説明

荷役機械及びその制御方法

【課題】重量が未知である荷役物に対し無負荷バランス状態から負荷バランス状態への移行を短時間で且つ安定して行いうる荷役機械を提供する。
【解決手段】本発明の荷役機械は、クランプ機構8によって荷役物7を保持して昇降させるアーム4と、空気式シリンダ20と、エアー流量制御部23及び圧力比例制御部22とを有する。空気式シリンダ20の圧力を検出するエアー圧力センサ26と、クランプ機構8の動作加速度を検出する加速度センサ27と、エアー流量制御部23及び圧力比例制御部22の動作を制御する制御回路24とを備え、加速度センサ27にて得られた結果に基づき、エアー圧力センサ26によって空気式シリンダ20におけるエアーの圧力を検出する一方、エアー圧力センサ26にて得られた結果に基づき、圧力比例制御部22の空気式シリンダ20に対するエアーの圧力を負荷バランス圧として設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷役物を昇降して搬送するための荷役機械に関し、特にエアー式の駆動源によって昇降機構を駆動する荷役機械に関する。
【背景技術】
【0002】
工場の生産ラインあるいは倉庫などでは、比較的重量のある機材の脱着作業に伴う搬送、半製品ワークの次工程への搬送、また出荷製品の運搬など多種多様な搬送が行われている。こうした各種負荷の搬送作業では、労力軽減化と安全化を図り、かつ、小回りが利き機動性と簡便さを備えた荷役機械が使用されている。
【0003】
図7は、従来の荷役機械のエアー制御系の構成を示すブロック図である。
図7に示すように、荷役機械101の本体103の内部には空気圧シリンダ120が配設され、空気圧シリンダ120のピストンロッド120aの先端部には昇降機構105のアーム104がリンク機構で連結されている。
【0004】
このリンク機構はアーム104の上昇下降動作時の力点となるとともに、アーム104は本体103内部で支持されこの支持部がアーム104の支点となっている。
さらにアーム104の先端には、操作グリップ109aを備えた操作ボックス109とクランプ機構108が設けられ、これにより荷役物107を保持して移動できるようになっている。なお、操作ボックス109には、負荷バランスボタン111と無負荷バランスボタン112が設けられている。
【0005】
空気圧シリンダ120には圧力比例制御弁122を介してエアー源121が接続配管され、作業者110による操作ボックス109からの上昇・下降指令に応じて、エアー源121から空気圧シリンダ120へエアーの給排気処理を行うように構成されている。なお、圧力比例制御弁122には、消音器123が接続されている。
【0006】
このような構成において、例えば作業者110が操作グリップ109aを上方向に操作すると、空気圧シリンダ120には圧力比例制御弁122を介してエアーが給気され、これにより空気圧シリンダ120のピストンロッド120aが図中下方向に動作し、アーム104先端のクランプ機構108によって把持された荷役物107が、てこの原理で上方向に移動する。
【0007】
ところで、荷役機械101には、作業者110が直接荷役物107を掴んで無重力感覚で自在に移動・移載できるバランスモード(負荷バランス状態)という制御モードがある。このバランスモードにおける制御回路の動作を図7の従来の荷役機械の制御回路ブロック図を使って説明する。
【0008】
このバランスモードでは、荷役機械101は、同図に示すように支点に対してアーム104の重量、クランプされた荷役物107の重量による反時計回りのモーメントと、空気圧シリンダ120のピストンロッド120aに支持された時計回りのモーメントを一致させることにより、停止した状態(バランス状態)になる。
このバランスされた状態で作業者110が荷役物107に力を加えると、これら両モーメントの僅かなバランスが崩れて荷役物107を自由に動かすことが可能になる。
【0009】
このバランスモードにおいて重要な役目を果たすのが、圧力比例制御弁122である。圧力比例制御弁122は、空気圧シリンダ120内のエアー圧が一定になるようにシリンダ内のエアー圧を制御している。
【0010】
