付け、所定の厚さにフリー発泡させることにより、断熱材を設けているので、シートとパイプとに断熱材を固着させることができ、然も、ハウス全体の断熱を行うことが可能となる。これにより、ハウスの天壁や側壁を強固に形成することが可能となる。従って、高断熱、且つ、強固のハウスを建造することができ、茸類栽培用ハウスの更なる利便性を図ることができるようになるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明は、柱となるパイプの下端をコンクリートで固めるという面倒な作業を無くすことを特徴とする。パイプの下端をコンクリートで固めるという面倒な作業を無くすという目的を、パイプの両端部を所定寸法地面に差し込むだけの簡単な作業で実現した。
【実施例1】
【0016】
次に、図面に基づき本発明の実施例を詳述する。図1は本発明の一実施例を示す茸類栽培用ハウス10の斜視図、図2は同図1の茸類栽培用ハウス10の縦断側面図、図3は同図1の茸類栽培用ハウス10の要部を示す図をそれぞれ示している。
【0017】
茸類栽培用ハウス10の室内36には複数の棚50が設置されると共に、これらの棚20の上で例えば茸類の培養、芽出し、生育、収穫等の作業が行われる。ハウス10は、図1に示すように縦長矩形状に形成され、外側がビニール或いはポリエステルなどのシート部材28で覆われた所謂ビニールハウスにて構成されている。このハウス10は、ハウス10の骨格となる複数のパイプ18と、このパイプ18を固定する長尺の梁22(図2に図示)と、パイプ18の外側を覆うシート部材28と、このシート部材28の内側(室内36側)に設けられた断熱部材26とから構成されている。
【0018】
該パイプ18は、金属製のパイプが複数本接続されてアーチ状に形成され、このアーチ状のパイプ18がハウス10の長手方向に所定の間隔で複数配置されている。そして、このパイプ18の両端が、地面70に約300mm〜600mm差し込まれることにより、パイプ18は地面70に強固に固定されている(図3に図示)。即ち、ハウス10の大きさが例えば幅約7.2m、高さ約3.5mの場合、パイプ18の両端を約300mm〜600mm地面70に差し込んでいる。これにより、ハウス10が風や嵐などによって破損してしまうなどの不都合を防止している。
【0019】
また、ハウス10は、アーチ状に形成されたパイプ18と、梁22と、筋交24とが図示しないネジ、或いは、溶接などによって固定されることにより強固に構成されている。該梁22及び筋交24は、ハウス10の長手方向に略1.8m間隔で設けられている。尚、パイプ18は、野菜類の栽培等を行うビニールハウス、或いは外側を防水シート等で覆った建物(所定の品物を入れて保管する倉庫、或いは車庫等)等に一般的に使用される直径約22mmの金属製パイプにて構成されている。
【0020】
また、所定の間隔で複数本設置されたパイプ18には、補強パイプ20が設けられており、この補強パイプ20は、パイプ18より強度が強い直径約40mmの金属製パイプにて構成されている。この補強パイプ20は、パイプ18複数本に対して1本設けられると共に、パイプ18と所定の間隔を存してハウス10内側(室内36側)に設けられている。即ち、補強パイプ20は、例えばパイプ18が5本の間隔で1本設けられている。これにより、ハウス10の強度アップが図られている。
【0021】
このように、パイプ18(補強パイプ20を含む)を所定寸法地面70に差し込んで、ハウス10の骨格を建造することにより、従来のようにパイプ18の下端をコンクリートで固めて固定しなくてもハウス10の強度アップを図ることができる。これにより、ハウス10が風や嵐などで破損してしまうなどの不都合を確実に防止することができる。また、パイプ18(補強パイプ20を含む)を所定寸法地面70に差し込んでいるだけなので、従来のようにパイプ18の下端がコンクリートで固められて固定される迄の期間を待たなくても、ハウス10の次の建造作業を行うことができる。これにより、茸類栽培用ハウス10が完成するまでの工期を大幅に短縮することができ便利である。
【0022】
