説明

草本系バイオマスの前処理装置及び前処理方法

【課題】草本系バイオマスを燃料、ガス化原料又は炭化物原料として利用する際に、草本系バイオマスにカリウムが含まれることに起因する問題の発生を防ぐことができる草本系バイオマスの前処理装置及び前処理方法を提供する。
【解決手段】草本系バイオマスを燃料、ガス化原料又は炭化物原料として利用する前に前処理を施す圧搾脱水装置10であって、該圧搾脱水装置10は、草本系バイオマスを圧搾脱水する第一圧搾脱水部11と、その後に加水する加水部12と、再び圧搾脱水する第二圧搾脱水部13が一つの装置に構成された圧搾脱水装置を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、草本系バイオマスを燃料、ガス化原料又は炭化物原料として利用する前に前処理を施す前処理装置及び前処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地球温暖化の防止対策として、バイオマスエネルギーの有効利用に注目が集まっている。化石資源ではない、再生可能な、生物由来の有機性資源をバイオマスと呼ぶ。特に、バイオマスの中でも植物由来のバイオマスは、植物の成長過程で光合成により二酸化炭素から変換された炭素資源を有効利用できるため、資源のライフサイクルの観点からすると大気中の二酸化炭素の増加につながらない。バイオマスは有機物であるため、燃焼させると二酸化炭素が排出される。しかし、これに含まれる炭素は、そのバイオマスが成長過程で光合成により大気中から吸収した二酸化炭素に由来するので、バイオマスを使用しても全体として見れば大気中の二酸化炭素量を増加させていないと考えてよいとされる。この性質をカーボンニュートラルと呼ぶ。植物由来のバイオマスのうち、草本系バイオマス、特に以下に述べるアブラヤシ空果房やキンググラスを燃料として用いることにより、二酸化炭素排出量を削減する効果が期待されている。
【0003】
アブラヤシの果実から搾油してパーム油を採取する際に、残る空果房を有効利用する検討がなされている。アブラヤシ果房には直径数cmの小粒の果実が数百個ついており、この果実を脱果したものが空果房(Empty Fruit Bunch、EFB)と呼ばれている。果実は果房の芯に強く結合しているため、この結合を弱め分離しやすくするためと、搾油成分の変質を抑制するために、果房を蒸気加熱し、その後回転篩等により果実を脱果する。水分の多い空果房が大量に排出されるが、有効利用されることなく野外放置や野焼きなどで廃棄されていた。また、キンググラスは成長が著しく早いエネルギー作物であり、主に茎部を燃料として用いることが検討されている。
【0004】
近年、COガス排出量削減のためバイオマスをエネルギー源として利用することが着目され、アブラヤシ空果房をボイラ燃料として有効利用することが試みられている。特許文献1には、この目的に用いる装置が提案されている。この特許文献1の装置は、蒸気圧力下で回転篩により果実と空果房とに分離する蒸熱脱果機、脱果後の空果房を裁断する空果房裁断機、裁断後の空果房を圧搾する空果房圧搾機を備えている。空果房は空果房裁断機により繊維細片に裁断された後、空果房圧搾機により水分を除去され、ボイラ燃料として使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平3−146593
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、アブラヤシ空果房やキンググラスなど草本系バイオマスをボイラ燃料として燃焼炉で燃焼しその燃焼熱エネルギーを回収する場合や、ガス化原料としてガス化炉でガス化し燃料ガスや化学原料ガスを得る場合に、草本系バイオマスにはカリウムなどアルカリ金属が含まれており(カリウム含有率3重量%程度(ドライベース))、草本系バイオマスを燃焼したりガス化した残渣の灰分にカリウムが多く含まれることにより問題が生じる。すなわち、灰分にカリウムが多く含まれていると、燃焼炉やガス化炉の内壁に灰分が融着して炉内ガスの流通を阻害するスラッギングが生じ燃焼炉やガス化炉の運転が不安定になったり、廃熱回収ボイラに灰分が融着してファウリングが生じ排ガスの流通を阻害したり伝熱管などの伝熱効率が低下して熱回収に支障が生じたり、流動層炉では珪砂などの流動粒子の表面に溶融灰が付着し流動粒子の凝集が生じ、炉の運転に支障が生じるなど、問題が生じる。
【0007】
また、草本系バイオマスを炭化物原料として製造した炭化物中にカリウムが含まれると、炭化物を燃料として用いると同様の問題が生じ、また、草本系バイオマスの炭化物を高炉用吹込み微粉炭(高炉用還元材)として用いる場合に、カリウムが高炉内に滞留して炉内で閉塞や通気性の悪化が生じるなど問題が生じる。
【0008】
本発明は、かかる事情に鑑み、草本系バイオマスを燃料、ガス化原料又は炭化物原料として利用する際に、草本系バイオマスにカリウムが含まれることに起因する問題の発生を防ぐことができる草本系バイオマスの前処理装置及び前処理方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するため、草本系バイオマスを水洗浄して含まれるカリウムを除去することを試みたが、単に水又は温水で洗浄し脱水しただけでは、カリウムは草本系バイオマスの表面に付着しているのではないため、燃焼炉内等で支障が生じない程度にまでカリウム含有率を低減させることができないことが判明した。さらに、鋭意検討した結果、次の構成を備えることにより、カリウム含有率を十分に低減させることができることを見出し、本発明を導くに到った。