例えば、操作ボックス109に設けられた負荷バランスボタン111が押された場合、エアー制御回路124は、負荷/無負荷バランス圧設定回路125で設定された負荷バランス圧(荷役物を吊り上げた状態時にバランス状態を保つシリンダ内のエアー圧)の値を圧力比例制御弁122の入力設定ポートに設定する。
【0011】
これにより、圧力比例制御弁122は入力ポートに設定されたエアー圧(負荷バランス圧)を出力ポートに設定し、空気圧シリンダ120内のエアー圧を負荷重量とバランスが取れたエアー圧に設定する。
この状態では作業者110が吊り上げた荷役物107に力を加えると、この加えた力によって空気圧シリンダ120のピストンロッド120aが動きシリンダ内のエアー圧が少し変化する。
【0012】
しかし、圧力比例制御弁122はこのバランス圧から僅か増減したエアー圧を給排気処理によって吸収してしまい、空気圧シリンダ120内のエアー圧が常時設定しているバランス圧を維持するように制御する。このように制御することによってバランスモードでは、作業者110の操作によって空気圧シリンダ120内のピストンが動いても空気圧シリンダ120内にはこの操作力に反発する力が発生しないため、荷役物107は作業者110が荷役物107に力を加えた方向に動くことになる。
【0013】
従来の荷役機械101では、搬送する荷役物の重量が未知の場合、荷役機械をバランスモードに移行させるまで作業者は荷役機械の状態を見ながら複数の操作を行うため、操作が煩雑になるという問題がある。この問題を解決するため、例えば特開平11−147699号などの特許出願がなされている(特許文献1)。
【0014】
この特許出願では、荷役機械の先端部に荷重センサーを設けて、荷重センサーからの荷役物の重量情報に基づき、エアーシリンダ内のシリンダ圧を制御することにより、複雑な操作を行うことなくバランスモードに移行させることを可能にしている。
【0015】
しかし、この制御方式では、高価な荷重センサーが必要になる上、変形した荷役物、重心位置がずれたような荷役物でも荷役物の重量を荷重センサーで正確に検知できるような荷役物クランプ機構部が必要になること、また上昇時において、荷役機械先端が振動した場合、その振動の影響を受けて荷役機械機構部が振動して制御が難しくなるなど、コスト面、構造面、制御面の問題が考えられる。
【0016】
このような従来の荷役機械の問題点を解決するため、本出願人は、先に特許出願を行った(特許文献2:特開2007−91373号)。
この特許出願による制御では、不負荷バランス状態→クランプ処理→負荷バランス状態への移行、負荷バランス状態→下降→無負荷バランス状態→アンクランプ処理の各処理を、荷役機械の制御部が荷役機械の状態を検出しながら半自動で行うようにした。
【0017】
しかし、この従来技術による制御においては以下のような問題がある。
すなわち、この従来技術による制御では、シリンダ内のエアー圧の検出をエアー圧力センサで行っている。そして、荷役物重量感知処理時は、シリンダにエアー圧を給気していきシリンダ内エアー圧が一定になった状態を検出して地切り状態を判断しているが、この重量自動感知時間を短縮しようとして、短時間でシリンダヘのエアーの給気を行おうとすると、エアー圧カセンサによる地切り状態の検出精度が悪くなり、地切り後に不必要にアームが上昇してしまったり、地切り後のアーム上昇量に大きなバラツキが生じてしまうことがあった。
【特許文献1】特開平11−147699号公報
【特許文献2】特開2007−91373号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明は、このような従来の技術の課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、重量が未知である荷役物に対して無負荷バランス状態から負荷バランス状態への移行を短時間で行うとともに、安定した動作を行いうる荷役機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記目的を達成するためになされた請求項1記載の発明は、上下方向に移動自在に構成され、操作部からの命令に基づき荷役物をクランプ機構によって保持して昇降させるアームを有する昇降機構と、所定のエアー源から供給されるエアーの