また、ハウス10室内36の床面となる箇所には、予め砕石65が平らに固められ更にその上面にコンクリート床64が略平面に敷設されている。コンクリート床64は内部にワイヤーメッシュ66が設けられ、これによってコンクリート床64の強度アップが図られている。尚、地面70に差し込んだパイプ18(補強パイプ20を含む)はコンクリート床64では固定していない。
【0023】
このように、ハウス10室内36にコンクリート床64を平面に設けることにより、棚50(図2に図示)の移動を行い易くしている。この場合、例えば棚50の下にキャスター(図示せず)を設ければ、棚50を1人でも容易に移動することができ極めて便利である。これにより、ハウス10室内36での作業効率を大幅に向上することができるようになる。
【0024】
また、シート部材28は、所定の厚さのビニール、ポリエステル或いは合成樹脂、天然繊維などからなる遮光性の防水シートにて構成されている。該シート部材28は、少なくとも一枚或いは複数枚が、熱融着或いは接着剤にて接続されて所定の大きさに構成されると共に、所定の間隔で設けられたパイプ18の外側を囲繞している。これにより、ハウス10室内36に風雨が浸入してしまうのを防止して、茸類の栽培に悪影響を与えないようになっている。
【0025】
また、断熱部材26は、前記シート部材28の内側全面に設けられると共に、約+40mm〜+150mmの厚さに形成されている。この場合、シート部材28の内側全体に断熱部材26として、発泡合成ゴム、又は、ウレタンを吹き付け、或いは、硬質ウレタン等からなる断熱材を設けることにより、確実にハウス10の室内36と室外との断熱を行っている。
【0026】
一方、図4に示すようにハウス10室内36には仕切壁38が設けられており、この仕切壁38は室内36を所定位置で仕切っている。そして、仕切壁38で仕切られた室内36の一方に機械室42、他方に茸類を生育するための生育室40を設けている。この機械室42には、冷房装置44や暖房装置46、或いは、ボイラー49や加圧ポンプ48などが設けられている。尚、47は制御装置で、冷房装置44、暖房装置46など制御して茸類栽培用ハウス10の室内36を所定の栽培環境に管理する。
【0027】
また、生育室40内には暖房用の温風ダクト56及び冷房用の冷風ダクト57が配設されると共に、加湿用の噴霧パイプ58などが配設されている。そして、冷風ダクト57は図5に示すように棚50の上方に配設されると共に、温風ダクト56は図6、図7に示すように各棚50の下部に配設されている。これらの暖冷風ダクト56、57は、暖房時には温められた空気を温風ダクト56から排出して冷風ダクト57から回収すると共に、冷房時には冷やされた空気を冷風ダクト57から排出して温風ダクト56から回収するようになっている。尚、図5、図6では冷風ダクト57を、各棚50上に直交して図示しているが、冷風ダクト57は実際には図7に示すように各棚50の上方に位置して各棚50の延在方向に配設されている。
【0028】
両暖冷風ダクト56、57は、ダンパー(図示せず)を介して機械室42内の冷房装置44及び暖房装置46に接続されている。両暖冷風ダクト56、57は、直径約100mm〜320mmの円筒形に形成され、生育室40内の所定位置に配設可能なアルミフレキ製、アルミニウム及び鉄板等のスパイラル製、或いは、ビニールフィルム製等にて構成されている。そして、両暖冷風ダクト56、57にはそれぞれ長手方向に所定の間隔で空気孔55が設けられている。これらの空気孔55は両暖冷風ダクト56、57の両側面を貫通して設けられると共に、水平より小許下方に向けて設けられている。該両暖冷風ダクト56、57に設けた空気孔55は、冷暖房用の空気を吹き出すと共に、吸い込めるようになっている。
【0029】
前記棚50には、茸類の種菌の培養や生育などを行うための紙、或いは、合成樹脂などの容器54を載置するための棚板52が所定の間隔を存して複数段(実施例では7段)設けられている。最下段の棚板52下方は、床面と所定寸法の隙間(この場合、複数段設けた棚板52と棚板52との隙間と略同等の隙間)を有している。そして、図7、図8に示すように前記温風ダクト56は、保持部材59にて最下段の棚板52に保持される。また、図9に示すように棚板52の上面には、茸類の生育に必要な豊富な栄養分を含んだオガクズ、フスマ、コーン、ブラン等多数の材料が混合された培地、及び、種菌などが入れられた容器54が載置される。
【0030】