【0010】
上述の課題は、本発明によると、草本系バイオマスの前処理装置及び前処理方法について、次のような構成で解決される。
【0011】
<前処理装置>
本発明に係る草本系バイオマスの前処理装置は、草本系バイオマスを燃料、ガス化原料又は炭化物原料として利用する前に前処理を施す。
【0012】
かかる前処理装置において、本発明では、草本系バイオマスを圧搾脱水し、その後に加水し、再び圧搾脱水する手段が一つの装置に構成された圧搾脱水装置を有することを特徴としている。
【0013】
圧搾脱水装置はスクリュープレス脱水装置であり、草本系バイオマスを受け入れ圧搾脱水する第一圧搾脱水部と、第一圧搾脱水部から移送された脱水草本系バイオマスに加水する加水部と、加水部から移送された加水草本系バイオマスを再び圧搾脱水し脱水草本系バイオマスを排出する第二圧搾脱水部とを有することが好ましい。
【0014】
圧搾脱水装置はフィルタープレス脱水装置であり、対面するろ材の間隙に草本系バイオマスを受け入れ圧搾脱水するろ過室と、ろ過室内の脱水草本系バイオマスに加水する加水供給部とを有し、ろ過室内に受け入れた草本系バイオマスを圧搾脱水した後に、加水供給部から脱水草本系バイオマスに加水し、再び圧搾脱水し、脱水草本系バイオマスを排出することとしてもよい。
【0015】
<前処理方法>
本発明に係る草本系バイオマスの前処理方法は、草本系バイオマスを燃料、ガス化原料又は炭化物原料として利用する前に前処理を施す。
【0016】
かかる前処理方法において、本願発明では、草本系バイオマスを圧搾脱水する第一圧搾脱水工程と、第一圧搾脱水工程で圧搾脱水された脱水草本系バイオマスに加水する加水工程と、加水工程で加水された加水草本系バイオマスを再び圧搾脱水する第二圧搾脱水工程とを有し、一つの圧搾脱水装置により上記三つの工程を行うことを特徴としている。
【0017】
本発明では、スクリュープレス脱水装置の上流部において草本系バイオマスを受け入れ圧搾脱水する第一圧搾脱水工程と、スクリュープレス脱水装置の中流部において上流部から移送された脱水草本系バイオマスに加水する加水工程と、スクリュープレス脱水装置の下流部において中流部から移送された加水草本系バイオマスを再び圧搾脱水する第二圧搾脱水工程とを有することを特徴としてもよい。
【0018】
また、本発明では、フィルタープレス脱水装置のろ過室に草本系バイオマスを供給し圧搾脱水する第一圧搾脱水工程と、ろ過室内の脱水草本系バイオマスに加水する加水工程と、ろ過室内の加水された草本系バイオマスを再び圧搾脱水する第二圧搾脱水工程とを有することを特徴としてもよい。
【0019】
本発明の草本系バイオマスの前処理装置および前処理方法により前処理した前処理済み草本系バイオマスを、燃料として燃焼炉へ供給し燃焼し、ボイラで燃焼ガスから熱回収し蒸気を得て、蒸気タービン発電機により発電したり、温熱源として用いることができる。燃焼炉としては公知のバイオマス燃焼炉、例えば固定床炉、流動層炉、循環流動層炉、ロータリーキルンを用いることができ、前処理により草本系バイオマス中のカリウムを大幅に低減しているため、支障なく円滑に燃焼し熱回収することができる。
【0020】
また、本発明の草本系バイオマスの前処理装置および前処理方法により前処理した前処理済み草本系バイオマスを、ガス化原料としてガス化炉へ供給し、部分燃焼・熱分解してガス化し燃料ガスを得て、燃料ガスをガスエンジン発電機に供給し発電したり、燃料ガスを燃焼装置で燃焼し燃焼熱を回収することができる。また、ガス化し化学原料ガスを得て、メタノールなどを合成することができる。ガス炉としては公知のバイオマスガス炉、例えば固定床炉、流動層炉を用いることができ、前処理により草本系バイオマス中のカリウムを大幅に低減しているため、支障なく円滑にガス化することができる。
【0021】
さらには、前処理済み草本系バイオマスを炭化物原料として炭化炉へ供給し炭化し炭化物を得ることができ、炭化物を燃料として用いたり、高炉用吹込み微粉炭(高炉用還元材)として用いるようにしてもよい。炭化炉としては公知の炭化炉、例えば充填移動層炉、ロータリーキルンを用いることができ、前処理により草本系バイオマス中のカリウムを大幅に低減しているため、支障なく円滑に炭化することができる。
【0022】
このように構成される本発明では、第一圧搾脱水、加水及び第二圧搾脱水の手段が一つの装置に構成された圧搾脱水装置および前処理方法にて、草本系バイオマスは次の要領で処理される。ここでは、圧搾脱水装置がスクリュープレス脱水装置である場合と、フィルタープレス脱水装置である場合とについて述べる。
【0023】
<スクリュープレス脱水装置>
(1)スクリュープレス脱水装置の第一圧搾脱水部そして第一圧搾脱水工程では、草本系バイオマスが圧搾脱水される(第一圧搾脱水)。圧搾脱水することにより、草本系バイオマスから溶出したカリウムを含む水分を除くとともに、圧搾して加圧することにより草本系バイオマスの茎等の細片からカリウムを含む水分を滲出させ、さらに、草本系バイオマスの芯等の細片を軟らかくし、又、細胞膜を破壊し、細胞内のカリウムを周囲の水分中に滲出させる。
