荷重検出装置
【課題】高剛性の起歪体を用いて、起歪体に加えられた荷重を高精度に検出できる荷重検出装置を提供する。
【解決手段】荷重検出装置10の起歪体11は、起歪体に荷重軸方向と直交する方向の両端部より起歪体の外面形状と異なる内面形状の凹部13、14を形成することにより、これら凹部の底部に荷重軸方向およびそれに垂直な荷重軸垂直方向に平行に形成され、荷重軸方向に加えられる荷重によって荷重軸方向および荷重軸垂直方向にそれぞれ歪む薄肉平面状の歪検出部15と、凹部の周囲に設けられ荷重軸方向に平行な方向に厚さを有する第1肉厚部22と、荷重軸方向に垂直な方向でかつ歪検出部の平面と平行な方向に厚さを有し第1肉厚部の厚さよりも厚くした第2肉厚部21と、歪検出部の少なくとも片面に配置され歪検出部に発生する圧縮歪および引張歪を検出する歪検出素子からなる歪検出手段23とを有する。
【解決手段】荷重検出装置10の起歪体11は、起歪体に荷重軸方向と直交する方向の両端部より起歪体の外面形状と異なる内面形状の凹部13、14を形成することにより、これら凹部の底部に荷重軸方向およびそれに垂直な荷重軸垂直方向に平行に形成され、荷重軸方向に加えられる荷重によって荷重軸方向および荷重軸垂直方向にそれぞれ歪む薄肉平面状の歪検出部15と、凹部の周囲に設けられ荷重軸方向に平行な方向に厚さを有する第1肉厚部22と、荷重軸方向に垂直な方向でかつ歪検出部の平面と平行な方向に厚さを有し第1肉厚部の厚さよりも厚くした第2肉厚部21と、歪検出部の少なくとも片面に配置され歪検出部に発生する圧縮歪および引張歪を検出する歪検出素子からなる歪検出手段23とを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、起歪体の両側に設けた凹部の底部平面に歪検出手段を設けた荷重検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
加えられた荷重の大きさを検出するために、例えば、特許文献1に記載されているようなロードセル10が用いられる。特許文献1に記載のロードセル10は、ボディ(起歪体)25の両側に形成された円形の凹部の底部に薄肉の平面(歪検出部)40が形成され、この歪検出部40に歪ゲージ20が取付けられている。この種のロードセルは、起歪体10に荷重が入力されると、歪検出部40が変形して圧縮歪と引張歪が生じ、これを歪ゲージ20によって検出することにより、起歪体10に加えられた荷重を検出するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国公開特許2005/0081652
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のロードセル10においては、歪検出部(平面)20に穴30を開けることで、歪検出部20に発生する圧縮歪と引張歪の大きさを近づけ、高感度な検出を行えるように構成されているため、穴30の周辺部は歪検出部20より剛性が低下し、応力集中が生じてしまう。このため、歪検出部の材料の強度等に依存して最大許容歪が決まるので、起歪体で発生する最大歪を最大許容歪以下とする必要がある。
【0005】
また、長期に亘って強度保証するには、応力集中部に合わせて起歪体の強度設計を行わなければならず、応力集中部と歪検出部での歪量の差が大きい場合には、歪検出部で発生する歪が小さくなってしまうため、相対的に感度を低下せざるを得ない問題がある。さらには、適正に歪を検出しようとすれば、穴の位置や歪ゲージの配置位置を高精度にする必要があるため、製造コストのアップを招くおそれがある。
【0006】
本発明は、上述した従来の問題を解消するためになされたもので、高剛性の起歪体を用いて、起歪体に加えられた荷重を高精度に検出できる荷重検出装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、請求項1に係る発明の特徴は、荷重が作用する荷重軸方向に沿って配置された起歪体を有する荷重検出装置であって、前記起歪体は、前記荷重軸方向の剛性と該荷重軸方向に垂直な荷重軸垂直方向の剛性とが異なるように、前記起歪体に前記荷重軸方向と直交する方向の端部より凹部を形成することにより、該凹部の底部に前記荷重軸方向および前記荷重軸垂直方向に平行に形成され、前記荷重軸方向に加えられる荷重によって前記荷重軸方向および前記荷重軸垂直方向にそれぞれ歪む平面状の歪検出部と、前記歪検出部の少なくとも片面に配置され前記歪検出部に発生する圧縮歪および引張歪を検出する歪検出素子からなる歪検出手段とを有することである。
【0008】
請求項2に係る発明の特徴は、荷重が作用する荷重軸方向に沿って配置された起歪体を有する荷重検出装置であって、前記起歪体は、前記起歪体に前記荷重軸方向と直交する方向の両端部より前記起歪体の外面形状と異なる内面形状の凹部を形成することにより、これら凹部の底部に前記荷重軸方向およびそれに垂直な荷重軸垂直方向に平行に形成され、前記荷重軸方向に加えられる荷重によって前記荷重軸方向および前記荷重軸垂直方向にそれぞれ歪む薄肉平面状の歪検出部と、前記凹部の周囲に設けられ前記荷重軸方向に平行な方向に厚さを有する第1肉厚部と、前記荷重軸方向に垂直な方向でかつ前記歪検出部の平面と平行な方向に厚さを有し前記第1肉厚部の厚さよりも厚くした第2肉厚部と、前記歪検出部の少なくとも片面に配置され前記歪検出部に発生する圧縮歪および引張歪を検出する歪検出素子からなる歪検出手段とを有することである。
【0009】
請求項3に係る発明の特徴は、請求項2において、前記第1肉厚部の断面積と前記第2肉厚部の断面積の比を、1:1.5〜2.5としたことである。
【0010】
請求項4に係る発明の特徴は、請求項3において、前記第2肉厚部の厚さ寸法に対する歪検出部の板厚の寸法を、1/10〜1/5倍としたことである。
【0011】
請求項5に係る発明の特徴は、請求項3において、前記第2肉厚部の厚さ寸法に対する前記起歪体の外径の寸法を、4〜8倍としたことである。
【0012】
請求項6に係る発明の特徴は、請求項2ないし請求項5のいずれか1項において、前記起歪体の外面形状を真円形状とし、前記凹部の内面形状を長円形状とすることにより、前記第2肉厚部の厚さよりも前記第1肉厚部の厚さを薄くしたことである。
【0013】
請求項7に係る発明の特徴は、請求項2ないし請求項5のいずれか1項において、前記起歪体の外面形状を長円形状とし、前記凹部の内面形状を真円形状とすることにより、前記第2肉厚部の厚さよりも前記第1肉厚部の厚さを薄くしたことである。
【0014】
請求項8に係る発明の特徴は、荷重が作用する荷重軸方向に沿って配置された起歪体を有する荷重検出装置であって、前記起歪体は、凹部周辺の平面部の板厚より凹部中央の平面部の板厚が薄く、凹部中央の平面部の荷重軸方向長さが荷重軸垂直方向長さより長くなるように、前記起歪体に前記荷重軸方向と直交する方向に凹部を形成することにより、前記凹部中央に前記荷重軸方向および前記荷重軸垂直方向に平行に形成され、前記荷重軸方向に加えられる荷重によって前記荷重軸方向および前記荷重軸垂直方向にそれぞれ歪む歪検出部と、前記歪検出部の少なくとも片面に配置され前記歪検出部に発生する圧縮歪および引張歪を検出する歪検出素子からなる歪検出手段とを有することである。
【0015】
請求項9に係る発明の特徴は、請求項8において、前記起歪体の外面形状を真円形状とし、前記起歪体に前記荷重軸方向と直交する方向の両端部より真円状の第1凹部を形成し、該第1凹部の中央部に長方形もしくは長円形の第2凹部を形成することにより、前記荷重軸方向の剛性より前記荷重軸垂直方向の剛性を低下させるように構成したことである。
【0016】
請求項10に係る発明の特徴は、請求項9において、前記平面部の板厚を、凹部周辺の平面部の板厚の1/12〜1/3倍としたことである。
【0017】
請求項11に係る発明の特徴は、請求項1ないし請求項10のいずれか1項において、前記歪検出手段を前記歪検出部の中央部の両側の面に配置したことである。
【発明の効果】
【0018】
上記のように構成した請求項1に係る発明によれば、荷重が加えられる起歪体が、荷重軸方向の剛性と荷重軸方向に垂直な荷重軸垂直方向の剛性とが異なるように、起歪体に荷重軸方向と直交する方向の端部より凹部を形成することにより、凹部の底部に荷重軸方向および荷重軸垂直方向に平行に形成され、荷重軸方向に加えられる荷重によって荷重軸方向および荷重軸垂直方向にそれぞれ歪む平面状の歪検出部と、歪検出部の少なくとも片面に配置され歪検出部に発生する圧縮歪および引張歪を検出する歪検出素子からなる歪検出手段とを有している。
【0019】
このように、歪検出部における荷重軸方向の剛性と荷重軸垂直方向の剛性との比が適切となるように凹部を形成することにより、歪検出部に発生する荷重軸方向と荷重軸垂直方向の発生歪の大きさを近づけることができるので、従来のように穴などを開ける必要がなく、高剛性の起歪体によって起歪体に加えられた荷重を高感度に検出することができる。従って、穴の形成が不要となって、局所的な剛性低下部をなくすることができ、かつ起歪体の加工コストを低減することができる。
【0020】
請求項2に係る発明によれば、荷重が加えられる起歪体が、荷重軸方向および荷重軸垂直方向にそれぞれ歪む薄肉平面状の歪検出部と、凹部の周囲に設けられ荷重軸方向に平行な方向に厚さを有する第1肉厚部と、荷重軸方向に垂直な方向でかつ歪検出部の平面と平行な方向に厚さを有し第1肉厚部の厚さよりも厚くした第2肉厚部と、歪検出部の少なくとも片面に配置され歪検出部に発生する圧縮歪および引張歪を検出する歪検出素子からなる歪検出手段とを有している。
【0021】
これにより、第1肉厚部と第2肉厚部との比を適切に設定することにより、歪検出部に発生する荷重軸方向と荷重軸垂直方向の発生歪の大きさを近づけることができるので、従来のように穴などを開ける必要がなく、高剛性の起歪体によって起歪体に加えられた荷重を高感度に検出することができる。従って、穴の形成が不要となって、局所的な剛性低下部をなくすることができ、かつ起歪体の加工コストを低減することができる。
【0022】
請求項3に係る発明によれば、第1肉厚部の断面積と第2肉厚部の断面積の比を、1:1.5〜2.5としたので、第1肉厚部の曲げ剛性を低下させることなく、歪検出部に発生する引張歪と圧縮歪の大きさの差を小さくすることができる。
【0023】
請求項4に係る発明によれば、第2肉厚部の厚さ寸法に対する歪検出部の板厚の寸法を、1/10〜1/5倍としたので、起歪体の強度を確保しつつ、荷重軸方向と荷重軸垂直方向の発生歪の大きさの差を小さくすることができる。
【0024】
請求項5に係る発明によれば、第2肉厚部の厚さ寸法に対する起歪体の外径の寸法を、4〜8倍としたので、起歪体の感度を向上しつつ、荷重軸方向と荷重軸垂直方向の発生歪の大きさの差を小さくすることができる。
【0025】
請求項6に係る発明によれば、起歪体の外面形状を真円形状とし、凹部の内面形状を長円形状とすることにより、第2肉厚部の厚さよりも第1肉厚部の厚さを薄くしたので、起歪体を真円に、凹部を長円とするだけで、凹部の周囲に第2肉厚部の厚さよりも第1肉厚部の厚さを薄くした肉厚部を容易に形成することができる。
【0026】
請求項7に係る発明によれば、起歪体の外面形状を長円形状とし、凹部の内面形状を真円形状とすることにより、第2肉厚部の厚さよりも第1肉厚部の厚さを薄くしたので、起歪体を長円に、凹部を真円とするだけで、凹部の周囲に第2肉厚部の厚さよりも第1肉厚部の厚さを薄くした肉厚部を容易に形成することができる。
【0027】
請求項8に係る発明によれば、荷重が加えられる起歪体が、凹部周辺の平面部の板厚より凹部中央の平面部の板厚が薄く、凹部中央の平面部の荷重軸方向長さが荷重軸垂直方向長さより長くなるように、起歪体に荷重軸方向と直交する方向に凹部を形成することにより、凹部中央に荷重軸方向および荷重軸垂直方向に平行に形成され、荷重軸方向に加えられる荷重によって荷重軸方向および荷重軸垂直方向にそれぞれ歪む歪検出部と、歪検出部の少なくとも片面に配置され歪検出部に発生する圧縮歪および引張歪を検出する歪検出素子からなる歪検出手段とを有している。
【0028】
これにより、凹部中央に形成された歪検出部に発生する荷重軸方向と荷重軸垂直方向の発生歪の大きさを近づけることができるので、高剛性の起歪体によって起歪体に加えられた荷重を高感度に検出することができる。しかも、歪検出部を凹部中央に集めることができるので、起歪体および起歪体周囲の温度勾配による検出誤差の影響を受けにくくすることができる。
【0029】
請求項9に係る発明によれば、起歪体の外面形状を真円形状とし、起歪体に荷重軸方向と直交する方向の両端部より真円状の第1凹部を形成し、第1凹部の中央に長方形もしくは長円形の第2凹部を形成することにより、荷重軸方向の剛性より荷重軸垂直方向の剛性を低下させた平面部を形成したので、第1凹部の中央に荷重軸方向と荷重軸垂直方向に長さの異なる平面部を形成することができ、この平面部の長さ比を適切に設定することで、荷重軸方向と荷重軸垂直方向の発生歪の大きさを容易に近づけることができる。
