説明

荷支持用免震装置

【課題】ラックの荷収納区画において荷を支持する荷支持台の耐震性を高めるのに効果的な荷支持用免震装置のユニット化を図ると共に、長期間継続して良好な免震効果が期待できるようにする。
【解決手段】支持部材7a,7b上に立設された支持柱体16と、この支持柱体16上に被さって支持柱体16の上面で滑動自在に支持される可動体17と、この可動体17に設けられた環状周壁18と支持柱体16との間に介装されて可動体17を支持柱体16に対しほぼ同心位置に付勢保持する付勢部材19とから成る荷支持用免震装置において、前記支持柱体16の上端支持面16bが合成樹脂材で形成され、この支持柱体16の上端支持面16bに当接する前記可動体17の下側被支持面17bを金属材で形成した構成。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷保管用ラックなどの荷支持台として、又は荷支持台の支持手段として使用される荷支持用免震装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
荷保管用ラックなどの荷支持台の支持手段として使用される荷支持用免震装置は、地震時にラックが荷収納区画の荷出し入れ前後方向に揺れたとき、保管中の荷が荷支持台上を滑動して当該ラックの通路側(ラックに沿って設けられた入出庫用クレーンの走行通路のある側)へ落下する事故を防止するために採用されるものであって、一般的に、ラックの荷収納区画において荷を支持する荷支持台と、荷収納区画の左右両側の隔壁フレームから突設されて前記荷支持台を支持する支持部材との間に介装されるもので、荷支持台を兼用するか又は当該荷支持台を支持する可動体を水平方向に滑動自在に支持する支持柱体と、前記可動体をその滑動領域のほぼ中心位置に付勢保持する付勢部材とから構成される。而して、従来のこの種の荷支持用免震装置は、特許文献1にも記載されるように、前記支持柱体と付勢部材とが支持部材上の離れた位置に並設されており、免震装置としてユニット化されたものでなかったため、支持部材上への取付け作業などにも手間がかかるというだけでなく、支持柱体を中心に水平全方位に可動体を付勢力に抗して滑動自在に支持させることもできなかった。そこで、非特許文献1に示すように、前記可動体を支持柱体に被さって水平全方位に滑動自在に支持される円盤状に構成し、この可動体の前記支持柱体を取り囲む環状周壁と前記支持柱体との間に渦巻きバネなどの付勢部材を介装した、ユニット化された免震装置が考えられた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−51238号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】特願2006−318076号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
而して、非特許文献1に記載される構成では、大径の可動体が小径の支持柱体に支持されて、支持柱体から可動体の周辺部が大きく張り出した状態にあるので、この免震装置で支持された荷支持台又は前記免震装置の可動体そのもので兼用された荷支持台上に荷が積載されるとき、当該荷支持台上に降ろされる荷の底面が完全に水平ではなくて傾いていることが原因で、前記可動体の周辺部一箇所が荷で押し下げられて当該可動体が支持柱体に対して傾く恐れがある。このようなとき、支持柱体の上端支持面とこれに滑動自在に支持される可動体の下側被支持面との間の摩擦を小さくするために、支持柱体の上端支持面と可動体の下側被支持面の両方又は可動体の下側被支持面を摩擦係数の小さな合成樹脂製板で形成した場合、可動体の下側被支持面に支持柱体の上端支持面の周縁一箇所が食い込んで傷が付くことになる。