説明

荷電粒子線装置

【課題】外部音に起因する荷電粒子線の照射部位の揺れを低減する。
【解決手段】本発明に係る荷電粒子線装置は、荷電粒子源および試料ステージを包囲するカバーと、カバー内面の少なくとも一部の位置または配置角度を変更する機構を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷電粒子線装置に関する。
【背景技術】
【0002】
走査電子顕微鏡(SEM)、透過電子顕微鏡(TEM)、集束イオンビーム(FIB)装置などの荷電粒子線装置は、試料を観察する際の観察像やイオンビームの高分解能化が進んでいる。そのため、床振動や環境騒音による観察像の揺れを低減することが重要な課題となっている。
【0003】
従来は、床振動に対して除振マウントやアクティブ除振ダンパを設けることにより、筺体に作用する振動を低減している。また、環境騒音に対しては、荷電粒子線装置を包囲して覆うようにカバーを設置し、筺体に作用する音圧を低減している。
【0004】
下記特許文献1では、荷電粒子線装置を内側カバーと外側カバーの2重カバーで覆うことにより環境騒音を低減し、筺体に作用する音圧の低減を図っている。
【0005】
下記特許文献2では、荷電粒子線装置をカバーで覆い、カバー内面に防塵繊維で包囲された吸音材または制振材を取り付けることにより、環境騒音を吸音し、筺体に作用する音圧の低減を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−329874号公報
【特許文献2】特開2006−79870号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1〜2では、2重カバーやカバーへの吸音材取付によって環境騒音の低減を図っているが、カバーを設置すると、一般にカバー内部でカバー寸法に起因する音響的なモードが発生する。
【0008】
音響モードを低減するためには、一般的に吸音材が用いられるが、発生する音響モードの周波数が低い場合には、吸音材では音響モードを低減しきれずに音響モードが残ってしまう場合がある。そのため、カバーや吸音材で吸遮音しているにも関わらず、カバー内部で特定の周波数の音圧が下がらず、その周波数において荷電粒子線装置本体が加振されて観察像が揺れる場合があった。
【0009】
また、荷電粒子線装置本体が音響モードの音圧振幅の腹部分(振幅ピーク部分)に相当する位置に設置されており、さらにその周波数近傍に荷電粒子線装置本体の固有振動周波数が存在している場合には、共振現象によってさらに観察像の揺れが増大する可能性があった。
【0010】
上記のような揺れは、観察像を取得する電子顕微鏡のみならず、荷電粒子線の照射位置を微細に調整する必要のある荷電粒子線装置に共通する課題である。
【0011】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、外部音に起因する荷電粒子線の照射部位の揺れを低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る荷電粒子線装置は、荷電粒子源および試料ステージを包囲するカバーと、カバー内面の少なくとも一部の位置または配置角度を変更する機構を備えている。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る荷電粒子線装置によれば、カバー内面の位置または配置角度を変更することにより、音響モードの要因となっている、カバー内面間の配置関係を変更する。これにより、荷電粒子線の照射位置に影響を及ぼす音響モードを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施の形態1に係る荷電粒子線装置100の側断面図である。
【図2】荷電粒子線装置100がクリーンルーム等に設置された場合において、環境騒音によりカバー7内に音響モード13が生じている様子を示す。
【図3】図1に示す右側の移動カバー8の側断面図である。
【図4】実施の形態2に係る移動カバー8の側断面図である。
【図5】実施の形態3に係る移動カバー8の側断面図である。
【図6】実施の形態4に係る移動カバー8の側断面図である。
【図7】実施の形態5に係る移動カバー8の側断面図である。
【図8】実施の形態6に係る移動カバー8および周辺部材等の側断面図である。
【図9】実施の形態7に係る移動カバー8および周辺部材等の側断面図である。
【図10】実施の形態8に係る移動カバー8および周辺部材等の側断面図である。
【図11】移動カバー8がカバー7の内壁面に占める面積と、移動カバー8を移動させることによる特定周波数の音圧低減率との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<実施の形態1>