【0030】
請求項10に係る発明によれば、平面部の板厚を、凹部周辺の平面部の板厚の1/12〜1/3倍としたので、起歪体の強度を確保しつつ、荷重軸方向と荷重軸垂直方向の発生歪の大きさの差を小さくすることができる。
【0031】
請求項11に係る発明によれば、歪検出手段を歪検出部の中央部の両側の面に配置したので、歪検出部の両側の歪検出手段より検出出力が得られるため、これらを加算することにより、検出出力を倍増することができ、高精度な荷重検出を行うことができる。しかも、入力される荷重が凹部平面を含む面内で偏った偏荷重となった場合でも、中央部の歪はほとんど変化しないため、偏荷重による検出誤差を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の第1の実施の形態を示す荷重検出装置の断面図である。
【図2】図1の2−2線に沿って切断した断面図である。
【図3】図1の3−3線に沿って切断した断面図である。
【図4】荷重検出装置の検出回路を示す図である。
【図5】起歪体の荷重軸方向と荷重軸垂直方向の肉厚部の断面積比に対する荷重軸方向と荷重軸垂直方向の発生歪の大きさ比を示すグラフである。
【図6】荷重軸方向と荷重軸垂直方向の発生歪の大きさ比に影響を及ぼす起歪体の各部の寸法を示す図である。
【図7】起歪体の肉厚部に対して歪検出部の板厚を変化させた場合の肉厚部の断面積比と荷重軸方向と荷重軸垂直方向の発生歪の大きさ比の関係を示すグラフである。
【図8】起歪体の肉厚部に対して起歪体の外径を変化させた場合の肉厚部の断面積比と荷重軸方向と荷重軸垂直方向の発生歪の大きさ比の関係を示すグラフである。
【図9】荷重検出装置をブレーキペダルの踏力を検出するものに適用した図である。
【図10】荷重検出装置の作動状態を示す図である。
【図11】引張荷重を検出する場合の荷重検出装置の作動状態図である。
【図12】本発明の第2の実施の形態を示す荷重検出装置の断面図である。
【図13】荷重検出装置の歪検出手段の第1変形例を示す図である。
【図14】荷重検出装置の歪検出手段の第2変形例を示す図である。
【図15】荷重検出装置の歪検出手段の第3変形例を示す図である。
【図16】本発明の第3の実施の形態を示す荷重検出装置の断面図である。
【図17】図16の17−17線に沿って切断した断面図である。
【図18】図16の18−18線に沿って切断した断面図である。
【図19】荷重検出装置の作動状態を示す図である。
【図20】第3の実施の形態に係る起歪体の凹部中央の平面部の長さ比に対する荷重軸方向と荷重軸垂直方向の発生歪の大きさ比を示すグラフである。
【図21】起歪体に引張荷重が作用した場合の荷重検出装置の作動状態図である。
【図22】起歪体に偏荷重が作用した状態を示す図である。
【図23】起歪体に偏荷重が作用した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1、図2および図3は本発明の第1の実施の形態に係る荷重検出装置10を示すもので、当該荷重検出装置10は、外周面が真円をなす円筒状の起歪体11を有している。円筒状の起歪体11の軸方向の両端部、言い換えれば、荷重が作用する荷重軸X0方向と直交する方向の両端部には、内面が長円(楕円)形状の凹部13、14が同一深さに亘って起歪体11の外周面と同心的に形成されている。これら凹部13、14の形成によって、凹部13、14の底部、すなわち、起歪体11の軸方向中央部に、長円形状の薄肉平面からなる歪検出部15が、荷重軸X0方向およびそれに垂直な荷重軸垂直方向に平行に形成される。
【0034】
起歪体11は、凹部13、14の長円の長径方向が、荷重軸X0方向となるように構成されており、起歪体11の荷重軸X0方向の両端部には、ロッド部17、18がそれぞれ一体的に連結されている。ロッド部17、18は、その中心が、起歪体11の中心に一致し、かつ起歪体11の軸方向中央部(歪検出部15)に一致する位置に配置されている。これにより、ロッド部17、18の一方には、歪検出部15に一致する線上に荷重が入力され、入力された荷重に応じて歪検出部15に歪が生起される。
【0035】
長円形状の凹部13、14の形成によって、凹部13、14の周囲には、短径方向(荷重軸X0垂直方向)に沿って荷重軸X0方向に平行な方向にY1の厚さ(肉厚)を有する一対の第1肉厚部22と、長径方向(荷重軸X0方向)に沿って荷重軸X0方向に垂直な方向で、かつ歪検出部15の平面と平行な方向にX1の厚さ(肉厚)を有する一対の第2肉厚部21が形成されており、第1肉厚部22の厚さY1よりも第2肉厚部21の厚さX1を厚くしてある。ここで、荷重軸X0垂直方向を含む断面(図1の3−3断面)の断面積は、荷重軸X0方向を含む断面(図1の2−2断面)の断面積の2倍程度とすることが好ましい。その理由については後述する。
【0036】
凹部13、14の周囲の肉厚部21、22を、荷重軸X0方向より荷重軸X0垂直方向を薄くすると、次のような効果が生ずる。歪検出部15の板厚が十分に薄ければ、荷重軸X0方向の剛性は、第2肉厚部21の肉厚X1によって決定され、荷重軸X0垂直方向の剛性は、第1肉厚部22の肉厚Y1によって決定される。ここで、荷重軸X0方向の第2肉厚部21に対して荷重軸X0垂直方向の第1肉厚部22を薄くしていくと、荷重軸X0方向より荷重軸X0垂直方向の剛性が低下することで、荷重軸X0垂直方向への変形が助長される(以下、これを効果Iという)。一方、荷重軸X0垂直方向の第1肉厚部22が薄くなると、第1肉厚部22の曲げ剛性が低下するため、荷重軸X0方向への変形が助長される(以下、これを効果IIという)。
【0037】
これにより、凹部13、14の周囲に、荷重軸X0方向に沿って厚さ寸法がX1の第2肉厚部21を形成するとともに、荷重軸X0垂直方向に沿って厚さ寸法がX1よりも小さなY1の第1肉厚部22を形成することにより、一方のロッド部17に入力された荷重に応じて、起歪体11の歪検出部15には、荷重軸X0方向に圧縮歪が生起されると同時に、荷重軸X0垂直方向に引張歪が生起される。
【0038】
起歪体11の歪検出部15の中央部の両面には、歪検出部15に生ずる引張歪および圧縮歪を検出する複数の歪検出素子からなる歪検出手段23が設けられている。歪検出手段23は、図1〜図3に示す第1の実施の形態においては、荷重軸X0垂直方向の引張歪を検出する各1個ずつの歪検出素子a1、a2が歪検出部15の両面にそれぞれ貼付され、荷重軸X0垂直方向の圧縮歪を検出する各1個ずつの歪検出素子b1、b2が歪検出部15の両面にそれぞれ貼付されている。これら4個の歪検出素子a1、a2、b1、b2は、歪検出部15の中央部に荷重軸X0に対して対称に配置されている。
【0039】
4個の歪検出素子a1、a2、b1、b2によって、図4に示すように、ブリッジ回路BCが構成されている。ブリッジ回路BCを構成する歪検出素子a1、b1の各一端は、電源端子25に接続され、歪検出素子a2、b2の各一端は、GND端子26に接続されている。歪検出素子a1、b2の各他端は互いに接続され、増幅器27の一方の入力端子に接続され、歪検出素子a2、b1の各他端は互いに接続され、増幅器27の他方の入力端子に接続されている。
【0040】
これにより、起歪体11の歪検出部15に引張歪および圧縮歪が生ずると、歪検出素子a1、a2、b1、b2は、引張歪および圧縮歪に応じてそれぞれ抵抗値が変化し、歪検出素子a1、a2、b1、b2の抵抗値変化に応じた出力電圧が増幅器27より出力される。なお、歪検出手段23として、積み重ねゲージを使用することもできる。
【0041】
この際、歪検出素子a1、a2の貼付位置は、必ずしも歪検出部15の中央部に設ける必要はないが、歪検出部15の中央部に設けることで、起歪体11周囲の温度勾配による検出誤差の発生を抑制できるとともに、起歪体11に入力される荷重が、歪検出部15の平面を含む面内で、荷重軸X0に対して偏った偏荷重となる場合であっても、偏荷重による検出誤差の発生を抑制できる。
【0042】
すなわち、入力される荷重が、歪検出部15の平面を含む面内で、荷重軸X0に対して偏った偏荷重となると、偏った側の歪が大きくなり、反対側の歪は小さくなるが、歪検出部15の平面中央部の歪はほとんど変化しないため、偏荷重による検出誤差を排除できる。
【0043】
また、歪検出部15の平面の両面で歪を検出することにより、歪検出部15の平面の法線方向に荷重軸X0から偏った偏荷重が生ずる場合においても、偏荷重の影響を小さくすることができる。
【0044】
次に図5のグラフに基づいて、上記した効果I(荷重軸X0垂直方向への変形が助長作用)と効果II(荷重軸X0方向への変形が助長作用)による歪感度への影響について説明する。図5は、横軸に荷重軸方向の第2肉厚部21の断面積と荷重軸垂直方向の第1肉厚部22の断面積の比(第2肉厚部21の断面積/第1肉厚部22の断面積)をとり、縦軸に荷重軸方向の発生歪と荷重軸垂直方向の発生歪の大きさ比をとったものである。同図に示すように、荷重軸方向の第2肉厚部21より荷重軸垂直方向の第1肉厚部22を薄くして、第1肉厚部22の断面積と第2肉厚部21の断面積との比を1より大きくしていくと、断面積比が1〜2の範囲では上記効果Iの影響が大きくなって、荷重軸方向の歪(圧縮歪)の大きさと荷重軸垂直方向の歪(引張歪)の大きさとの差が徐々に小さくなっていき、起歪体11の感度が高くなる。これに対して、断面積比が2を超えると、断面積比が大きくなっていくにつれて効果IIの影響が大きくなり、断面積比が2〜3の範囲では荷重軸方向の歪の大きさと荷重軸垂直方向の歪の大きさとの差が漸減していき、起歪体11の感度が僅かに低下する傾向となる。この結果、断面積比2において荷重軸方向と荷重軸垂直方向の発生歪の大きさ比が最も1に近似することとなり、荷重を検出するための起歪体11の感度を最大にできる。
【0045】
なお、断面積比が大きくなりすぎると、荷重軸方向の第2肉厚部21の肉厚X1に対して荷重軸垂直方向の第1肉厚部22の肉厚Y1が薄くなりすぎて、第1肉厚部22の曲げ剛性が低下し、起歪体11の感度が鈍くなるため、断面積比の上限は、2.5程度が適当である。この結果、断面積比としては、1.5〜2.5の範囲に設定するのが望ましい。
【0046】
上記したように、荷重軸方向の歪の大きさと荷重軸垂直方向の歪の大きさとの差が最も小さくなる断面積比となるように肉厚部21、22を設定することにより、発生する荷重軸方向の歪の大きさと荷重軸垂直方向の歪の大きさの比を1に近づけることができ、最も高感度な起歪体11を形成できることになる。すなわち、起歪体11に荷重が加えられた際の荷重軸方向の歪の大きさと荷重軸垂直方向の歪の大きさをほぼ等しくすることができる。
【0047】
このことから、荷重軸垂直方向の第2肉厚部22の断面積に対する荷重軸方向の第1肉厚部21の断面積の比を、1:2程度とすることが最適である。ただし、断面積比を、1:1.5〜2.5の範囲に設定することにより、荷重軸方向の歪の大きさと荷重軸垂直方向の歪の大きさの差を小さくでき、有効である。
【0048】
次に、起歪体11の各部の形状寸法の変化による起歪体11の感度の影響について、図6〜図8に基づいて説明する。なお、以下においては、図6に示すように、外径寸法D1=30mm、軸方向寸法W1=14mm、第2肉厚部21の厚さ寸法X1=5mm、歪検出部15の板厚寸法W2=1mm、ロッド部17、18の外径寸法D2=10mm、および凹部13、14と接続する歪検出部15の周縁部のR面取の半径寸法R1=2mmからなる起歪体11を製作し、第2肉厚部21の厚さ寸法X1に対して、起歪体11の外径寸法D1、起歪体11の軸方向寸法W1、歪検出部15の板厚寸法W2、ロッド部17、18の外径寸法D2、歪検出部15のR面取の半径寸法R1を変化させた場合の影響について検証した。
【0049】
まず、歪検出部15の板厚寸法W2と肉厚部21、22の厚さ寸法X1、Y1との寸法関係について調べた。図7に示すグラフA11、A12、A13は、第2肉厚部21の厚さ寸法X1(5mm)に対して歪検出部15の板厚寸法W2を、それぞれ1/10、1/5、3/10(0.5〜1.5mm)に変化させた場合の肉厚部の断面積比(肉厚部21の断面積/肉厚部22の断面積)に対する荷重軸方向の発生歪と荷重軸垂直方向の発生歪の大きさ比を示したものである。
【0050】
同図に示すように、第2肉厚部21の厚さ寸法X1に対して、歪検出部15の板厚寸法W2が厚くなるほど、荷重軸X0方向の剛性が向上するため、荷重軸X0垂直方向への変形助長効果(上記効果I)が小さくなるとともに、荷重軸方向と荷重軸垂直方向の発生歪の大きさ比が小さくなる。
【0051】
従って、歪検出部15の板厚寸法W2を薄くすることにより、グラフA11に示すように、荷重軸方向と荷重軸垂直方向の発生歪の大きさ比を1に近づけることができる。ただし、板厚寸法W2を薄くすると、荷重軸X0方向の剛性が低下し、起歪体11の強度が低下する傾向となるが、第2肉厚部21の厚さ寸法X1に対して歪検出部15の板厚寸法W2を1/10倍程度にしても、強度的には特に問題は生じない。