そして、暖房装置46にて所定温度に温められた暖かい空気は、温風ダクト56の空気孔55から各棚50の下方に吹き出される(図8矢印)。各棚50の下方に吹き出された暖かい空気は、棚50及び棚50近傍を温めながら上昇し、上方に設けられた冷風ダクト57の空気孔55から吸い込まれる(図5)。冷風ダクト57に吸い込まれた空気は、暖房装置46に流入して再び温められ、各棚50下方の温風ダクト56の空気孔55より各棚50下方に吹き出されこれが繰り返される。これによって、各棚50の上段、及び下段近傍の温度差を殆ど同じ温度に維持することが可能となる。従って、各棚50の上段と下段の茸の生育が異なる等と言った不都合を防止することができる。尚、冷風ダクト57を床面近傍に設け、この冷風ダクト57によって床面近傍に淀んでいる冷気を回収するようにしても良い。これにより、更に好適に各棚50の上段、及び下段近傍の温度差を殆ど同じ温度に維持することが可能となる。また、冷風ダクト57は暖房時の空気の回収のみ使用している。
【0031】
また、冷房装置44にて所定の温度に冷やされた冷たい空気は、図6に矢印で示すように冷風ダクト57の空気孔55から各棚50の上方に吹き出される。各棚50の上方に吹き出された冷たい空気は、棚50及び棚50近傍を冷やしながら下降し、下方に設けられた温風ダクト56の空気孔55から吸い込まれる。温風ダクト56に吸い込まれた空気は、冷房装置44に流入して再び冷やされ、各棚50上方の冷風ダクト57より各棚50上方に吹き出される。これによって、各棚50の上段、及び下段近傍の温度差を殆ど同じ温度に維持することが可能となる。従って、各棚50の上段と下段の茸の生育が異なる等と言った不都合を防止することができる。尚、温風ダクト56を室内36上方に設け、この温風ダクト56によって室内36上方に淀んでいる暖気を回収するようにしても良い。これにより、更に好適に各棚50の上段、及び下段近傍の温度差を殆ど同じ温度に維持することが可能となる。また、温風ダクト56は冷房時の空気の回収のみ使用している。
【0032】
また、前記噴霧パイプ58は、霧或いは小粒子状の水を噴き出して生育室40内を所定の湿度に加湿するもので、鉄、鋼等の金属管或いは塩化ビニール管等にて構成されている。噴霧パイプ58の一方は機械室42に設けられた加圧ポンプ48に接続され、他方は生育室40内の長手方向に複数本配設されている。この噴霧パイプ58には所定の間隔で噴霧ノズル(図示せず)が取り付けられており、この噴霧ノズルより所定量の霧或いは小粒子状の水が噴霧されて、生育室40内は茸類の生育に好適な湿度に加湿される。尚、16は断熱材などにて構成されたドアである。
【0033】
他方、従来では一年中を通してハウス10内で茸類の栽培を好適に行うため、ハウス10室内36に電球を点灯していたので電力使用料金が高額になってしまう。そこで、本実施例の茸類栽培用ハウス10の室内36に、外部の自然光を取り入れるための採光用の窓30(図1)を設けている。茸類栽培用ハウス10は、側面に設けられた側壁14と、この側壁14の上側に設けられた天壁12とから構成されており、この側壁14に複数の窓30が設けられている。
【0034】
該窓30は、側壁14を貫通して室内36と室外とを連通して設けられている。また、窓30の両面(室内36側と室外側)には所定の厚さの透明ビニールシート、透明ポリエステルシート、透明合成樹脂板、透明ガラス板などの透光性部材34が設けられている。窓30の両面は、これらの透光性部材34によって密閉され、その間に空気層が形成されている。この空気層により側壁14の断熱効果を維持しつつ、窓30からハウス10外部の自然光を室内36に取り入れられるようになっている。
【0035】
このように、ハウス10の側壁14に採光用の窓30を設け、この窓30の両面を透光性部材34にて閉塞して空気層を設けているので、窓30の断熱効果を大幅に向上することができる。これにより、窓30及び側壁14の断熱効果を維持して室内36を茸類の好適な栽培環境に管理しつつ、窓30から室内36に自然光を取り入れることができる。従って、従来のようにハウス10室内36で電球を点灯させる必要もなくなるので、電力使用料金を大幅に節約することができるようになり便利である。
【0036】