図1は、本発明の実施の形態1に係る荷電粒子線装置100の側断面図である。荷電粒子線装置100は、荷電粒子源1、カラム2、試料室3、防振台6、カバー7を備える。カラム2は試料室3の上部に取り付けられ、内部には荷電粒子源1が配置されている。試料室3の内部には、試料5を載置する試料ステージ4が配置されている。試料室3は、防振台6によって架台10に固定されている。カバー7は、荷電粒子線装置100を包囲して覆うように設置され、外部音をカラム2、試料室3などから遮っている。
【0016】
カバー7の内面の一部は、移動カバー8になっている。移動カバー8は、移動カバー8の対向面間の距離を変更するように、移動させることができる機構を有する。移動カバー8は、カバー7の内面に固定されているガイド11と固定部材12によって、カバー7に取り付けられている。カバー7と移動カバー8の間の隙間は、カバー7に固定された補足カバー9によって埋められている。
【0017】
以上、荷電粒子線装置100の構成について説明した。次に、移動カバー8によって音響モードを低減する原理について説明する。
【0018】
一般に、荷電粒子線装置は、荷電粒子源から発生する荷電粒子線を試料に照射し、電子顕微鏡の場合は試料から生じる2次電子の強度に基づき観察像を取得し、集束イオンビーム装置の場合は試料をイオンビームによって加工等する。
【0019】
荷電粒子線は、カラム2上部の荷電粒子源1から出力され、カラム2の内部を通過して、真空に保たれた試料室3内の試料ステージ4上に固定された試料5に照射される。電子顕微鏡の場合、試料5から検出された2次電子の強度は、照射位置の座標とその座標における2次電子強度に対応した濃淡として画像化される。
【0020】
音圧などの外乱振動により荷電粒子線装置100が加振されると、カラム2と試料5の相対運動により観察像が揺れる現象が生じる。そのため、観察像の高分解能化を図るには、阻害要因である外乱振動を抑制する必要がある。これは、集束イオンビーム装置のビーム照射位置を微細制御する場合においても同様である。以下では、電子顕微鏡を例にとって説明するが、本発明の原理はその他の荷電粒子装置にも適用することができる。
【0021】
図2は、荷電粒子線装置100がクリーンルーム等に設置された場合において、環境騒音14によりカバー7内に音響モード13が生じている様子を示す。図2に示すように、環境騒音14の一部はカバーによって遮断されるが、一部はカバー7内に透過する。透過音15によって形成されるカバー7内の音場には、カバー7の寸法に応じて音響モード13が発生する。
【0022】
音響モード13の音圧の腹に相当する部分(振幅ピーク部分)において、音響モード13の音圧が最も高くなる。この位置に荷電粒子線装置100本体、例えばカラム2や試料室3が配置されていると、音圧の加振力に応じて観察像の揺れも大きくなる。また、荷電粒子線装置100本体の固有振動周波数が音響モード13の周波数と一致すると、共振現象によりさらに振動が増大する可能性がある。
【0023】
音響モード13は、カバー7の対向するカバー面が平行である場合に共鳴する。音響モード13の音圧が高くなる位置および周波数は、カバー平行面間の距離によって定まる。一般に、カバー7内の音響モード13および荷電粒子線装置100の固有振動モードは複数存在する。そのため、複数の周波数において共振現象による観察像の揺れが生じる可能性がある。カバー7内の音響モード13による音圧の大きさは環境騒音によって変化するため、観察像の揺れの原因となる周波数もそれに合わせて変化する。
【0024】
音響モード13は、カバー7の平行面による共鳴が重なり合って形成される。そこで、観察像の揺れの要因となる共鳴に対して支配的な平行面間の距離を変えて共鳴周波数をずらし、荷電粒子線装置100と音響モード13が共振する現象を避ける。これにより、観察像の揺れを低減することができる。
【0025】
荷電粒子線装置100を設置している環境の音響特性が変化して場合も、同様に観察像の揺れの要因となる共鳴周波数を荷電粒子線装置100の固有振動周波数からずらし、荷電粒子線装置100と音響モード13が共振する現象を避ける。これにより、観察像の揺れを低減することができる。
【0026】
また、音響モード13の腹部分の位置は、カバー7の平行面間の距離、平行面の位置によって定まる。したがって、平行面間の距離や平行面の位置を変えることにより、音響モード13の腹部分の位置を荷電粒子線装置100本体、例えばカラム2や試料室3の位置からずらすことができる。また、音響モード13の音圧が高くなる部分を荷電粒子線装置100本体からずらすこともできる。
【0027】
カバー7の平行面間の距離を変えるためには、移動カバー8を移動させ、カバー7内部の対向する平行面間の距離を変更すればよい。移動カバー8は、カバー7の対向する面の双方に設けてもよいし、一方のみに設けてもよい。さらには、3つ以上の移動カバー8を設けてもよい。
【0028】