このような可動体の下側被支持面上の傷は、支持柱体と可動体との間の円滑な水平相対移動を妨げる要因となり、所期の免震効果が期待できなくなる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記のような従来の問題点を解消し得る荷支持用免震装置を提供することを目的とするものであって、請求項1に記載の免震装置は、後述する実施形態の参照符号を付して示すと、支持部材7a,7b上に立設された支持柱体16と、この支持柱体16上に被さって当該支持柱体16の上端支持面16bで滑動自在に支持される可動体17と、この可動体17に設けられた環状周壁18と前記支持柱体16との間に介装されて前記可動体17を前記支持柱体16に対しほぼ同心位置に付勢保持する付勢部材19とから成る荷支持用免震装置において、前記支持柱体16の上端支持面16bが合成樹脂材で形成され、この支持柱体16の上端支持面16bに当接する前記可動体17の下側被支持面17bを金属材で形成した構成となっている。
【0007】
上記の本発明に係る免震装置を実施する場合、請求項2に記載のように、前記支持柱体16の上端支持面16bの周縁角部16cは、適当な曲率の曲面に形成することができる。又、請求項3に記載のように、前記可動体17の下側被支持面17bは、金属製の可動体17の下側面そのもので形成することができるし、請求項4に記載のように、可動体17の下側面に張設された金属製スライドプレート28の下側面で形成することができる。
【0008】
更に、請求項5に記載のように、前記支持柱体16は、支持部材7a,7b上に固定される金属製の支柱本体16aと、この支柱本体16aの上端に取り付けられる合成樹脂製の押え板25から構成し、支柱本体16aの上端には小径段部22を形成し、この小径段部22に、周囲が支柱本体16aから張り出すリング状緩衝材23を外嵌させ、前記押え板25は、その周辺が前記リング状緩衝材23に被さって当該リング状緩衝材23を固定すると共にその上面が前記支持柱体16の上端被支持面16bを形成するように構成することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る荷支持用免震装置は、例えば荷保管用ラックの各荷収納区画に配設される荷支持台と、当該荷支持台を支持するように荷収納区画の左右両側の隔壁フレームから突設された支持部材との間に介装するか又は、前記支持部材上に配設した本発明免震装置の可動体そのものを荷支持台として使用することができ、係る使用状態において、ラックが地震発生時に荷収納区画の荷出し入れ前後方向に揺れ動いたとき、ラックと一体に前後に揺れ動く支持部材側の支持柱体と荷を支持する側の可動体との間に付勢部材の付勢力に抗する相対摺接移動が生じ、荷を支持する側の可動体がラックと一体に同一速度、同一振幅で前後方向に揺れ動くことがなくなる。
【0010】
従って、開放された通路側にラックが揺れ動いたときに可動体を介して荷がラックと一体に通路側に揺れ動くことにより、慣性で荷が荷支持台上を通路側へ滑動し、場合によっては通路側へ落下してしまう恐れがなくなり、所期の免震効果が得られる。この支持部材側の支持柱体と荷を支持する側の可動体との間の前後方向の相対移動は、付勢部材の弾性に抗して行われるので、相対移動後は当該付勢部材が弾性復帰することにより、荷を支持する側の可動体は支持部材上の原点位置に自動復帰するので、荷支持台上で荷が滑動しない限り荷の位置が前後方向に不測に変動することはなく、安全に荷を継続保管することができる。勿論、支持柱体に対して可動体は水平全方位に滑動自在に支持されているので、ラックが左右横方向や斜め方向に揺れた場合も免震効果が期待でき、荷周辺の一部分が荷支持台上から外れ落ちて荷崩れを起こすような恐れも解消する。
【0011】
而して、上記請求項1に記載の本発明の構成によれば、支持柱体とこれに被さる可動体との間に付勢部材が介装され、支持柱体を支持部材上に取り付けるだけで免震装置の取付けが完了するので、免震装置の取付け作業が簡単容易に行え、組立てコストを削減できる。しかも、可動体の下側被支持面は金属製であり、この可動体の下側被支持面を支持する支持柱体の上端支持面は合成樹脂製であるから、この支柱本体上端支持面を形成する合成樹脂材に摩擦係数の小さな素材を選択して構成することにより、支持柱体と可動体との間の水平相対移動を円滑に行わせ、以て所期の免震効果を確実に得ることができる。
