説明

荷受台昇降装置

【課題】様々な使用形態の中でも良好な状態で作動させることが可能な荷受台昇降装置を提供する。
【解決手段】車両の荷台に設けられて地面と荷台との間で昇降作動される荷受台と、前記荷受台の昇降作動が所定の状態であることを報知する報知部7と、車両バッテリ30と報知部7とが接続されて前記荷受台の昇降作動を制御する制御部10とを備え、制御部10は、車両バッテリ30の電圧を検知する電圧検知部12と、電圧検知部12の出力信号を受けて報知部7のオン又はオフを判定する判定部13とを有する構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地面と荷台との間における荷物の積み降ろし作業を支援する荷受台昇降装置のメンテナンスに関する。
【背景技術】
【0002】
荷受台昇降装置は、油圧シリンダの伸縮力を利用して荷受台を昇降させる構成を有しており、油圧シリンダには油圧ポンプによって作動油が供給され、油圧ポンプはモータによって駆動される。
【0003】
例えば、車両後方に左右一対の支柱が立設され、当該支柱内に昇降可能なスライダが配されてそのスライダに荷受台が連結支持された構成の荷受台昇降装置では、スライダの昇降に伴って荷受台も支柱に沿って昇降する。油圧シリンダは一対の支柱間に架設されたクロスメンバに配されている。油圧シリンダの伸縮力は、一端が油圧シリンダに接続されて他端がスライダに止着されたワイヤを介してスライダの昇降駆動力として伝達される。
【0004】
こうした油圧シリンダの伸縮力を荷受台の昇降に用いるワイヤ等は動力伝達部であり、油圧シリンダに作動油を供給するモータや油圧ポンプ等は荷受台の昇降作動の駆動部である。駆動部や動力伝達部の経年変化は荷受台の昇降性能を大きく左右するため、定期的なメンテナンスは必要不可欠である。
【0005】
ただし、こうした駆動部や動力伝達部等は、外部からの衝撃を回避する構成で保護されていることが多い。例えば、モータ等の駆動部は、支柱近傍の樹脂ケース内に配され、ワイヤ等の動力伝達部は支柱内やクロスメンバ内に配されている。そのため、駆動部や動力伝達部の経年変化を視認することは難しい。また、駆動部や動力伝達部は狭小なスペースに配されているため、他部品と近接した状態で配されており、交換や点検の作業が煩雑となる。
【0006】
そこで、交換や点検の時期については、所定期間の経過時と予め設定されている。また、特許文献1のように支柱内の交換作業等を簡易にする構成も採用されている。こうした設定や提案により、メンテナンスが定期的に行われるようにするとともに、部品の交換作業等に関するコストの低減などが図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−352170号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、定期的なメンテナンス管理が行われていても、荷受台昇降装置の使用形態は作業者ごとに異なるため、使用形態に合った適切なメンテナンス管理という点では改善の余地がある。
【0009】
荷受台昇降装置は、車両が停止している時に、車両バッテリの電力供給を受けて駆動される。荷受台昇降装置の駆動が同じ場所で過度に行われた状態、例えば荷受台の昇降作動が多く行われた状態や、非常に重い荷物の積みおろしに利用された状態になると、車両バッテリの電圧値が大きく低下してしまう。一般に、車両走行中の車両バッテリの電圧値変動を検知する車両もあるが、車両が停止状態における電圧値は管理されていない。そのため、車両バッテリの電圧値が所定値を下回ると、車両発進時に車両バッテリが機能せず、安定した車両の発進を阻害する恐れがある。
【0010】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであって、車両が停止中において、車両バッテリの電圧値の大きな低下を防止することが可能な荷受台昇降装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る荷受台昇降装置は、以下の構成を有するものとする。
【0012】
車両の荷台に設けられて地面と荷台との間で昇降作動される荷受台と、前記荷受台の昇降作動が所定の状態であることを報知する報知部と、車両バッテリと前記報知部とが接続されて前記荷受台の昇降作動を制御する制御部とを備え、前記制御部は、前記車両バッテリの電圧を検知する電圧検知部と、当該電圧検知部の出力信号を受けて前記報知部のオン又はオフを判定する判定部とを有する荷受台昇降装置とする。