図3は、図1に示す右側の移動カバー8の側断面図である。音響モード13の周波数や腹部分の位置に応じて、移動カバー8を、カバー7の内面に固定されているガイド11に沿って移動させ、固定部材12によって固定する。環境騒音がカバー7と移動カバー8の間からカバー7内に進入することを防ぐため、カバー7と移動カバー8の隙間を埋めるようにして補足カバー9が設けられている。
【0029】
移動カバー8を移動させるパターンとして、以下の(パターン1)〜(パターン5)が考えられる。
【0030】
(移動パターン1)2面を近付ける
対向する移動カバー8の双方を、荷電粒子線装置100本体、例えば試料室3、荷電粒子源1、カラム2などに近づける向きに移動させる。これにより、移動カバー8間の距離が狭まり、カバー7内部の音響モード13の周波数が上がり、荷電粒子線装置100の固有振動周波数からずらすことができる。
【0031】
(移動パターン2)2面を遠ざける
対向する移動カバー8の双方を、荷電粒子線装置100本体から遠ざける向きに移動させる。これにより、移動カバー8間の距離が広がり、カバー7内部の音響モード13の周波数が下がり、荷電粒子線装置100の固有振動周波数からずらすことができる。
【0032】
(移動パターン3)2面を同じ向きに移動させる
対向する移動カバー8の双方を、同じ向き、例えば図1の左向きに移動させる。これにより、音響モード13の腹部分の位置を、荷電粒子線装置100本体からずらすことができる。また、2つの移動カバー8の移動量を変えることにより、移動カバー8間の距離が変化し、音響モード13の周波数を変えることもできる。
【0033】
(移動パターン4)1面を近付ける
いずれか1の移動カバー8を、荷電粒子線装置100に近づける向きに移動させる。これにより、音響モード13の腹部分の位置を荷電粒子線装置100本体からずらし、さらに音響モード13の周波数を変えることもできる。
【0034】
(移動パターン5)1面を遠ざける
いずれか1の移動カバー8を、荷電粒子線装置100から遠ざける向きに移動させる。これにより、音響モード13の腹部分の位置を荷電粒子線装置100本体からずらし、さらに音響モード13の周波数を変えることもできる。
【0035】
以上のように、本実施の形態1によれば、移動カバー8の位置を変更することにより、音響モード13の周波数を変更し、荷電粒子線装置100本体と音響モード13の共振現象を回避することができる。また、音響モード13の腹部分の位置を荷電粒子線装置100本体の位置からずらすことができる。これにより、音圧に起因する観察像の揺れを低減することができる。
【0036】
<実施の形態2>
図4は、本発明の実施の形態2に係る移動カバー8の側断面図である。本実施の形態2において、移動カバー8は、カバー7に固定されたスタッド16に2つずつ取り付けられているナット17に両面を挟まれて取り付けられている。ナット17を回転させると、ナット17に挟まれている移動カバー8をスタッド16に沿って移動させることができる。補足カバー9は、カバー7と移動カバー8の隙間を埋めるようにしてカバー7に固定されている。
【0037】
<実施の形態3>
図5は、本発明の実施の形態3に係る移動カバー8の側断面図である。本実施の形態3において、ガイドローラ19は、カバー7に固定されたガイドレール18上に取り付けられている。
【0038】
移動カバー8は、ガイドローラ19に固定されているため、ガイドローラ19とともにガイドレール18に沿って移動することができる。ガイドレール18、ガイドローラ19、移動カバー8は、固定部材20によって固定される。補足カバー9は、カバー7と移動カバー8の隙間を埋めるようにしてカバー7に固定されている。
【0039】
<実施の形態4>
図6は、本発明の実施の形態4に係る移動カバー8の側断面図である。本実施の形態4において、移動カバー8は回転支持部材21を介してカバー7に回転自在に取り付けられている。補足カバー9は、カバー7と移動カバー8の隙間を埋めるようにしてカバー7に固定されている。
【0040】
本実施の形態4によれば、移動カバー8を回転させることにより、対向する移動カバー8間の平行面の配置関係を変更し、さらには移動カバー8間の距離を変更し、音響モード13の周波数を変更することができる。また、回転によって移動カバー8の位置が変わるので、音響モード13の腹部分の位置を荷電粒子線装置100本体からずらすことができる。
【0041】
<実施の形態5>
図7は、本発明の実施の形態5に係る移動カバー8の側断面図である。本実施の形態5では、実施の形態1〜4とは異なり、移動カバー8の外側にもカバー7が配置され、2重カバーを構成している。これにより、カバー7の内側に環境騒音が進入することを確実に防止できる。なお、本実施の形態5において、移動カバー8を移動させる機構として、実施の形態1〜4で説明したいずれの機構を用いることもできる。
【0042】
<実施の形態6>
