説明

荷役車両

【課題】リフトアーム回動中の部材の摩耗を抑制する荷役車両を提供する。
【解決手段】リフトアーム6にスライド可能に挿入されたフックアームの基部に当接部12を設け、また、リフトアーム6に取り付けられたリフトアームロック装置13に被当接部としてのローラ14を設ける。ローラ14は、当接部12に当接した状態でリフトアーム6の回動中に、フックアームの基部の揺動に追随して軸方向にも動く従動体となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコンテナの積み降ろしや、搭載したコンテナのダンプ動作が可能な荷役車両に関する。
【背景技術】
【0002】
コンテナを積み降ろしする荷役車両は、車体に対して回動可能なダンプアームと、ダンプアームに対して回動可能なリフトアームと、リフトアームにスライド可能に取り付けられたフックアームとを備えている。コンテナ降ろし動作時には、ダンプアームは回動せず、フックアームを後方へスライドさせてコンテナを車体後方へ少し押し出した状態でリフトアームを回動させることにより、コンテナを車体から降ろして着地させることができる。ダンプ動作時には、コンテナ搭載状態からダンプアームとリフトアームとを一体的に回動させることにより、コンテナの中味のみを排出することができる(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
このように、コンテナ降ろし動作時とダンプ動作時とでは、リフトアームが単独で回動するか、または、ダンプアームと一体的に回動するかの違いがある。そのため、ロック装置を設けて、ダンプ動作時にはダンプアームとリフトアームとが相互にロックされて一体的に回動し、コンテナ降ろし時にはロックが解除されてリフトアームが単独で回動する構成とされている。また、コンテナ降ろし動作時とダンプ動作時とでは、フックアームを動作させるか否かの違いがあるので、フックアームがスライド動作して後端に達すると、フックアームの端部の当接部がロック装置の被当接部に当接して、ロックが自動的に解除される構成も提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0004】
【特許文献1】特開2002−301981号公報(図8,図9)
【特許文献2】特開2003−220881号公報(図1,図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、フックアームの当接部がロック装置の被当接部に当接してロックが解除された状態で、コンテナ積み降ろしのためにリフトアームが90度を超えて大きく回動すると、リフトアーム内に挿入されているフックアームの基部が僅かながらも揺動し、そのために、当接部と被当接部とが互いに摺動接触して摩耗が発生することが判明した。
かかる従来の問題点に鑑み、本発明は、リフトアーム回動中の部材の摩耗を抑制する荷役車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の荷役車両は、コンテナを搭載する車体と、基端部が前記車体に軸着されることにより回動可能なダンプアームと、基端部が前記ダンプアームに軸着されることにより回動可能なリフトアームと、前記リフトアームにスライド可能に、基部が挿入されたフックアームと、前記リフトアーム及びフックアームに駆動力を付与する駆動装置と、前記リフトアームに設けられた係合部と、前記ダンプアームに設けられた被係合部とを係脱させることにより、前記ダンプアームに対する前記リフトアームの回動を規制又は規制解除するリフトアームロック装置と、前記フックアームの基部に設けられ、前記フックアームのスライド動作と共に移動する当接部と、前記係合部に取り付けられ、前記当接部と当接してその移動により前記リフトアームロック装置を動作させる被当接部とを備え、前記当接部及び被当接部の少なくとも一方は、これらが互いに当接した状態で前記リフトアームの回動中に、前記フックアームの基部の揺動に追随して動く従動体であることを特徴とする。
【0007】
上記のように構成された荷役車両において、当接部及び被当接部の少なくとも一方は、これらが互いに当接した状態でリフトアームの回動中に、フックアームの基部の揺動に追随して動く従動体であるので、当接部と被当接部との摺動接触を抑制することができる。
【0008】