圧力によって前記昇降機構を駆動するエアー式駆動部と、前記エアー式駆動部に対して給排気するエアーの流量及び圧力を制御するエアー流量制御部及び圧力比例制御部とを有する荷役機械であって、前記エアー式駆動部におけるエアーの圧力を検出するエアー圧力センサと、前記クランプ機構の動作加速度を検出する加速度センサと、前記エアー流量制御部及び前記圧力比例制御部の動作を制御する電子制御回路とを備え、前記加速度センサにて得られた結果に基づき、前記エアー圧力センサによって前記エアー式駆動部におけるエアーの圧力を検出する一方、前記エアー圧力センサにて得られた結果に基づき、前記電子制御回路から前記圧力比例制御部への命令によって前記圧力比例制御部の前記エアー式駆動部に対するエアーの圧力を負荷バランス圧として設定するように構成されているものである。
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記加速度センサが、MEMS技術によるセンサから構成されているものである。
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の荷役機械を制御する方法であって、前記エアー流量制御部を介して前記エアー式駆動部にエアーを給気する際、前記加速度センサによって前記クランプ機構の上昇方向の加速度を検出するステップと、前記加速度センサにおける結果が所定の値を超えた場合に、前記エアー式駆動部に対するエアーの給気を停止するステップと、前記エアー圧力センサによって前記エアー式駆動部におけるエアーの圧力を検出するステップと、前記エアー圧力センサにて得られた圧力に基づき、前記エアー式駆動部に対するエアーの圧力を負荷バランス圧として設定し、前記圧力比例制御部を前記負荷バランス圧に設定して動作させるステップとを有するものである。
【0020】
本発明の場合、例えば、荷役物が接地されている状態において、エアー式駆動部へエアーを給気していき、荷役物の接地状態から僅かに浮き上がる状態(地切り状態)に移行するときに発生するクランプ機構の上昇方向の加速度を加速度センサによって検出し、その結果が例えば予め設定した加速度を超えた場合に、エアー圧力センサによってエアー式駆動部におけるエアーの圧力を検出する。そして、エアー圧力センサにて得られた結果に基づき、電子制御回路から前記圧力比例制御部への命令によって圧力比例制御部を動作させてエアー式駆動部に対するエアーの圧力が負荷バランス圧状態となるよう制御する。
【0021】
このような本発明によれば、クランプ機構の上昇方向の加速度を加速度センサによって精度良く検出し、その結果に基づいて負荷バランス状態の設定を行うことから、従来技術に比べ、重量が未知である荷役物に対して無負荷バランス状態から負荷バランス状態への移行処理を短時間で実行するとともに、安定した負荷バランス状態への移行を実現することができる。
【0022】
特に、本発明は、短いタクト時間で繰り返し荷役物を搬送する作業において効果的となるものである。
また、本発明によれば、操作部に設けるスイッチを減らすことができ、これにより複数のスイッチ操作による誤操作を防止することができるので、作業効率の改善を図ることができる。
【0023】
本発明において、加速度センサが、MEMS技術によるセンサから構成されている場合には、加速度センサとして大きさが小さく低価格のものを採用することができるので、より低コストで検出精度が高い荷役機械を提供することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、重量が未知である荷役物に対して無負荷バランス状態から負荷バランス状態への移行を短時間で行うとともに、安定した動作を行いうる荷役機械を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の好ましい実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明に係る荷役機械の実施の形態の外観構成を示す概略図、図2は、同荷役機械のエアー制御系の構成を示すブロック図である。
図1に示すように、本実施の形態の荷役機械1は、鉛直に立設された支柱2を有し、この支柱2の上部に本体3が設けられている。