特に、窓30から室内36に外の自然光を取り入れられるようにしているので、自然環境で生育した茸類の如き茎が短く自然な色の茸類を栽培することが可能となる。これにより、茸類が色白や茎長になってしまうなどの不都合を確実に防止することができるので、消費者に好まれる茎が短く自然な色の茸類を、一年を通じ安定して栽培することが可能となる。
【0037】
また、本発明の茸類栽培用ハウス10では、窓30を多重構造(実施例では二重構造)に構成している(図3に図示)。即ち、窓30を厚さ方向(この場合、室内36と室外方向)の略中間に透光性部材34を設けて空気層を2分割して、二つの区画室32を設けている。即ち、窓30の両面に設けた透光性部材34の略中間に透光性部材34を一枚設けて、窓30内を厚さ方向に2分割している。これにより、透光性部材34を境に、窓30には室内36側と外側にそれぞれ区画室32を形成している。これにより、窓30内に区画室32による空気層を複数形成することができる。
【0038】
このように、窓30に複数の空気層を形成することにより、窓30の断熱効果を大幅に向上させることができる。これにより、ハウス10室内36の冷暖房効果を極めて向上させることが可能になるので、窓30の結露防止、及び、電力使用料金などを大幅に低減させることができる。尚、空気層を複数設けることにより断熱効果が向上する技術については、従来より周知の技術であるため詳細な説明を省略する。
【実施例2】
【0039】
次に、図10は本発明の一実施例を示す茸類栽培用ハウス10を示している。本実施例における茸類栽培用ハウス10は、前述の実施例1と略同じ構成を有している。以下、異なる部分について説明する。尚、前述の実施例と同じ部分にはこれと同じ符号を付し、説明を省略する。即ち、ハウス10内の各棚50の下側には金属製のパイプにて構成された温水配管62が配設されている。この温水配管62は、各棚50の幅方向に所定の間隔を存して配設されると共に、保持部材59保持されて、棚50の最下段の棚板52下側に固定されている。
【0040】
そして、温水配管62は、図10、図11に示すように棚50の幅方向一側から奥行き方向一側を他側まで延在し、そこで折れ曲がって奥行き方向他側まで延在し、そこで更に折れ曲がって幅方向一側まで戻るU字状に形成されている。この温水配管62の一方は、ボイラー49から機械室42の離間側まで延在して設けられた温水供給管60に接続されると共に、温水配管62の他方は、ボイラー49から機械室42の離間側まで延在して設けられた温水回収管61に接続されている。
【0041】
そして、加圧ポンプ48が運転され、ボイラー49で加熱された温水が温水供給管60から各棚50下の温水配管62に供給されることにより、温水配管62内の温水とその周囲の空気とが熱交換する。これによって、各棚50下の空気は所定の温度に温められる。熱交換して放熱した温水は冷却して温水回収管61内をボイラー49まで帰還し、そこで再度加熱されて温水供給管60に流出する循環を繰り返す。
【0042】
そして、温水配管62の放熱により各棚50下の空気が所定の温度に温められると、その空気は上昇して棚50全体を包むように上昇していく。温められた空気は上昇する過程で棚50に載置された茸類と熱交換して徐々に冷やされ、最終的に室内36の空気と略同じ温度になる。これにより、予めハウス10内に設けられた暖房装置以外に、棚50全体を下方から温めることが可能となる。従って、各棚50の上下の温度差を小さくすることができ、ハウス10室内36で栽培している茸類が、同一棚50の上下で成長が著しく異なってしまうなどの不都合を未然に防止することが可能となる。また、各棚50下の暖かい空気が上昇する際、棚50の上方の空気と下方の空気が対流をする。これによって、各棚50上の容器54で栽培している茸類に空気(酸素)を供給することが可能となる。従って、茸類の成長を大幅に促進することができるようになり、茸類の大幅な増収を図ることができるようになる。
【0043】
また、コンクリートを平面に設けてコンクリート床64としている茸類栽培用ハウス10では、外気が冷たい冬季などでは、特に床面となるコンクリート床64が冷えてハウス10室内36上下の温度差が大きくなってしまう。しかし、各棚50下に設けた温水配管62によって、下方から棚50を温めているので、外気温度が低下した場合でもハウス10室内36の下方と上方との温度差が大きくならず、棚50の上下を均一の温度に管理することができる。従って、茸類栽培用ハウス10の暖房費用を大幅に節約することができるようになる。