【0024】
(2)加水部そして加水工程では、上記(1)で圧搾脱水された草本系バイオマスに加水する。圧搾脱水された草本系バイオマスに加水することにより、圧搾により加えられていた圧力が解放され、膨張しながら水分を吸収するので、草本系バイオマスに水分が吸収される効率が高く短時間で吸収されるとともに、内部にまで水分が行き渡り、残存するカリウムを水分中に十分に溶出させることができる。
【0025】
(3)第二圧搾脱水部そして第二圧搾脱水工程では、上記(2)で加水された草本系バイオマスが再び圧搾脱水される(第二圧搾脱水)。加水され水分を吸収した草本系バイオマスを再び圧搾脱水することにより、第一圧搾脱水と同様の原理で、草本系バイオマス中のカリウム含有率をさらに低減することができる。
【0026】
かくして、草本系バイオマスを燃料として燃焼炉で燃焼する場合、ガス化する場合及び炭化する場合に、その燃焼や燃焼熱の回収、ガス化及び炭化に支障が生じない程度にまで、カリウム含有率を低減させた草本系バイオマスを得ることができるようになる。
【0027】
<フィルタープレス脱水装置>
(1)フィルタープレス脱水装置のろ過室そして第一圧搾脱水工程では、草本系バイオマスが圧搾脱水される(第一圧搾脱水)。圧搾脱水することにより、草本系バイオマスから溶出したカリウムを含む水分を除くとともに、圧搾して加圧することにより草本系バイオマスの茎等の細片からカリウムを含む水分を滲出させ、さらに、草本系バイオマスの芯等の細片を軟らかくし、又、細胞膜を破壊し、細胞内のカリウムを周囲の水分中に滲出させる。
【0028】
(2)ろ過室そして加水工程では、上記(1)で圧搾脱水された草本系バイオマスに加水する。圧搾脱水された草本系バイオマスに加水することにより、圧搾により加えられていた圧力が解放され、膨張しながら水分を吸収するので、草本系バイオマスに水分が吸収される効率が高く短時間で吸収されるとともに、内部にまで水分が行き渡り、残存するカリウムを水分中に十分に溶出させることができる。
【0029】
(3)ろ過室そして第二圧搾脱水工程では、上記(2)で加水された草本系バイオマスが再び圧搾脱水される(第二圧搾脱水)。加水され水分を吸収した草本系バイオマスを再び圧搾脱水することにより、第一圧搾脱水と同様の原理で、草本系バイオマス中のカリウム含有率をさらに低減することができる。
【0030】
かくして、草本系バイオマスを燃料として燃焼炉で燃焼する場合、ガス化する場合、及び炭化する場合に、その燃焼や燃焼熱の回収、ガス化及び炭化に支障が生じない程度にまで、カリウム含有率を低減させた草本系バイオマスを得ることができるようになる。
【0031】
フィルタープレス脱水装置のろ過室に供給された草本系バイオマスは、ろ過室内に留まったまま第一圧搾脱水、加水及び第二圧搾脱水の各処理をなされ、カリウム含有率を低減させた草本系バイオマスが排出される。
【発明の効果】
【0032】
本発明では、以上のように、草本系バイオマスに第一圧搾脱水を施した後に加水し、その後に第二圧搾脱水を施すことにより、草本系バイオマスのカリウム含有率を大幅に低減できる効果がある。その結果、草本系バイオマスを燃料、ガス化原料及び炭化原料として利用する場合に、炉内にスラッギングが生じたり、流動粒子の凝集が生じるなど、燃焼炉の運転に支障が生じることを防ぐことができ、また、廃熱回収ボイラにファウリングが生じ熱回収に支障が生じることを防ぐことができ、得られた炭化物を問題なく利用することができる。
【0033】
また、本発明は、草本系バイオマスを圧搾脱水し、その後に加水し、再び圧搾脱水する手段が一つの装置に構成された圧搾脱水装置を有するため、草本系バイオマスのカリウム低減処理を一つの装置により行うことができ、設備がコンパクトであり、設備コストを低くすることができ、運転操作を簡便に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の第一実施形態に係る前処理装置の構成の概略を示すブロック図である。
【図2】第一実施形態に係る圧搾脱水装置としてのスクリュープレス脱水装置の構成を示す図であり、(A)は、スクリュープレス脱水装置のスクリュー軸の軸線を含む面での断面図を示し、(B)は、該軸線に対して直角な面での断面図を示している。
【図3(A)】本発明の第二実施形態に係る圧搾脱水装置の構成および動作を示す縦断面図であり、バイオマス供給工程を示している。
【図3(B)】本発明の第二実施形態に係る圧搾脱水装置の構成および動作を示す縦断面図であり、第一圧搾脱水工程および第二圧搾脱水工程を示している。
【図3(C)】本発明の第二実施形態に係る圧搾脱水装置の構成および動作を示す縦断面図であり、加水工程を示している。
【図3(D)】本発明の第二実施形態に係る圧搾脱水装置の構成および動作を示す縦断面図であり、バイオマス排出工程を示している。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、添付図面にもとづき、本発明の実施形態を説明する。
【0036】
<第一実施形態>
本発明では、草本系バイオマスとして、アブラヤシ空果房やキンググラスを用いることができる。本実施形態では、草本系バイオマスとして、アブラヤシ空果房を用いるものとして説明する。
【0037】
