説明

荷電粒子装置において用いられる検出器

【課題】荷電粒子装置で用いられ、高計数率でも計測できるシリコンドリフトダイオード検出器を提供する。
【解決手段】SDD200と、増幅器206と、該増幅器206の出力と切り換え可能なように接続するたとえば抵抗器208又はダイオードの形態をとるフィードバック素子を備える検出器で、前記フィードバック素子がスイッチ209を介して選ばれるとき、当該検出器206は、電子電流を決定する電流測定モードで動作し、前記フィードバック素子が選ばれないときは、X線量子エネルギーを決定するパルス高さ測定モードで動作する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線検出用放射線検出器に関する。当該検出器はシリコンドリフトダイオード(SDD)を有し、前記SDDは陽極と出力を有し、前記SDDは、1つの検出された光子に応答して前記出力上にパルスを生成し、前記パルスの高さは、前記光子の検出により生成される電子−正孔対の数に比例し、前記出力は、前記出力の信号を測定する電子回路に接続される。
【背景技術】
【0002】
係る検出器は、非特許文献1から既知である。
【0003】
非特許文献1は、シリコンドリフトダイオード(SDD)及び関連する電子回路を有する検出について開示している。
【0004】
SDDは、入射放射線−たとえばX線光子−が電子正孔対を生成する活性体積を有する。ダイオード内での内部電場の結果、電子は陽極へ移動する。その後電子は、陽極を、対応する電位にまで帯電させる。陽極は非常に小さいので、陽極のキャパシタンスは、陰極のキャパシタンスに対して非常に小さい。0.5pF未満−最近の典型的な値では0.15pF−のキャパシタンスが実現されている。よって既に少数の電子でも、検出する上で十分な大きさの信号が生成される。陽極上で誘起される信号は、SDD上で集積されたFETによって保護される。さもなければ配線のキャパシタンスが信号を劣化させるからである。
【0005】
SDDを用いた検出器は、たとえば走査型電子顕微鏡(SEM)で用いられることが知られている。SEMでは、微細に集束された電子ビームが、試料の表面にわたって走査される。電子は典型的には、200eV〜30keVのエネルギーを有する。ただしそれ以外のエネルギーを有する電子が用いられることも知られている。放射線は典型的には、2次電子(試料から放出される50eV未満のエネルギーを有する電子。以降SEと略記)、後方散乱電子(試料から放出される50eVよりも高いエネルギーを有する電子。以降BSEと略記)、及び特性X線光子(X線)を有する。X線は、試料の材料の組成に関する情報を与える。
【0006】
SDDの限界は、計数可能な毎秒のパルス数である。
【0007】
SDDの速度は、電子が陽極に到達するまでに要する時間、及び、該時間中での電子の反跳効果(弾道欠損効果としても知られている)により律速される。この結果、有限の立ち上がり時間は50〜100nsecのオーダーとなる。さらに、それに続く電子機器が計数速度を律速する。実際には、5×105/sec〜1×106/secの計数速度が実現可能である。規則的に、集積されたキャパシタの電荷はリセットされる必要がある。これは、出力信号がある閾値を超えるときを引き金として動作する外部リセット回路によって通常は行われる。装置のリセットは通常、SDDが入力信号に対して応答することのできない数μsecを要する。その結果計数速度はさらに律速される。
【0008】
SDDは、内部自己バイアスリセットモードでも動作しうることに留意して欲しい。内部自己バイアスリセットモードでは、陽極の電荷は、FETのドレインから陽極への漏洩によって補償される。しかしこのモードで動作する結果、わずかに性能は劣る(エネルギー分別)。
【0009】
原則的には、電子がSDDの活性体積に到達するのに十分なエネルギーを有している場合には、SDDは電子の検出にも用いられ得る。
【0010】
SEM内のBSEがSDDに衝突する場所で前記検出器を用いる際の問題は、生成されるBSEの数が、X線光子の数よりもはるかに大きいことである。毎秒106個の電子を検出することは、わずか0.16pAの電流と等価である。他方SEMは一般的に、BSE電流が1pA、より具体的には100pAを超え、場合によっては1nA以上にもなるモードで動作する。
【0011】