【0052】
このことから、第2肉厚部21の厚さ寸法X1に対する歪検出部15の板厚寸法W2は、起歪体11の強度を確保しつつ、グラフA12に示すように荷重軸方向と荷重軸垂直方向の発生歪の大きさ比を1に近づけることができる、1/10〜1/5倍程度が適当である。
【0053】
次に、起歪体11の外径寸法D1と肉厚部21、22の厚さ寸法X1、Y1との寸法関係について調べた。図8に示すグラフA21、A22、A23、A24、A25は、第2肉厚部21の厚さ寸法X1(5mm)に対して起歪体11の外径寸法D1を、それぞれ3倍、4倍、6倍、8倍、12倍(15〜60mm)に変化させた場合の第2肉厚部21と第1肉厚部22の断面積比に対する荷重軸方向の発生歪と荷重軸垂直方向の発生歪の大きさ比を示したものである。
【0054】
同図に示すように、第2肉厚部21の厚さ寸法X1に対し、起歪体11の外径寸法D1を大きくしていくと、相対的に第1肉厚部22の曲げ剛性が低下し、荷重軸方向への変形助長効果(上記効果II)が大きくなる。よって、起歪体11の外径寸法D1を余り大きくすると、荷重軸方向と荷重軸垂直方向の発生歪の大きさ比が小さくなり、断面積比の小さいところで発生歪の大きさ比が最大値をとるようになる。
【0055】
ただし、断面積比が1に近い場合は、起歪体11の外径寸法D1が小さいうちは効果Iの影響が大きく、荷重軸方向と荷重軸垂直方向の発生歪の大きさの差が徐々に小さくなっていき、起歪体11の感度が高くなっていくが、起歪体11の外径寸法D1が大きくなっていくにつれて、効果IIの影響が大きくなり、荷重軸方向と荷重軸垂直方向の発生歪の大きさの差が大きくなっていき、起歪体11の感度が低下する。
【0056】
よって、第2肉厚部21の厚さ寸法X1に対して起歪体11の外径寸法D1が、グラフのA21に示すように小さすぎても、逆にグラフのA24、A25に示すように大きすぎても、荷重軸方向と荷重軸垂直方向の発生歪の大きさ比の絶対値が小さくなり、好ましくない。
【0057】
このことから、第2肉厚部21の厚さ寸法X1に対する起歪体11の外径寸法D1は、起歪体11の感度を向上しつつ、荷重軸方向と荷重軸垂直方向の発生歪の大きさ比を1に近づけることができる、4〜8倍程度が適当である。
【0058】
なお、ロッド部17、18の外径寸法D2、起歪体11の軸方向寸法W1および歪検出部15の周縁部のR面取りの半径寸法R1については、荷重軸方向の発生歪と荷重軸垂直方向の歪の大きさ比に与える影響は小さいことが分かった。
【0059】
図9は、上記した構成の荷重検出装置10を、ブレーキペダル30とマスタシリンダのマスタピストン31との間に配置し、ブレーキペダル30に加えられた踏力を荷重検出装置10を介してマスタシリンダに伝達するとともに、ブレーキペダル30に加えられた踏力の大きさを荷重検出装置10によって検出するようにしたものである。
【0060】
図9において、荷重検出装置10のロッド部17、18の外周には、それぞれねじ部17a、18aが形成されている。一方のロッド部17のねじ部17aには、連結部材33の一端が螺着され、この連結部材33の他端に、ブレーキペダル30の連結部30aが連結ピン34によって枢動可能に連結されている。他方のロッド部18のねじ部18aには、連結部材35の一端が螺着され、この連結部材35の他端に、球面軸受36を介してマスタピストン31が連結されている。
【0061】
これにより、ブレーキペダル30に踏力が加えられると、これが連結ピン34、連結部材33および一方のロッド部17を介して起歪体11に伝達される。起歪体11に伝達された踏力は、他方のロッド部18、連結部材35および球面軸受36を介してマスタピストン31に伝達される。
【0062】
これにより、ブレーキペダル30に加えられた踏力がマスタシリンダに伝達されるとともに、その踏力の大きさに応じて荷重検出装置10の起歪体11の歪検出部15に歪が発生され、この歪が歪検出手段23によって検出される。
【0063】
次に、荷重検出装置10を、ブレーキペダル30に加えられた踏力の検出に適用した場合の動作について説明する。
【0064】
ブレーキペダル30に踏力が加えられると、一方のロッド部17を介して起歪体11に踏力に応じた荷重が作用され、この荷重は他方のロッド部18を介してマスタピストン31に伝達される。
【0065】
起歪体11に踏力に応じた荷重が加えられると、その荷重に応じて歪検出部15に歪が発生する。この際、荷重軸方向の第2肉厚部21の肉厚に対して荷重軸垂直方向の第1肉厚部22の肉厚が薄く構成されているので、荷重軸方向より荷重軸垂直方向の剛性が低下して、荷重軸垂直方向への変形が助長され、荷重軸方向と荷重軸垂直方向の発生歪の大きさ比が1に近づくようになる。言い換えれば、図10に示すように、起歪体11の歪検出部15に発生する荷重軸方向の圧縮歪CSの大きさと、荷重軸垂直方向の引張歪TSの大きさの差が小さくなり、起歪体11の感度が高められる。
【0066】
かかる起歪体11の歪検出部15に発生した引張歪TSおよび圧縮歪CSに応じて、歪検出部15に貼付された歪検出素子a1、a2、b1、b2が歪み、歪みに応じて抵抗値が変化する。これら歪抵抗素子a1、a2、b1、b2の抵抗値の変化により、ブリッジ回路BC(図4参照)より、ブレーキペダル30に加えられた踏力に応じた出力電圧が出力される。
【0067】
なお、上記した第1の実施の形態においては、荷重検出装置10を圧縮荷重が作用する部位に設けた例について説明したが、荷重検出装置10を引張荷重が作用する部位に設けることもできる。この場合には、図11に示すように、歪検出部15には、荷重軸の方向に引張歪TSが生起し、荷重軸垂直方向に圧縮歪CSが生起するようになる。
【0068】
図12は本発明の第2の実施の形態を示すもので、上記した第1の実施の形態と異なる点は、起歪体111の外周面を荷重軸X0垂直方向に沿った長円(楕円)形状とし、この起歪体111の軸方向の両端部に真円形状の凹部113、114を形成することにより、凹部113、114の周囲に、荷重軸X0方向に沿って肉厚がX1の第2肉厚部21と、荷重軸X0垂直方向に沿って肉厚がY1(ただし、Y1<X1)の第1肉厚部22を形成したものである。なお、その他の点は、第1の実施の形態とほぼ同様であるので、第1の実施の形態と同一の構成部品については同一の参照番号を付し、説明を省略する。
【0069】
かかる第2の実施の形態においても、第1の実施の形態で述べたと同様な作用、効果を奏するようになり、荷重軸垂直方向の第2肉厚部22の断面積に対する荷重軸方向の第1肉厚部21の断面積を、1.5〜2.5倍、好ましくは2倍程度とすることにより、荷重軸方向の歪の大きさと荷重軸垂直方向の歪の大きさの差を小さくできるようになる。
【0070】
図13ないし図15は、歪検出部15に貼付される歪検出手段23の第1〜第3変形例を示すものである。なお、図13ないし図15において、(a)、(b)は歪検出手段23を設けた起歪体11の異なる断面図を示し、(c)は歪検出手段23を構成する歪検出素子をブリッジ回路に結線した検出回路図を示している。
【0071】
図13に示す第1変形例は、起歪体11の歪検出部15の中央部の片面にのみ、引張歪を検出する歪検出素子a1と、圧縮歪を検出する歪検出素子b1を、それぞれ1個ずつ貼付したものであり、これら2個の歪検出素子a1、b1と2個の固定抵抗rとによってブリッジ回路BCを構成したものである。
【0072】
図14に示す第2変形例は、起歪体11の歪検出部15の片面の中央部に、引張歪を検出する2個の歪検出素子a1、c1と、圧縮歪を検出する2個の歪検出素子b1、d1をそれぞれ貼付し、これら4個の歪検出素子a1、b1、c1、d1によってブリッジ回路BCを構成したものである。
【0073】
上記した第1および第2変形例に記載のものは、歪検出部15の平面の法線方向の偏荷重の影響を受けない、もしくは無視できる部位に荷重検出装置10を適用した場合に有効であり、歪検出手段23を片側だけに配置した簡単な構成で、起歪体11に生じた歪を高精度に検出することができる。
【0074】
図15に示す第3変形例は、起歪体11の歪検出部15の片面の中央部に、引張歪を検出する2個の歪検出素子a1、c1と、圧縮歪を検出する2個の歪検出素子b1、d1をそれぞれ貼付し、これら4個の歪検出素子a1〜d1によって第1ブリッジ回路BC1を構成している。また、起歪体11の歪検出部15の反対側の面の中央部に、引張歪を検出する2個の歪検出素子a2、c2と、圧縮歪を検出する2個の歪検出素子b2、d2をそれぞれ貼付し、これら4個の歪検出素子a2〜d2によって第2ブリッジ回路BC2を構成している。そして、第1および第2のブリッジ回路BC1、BC2の各出力を増幅器27、29を介して加算回路28の入力端子にそれぞれ入力するようになっている。
【0075】
このように、歪検出部15の両面に貼付した計8個の歪検出素子によって、第1および第2ブリッジ回路BC1、BC2を構成することにより、第1の実施の形態で述べたもの(図4参照)に比して、検出感度を倍増することができ、起歪体11に生じた歪を高感度に検出できるとともに、偏荷重の影響を受けなくすることができる。
【0076】
上記した実施の形態によれば、荷重が加えられる起歪体11の軸方向(荷重軸方向と直交する方向)の両端部より、起歪体11の外面形状と異なる形状の凹部13,14を形成したことにより、荷重軸方向およびそれに垂直な荷重軸垂直方向にそれぞれ歪む薄肉平面状の歪検出部15を形成するとともに、凹部13、14の周囲に荷重軸方向に平行な方向に厚さを有する第1肉厚部22と、荷重軸方向に垂直な方向でかつ歪検出部の平面と平行な方向に厚さを有し第1肉厚部22の厚さよりも厚くした第2肉厚部21を形成し、歪検出部15に発生する圧縮歪および引張歪を歪検出素子からなる歪検出手段23によって検出するようにした。
【0077】
これにより、荷重軸方向と荷重軸垂直方向の肉厚部21、22を適切に設定することにより、歪検出部15に発生する荷重軸方向と荷重軸垂直方向の発生歪の大きさを近づけることができるように、荷重軸方向の剛性と荷重軸垂直方向の剛性とを異ならせることができる。従って、従来のように歪検出部15に穴などを開ける必要がないため、局所的な剛性低下部をなくすることができ、高剛性の起歪体11によって荷重を高感度に検出することができる。しかも、穴の形成が不要となるため、起歪体11の加工コストを低減することができる。
【0078】
また、上記した実施の形態によれば、起歪体11の外面形状および凹部13,14の内面形状の一方を真円形状とし、他方を長円形状とすることにより、第1肉厚部22の厚さよりも第2肉厚部21の厚さを厚くしたので、凹部13,14の周囲に第1肉厚部22の厚さよりも第2肉厚部21の厚さを厚くした肉厚部を容易に形成することができる。
【0079】
上記した実施の形態においては、荷重検出装置10をブレーキペダル30に加えられる踏力を検出するものに適用した例について述べたが、本発明は、自動車のサスペンション荷重を検出するもの、車両シートに着座する体重を検出するもの、クレーン車等に作用する荷重検出にも適用でき、また、自動車以外でも、ロードセルとして広範な荷重の検出に利用できるものである。
【0080】
また、上記した実施の形態においては、起歪体11(111)の外周面および凹部13、14(113、114)のいずれか一方を、真円形状とし、他方を長円形状とすることによって、凹部13、14の周囲の肉厚部を、荷重軸の方向よりも荷重軸と垂直な方向を薄くした例について述べたが、起歪体11(111)の外面形状および凹部13、14(113、114)の内面形状は、必ずしも真円形状および長円形状の組み合わせによって、異なる厚みの肉厚部21、22を構成するものに限定されるものではない。
【0081】
さらに上記した実施の形態においては、起歪体11の軸方向の両端部に同一深さの凹部13、14を形成した例について述べたが、凹部13、14の深さは必ずしも同一でなくてもよい。
【0082】
次に本発明の第3の実施の形態を図面に基づいて説明する。第3の実施の形態における荷重検出装置100は、図16〜図18に示すように、外周面が真円をなす円筒状の起歪体211を有しており、起歪体211の軸方向(荷重が作用する荷重軸X0方向と直交する方向)の両側には、真円状の第1凹部201が外周面と同心的に設けられ、これによって、起歪体211の軸方向の中央部には板厚t1の第1平面部202が形成され、起歪体211の両端部には肉厚dの円筒部205が形成されている。両第1凹部201の中心部には、長円形もしくは長方形の第2凹部203がそれぞれ設けられ、これによって、第1平面部202の中央部に第1平面部202の板厚t1より薄い板厚t2の第2平面部204を形成している。
【0083】