図8は、本発明の実施の形態6に係る移動カバー8および周辺部材等の側断面図である。移動カバー8の一端はガイドローラ19に固定されている。ガイドローラ19はガイドレール18に取り付けられている。ガイドレール18はカバー7に固定されている。移動カバー8の他端は送りナット23に固定されている。送りナット23は送りネジ24に取り付けられている。補足カバー9は、カバー7と移動カバー8の隙間を埋めるようにしてカバー7に固定されている。
【0043】
モータ22は、支持部品25を介してカバー7に固定されている。モータ22を駆動することにより、送りナット23が送りネジ24に沿って目的位置まで移動し、移動カバー8を自動的に移動させることができる。
【0044】
本実施の形態6において、移動カバー8を移動させる機構は、必ずしも図7に示したものに限られるものではなく、その他の任意の機構を採用することができる。また、移動カバー8を移動させる機構を駆動する駆動装置として、モータ22以外の手段を採用することもできる。
【0045】
以上のように、本実施の形態6によれば、モータ22を駆動することにより、移動カバー8の位置や配置角度を手作業で調整することに代えて、遠隔から自動的に移動カバー8を移動させることができる。
【0046】
<実施の形態7>
図9は、本発明の実施の形態7に係る移動カバー8および周辺部材等の側断面図である。本実施の形態7では、実施の形態6で説明した構成に加え、新たに制御回路26、第1検出器27、演算回路28を備える。
【0047】
第1検出器27は、荷電粒子線の照射位置に揺れが生じた旨、または荷電粒子線の照射位置に揺れを生じさせる振動が発生した旨を検出する。例えば、カラム2、試料室3などに、振動センサとして構成された第1検出器27を配置し、これらに振動が生じた旨を検出する。その他、試料5の観察像を得ているときは、観察像そのものの揺れを画像処理などによって検出するように、第1検出器27を構成することもできる。その他任意の構成を用いることもできる。
【0048】
演算回路28は、第1検出器27の検出結果に基づき、制御回路26がモータ22を駆動する際のパラメータを算出し、そのパラメータにしたがって制御回路26にモータ22を駆動させる。詳細は後述する。
【0049】
制御回路26は演算回路28の算出結果を取得し、これに基づきモータ22を駆動して移動カバー8の位置または配置角度を変化させる。これにより、音響モード13の周波数を荷電粒子線装置100の固有振動周波数からずらし、または音響モード13の腹部分の位置を荷電粒子線装置100本体の位置からずらす。
【0050】
演算回路28は、制御回路26がモータ22を駆動する際の電圧値や電圧印加時間、すなわち移動カバー8をどの方向にどの程度動かすかを、例えば以下のように算出することができる。
【0051】
(モータ22の駆動パラメータ算出方法その1)
第1検出器27が検出した振動量または観察像の揺れ量と、制御回路26がモータ22を駆動する際の電圧値などのパラメータとの対応関係、またはこれらパラメータを算出する際に用いる補助パラメータ等を、あらかじめデータとして適当な記憶装置に記憶させておく。演算回路28は、このデータが定義する上記対応関係に基づき、モータ22を駆動するパラメータを算出する。
【0052】
(モータ22の駆動パラメータ算出方法その2)
演算回路28は、第1検出器27が観察像の揺れ、振動などを検出すると、モータ22を所定範囲内で駆動させ、第1検出器27が検出する観察像の揺れまたは振動が最小となる移動カバー8の位置または配置角度を探索する。揺れまたは振動が最小となった位置における駆動パラメータを、最終的な駆動パラメータとする。
【0053】
以上のように、本実施の形態7によれば、実際に生じた観察像の揺れ、音圧振動などに基づき、移動カバー8の位置または配置角度を自動的かつ最適に調整することができる。これにより、作業者が移動カバー8の位置や配置角度を微調整するなどの作業負担を低減することができる。
【0054】
<実施の形態8>
図10は、本発明の実施の形態8に係る移動カバー8および周辺部材等の側断面図である。本実施の形態8では、実施の形態7で説明した構成に加え、新たに第2検出器30を備える。
【0055】
第2検出器30は、カバー7内に生じる音響モード13を検出する。演算回路28は、第1検出器27が観察像の揺れ、振動などを検出するとともに、第2検出器30が音響モード13を検出したとき、実施の形態7で説明したように、モータ22の駆動パラメータを算出する。制御回路26は、その駆動パラメータにしたがってモータ22を駆動して移動カバー8を移動させる。いずれか一方の検出器のみがそれぞれの検出対象を検出した時点では、モータ22を駆動させない。
【0056】
なお、実施の形態7〜8において、第1検出器27、第2検出器30、制御回路26、演算回路28に相当する機能を、マイコンやCPU(Central Processing Unit)などの演算装置とその動作を規定するソフトウェアによって実現することもできる。
【0057】