係る検出器がBSEによって「見えなくされる」のを回避するため、係る検出器には通常、X線を透過して電子を阻止する窓が備えられることに留意して欲しい。一例として、特許文献1に記載の検出器がある。また他にも、より洗練された方法で、BSEが検出器に到達するのを防止する方法−たとえばBSEの偏向−が知られている。
【0012】
SDDを用いた検出器の課題は、係る検出器が、1pA、より詳細には1nAを超える電流を有するBSE信号を検出するようには備えられていないことである。他方検出器は一般的に、BSEも検出されうる(試料の上方の)位置に設けられるので、BSEを検出できる(X線検出器仕様の)SDDを備える検出器が必要とされている。
【0013】
非特許文献1は、I/Oポートと陽極との間に設けられているが、フィードバックされる信号が論理信号となるように比較器を介する電圧/電流変換器について記載していることに留意して欲しい。
【0014】
非特許文献2の図1では、アナログフィードバックが抵抗器R1とRgを介して供される回路が図示されていることにさらに留意して欲しい。しかしこの回路は、パルス高さ測定モード(PHMM)又は電流測定モード(CMM)で切り換え可能に動作するためのスイッチを出力と陽極との間に有していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】米国特許出願公開第2010/0163742号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第2009705号明細書
【特許文献3】欧州特許出願第11150672号明細書
【特許文献4】米国特許第7858946号明細書
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】NuclearInstruments and Methods in Physics Research A,第568巻、2006年、pp.336
【非特許文献2】NuclearInstruments and Methods in Physics Research A,第568巻、2006年、pp.322
【非特許文献3】http://www.amptek.com/pdf/ansdd3.pdf
【非特許文献4】http://home.dei.polimi.it/sampietr/Ratex/RATEX1.html
【非特許文献5】http://www.pnsensor.de/Welcome/Detector/SDD/index.html
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は、上記問題の解決法を供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的のため、本発明による検出器は、シリコンドリフトダイオードが、I/Oポートと陽極との間に電圧/電流変換器を有することを特徴とする。当該検出器は、アナログフィードバックループにおいて、スイッチを介して前記電圧/電流変換器を選択的に接続するように備えられ、その結果、前記シリコンドリフトダイオードは、パルス高さ測定モード(PHMM)又は電流測定モード(CMM)で切り換え可能に動作するように備えられる。
【0019】
フードバック電流を前記陽極に供することによって、前記SDDは、当該検出器の出力信号が、1秒間に生成される電子−正孔対の数に依存するCMMで用いられる。前記陽極上での電圧が、前記フィードバックループによって一定に保たれるので、リセットの必要はない。このモードは、たとえばBSEを検出する場合において、最大計数速度が限界を超えたときに好適である。
【0020】
「アナログフィードバックループ」という語句は、フィードバックされる信号が、2値しかとりえない論理信号とは対照的に、実質的に連続するスケールに沿って任意の値をとりうることを意味する。前記スイッチは、機械スイッチ(たとえばリードリレー)又は電子スイッチ(たとえば1つ以上のFETを有するスイッチ)のいずれかであってよい。前記出力信号はデジタル出力信号でもよい。前記フィードバックループにおいては、前記デジタル信号は、デジタル−アナログ変換器(DAC)を用いて変換されてもよい。その場合、前記スイッチは、前記DACの変換を制御する形式をとってよい。前記制御の一の状態は、前記DACの出力を、前記DACの(デジタル)入力に関係なく一定に保つ。