また、上記荷役車両において、当接部の移動する方向に延びて、被当接部を案内するガイド孔が前記リフトアームに形成され、被当接部は回転自在に支持され軸方向に所定量移動可能なローラであって、フックアームの基部の揺動に追随して軸方向に移動するとともに、その外周面を、ガイド孔の側面に接触させて回転可能であるようにしてもよい。
この場合、フックアームの移動中に、ガイド孔の側面に接触したローラは、摺動ではなく回転することにより摺動接触を抑制する。また、回転するローラと当接部とは摺動接触の状態となるが、ローラの外周が均一に摩耗することにより、局所的な摩耗は回避される。
【0009】
また、上記荷役車両において、従動体は回転自在に支持されたローラであって、フックアームの基部の揺動に追随して回動するように構成してもよい。
この場合、当接部の揺動の往復行程のいずれにおいても、ローラが円滑に回動することにより、当接部との摺動接触は防止され、摩耗を抑制することができる。
【0010】
また、上記荷役車両において、被当接部は、弾性部材を圧縮又は弛緩することにより、フックアームの基部の揺動に追随して所定量移動可能であってもよい。
この場合、弾性部材の存在により、当接部と離れているときの被当接部を、常に一定の位置に保持することができる。また、走行中における被当接部の移動を抑制することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の荷役車両によれば、当接部及び被当接部の少なくとも一方が、これらが互いに当接した状態でリフトアームの回動中に、フックアームの基部の揺動に追随して動く従動体であるので、当接部と被当接部との摺動接触を抑制することができる。従って、リフトアーム回動中の部材の摩耗を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1の(a)は、本発明の第1実施形態による荷役車両において、車体1にコンテナ3が搭載された状態を示す側面図である。図において、、車体1は、その後部のシャシフレーム1aと、このシャシフレーム1a上に取り付けられたサブフレーム1bとを備えている。サブフレーム1bにはキャリア装置2が取り付けられており、このキャリア装置2にコンテナ3が搭載される。この荷役車両は、車体1に対してコンテナ3を積み降ろしする動作、及び、車体1に搭載されたコンテナ3をダンプさせる動作が、選択的に実行できるように構成されている。コンテナ3は、その後方下部に着地時の車輪としてのローラ3rを備えている。
【0013】
図2の(a)及び(b)はそれぞれ、上記キャリア装置2のみを示す平面図及び側面図である。図の左方が車体前方側、右方が車体後方側である。サブフレーム1bに取り付けられたキャリア装置2は、基端部(右端側)がサブフレーム1bに軸着されることにより回動可能なダンプアーム5と、基端部(右端側)がダンプアーム5に軸着されることにより回動可能なリフトアーム6と、基部7h(水平な部分)の一部がリフトアーム6に挿入され、かつ、リフトアーム6に対して図の左右方向にスライド可能なL字状のフックアーム7と、油圧により動作する駆動装置としての一対のリフトシリンダ8及び1個のスライドシリンダ9とを備えている。
【0014】
上記リフトシリンダ8の一端はサブフレーム1bに、他端はリフトアーム6にそれぞれ接続されている。また、スライドシリンダ9の一端はリフトアーム6に、他端はフックアーム7にそれぞれ接続されている。サブフレーム1bは、シャシフレーム1a(図1)に固定され、共に車体1を構成する。
なお、上記サブフレーム1bを省略して、キャリア装置2をシャシフレーム1aに直接取り付けることも可能である。
【0015】
上記ダンプアーム5は、ピン10により右端側でサブフレーム1bに軸着され、車体後方側へ回動可能である。また、ダンプアーム5の右端側には、車幅方向を軸方向として回動自在なローラ51が設けられている。上記リフトアーム6は、ダンプアーム5の左端側に、ピン11により軸着され、フックアーム7と共に、当該ピン11又はピン10を中心に回動可能である。フックアーム7は、回動端側の上端部にコンテナ3の係合片3a(図9参照。)を引っかけるフック7aを有する。リフトアーム6とフックアーム7とは、コンテナ積み降ろし時にはダンプアーム5に対してピン11を中心に回動し、ダンプ時にはダンプアーム5と一体的にピン10を中心として回動する。
【0016】