図2に示すように、この本体3内には、従来技術と同様の空気圧シリンダ20(エアー式駆動部:以下、シリンダ20という。)が設けられている。
【0026】
荷役機械1は、第1〜第3のアーム4a〜4cから構成されるアーム4を有する昇降機構5を備える。ここで、第1のアーム4aは、上下方向に所定の角度回動可能な状態で、てこの支点及び力点を構成するように支持されシリンダ20のピストンロッド20aによって駆動される。
【0027】
また、第1のアーム4aは、支柱2の中心軸を中心にして水平方向に旋回するように支持されている。
第1のアーム4aの先端部には、第2のアーム4bが、関節部6を介して常に水平状態を保持する状態で連結され、さらに、第2のアーム4bの先端部(下端部)には、鉛直方向に延びる第3のアーム4cが関節部6を中心として水平方向に回転可能な状態で連結されている。
【0028】
第3のアーム4cの下端部には、例えば把持によって荷役物7を保持するクランプ機構8が取り付けられている。また、第3のアーム4cの下部には、操作グリップ9aを有する操作ボックス(操作部)9が取り付けられている。
【0029】
図2に示すように、本実施の形態においては、エアー源21の後段に、圧力比例制御部22とエアー流量制御部23が設けられ、これら圧力比例制御部22とエアー流量制御部23は、方向切換弁25によってその流路を切り換えてシリンダ20との間でエアーの給排気を行うように構成されている。
【0030】
圧力比例制御部22は、公知の圧力比例制御弁を有するもので、マイクロコンピュータ、メモリ等を有する制御回路24に接続され、制御回路24からの命令により出力圧力を調整して所定の値に設定するように構成されている。
【0031】
また、エアー流量制御部23は、上記制御回路24に接続され、制御回路24からの命令により、エアー源21から供給されるエアーの流量を所定の値に調整してシリンダ20に出力するようになっている。
【0032】
さらに、方向切換弁25は、制御回路24に接続された3ポート方向切換可能な電磁弁からなり、電気式の出力ポートによって出力ポートを切り換えるように構成されている。
【0033】
一方、シリンダ20は、その内部のエアー圧、即ち負荷バランス圧を検出するためのエアー圧力センサ26が接続されており、このエアー圧力センサ26は、図示しないA/D変換器を介して上記制御回路24に接続されている。
【0034】
クランプ機構8は、上記制御回路24に接続され、制御回路24からの命令により、荷役物7をクランプし又はクランプを解除するように構成されている。
このクランプ機構8には、クランプ機構8の加速度を検出する加速度センサ27が設けられ、この加速度センサ27は、図示しないA/D変換器を介して制御回路24に接続されている。
【0035】
本発明の場合、この加速度センサ27としては、クランプ機構8の加速度を検出して電気的信号に変換するもので、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術によるものを好適に用いることができる。
【0036】
また、操作ボックス9には、荷役物7の重量を感知して負荷バランス状態への移行を開始するための負荷バランス状態移行ボタン28が設けられている。
この負荷バランス状態移行ボタン28は、作業者による押下によってオンするように構成され、上述した制御回路24に接続されている。
【0037】
図3は、本実施の形態における負荷バランス状態移行方法の一例を示すフローチャート、図4は、同負荷バランス状態移行処理を説明するための図、図5は、同荷役機械における負荷バランス状態移行方法の他の例を示すフローチャートである。
<安定バランス移行制御>
以下、図2〜図5を用いて、荷役物の重量が不明の場合の負荷バランス状態移行方法について説明する。
【0038】
図2に示す負荷バランス状態移行ボタン28を押してオンにすると(ステップS1)、制御回路24は負荷バランス状態移行ボタン28の押下情報を読み込み、クランプ機構8を動作させて荷役物7のクランプ処理を実行する(ステップS2)。
【0039】
クランプ処理が完了すると、制御回路24からの命令により、方向切換弁25をエアー流量制御部23側に切り換え、シリンダ20に対してエアー源21→エアー流量制御部23→シリンダ20の経路でエアーを給気し、シリンダ20内の圧力を上昇させる(ステップS3)。