このように、起歪体211に、真円状の第1凹部201と長円形もしくは長方形の第2凹部203を設けたことにより、凹部周辺の第1平面部202の板厚t1より、凹部中央の第2平面部204の板厚t2を薄くするとともに、凹部中央の第2平面部204の荷重軸方向の長さL2を、それに垂直な荷重軸垂直方向の長さL1より長くしている。凹部中央の第2平面部204により、長円形(長方形)の薄肉平面からなる歪検出部215が、荷重軸方向および荷重軸垂直方向に平行に構成されている。
【0084】
起歪体211の荷重軸方向の両端部には、ロッド部17、18が溶接やねじ、圧入などによって一体的に連結されている。ロッド部17、18は、その中心が、起歪体211の中心に一致し、かつ起歪体211の軸方向中央部(第2平面部204)に一致する位置に配置されている。これにより、ロッド部17、18の一方に、例えば圧縮荷重が入力されると、図19に示すように、入力された圧縮荷重に応じて歪検出部215(第2平面部204)には、荷重軸方向に圧縮歪が、荷重軸垂直方向に引張歪が生起される。
【0085】
第2平面部204(歪検出部215)の片面には、歪検出部215に生ずる圧縮歪および引張歪を検出する複数の歪検出素子(歪ゲージ)a1、a2、b1、b2からなる歪検出手段223が荷重軸X0に対称に設けられている。荷重軸方向の圧縮歪を検出する歪検出素子a1、a2と、荷重軸垂直方向の引張歪を検出する歪検出素子b1、b2によって、第1の実施の形態の図4で述べたと同様なブリッジ回路BCが構成される。これにより、歪検出部215に圧縮歪と引張歪が生ずると、歪検出素子a1、a2、b1、b2は圧縮歪および引張歪に応じてそれぞれ抵抗値が変化し、その抵抗値変化に応じた出力電圧が増幅器27(図4参照)より出力される。
【0086】
なお、歪検出手段223の配置は上記したように、第2平面部204(歪検出部215)の片面にのみ配置するものに限定するものではなく、第2平面部204の両面に配置してもよく、また、長円形もしくは長方形の第2凹部203は、第1凹部201の片側にのみ設けるようにしてもよい。歪検出手段223を第2平面部204(歪検出部215)の両面に配置し、第2平面部204の両面で検出した歪を加算することにより、出力を倍増することができるとともに、第2平面部204の法線方向に荷重軸から偏った偏荷重が生ずる場合においても、偏荷重の影響を小さくすることができる。
【0087】
また、歪検出素子a1〜a4の貼付位置は、必ずしも荷重軸X0に対して対称に設ける必要はないが、荷重軸X0に対称に設けることで、入力される荷重が、凹部中央の第2平面部204を含む面内で荷重軸X0に対し偏った偏荷重となった場合でも、偏荷重による検出誤差の発生を抑制できる。
【0088】
すなわち、入力される荷重が、凹部中央の第2平面部204を含む面内で荷重軸X0に対し偏った偏荷重となると、偏った側の歪が大きくなり、反対側の歪は小さくなるが、ブリッジ回路BCにより偏荷重の影響はキャンセルされるため、偏荷重による検出誤差を排除できる。
【0089】
次に、起歪体211の各部の形状寸法を変化させた場合の検出感度の影響について説明する。なお、以下においては、図17、図18に示すように、外径寸法D1=30mm、軸方向寸法W=18mm、円筒部205の肉厚d=3mm、凹部周辺の第1平面部202の板厚t1=3mm、ロッド部17、18の外径D2=10mmからなる起歪体211を製作し、凹部中央の第2平面部204の荷重軸垂直方向の長さL1と、荷重軸方向の長さL2との長さ比(L1/L2)、ならびに凹部中央の第2平面部204の板厚t2を変化させた場合に、凹部中央の第2平面部204で発生する歪の大きさ比への影響について検証した。
【0090】
凹部中央の第2平面部204の荷重軸方向の剛性は、主に凹部中央の第2平面部204の荷重軸垂直方向の長さL1によって決まり、荷重軸垂直方向の剛性は、主に凹部中央の第2平面部204の荷重軸方向の長さL2によって決まる。ここで、長さL1より長さL2を長くすることで、荷重軸方向の剛性より荷重軸垂直方向の剛性のほうが低くなり、荷重軸垂直方向への変形が助長される。
【0091】
図20に示すグラフA31、A32、A33は、凹部中央の第2平面部204の板厚t2を、第1平面部202の板厚t1に対して、それぞれ1/12倍(0.25mm)、1/6倍(0.5mm)、1/3倍(1mm)に変化させた場合の、第2平面部204の長さ比(L1/L2)に対する第2平面部204の荷重軸方向の発生歪と荷重軸垂直方向の発生歪の大きさ比を示したものである。
【0092】
図20に示すように、第2平面部204の長さ比(L1/L2)を1より小さくしていくと、荷重軸方向の発生歪の大きさと荷重軸垂直方向の発生歪の大きさの差が徐々に小さくなっていき、ついには逆転する傾向となる。荷重軸方向と荷重軸垂直方向の発生歪の大きさ比が1のとき(|荷重軸方向発生歪|=|荷重軸垂直方向発生歪|)、荷重検出装置100の感度は最大となるので、荷重軸方向と荷重軸垂直方向の発生歪の大きさ比が1となる形状に起歪体211を構成することにより、高感度な荷重検出装置100を実現できる。
【0093】
なお、凹部中央の第2平面部204の板厚t2の値に係らず、荷重軸方向と荷重軸垂直方向の発生歪の大きさ比を1に近づけることが確認できた。この場合、凹部中央の第2平面部204の長さ比(L1/L2)は、0.4〜07が好適である。また、凹部板厚が凹部周辺と凹部中央に係らず0.5mmで一定とした場合、荷重軸方向と荷重軸垂直方向の発生歪の大きさ比は約0.81であったことが確認できた。
【0094】
上記したように、凹部周辺の第1平面部202の板厚t1より凹部中央の第2平面部204の板厚t2を薄く形成したことにより、ロッド17(18)に荷重が入力されると、凹部周辺と凹部中央で板厚が一定の場合に比べ、凹部中央の第2平面部204へ応力が集中する。凹部周辺の第1平面部202の板厚t1と凹部中央の第2平面部204の板厚t2との板厚比を調整することで、歪検出手段223が配置された凹部中央への応力集中度合いを容易に調整することができる。また、歪検出部223が起歪体211における最弱部となるよう設計することも容易になるため、応力集中部と歪検出部223での歪量の差をなくす(応力集中部での歪量=歪検出部223での歪量)ことができ、相対的な感度低下を避けることができる。
【0095】
このように、第3の実施の形態においては、凹部中央に、凹部周辺の板厚(t1)よりも薄い板厚(t2)の平面部(第2平面部)204を設け、この平面部204の荷重軸方向長さ(L2)を荷重軸垂直方向長さ(L1)より長くし、凹部中央の平面部204を歪検出部215として、荷重軸方向と荷重軸垂直方向の歪を検出できるよう歪検出手段223を設けたものである。
【0096】
第3の実施の形態によれば、歪検出部215となる凹部中央の第2平面部204の長さ比(L1/L2)を適切に設定することにより、歪検出部215に発生する荷重軸方向の発生歪と荷重軸垂直方向の発生歪の大きさを近づけるように、歪検出部223の荷重軸方向の剛性と荷重軸垂直方向の剛性とを異ならせることができるので、第1の実施の形態で述べたと同様に、高剛性の起歪体211によって起歪体211に加えられた荷重を高感度に検出することができる。
【0097】
しかも、第3の実施の形態によれば、歪検出部215を凹部201の中央に集めることができるので、起歪体211および起歪体周囲の温度勾配による検出誤差の影響を受けにくい利点もある。
【0098】
図21は起歪体211に入力される荷重が引張となった場合を示すもので、凹部中央の第2平面部204には、荷重軸方向に引張歪が、荷重軸垂直方向に圧縮歪が生じ、歪検出部215に設けた歪検出手段223(図16参照)により、引張荷重を高感度に検出できる。
【0099】
また、図22に示すように、入力される荷重が第2平面部204を含む面内で、対象軸(荷重軸)から偏った偏荷重となると、偏った側の歪が大きくなり、反対側の歪は小さくなるが、凹部中央の歪はほとんど変化しないため、偏荷重による検出誤差はほとんど生じない。
【0100】
さらに、図23に示すように、凹部中央の第2平面部204の法線方向に対象軸(荷重軸)から偏った偏荷重が生ずる場合は、第2平面部204の両面で歪検出を行うことで、偏荷重の影響をキャンセルできる。
【0101】
起歪体211が荷重軸に対して対称に形成され、円筒部205の軸方向の長さが十分ある場合には、凹部中央の第2平面部204はほぼ中立線に相当するので、偏荷重により生ずる第2平面部204の曲げモーメントは非常に小さくなり、第2平面部204の片面で歪を検出するようにしても、偏荷重による誤差をほとんど生じない。従って、第2平面部204の法線方向の偏荷重がほとんど生じない場合、第2平面部204の片面での歪を検出するようにしても問題ない。
【0102】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記した実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能であることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0103】
本発明に係る荷重検出装置は、自動車のブレーキペダルに加えられた踏力等を検出するものに用いるのに適している。
【符号の説明】
【0104】
10、100…荷重検出装置、11、111、211…起歪体、13、14、201、203…凹部、15、215…歪検出部、17、18…ロッド部、21…第2肉厚部、22…第1肉厚部、23、223…歪検出手段、30…ブレーキペダル、31…マスタピストン、202、204…平面部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、起歪体の両側に設けた凹部の底部平面に歪検出手段を設けた荷重検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
加えられた荷重の大きさを検出するために、例えば、特許文献1に記載されているようなロードセル10が用いられる。特許文献1に記載のロードセル10は、ボディ(起歪体)25の両側に形成された円形の凹部の底部に薄肉の平面(歪検出部)40が形成され、この歪検出部40に歪ゲージ20が取付けられている。この種のロードセルは、起歪体10に荷重が入力されると、歪検出部40が変形して圧縮歪と引張歪が生じ、これを歪ゲージ20によって検出することにより、起歪体10に加えられた荷重を検出するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国公開特許2005/0081652
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のロードセル10においては、歪検出部(平面)20に穴30を開けることで、歪検出部20に発生する圧縮歪と引張歪の大きさを近づけ、高感度な検出を行えるように構成されているため、穴30の周辺部は歪検出部20より剛性が低下し、応力集中が生じてしまう。このため、歪検出部の材料の強度等に依存して最大許容歪が決まるので、起歪体で発生する最大歪を最大許容歪以下とする必要がある。
【0005】
また、長期に亘って強度保証するには、応力集中部に合わせて起歪体の強度設計を行わなければならず、応力集中部と歪検出部での歪量の差が大きい場合には、歪検出部で発生する歪が小さくなってしまうため、相対的に感度を低下せざるを得ない問題がある。さらには、適正に歪を検出しようとすれば、穴の位置や歪ゲージの配置位置を高精度にする必要があるため、製造コストのアップを招くおそれがある。
【0006】
本発明は、上述した従来の問題を解消するためになされたもので、高剛性の起歪体を用いて、起歪体に加えられた荷重を高精度に検出できる荷重検出装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、請求項1に係る発明の特徴は、荷重が作用する荷重軸方向に沿って配置された起歪体を有する荷重検出装置であって、前記起歪体は、前記荷重軸方向の剛性と該荷重軸方向に垂直な荷重軸垂直方向の剛性とが異なるように、前記起歪体に前記荷重軸方向と直交する方向の端部より凹部を形成することにより、該凹部の底部に前記荷重軸方向および前記荷重軸垂直方向に平行に形成され、前記荷重軸方向に加えられる荷重によって前記荷重軸方向および前記荷重軸垂直方向にそれぞれ歪む平面状の歪検出部と、前記歪検出部の少なくとも片面に配置され前記歪検出部に発生する圧縮歪および引張歪を検出する歪検出素子からなる歪検出手段とを有することである。
【0008】