【0044】
また、各棚50に設けた一方の温水配管62の端部に温水供給管60を接続し、他方の端部に温水回収管61を接続し、ボイラー49で加熱した温水を温水供給管60に流入させている。これにより、どの棚50の温水配管62にも略同じ温度の温水を供給することが可能となる。従って、何れの棚50も同一温度で温めることができるので、各茸栽培棚50で栽培する茸類を均一に成長させることができ、茸類栽培用ハウス10の利便性を大幅に向上させることができる。尚、温水配管62の代わりに電気ヒータ(図示せず)を用いても差し支えない。この場合、電気ヒータは図示しない制御装置にて容易に温度制御することができる。これにより、温水配管62より更に棚50上下の温度を好適に管理することができ便利である。
【実施例3】
【0045】
次に、図12は本発明の一実施例を示す茸類栽培用ハウス10の平断面図を示している。本実施例における茸類栽培用ハウス10は、前述の実施例1と略同じ構成を有している。以下、異なる部分について説明する。尚、前述の実施例と同じ部分にはこれと同じ符号を付し、説明を省略する。即ち、茸類栽培用ハウス10は、図12に示すように、冷房装置44に接続された冷水配管63を室内36に延在して設けている。
【0046】
この冷水配管63は、図13に示すように各棚50上方に配設されると共に、この冷水配管63の一方は冷房装置44から機械室42の離間側まで延在して設けられた冷水供給管72に接続され、他方は冷房装置44から機械室42の離間側まで延在して設けられた冷水回収管74に接続されている。冷水配管63(冷水供給管72及び冷水回収管74を含む)には凍結、或いは、沸騰しない不凍液などの熱媒体(本発明の冷水に相当)が封入されると共に、ポンプ(図示せず)が設けられており、このポンプによって冷水配管63内の熱媒体が循環するように構成されている。尚、冷水配管63には、図示しないが多数の放熱フィンが設けられており、このフィンから冷水配管63内を流通する熱媒体の冷気が放出されるようになっている。また、冷房装置44の冷媒を冷水配管63内に流通させて、そこで蒸発させて冷却作用を発揮するようにしても差し支えない。
【0047】
そして、ポンプが運転され、冷房装置44で冷却された熱媒体が冷水供給管72から各棚50上の冷水配管63に供給されることにより、冷水配管63内の熱媒体とその周囲の空気とが熱交換する。これによって、各棚50上方の空気は所定の温度に冷却される。この場合、各棚50上の空気は棚50全体を包むように下降していき、各棚50を所定の温度に冷やすことができる。これにより、各棚50だけを効率的に冷やすことができて便利である。そして、熱交換して放熱した熱媒体は温められて冷水回収管74内を冷房装置44まで帰還し、そこで再度冷却されて冷水供給管72に流出する循環を繰り返す。また、各棚50上の冷やされた空気が下降する際、棚50の下方の空気と上方の空気が対流をする。これによって、各棚50上の容器54で栽培している茸類に空気(酸素)を供給することが可能となる。従って、茸類の成長を大幅に促進することができるようになり、茸類の大幅な増収を図ることができるようになる。
【0048】
このように、各棚50上部に冷水配管63を設けているので、ハウス10内を茸類の栽培に適した所定の環境に管理するための冷房装置44にて冷却された冷水を、各棚50の上部に設けた冷水配管63に供給することができる。これにより、各棚50上方を同一温度の冷水で冷やすことができ、各棚50上方を冷やした後の冷水を冷水回収管74から冷房装置44に帰還させることができる。従って、ハウス10内に設置した各棚50の上方と下方とを略同一温度で好適に冷やすことができるので、外気が暖かい夏季などにおいても、各棚50の下方と上方との温度差を略均一に管理することができるようになる。
【実施例4】
【0049】
次に、図14は本発明の一実施例を示す茸類栽培用ハウス10を示している。本実施例における茸類栽培用ハウス10は、前述の実施例1と略同じ構成を有している。以下、異なる部分について説明する。尚、前述の実施例と同じ部分にはこれと同じ符号を付し、説明を省略する。図14は、本発明の他の一実施例の茸類栽培用ハウス10の斜視図である。即ち、茸類栽培用ハウス10は、図14に示すように側壁14に略接する天壁12に外部の自然光を室内36に採光するための複数の窓30を設けている。