上記スライドシリンダ9は、その伸縮動作により、フックアーム7を、図2の(b)に実線で示す位置から二点鎖線で示す位置まで又はその逆に、スライドさせることができる。また、上記リフトシリンダ8は、その伸縮動作により、リフトアーム6に回動力を付与する。
【0017】
次に、ダンプアーム5に対するリフトアーム6のロック装置(以下、リフトアームロック装置という。)について説明する。図3は、リフトアームロック装置13が設けられている位置周辺を示す概略の側断面図である。また、図4は、図3におけるリフトアームロック装置13の拡大断面図(但し、一部省略している。)である。これらの図は、リフトアーム6にスライド可能に取り付けられたフックアーム7が、図1の(b)に示すようにスライド動作によって車両の後方側へ後退したときの状態を示している。
【0018】
すなわち、フックアーム7の後端に車幅方向へ水平に取り付けられた当接部(丸棒)12が、リフトアームロック装置13に取り付けられた円柱状のローラ14に当接して、これを車体の後方側へ押し、図示の位置まで達したロック解除の状態(ダンプアーム5に対するリフトアーム6の回動を規制解除した状態)である。なお、このローラ14は例えば樹脂製である。リフトアームロック装置13はリフトアーム6に一対のブラケット15,16を介して取り付けられている。一方、当接部12が図4の位置より前方にあって、リフトアームロック装置13がロック状態(ダンプアーム5に対するリフトアーム6の回動を規制した状態)にあるときを示したのが図5である。
【0019】
図5において、図の左側のブラケット15には丸孔15aが形成されており、ここに、ブッシュ17が装着(嵌合)されている。右側のブラケット16には、ブッシュ18の外径より大きい丸孔16aが形成され、また、ボルト27、ナット28等によりプレート25が取り付けられている。そして、このプレート25に形成された丸孔25aにブッシュ18が装着(嵌合)されている。ブラケット16の丸孔16aに対しては、ブッシュ18は単に挿通されるだけであり、嵌合されてはいない。
【0020】
係合部としてのロックピン19は、ブッシュ17,18を介して、ブラケット15,16により、軸方向(車体前後方向)に移動可能に支持されている。ブッシュ17,18は、移動するロックピン19との摩擦抵抗を低減し、円滑にロックピン19を摺動させる。ロックピン19は、中間より左寄りに筒状の大径部19aを備えている。大径部19aとロックピン19とは、上下に連結ピン21を挿通させることにより一体的に連結されている。また、ローラ14は、これを貫通する連結ピン21を回転軸として、回転自在に支持されている。
【0021】
図17の(a)は、上記プレート25の取り付け方を示す部分断面図であり、(b)は(a)におけるB−B矢視図である。プレート25は(b)に示す形状であり、中央の丸孔25aの他に、一対のボルト孔16bを有している。一対のボルト孔16bに対応する位置のブラケット25にも、同様なボルト孔25bが形成されている。これらのボルト孔16b,25bの内径は、ボルト27のねじ部を挿通させるために必要な寸法よりさらに、若干大きく形成されている。
【0022】
ボルト27、ナット28、ワッシャ29及びスプリングワッシャ30を用いて、プレート25をブラケット16に取り付けるとき、ボルト27とボルト孔16b,25bとの隙間の分だけプレート25の取付位置を調整することが可能である。この調整を行っても、(b)の丸孔25a内に、その奥の丸孔16aの内周面が現れないように、丸孔16aは大きめに形成されている。ブラケット16は、溶接によりリフトアーム6に固定されるが、このとき、溶接の熱により一方のブラケット15の丸孔15aの中心と、他方のブラケット16の丸孔16aとの中心とが互いにずれたとしても、プレート25を移動させることにより、丸孔15aの中心と、プレート25の丸孔25aの中心とを互いに一致させることができる。従って、ロックピン19を取り付けるにあたって、これが常に円滑に移動できるように、確実に取り付けることができる。なお、ここではプレート25をブラケット16側に設けたが、これに代えて、ブラケット15側に同様なプレートを設けることも可能である。
【0023】
