説明

荷積み用ワイヤーロープの緊締機構

【課題】トラック荷台の荷物の上に登ることなく、荷積用のワイヤーロープを締め直すことのできる緊締機構を提案すること。
【解決手段】トラック1の荷台2に積載物3を固定するための荷積み用ワイヤーロープ4の緊締機構10は、トラック荷台の底面における前後方向に延びているシャーシフレーム6の側方の部位に、車幅方向にスライド可能に取り付けたスライドボックス11を備え、この内部に配置したボルト12に沿ってワイヤーロープ掛け26を車幅方向にスライド可能であり、スライドボックス11も車幅方向にスライドさせることができる。二段階のスライドによってワイヤーロープ4を確実に締め付けることができ、締付け作業を荷物の上に登ることなく行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転中にトラックの振動などによって積載物を固定しているワイヤーロープが弛み、荷崩れが発生することを確実に防止可能な荷積み用ワイヤーロープの緊締機構に関する。
【背景技術】
【0002】
大型トラック、トレーラートラックなどにおいては、積載物をワイヤーロープによって固定して荷崩れが発生しないようにしている。しかしながら、トラックの運転中においてワイヤーロープが伸びて弛みが発生することを避けることができない。そのために、荷物を搬送中においては、定期的にワイヤーロープの弛みを確認し、弛みが発生している場合には、荷台の荷物の上に乗って、ラチェット式の緊締具を用いてワイヤーロープを締め直すようにしている。
【0003】
すなわち、図7に示すように、荷台の荷物の上に掛けられている一方の側のワイヤーロープ200の端は、手動式のチェーンブロックからなる緊締具201のフック202に連結されており、他方の側のワイヤーロープ203の端は巻き取り用のチェーン204の先端にフックに連結されている。ラチェット式のレバー205を回すことにより、ワイヤーロープ200、203の弛みをとり、緊張状態で荷物に掛け渡すことができる。この締め付け作業は、降雨時などにおいては足場が滑るので危険であり、積載物を濡らしてしまうこともある。そこで、特許文献1に記載されているように、ワイヤーロープが緩まないようにする機構を設けることが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平08−244624号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような機構は構造が複雑であり、既存のトラック、トレーラーの荷台に取り付けることが困難である。
【0006】
本発明の課題は、このような点に鑑みて、荷台の積載物の上に乗ってワイヤーロープの締め直し作業を行うことなく簡単にワイヤーロープを締め直すことのできる荷積み用ワイヤーロープの緊締機構を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明は、トラックの荷台に積載物を固定するための荷積み用ワイヤーロープの緊締機構であって、
トラック荷台の底面における前後方向に延びているシャーシフレームの側方の部位に、車幅方向にスライド可能に取り付けたスライドボックスと、
このスライドボックスの内部に車幅方向に架け渡され、円形外周面に一定のリードの雄螺子が刻まれているボルトと、
このボルトに螺合しており、回転すると当該ボルトに沿って車幅方向に移動可能な第1笠歯車と、
この第1笠歯車に噛み合っている第2笠歯車と、
この第2笠歯車を回転駆動するために、当該第2笠歯車の歯車軸に取り付けた手動操作用の第1ハンドルと、
前記スライドボックスを車幅方向の内側にスライドさせるためにスライドボックスの側に取り付けたラチェット歯を備えたラックと、
このラックに噛み合っているラチェット歯車と、
このラチェット歯車を回転駆動するために、当該ラチェット歯車の歯車軸に取り付けた手動操作用の第2ハンドルと、
前記第1笠歯車および前記第2笠歯車を回転自在の状態で支持していると共に、これらと共に車幅方向に移動可能なスライド板と、
このスライド板に形成されているワイヤーロープ掛けとを有していることを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の緊締結機構はトラック荷台の底面に取り付けられており、ここに取り付けた第1、第2ハンドルを回すことにより、ワイヤーロープの弛みを除去できる。また、ワイヤーロープを掛けたワイヤーロープ掛けを、第1ハンドルを回すことによって車幅方向の内側に向けてスライドさせ、しかる後に、第2ハンドルを回すことによってスライドボックを車幅方向の内側にスライドさせることができる。このような二段階のスライドによって、ワイヤーロープの弛みを簡単かつ確実に除去できる。また、ワイヤーロープの締め付け作業を荷台の荷物の上の登ることなく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明を適用したトレーラートラックの側面図、およびワイヤーロープの配置位置を示す説明図である。