【0050】
詳しくは、図15、図16に示すように実施例4では実施例1で側壁14に設けた窓30を天壁12設けている。他実施例1と同等に構成されている。これにより、実施例1同様各茸栽培棚50の上下で栽培する茸類を均一に成長させることができ、茸類栽培用ハウス10の利便性を大幅に向上させることができる。
【実施例5】
【0051】
次に、図17は本発明の一実施例を示す茸類栽培用ハウス10を示している。本実施例における茸類栽培用ハウス10は、図17に示すように基礎80上に所定の間隔(この場合約900mm間隔)で柱82が設けられ、隣接する柱82間にカラートタン(不透明トタン)、或いは、ベニヤ板などの外パネル84を設けた所謂プレハブハウスにて構成されている。即ち、ハウス10は、前述の実施例1のビニールハウス10をプレハブハウスに変えただけで、他は前述の実施例1と略同じ構成を有している。以下、異なる部分について説明する。尚、前述の実施例1と同じ部分にはこれと同じ符号を付し、説明を省略する。
【0052】
実施例5のハウス10は、実施例1のハウス10同様縦長矩形状に形成され、上部には屋根86が設けられている。ハウス10は、図17に示すように、外パネル84の室内36側及び屋根86の裏面側には、実施例1で説明したビニールハウス10の如き所定の厚さの発泡合成ゴム、又は、ウレタンを吹き付け、或いは、硬質ウレタン等の断熱部材26が設けられている(屋根86部分は図示せず)。断熱部材26の内側には、内パネル85(図18に図示)が設けられて側壁14ができている。また、ハウス10には図19に示すようにドア16が設けられており、このドア16からハウス10室内36に出入りできるようになっている。
【0053】
また、側壁14には幅約900mm、高さ約1500mmの略縦長矩形状の窓30が設けられている(図17、図18)。これらの窓30にも前記実施例1同様の複数の区画室(図示せず)が設けられている。これによって、前述同様の効果を得ることができる。また、窓30は、室内36に外の自然光が入り易い側壁14上部で屋根86に近接して下側に設けられている。尚、25は屋根86を支えるための中柱である。
【0054】
ここで、各実施例では、ハウス10の側壁14及び天壁12に断熱材として所定の断熱部材26を設けたが、断熱材は発泡合成ゴム、又は、発泡ウレタンに限らず、予め所定の大きさの断熱部材(図示せず)を設け、この断熱部材を天壁12及び側壁14の室内36側(屋根86の室内36側を含む)に略隙間無く設けても差し支えない。この場合、茸類栽培用ハウス10を建造する現場で発泡合成ゴム、又は、ウレタンを噴き付けなることなく、ハウス10の天壁12や側壁14を断熱構造にすることができるので、現場で発泡合成ゴム噴き付け用の大がかりな装置が不要となり便利である。
【0055】
尚、実施例では本発明をビニールハウス及びプレハブハウスに適用したが、本発明はビニールハウス及びプレハブハウスに限らず、茸類を栽培するために建てられた茸栽培専用の茸栽培ハウスに適用しても有効である。
【0056】
また、各実施例では、茸類栽培用ハウス10の形状や寸法などを記載したが、ハウス10は本発明の要旨を逸脱しない範囲内で形状や寸法を変更しても良いのは言うまでもない。勿論本発明は、上記各実施例のみに限定されるものではなく、この発明の趣旨を逸脱しない範囲で他の様々な変更を行っても本発明は有効である。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の一実施例を示す茸類栽培用ハウスの斜視図である(実施例1)。
【図2】同図1の茸類栽培用ハウスの縦断面図である。
【図3】同図1の茸類栽培用ハウスの要部を示す図である。
【図4】本発明の茸類栽培用ハウスの平断面図である。
【図5】本発明の茸類栽培用ハウスを暖房する時の空気の流れを示す図である。
【図6】本発明の茸類栽培用ハウスを冷房する時の空気の流れを示す図である。
【図7】本発明の茸類栽培用ハウスに用いられる棚の正面図である。
【図8】同図7の茸類栽培用ハウスに用いられる棚の側面図である。
