説明

荷室コンベア

【課題】ベルトの一部の破損に対して部分的な交換を可能としてベルト交換コスト、部品コストの低減を可能とし、荷物積載状態での修理を容易にすることを可能とする。
【解決手段】荷室5の支持床19よりも下方側に支持され搬出側と奥側とに分けて配置されたスプロケット連鎖体7及びU溝プーリー連鎖体9と、搬出側のスプロケット連鎖体7に巻き回されて主体11aが荷室5の搬出側及び奥側間の支持床19上で走行可能に配置され一端が主体11aの下方側へ配索されたプラスチック・ブロック・チェーン11と、奥側のU溝プーリー連鎖体9に巻き回され一端がプラスチック・ブロック・チェーン11の一端に結合され、プラスチック・ブロック・チェーン11の他端がバルクヘッド21に結合され、ワイヤ13の他端がスプリング23を介してバルクヘッド21に結合されたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラック等の荷台に設備されて積載された荷物の荷台上での移動等に供される荷室コンベアに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の荷室コンベアとしては、特許文献1,2,3に記載されたものがある。
【0003】
特許文献1に記載のものは、ベルトを、カバーゴム、帆布、摺動ゴムの三層構造とし、静摩擦係数及び動摩擦係数を低減する。
【0004】
特許文献2に記載のものは、ベルトに穴を設けて歯車駆動とし、駆動力を上げている。
【0005】
特許文献3に記載のものは、ベルトを車両後端のローラーに巻き取る構造とし、駆動部の大型化を防止している。
【0006】
しかし、何れの装置もベルトが一体の帯状に形成されたものであり、一部の破損であっても、全体の交換を必要とし、ベルト交換コスト、部品コストの低減に限界があった。また、荷物積載状態での修理にも難点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−739号公報
【特許文献2】特開2004−10031号公報
【特許文献3】特開2008−21396号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
解決しようとする問題点は、ベルトの一部の破損であっても、全体の交換を必要とし、ベルト交換コスト、部品コストの低減に限界があり、また、荷物積載状態での修理に難点があった点である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、ベルトの一部の破損に対して部分的な交換を可能としてベルト交換コスト、部品コストの低減を可能とし、荷物積載状態での修理を容易にするために、荷室の支持床よりも下方側に支持され搬出側と奥側とに分けて配置された駆動輪体及び従動輪体と、前記搬出側の駆動輪体又は従動輪体に巻き回されて主体が前記荷室の搬出側及び奥側間の支持床上で走行可能に配置され一端が前記主体の下方側へ配索された帯状体と、前記奥側の従動輪体又は駆動輪体に巻き回され一端が前記帯状体の一端に結合され他端がスプリングを介して前記帯状体の他端に直接または間接に結合された線状体と、前記駆動輪体を回転駆動する駆動出力体とを備えた荷室コンベアであって、前記帯状体を、プラスチック・ブロックの集合体で構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、上記構成であるから、帯状体の一部の破損であるとき、破損したプラスチック・ブロックの交換により、修理することができる。
【0011】
したがって、全体の交換を必要とせず、ベルト交換コスト、部品コストの低減を図ることができる。また、荷物積載状態での修理も容易である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】トラックの荷室を一部透視及び切欠いた概略斜視図である。(実施例1)
【図2】トラックの荷室概略断面図である。(実施例1)
【図3】一部を分解したプラスチック・ブロック・チェーンの要部平面図である。(実施例1)
【図4】プラスチック・ブロック・チェーンの端面図である。(実施例1)
【発明を実施するための形態】
【0013】
ベルトの一部の破損に対して部分的な交換を可能としてベルト交換コスト、部品コストの低減を可能にするという目的を、プラスチック・ブロックの集合体で構成した帯状体により実現した。