【0013】
ここで、「荷受台の昇降作動が所定の状態」とは、荷受台昇降装置の駆動用電源としても用いられる車両バッテリの電圧値が、車両が安定した状態で発進することができるだけの電圧値を車両バッテリが有していない状態を指す。この状態を検知して報知することで荷受台昇降装置の作動の要否を作業者が判断することができる。つまり、安定した車両発進を阻害するような車両バッテリの電圧値の大きな低下を防止することができる。
【0014】
荷受台昇降装置は、上記構成に加えて、前記荷受台を昇降駆動する駆動部と、前記荷受台の昇降指令を行う操作部とが前記制御部に接続されており、当該制御部は、前記操作部の操作信号を検知する操作検知部をさらに有し、前記判定部は、前記電圧検知部と前記操作検知部との少なくともいずれかの出力信号を受けて前記報知部のオン又はオフを判定する判定部とを有する構成にすることができる。
【0015】
こうした構成とした場合には、「荷受台の昇降作動が所定の状態」とは、「車両バッテリの電圧値が大きく低下している状態」や「操作部から予め設定した回数や時間を越える操作信号が出力されている状態」を指している。これらの状態を検知すれば、過度に荷受台の昇降作動が行われて適切な状態ではないとして報知部をオンにすることが可能となる。
【0016】
以上のような構成とすることで、作業者は荷受台の昇降作動を停止したり使用回数を制限したり、または適切なタイミングで部品交換等を行うことができ、良好な状態で荷受台昇降装置を作動させることができる。
前記操作検知部は、前記荷受台の上昇作動又は下降作動の少なくともいずれかの作動回数を計測する計測部を有する構成としても良い。
前記操作検知部は、前記荷受台の上昇作動又は下降作動の少なくともいずれかの作動時間を計測する計測部を有する構成としても良い。
【0017】
操作検知部で上記のように荷受台の実施の作動回数又は作動時間を計測することで、様々な使用形態の荷受台昇降装置に対応することができる。実施の作動回数又は作動時間に応じて適宜部品の交換や点検作業が実施することができる。
【0018】
さらに、前記駆動部と前記制御部との間の接続又は遮断の切り替えを行う切り替え部を有し、当該切り替えは、前記電圧検知部または前記操作検知部の少なくともいずれかの検知信号によって制御される構成とすることもできる。
【0019】
切り替え部を有することで、「荷受台の昇降作動が所定の状態」になったときに、荷受台の昇降作動を停止させることができるので、当該所定の状態から車両バッテリ、駆動部、又は動力伝達部にさらに負荷がかかることを防止することができる。
【0020】
また、前記判定部は、前記駆動部の駆動を検知する駆動検知部をさらに有する構成としても良い。駆動検知部を設けることで、駆動部の経年変化に即時かつ的確に対応することが可能となる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の構成とすることで、作業者は荷受台の昇降作動を停止したり使用回数を制限したり、または適切なタイミングで部品交換等を行うことができ、良好な状態で荷受台昇降装置を作動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】(a)は第1の実施形態に係る荷受台昇降装置の要部斜視図であり、(b)は荷受台の昇降状態を示す側面図である。
【図2】第1の実施形態に係る荷受台昇降装置のシーケンス回路図である。
【図3】第1の実施形態に係る判定部におけるフローチャートである。
【図4】第2の実施形態に係る荷受台昇降装置のシーケンス回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明に係る実施形態に関して、図面を用いて説明する。
(第1の実施形態)
【0024】
図1(a)は、荷受台昇降装置100の要部斜視図である。荷受台昇降装置100は、車両の後端に立設された左右一対の支柱1と、支柱1内部で昇降自在なスライダ2と、スライダ2の下端部に支持された荷受台3と、支柱1の間に架設されたクロスメンバ8内に配された油圧シリンダ5と、荷受台3の昇降を操作する操作部6と、荷受台3の昇降作動の状態に関する報知を行う報知部7とを備えている。
【0025】
支柱1は後壁に切欠き部1aが設けられており、この切欠き部1aからスライダ2の下端部2aが後方に突出している。荷受台3はこの下端部2aに対して上下方向に回動可能に枢支されている。