請求項2に係る発明の特徴は、荷重が作用する荷重軸方向に沿って配置された起歪体を有する荷重検出装置であって、前記起歪体は、前記起歪体に前記荷重軸方向と直交する方向の両端部より前記起歪体の外面形状と異なる内面形状の凹部を形成することにより、これら凹部の底部に前記荷重軸方向およびそれに垂直な荷重軸垂直方向に平行に形成され、前記荷重軸方向に加えられる荷重によって前記荷重軸方向および前記荷重軸垂直方向にそれぞれ歪む薄肉平面状の歪検出部と、前記凹部の周囲に設けられ前記荷重軸方向に平行な方向に厚さを有する第1肉厚部と、前記荷重軸方向に垂直な方向でかつ前記歪検出部の平面と平行な方向に厚さを有し前記第1肉厚部の厚さよりも厚くした第2肉厚部と、前記歪検出部の少なくとも片面に配置され前記歪検出部に発生する圧縮歪および引張歪を検出する歪検出素子からなる歪検出手段とを有することである。
【0009】
請求項3に係る発明の特徴は、請求項2において、前記第1肉厚部の断面積と前記第2肉厚部の断面積の比を、1:1.5〜2.5としたことである。
【0010】
請求項4に係る発明の特徴は、請求項3において、前記第2肉厚部の厚さ寸法に対する歪検出部の板厚の寸法を、1/10〜1/5倍としたことである。
【0011】
請求項5に係る発明の特徴は、請求項3において、前記第2肉厚部の厚さ寸法に対する前記起歪体の外径の寸法を、4〜8倍としたことである。
【0012】
請求項6に係る発明の特徴は、請求項2ないし請求項5のいずれか1項において、前記起歪体の外面形状を真円形状とし、前記凹部の内面形状を長円形状とすることにより、前記第2肉厚部の厚さよりも前記第1肉厚部の厚さを薄くしたことである。
【0013】
請求項7に係る発明の特徴は、請求項2ないし請求項5のいずれか1項において、前記起歪体の外面形状を長円形状とし、前記凹部の内面形状を真円形状とすることにより、前記第2肉厚部の厚さよりも前記第1肉厚部の厚さを薄くしたことである。
【0014】
請求項8に係る発明の特徴は、荷重が作用する荷重軸方向に沿って配置された起歪体を有する荷重検出装置であって、前記起歪体は、凹部周辺の平面部の板厚より凹部中央の平面部の板厚が薄く、凹部中央の平面部の荷重軸方向長さが荷重軸垂直方向長さより長くなるように、前記起歪体に前記荷重軸方向と直交する方向に凹部を形成することにより、前記凹部中央に前記荷重軸方向および前記荷重軸垂直方向に平行に形成され、前記荷重軸方向に加えられる荷重によって前記荷重軸方向および前記荷重軸垂直方向にそれぞれ歪む歪検出部と、前記歪検出部の少なくとも片面に配置され前記歪検出部に発生する圧縮歪および引張歪を検出する歪検出素子からなる歪検出手段とを有することである。
【0015】
請求項9に係る発明の特徴は、請求項8において、前記起歪体の外面形状を真円形状とし、前記起歪体に前記荷重軸方向と直交する方向の両端部より真円状の第1凹部を形成し、該第1凹部の中央部に長方形もしくは長円形の第2凹部を形成することにより、前記荷重軸方向の剛性より前記荷重軸垂直方向の剛性を低下させるように構成したことである。
【0016】
請求項10に係る発明の特徴は、請求項9において、前記平面部の板厚を、凹部周辺の平面部の板厚の1/12〜1/3倍としたことである。
【0017】
請求項11に係る発明の特徴は、請求項1ないし請求項10のいずれか1項において、前記歪検出手段を前記歪検出部の中央部の両側の面に配置したことである。
【発明の効果】
【0018】
上記のように構成した請求項1に係る発明によれば、荷重が加えられる起歪体が、荷重軸方向の剛性と荷重軸方向に垂直な荷重軸垂直方向の剛性とが異なるように、起歪体に荷重軸方向と直交する方向の端部より凹部を形成することにより、凹部の底部に荷重軸方向および荷重軸垂直方向に平行に形成され、荷重軸方向に加えられる荷重によって荷重軸方向および荷重軸垂直方向にそれぞれ歪む平面状の歪検出部と、歪検出部の少なくとも片面に配置され歪検出部に発生する圧縮歪および引張歪を検出する歪検出素子からなる歪検出手段とを有している。
【0019】
このように、歪検出部における荷重軸方向の剛性と荷重軸垂直方向の剛性との比が適切となるように凹部を形成することにより、歪検出部に発生する荷重軸方向と荷重軸垂直方向の発生歪の大きさを近づけることができるので、従来のように穴などを開ける必要がなく、高剛性の起歪体によって起歪体に加えられた荷重を高感度に検出することができる。従って、穴の形成が不要となって、局所的な剛性低下部をなくすることができ、かつ起歪体の加工コストを低減することができる。
【0020】
請求項2に係る発明によれば、荷重が加えられる起歪体が、荷重軸方向および荷重軸垂直方向にそれぞれ歪む薄肉平面状の歪検出部と、凹部の周囲に設けられ荷重軸方向に平行な方向に厚さを有する第1肉厚部と、荷重軸方向に垂直な方向でかつ歪検出部の平面と平行な方向に厚さを有し第1肉厚部の厚さよりも厚くした第2肉厚部と、歪検出部の少なくとも片面に配置され歪検出部に発生する圧縮歪および引張歪を検出する歪検出素子からなる歪検出手段とを有している。
【0021】
これにより、第1肉厚部と第2肉厚部との比を適切に設定することにより、歪検出部に発生する荷重軸方向と荷重軸垂直方向の発生歪の大きさを近づけることができるので、従来のように穴などを開ける必要がなく、高剛性の起歪体によって起歪体に加えられた荷重を高感度に検出することができる。従って、穴の形成が不要となって、局所的な剛性低下部をなくすることができ、かつ起歪体の加工コストを低減することができる。
【0022】
請求項3に係る発明によれば、第1肉厚部の断面積と第2肉厚部の断面積の比を、1:1.5〜2.5としたので、第1肉厚部の曲げ剛性を低下させることなく、歪検出部に発生する引張歪と圧縮歪の大きさの差を小さくすることができる。
【0023】
請求項4に係る発明によれば、第2肉厚部の厚さ寸法に対する歪検出部の板厚の寸法を、1/10〜1/5倍としたので、起歪体の強度を確保しつつ、荷重軸方向と荷重軸垂直方向の発生歪の大きさの差を小さくすることができる。
【0024】
請求項5に係る発明によれば、第2肉厚部の厚さ寸法に対する起歪体の外径の寸法を、4〜8倍としたので、起歪体の感度を向上しつつ、荷重軸方向と荷重軸垂直方向の発生歪の大きさの差を小さくすることができる。
【0025】
請求項6に係る発明によれば、起歪体の外面形状を真円形状とし、凹部の内面形状を長円形状とすることにより、第2肉厚部の厚さよりも第1肉厚部の厚さを薄くしたので、起歪体を真円に、凹部を長円とするだけで、凹部の周囲に第2肉厚部の厚さよりも第1肉厚部の厚さを薄くした肉厚部を容易に形成することができる。
【0026】
請求項7に係る発明によれば、起歪体の外面形状を長円形状とし、凹部の内面形状を真円形状とすることにより、第2肉厚部の厚さよりも第1肉厚部の厚さを薄くしたので、起歪体を長円に、凹部を真円とするだけで、凹部の周囲に第2肉厚部の厚さよりも第1肉厚部の厚さを薄くした肉厚部を容易に形成することができる。
【0027】
請求項8に係る発明によれば、荷重が加えられる起歪体が、凹部周辺の平面部の板厚より凹部中央の平面部の板厚が薄く、凹部中央の平面部の荷重軸方向長さが荷重軸垂直方向長さより長くなるように、起歪体に荷重軸方向と直交する方向に凹部を形成することにより、凹部中央に荷重軸方向および荷重軸垂直方向に平行に形成され、荷重軸方向に加えられる荷重によって荷重軸方向および荷重軸垂直方向にそれぞれ歪む歪検出部と、歪検出部の少なくとも片面に配置され歪検出部に発生する圧縮歪および引張歪を検出する歪検出素子からなる歪検出手段とを有している。
【0028】
これにより、凹部中央に形成された歪検出部に発生する荷重軸方向と荷重軸垂直方向の発生歪の大きさを近づけることができるので、高剛性の起歪体によって起歪体に加えられた荷重を高感度に検出することができる。しかも、歪検出部を凹部中央に集めることができるので、起歪体および起歪体周囲の温度勾配による検出誤差の影響を受けにくくすることができる。
【0029】
請求項9に係る発明によれば、起歪体の外面形状を真円形状とし、起歪体に荷重軸方向と直交する方向の両端部より真円状の第1凹部を形成し、第1凹部の中央に長方形もしくは長円形の第2凹部を形成することにより、荷重軸方向の剛性より荷重軸垂直方向の剛性を低下させた平面部を形成したので、第1凹部の中央に荷重軸方向と荷重軸垂直方向に長さの異なる平面部を形成することができ、この平面部の長さ比を適切に設定することで、荷重軸方向と荷重軸垂直方向の発生歪の大きさを容易に近づけることができる。
【0030】
請求項10に係る発明によれば、平面部の板厚を、凹部周辺の平面部の板厚の1/12〜1/3倍としたので、起歪体の強度を確保しつつ、荷重軸方向と荷重軸垂直方向の発生歪の大きさの差を小さくすることができる。
【0031】
請求項11に係る発明によれば、歪検出手段を歪検出部の中央部の両側の面に配置したので、歪検出部の両側の歪検出手段より検出出力が得られるため、これらを加算することにより、検出出力を倍増することができ、高精度な荷重検出を行うことができる。しかも、入力される荷重が凹部平面を含む面内で偏った偏荷重となった場合でも、中央部の歪はほとんど変化しないため、偏荷重による検出誤差を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の第1の実施の形態を示す荷重検出装置の断面図である。
【図2】図1の2−2線に沿って切断した断面図である。
【図3】図1の3−3線に沿って切断した断面図である。
【図4】荷重検出装置の検出回路を示す図である。
【図5】起歪体の荷重軸方向と荷重軸垂直方向の肉厚部の断面積比に対する荷重軸方向と荷重軸垂直方向の発生歪の大きさ比を示すグラフである。
【図6】荷重軸方向と荷重軸垂直方向の発生歪の大きさ比に影響を及ぼす起歪体の各部の寸法を示す図である。
【図7】起歪体の肉厚部に対して歪検出部の板厚を変化させた場合の肉厚部の断面積比と荷重軸方向と荷重軸垂直方向の発生歪の大きさ比の関係を示すグラフである。
【図8】起歪体の肉厚部に対して起歪体の外径を変化させた場合の肉厚部の断面積比と荷重軸方向と荷重軸垂直方向の発生歪の大きさ比の関係を示すグラフである。
【図9】荷重検出装置をブレーキペダルの踏力を検出するものに適用した図である。
【図10】荷重検出装置の作動状態を示す図である。
【図11】引張荷重を検出する場合の荷重検出装置の作動状態図である。
【図12】本発明の第2の実施の形態を示す荷重検出装置の断面図である。
【図13】荷重検出装置の歪検出手段の第1変形例を示す図である。
【図14】荷重検出装置の歪検出手段の第2変形例を示す図である。
【図15】荷重検出装置の歪検出手段の第3変形例を示す図である。
【図16】本発明の第3の実施の形態を示す荷重検出装置の断面図である。
【図17】図16の17−17線に沿って切断した断面図である。
【図18】図16の18−18線に沿って切断した断面図である。
【図19】荷重検出装置の作動状態を示す図である。
【図20】第3の実施の形態に係る起歪体の凹部中央の平面部の長さ比に対する荷重軸方向と荷重軸垂直方向の発生歪の大きさ比を示すグラフである。
【図21】起歪体に引張荷重が作用した場合の荷重検出装置の作動状態図である。
【図22】起歪体に偏荷重が作用した状態を示す図である。
【図23】起歪体に偏荷重が作用した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1、図2および図3は本発明の第1の実施の形態に係る荷重検出装置10を示すもので、当該荷重検出装置10は、外周面が真円をなす円筒状の起歪体11を有している。円筒状の起歪体11の軸方向の両端部、言い換えれば、荷重が作用する荷重軸X0方向と直交する方向の両端部には、内面が長円(楕円)形状の凹部13、14が同一深さに亘って起歪体11の外周面と同心的に形成されている。これら凹部13、14の形成によって、凹部13、14の底部、すなわち、起歪体11の軸方向中央部に、長円形状の薄肉平面からなる歪検出部15が、荷重軸X0方向およびそれに垂直な荷重軸垂直方向に平行に形成される。
【0034】
起歪体11は、凹部13、14の長円の長径方向が、荷重軸X0方向となるように構成されており、起歪体11の荷重軸X0方向の両端部には、ロッド部17、18がそれぞれ一体的に連結されている。ロッド部17、18は、その中心が、起歪体11の中心に一致し、かつ起歪体11の軸方向中央部(歪検出部15)に一致する位置に配置されている。これにより、ロッド部17、18の一方には、歪検出部15に一致する線上に荷重が入力され、入力された荷重に応じて歪検出部15に歪が生起される。
【0035】
長円形状の凹部13、14の形成によって、凹部13、14の周囲には、短径方向(荷重軸X0垂直方向)に沿って荷重軸X0方向に平行な方向にY1の厚さ(肉厚)を有する一対の第1肉厚部22と、長径方向(荷重軸X0方向)に沿って荷重軸X0方向に垂直な方向で、かつ歪検出部15の平面と平行な方向にX1の厚さ(肉厚)を有する一対の第2肉厚部21が形成されており、第1肉厚部22の厚さY1よりも第2肉厚部21の厚さX1を厚くしてある。ここで、荷重軸X0垂直方向を含む断面(図1の3−3断面)の断面積は、荷重軸X0方向を含む断面(図1の2−2断面)の断面積の2倍程度とすることが好ましい。その理由については後述する。
【0036】