このときのシリンダ20内のエアー圧の変化を図4に示す。
【0040】
図4に示すように、シリンダ20にエアーを給気する場合、シリンダ20内のエアー圧が荷役物7を吊り上げたときのシリンダ圧(以下、「負荷バランス圧」という。)に達していない状態(接地状態)では、シリンダ20内のエアー圧は給気されるエアー流量に応じて昇圧されていくが、シリンダ20の内圧が負荷バランス圧に達すると地切りが始まる。
【0041】
このときの状態を、クランプ機構8に取り付けられた加速度センサ27、及びシリンダ20内のエアー圧をモニタしているエアー圧力センサ26でモニタしたグラフを同じく図4に示す。
図4に示すように、荷役物7の地切りが始まると、加速度センサ27の出力は、停止時の重力加速度1G(9.8m/S2)が加わっている状態から急激に上昇していく。
そして、検出した加速度が予め設定されている地切り検出加速度を超えた場合(ステップS4)、制御回路24は地切り状態検出モードに入る。
【0042】
検出した加速度が設定した地切り検出加速度を超え、さらに所定の時間を経過した場合(ステップS5)、制御回路24は地切りが発生したと判断し、シリンダ20内へのエアー給気を停止し(ステップS6)、負荷バランス状態に移行させる。
【0043】
本実施の形態において、地切り状態が検出されシリンダ20内へのエアー給気を停止した直後は、荷役機械1の昇降機構5が振動しているため、加速度センサ27及びエアー圧カセンサ26の出力は、図4に示すように一定とならず変化している。
【0044】
昇降機構5が振動している状態、すなわちシリンダ圧が変化している場合は、正確な負荷圧(バランス圧)を検出することができないため、加速度センサ27からの信号によって制御回路24はシリンダ内圧が安定する(一定になる)まで持つ(ステップS7)。
【0045】
シリンダ20内のエアー圧が一定になったことを確認したら、昇降機構5の振動が停止したと判断し、このときのシリンダ内のエアー圧(負荷バランス圧)を読み込み、制御回路24に格納する(ステップS8)。
【0046】
データ格納後は、制御回路24からの命令により、方向切換弁25を圧力比例制御部22側に切り換え、先に読み込んだ負荷バランス圧値が圧力比例制御部22の出力圧になるように圧力比例制御部22の入力設定ポートを設定し(ステップS9)、これにより荷役機械1を負荷バランス状態に移行させる。
【0047】
以上述べたように本実施の形態によれば、クランプ機構8の上昇方向の加速度を加速度センサ27によって検出し、その結果に基づいて負荷バランス状態の設定を行うようにしたことから、従来技術に比べ、無負荷バランス状態から負荷バランス状態への移行処理を短時間で実行し、さらに、負荷バランス時のシリンダ20内のエアー圧を精度良く検出できるため、安定した負荷バランス状態への移行を実現することができる。
【0048】
特に、本実施の形態は、短かいタクト時間で繰り返し荷役物を搬送する作業において効果的となるものである。
また、本実施の形態によれば、操作ボックス9に設けるスイッチを減らすことができ、これにより複数のスイッチ操作による誤操作を防止することができるので、作業効率の改善を図ることができる。
【0049】
さらに、本実施の形態では、加速度センサ27が、MEMS技術によるセンサから構成されていることから、大きさが小さく低価格のセンサを採用することができるので、より低コストで検出精度が高い荷役機械を提供することができる。
【0050】
なお、本実施の形態では、ステップS7において、加速度センサ27からの信号によって制御回路24がシリンダ20の内圧が安定した(一定になる)か否かの判断を行うようにしたが、例えば、図5のステップS7aに示すように、エアー圧力センサ26からの信号によって制御回路24がシリンダ20の内圧が安定したか否かの判断を行うことも可能である。
【0051】
ここで、負荷バランス圧(圧力データ)を読み込む場合、高い検出精度が要求されるが、昇降機構5が振動してセンサ出力が変動(振動)している場合は当該出力が変化しているため、読み込むことができず、昇降機構5の振動が停止するまで、即ちセンサ出力が安定するまで待たなければならない。