【0026】
ワイヤ4は、一端部が左右のスライダ2の上端部に止着され、スライダ2から上方に導かれ、支柱1の上部に設けられたシーブ21で下方に折り返される。折り返されたワイヤ4の他端部は下方に導かれ、支柱1の下部からシーブ(不図示)を介して油圧シリンダ5に導かれて適宜止着されている。
【0027】
油圧シリンダ5は、伸縮作動を行うことでワイヤ4を支柱1に繰り出し、又は支柱1から引き込んでスライダ2を昇降作動させる。このように油圧シリンダ5の伸縮力がスライダ2の昇降の動力として用いられ、ワイヤ4等の動力伝達部を解してスライダ2に伝達される。スライダ2の昇降に伴って荷受台3も支柱1に沿って昇降作動される。
【0028】
荷受台3の昇降作動は、作業者が操作部6に設けられた操作ボタンを押すことで行われる。操作部6は、車両後方で左側方部に配された樹脂ケース9に設けられている。当該樹脂ケース9は、図示は省略するが内方に荷受台3の昇降を駆動する駆動部が配されてなる構成を有し、駆動部とは電動モータ、油圧ポンプ、制御弁等で構成されている。当該駆動部を介して、操作部6からの操作指令に対応して油圧シリンダ5への作動油の供給が行われる。
【0029】
報知部7は、支柱1の側壁に設けられており、発光部としてLEDが用いられている。荷受台3の上昇回数が所定回数に達した場合、操作部6を介して上昇指令が所定の連続時間を越えて出力されている場合、又は車両バッテリが荷受台3の上昇作動時に所定の電圧値以下となっている場合に報知部7が駆動されて作業者に報知するよう設定されている。
【0030】
荷受台昇降装置100は、図1(b)の側方図で示すように作動される。荷受台3は、車両走行時には、一点鎖線部のように車両後方で起立した状態3aで格納される。荷受台昇降装置100の使用時には、荷受台3を手動で水平状態3bに回動させ(矢印A1)、水平な状態を維持したまま接地状態3cになるまで下降させる(矢印A2)。なお、水平状態3bのとき、荷受台3は荷台の床面Fと同じ高さとなる。
【0031】
荷受台3の昇降動作は、操作部6に設けられた2種類のボタン61、62を操作することで行われる。上昇指令を出力する上昇ボタン61が押され続けている(オン状態)と荷受台3は上昇し、当該ボタン61が押されなくなる(オフ状態)と上昇動作は停止する。また、下降指令を出力する下降ボタン62が押され続けている(オン状態)と荷受台3は下降し、当該ボタン62が押されなくなる(オフ状態)と下降動作は停止する。
【0032】
こうして荷受台3を昇降作動させる際に、報知部7による報知が行われていると、作業者は荷受台3を昇降させる作動状態が良好ではないことを認識することができる。特に、報知部7と操作部6とが車両の同じ側方側(車両の左側)に設けられているので、昇降操作時に認識しやすい。
【0033】
荷受台昇降装置100は図2で示すシーケンス回路を有している。本回路は、駆動部20、操作部6、及び荷受台3の昇降作動の制御を行う制御部10が、車両バッテリ30の電力供給を受けることができる構成となっている。制御部10によって、荷受台3の昇降作動の良否状態が判断される。なお、制御部10では、車両バッテリ30からの電力供給は、運転室内に設けられたメインスイッチ40のオン又はオフの切り替えによって行われる。なお、駆動部20は、油圧シリンダ5に作動油の供給を行う部品のユニット部を指すが、図2ではそのユニット部を構成するモータMをその代表として例示している。
【0034】
制御部10は、車両バッテリ30と、駆動部20と、操作部6と、報知部7とが接続されるとともに、内部に操作部6の上昇指令を受けて駆動部20等の制御を行うCPU(中央処理部)10aと、操作部6の上昇指令を検知する操作検知部11と、車両バッテリから供給される電源電圧を検知する電圧検知部12と、操作検知部11又は電圧検知部12の少なくとも一方の検知に基づいて報知部7のオン又はオフの切り替え制御を行う判定部13とを有する。
【0035】
操作検知部11は、荷受台3の上昇指令が出力されている時間を計測する時間計側部11aと、荷受台3の上昇回数を計測する回数計測部11bとで構成されている。本実施形態では操作検知部11は両計測部11a、11bを備える構成としているが、いずれか一方のみを有する構成としても構わない。
【0036】