凹部13、14の周囲の肉厚部21、22を、荷重軸X0方向より荷重軸X0垂直方向を薄くすると、次のような効果が生ずる。歪検出部15の板厚が十分に薄ければ、荷重軸X0方向の剛性は、第2肉厚部21の肉厚X1によって決定され、荷重軸X0垂直方向の剛性は、第1肉厚部22の肉厚Y1によって決定される。ここで、荷重軸X0方向の第2肉厚部21に対して荷重軸X0垂直方向の第1肉厚部22を薄くしていくと、荷重軸X0方向より荷重軸X0垂直方向の剛性が低下することで、荷重軸X0垂直方向への変形が助長される(以下、これを効果Iという)。一方、荷重軸X0垂直方向の第1肉厚部22が薄くなると、第1肉厚部22の曲げ剛性が低下するため、荷重軸X0方向への変形が助長される(以下、これを効果IIという)。
【0037】
これにより、凹部13、14の周囲に、荷重軸X0方向に沿って厚さ寸法がX1の第2肉厚部21を形成するとともに、荷重軸X0垂直方向に沿って厚さ寸法がX1よりも小さなY1の第1肉厚部22を形成することにより、一方のロッド部17に入力された荷重に応じて、起歪体11の歪検出部15には、荷重軸X0方向に圧縮歪が生起されると同時に、荷重軸X0垂直方向に引張歪が生起される。
【0038】
起歪体11の歪検出部15の中央部の両面には、歪検出部15に生ずる引張歪および圧縮歪を検出する複数の歪検出素子からなる歪検出手段23が設けられている。歪検出手段23は、図1〜図3に示す第1の実施の形態においては、荷重軸X0垂直方向の引張歪を検出する各1個ずつの歪検出素子a1、a2が歪検出部15の両面にそれぞれ貼付され、荷重軸X0垂直方向の圧縮歪を検出する各1個ずつの歪検出素子b1、b2が歪検出部15の両面にそれぞれ貼付されている。これら4個の歪検出素子a1、a2、b1、b2は、歪検出部15の中央部に荷重軸X0に対して対称に配置されている。
【0039】
4個の歪検出素子a1、a2、b1、b2によって、図4に示すように、ブリッジ回路BCが構成されている。ブリッジ回路BCを構成する歪検出素子a1、b1の各一端は、電源端子25に接続され、歪検出素子a2、b2の各一端は、GND端子26に接続されている。歪検出素子a1、b2の各他端は互いに接続され、増幅器27の一方の入力端子に接続され、歪検出素子a2、b1の各他端は互いに接続され、増幅器27の他方の入力端子に接続されている。
【0040】
これにより、起歪体11の歪検出部15に引張歪および圧縮歪が生ずると、歪検出素子a1、a2、b1、b2は、引張歪および圧縮歪に応じてそれぞれ抵抗値が変化し、歪検出素子a1、a2、b1、b2の抵抗値変化に応じた出力電圧が増幅器27より出力される。なお、歪検出手段23として、積み重ねゲージを使用することもできる。
【0041】
この際、歪検出素子a1、a2の貼付位置は、必ずしも歪検出部15の中央部に設ける必要はないが、歪検出部15の中央部に設けることで、起歪体11周囲の温度勾配による検出誤差の発生を抑制できるとともに、起歪体11に入力される荷重が、歪検出部15の平面を含む面内で、荷重軸X0に対して偏った偏荷重となる場合であっても、偏荷重による検出誤差の発生を抑制できる。
【0042】
すなわち、入力される荷重が、歪検出部15の平面を含む面内で、荷重軸X0に対して偏った偏荷重となると、偏った側の歪が大きくなり、反対側の歪は小さくなるが、歪検出部15の平面中央部の歪はほとんど変化しないため、偏荷重による検出誤差を排除できる。
【0043】
また、歪検出部15の平面の両面で歪を検出することにより、歪検出部15の平面の法線方向に荷重軸X0から偏った偏荷重が生ずる場合においても、偏荷重の影響を小さくすることができる。
【0044】
次に図5のグラフに基づいて、上記した効果I(荷重軸X0垂直方向への変形が助長作用)と効果II(荷重軸X0方向への変形が助長作用)による歪感度への影響について説明する。図5は、横軸に荷重軸方向の第2肉厚部21の断面積と荷重軸垂直方向の第1肉厚部22の断面積の比(第2肉厚部21の断面積/第1肉厚部22の断面積)をとり、縦軸に荷重軸方向の発生歪と荷重軸垂直方向の発生歪の大きさ比をとったものである。同図に示すように、荷重軸方向の第2肉厚部21より荷重軸垂直方向の第1肉厚部22を薄くして、第1肉厚部22の断面積と第2肉厚部21の断面積との比を1より大きくしていくと、断面積比が1〜2の範囲では上記効果Iの影響が大きくなって、荷重軸方向の歪(圧縮歪)の大きさと荷重軸垂直方向の歪(引張歪)の大きさとの差が徐々に小さくなっていき、起歪体11の感度が高くなる。これに対して、断面積比が2を超えると、断面積比が大きくなっていくにつれて効果IIの影響が大きくなり、断面積比が2〜3の範囲では荷重軸方向の歪の大きさと荷重軸垂直方向の歪の大きさとの差が漸減していき、起歪体11の感度が僅かに低下する傾向となる。この結果、断面積比2において荷重軸方向と荷重軸垂直方向の発生歪の大きさ比が最も1に近似することとなり、荷重を検出するための起歪体11の感度を最大にできる。
【0045】
なお、断面積比が大きくなりすぎると、荷重軸方向の第2肉厚部21の肉厚X1に対して荷重軸垂直方向の第1肉厚部22の肉厚Y1が薄くなりすぎて、第1肉厚部22の曲げ剛性が低下し、起歪体11の感度が鈍くなるため、断面積比の上限は、2.5程度が適当である。この結果、断面積比としては、1.5〜2.5の範囲に設定するのが望ましい。
【0046】
上記したように、荷重軸方向の歪の大きさと荷重軸垂直方向の歪の大きさとの差が最も小さくなる断面積比となるように肉厚部21、22を設定することにより、発生する荷重軸方向の歪の大きさと荷重軸垂直方向の歪の大きさの比を1に近づけることができ、最も高感度な起歪体11を形成できることになる。すなわち、起歪体11に荷重が加えられた際の荷重軸方向の歪の大きさと荷重軸垂直方向の歪の大きさをほぼ等しくすることができる。
【0047】
このことから、荷重軸垂直方向の第2肉厚部22の断面積に対する荷重軸方向の第1肉厚部21の断面積の比を、1:2程度とすることが最適である。ただし、断面積比を、1:1.5〜2.5の範囲に設定することにより、荷重軸方向の歪の大きさと荷重軸垂直方向の歪の大きさの差を小さくでき、有効である。
【0048】
次に、起歪体11の各部の形状寸法の変化による起歪体11の感度の影響について、図6〜図8に基づいて説明する。なお、以下においては、図6に示すように、外径寸法D1=30mm、軸方向寸法W1=14mm、第2肉厚部21の厚さ寸法X1=5mm、歪検出部15の板厚寸法W2=1mm、ロッド部17、18の外径寸法D2=10mm、および凹部13、14と接続する歪検出部15の周縁部のR面取の半径寸法R1=2mmからなる起歪体11を製作し、第2肉厚部21の厚さ寸法X1に対して、起歪体11の外径寸法D1、起歪体11の軸方向寸法W1、歪検出部15の板厚寸法W2、ロッド部17、18の外径寸法D2、歪検出部15のR面取の半径寸法R1を変化させた場合の影響について検証した。
【0049】
まず、歪検出部15の板厚寸法W2と肉厚部21、22の厚さ寸法X1、Y1との寸法関係について調べた。図7に示すグラフA11、A12、A13は、第2肉厚部21の厚さ寸法X1(5mm)に対して歪検出部15の板厚寸法W2を、それぞれ1/10、1/5、3/10(0.5〜1.5mm)に変化させた場合の肉厚部の断面積比(肉厚部21の断面積/肉厚部22の断面積)に対する荷重軸方向の発生歪と荷重軸垂直方向の発生歪の大きさ比を示したものである。
【0050】
同図に示すように、第2肉厚部21の厚さ寸法X1に対して、歪検出部15の板厚寸法W2が厚くなるほど、荷重軸X0方向の剛性が向上するため、荷重軸X0垂直方向への変形助長効果(上記効果I)が小さくなるとともに、荷重軸方向と荷重軸垂直方向の発生歪の大きさ比が小さくなる。
【0051】
従って、歪検出部15の板厚寸法W2を薄くすることにより、グラフA11に示すように、荷重軸方向と荷重軸垂直方向の発生歪の大きさ比を1に近づけることができる。ただし、板厚寸法W2を薄くすると、荷重軸X0方向の剛性が低下し、起歪体11の強度が低下する傾向となるが、第2肉厚部21の厚さ寸法X1に対して歪検出部15の板厚寸法W2を1/10倍程度にしても、強度的には特に問題は生じない。
【0052】
このことから、第2肉厚部21の厚さ寸法X1に対する歪検出部15の板厚寸法W2は、起歪体11の強度を確保しつつ、グラフA12に示すように荷重軸方向と荷重軸垂直方向の発生歪の大きさ比を1に近づけることができる、1/10〜1/5倍程度が適当である。
【0053】
次に、起歪体11の外径寸法D1と肉厚部21、22の厚さ寸法X1、Y1との寸法関係について調べた。図8に示すグラフA21、A22、A23、A24、A25は、第2肉厚部21の厚さ寸法X1(5mm)に対して起歪体11の外径寸法D1を、それぞれ3倍、4倍、6倍、8倍、12倍(15〜60mm)に変化させた場合の第2肉厚部21と第1肉厚部22の断面積比に対する荷重軸方向の発生歪と荷重軸垂直方向の発生歪の大きさ比を示したものである。
【0054】
同図に示すように、第2肉厚部21の厚さ寸法X1に対し、起歪体11の外径寸法D1を大きくしていくと、相対的に第1肉厚部22の曲げ剛性が低下し、荷重軸方向への変形助長効果(上記効果II)が大きくなる。よって、起歪体11の外径寸法D1を余り大きくすると、荷重軸方向と荷重軸垂直方向の発生歪の大きさ比が小さくなり、断面積比の小さいところで発生歪の大きさ比が最大値をとるようになる。
【0055】
ただし、断面積比が1に近い場合は、起歪体11の外径寸法D1が小さいうちは効果Iの影響が大きく、荷重軸方向と荷重軸垂直方向の発生歪の大きさの差が徐々に小さくなっていき、起歪体11の感度が高くなっていくが、起歪体11の外径寸法D1が大きくなっていくにつれて、効果IIの影響が大きくなり、荷重軸方向と荷重軸垂直方向の発生歪の大きさの差が大きくなっていき、起歪体11の感度が低下する。
【0056】
よって、第2肉厚部21の厚さ寸法X1に対して起歪体11の外径寸法D1が、グラフのA21に示すように小さすぎても、逆にグラフのA24、A25に示すように大きすぎても、荷重軸方向と荷重軸垂直方向の発生歪の大きさ比の絶対値が小さくなり、好ましくない。
【0057】
このことから、第2肉厚部21の厚さ寸法X1に対する起歪体11の外径寸法D1は、起歪体11の感度を向上しつつ、荷重軸方向と荷重軸垂直方向の発生歪の大きさ比を1に近づけることができる、4〜8倍程度が適当である。
【0058】
なお、ロッド部17、18の外径寸法D2、起歪体11の軸方向寸法W1および歪検出部15の周縁部のR面取りの半径寸法R1については、荷重軸方向の発生歪と荷重軸垂直方向の歪の大きさ比に与える影響は小さいことが分かった。
【0059】
図9は、上記した構成の荷重検出装置10を、ブレーキペダル30とマスタシリンダのマスタピストン31との間に配置し、ブレーキペダル30に加えられた踏力を荷重検出装置10を介してマスタシリンダに伝達するとともに、ブレーキペダル30に加えられた踏力の大きさを荷重検出装置10によって検出するようにしたものである。
【0060】
図9において、荷重検出装置10のロッド部17、18の外周には、それぞれねじ部17a、18aが形成されている。一方のロッド部17のねじ部17aには、連結部材33の一端が螺着され、この連結部材33の他端に、ブレーキペダル30の連結部30aが連結ピン34によって枢動可能に連結されている。他方のロッド部18のねじ部18aには、連結部材35の一端が螺着され、この連結部材35の他端に、球面軸受36を介してマスタピストン31が連結されている。
【0061】
これにより、ブレーキペダル30に踏力が加えられると、これが連結ピン34、連結部材33および一方のロッド部17を介して起歪体11に伝達される。起歪体11に伝達された踏力は、他方のロッド部18、連結部材35および球面軸受36を介してマスタピストン31に伝達される。
【0062】
これにより、ブレーキペダル30に加えられた踏力がマスタシリンダに伝達されるとともに、その踏力の大きさに応じて荷重検出装置10の起歪体11の歪検出部15に歪が発生され、この歪が歪検出手段23によって検出される。
【0063】
次に、荷重検出装置10を、ブレーキペダル30に加えられた踏力の検出に適用した場合の動作について説明する。
【0064】
ブレーキペダル30に踏力が加えられると、一方のロッド部17を介して起歪体11に踏力に応じた荷重が作用され、この荷重は他方のロッド部18を介してマスタピストン31に伝達される。
【0065】
起歪体11に踏力に応じた荷重が加えられると、その荷重に応じて歪検出部15に歪が発生する。この際、荷重軸方向の第2肉厚部21の肉厚に対して荷重軸垂直方向の第1肉厚部22の肉厚が薄く構成されているので、荷重軸方向より荷重軸垂直方向の剛性が低下して、荷重軸垂直方向への変形が助長され、荷重軸方向と荷重軸垂直方向の発生歪の大きさ比が1に近づくようになる。言い換えれば、図10に示すように、起歪体11の歪検出部15に発生する荷重軸方向の圧縮歪CSの大きさと、荷重軸垂直方向の引張歪TSの大きさの差が小さくなり、起歪体11の感度が高められる。