【実施例1】
【0014】
図1は、トラックの荷室を一部透視及び切欠いた概略斜視図、図2は、トラックの荷室概略断面図である。
【0015】
図1、図2のように、本発明実施例の荷室コンベア1は、トラック3の荷室5に適用した。
【0016】
荷室コンベア1は、荷室5内の車台フレーム6上に配設されている。この荷室コンベア1は、駆動輪体であるスプロケット連鎖体7及び従動輪体であるU溝プーリー連鎖体9と、帯状体であるプラスチック・ブロック・チェーン11と、線状体である複数本のワイヤ13と、駆動出力体である一対のモーターとしてギヤード・モーター14a,14bを備えている。
【0017】
荷室5には、左右両側にチャネル材状のバルクヘッド・ガイドレール15a、15bが設けられ、バルクヘッド・ガイドレール15a、15bに両端が結合されたクロス・メンバー17が複数本車体前後方向へ所定間隔で配設されている。クロス・メンバー17上には、木質系の支持床19が固定されている。支持床19上には、プラスチック・ブロック・チェーン11との摺動摩擦抵抗低減のための低摩擦高分子樹脂板(図示せず)を配置している。
【0018】
この荷室5には、バルクヘッド21が備えられ、脚部21aのローラー21bがバルクヘッド・ガイドレール15a、15bに支持され走行ガイドされるようになっている。したがって、バルクヘッド21は、荷室5の搬出側及び奥側間で走行可能に配置された構成となっている。
【0019】
スプロケット連鎖体7は、駆動軸7aに複数のスプロケット7bが所定間隔で設けられたものである。このスプロケット連鎖体7は、荷室5の搬出側であるリヤエンドドア側で支持床19よりも下方側に支持されている。
【0020】
U溝プーリー連鎖体9は、従動軸9aに複数のU溝プーリー9bが所定間隔で設けられたものである。このU溝プーリー連鎖体9は、荷室5の奥側で支持床19よりも下方側に支持されている。
【0021】
したがって、スプロケット連鎖体7及びU溝プーリー連鎖体9は、荷室5の搬出側と奥側とに分けて配置された構成となっている。
【0022】
プラスチック・ブロック・チェーン11は、搬出側のスプロケット連鎖体7に巻き回されて主体11aが荷室5の搬出側及び奥側間の支持床19上で走行可能に配置され一端11bが主体11aの下方側へ配索されている。プラスチック・ブロック・チェーン11の具体的構成は後述する。
【0023】
各ワイヤ13は、奥側のU溝プーリー連鎖体9に巻き回されて支持床19の下方側に配索され、一端がプラスチック・ブロック・チェーン11の一端11bに結合され他端が支持床19の上方側でスプリング23を介しプラスチック・ブロック・チェーン11の他端に間接に結合されている。
【0024】
本実施例において、プラスチック・ブロック・チェーン11の他端は、バルクヘッド21に結合され、スプリング23がワイヤ13に対応してバルクヘッド21に幅方向所定間隔で支持されている。バルクヘッド21には、アイドル・プーリー連鎖体25が支持され、このアイドル・プーリー連鎖体25が、U溝プーリー連鎖体9とほぼ同一構成に形成されている。
【0025】
したがって、各ワイヤ13の他端側は、U溝プーリー連鎖体9及びアイドル・プーリー連鎖体25に掛け回され、各スプリング23にそれぞれ結合されている。
【0026】
一対のギヤード・モーター14a,14bは、荷室5の搬出側であるリヤエンドドア側でプラスチック・ブロック・チェーン11の幅方向両側部に配置され、スプロケット連鎖体7の駆動軸7aに連動結合されている。このギヤード・モーター14a,14bは、例えばバルクヘッド・ガイドレール15a、15bの内側面にボルト・ナットなどにより固定されている。
【0027】
荷室5の両側部とプラスチック・ブロック・チェーン11の幅方向両縁部との間には、両間を閉止するカバー25が設けられている。カバー25は、プラスチックなどで形成され、支持床19とバルクヘッド・ガイドレール15a、15bとにボルト・ナットなどを用いて着脱自在に結合され、或いは嵌合構造により着脱自在に結合されている。
【0028】
荷室5のリヤ・エンドには、リヤ・エンド・カバー27が取り付けられている。このリヤ・エンド・カバー27は、着脱により、又は車台フレーム6のリヤ・エンドにヒンジ結合されることにより、プラスチック・ブロック・チェーン11の巻き回されたスプロケット連鎖体7の部分及び左右のギヤード・モーター14a,14bの部分を開閉できるようになっている。