時間計測部11aは、上昇ボタン61が押されると判定部13に信号出力し、上昇ボタン61が連続して押され続けている状態では、その押され続けている間は連続して判定部13に信号出力する。判定部13では、時間計測部11aから所定時間TS(例えば15秒)以上の連続した出力信号を受けると、報知部7をオン状態として報知させる信号を報知部7に出力する。所定時間TSに関しては、連続して上昇ボタン61が押され続けることでモータMの連続駆動が生じ、モータの焼損を招かないようにするために前もって報知部7を駆動させる時間として設定される。これにより、作業者に注意喚起を促すことができる。報知部7によって報知されることで、作業者はモータMの過度な駆動を認識して上昇ボタン61が連続して押された状態を解除することができる。本実施形態では、上昇ボタン61が押されていない場合には荷受台3の上昇作動が停止される設定としているが、一旦上昇ボタン61を押せば改めて上昇ボタン61を押すまでは、荷受台3の上昇作動が継続して行われる設定の場合、作業者が改めて上昇ボタン61を押すことを忘れてしまうことがある。そのような場合には、上記の所定時間TSになることで報知部7による報知が行われることは特に有益である。
【0037】
回数計測部11bは、荷受台3の昇降回数を計測して、回数が増えるごとに判定部13に信号出力する。荷受台3の昇降回数が所定回数E(例えば8,000回)に達すると、判定部13は、報知部7をオン状態として報知する信号を報知部7に出力する。当該所定回数Eは、張架されたワイヤ4の撓みや、モータブラシの磨耗が生じやすくなる回数を予め調査して設定される。こうした所定回数を設定して作業者が認識することができるようにすると、駆動部20や動力伝達部(ワイヤやシーブ等)の実稼動に対応させてメンテナンスを実施するタイミングを適切に把握することができる。
【0038】
また、制御部10と駆動部20との間にはコンタクタCTが配されている。このコンタクタCTは、操作部6の上昇ボタン61がオン状態への切り替えと同期して閉状態となり、CPU10aを介した操作部6からの上昇指令を駆動部20に出力する。
【0039】
制御部10には、さらにCPU10とコンタクタCTとの間の接続が「接続状態」又は「遮断状態」に切り替える切り替え部50が配されている。切り替え部50は時間計測部11aにも接続されており、時間計測部11aからの出力信号を受けて上記の切り替えを行うように設定されている。例えば、時間計測部11aが所定時間TL(例えば20秒)以上の間、上昇ボタン61が押し続けられた状態となると、切り替え部50は「接続状態」から「遮断状態」となるように設定されている。このように「遮断状態」に切り替えられると、強制的に操作部6からの上昇指令が遮断されてモータMの駆動が停止する。当該所定時間TLは、報知部7が報知されるための閾値となる時間TSより長い時間に設定することで、不意にモータMの駆動が停止して作業者の昇降作業に影響を及ぼすことを防止できるが、この所定時間TLの長さは上記時間TSと同値に設定しても構わない。なお、本実施形態では、時間計測部11aのみの出力信号に対応して切り替え部50による切り替えが行われる設定としているが、回数計測部11bの出力信号のみに対応する設定でも、両計測部11a、11bの出力信号に対応する設定でも構わない。
【0040】
このように操作検知部11による操作状況に応じて、報知部7を駆動させたり、モータMなどの駆動部の駆動を規制したりすることで、駆動部の経年変化による性能劣化に早期に対応できる。
【0041】
電圧検知部12は、電圧計を用いて車両バッテリ30の電圧値を検知し、判定部13に信号出力する。判定部13では、その電圧値が所定値以下となった場合に報知部7を報知する信号を報知部7に出力する。荷受台昇降装置100は、車両停止中に作動されるため、車両が停止している間に電圧値が低下する。そこで、その電圧値を検知することで、荷受台昇降装置100の過度な使用によって電圧値の大きな低下が生じた場合には、報知部7を介して作業者に報知し、車両が発進できなくなる事態を回避することができる。つまり、判定部13が報知部7に出力するために閾値となる電圧値は、車両の安定発進を確保した値となる。
【0042】
なお、時間計測部11aと電圧検知部12とは、それぞれ車両バッテリ30との間にギボシ端子110、120を用いた接続部が設けられている。当該ギボシ端子110、120の抜き差しによって車両バッテリ30との接続のオン又はオフ状態を切り替えることができ、一旦ギボシ端子110、120を抜くと蓄積された計測データおよび検知データがリセットされる設定となっている。つまり、時間計測部11aや電圧検知部12によって報知部7が駆動された後に改めて計測又は検知を行う際には、ギボシ端子110、120を抜くことで新たな計測又は検知が可能となる。