本実施の形態8において、荷電粒子線の照射位置が音響モード13以外の要因、例えば機器の動作に伴う振動などによってずれたときは、第2検出器30は音響モード13を検出していない。このとき、演算回路28および制御回路26は、モータ22を駆動させない。これにより、音響モード13以外の要因でずれが生じたにもかかわらず、移動カバー8を誤って移動させて音響モード13を誤調整してしまうような状況を発生しにくくすることができる、
【0058】
<実施の形態9>
図11は、移動カバー8がカバー7の内壁面に占める面積と、移動カバー8を移動させることによる特定周波数の音圧低減率との関係を示す図である。図11右図はカバー7のある1面の内壁全体を移動カバー8として構成した場合の音圧低減率を示す。図11左図はカバー7の同じ面の内壁面積の21%を移動カバー8として構成した場合の音圧低減率を示す。
【0059】
カバー7の内側面の21%を移動カバー8とした場合でも、カバー7の内側面全体を移動カバー8とした場合と比較して、約3分の1程度の音圧低減効果を発揮することができていることが分かる。すなわち、カバー7の内側面の一部のみを移動カバー8とした場合でも、効果的に音圧を低減することができるといえる。
【符号の説明】
【0060】
1:荷電粒子源、2:カラム、3:試料室、4:試料ステージ、5:試料、6:防振台、7:カバー、8:移動カバー、9:補足カバー、10:架台、11:ガイド、12:固定部材、13:音響モード、14:環境騒音、15:透過音、16:スタッド、17:ナット、18:ガイドレール、19:ガイドローラ、20:固定部材、21:回転支持部材、22:モータ、23:送りナット、24:送りネジ、25:支持部品、26:制御回路、27:第1検出器、30:第2検出器、100:荷電粒子線装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷電粒子線を出力する荷電粒子源と、
前記荷電粒子線を照射する試料を配置する試料室と、
前記荷電粒子源および前記試料室を包囲して音を遮るカバーと、
を備え、さらに、
前記カバーの内面の少なくとも一部の位置または配置角度を変更する機構を備えた
ことを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項2】
前記機構は、前記カバーの内面のうち対向する2面の少なくともいずれかの位置または配置角度を変更するように構成されている
ことを特徴とする請求項1記載の荷電粒子線装置。
【請求項3】
前記機構は、
前記カバーの内面のうち対向する2面間の距離、または、
前記カバーの内面の対向する2面の少なくともいずれかと前記試料室もしくは前記荷電粒子源との配置関係を変更するように構成されている
ことを特徴とする請求項2記載の荷電粒子線装置。
【請求項4】
前記機構は、
前記カバーの内面のうち対向する2面の双方を前記試料室または前記荷電粒子源に近づける向きに移動させ、
前記カバーの内面のうち対向する2面の双方を前記試料室または前記荷電粒子源から遠ざける向きに移動させ、
前記カバーの内面のうち対向する2面の双方を同じ向きに移動させ、
前記カバーの内面のうち対向する2面のうちいずれか一方を前記試料室または前記荷電粒子源に近づける向きに移動させ、または、
前記カバーの内面のうち対向する2面のうちいずれか一方を前記試料室または前記荷電粒子源から遠ざける向きに移動させる
ことを特徴とする請求項3記載の荷電粒子線装置。
【請求項5】
前記機構を駆動する駆動装置を備えたことを特徴とする請求項1記載の荷電粒子線装置。
【請求項6】
前記荷電粒子線の照射部位に揺れが生じている旨、または前記荷電粒子線の照射部位に揺れを生じさせる振動が生じている旨を検出する第1検出部と、
前記揺れまたは前記振動が最小となる、前記カバーの内面の少なくとも一部の位置または配置角度を、前記第1検出器が検出する揺れまたは振動に基づき算出する演算部と、
を備え、
前記演算部は、前記算出の結果にしたがって前記駆動装置を駆動し、前記カバーの内面の少なくとも一部の位置または配置角度を変更する
ことを特徴とする請求項5記載の荷電粒子線装置。
【請求項7】
前記カバーの内面間で反射する音を検出する第2検出器を備え、
前記演算部は、
前記音を前記第2検出器が検出し、かつ、前記荷電粒子線の照射部位に揺れが生じている旨または前記荷電粒子線の照射部位に揺れを生じさせる振動が生じている旨を前記第1検出器が検出したときは、
前記算出の結果にしたがって前記駆動装置を駆動する
ことを特徴とする請求項6記載の荷電粒子線装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−165478(P2011−165478A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−26776(P2010−26776)
【出願日】平成22年2月9日(2010.2.9)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)