【図2】図1のトレーラートラックに取り付けたワイヤーロープの緊締機構を示す横断面図である。
【図3】図2の緊締機構の縦断面図である。
【図4】図2の緊締機構の側面図である。
【図5】荷崩れ防止用パッドを示す説明図である。
【図6】本発明を適用した緊締機構の別の例を示す説明図である。
【図7】従来のワイヤーロープの緊締具を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、図面を参照して、本発明を適用したワイヤーロープの緊締機構の実施の形態を説明する。
【0011】
(実施の形態1)
図1に示すように、トレーラートラック1の荷台2の積載物3は、車体前後方向にそって一定の間隔でワイヤーロープ4が掛け渡されて固定されている。各ワイヤーロープ4は、一方の側において、荷台2の底面の車幅方向の一方の端に取り付けた緊締機構10と、他方の側に取り付けたフック5との間に掛け渡されている。
【0012】
緊締機構10は、トラック荷台2の底面における前後方向に延びているシャーシフレーム6の側方の部位に、車幅方向にスライド可能に取り付けたスライドボックス11を備えている。このスライドボックス11の内部には、車幅方向に水平に架け渡され、円形外周面に一定のリードの雄螺子が刻まれているボルト12が配置されている。
【0013】
このボルト12には第1笠歯車13が螺合している。第1笠歯車13は回転すると、その回転方向に応じて、当該ボルト12に沿って車幅方向に移動する。この第1笠歯車13には、直交する状態で、第2笠歯車14が噛み合っている。この第2笠歯車を回転駆動するために、当該第2笠歯車14の歯車軸には着脱式の手動操作用の第1ハンドル15が取り付けられている。
【0014】
また、スライドボックス11を車幅方向の内側にスライドさせるために、当該スライドボック11の両側面(車体前後方向の両側面)の上側には、シャーシフレーム6の側に、ラチェット歯を備えたラック21が車幅方向に水平に固定されている。スライドボックス11の両側には、各ラック21に噛み合っている一対のラチェット歯車22が回転自在の状態で支持されており、これらのラチェット歯車22の共通歯車軸23の端部には、ラチェット歯車22を回転駆動するために、着脱式の手動操作用の第2ハンドル24が取り付けられている。ラック21とラチェット歯車22の噛み合いは不図示の解除機構によって解除可能となっている。
【0015】
ここで、スライドボックス11には、第1笠歯車13および第2笠歯車14を回転自在の状態で支持していると共に、これらと共に車幅方向に移動可能なスライド板25が配置されている。スライド板25の四隅は、スライドボック11内に架け渡されている車幅方向に延びる4本のガイド軸26によってスライド自在に支持されている。このスライド板25にはワイヤーロープ掛け26が一体形成されており、このワイヤーロープ掛け26はスライドボックス11の前側の側面から前方に突出している。
【0016】
この構成の緊締結機構10のワイヤーロープ掛け26にワイヤーロープ4の一端を掛け、他方の端を荷台の反対側のフック5に掛ける。そして、第1ハンドル15を取り付けて回すと、ワイヤーロープ掛け26を車幅方向の内側にスライドさせることができ、これによって、ワイヤーロープ4を緊張させることができる。この後は、第2ハンドル24を取り付けてラチェット歯車22を回すと、スライドボックス11を車幅方向の内側にスライドさせることができる。これによって、ワイヤーロープ4を更に緊張させて、荷物を荷台2に固定することができる。このように、二段階のスライドによって、ワイヤーロープ4の弛みを簡単かつ確実に除去できる。
【0017】
ワイヤーロープ4を緩める場合には、第1ハンドル15を取り付けて回してワイヤーロープ4の緊張状態を緩和し、しかる後に、ラチェット歯車22とラック21の噛み合いを解除することにより、スライドボックス11が車幅方向の外側にスライドしてワイヤーロープ4が緩む。
【0018】
次に、本例で使用するワイヤーロープ4としては、一方の端にはフック5に掛けるためのフック掛けが取り付けられ、他方の端には、図3に示すように、1m程度のチェーン4aが取り付けられた構成のものを用いることができる。最も端のチェーン4bには一対の突起4cを形成しておき、ワイヤーロープ掛け26の先端部には、突起4cを嵌め込み可能な一対の貫通穴26aを形成しておくことが望ましい。このようにすれば、ワイヤーロープ掛け26からワイヤーロープ4が外れることを防止できる。
【0019】