上記構成を有する制御部10を用いた荷受台昇降装置100は、図3のフローチャートの手順に沿って作動される。
【0043】
先ず、作業者が荷受台昇降装置100を作動させる準備を行う(S1)。具体的には、車両停止後に、メインスイッチ40をオン状態とし、荷受台3を水平状態3bにし、下降ボタン62を押し続けて荷受台3を接地状態3cとする(図1(b)参照)。接地状態3cの荷受台3に荷物を積み込んだ後、上昇ボタン61を押す。
【0044】
このとき、電圧検知部12は車両バッテリ30の電圧値を検知している(S2)。検知した電圧値が所定値以上であれば報知部7は駆動されずに、上昇指令を受けてモータMが駆動され、油圧ポンプによって作動油が油圧シリンダ5に供給されて荷受台3が上昇する(S3)。一方、電圧値が所定値以下ならばメインスイッチ40がオン状態となった時点で報知部7による報知が行われる(S9)。
【0045】
上昇ボタン61を押し続けている間、荷受台3は上昇されるが、図1(b)で示したような最上端位置(水平状態3b)まで上昇したにも関わらず、継続して上昇ボタン61が押されているような状態、つまり接地状態3cから水平状態3bまで上昇するのに要する時間T(例えば5〜10秒)に達すると昇降回数をN(=0、1、2、3、・・・)回からN+1回とする(S4)。一方、上昇ボタン61が連続して時間T以上押し続けてられていない状態、例えば上昇ボタン61が押されていない状態(オフ状態)となった時点でモータMの駆動が停止され(S5)、改めて上昇ボタン61が押されればモータMが駆動されて上昇作動が行われる。なお、上述のとおり、モータMが停止される前(時間TS経過時点)には報知部7による報知が行われる(S9)。
【0046】
そして、上昇ボタン61が時間Tを超えて時間TLに達するとモータMの焼損を生じる恐れがあり、モータMの駆動を強制的に停止するように設定されている(S5)。ここで、モータMが強制的に停止されるための閾値となる時間TLは、例えば継続上昇時間Tの2倍となるような時間であり、上昇ボタン61を押し続けていれば十分に接地状態3cから水平状態3bまで移動している時間である。
【0047】
一方、モータMの停止に至る時間TLになる前に上昇ボタン61が押されない状態(オフ状態)となっても、メインスイッチ40がオン状態のままならば、繰り返して荷受台3の昇降作動が行われる。そこで、下降ボタン62が押されて荷受台3が接地状態3cになった(S6)後に、上昇ボタン61が押されて同様に荷受台3の昇降作動手順が繰り返される(S7)。こうした昇降作動が繰り返されて、累計の昇降回数が例えば8,000回などの予め設定した回数Eに達する(S8)と、駆動部20や動力伝達部のメンテナンスを促す報知部7の駆動が設定されている(S9)。
【0048】
荷受台3の昇降回数の計測に用いている上昇継続時間Tに関しては、荷受台3に荷物が積み込まれていない状態で上昇ボタンを押し続け、地面から水平状態3bの位置(図1(b)参照)に達するのに要する時間(継続上昇時間)とする。荷受台3に荷物が載せられていない状態のとき、荷物が載せられている状態と比較して最も大きな上昇速度を得ることができるため、接地位置からの上昇時間が最も短くなる。そのため、荷物が積み込まれている荷受台3を水平状態3bの近傍位置まで上昇させるには、少なくとも継続上昇時間Tだけは上昇ボタン61が押されている(荷受台3が上昇している)ことが必要となる。また、荷受台3の昇降回数を計測するには、上述のような上昇計測時間Tによる時間換算だけでなく、荷受台3が水平状態3bとなった際に機能するリミットスイッチ等を配することで直接的な回数の計測を行う構成としても良い。なお、判定部13は記憶部(不図示)を有しており、記憶部で計測した昇降回数が記憶される。
【0049】
以上のように、時間計測部11a、回数計測部11b及び電圧検知部12による検知が行われる構成とすることで、荷受台3の昇降作動の状態が良い状態か否かを判断して作業者に報知することができる。そのため、作業者は、荷受台昇降装置100の実稼動による経年変化を把握することができ、適切なタイミングで効率的なメンテナンス管理を行うことができる。つまり、使用頻度が高い場合、ワイヤ等の経年変化をその使用頻度に基づいて判断することができ、荷受台昇降装置1の大きな機能低下を招くこともない。また、使用頻度が低い場合には、予め想定していた時期ではワイヤ等の劣化が生じていないことを判断することができ、作業工数の多い交換作業を回避するとともにワイヤ等の費用対効果を高めることもできる。また、油圧シリンダの駆動は、既知の油圧回路装置によって行われ、モータ駆動される油圧ポンプが作動油を給排する。荷受台3の昇降回数が多くなるとモータの劣化も表出し、特に、ブラシ部分の劣化は顕著となり通電効率が大きく低下する。本実施形態の計測管理によって、作業工数が特に多くなるブラシ等の交換作業も適正なタイミングで実施することが可能となる。