【0029】
荷室5の搬出側内側面には、正逆スイッチ31が設けられている。
【0030】
図3は、一部を分解したプラスチック・ブロック・チェーンの要部平面図、図4は、プラスチック・ブロック・チェーンの断面図である。
【0031】
プラスチック・ブロック・チェーン11は、プラスチック・ブロック31,33の集合体で構成されている。
【0032】
プラスチック・ブロック31,33は、長さの違いの他は同一構成である。プラスチック・ブロック31,33は、ブロック本体31a,33aの下面に噛合い凹部31b,33bが形成され、ブロック本体31a,33aの両側に結合突部31c,33cが複数突設されている。プラスチック・ブロック31,33は、結合突部31c,33cでの噛み合わせ結合と、各結合突部31c,33cを貫通するピン35により結合され、全体で帯状をなしている。
【0033】
プラスチック・ブロック31,33の噛合い凹部31b,33bに、スプロケット連鎖体7のスプロケット7bが噛み合っている。
【0034】
したがって、正逆スイッチ31を正転方向に操作すると、ギヤード・モーター14a,14bが正転方向に駆動され、駆動軸7aが回転駆動されると各スプロケット7bが噛合い回転し、プラスチック・ブロック・チェーン11の主体11aを支持床19に対し搬出側へ走行させることができる。
【0035】
このとき、支持床19上の低摩擦高分子樹脂板により、プラスチック・ブロック・チェーン11の走行を低摺動摩擦抵抗で走行させることができ、ギヤード・モーター14a,14bでの駆動を低出力で円滑に行わせることができる。
【0036】
プラスチック・ブロック・チェーン11の走行に伴って、バルクヘッド21は、バルクヘッド・ガイドレール15a、15bに対するローラー21bの転動により脚部21aが移動ガイドされ、搬出側へ移動する。
【0037】
したがって、荷室5の奥側でバルクヘッド21側に搭載されていた荷物35であっても搬出側へ容易に移動させることができ、容易に搬出することができる。
【0038】
正逆スイッチ31を逆転方向に操作すると、前記とは逆の動作によりプラスチック・ブロック・チェーン11の主体11aを支持床19に対し奥側へ走行させ、バルクヘッド21を奥側へ移動させることができる。
【0039】
この場合、各ワイヤ13もプラスチック・ブロック・チェーン11と共に連動して走行し、各スプリング23を介してバルクヘッド21が荷室5の奥側へ引かれる。
【0040】
これらプラスチック・ブロック・チェーン11及び各ワイヤ13の協働により、プラスチック・ブロック・チェーン11上の荷物35を円滑に移動させることができる。
【0041】
各ワイヤ13でバルクヘッド21が荷室5の奥側へ引かれるとき、各スプリング23が各ワイヤ13の張力を調整する。
【0042】
リヤ・エンド・カバー27を開くことにより、プラスチック・ブロック・チェーン11の巻き回されたスプロケット連鎖体7や左右のギヤード・モーター14a,14bの点検修理を行わせることができる。
[実施例の効果]
本発明の実施例は、荷室5の支持床19よりも下方側に支持され搬出側と奥側とに分けて配置されたスプロケット連鎖体7及びU溝プーリー連鎖体9と、搬出側のスプロケット連鎖体7に巻き回されて主体11aが荷室5の搬出側及び奥側間の支持床19上で走行可能に配置され一端が主体11aの下方側へ配索されたプラスチック・ブロック・チェーン11と、奥側のU溝プーリー連鎖体9に巻き回され一端がプラスチック・ブロック・チェーン11の一端に結合され、プラスチック・ブロック・チェーン11の他端がバルクヘッド21に結合され、ワイヤ13の他端がスプリング23を介してバルクヘッド21に結合された。
【0043】
このため、プラスチック・ブロック・チェーン11の走行により荷室5からの荷物35の搬入、搬出を容易に行わせることができる。
【0044】
プラスチック・ブロック・チェーン11の一部が破損したときは、破損したプラスチック・ブロック29やプラスチック・ブロック31を取り外し、交換することで修理することができ、メンテナンスが容易となる。
【0045】
すなわち、プラスチック・ブロック・チェーン11の全体の交換を必要とせず、ベルト交換コスト、部品コストの低減を図ることができる。また、荷物積載状態での修理も容易である。