【0052】
エアー圧力センサ26からの信号によって振動の有無の判断を行う図5の例では、エアー圧力値を直接検出するため、より高精度の検出を行うことができるため迅速な処理が可能になる。
<高速バランス移行制御>
図6は、本実施の形態における荷役機械における負荷バランス状態移行方法の他の例を示すフローチャートである。
以下、上記例と対応する部分には同一の符号を付しその詳細な説明を省略する。
【0053】
本例では、上記実施の形態と同様に、負荷バランス状態移行ボタン28を押してオンにすると(ステップS11)、制御回路24は負荷バランス状態移行ボタン28の押下情報を読み込み、クランプ機構8を動作させて荷役物7のクランプ処理を実行する(ステップS12)。
【0054】
クランプ処理が完了すると、制御回路24からの命令により、方向切換弁25をエアー流量制御部23側に切り換え、シリンダ20に対してエアー源21→エアー流量制御部23→シリンダ20の経路でエアーを給気し、シリンダ20内の圧力を上昇させる(ステップS13)。
この場合、荷役物7が接地した状態からシリンダ20にエアーを給気していきシリンダ圧が上昇していくと地切りが始まる。
【0055】
クランプ機構8に取り付けられた加速度センサ27が、予め設定されている地切り検出加速度を超えるか否かを検出し(ステップS14)、予め設定されている地切り検出加速度を初めて超えたと判断した時点のシリンダ20内のエアー圧(以下、「近似負荷バランス圧」という。)のデータを制御回路24内に格納する(ステップS15)。
【0056】
その後、検出した加速度が継続して地切り検出加速度を超え、さらに所定の時間を経過した(ステップS16)場合、地切りが発生したと判断し、シリンダ20ヘのエアー給気を停止する(ステップS17)。
その後、制御回路24は、先に格納した近似負荷バランス圧を読み出し、次の処理を行う。
【0057】
ここで、近似負荷バランス圧は、図4のグラフからも理解されるように、ピーク圧が実際の負荷バランス圧よりも少し高いエアー圧になっている。
そこで、実際の負荷バランス圧と検出した近似負荷バランス圧との差圧を予め予測設定しておき、検出した近似負荷バランス圧から設定されている予測差圧を引き算し、以下のように圧力比例制御部に設定する推定バランス圧を算出する。

推定バランス圧=検出した近似負荷バランス圧−予測差圧…式(1)

そして、圧力比例制御部22の入力設定ポートを、式(1)で算出した推定バランス圧に設定する(ステップS18)。
その後、制御回路24からの命令により、方向切換弁25を圧力比例制御部22側に切り換え、負荷バランス状態に移行させる(ステップS19)。
【0058】
以上述べた本例にあっては、負荷バランス状態に移行させる場合、地切り後一旦静止させ負荷バランス圧を検出する必要がないため、地切り後、直ちに負荷バランス状態に移行でき、より短時間で負荷バランス状態に設定できるというメリットがある。その他の構成及び作用効果については上述の実施の形態と同一であるのでその詳細な説明を省略する。
【0059】
以上述べた本実施の形態について付言すると、軽い荷役物を搬送する軽量タイプの荷役機械の場合であれば、負荷バランス圧が実際の負荷バランス圧から多少ずれている場合でも、作業者がクランプ機構の一部を把持していれば、負荷バランス状態において上下方向に動くことはない。したがって、本例の高速バランス移行制御は、比較的軽量タイプの荷役機械において、短かいタクトタイムで繰り返し荷役物を搬送する作業に適している。
【0060】
一方、上述した安定バランス移行制御方式は、搬送する荷役物が重い重量タイプの荷役機械において、夕クトタイムよりも安定した負荷バランス動作を求められる作業に適している。
なお、本発明は上述の実施の形態に限られることなく、種々の変更を行うことができる。
【0061】
例えば、上述の実施の形態においては、荷役機械のアーム先端部のクランプ機構に加速度センサを設けて地切り状態の検出を行っているが、本発明はこれに限られず、荷役機械のアームに傾斜式加速度センサを設けたり、またジャイロセンサなどの加速度を設けても、上記実施の形態と同様に地切り状態を検出することができる。