図5に戻り、連結ピン21には、4枚のワッシャ23と波ワッシャ24とが通され、連結ピン21の軸方向と直交する水平方向に3本の抜け止めピン22が挿通されている。大径部19aに対しては、抜け止めピン22、ワッシャ23及び大径部19aの間に隙間がなく、従って、連結ピン21は、上下に動くことはない。一方、ローラ14の上下の抜け止めピン22間の距離Aは、その間にある2枚のワッシャ23の厚さと、ローラ14を載せた状態の波ワッシャ24の高さと、ローラ14の厚さとを加算したものより若干大きく、図5に示す状態では上のワッシャ23とローラ14との間に、ごく僅かな隙間ができている。この隙間と、波ワッシャ24の圧縮可能量の分だけ、ローラ14は上下に移動可能である。また、ローラ14の厚さ寸法は、ローラ14が上下に移動しても、常にガイド孔6aから抜け出さないように設定されている。なお、連結ピン21の上端は、リフトアーム6の内部に入り込んでいる。
【0024】
ロックピン19の大径部19aとブッシュ18の鍔部18aとの間には、ばね20が軽く圧縮された状態で装着されており、大径部19aの左端はブッシュ17の鍔部17aに圧接している。これにより、ロックピン19は、図の左方向(ロック方向)に付勢されている。ダンプアーム5の先端側には、被係合部5aが設けられており、ここに形成された孔5bに、ロックピン19が挿脱可能である。なお、ロックピン19の先端には面取りが施されており、これにより、孔5bに入りやすくなっているとともに、両者の軸がずれている場合には相互に芯出しの作用が得られる。図示のように、孔5bにロックピン19が挿入されるとロック状態であり、リフトアーム6はダンプアーム5と一体的に回動する状態となる。逆に、孔5bからロックピン19が抜けると、ロック解除の状態となり、リフトアーム6はダンプアーム5から解放され、単独で回動可能となる。
【0025】
一方、ローラ14は、リフトアーム6の一部に形成されたガイド孔6a内に収められている。このガイド孔6aは、当接部12の移動する方向へ延びている。図6は、リフトアームロック装置13がロック解除状態にあるとき、ガイド孔6aを斜め上から見た斜視図(一部省略している。)である。当接部12は、ローラ14を、ロックピン19の軸方向に押すことにより、ばね20に抗して、ロックピン19を孔5bから抜き、リフトアームロック装置13のロックを解除する。ロック解除によりリフトアーム6は、ダンプアーム5に拘束されることなく単独で回動可能となる。なお、リフトアーム6の回動中、当接部12は、ローラ14に当接したままである(詳細後述)。ローラ14は、その外周面が、ガイド孔6aの左側面(車両の左舷側の側面)6a1に接触し得る位置にある。
【0026】
図5に戻り、この状態(ロック状態)で、ガイド孔6aの前端とローラ14との間には、図示のように若干の隙間がある。すなわち、ばね20に付勢されているローラ14がガイド孔6aの前端に当接する前に、大径部19aがブッシュ17の鍔部17aに当接する。従って、図4,図6の状態からフックアーム7及び当接部12が車体前方へ前進し、それによりローラ14が前進しても、ガイド孔6aの前端に当接する直前に止まるようになっている。
【0027】
次に、車体に対するダンプアーム5のロック装置(以下、ダンプアームロック装置という。)について簡単に説明する。図7は、図3に示すリフトアームロック装置13等とは車幅方向の異なる位置に設けられているダンプアームロック装置52を示す図である。図において、右舷側のダンプアーム5から車幅方向の中央部にかけて、車幅方向に延びる回動軸53が、軸周りに回動自在に取り付けられている。回動軸53の一端には係合部54が固定されている。ばね55は、一端が係合部54に、他端がダンプアーム5に、それぞれ取り付けられている。また、回動軸53の他端には被当接部56が固定されている。
【0028】
係合部54と被当接部56とは互いに、回動軸53を介して一体に回動可能である。また、係合部54及び被当接部56は、係合部54に取り付けられたばね55により、回動軸53を中心として反時計回り方向に付勢されている。一方、ピン41は、車体側のサブフレーム1bに設けられており、これに対して、係合部54が係脱可能である。
【0029】
図示の状態では、フックアーム7の当接部12が被当接部56に当接してこれを後方へ押し込み、係合部54がピン41に係合し、ダンプアーム5はサブフレーム1bすなわち車体側に固定されている。一方、フックアーム7及び当接部12が前進(図の左方)すると、ばね55の付勢により係合部54は反時計回り方向に回動し、ピン41との係合が解除される。従って、ダンプアーム5が回動可能な状態となる。また、図7の状態からリフトアーム6がピン11を中心として時計回り方向に回動すると、当接部12の移動に伴って被当接部56が係合部54と共に反時計回り方向に回動し、ピン41との係合が解除されるようになっている。