図1は、本実施形態に係る前処理装置の構成の概略を示すブロック図である。図2は、本実施形態に係る圧搾脱水装置としてのスクリュープレス脱水装置の構成を示す図であり、(A)は、スクリュープレス脱水装置のスクリュー軸の軸線を含む面での断面図を示し、(B)は、該軸線に対して直角な面での断面図を示している。
【0038】
図1に示されているように、本実施形態に係る前処理装置は、草本系バイオマスとしてのアブラヤシ空果房を圧搾脱水装置10へ供給するに備え、アブラヤシ空果房を破砕する破砕装置3と、破砕された空果房を水に分散させる分散装置4とが設けられている。また、アブラヤシ果房からアブラヤシ空果房を取り出す装置として、アブラヤシ果房を水蒸気で加熱する蒸気加熱装置1と、加熱されたアブラヤシ果房から果実を脱果して空果房とする脱果装置2とが設けられている。
【0039】
アブラヤシ果房は、後に空果房となる茎部分に3〜4cm程度の大きさの果実が数百〜2000個位ついている。上記蒸気加熱装置1は、該アブラヤシ果房をケージに収容し、これに水蒸気を吹き付けて、水蒸気で加熱された状態を数十分程度維持するようになっている。この水蒸気で加熱されることにより、果実は茎部分から分離しやすい状態となる。
【0040】
上記脱果装置2は、横筒状の回転篩を有していて、一端側から回転篩内へ上記アブラヤシ果房を投入すると他端側の出口に達する間に、回転により衝撃力を受けて果実が茎部分から分離して回転篩側面の篩目から落下し、残った空果房が上記出口から排出される。この空果房は、水分を70重量%程度含んでおり、上記破砕装置3へもたらされる。
【0041】
本実施形態では、草本系バイオマスとしてアブラヤシ空果房を用いたので、蒸気加熱装置や脱果装置を設けたが、草本系バイオマスとして、例えばキンググラスを用いる場合には、該蒸気加熱装置や脱果装置を省略できる。
【0042】
上記破砕装置3は、アブラヤシ空果房を前処理に適した寸法に破砕する。該破砕装置3は、その破砕形式に限定されないが、例えば、二軸破砕機を用いることができる。この二軸破砕機は、互いに逆回転する二つの平行な軸体にそれぞれ支持された胴体の周囲にカッタ刃が多数設けられていて、両胴体の間に入り込んだ草本系バイオマスが上記カッタ刃で所定の大きさに裁断されて落下するようになっている。本実施形態のように草本系バイオマスとしてアブラヤシ空果房を用いる場合には、空果房は、例えば、100mm未満の大きさに裁断される。上記分散装置4は、容器に収容された水中に破砕装置3により破砕されたアブラヤシ空果房を混合して分散させる。該アブラヤシ空果房は圧搾脱水装置10へもたらされる。なお、該分散装置は、必須の構成ではなく、省略することも可能である。
【0043】
圧搾脱水装置10は、第一圧搾脱水部11と加水部12と第二圧搾脱水部13とを順に有している。図2(A),(B)に見られるように、圧搾脱水装置10は、スクリュープレス脱水装置として構成されており、横型の円筒状のケーシング(図示せず)内に、横型の円筒状のスクリーン14が設けられ、スクリーン14内に該スクリーンと同軸に延びるスクリュー軸15が配されている。該圧搾脱水装置10は、破砕されたアブラヤシ空果房を、上流側(図2(A)の左方側)に位置する供給口10Aから受け、前処理したアブラヤシ空果房を、下流側(図2(A)の右方側)に位置する排出口10Bから排出する。該圧搾脱水装置10は、上流部に位置する第一圧搾脱水部11、中流部に位置する加水部12、下流部に位置する第二圧搾脱水部13の三つの領域で形成されている。
【0044】
スクリーン14は、例えば、パンチングメタルやウェッジワイヤスクリーンで作られていて、孔径が数百μm〜数mm程度の細孔(図示せず)が無数に設けられている。該スクリーン14は、第一圧搾脱水部11、加水部12、第二圧搾脱水部13にそれぞれ対応して、第一脱水スクリーン14A、加水スクリーン14B、第二脱水スクリーン14Cの三つの領域が形成されている。
【0045】
スクリュー軸15は、供給口10A側から排出口10B側に向け次第に外径が大きくなるようなテーパ状をなしている。すなわち、スクリュー軸15とスクリーン14との間の半径方向間隔が軸方向での供給口10A側から排出口10B側に向け次第に小さくなっている。該スクリュー軸15の外周面には、軸方向(図2(A)の左右方向)のほぼ全域にわたって延びる螺旋状の羽根15Aが設けられている。該スクリュー軸15は、該スクリュー軸15に接続されたスクリュー駆動機16によって軸線まわりに回転駆動され、上記羽根15Aの回転によってアブラヤシ空果房を排出口10B側へ向けて移送するようになっている。
【0046】
図2(A)に見られるように、上記加水部12における加水スクリーン14Bの外側には、加水配管17から供給される水を該加水スクリーン14Bへ向けて噴射する複数のノズル18がスクリュー軸15の軸方向に複数設けられている。また、図2(B)に見られるように、該ノズル18は周方向に複数配されている。該ノズル18は、周方向で揺動可能となっていることが好ましい。該ノズル18から上記加水スクリーン14Bへ向けて噴射された水は該加水スクリーンの細孔を経てアブラヤシ空果房に供給される。
【0047】
以下、圧搾脱水装置10によるアブラヤシ空果房の前処理について説明する。
【0048】