【0012】
更に、可動体の下側被支持面を合成樹脂製とし、小径の支持柱体の支柱本体上端支持面を金属製又は合成樹脂製とする場合と比較して、先に説明したような原因によって支持柱体に対し大径の可動体が傾いたようなときでも、当該可動体の下側被支持面は金属製であるから、小径の支持柱体の上端支持面の周縁が当該可動体の下側被支持面に食い込んで傷を付けるような恐れがなくなる。従って、可動体の下側被支持面に付いた傷によって支持柱体と可動体との間の円滑な水平相対移動が妨げられるようなことがなくなり、所期の免震効果を確実且つ長期間にわたって継続的に期待できる。勿論、支持柱体の上端支持面の周縁が可動体の金属製の下側被支持面に圧接することにより凹み傷を受けることは考えられるが、この支持柱体の上端支持面の周縁の凹み傷が支持柱体と可動体との間の円滑な水平相対移動を妨げる恐れは殆どないので、実用上問題はない。
【0013】
特に、請求項2に記載の構成によれば、小径の支持柱体の上端支持面の周縁が角張っている場合と比較して、可動体の下側被支持面に食い込んで傷を付ける恐れが殆ど皆無となるだけでなく、この支持柱体の上端支持面の周縁が可動体の金属製の下側被支持面に圧接することにより凹み傷を受けることも殆ど皆無となり、所期の目的を一層確実に達成することができる。
【0014】
尚、請求項3に記載の構成によれば、通常、金属材で構成される可動体の下側面を平滑に仕上げておくだけで、当該可動体をそのまま利用して、支持柱体の上端支持面で支持される下側被支持面が形成でき、安価に実施することができるが、逆に請求項4に記載の構成によれば、可動体を構成する材料や下側面の性状に関係なく、平滑で摩擦抵抗の少ない、例えばステンレス鋼板や適当なメッキを施した金属板などで可動体側の下側被支持面を形成することができ、本発明の実施が容易になる。
【0015】
又、支持柱体に外嵌して周囲が支持柱体の支柱本体から張り出すリング状緩衝材を設けることにより、ラックが急激に大きく揺れたようなときでも、支持柱体と可動体の環状周壁とが直接衝撃的に衝突するのを前記リング状緩衝材によって防止し、衝撃を緩和して荷崩れなどの事故につながる恐れを大幅に抑制できるのであるが、前記リング状緩衝材を取り付ける場合に請求項5に記載の構成によれば、前記支柱本体の上端小径段部にリング状緩衝材を外嵌させて上から押え板を取り付けるだけで良いので、前記リング状緩衝材の取付けが簡単容易に行えるだけでなく、当該リング状緩衝材の固定に必要な押え板を合成樹脂製とするだけで、本発明における支持柱体の上端支持面を形成させることができ、部品点数を少なくして安価に本発明を実施することができる。勿論、支持柱体の支柱本体を合成樹脂製とする場合よりも、免震装置全体としての耐荷重性を高めることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】A図は荷保管用ラックの一部分を示す横断平面図、B図は同一部分の正面図である。
【図2】A図は1つの荷収納区画内に設けられた荷支持装置を示す平面図、B図はA図のA部拡大図である。
【図3】荷支持装置の正面図である。
【図4】図3のX−X線断面図である。
【図5】A図は免震装置を示す縦断正面図、B図はその免震装置の分解縦断正面図である。
【図6】免震装置を示す分解横断平面図である。
【図7】免震装置の可動体の変形例を示す縦断側面図である。
【図8】第二の実施形態における荷支持装置の片側を示す平面図である。
【図9】第三の実施形態における荷支持装置の片側を示す側面図である。