【0030】
図8は、上記被当接部56も併せて表示した、ガイド孔6a及びその周辺を示す平面図である。被当接部56は、ガイド孔6aの右側面6a2の側にあり、上端がガイド孔6aから突出しており、当接部12との当接が可能となっている。従って、ガイド孔6aからローラ14及び被当接部56が露出した状態となっている。ガイド孔6aの下方で、被当接部56とリフトアームロック装置13との間には、仕切り板26が設けられており、両者の相互干渉を防止している。仕切り板26は、リフトアーム6に固定されている。すなわち、被当接部56とリフトアームロック装置13とは、ガイド孔6aを共有しながら、仕切り板26により、相互の干渉を防止する構造となっている。このようにして、1つのガイド孔6aが、2つの用途に兼用される。
【0031】
また、仕切り板26はローラ14と接触可能なように配置されており、ローラ14は、ガイド孔6aの左側面6a1と仕切り板26とによって規制された幅内で、ロックピン19の軸方向に案内される。但し、その規制幅Cと、ローラ14の直径D(図示せず。)とは、わずかにC>Dの関係にあり、ローラ14が、左側面6a1と仕切り板26とに同時に当たることはない。
なお、ローラ14は左側面6a1に寄せて設けられているが、左右逆にして、右側面6a2に寄せて設けられる構成とすることも可能である。
【0032】
次に、上記のように構成された荷役車両のコンテナ積み降ろし動作及びダンプ動作について説明する。
図1の(a)は、コンテナ3を搭載した状態(走行可能な状態)の車両を示している。この状態では、図示しない既知の固縛装置がサブフレーム1b(図2)にコンテナ3を固縛した状態にある。この状態からコンテナ3を降ろす場合には、まず、固縛装置による固縛を解除してから、スライドシリンダ9(図2)を収縮動作させ、フックアーム7を(b)に示す位置まで後退させる。これにより、コンテナ3も後方へ移動する。フックアーム7の後退により、当接部12が、まず図5に示すようにローラ14に当接する。ここからさらにフックアーム7が後退端まで後退すると、図3、図4、図6に示すように当接部12がローラ14及びロックピン19を後方へ押し込み、リフトアーム6はロック解除の状態となる。
【0033】
ロックピン19が後方へ移動する際、ローラ14はガイド孔6aの左側面6a1と仕切り板26とにガイドされ、ローラ14の軸が傾くことなく移動する。また、ローラ14は、左側面6a1又は仕切り板26と接触すると回転し、摺動の状態とはならない。これにより、ローラ14の摩耗は抑制される。一方、回転するローラ14と当接部12とは摺動接触の状態となるが、車幅方向に延びる丸棒の当接部12と、それと直交する軸(連結ピン21)周りに円筒形状のローラ14とは基本的には点接触の状態となり、接触面積が小さいので摩耗は比較的少ない。また、ローラ14の回転により、当接部材12は、ローラ14の外周に対して均一に接触するので、摩耗が均一に発生し、局所的な摩耗は回避される。
【0034】
ロック解除により、リフトアーム6はダンプアーム5に拘束されることなく、単独で回動可能な状態となる。
続いて、リフトシリンダ8を伸長動作させると、リフトアーム6がピン11(図2)を中心として、時計回り方向に回動する。従って、図1の(c)に示すように、フックアーム7によって一方がつり上げられたコンテナ3は、ローラ51(図2)に接しながら傾動し、右端側を下げていく。こうしてコンテナ3は後方に徐々にずり落ち、後方下部のローラ3rが接地し、さらに図9に示すように、コンテナ3全体が着地する。
【0035】
図10は、リフトアーム6の回動開始からコンテナ3が着地するまで、又はその逆の回動中において、リフトアーム7内に挿入されているフックアーム7の基部7hの揺動を、誇張して示す図である。回動開始時点では、後退したフックアーム7のフック7aにコンテナ3の重量は係合片3aから下向きに、フック7aを押し下げるように付与される。そのため、当接部12は、リフトアーム6の底面6bから浮き上がっている。しかし、回動の進行によりコンテナ3の重量がフック7aの先端側にかかり始めると、基部7hは揺動し、当接部12はリフトアーム6の底面6bに接触する。また、このように重量のかかり方が変化する過渡的状態においては基部7hの揺動方向が不安定であり、当接部12が底面6bから浮き上がったり、接触したり、の状態が繰り返される場合もある。このような基部7h及び当接部12の動き(がたつき)は、リフトアーム6との相対的な関係で見ると、リフトアーム6の軸方向(長手方向)に直交する方向への揺動に相当する。