【0021】
前記電圧/電流変換器が抵抗性である場合、当該検出器の出力信号は、電子−正孔対の数に比例する。前記変換器が、(たとえばダイオードによって生じる)対数の電圧/電流特性を有する場合、前記出力信号は、電子−正孔対の数に対して対数の依存性を示す。一般的には前記SDD上に存在するリセットダイオードは、対数の依存性を有する電圧/電流変換器として用いられてよいことに留意して欲しい。
【0022】
前記電圧/電流フィードバックを切断することによって、前記SDDは、周知のPHMMで動作するので、イベント毎のエネルギーを検出する。このモードは、X線のエネルギーを検出するときに好適である。
【0023】
当該検出器をPHMMで動作させるとき、BSEへの当該検出器の曝露が防止されなければならないことに留意して欲しい。これは、磁場若しくは静電場によって前記電子を偏向させることにより、又は、前記電子が当該検出器へ到達しない、若しくは当該検出器に衝突しても内部へ進入しないエネルギーにまで、前記電子を減速させることにより、又は、電子源と当該検出器との間に、X線を透過するホイル(たとえば薄いプラスチックホイル)を機械的に設けることによって実行されてよい。
【0024】
PHMMでは、リセット回路又は自己バイアスリセットが用いられなければならないが、CMMでは、これは必要内ことにさらに留意して欲しい。
【0025】
本発明の好適実施例では、前記SDDは放射線感受性を有する表面を有し、前記放射線感受性を有する表面は、前記陽極が形成される表面に対向し、前記SDDは、前記放射線感受性を有する表面に近接する活性体積を有し、前記放射線感受性を有する表面と前記活性体積との間の間隔は、20keV、より具体的には2keV、さらに具体的には500eVのエネルギーを有する電子が、前記活性体積へ進入して、前記活性体積内で電子−正孔対を生成するのに十分な程度短く、その結果、当該検出器は、荷電粒子装置内において、X線を検出する検出器として、又は、X線と電子を検出する検出器として選択的に用いられてよい。
【0026】
SDDは、前記電子−正孔対が、生成され、かつ、前記陽極(電子)又は陰極(正孔)のいずれかに収集される活性体積を有する。従来技術に係るSDDでは、前記放射線感受性を有する表面と前記活性体積との間の間隔は、X線が、前記活性体積へ進入して、前記活性体積内で電子−正孔対を生成するのに十分な程度短い。
【0027】
電子が電子−正孔対を生成するためには、市販されている従来技術に係るSDDにおける前記放射線感受性を有する表面と前記活性体積との間の間隔は、たとえば1keVのエネルギーを有する電子が前記活性体積へ進入するには広すぎる。前記活性層(これは陰極として機能するので伝導性でなければならない)を、前記放射線感受性を有する表面の直下に形成することによって、低エネルギー電子も前記活性体積へ進入することができる。
【0028】
係る薄い層を形成する手法は当業者には既知である。一例として、特許文献2は、係る層(たとえばボロンの層)が如何にして形成されうるのかを教示している。また特許文献3も係る層を教示している。他の材料を用いた薄い層も当業者には既知である。
【0029】
本発明の態様では、荷電粒子装置には本発明による検出器が備えられている。当該荷電粒子装置は、微細に集束した荷電粒子ビームによって試料を走査するように備えられ、その結果、X線、後方散乱電子、及び2次電子を含む2次放射線が前記試料から放出され、当該荷電粒子装置には、前記試料から放出される後方散乱電子及び2次電子が当該検出器へ到達するのを選択的に阻止し、又は、前記後方散乱電子及び/若しくは2次電子を通過させる手段が備えられ、前記手段は、前記試料から放出されるX線を透過する。
【0030】
X線、後方散乱電子、及び2次電子を含む2次放射線が前記試料から放出されるように、微細に集束した荷電粒子ビームにより試料を走査するように備えられた装置は、たとえば走査型電子顕微鏡(SEM)、走査透過型電子顕微鏡(STEM)、又は集束イオンビーム装置(FIB)として当業者には既知である。
【0031】
前記電子の通過又は前記電子による当該検出器への到達の阻止を選択的に行う装置内で本発明による検出器を用いることによって、当該検出器は、標準的なX線検出器として、又は電子検出器として用いられうる。後者のモードでは、たとえばBSE又はSEを検出する際に、当該検出器はX線をも検出するが、全体の信号に対するX線の寄与は無視できるものである。なぜならX線が生成される効率は、BSE及びSEが生成される効率よりもはるかに低いからである。