【0066】
かかる起歪体11の歪検出部15に発生した引張歪TSおよび圧縮歪CSに応じて、歪検出部15に貼付された歪検出素子a1、a2、b1、b2が歪み、歪みに応じて抵抗値が変化する。これら歪抵抗素子a1、a2、b1、b2の抵抗値の変化により、ブリッジ回路BC(図4参照)より、ブレーキペダル30に加えられた踏力に応じた出力電圧が出力される。
【0067】
なお、上記した第1の実施の形態においては、荷重検出装置10を圧縮荷重が作用する部位に設けた例について説明したが、荷重検出装置10を引張荷重が作用する部位に設けることもできる。この場合には、図11に示すように、歪検出部15には、荷重軸の方向に引張歪TSが生起し、荷重軸垂直方向に圧縮歪CSが生起するようになる。
【0068】
図12は本発明の第2の実施の形態を示すもので、上記した第1の実施の形態と異なる点は、起歪体111の外周面を荷重軸X0垂直方向に沿った長円(楕円)形状とし、この起歪体111の軸方向の両端部に真円形状の凹部113、114を形成することにより、凹部113、114の周囲に、荷重軸X0方向に沿って肉厚がX1の第2肉厚部21と、荷重軸X0垂直方向に沿って肉厚がY1(ただし、Y1<X1)の第1肉厚部22を形成したものである。なお、その他の点は、第1の実施の形態とほぼ同様であるので、第1の実施の形態と同一の構成部品については同一の参照番号を付し、説明を省略する。
【0069】
かかる第2の実施の形態においても、第1の実施の形態で述べたと同様な作用、効果を奏するようになり、荷重軸垂直方向の第2肉厚部22の断面積に対する荷重軸方向の第1肉厚部21の断面積を、1.5〜2.5倍、好ましくは2倍程度とすることにより、荷重軸方向の歪の大きさと荷重軸垂直方向の歪の大きさの差を小さくできるようになる。
【0070】
図13ないし図15は、歪検出部15に貼付される歪検出手段23の第1〜第3変形例を示すものである。なお、図13ないし図15において、(a)、(b)は歪検出手段23を設けた起歪体11の異なる断面図を示し、(c)は歪検出手段23を構成する歪検出素子をブリッジ回路に結線した検出回路図を示している。
【0071】
図13に示す第1変形例は、起歪体11の歪検出部15の中央部の片面にのみ、引張歪を検出する歪検出素子a1と、圧縮歪を検出する歪検出素子b1を、それぞれ1個ずつ貼付したものであり、これら2個の歪検出素子a1、b1と2個の固定抵抗rとによってブリッジ回路BCを構成したものである。
【0072】
図14に示す第2変形例は、起歪体11の歪検出部15の片面の中央部に、引張歪を検出する2個の歪検出素子a1、c1と、圧縮歪を検出する2個の歪検出素子b1、d1をそれぞれ貼付し、これら4個の歪検出素子a1、b1、c1、d1によってブリッジ回路BCを構成したものである。
【0073】
上記した第1および第2変形例に記載のものは、歪検出部15の平面の法線方向の偏荷重の影響を受けない、もしくは無視できる部位に荷重検出装置10を適用した場合に有効であり、歪検出手段23を片側だけに配置した簡単な構成で、起歪体11に生じた歪を高精度に検出することができる。
【0074】
図15に示す第3変形例は、起歪体11の歪検出部15の片面の中央部に、引張歪を検出する2個の歪検出素子a1、c1と、圧縮歪を検出する2個の歪検出素子b1、d1をそれぞれ貼付し、これら4個の歪検出素子a1〜d1によって第1ブリッジ回路BC1を構成している。また、起歪体11の歪検出部15の反対側の面の中央部に、引張歪を検出する2個の歪検出素子a2、c2と、圧縮歪を検出する2個の歪検出素子b2、d2をそれぞれ貼付し、これら4個の歪検出素子a2〜d2によって第2ブリッジ回路BC2を構成している。そして、第1および第2のブリッジ回路BC1、BC2の各出力を増幅器27、29を介して加算回路28の入力端子にそれぞれ入力するようになっている。
【0075】
このように、歪検出部15の両面に貼付した計8個の歪検出素子によって、第1および第2ブリッジ回路BC1、BC2を構成することにより、第1の実施の形態で述べたもの(図4参照)に比して、検出感度を倍増することができ、起歪体11に生じた歪を高感度に検出できるとともに、偏荷重の影響を受けなくすることができる。
【0076】
上記した実施の形態によれば、荷重が加えられる起歪体11の軸方向(荷重軸方向と直交する方向)の両端部より、起歪体11の外面形状と異なる形状の凹部13,14を形成したことにより、荷重軸方向およびそれに垂直な荷重軸垂直方向にそれぞれ歪む薄肉平面状の歪検出部15を形成するとともに、凹部13、14の周囲に荷重軸方向に平行な方向に厚さを有する第1肉厚部22と、荷重軸方向に垂直な方向でかつ歪検出部の平面と平行な方向に厚さを有し第1肉厚部22の厚さよりも厚くした第2肉厚部21を形成し、歪検出部15に発生する圧縮歪および引張歪を歪検出素子からなる歪検出手段23によって検出するようにした。
【0077】
これにより、荷重軸方向と荷重軸垂直方向の肉厚部21、22を適切に設定することにより、歪検出部15に発生する荷重軸方向と荷重軸垂直方向の発生歪の大きさを近づけることができるように、荷重軸方向の剛性と荷重軸垂直方向の剛性とを異ならせることができる。従って、従来のように歪検出部15に穴などを開ける必要がないため、局所的な剛性低下部をなくすることができ、高剛性の起歪体11によって荷重を高感度に検出することができる。しかも、穴の形成が不要となるため、起歪体11の加工コストを低減することができる。
【0078】
また、上記した実施の形態によれば、起歪体11の外面形状および凹部13,14の内面形状の一方を真円形状とし、他方を長円形状とすることにより、第1肉厚部22の厚さよりも第2肉厚部21の厚さを厚くしたので、凹部13,14の周囲に第1肉厚部22の厚さよりも第2肉厚部21の厚さを厚くした肉厚部を容易に形成することができる。
【0079】
上記した実施の形態においては、荷重検出装置10をブレーキペダル30に加えられる踏力を検出するものに適用した例について述べたが、本発明は、自動車のサスペンション荷重を検出するもの、車両シートに着座する体重を検出するもの、クレーン車等に作用する荷重検出にも適用でき、また、自動車以外でも、ロードセルとして広範な荷重の検出に利用できるものである。
【0080】
また、上記した実施の形態においては、起歪体11(111)の外周面および凹部13、14(113、114)のいずれか一方を、真円形状とし、他方を長円形状とすることによって、凹部13、14の周囲の肉厚部を、荷重軸の方向よりも荷重軸と垂直な方向を薄くした例について述べたが、起歪体11(111)の外面形状および凹部13、14(113、114)の内面形状は、必ずしも真円形状および長円形状の組み合わせによって、異なる厚みの肉厚部21、22を構成するものに限定されるものではない。
【0081】
さらに上記した実施の形態においては、起歪体11の軸方向の両端部に同一深さの凹部13、14を形成した例について述べたが、凹部13、14の深さは必ずしも同一でなくてもよい。
【0082】
次に本発明の第3の実施の形態を図面に基づいて説明する。第3の実施の形態における荷重検出装置100は、図16〜図18に示すように、外周面が真円をなす円筒状の起歪体211を有しており、起歪体211の軸方向(荷重が作用する荷重軸X0方向と直交する方向)の両側には、真円状の第1凹部201が外周面と同心的に設けられ、これによって、起歪体211の軸方向の中央部には板厚t1の第1平面部202が形成され、起歪体211の両端部には肉厚dの円筒部205が形成されている。両第1凹部201の中心部には、長円形もしくは長方形の第2凹部203がそれぞれ設けられ、これによって、第1平面部202の中央部に第1平面部202の板厚t1より薄い板厚t2の第2平面部204を形成している。
【0083】
このように、起歪体211に、真円状の第1凹部201と長円形もしくは長方形の第2凹部203を設けたことにより、凹部周辺の第1平面部202の板厚t1より、凹部中央の第2平面部204の板厚t2を薄くするとともに、凹部中央の第2平面部204の荷重軸方向の長さL2を、それに垂直な荷重軸垂直方向の長さL1より長くしている。凹部中央の第2平面部204により、長円形(長方形)の薄肉平面からなる歪検出部215が、荷重軸方向および荷重軸垂直方向に平行に構成されている。
【0084】
起歪体211の荷重軸方向の両端部には、ロッド部17、18が溶接やねじ、圧入などによって一体的に連結されている。ロッド部17、18は、その中心が、起歪体211の中心に一致し、かつ起歪体211の軸方向中央部(第2平面部204)に一致する位置に配置されている。これにより、ロッド部17、18の一方に、例えば圧縮荷重が入力されると、図19に示すように、入力された圧縮荷重に応じて歪検出部215(第2平面部204)には、荷重軸方向に圧縮歪が、荷重軸垂直方向に引張歪が生起される。
【0085】
第2平面部204(歪検出部215)の片面には、歪検出部215に生ずる圧縮歪および引張歪を検出する複数の歪検出素子(歪ゲージ)a1、a2、b1、b2からなる歪検出手段223が荷重軸X0に対称に設けられている。荷重軸方向の圧縮歪を検出する歪検出素子a1、a2と、荷重軸垂直方向の引張歪を検出する歪検出素子b1、b2によって、第1の実施の形態の図4で述べたと同様なブリッジ回路BCが構成される。これにより、歪検出部215に圧縮歪と引張歪が生ずると、歪検出素子a1、a2、b1、b2は圧縮歪および引張歪に応じてそれぞれ抵抗値が変化し、その抵抗値変化に応じた出力電圧が増幅器27(図4参照)より出力される。
【0086】
なお、歪検出手段223の配置は上記したように、第2平面部204(歪検出部215)の片面にのみ配置するものに限定するものではなく、第2平面部204の両面に配置してもよく、また、長円形もしくは長方形の第2凹部203は、第1凹部201の片側にのみ設けるようにしてもよい。歪検出手段223を第2平面部204(歪検出部215)の両面に配置し、第2平面部204の両面で検出した歪を加算することにより、出力を倍増することができるとともに、第2平面部204の法線方向に荷重軸から偏った偏荷重が生ずる場合においても、偏荷重の影響を小さくすることができる。
【0087】
また、歪検出素子a1〜a4の貼付位置は、必ずしも荷重軸X0に対して対称に設ける必要はないが、荷重軸X0に対称に設けることで、入力される荷重が、凹部中央の第2平面部204を含む面内で荷重軸X0に対し偏った偏荷重となった場合でも、偏荷重による検出誤差の発生を抑制できる。
【0088】
すなわち、入力される荷重が、凹部中央の第2平面部204を含む面内で荷重軸X0に対し偏った偏荷重となると、偏った側の歪が大きくなり、反対側の歪は小さくなるが、ブリッジ回路BCにより偏荷重の影響はキャンセルされるため、偏荷重による検出誤差を排除できる。
【0089】
次に、起歪体211の各部の形状寸法を変化させた場合の検出感度の影響について説明する。なお、以下においては、図17、図18に示すように、外径寸法D1=30mm、軸方向寸法W=18mm、円筒部205の肉厚d=3mm、凹部周辺の第1平面部202の板厚t1=3mm、ロッド部17、18の外径D2=10mmからなる起歪体211を製作し、凹部中央の第2平面部204の荷重軸垂直方向の長さL1と、荷重軸方向の長さL2との長さ比(L1/L2)、ならびに凹部中央の第2平面部204の板厚t2を変化させた場合に、凹部中央の第2平面部204で発生する歪の大きさ比への影響について検証した。
【0090】
凹部中央の第2平面部204の荷重軸方向の剛性は、主に凹部中央の第2平面部204の荷重軸垂直方向の長さL1によって決まり、荷重軸垂直方向の剛性は、主に凹部中央の第2平面部204の荷重軸方向の長さL2によって決まる。ここで、長さL1より長さL2を長くすることで、荷重軸方向の剛性より荷重軸垂直方向の剛性のほうが低くなり、荷重軸垂直方向への変形が助長される。
【0091】
図20に示すグラフA31、A32、A33は、凹部中央の第2平面部204の板厚t2を、第1平面部202の板厚t1に対して、それぞれ1/12倍(0.25mm)、1/6倍(0.5mm)、1/3倍(1mm)に変化させた場合の、第2平面部204の長さ比(L1/L2)に対する第2平面部204の荷重軸方向の発生歪と荷重軸垂直方向の発生歪の大きさ比を示したものである。
【0092】
図20に示すように、第2平面部204の長さ比(L1/L2)を1より小さくしていくと、荷重軸方向の発生歪の大きさと荷重軸垂直方向の発生歪の大きさの差が徐々に小さくなっていき、ついには逆転する傾向となる。荷重軸方向と荷重軸垂直方向の発生歪の大きさ比が1のとき(|荷重軸方向発生歪|=|荷重軸垂直方向発生歪|)、荷重検出装置100の感度は最大となるので、荷重軸方向と荷重軸垂直方向の発生歪の大きさ比が1となる形状に起歪体211を構成することにより、高感度な荷重検出装置100を実現できる。
【0093】