【0036】
図11は、当接部12の動きの前後の状態変化を示す拡大断面図である。当接部12がローラ14に押し当てられてから最初の、基部7hの揺動時は、当接部12が摩擦力でローラ14を押し下げる動作となり、このときは波ワッシャ24が圧縮されることにより、ローラ14が二点鎖線で示す位置まで下降する。すなわち、当接部材12とローラ14との摩擦力により、ローラ14は波ワッシャ24の弾性に抗して、当接部12に追随して動く従動体となり、下方へ移動する。
【0037】
また、基部7hが逆方向に揺動するとき、すなわち、当接部12がリフトアーム6内で相対的に下から上に動くときは、当接部12は図11の二点鎖線で示す位置から実線で示す位置まで移動(上昇)する。このとき、摩擦力によりローラ14は当接部12に追随して動く従動体となり、二点鎖線の位置から実線の位置へ移動する。また、圧縮された波ワッシャ24が弛緩するときの弾性力がローラ14を押し上げる補助力となる。
【0038】
こうして、当接部12がローラ14に当接してから離れるまでの間、ローラ14は基部7hの揺動に追随して当接部12が動く方向へ追随する従動体となる。これにより、当接部12とローラ14(被当接部)との摺動接触を抑制することができる。従って、リフトアーム回動時の、ローラ14の摩耗を抑制することができる。なお、波ワッシャ24の存在により、当接部12と離れているときのローラ14を、常に一定の位置に保持することができる。また、走行中のローラ14の移動(上下動)を抑制することができる。
【0039】
コンテナ3が、図9に示す状態(完全に着地した状態)に達すると、通常、操作者はリフトシリンダ8の伸長動作を停止させる。これにより、コンテナ降ろし動作は完了となる。一方、コンテナ3全体が着地したにもかかわらず操作者がリフトシリンダ8の伸長動作を停止させなかった場合、フック7aがコンテナ3の係合片3aを押さえ込んで、それ以上動けなくなる。そのため、図12に示すように、リフトアーム6の基端側が上に逃げようとしてダンプアーム5が浮き上がる。このとき前述の被当接部56は、ダンプアーム5をロック解除しているため、ダンプアーム5の回動が妨げられることはない。このようにして、リフトシリンダ8を必要以上に伸長動作させた場合に、ダンプアーム5の浮き上がりを許すことによって、後輪の浮き上がりを防止することができる。
【0040】
図13は、段差のあるプラットホームにコンテナ3を着地させた状態を示している。この場合も同様に、コンテナ3全体が着地したにもかかわらず操作者がリフトシリンダ8の伸長動作を停止させなかった場合には、リフトアーム6の基端側が上に逃げようとしてダンプアーム5が浮き上がるようになっている。
【0041】
一方、逆に、コンテナ3を車両に積み込む場合には、図9の状態から順に、図1の(c)、(b)、(a)の状態へ、上述の降ろし動作とは逆の動作が行われる。図9の状態からリフトアーム6の回動により図1の(c)を経て(b)の状態に達する過程において、前述のようにフックアーム7の基部7hが揺動すると、これに追随してローラ14も軸方向に移動する。従って、ローラ14の摩耗は抑制される。
【0042】
また、図1の(b)の状態から(a)の状態に達する過程において、フックアーム7の前進により、図8に示すように、ローラ14はガイド孔6aの左側面6a1と仕切り板26とにガイドされ、ローラ14の軸が傾くことなく移動する。また、ローラ14は、左側面6a1又は仕切り板26と接触すると回転し、摺動接触の状態とはならない。これにより、ローラ14の摩耗は抑制される。
【0043】
一方、コンテナ3をダンプさせる場合には、図1の(a)の状態から、スライドシリンダ9を動作させることなく、リフトシリンダ8を伸長動作させる。これにより、図14に示すように、ダンプアーム5とリフトアーム6及びフックアーム7とは互いに一体的に、後方へ回動する。これにより、コンテナ3はダンプし、コンテナ3の中味が排出される。
【0044】