【図9】同図7の茸類栽培用ハウスに用いられる棚の平面図である。
【図10】本発明の一実施例を示す茸類栽培用ハウスの平断面図である(実施例2)。
【図11】同図10の茸類栽培用ハウスに用いられる棚の側面図である。
【図12】本発明の一実施例を示す茸類栽培用ハウスの平断面図である(実施例3)。
【図13】本発明の茸類栽培用ハウスに用いられる棚の正面図である。
【図14】本発明の一実施例を示す茸類栽培用ハウスの斜視図である(実施例4)。
【図15】同図14の茸類栽培用ハウスの縦断側面図である。
【図16】同図14の茸類栽培用ハウスの要部を示す図である。
【図17】本発明の一実施例を示す茸類栽培用ハウスの斜視図である(実施例5)。
【図18】同図17の茸類栽培用ハウスの縦断面図である。
【図19】同図17の茸類栽培用ハウスの側面図である。
【符号の説明】
【0058】
10 ハウス
12 天壁
14 側壁
18 パイプ
20 補強パイプ
26 断熱部材
28 シート部材
30 窓
32 区画室
34 透光性部材
36 室内
40 生育室
42 機械室
44 冷房装置
46 暖房装置
47 制御装置
48 加圧ポンプ
49 ボイラー
50 棚
52 棚板
54 容器
55 空気孔
56 温風ダクト
57 冷風ダクト
58 噴霧パイプ
59 保持部材
60 温水供給管
61 温水回収管
62 温水配管
63 冷水配管
64 コンクリート床
70 地面
72 冷水供給管
74 冷水回収管
82 柱
86 屋根
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本のアーチ状パイプにシート部材を被せると共に、該シート部材の内側に断熱材を設け、内部を茸栽培のための所定の環境に管理する茸類栽培用ハウスにおいて、
前記パイプの両端部は、所定寸法地面に差し込んで固定されていると共に、内部にコンクリート床が形成されていることを特徴とする茸類栽培用ハウス。
【請求項2】
複数本のアーチ状パイプにシート部材を被せると共に、該シート部材の内側に断熱材を設け、内部を茸栽培のための所定の環境に管理する茸類栽培用ハウスの施工方法であって、
前記パイプの両端部を所定寸法地面に差し込んで固定すると共に、内部にコンクリート床を形成することを特徴とする茸類栽培用ハウスの施工方法。
【請求項3】
硬質ウレタン或いは発泡合成ゴム等を前記シート部材の内側に噴き付け、所定の厚さにフリー発泡させることにより、前記断熱材を設けることを特徴とする請求項2の茸類栽培用ハウスの施工方法。
【請求項1】
複数本のアーチ状パイプにシート部材を被せると共に、該シート部材の内側に断熱材を設け、内部を茸栽培のための所定の環境に管理する茸類栽培用ハウスにおいて、
前記パイプの両端部は、所定寸法地面に差し込んで固定されていると共に、内部にコンクリート床が形成されていることを特徴とする茸類栽培用ハウス。
【請求項2】
複数本のアーチ状パイプにシート部材を被せると共に、該シート部材の内側に断熱材を設け、内部を茸栽培のための所定の環境に管理する茸類栽培用ハウスの施工方法であって、
前記パイプの両端部を所定寸法地面に差し込んで固定すると共に、内部にコンクリート床を形成することを特徴とする茸類栽培用ハウスの施工方法。
【請求項3】
硬質ウレタン或いは発泡合成ゴム等を前記シート部材の内側に噴き付け、所定の厚さにフリー発泡させることにより、前記断熱材を設けることを特徴とする請求項2の茸類栽培用ハウスの施工方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2007−195477(P2007−195477A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−18840(P2006−18840)
【出願日】平成18年1月27日(2006.1.27)
【出願人】(594094803)岡田冷熱機工株式会社 (3)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年1月27日(2006.1.27)
【出願人】(594094803)岡田冷熱機工株式会社 (3)
【Fターム(参考)】
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