【図10】A図及びB図はそれぞれ本発明の免震装置の変形例を示す要部の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は本発明の荷支持装置が適用されたラックの一部分を示しており、1は上下左右両方向に碁盤目状に配置された荷収納区画であって、各荷収納区画1は、左右横方向に適当間隔おきに垂直に立設された隔壁フレーム2と、この隔壁フレーム2に上下方向適当間隔おきに取り付けられた荷支持装置3によって区切られている。各隔壁フレーム2は、前後一対の支柱部材4a,4bを連結部材5によって互いに連結したラチス構造のものであって、荷収納区画1の背面側では、各隔壁フレーム2の後側支柱部材4bが水平や斜めの連結部材6で連結されると共に、荷収納区画1の正面側、即ち、荷収納区画1に対して荷の出し入れを行う入出庫用クレーンの走行通路側では、荷収納区画1に対する荷の出し入れに邪魔にならないレベルで水平連結材(図示省略)により各隔壁フレーム2の前側支柱部材4aどうしが連結されることが知られている。
【0018】
各荷収納区画1の下端位置に配設される荷支持装置3は、荷収納区画1の左右両側の隔壁フレーム2に取り付けられた左右一対の支持部材7a,7bと、各支持部材7a,7b上の前後2個所に配設された合計4つの荷支持台を兼用する免震装置8から構成されている。
【0019】
以下、具体構造を説明すると、図2〜図4に示すように、左右一対の支持部材7a,7bは、荷収納区画1に対する荷出し入れ前後方向(X方向)と平行で隔壁フレーム2の前後幅とほぼ等しい長さの前後方向棒状部材10と、この前後方向棒状部材10の前後両端から直角外向きに連設された腕木部材11a,11bと、これら各腕木部材11a,11bの先端に取り付けられた取付け部材12a,12bから構成されている。取付け部材12a,12bは、腕木部材11a,11bの高さの倍程度の高さを有するもので、その下半部に腕木部材11a,11bが取り付けられた取付け部材12a,12bは、図2Bに示すように、隔壁フレーム2の支柱部材4a,4bに横から嵌合した状態で、支柱部材4a,4bに設けられている取付け孔との間に挿通された1本のボルト13とナット14とで支柱部材4a,4bの所定高さ位置に固定される。尚、腕木部材11a,11bには溝形材が、その凹溝部が互いに対向する向きで使用され、前後方向棒状部材10にはアングル材が、一方の水平帯状板部10aが腕木部材11a,11bの先端上面に重なると共に他方の垂直帯状板部が腕木部材11a,11bの先端に重なる向きで使用されている。図3に示す15は、取付け部材12a,12bの上半部に設けられたボルト挿通孔である。
【0020】
4つの免震装置8は、各支持部材7a,7bにおける前後方向棒状部材10上の前後両端近傍位置にそれぞれ配設された同一構造のものであって、図5〜図6に示すように、前後方向棒状部材10上に立設された支持柱体16と、この支持柱体16に水平全方位に滑動自在に支持される可動体17と、前記支持柱体16を取り囲むように前記可動体17に設けられた環状周壁18と前記支持柱体16との間に介装されて前記可動体17をその滑動範囲内のほぼ中央位置に付勢保持する付勢部材19とから構成されている。
【0021】
各免震装置8の具体的構造を説明すると、支持柱体16は、円柱状で金属製の支柱本体16aと、ブチルゴムスポンジなどの弾性材から成るリング状緩衝材23と、円形で合成樹脂製の押え板25とから構成されている。支柱本体16aは、下端面から上向きに設けられたネジ孔20と、下端周面に形成された小径段部21と、上端周面に形成された小径段部22とを備えており、上端小径段部22に上からリング状緩衝材23が外嵌され、このリング状緩衝材23を固定するために支持柱体16の上端面に押え板25が周方向複数本のビス24で取り付けられ、この押え板25の円形で平滑な上面が、可動体17を滑動自在に支持する支持柱体16の合成樹脂製の上端支持面16bを構成している。而して、この支持柱体16(支柱本体16a)が、前後方向棒状部材10の水平帯状板部10aに設けられた上下方向の取付け孔26に下側から上向きに挿通された1本のボルト27をネジ孔20に螺合締結することにより、前後方向棒状部材10の水平帯状板部10a上に固定される。支柱本体16aに取り付けられたリング状緩衝材23は、支柱本体16aより外側に周方向均等に張り出す外径を有する。
【0022】