破砕装置3で破砕され分散装置4で分散されたアブラヤシ空果房は、圧搾脱水装置10の第一圧搾脱水部11において、上記スクリュー軸15とスクリーン14との間の半径方向間隔へ供給口10Aから投入された後、スクリュー軸15の回転により、排出口10B側へ移送される。上記間隔は排出口10B側へ向かうにつれて狭くなっているので、アブラヤシ空果房は、スクリュー軸15とスクリーン14とによって圧搾されて、水分が第一脱水スクリーン14Aから排出される。圧搾中に、アブラヤシ空果房から搾り出された水分(圧搾水という)は第一脱水スクリーン14Aでろ過されてケーシング外へ排水される。この圧搾水には、カリウムが含まれているので、圧搾水の排出によってアブラヤシ空果房からのカリウム溶出排除がなされる。
【0049】
加水部12では、ノズル18から加水スクリーン14Bへ向けて散水されることにより、第一圧搾脱水部11で圧搾脱水されたアブラヤシ空果房(脱水草本系バイオマス)が加水される。圧搾脱水されたアブラヤシ空果房に加水することにより、該アブラヤシ空果房には、水分が吸収され内部にまで水分が行き渡り、残存するカリウムを水分中に十分に溶出させることができる。
【0050】
第二圧搾脱水部13では、加水部12で加水されたアブラヤシ空果房(加水草本系バイオマス)が第一圧搾脱水部11と同じ要領で再び圧搾されて、圧搾水が第二脱水スクリーン14Cから排出される。該圧搾水は、第二脱水スクリーン14Cでろ過されてケーシング外へ排水される。該圧搾水には、カリウムが含まれているので、圧搾水の排出によってアブラヤシ空果房からのカリウム溶出排除がなされる。そして、圧搾脱水されたアブラヤシ空果房(脱水草本系バイオマス)は、第二圧搾脱水部13において、カリウム溶出排除がなされた状態で排出口10B側から排出される。
【0051】
第一圧搾脱水部11そして第二圧搾脱水部13から搾り出される圧搾水を油水分離装置により油水分離して得られる水分は、カリウムを高濃度に含有しているために肥料として有用であり、そのまま、農場に散布あるいは濃縮後に肥料として用いることができる。第二圧搾脱水部13から搾り出される圧搾水も高濃度のカリウムを含有する理由は、カリウムを溶出させるために加水部12にて加水する水の量が脱水されたアブラヤシ空果房に水を含ませる程度の量で足りるため、相対的に圧搾液中のカリウムが高濃度になるからである。このため圧搾脱水された圧搾水を油水分離した水分の肥料としての価値が高いものとなっている。
【0052】
このような本実施形態に係る前処理装置では、草本系バイオマスは、破砕装置3で所定の大きさに破砕され、第一圧搾脱水部11で圧搾脱水されて水分が大幅に低減された脱水草本系バイオマスとなる。この脱水草本系バイオマスは、加水部12で加水され水分を適度に吸収し、再び第二圧搾脱水部13で圧搾脱水され、さらに水分が大幅に低減される。
【0053】
破砕された草本系バイオマスを第一圧搾脱水部11で圧搾脱水することにより、草本系バイオマスから溶出したカリウムを含む水分を除くとともに、圧搾して加圧することにより草本系バイオマスの茎等の細片からカリウムを含む水分を滲出させ、さらに、草本系バイオマスの芯等の細片を軟らかくし、又、細胞膜を破壊し、細胞内のカリウムを周囲の水分中に滲出させることができる。加水部12で圧搾脱水された脱水草本系バイオマスに加水することにより、水分が吸収され内部にまで水分が行き渡り、残存するカリウムを水分中に十分に溶出させることができる。加水され水分を吸収した加水草本系バイオマスを第二圧搾脱水部13で再び圧搾脱水することにより、第一圧搾脱水部11と同様の原理で、草本系バイオマス中のカリウム含有率をさらに低減することができる。
【0054】
また、本実施形態では、草本系バイオマスを圧搾脱水する手段、その後に加水する手段および再び圧搾脱水する手段が一つのスクリュープレス脱水装置に構成された圧搾脱水装置を有するため、草本系バイオマスのカリウム低減処理を一つの装置により行うことができ、設備がコンパクトであり、設備コストを低くすることができ、運転操作を簡便に行うことができる。
【0055】
本実施形態では、二つの圧搾脱水部と一つの加水部を設けることとしたが、必要に応じて、一つの圧搾脱水装置に設ける圧搾脱水部と加水部の数を増加させてもよい。この場合、圧搾脱水部と加水部は交互に設けられる。
【0056】
<燃焼・熱回収>
圧搾脱水装置10から取り出された前処理済みの脱水草本系バイオマスは、燃料として燃焼炉へ供給し燃焼し、ボイラにて燃焼ガスから熱回収し蒸気を得て、蒸気タービン発電機により発電したり、温熱源として用いることができる。該燃焼炉としては公知のバイオマス燃焼炉、例えば固定床炉、流動層炉、循環流動層炉、ロータリーキルンを用いることができる。燃焼炉で圧搾バイオマスを燃焼して生じる燃焼熱を熱回収する熱回収装置としては蒸気を発生させるボイラ、熱交換して温水や加熱空気を得る熱交換器などを用いる。発生した蒸気を用いて蒸気タービンを駆動し発電する発電機を接続して電力を得ることもできる。
【0057】
また、前処理済みの脱水草本系バイオマスは、カリウム含有率が大幅に低減されているので、燃料として燃焼炉で燃焼される際に、カリウムが含まれることに起因する問題の発生を防ぐことができ、支障なく円滑に安定して燃焼することができ、燃焼熱を効率的に回収することができる。また、圧搾脱水部から搾り出される圧搾水を油水分離して得られる水分は、カリウムを含んでおり、上述のごとく、肥料として使用される。