(第2の実施形態)
本実施形態の荷受台昇降装置200は、第1の実施形態と異なるシーケンス回路を有しており、異なる部分を中心に図4を用いて説明する。
制御部200は、操作部6の操作信号を検知する操作検知部として回数計測部11bのみを有し、駆動部20の駆動状態を検知する駆動検知部201と有する。
【0050】
駆動検知部201は駆動部20のモータMの温度を検知して、判定部13に信号出力する。判定部13では、予め設定されたモータMの温度より高いか否かを比較し、検知温度がその設定温度より高くなったときには報知部7が駆動される。判定部13では、単に温度の高低を判断するのではなく、単位時間における温度の上昇比率で判断するように設定しても良い。駆動検知部201を有することで、制御部200では荷受台3の昇降作動において、駆動部20が所定の状態であるか否かを判定することができる。駆動検知部201はギボシ端子210を介して駆動部20に接続されており、ギボシ端子210を抜くと駆動検知部201での蓄積データがリセットされる。なお、駆動検知部201に関しては、作動油の温度を検知するものや、ワイヤ4の張架力を検知するものなど他の駆動力や出動力伝達力を検知するものでも構わない。
(その他の事項)
【0051】
荷受台3の昇降指令の出力に関しては、車両後方に配された樹脂ケース上に操作部6を設けた構成としているが、これに限定することなく、作業者が把持できる形態で有線式や無線式の操作部でも構わない。
【0052】
荷受台3の昇降回数の計測に関しても、継続上昇時間Tによって回数を計測する手法の他、下降回数を計測する手法、若しくは上昇と下降の両方の回数を対象とした計測手法を適用しても構わない。
【0053】
報知部7のLEDは、計測回数が判定部13に入力された所定回数に達すると発光するが、その発光タイミングに加えて、予め設定した別途異なるタイミングに対応して短時間の発光を行う設定を付加しても構わない。例えば、t+1、t+2、・・・と昇降回数が増えるごとに発光させる構成や、予め設定した時間(例えば、100秒)に達するごとに発光する構成とすれば、報知部7による報知が行われる回数(例えば20,000回)までLEDが発光しなくても、報知部7の機能が故障せずに作動していることを確認できる。
【0054】
報知部7の設置位置に関しては、作業者が確認しやすい位置であれば他の位置でも構わない。例えば、操作部として作業者が把持できる程度の大きさの有線式装置を用いる場合、当該装置に報知部7を設けても構わない。
【0055】
報知部7の数に関しては、荷受台3の作動時間又は上昇回数や車両バッテリの電圧値に関する情報の全てが、1つのLEDで表示される構成としたが、複数個のLEDを配して各情報に基づいて対応するLEDが個別に表示される構成としても構わない。
【0056】
また、報知の形式に関しても、LED等による発光形式に限らず、他の発光部材を用いても構わない。さらには、ブザー等の音で報知する形式としても構わない。
本発明に関しては、上昇回数を表示する表示装置を設けることで更に適正な荷受台の上昇回数の計測管理を行うこともできる。
【0057】
また、継続上昇時間Tの設定に関しては、気温・気候等の外部環境の変化に基づいて、作動油の粘性等を考慮した上で適宜設定しても構わない。また、荷受台昇降装置100の作業環境もさまざまであるから若干のばらつきを考慮し、継続上昇時間Tと「略一致する時間」であれば昇降回数を1回増やすように設定することもできる。
【0058】
例えば、荷受台3の上昇中に不意に上昇ボタン61を離してしまい、直ぐに上昇ボタン61を押しなおして荷受台3を上昇させる場合、荷受台3が水平状態3bとなるまでの合計を「略一致する時間」としても良い。つまり、荷受台3が地面から水平状態3cの高さまで上昇するのに要した時間(「上昇ボタン61を押した時間」と「上昇ボタン61を離した時間」の合計)を継続上昇時間Tとしても良い。また、「上昇ボタン61を離した時間」を除いて「上昇ボタン61を押した時間」のみを継続上昇時間Tとしても良い。また、荷受台3が水平状態3bの高さ近くまで上昇した際、作業者が断続的に上昇ボタン61を押すことで、徐々に荷受台3を上昇させて微妙な高さ位置の調整を行う場合でも、水平状態3cの高さまで上昇するのに要した時間を継続上昇時間Tとしても良いし、上昇ボタン61の押し時間のみの合計を継続上昇時間Tとしても構わない。