可動体17は、円形の天板部17aの周辺から円形の前記環状周壁18を一体に連設した金属製のものであって、環状周壁18の内周面には、バネ受け用の環状凹溝30が形成されている。この環状凹溝30は、可動体17を支持柱体16の上端支持面16b(押え板25の上面)上に支持させたとき、支柱本体16aの下端小径段部21より高く且つリング状緩衝材23よりも低い位置に設けられている。付勢部材19は、無負荷状態で平らになる渦巻きバネ31から成り、当該渦巻きバネ31の無負荷状態での外径は、前記環状周壁18に設けられたバネ受け用の環状凹溝30の直径より大きく、且つ内径は、前記支持柱体16の小径段部21の直径とほぼ同じである。
【0023】
上記のように前後方向棒状部材10の水平帯状板部10a上に支持柱体16を固定するとき、その支柱本体16aの下端小径段部21に渦巻きバネ31の内周部31aを嵌合させた状態で、当該支柱本体16aを水平帯状板部10a上にボルト27で固定する。そして支持柱体16に可動体17を被せるとき、その環状周壁18の環状凹溝30に前記渦巻きバネ31の外周部31bを嵌合させる。即ち、当該渦巻きバネ31の外周部31bを内周部31aに対して引き上げると同時にバネ材を渦巻き方向に絞るようにして外径を縮小させることにより、当該渦巻きバネ31の外周部31bを環状周壁18の環状凹溝30に嵌合させる。この結果、渦巻きバネ31には、外周部31bが内周部31aのレベルまで下がろうとする軸心方向弾性応力と、外周部31bが元の外径に戻ろうとする拡径方向弾性応力とが働くことになり、当該渦巻きバネ31の軸心方向弾性応力により可動体17が引き下げられて、その天板部17aの円形で平滑な金属製の下側被支持面17bが支持柱体16側の合成樹脂製の上端支持面(押え板25の上面)16bに圧接すると共に、当該渦巻きバネ31の拡径方向弾性応力により可動体17(環状周壁18)が支持柱体16と略同心状となる定位置に付勢保持される。
【0024】
上記の実施形態においては、4つの免震装置8が、荷収納区画1に収納される荷Wの四隅を支持できる位置に配置されて支持部材7a,7bに支持されており、各免震装置8の支持部材7a,7b側の支持柱体16に水平全方位に滑動自在に支持され且つ渦巻きバネ31(付勢部材19)により滑動範囲内のほぼ中央位置に付勢保持された可動体17が、それぞれ荷支持台32を兼用する構成となっている。換言すれば、4つの荷支持台32(可動体17)が、それぞれ免震装置8の支持柱体16と付勢部材19(渦巻きバネ31)を介して支持部材7a,7bに支持されて、荷支持装置3が構成されている。
【0025】
上記構成によれば、渦巻きバネ31を水平方向に変形させることができるだけの強さの水平向きの外力が支持柱体16と可動体17との間に相対的に作用すると、支持柱体16と可動体17とは、支持柱体16側のリング状緩衝材23の外周面が可動体17側の環状周壁18の内周面に圧接するまでの範囲内で、支持柱体16側の合成樹脂製の上端支持面16bと可動体17側の金属製の下側被支持面17bとの間の相対滑動を伴って、渦巻きバネ31を水平方向に変形させながら水平全方位に相対移動することができる。
【0026】
従って、荷Wを入出庫用クレーンにより空き状態の荷収納区画1内に荷出し入れ前後方向(X方向)に搬入して下ろし、図1に仮想線で示すように、荷Wの底面(パレットに積載されているときはパレットの底面)の四隅を4つの荷支持台32(免震装置8の可動体17)上に支持させた荷支持状態において、地震などによりラックが例えば荷収納区画1の荷出し入れ前後方向(X方向)に揺れ動いたとき、荷Wを支持している4つの荷支持台32(免震装置8の可動体17)に対し、ラックと一体の支持部材7a,7bが支持柱体16を介して各免震装置8の渦巻きバネ31を弾性に抗して正反対方向に交互に変形させながら同方向に揺れ動くことになる。即ち、4つの荷支持台32(免震装置8の可動体17)上で支持された荷Wは、揺れの速度や振幅が想定範囲内であれば殆ど揺れ動かないか又は、支持部材7a,7bの揺れよりも遅れて小さな振幅で揺れ動くことになる。そして、可動体17と支持柱体16とが相対的に水平移動して、支持柱体16が可動体17の環状周壁18に接近するに従って渦巻きバネ31に働く押し戻し方向の弾性反力が大きくなるので、揺れに対する減衰効果も得られ、結果として所期の免震効果が得られる。勿論、各免震装置8の渦巻きバネ31は、支持柱体16に対し可動体17がほぼ同心状態となるように自動復帰しようとするので、ラックの揺れが収まったときには、当該渦巻きバネ31の弾性復元力で各荷支持台32(免震装置8の可動体17)は所期の定位置、即ち、支持柱体16に対しほぼ同心位置に自動的に戻される。従って、荷支持台32(免震ユニット8の可動体17)に対して荷Wが滑って移動しない限り、荷収納区画1内での荷Wの位置は変わることがない。