【0058】
また、草本系バイオマスとしてアブラヤシ空果房を用いる場合、前処理済みのアブラヤシ空果房を燃焼炉に供給するとともに、アブラヤシ果実から搾油した搾粕であるFiberやアブラヤシ種子から核油を搾油した残渣であるPKS(Palm Kernel Shell)をも燃焼炉へ供給し混合燃焼するようにしてもよい。このようにアブラヤシ空果房とパーム油搾油工場で排出される他のバイオマスとを混合燃焼する場合においても、アブラヤシ空果房中のカリウムを大幅に低減しているため、カリウムが含まれることに起因する問題の発生を防ぐことができ、燃焼するバイオマス全体に対するアブラヤシ空果房の比率を、大幅に増大させることができる。
【0059】
<塩素除去効果>
草本系バイオマスには、塩素を含むものがあり、塩素を含む草本系バイオマスを燃焼すると、塩化水素が生成され熱回収ボイラに腐食が生じる問題が生じる。本実施形態に係る前処理装置を用いて、草本系バイオマスに第一圧搾脱水を施した後に加水し、その後に第二圧搾脱水を施すことにより、カリウムを低減するとともに草本系バイオマスの塩素を大幅に低減できる効果がある。その結果、草本系バイオマスを燃料として利用する場合に、塩素による熱回収ボイラの腐食を防ぐことができる。また、熱回収ボイラに導入する燃焼ガスを高温にすることができるので、発生させる蒸気温度をより高温にでき発電効率を向上させることができる。さらに、草本系バイオマスの塩素を低減するので、ダイオキシンの発生を抑制できる。
【0060】
<第二実施形態>
本実施形態は、圧搾脱水装置がフィルタープレス脱水装置である点で、圧搾脱水装置がスクリュープレス脱水装置である第一実施形態と構成が異なっている。本実施形態においても、草本系バイオマスが圧搾脱水装置へ供給されるまでの構成は第一実施形態と同じであるので、説明を省略し、圧搾脱水装置の構成を中心に説明する。以下、草本系バイオマスとしてアブラヤシ空果房を処理する例を説明するが、キンググラス等の他の草本系バイオマスを処理できる点は第一実施形態と同様である。
【0061】
図3(A)ないし図3(D)は、本実施形態の第二実施形態に係る圧搾脱水装置20の構成および動作を示す縦断面図であり、図3(A)はバイオマス供給工程、図3(B)は第一圧搾脱水工程および第二圧搾脱水工程、図3(C)は加水工程、図3(D)はバイオマス排出工程を示している。
【0062】
図3(D)を用いて、圧搾脱水装置20の構成を詳細に説明する。圧搾脱水装置20は、ろ板21とダイヤフラムろ板22とから成る対がその板厚方向でガードレール(図示せず)上に複数配列されて構成されている。図3(D)には、一対のろ板21とダイヤフラムろ板22とが示されている。各対において、ダイヤフラムろ板22は締付シリンダ等によりガードレール上を往復動可能となっている。本実施形態では、各対において、ダイヤフラムろ板22が、ろ板21と接触する閉位置(図3(A)〜(C)参照)および該ろ板21から離間した開位置(図3(D))の間で往復動するようになっている。また、ろ板21とダイヤフラムろ板22との間には、アブラヤシ空果房を受け入れるための空間であるろ過室20Aが形成されている。
【0063】
図3(D)には、一対のろ板21とダイヤフラムろ板22とが互いに離間した開位置にある状態で示されている。ろ板21は、ダイヤフラムろ板22と対向する面に凹部21Aが形成されているとともに、該凹部21Aの内壁面のうち側板面(ダイヤフラムろ板22と対向する面)がろ過床21Fとして機能する。該ろ過床21Fには、図3(D)の紙面に対して直角に延びる複数の溝部21Bが形成されており、該複数の溝部21Bは互いに連通している。上記凹部21Aの上方位置には、分散装置4からのアブラヤシ空果房および加水供給部(図示せず)からの水の供給のための供給口21Cがろ板21を貫通して形成されており、上記凹部21Aの下方位置には、外部への圧搾水の排出のための排出口21Dがろ板21を貫通して形成されている。上記供給口21Cはろ過室20Aと連通しており、上記排出口21Dは該ろ過室20Aおよび上記複数の溝部21Bと連通している。
【0064】
上記ろ板21のろ過床21Fには、上記複数の溝部21Bを覆うようにろ材23が設けられており、後述するように該ろ材23がアブラヤシ空果房の圧搾水をろ過するようになっている。ろ材23は、例えば、ろ布やウェッジワイヤフィルタ等の金属ろ材で形成されている。
【0065】
ダイヤフラムろ板22は、ろ板21と対向する面に該ろ板21の凹部21Aと対応する凹部22Aが形成されている。上記凹部22Aの上方位置には、分散装置4からのアブラヤシ空果房および加水供給部(図示せず)からの水を供給するための供給口22Cがダイヤフラムろ板22を貫通して形成されており、上記凹部22Aの下方位置には、外部への圧搾水の排出のための排出口22Dがダイヤフラムろ板22を貫通して形成されている。
【0066】