【0059】
その他、車両が傾斜地で停車する場合、又は地面よりも高い位置に荷物を積みおろす場合などでは、予め設定した上昇継続時間Tよりも短い時間を継続上昇時間Tとしても構わない。
上述した実施形態では、荷受台の「上昇」を計測指標としたが、これに限定されること無く、「下降」を計測指標としても良い。
【0060】
また、車両停止直後に荷受台昇降装置100を利用する場合、車両が停止してからある程度の時間経過後と比較して、車両バッテリの電圧が高くなっているため、モータ駆動力が大きくなり、設定した継続上昇時間Tよりも短時間で荷受台3を水平状態3bの高さに上昇させることができる。その一方で、外部環境の変化で作動油の粘性等が変動し、設定した継続上昇時間Tよりも若干長い時間を要する場合もある。そのため、上昇継続時間Tの設定はある程度の時間の変動を考慮した設定でも構わない。
【0061】
なお、上昇及び下降の指令は、上昇ボタン61又は下降ボタン62が押し続けられていることを条件としているが、一旦ボタンが押されるとその指令状態が維持され、再度ボタンを押すことで指令が解除されるようにしても良い。また、操作部6には2種類のボタンのみを設けているが、1つのボタンや3つ以上のボタンで操作する構成としても良い。
【符号の説明】
【0062】
1 支柱
2 スライダ
3 荷受台
4 ワイヤ
5 油圧シリンダ
6 操作部
7 報知部
10 制御部
11 操作検知部
11a 時間計測部
11b 回数計測部
12 電圧検知部
13 判定部
20 駆動部
30 車両バッテリ
40 メインスイッチ
50 切り替え部
61 上昇ボタン
62 下降ボタン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の荷台に設けられて地面と荷台との間で昇降作動される荷受台と、
前記荷受台の昇降作動が所定の状態であることを報知する報知部と、
車両バッテリと前記報知部とが接続されて前記荷受台の昇降作動を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記車両バッテリの電圧を検知する電圧検知部と、当該電圧検知部の出力信号を受けて前記報知部のオン又はオフを判定する判定部とを有する
ことを特徴とする荷受台昇降装置。
【請求項2】
前記荷受台を昇降駆動する駆動部と、
前記荷受台の昇降指令を行う操作部と、
が前記制御部に接続されており、
当該制御部は、前記操作部の操作信号を検知する操作検知部をさらに有し、
前記判定部は、前記電圧検知部と前記操作検知部との少なくともいずれかの出力信号を受けて前記報知部のオン又はオフを判定する判定部とを有する
ことを特徴とする請求項1に記載の荷受台昇降装置。
【請求項3】
前記操作検知部は、前記荷受台の上昇作動又は下降作動の少なくともいずれかの作動回数を計測する計測部を有する
ことを特徴とする請求項2に記載の荷受台昇降装置。
【請求項4】
前記操作検知部は、前記荷受台の上昇作動又は下降作動の少なくともいずれかの作動時間を計測する計測部を有する
ことを特徴とする請求項2に記載の荷受台昇降装置。
【請求項5】
前記駆動部と前記制御部との間の接続又は遮断の切り替えを行う切り替え部を有し、
当該切り替えは、前記電圧検知部または前記操作検知部の少なくともいずれかの検知信号によって制御される
ことを特徴とする請求項3または4に記載の荷受台昇降装置。
【請求項6】
前記判定部は、前記駆動部の駆動を検知する駆動検知部をさらに有する
ことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の荷受台昇降装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−20634(P2012−20634A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−159401(P2010−159401)
【出願日】平成22年7月14日(2010.7.14)
【出願人】(000002358)新明和工業株式会社 (919)