【0027】
又、各免震装置8に組み込まれたリング状緩衝材23の存在により、ラックが大きく揺れたときなど、支持柱体16と可動体17の環状周壁18とが半径方向に勢い良く衝突するような状況になったとき、リング状緩衝材23が支持柱体16と可動体17の環状周壁18との間で挟まれて圧縮され、衝撃を吸収して、荷支持台32(免震装置8の可動体17)側に大きな衝撃が伝わるのを抑制するので、反動で荷Wが荷支持台32(免震装置8の可動体17)上で滑って移動するのを防止することができ、安全性を高めることができる。
【0028】
上記の免震作用は、支持柱体16側の上端支持面16bと可動体17側の下側被支持面17bとの間の摩擦抵抗に抗して当該両者が円滑に相対滑動することによって実現されるが、支持柱体16側の上端支持面16bは合成樹脂製の押え板25で構成され、可動体17側の下側被支持面17bは金属製の可動体17の下側面そのものであるから、前記支持柱体16側の上端支持面16bを構成する押え板25を摩擦係数の小さな合成樹脂で成形すると共に、金属製の可動体17の下側面を平滑に仕上げておくことにより、支持柱体16側の上端支持面16bと可動体17側の下側被支持面17bとの間の摩擦抵抗を十分に小さくして、所期通りの免震作用を実現できる。勿論、図7に示すように、可動体17の天板部17aの円形下側面に、当該円形下側面のほぼ全域を塞ぐ金属製スライドプレート28を、周方向複数本のビス29により取り付け、このスライドプレート28の下側面を、可動体17側の金属製の下側被支持面17bとすることもできる。スライドプレート28としては、ステンレス鋼板やメッキを施した金属板などが利用できる。
【0029】
尚、支持部材7a,7bの構成は、上記実施形態のものに限定されない。例えば図8に示すように、前記腕木部材11a,11bを、荷Wの底面四隅を支持し得る位置に配置される各免震装置8の真下位置に先端部が位置するように、取付け部材12a,12bから水平斜め内向きに延出させ、この腕木部材11a,11bの先端部上に免震装置8(支持柱体16)を直接取り付け、前後方向棒状部材10を省くこともできる。この場合、図示のように腕木部材11a,11bを、取付け部材12a,12bから直角横向きに突設された短尺部材33と、この短尺部材33の先端から水平斜め内向きに固着延出させた長尺部材34とから構成することができるが、一部材から成る腕木部材11a,11bを直接取付け部材12a,12bに水平斜め内向きに延出させるように固着しても良い。
【0030】
更に、以上の実施形態では、各免震装置8の可動体17をそのまま荷支持台32として兼用させているが、図8の仮想線及び図9に示すように、本発明の免震装置8は、荷収納区画1の左右両側に平行に配置される前後方向部材から成る左右一対の荷支持台35の前後両端部を支持する手段としても活用できる。勿論、前後一対の免震装置8の可動体17どうしを、当該可動体17の上面とほぼ面一の上面を有する連結部材で連結一体化し、以て、当該連結部材の上面と前後一対の免震装置8の可動体17の上面とで荷支持台を構成することも可能である。尚、図8及び図9では、支持部材7a,7bとして、前後一対の免震装置8を各別に支持する前後一対の腕木部材11a,11bのみから成る支持部材7a,7bを示しているが、先の実施形態で示すように、前後一対の免震装置8を前後2個所で支持する前後方向棒状部材10を前後一対の腕木部材11a,11bで支持する構成の支持部材7a,7bであっても良い。