図1の(a)の状態において、リフトアームロック装置13は、図5に示す状態から当接部12が前方(図の左方)へ退去した状態となる。このとき、ローラ14は、ガイド孔6aの左側面6a1又は仕切り板26と接触している可能性はあるが、この接触は、ロックピン19の軸方向と直交する方向であるので、ばね20の力は作用しない。また、前述のように、大径部19aが先にブッシュ17の鍔部に当接するので、ローラ14はガイド孔6aの左端に接していない。従って、ローラ14は、回転可能な状態にある。この状態において車両が走行すると、振動によりローラ14がガイド孔6aの左側面6a1又は仕切り板26と接触し、摩耗する可能性がある。しかし、回転可能な状態のローラ14は振動により自転し、その結果、同一箇所で摩耗が進行する事態は回避され、外周面が均一に摩耗する。
【0045】
なお、上記のように被当接部としてのローラ14はガイド孔6aとの摩擦抑制を考慮すると、円柱状で回転可能であることが好ましいが、リフトアーム6の回動中の部材の摩耗抑制のみを実現するのであれば、円柱形状のものに代えて、多角形や、直方体の被当接部を採用することも可能である。
【0046】
図15は、第2の実施形態による荷役車両におけるリフトアームロック装置13周辺を示す断面図であり、第1の実施形態における図4に対応する図である。その他の構成は、第1の実施形態と同様である。図において、ローラ支持部31はロックピン19を貫通させるとともに、ロックピン19と一体に軸方向へ移動するように固定された部材である。ピン32は、ロックピン19の軸方向と直交する車体幅方向に、ローラ支持部31に植設されている。樹脂製のローラ33は、このピン32を中心として回動自在に取り付けられている。当接部12は、ローラ33を介してローラ支持部31を押し、リフトアームロック装置13をロック解除する。図示の状態からリフトアーム6が回動すると、その回動中の当接部12は揺動するが、その揺動にローラ33が追随して回動する。また、回動に伴ってロックピン19の軸方向にも微動する。この場合、当接部12の揺動の往復行程のいずれにおいても、ローラ33が円滑に回動することにより、当接部12との摺動接触は防止され、摩耗を抑制することができる。なお、ガイド孔6aには、ローラ支持部31及びローラ33を案内するに適した形状が必要である。
【0047】
図16は、第3の実施形態による荷役車両におけるリフトアームロック装置13周辺を示す断面図であり、第1の実施形態における図4に対応する図である。その他の構成は、第1の実施形態と同様である。図において、フックアーム7の端部にはローラ支持片7bが形成され、これにより、樹脂製のローラである当接部12が、回転自在に支持されている。大径部19aから上方へ連結ピン21が突出して設けられ、かつ、大径部19aに固定されている。この連結ピン21が、被当接部となる。フックアーム7が回動中に、揺動により当接部12が上下すると、それに追随して、当接部12自身が回動して連結ピン21との摺動接触を回避する。この場合、第2の実施形態と同様に、当接部12の揺動の往復行程のいずれにおいても、当接部12自身が円滑に回動することにより、被当接部である連結ピン21との摺動接触は防止され、摩耗を抑制することができる。
【0048】
なお、上記各実施形態では、当接部12及び被当接部(ローラ14,33、連結ピン21)のいずれか一方を、基部7hの揺動に追随して動く従動体としたが、双方を従動体とすることも可能である。
また、当接部12はフックアーム7の基部7hの端部に設けたが、設ける場所は必ずしも端部でなくても良い。
また、当接部12は、フックアーム7の基部7hの一部をもって、代用することもできる。この場合は、フックアーム7の基部7hの当該一部が「当接部」となる。
また、上記各実施形態において、当接部・被当接部、及び、係合部・被係合部は、それぞれ相対的な概念で用いた用語であり、必ずしも能動・受動と対応するものではない。各部の名称は、逆の概念で捉えることも可能である。
【0049】
なお、上記第1の実施形態で用いた波ワッシャ24は、これに限定されるものではなく、他の弾性部材を用いることも可能である。例えば、コイルばねであってもよいし、ゴム等の非金属で代用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の第1実施形態による荷役車両において、車体にコンテナが搭載された状態及び積み降ろし動作途中の状態を示す側面図である。
【図2】荷役車両におけるキャリア装置のみを示す平面図及び側面図である。
【図3】荷役車両におけるリフトアームロック装置が設けられている位置周辺を示す概略の側断面図である。