上記供給口22Cそして排出口22Dはろ過室20Aと連通している。また、該供給口22Cそして排出口22Dは、ろ板21とダイヤフラムろ板22とが閉位置にあるときに、ろ板21の供給口21Cそして排出口21Dとそれぞれ連通する(図3(A)〜(C)参照)。また、上記供給口22C,22Dは、ろ板21およびダイヤフラムろ板22の複数の対同士間にわたって一本の供給管(図示せず)によって接続されており、該供給管から各対のろ過室20Aへアブラヤシ空果房および水が供給されるようなっている。また、上記凹部22Aには、後述するように圧搾用空気が送入および排出される空気口22Eが該凹部22Aの側板(板面がろ板21と対向する板部)を貫通して形成されている。本実施形態では、アブラヤシ空果房および水は供給口21Cからろ過室20Aに供給される。また、閉位置にて該供給口21Cと連通した供給口22Cは、該供給口21Cからのアブラヤシ空果房および水を、上記ろ板21とダイヤフラムろ板22との対に隣接する他の対におけるろ過室へ供給するようになっている。
【0067】
上記凹部22A内には、該凹部22Aに適合して収容される板状のダイヤフラムろ過床24が設けられている。該ダイヤフラムろ過床24は、例えば、弾性ゴム等によって作られている。該ダイヤフラムろ過床24は、ろ板21と対向する面に、図3(D)の紙面に対して直角に延びる複数の溝部22Bが形成されており、該複数の溝部22Bは互いに連通している。また、該複数の溝部22Bは、ダイヤフラムろ過床24が後述する圧搾位置にあるとき(図3(B))、排出口22Dと連通する。
【0068】
上記ダイヤフラムろ板22における上記溝部22Bが形成されている板面には、該溝部22Bを覆うようにろ材25が設けられており、該ろ材25がアブラヤシ空果房の圧搾水をろ過するようになっている。ろ材25も上記ろ材23と同様に、例えば、濾布やウェッジワイヤフィルタ等の金属ろ材で形成されている。
【0069】
図3(D)に見られるように、上記凹部22Aの側板面と上記ダイヤフラムろ板22との間にはダイヤフラム室26として機能する空間が形成されている。後述するように、空気口22Eから圧搾用空気が送入されると該ダイヤフラム室26は膨張し(図2(B)参照)、該空気口22Eから圧搾用空気が排出されると該ダイヤフラム室26は収縮する(図3(C)参照)。
【0070】
以下、図3(A)ないし図3(D)を用いて圧搾脱水装置20によるアブラヤシ空果房の前処理について説明する。
【0071】
<バイオマス供給工程>
まず、図3(A)に見られるように、ダイヤフラムろ板22をろ板21側へ移動させ、閉位置にもたらす。この結果、ダイヤフラムろ板22の供給口22Cおよび排出口22Dがろ板21の供給口21Cおよび排出口21Dとそれぞれ連通する。次に、ろ板21のろ材23とダイヤフラムろ板22のろ材25との間の空間、すなわちろ過室20A内へアブラヤシ空果房Pを供給口21Cから投入する。
【0072】
<第一圧搾脱水工程>
次に、図3(B)に見られるように、ダイヤフラムろ板22の空気口22Eからダイヤフラム室26へ圧搾用空気を供給して該ダイヤフラム室26を膨張させ、ダイヤフラムろ過床24をろ板21側へ向けて移動させる。この結果、図3(B)に示されるように、ダイヤフラムろ過床24はアブラヤシ空果房Pを圧搾する圧搾位置にもたらされ、該アブラヤシ空果房Pがろ材23とろ材25とによって挟圧されて圧搾脱水される。アブラヤシ空果房Pから搾り出された圧搾水は、ろ材23,25でろ過されて、複数の溝部21B,22Bを通ってから排出口21D,22Dから外部へ排出される。この圧搾水には、カリウムが含まれているので、圧搾水の排出によってアブラヤシ空果房Pからのカリウム溶出排除がなされる。
【0073】
このようにアブラヤシ空果房Pを圧搾脱水することにより、該アブラヤシ空果房Pから溶出したカリウムを含む水分を除くとともに、圧搾して加圧することによりアブラヤシ空果房Pの細片からカリウムを含む水分を滲出させ、さらに、該細片を軟らかくし、又、細胞膜を破壊し、細胞内のカリウムを周囲の水分中に滲出させる。
【0074】
<加水工程>
次に、図3(C)に見られるように、空気口22Eから圧搾用空気を排出するとともに、加水供給部(図示せず)から供給口21Cを経てろ過室20Aに水を供給することにより、上記第一圧搾工程で圧搾脱水されたアブラヤシ空果房(脱水草本系バイオマス)に加水する。圧搾用空気の排出によりダイヤフラムろ過床24は、ろ板21から離れる方向(図3(C)での右方)へ向けて移動し、アブラヤシ空果房Pは上記第一圧搾脱水工程で加えられていた圧力が解放される。そして、アブラヤシ空果房Pに加水することにより、該アブラヤシ空果房Pは、膨張しながら水分を吸収するので、該アブラヤシ空果房Pに水分が吸収される効率が高く短時間で吸収されるとともに、内部にまで水分が行き渡り、残存するカリウムを水分中に十分に溶出させることができる。
【0075】
本実施形態では、供給口から水を供給することとしたが、これに代えて、例えば、排水口を供給口としても利用することにより該排水口から水を供給することとしてもよい。また、ろ過床に給水系(図示せず)を別途設けて該ろ過床から水を供給するようにしてよい。
【0076】
<第二圧搾脱水工程>
次に、図3(B)に見られるように、第一圧搾脱水工程と同様に、ダイヤフラム室26へ圧搾用空気を供給して該ダイヤフラム室26を膨張させ、ダイヤフラムろ過床24を圧搾位置にもたらすことにより、アブラヤシ空果房Pを再び圧搾脱水する。加水され水分を吸収したアブラヤシ空果房(加水草本系バイオマス)を再び圧搾脱水することにより、第一圧搾脱水と同様の原理で、該アブラヤシ空果房中のカリウム含有率をさらに低減することができる。以上のように、第一圧搾工程、加水工程および第二圧搾脱水工程にてアブラヤシ空果房を処理することにより前処理が完了する。