【0062】
さらに、上述の実施の形態では、加速度センサからの加速度データに基づいて地切り状態を検出するようにしたが、本発明はこれに限られず、上述の加速度データを積分し速度データに変換して、この速度データに基づいて(例えば所定の値を超えた場合に)地切り状態を検出することも可能である。
このような速度データに基づいて地切り状態を検出する方法によれば、低加速度でアームが上昇した場合であっても、地切り状態を確実に検出することができるというメリットがある。
【0063】
また、荷役機械にはアーム式のタイプのもの、アームにベルトを組み合わせたもの、ホイストタイプのものがあるが、本発明に使用する加速度センサは非常に小型で取り付けやすいため、あらゆる荷役機械に取り付け可能で本発明を適用することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明に係る荷役機械の実施の形態の外観構成を示す概略図
【図2】同荷役機械のエアー制御系の構成を示すブロック図
【図3】同荷役機械における負荷バランス状態移行方法の一例を示すフローチャート
【図4】同荷役機械における負荷バランス状態移行処理を説明するための図
【図5】同荷役機械における負荷バランス状態移行方法の他の例を示すフローチャート
【図6】同荷役機械における負荷バランス状態移行方法の他の例を示すフローチャート
【図7】従来の荷役機械のエアー制御系の構成を示すブロック図
【符号の説明】
【0065】
1…荷役機械、3…本体、4…アーム、7…荷役物、9…操作ボックス(操作部)、20…空気圧シリンダ(エアー式駆動部)、20a…ピストンロッド、21…エアー源、22…圧力比例制御部、24…制御回路、25…方向切換弁、27…加速度センサ、28…負荷バランス状態移行ボタン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向に移動自在に構成され、操作部からの命令に基づき荷役物をクランプ機構によって保持して昇降させるアームを有する昇降機構と、
所定のエアー源から供給されるエアーの圧力によって前記昇降機構を駆動するエアー式駆動部と、
前記エアー式駆動部に対して給排気するエアーの流量及び圧力を制御するエアー流量制御部及び圧力比例制御部とを有する荷役機械であって、
前記エアー式駆動部におけるエアーの圧力を検出するエアー圧力センサと、
前記クランプ機構の動作加速度を検出する加速度センサと、
前記エアー流量制御部及び前記圧力比例制御部の動作を制御する電子制御回路とを備え、
前記加速度センサにて得られた結果に基づき、前記エアー圧力センサによって前記エアー式駆動部におけるエアーの圧力を検出する一方、前記エアー圧力センサにて得られた結果に基づき、前記電子制御回路から前記圧力比例制御部への命令によって前記圧力比例制御部の前記エアー式駆動部に対するエアーの圧力を負荷バランス圧として設定するように構成されている荷役機械。
【請求項2】
前記加速度センサが、MEMS技術によるセンサから構成されている請求項1記載の荷役機械。
【請求項3】
請求項1又は2記載の荷役機械を制御する方法であって、
前記エアー流量制御部を介して前記エアー式駆動部にエアーを給気する際、前記加速度センサによって前記クランプ機構の上昇方向の加速度を検出するステップと、
前記加速度センサにおける結果が所定の値を超えた場合に、前記エアー式駆動部に対するエアーの給気を停止するステップと、
前記エアー圧力センサによって前記エアー式駆動部におけるエアーの圧力を検出するステップと、
前記エアー圧力センサにて得られた圧力に基づき、前記エアー式駆動部に対するエアーの圧力を負荷バランス圧として設定し、
前記圧力比例制御部を前記負荷バランス圧に設定して動作させるステップとを有する荷役機械の制御方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−166995(P2009−166995A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−9403(P2008−9403)
【出願日】平成20年1月18日(2008.1.18)
【出願人】(000110022)トーヨーコーケン株式会社 (19)