【図4】図3におけるリフトアームロック装置の、ロック解除状態における拡大断面図(但し、一部省略している。)である。
【図5】ロック状態におけるリフトアームロック装置の拡大断面図である。
【図6】ロック解除状態におけるリフトアームロック装置の斜視図である。
【図7】図3に示すリフトアームロック装置等と車幅方向に隣接して設けられているダンプアームロックの構成を示す図である。
【図8】係合部も併せて表示した、ガイド孔及びその周辺を示す平面図である。
【図9】荷役車両がコンテナを降ろした状態を示す側面図である。
【図10】リフトアームの回動開始からコンテナが着地するまで、又はその逆の回動中において、リフトアーム内に挿入されているフックアームの基部の揺動を、誇張して示す図である。
【図11】当接部の動きの前後の状態変化を示す拡大断面図である。
【図12】コンテナが完全に着地した後のリフトシリンダの伸長動作によりダンプアームが浮き上がった状態を示す側面図である。
【図13】段差のあるプラットホーム上に、コンテナが完全に着地した後のリフトシリンダの伸長動作によりダンプアームが浮き上がった状態を示す側面図である。
【図14】荷役車両がコンテナをダンプ動作させる状態を示す側面図である。
【図15】第2の実施形態による荷役車両におけるリフトアームロック装置周辺を示す断面図であり、第1の実施形態における図4に対応する図である。
【図16】第3の実施形態による荷役車両におけるリフトアームロック装置周辺を示す断面図であり、第1の実施形態における図4に対応する図である。
【図17】(a)は、プレートの取り付け方を示す部分断面図であり、(b)は(a)におけるB−B矢視図である。
【符号の説明】
【0051】
1 車体
3 コンテナ
5 ダンプアーム
5a 被係合部
6 リフトアーム
6a ガイド孔
6a1 左側面
7 フックアーム
7h 基部
8 リフトシリンダ(駆動装置)
9 スライドシリンダ(駆動装置)
12 当接部
13 リフトアームロック装置
14 ローラ(被当接部)
19 ロックピン(係合部)
21 連結ピン
33 ローラ(被当接部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンテナを搭載する車体と、
基端部が前記車体に軸着されることにより回動可能なダンプアームと、
基端部が前記ダンプアームに軸着されることにより回動可能なリフトアームと、
前記リフトアームにスライド可能に、基部が挿入されたフックアームと、
前記リフトアーム及びフックアームに駆動力を付与する駆動装置と、
前記リフトアームに設けられた係合部と、前記ダンプアームに設けられた被係合部とを係脱させることにより、前記ダンプアームに対する前記リフトアームの回動を規制又は規制解除するリフトアームロック装置と、
前記フックアームの基部に設けられ、前記フックアームのスライド動作と共に移動する当接部と、
前記係合部に取り付けられ、前記当接部と当接してその移動により前記リフトアームロック装置を動作させる被当接部とを備え、
前記当接部及び被当接部の少なくとも一方は、これらが互いに当接した状態で前記リフトアームの回動中に、前記フックアームの基部の揺動に追随して動く従動体であることを特徴とする荷役車両。
【請求項2】
前記当接部の移動する方向に延びて、前記被当接部を案内するガイド孔が前記リフトアームに形成され、
前記被当接部は回転自在に支持され軸方向に所定量移動可能なローラであって、前記フックアームの基部の揺動に追随して軸方向に移動するとともに、その外周面を、前記ガイド孔の側面に接触させて回転可能である請求項1記載の荷役車両。
【請求項3】
前記従動体は回転自在に支持されたローラであって、前記フックアームの基部の揺動に追随して回動する請求項1記載の荷役車両。
【請求項4】
前記被当接部は、弾性部材を圧縮又は弛緩することにより、前記フックアームの基部の揺動に追随して所定量移動可能である請求項1記載の荷役車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2008−74259(P2008−74259A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−256023(P2006−256023)
【出願日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【出願人】(000163095)極東開発工業株式会社 (215)