【0046】
しかも、プラスチック・ブロック・チェーン11を使用するため、構造重量も含め総重量が従来の1/2になるなど、大幅な軽量化を図ることができる。
【0047】
プラスチック・ブロック・チェーン11の幅方向両側部に配置されスプロケット連鎖体7の駆動軸7aに一対のギヤード・モーター14a,14bが連動結合された。
【0048】
このため、駆動軸7aを両端で駆動することができ、駆動を円滑に行わせると共に、各ギヤード・モーター14a,14bを小型化することができ、収納スペーも小さくすることができる。
【0049】
スプロケット連鎖体7は、荷室5の搬出側であるリヤエンドドア側で支持床19よりも下方側に支持され、スプロケット連鎖体7の駆動軸7aに一対のギヤード・モーター14a,14bが連動結合された。
【0050】
このため、床面高が低減可能となり、荷室5のスペースを確保することができる。
【0051】
荷室5の両側部とプラスチック・ブロック・チェーン11の両側部との間を閉止するカバー25を設けた。
【0052】
このため、荷室5の両側部とプラスチック・ブロック・チェーン11の両側部との間に荷物35が引っ掛かったり落ち込んだりすることがなく、荷物35の搬入、搬出を円滑に行わせることができる。
【0053】
[その他]
なお、本発明の荷室コンベアは、トラックの荷室以外の荷室にも適用することができる。
【0054】
スプロケット連鎖体7とU溝プーリー連鎖体9とは、逆配置とし、U溝プーリー連鎖体9を搬出側のリヤエンドに配置することもできる。
【0055】
バルクヘッド21は省略することも可能である。ギヤード・モーター14a,14bは、一方のみの配置構成にすることもできる。
【符号の説明】
【0056】
1 荷室コンベア
5 荷室
7 スプロケット連鎖体(駆動輪体)
7a 駆動軸
9 U溝プーリー連鎖体(従動輪体)
11 プラスチック・ブロック・チェーン(帯状体)
13 ワイヤ(線状体)
14a,14b ギヤード・モーター(駆動出力体)
21 バルクヘッド
23 スプリング
29,31 プラスチック・ブロック
35 荷物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷室の支持床よりも下方側に支持され搬出側と奥側とに分けて配置された駆動輪体及び従動輪体と、
前記搬出側の駆動輪体又は従動輪体に巻き回されて主体が前記荷室の搬出側及び奥側間の支持床上で走行可能に配置され一端が前記主体の下方側へ配索された帯状体と、
前記奥側の従動輪体又は駆動輪体に巻き回され一端が前記帯状体の一端に結合され他端がスプリングを介して前記帯状体の他端に直接または間接に結合された線状体と、
前記駆動輪体を回転駆動する駆動出力体と、
を備えた荷室コンベアであって、
前記帯状体を、プラスチック・ブロックの集合体で構成した、
ことを特徴とする荷室コンベア。
【請求項2】
請求項1記載の荷室コンベアであって、
前記駆動出力体は、前記帯状体の両側部に配置され前記駆動輪体の駆動軸に連動結合された一対のモーターである、
ことを特徴とする荷室コンベア。
【請求項3】
請求項1又は2記載の荷室コンベアであって、
前記駆動輪体及び駆動出力体を、前記搬出側に配置した、
ことを特徴とする荷室コンベア。
【請求項4】
請求項1〜3の何れかに記載の荷室コンベアであって、
前記荷室の両側部と前記帯状体の両側部との間を閉止するカバーを設けた、
ことを特徴とする荷室コンベア。
【請求項5】
請求項1〜4の何れかに記載の荷室コンベアであって、
前記荷室の搬出側及び奥側間で走行可能に配置されたバルクヘッドを備え、
前記帯状体の他端部と前記スプリングとを前記バルクヘッドに結合した、
ことを特徴とする荷室コンベア。
【請求項6】
請求項1〜5の何れかに記載の荷室コンベアであって、
前記各プラスチック・ブロックは、交換可能に結合された、
ことを特徴とする荷室コンベア。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−61946(P2012−61946A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−207319(P2010−207319)
【出願日】平成22年9月15日(2010.9.15)
【出願人】(592247595)株式会社神戸製作所 (19)