【0031】
図10に示す実施形態は、請求項2に記載の発明の実施形態であって、支持柱体16の合成樹脂製の上端支持面(押え板25の上面)16bの周縁角部16cを曲面に形成している。図10Aの周縁角部16cは、上端支持面16bの中心に近い側は大きな曲率半径の曲面で、上端支持面16bの中心から遠ざかるほど曲率半径が小さくなるように変化する曲面の周縁角部16cであって、周縁角部16cの縦断面形状の外側縁がほぼ1/4楕円弧となるように形成されている。又、図10Bの周縁角部16cは、その縦断面形状の外側縁全体が1つの中心を持つ大きな曲率半径の円弧となる曲面の周縁角部16cであり、何れも、一般的に直角の角部の仕上げに採用される面取りの曲率と比較して大きな曲率の曲面となっている。このように構成することにより、先に説明したような請求項2に記載の発明による効果が期待できる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
立体自動倉庫の棚の地震発生時の安全性を高めるために、当該棚の荷収納空間に使用される荷支持台そのものとして又は、当該荷支持台を支持する手段として、活用できる。
【符号の説明】
【0033】
1 荷収納区画
2 隔壁フレーム
3 荷支持装置
4a,4b 支柱部材
5,6 連結部材
7a,7b 支持部材
8 免震装置
9 荷支持台(全体)
10 前後方向棒状部材
11a,11b 腕木部材
12a,12b 取付け部材
16 支持柱体
16a 支柱本体
16b 合成樹脂製の上端支持面(押え板の上面)
16c 合成樹脂製の上端支持面の曲面に形成された周縁角部
17 可動体(荷支持台32)
17a 可動体の天板部
17b 可動体側の金属製の下側被支持面
18 可動体の環状周壁
19 付勢部材
21,22 支持柱体の小径段部
23 リング状緩衝材
25 合成樹脂製の押え板
28 金属製のスライドプレート
30 環状凹溝
31 渦巻きバネ(付勢部材)
32 荷支持台(免震装置の可動体17)
35 前後方向部材から成る荷支持台

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持部材上に立設された支持柱体と、この支持柱体上に被さって当該支持柱体の上端支持面で滑動自在に支持される可動体と、この可動体に設けられた環状周壁と前記支持柱体との間に介装されて前記可動体を前記支持柱体に対しほぼ同心位置に付勢保持する付勢部材とから成る荷支持用免震装置において、前記支持柱体の上端支持面が合成樹脂材で形成され、この支持柱体の上端支持面に当接する前記可動体の下側被支持面を金属材で形成して成る、荷支持用免震装置。
【請求項2】
前記支持柱体の上端支持面の周縁角部が曲面に形成されている、請求項1に記載の荷支持用免震装置。
【請求項3】
前記可動体の下側被支持面が、金属製の可動体の下側面で形成されている、請求項1又は2に記載の荷支持用免震装置。
【請求項4】
前記可動体の下側被支持面が、可動体の下側面に張設された金属製スライドプレートの下側面で形成されている、請求項1又は2に記載の荷支持用免震装置。
【請求項5】
前記支持柱体は、支持部材上に固定される金属製の支柱本体と、この支柱本体の上端に取り付けられる合成樹脂製の押え板から構成され、支柱本体の上端には小径段部が形成され、この小径段部に、周囲が支柱本体から張り出すリング状緩衝材が外嵌され、前記押え板は、その周辺が前記リング状緩衝材に被さって当該リング状緩衝材を固定すると共にその上面が前記支持柱体の上端被支持面を形成している、請求項1〜4の何れか1項に記載の荷支持用免震装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−6605(P2010−6605A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−95696(P2009−95696)
【出願日】平成21年4月10日(2009.4.10)
【出願人】(000003643)株式会社ダイフク (1,209)
【Fターム(参考)】