【0077】
<バイオマス排出工程>
図3(D)に示されるように、ダイヤフラムろ板22をろ板21から離れる方向(図3(D)での右方)に移動させて開位置にもたらすとともに、空気口22Eから圧搾用空気を排出して、ダイヤフラムろ過床24をろ板22の凹部22A内へ移動させる。この結果、ろ過室20Aが大きく開放され、圧搾脱水されたアブラヤシ空果房P(脱水草本系バイオマス)がろ過室20A外へ落下排出される。
【0078】
本実施形態では、圧搾脱水装置20のろ過室20Aに供給されたアブラヤシ空果房Pが、該ろ過室20A内に留まったまま第一圧搾脱水、加水及び第二圧搾脱水の各処理を施され、カリウム含有率を低減させたアブラヤシ空果房Pが排出されるようになっている。このように、第一圧搾脱水工程、加水工程及び第二圧搾脱水工程の三つの工程が一つの圧搾脱水装置20で行われるので、設備がコンパクトであり、設備コストを低くすることができ、運転操作を簡便に行うことができる。
【0079】
また、本実施形態では、二回の圧搾脱水工程と一回の加水工程を行うこととしたが、必要に応じて、一つの圧搾脱水装置に設ける圧搾脱水工程と加水工程の回数を増加させてもよい。この場合、圧搾脱水工程と加水工程は交互に行われる。
【符号の説明】
【0080】
10 圧搾脱水装置(スクリュープレス装置)
11 第一圧搾脱水部
12 加水部
13 第二圧搾脱水部
20 圧搾脱水装置(フィルタープレス装置)
20A ろ過室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
草本系バイオマスを燃料、ガス化原料又は炭化物原料として利用する前に前処理を施す前処理装置であって、
草本系バイオマスを圧搾脱水し、その後に加水し、再び圧搾脱水する手段が一つの装置に構成された圧搾脱水装置を有することを特徴とする草本系バイオマスの前処理装置。
【請求項2】
圧搾脱水装置はスクリュープレス脱水装置であり、草本系バイオマスを受け入れ圧搾脱水する第一圧搾脱水部と、第一圧搾脱水部から移送された脱水草本系バイオマスに加水する加水部と、加水部から移送された加水草本系バイオマスを再び圧搾脱水し脱水草本系バイオマスを排出する第二圧搾脱水部とを有することを特徴とする請求項1に記載の草本系バイオマスの前処理装置。
【請求項3】
圧搾脱水装置はフィルタープレス脱水装置であり、対面するろ材の間隙に草本系バイオマスを受け入れ圧搾脱水するろ過室と、ろ過室内の脱水草本系バイオマスに加水する加水供給部とを有し、ろ過室内に受け入れた草本系バイオマスを圧搾脱水した後に、加水供給部から脱水草本系バイオマスに加水し、再び圧搾脱水し、脱水草本系バイオマスを排出することとする請求項1に記載の草本系バイオマスの前処理装置。
【請求項4】
草本系バイオマスを燃料、ガス化原料又は炭化物原料として利用する前に前処理を施す前処理方法であって、
草本系バイオマスを圧搾脱水する第一圧搾脱水工程と、第一圧搾脱水工程で圧搾脱水された脱水草本系バイオマスに加水する加水工程と、加水工程で加水された加水草本系バイオマスを再び圧搾脱水する第二圧搾脱水工程とを有し、一つの圧搾脱水装置により上記三つの工程を行うことを特徴とする草本系バイオマスの前処理方法。
【請求項5】
草本系バイオマスを燃料、ガス化原料又は炭化物原料として利用する前に前処理を施す前処理方法であって、
スクリュープレス脱水装置の上流部において草本系バイオマスを受け入れ圧搾脱水する第一圧搾脱水工程と、スクリュープレス脱水装置の中流部において上流部から移送された脱水草本系バイオマスに加水する加水工程と、スクリュープレス脱水装置の下流部において中流部から移送された加水草本系バイオマスを再び圧搾脱水する第二圧搾脱水工程とを有することを特徴とする草本系バイオマスの前処理方法。
【請求項6】
草本系バイオマスを燃料、ガス化原料又は炭化物原料として利用する前に前処理を施す前処理方法であって、
フィルタープレス脱水装置のろ過室に草本系バイオマスを供給し圧搾脱水する第一圧搾脱水工程と、ろ過室内の脱水草本系バイオマスに加水する加水工程と、ろ過室内の加水された草本系バイオマスを再び圧搾脱水する第二圧搾脱水工程とを有することを特徴とする草本系バイオマスの前処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3(A)】
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【図3(B)】
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【図3(C)】
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【図3(D)】
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【公開番号】特開2012−153790(P2012−153790A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−13709(P2011−13709)
【出願日】平成23年1月26日(2011.1.26)
【出願人】(000004123)JFEエンジニアリング株式会社 (1,044)
【Fターム(参考)】