一方、図5に示すように、荷台2には、各荷物30が一定規格のパレット31に載せた状態で積まれている。この場合、各荷物30の間に隙間ができると荷物30が前後あるいは左右にずれて荷崩れが発生しやすい。そこで、従来においては一定厚さのスチロール板を隙間に応じて一枚、あるいは複数枚差し込み、隙間を埋めている。
【0020】
このような従来の方法では荷物の間の隙間を完全に埋めることができず、荷物が揺れて荷崩れに繋がる危険性が高い。本例では、一定厚さのスチロール板40の内部を空洞とし、ここに、膨張可能な可撓性の袋41を配置してある。袋41には空気注入口42が形成されており、これがスチロール板41の側面から露出している。
【0021】
大型トラック、トレーラートラックは一般に所定容量のコンプレッサが搭載されており、ここからの圧縮空気を利用できる。スチロール板41を荷物30の隙間に差し込み、空気注入口42から空気を注入して内部の袋41を膨張させると、スチロール板41が幅方向に膨張して、荷物間の隙間が無くなり、また、空気圧力によって荷物が移動しないように保持される。さらに、空気が充填された袋41がエアークッションとして機能して、荷物に衝撃力が作用することも防止できる。
【0022】
(実施の形態2)
図6は、本発明の実施の形態2に係る緊締機構を示す説明図である。緊締機構100は、手動式のチェーンブロックからなる緊締具101と、一端に1m程度のチェーン102が連結されているワイヤーロープ103とを備えている。緊締具100の取り付け場所は、図1に示す緊締機構10の取り付け場所と同一であり、そのケース104がトラック荷台のシャーシフレームに固定されている。また、緊締具101は、そのチェーン巻き取り用のチェーンスプロケットに巻き取り用のチェーンが巻き掛けられておらず、ワイヤーロープ103のチェーン102を着脱可能な状態で巻き掛けることが可能な構造となっている。ワイヤーロープ103の端は、トラック荷台の車幅方向の他方の側に取り付けられているフックに掛けることが可能となっている。
【0023】
ワイヤーロープ103の端をトラック荷台の車幅方向の一方の側に取り付けられているフックに掛け、トラック荷台の上に引きまわし、他方の端に連結されているチェーン102の端部を、トラック荷台の車幅方向の他方の側に取り付けられている緊締具101のチェーンスプロケットに巻き掛ける。そして、チェーン巻き取り用のラチェット式のレバー105を回すとチェーン102が巻き込まれ、ワイヤーロープ103を弛みの無い状態でトラック荷台上の荷物に掛け渡すことができる。
【符号の説明】
【0024】
1 トレーラートラック
2 荷台
3 積載物
4 ワイヤーロープ
5 フック
6 シャーシフレーム
10 緊締機構
11 スライドボックス
12 ボルト
13 第1笠歯車
14 第2笠歯車
15 第1ハンドル
21 ラック
22 ラチェット歯車
23 共通歯車軸
24 第2ハンドル
25 スライド板
26 ワイヤーロープ掛け
100 緊締機構
101 緊締具
102 チェーン
103 ワイヤーロープ
104 ケース
105 レバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トラックの荷台に積載物を固定するために用いる荷積み用ワイヤーロープの緊締機構であって、
トラック荷台の底面における前後方向に延びているシャーシフレームの側方の部位に、車幅方向にスライド可能に取り付けたスライドボックスと、
このスライドボックスの内部に車幅方向に架け渡され、円形外周面に一定のリードの雄螺子が刻まれているボルトと、
このボルトに螺合しており、回転すると当該ボルトに沿って車幅方向に移動可能な第1笠歯車と、
この第1笠歯車に噛み合っている第2笠歯車と、
この第2笠歯車を回転駆動するために、当該第2笠歯車の歯車軸に取り付けた手動操作用の第1ハンドルと、
前記スライドボックスを車幅方向の内側にスライドさせるためにスライドボックスの側に取り付けたラチェット歯を備えたラックと、
このラックに噛み合っているラチェット歯車と、
このラチェット歯車を回転駆動するために、当該ラチェット歯車の歯車軸に取り付けた手動操作用の第2ハンドルと、
前記第1笠歯車および前記第2笠歯車を回転自在の状態で支持していると共に、これらと共に車幅方向に移動可能なスライド板と、
このスライド板に形成されているワイヤーロープ掛けとを有していることを特徴とする荷積み用ワイヤーロープの緊締機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−51579(P2011−51579A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−229253(P2009−229253)
【出願日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【出願人】(595028568)
【出願人】(509182537)