なお、凹部中央の第2平面部204の板厚t2の値に係らず、荷重軸方向と荷重軸垂直方向の発生歪の大きさ比を1に近づけることが確認できた。この場合、凹部中央の第2平面部204の長さ比(L1/L2)は、0.4〜07が好適である。また、凹部板厚が凹部周辺と凹部中央に係らず0.5mmで一定とした場合、荷重軸方向と荷重軸垂直方向の発生歪の大きさ比は約0.81であったことが確認できた。
【0094】
上記したように、凹部周辺の第1平面部202の板厚t1より凹部中央の第2平面部204の板厚t2を薄く形成したことにより、ロッド17(18)に荷重が入力されると、凹部周辺と凹部中央で板厚が一定の場合に比べ、凹部中央の第2平面部204へ応力が集中する。凹部周辺の第1平面部202の板厚t1と凹部中央の第2平面部204の板厚t2との板厚比を調整することで、歪検出手段223が配置された凹部中央への応力集中度合いを容易に調整することができる。また、歪検出部223が起歪体211における最弱部となるよう設計することも容易になるため、応力集中部と歪検出部223での歪量の差をなくす(応力集中部での歪量=歪検出部223での歪量)ことができ、相対的な感度低下を避けることができる。
【0095】
このように、第3の実施の形態においては、凹部中央に、凹部周辺の板厚(t1)よりも薄い板厚(t2)の平面部(第2平面部)204を設け、この平面部204の荷重軸方向長さ(L2)を荷重軸垂直方向長さ(L1)より長くし、凹部中央の平面部204を歪検出部215として、荷重軸方向と荷重軸垂直方向の歪を検出できるよう歪検出手段223を設けたものである。
【0096】
第3の実施の形態によれば、歪検出部215となる凹部中央の第2平面部204の長さ比(L1/L2)を適切に設定することにより、歪検出部215に発生する荷重軸方向の発生歪と荷重軸垂直方向の発生歪の大きさを近づけるように、歪検出部223の荷重軸方向の剛性と荷重軸垂直方向の剛性とを異ならせることができるので、第1の実施の形態で述べたと同様に、高剛性の起歪体211によって起歪体211に加えられた荷重を高感度に検出することができる。
【0097】
しかも、第3の実施の形態によれば、歪検出部215を凹部201の中央に集めることができるので、起歪体211および起歪体周囲の温度勾配による検出誤差の影響を受けにくい利点もある。
【0098】
図21は起歪体211に入力される荷重が引張となった場合を示すもので、凹部中央の第2平面部204には、荷重軸方向に引張歪が、荷重軸垂直方向に圧縮歪が生じ、歪検出部215に設けた歪検出手段223(図16参照)により、引張荷重を高感度に検出できる。
【0099】
また、図22に示すように、入力される荷重が第2平面部204を含む面内で、対象軸(荷重軸)から偏った偏荷重となると、偏った側の歪が大きくなり、反対側の歪は小さくなるが、凹部中央の歪はほとんど変化しないため、偏荷重による検出誤差はほとんど生じない。
【0100】
さらに、図23に示すように、凹部中央の第2平面部204の法線方向に対象軸(荷重軸)から偏った偏荷重が生ずる場合は、第2平面部204の両面で歪検出を行うことで、偏荷重の影響をキャンセルできる。
【0101】
起歪体211が荷重軸に対して対称に形成され、円筒部205の軸方向の長さが十分ある場合には、凹部中央の第2平面部204はほぼ中立線に相当するので、偏荷重により生ずる第2平面部204の曲げモーメントは非常に小さくなり、第2平面部204の片面で歪を検出するようにしても、偏荷重による誤差をほとんど生じない。従って、第2平面部204の法線方向の偏荷重がほとんど生じない場合、第2平面部204の片面での歪を検出するようにしても問題ない。
【0102】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記した実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能であることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0103】
本発明に係る荷重検出装置は、自動車のブレーキペダルに加えられた踏力等を検出するものに用いるのに適している。
【符号の説明】
【0104】
10、100…荷重検出装置、11、111、211…起歪体、13、14、201、203…凹部、15、215…歪検出部、17、18…ロッド部、21…第2肉厚部、22…第1肉厚部、23、223…歪検出手段、30…ブレーキペダル、31…マスタピストン、202、204…平面部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷重が作用する荷重軸方向に沿って配置された起歪体を有する荷重検出装置であって、
前記起歪体は、
前記荷重軸方向の剛性と該荷重軸方向に垂直な荷重軸垂直方向の剛性とが異なるように、前記起歪体に前記荷重軸方向と直交する方向の端部より凹部を形成することにより、該凹部の底部に前記荷重軸方向および前記荷重軸垂直方向に平行に形成され、前記荷重軸方向に加えられる荷重によって前記荷重軸方向および前記荷重軸垂直方向にそれぞれ歪む平面状の歪検出部と、
前記歪検出部の少なくとも片面に配置され前記歪検出部に発生する圧縮歪および引張歪を検出する歪検出素子からなる歪検出手段と、
を有する荷重検出装置。
【請求項2】
荷重が作用する荷重軸方向に沿って配置された起歪体を有する荷重検出装置であって、
前記起歪体は、
前記起歪体に前記荷重軸方向と直交する方向の両端部より前記起歪体の外面形状と異なる内面形状の凹部を形成することにより、これら凹部の底部に前記荷重軸方向およびそれに垂直な荷重軸垂直方向に平行に形成され、前記荷重軸方向に加えられる荷重によって前記荷重軸方向および前記荷重軸垂直方向にそれぞれ歪む薄肉平面状の歪検出部と、
前記凹部の周囲に設けられ前記荷重軸方向に平行な方向に厚さを有する第1肉厚部と、前記荷重軸方向に垂直な方向でかつ前記歪検出部の平面と平行な方向に厚さを有し前記第1肉厚部の厚さよりも厚くした第2肉厚部と、
前記歪検出部の少なくとも片面に配置され前記歪検出部に発生する圧縮歪および引張歪を検出する歪検出素子からなる歪検出手段と、
を有する荷重検出装置。
【請求項3】
請求項2において、前記第1肉厚部の断面積と前記第2肉厚部の断面積の比を、1:1.5〜2.5とした荷重検出装置。
【請求項4】
請求項3において、前記第2肉厚部の厚さ寸法に対する歪検出部の板厚の寸法を、1/10〜1/5倍とした荷重検出装置。
【請求項5】
請求項3において、前記第2肉厚部の厚さ寸法に対する前記起歪体の外径の寸法を、4〜8倍とした荷重検出装置。
【請求項6】
請求項2ないし請求項5のいずれか1項において、前記起歪体の外面形状を真円形状とし、前記凹部の内面形状を長円形状とすることにより、前記第2肉厚部の厚さよりも前記第1肉厚部の厚さを薄くした荷重検出装置。
【請求項7】
請求項2ないし請求項5のいずれか1項において、前記起歪体の外面形状を長円形状とし、前記凹部の内面形状を真円形状とすることにより、前記第2肉厚部の厚さよりも前記第1肉厚部の厚さを薄くしたことを特徴とする荷重検出装置。
【請求項8】
荷重が作用する荷重軸方向に沿って配置された起歪体を有する荷重検出装置であって、
前記起歪体は、
凹部周辺の平面部の板厚より凹部中央の平面部の板厚が薄く、凹部中央の平面部の荷重軸方向長さが荷重軸垂直方向長さより長くなるように、前記起歪体に前記荷重軸方向と直交する方向に凹部を形成することにより、前記凹部中央に前記荷重軸方向および前記荷重軸垂直方向に平行に形成され、前記荷重軸方向に加えられる荷重によって前記荷重軸方向および前記荷重軸垂直方向にそれぞれ歪む歪検出部と、
前記歪検出部の少なくとも片面に配置され前記歪検出部に発生する圧縮歪および引張歪を検出する歪検出素子からなる歪検出手段と、
を有する荷重検出装置。
【請求項9】
請求項8において、前記起歪体の外面形状を真円形状とし、前記起歪体に前記荷重軸方向と直交する方向の両端部より真円状の第1凹部を形成し、該第1凹部の中央に長方形もしくは長円形の第2凹部を形成することにより、前記荷重軸方向の剛性より前記荷重軸垂直方向の剛性を低下させた平面部を形成した荷重検出装置。
【請求項10】
請求項9において、前記平面部の板厚を、凹部周辺の平面部の板厚の1/12〜1/3倍とした荷重検出装置。
【請求項11】
請求項1ないし請求項10のいずれか1項において、前記歪検出手段を前記歪検出部の中央部の両側の面に配置したことを特徴とする荷重検出装置。
【請求項1】
荷重が作用する荷重軸方向に沿って配置された起歪体を有する荷重検出装置であって、
前記起歪体は、
前記荷重軸方向の剛性と該荷重軸方向に垂直な荷重軸垂直方向の剛性とが異なるように、前記起歪体に前記荷重軸方向と直交する方向の端部より凹部を形成することにより、該凹部の底部に前記荷重軸方向および前記荷重軸垂直方向に平行に形成され、前記荷重軸方向に加えられる荷重によって前記荷重軸方向および前記荷重軸垂直方向にそれぞれ歪む平面状の歪検出部と、
前記歪検出部の少なくとも片面に配置され前記歪検出部に発生する圧縮歪および引張歪を検出する歪検出素子からなる歪検出手段と、
を有する荷重検出装置。
【請求項2】
荷重が作用する荷重軸方向に沿って配置された起歪体を有する荷重検出装置であって、
前記起歪体は、
前記起歪体に前記荷重軸方向と直交する方向の両端部より前記起歪体の外面形状と異なる内面形状の凹部を形成することにより、これら凹部の底部に前記荷重軸方向およびそれに垂直な荷重軸垂直方向に平行に形成され、前記荷重軸方向に加えられる荷重によって前記荷重軸方向および前記荷重軸垂直方向にそれぞれ歪む薄肉平面状の歪検出部と、
前記凹部の周囲に設けられ前記荷重軸方向に平行な方向に厚さを有する第1肉厚部と、前記荷重軸方向に垂直な方向でかつ前記歪検出部の平面と平行な方向に厚さを有し前記第1肉厚部の厚さよりも厚くした第2肉厚部と、
前記歪検出部の少なくとも片面に配置され前記歪検出部に発生する圧縮歪および引張歪を検出する歪検出素子からなる歪検出手段と、
を有する荷重検出装置。
【請求項3】
請求項2において、前記第1肉厚部の断面積と前記第2肉厚部の断面積の比を、1:1.5〜2.5とした荷重検出装置。
【請求項4】
請求項3において、前記第2肉厚部の厚さ寸法に対する歪検出部の板厚の寸法を、1/10〜1/5倍とした荷重検出装置。
【請求項5】
請求項3において、前記第2肉厚部の厚さ寸法に対する前記起歪体の外径の寸法を、4〜8倍とした荷重検出装置。
【請求項6】
請求項2ないし請求項5のいずれか1項において、前記起歪体の外面形状を真円形状とし、前記凹部の内面形状を長円形状とすることにより、前記第2肉厚部の厚さよりも前記第1肉厚部の厚さを薄くした荷重検出装置。
【請求項7】
請求項2ないし請求項5のいずれか1項において、前記起歪体の外面形状を長円形状とし、前記凹部の内面形状を真円形状とすることにより、前記第2肉厚部の厚さよりも前記第1肉厚部の厚さを薄くしたことを特徴とする荷重検出装置。
【請求項8】
荷重が作用する荷重軸方向に沿って配置された起歪体を有する荷重検出装置であって、
前記起歪体は、
凹部周辺の平面部の板厚より凹部中央の平面部の板厚が薄く、凹部中央の平面部の荷重軸方向長さが荷重軸垂直方向長さより長くなるように、前記起歪体に前記荷重軸方向と直交する方向に凹部を形成することにより、前記凹部中央に前記荷重軸方向および前記荷重軸垂直方向に平行に形成され、前記荷重軸方向に加えられる荷重によって前記荷重軸方向および前記荷重軸垂直方向にそれぞれ歪む歪検出部と、
前記歪検出部の少なくとも片面に配置され前記歪検出部に発生する圧縮歪および引張歪を検出する歪検出素子からなる歪検出手段と、
を有する荷重検出装置。
【請求項9】
請求項8において、前記起歪体の外面形状を真円形状とし、前記起歪体に前記荷重軸方向と直交する方向の両端部より真円状の第1凹部を形成し、該第1凹部の中央に長方形もしくは長円形の第2凹部を形成することにより、前記荷重軸方向の剛性より前記荷重軸垂直方向の剛性を低下させた平面部を形成した荷重検出装置。
【請求項10】
請求項9において、前記平面部の板厚を、凹部周辺の平面部の板厚の1/12〜1/3倍とした荷重検出装置。
【請求項11】
請求項1ないし請求項10のいずれか1項において、前記歪検出手段を前記歪検出部の中央部の両側の面に配置したことを特徴とする荷重検出装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【公開番号】特開2012−73244(P2012−73244A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−188881(P2011−188881)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】
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