【0032】
前記手段は、前記電子を偏向させる切り換え可能な磁場若しくは静電場、前記電子が当該検出器へ到達する際若しくは当該検出器により反射される際に、前記電子が前記活性体積へ進入できない程度に低いエネルギーにまで、前記電子を減速させる切り換え可能な電場、又は、X線を透過するホイル(たとえば薄いプラスチックホイル)を、前記電子源(前記試料)と当該検出器との間で挿入若しくは除去する機械手段の形態をとってよい。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1A】SDDを概略的に図示している。
【図1B】図1Aに図示されたSDDの中心部分を概略的に図示している。
【図2A】従来技術に係る検出器(の一部)を電子回路図で表現している。
【図2B】本発明による検出器(の一部)を電子回路図で表現している。
【発明を実施するための形態】
【0034】
ここで本発明について、図を用いて説明する。図中、同一参照番号は同一の部位を指称する。
【0035】
図1AはSDDを概略的に図示している。
【0036】
SDDは、シリコンウエハ10で形成される。SDDは、高純度の体積を有する、すなわち、第1面11と第2面18との間にほとんど再結合面を有していない。第1面11は陽極16を有する。第2面18は陰極19を有する。これらの2つの面間の体積内で生成される任意の電子−正孔対の電極は、電子を陽極へ移動させ、正孔を(複数の)陰極へ移動させる。第1面11は、FETのドレインを構成する中心電極12を有する。中心電極12を取り囲む電極13は、FETのゲートを構成する。電極13を取り囲む電極14は、FETのソースを構成する。FETは、電極12,13,14を取り囲む遮蔽電極15によって、シリコンウエハの他の部分から、横方向及びウエハ「内部」で遮蔽されている。陽極は、FETのゲートと接続されている(その接続は図1Aには図示されていない)。
【0037】
陽極を取り囲むように複数の同心円状の電極17-iが形成される。これらの同心円状の電極17-iのうち最も内側の電極は、陽極の電圧に近い電圧に接続される。一連の環状電極17-iは、最も内側の電極に対応する陽極の電圧よりもわずかに大きい値から、最も外側の電極に対応する陰極の(電圧に近い)値にまで増大する電圧と接続する。環状電極17-iは、電子−正孔対からの全ての電子を陽極へ案内するウエハ内部の電場を生じさせる。その一方で陽極は、ほんの小さな構造なので、陰極に対してほんの小さなキャパシタンスを有しているに過ぎない。
【0038】
動作中、電圧差が陽極/陰極に印加されることに留意して欲しい。これにより、陰極に対する陽極のキャパシタンスが減少する。動作時の陽極のキャパシタンスが0.15pFのSDDが市販されている。
【0039】
図1Bは、図1Aに図示されたSDDの詳細を概略的に図示している。図1Bは、中心部から陽極までの部分を表している。ここで陽極16とFETのゲートとの間での接続は、メタライゼーション21として概略的に表されている。第2面18は放射線感受性を有する面である。この表面の直下には、放射線感受性を有する体積20が表されている。放射線感受性を有する表面に入射するX線は、その体積へ進入し、この体積内で複数の電子−正孔対を生成する。電子−正孔対の数は光子のエネルギーに依存する。通常動作では、光子数は、各イベントが独立して検出可能であるようなもの、つまり、イベント(入射光子)あたりの電子−正孔対の数である。
【0040】
電荷が陽極に蓄積することで、陽極の電圧は、たとえばリセットダイオード(図示されていない)によってリセットされるまで、(陰極に対して)負になろうとする。あるいはその代わりに、FETのドレインからゲートへの漏れ電流は、平均電荷蓄積を補償するのに用いられてよい。
【0041】
通常は、フィードバックキャパシタはSDD上に集積されることで、陽極と出力とを接続するが、このキャパシタはまた、SDDの外部に設けられてもよいことに留意して欲しい。
【0042】
図2Aは、従来技術に係る検出器(の一部)を電子回路図で表現している。
【0043】
電子回路図の表現は、電荷増幅器の構成において用いられるSDDを表している。四角200内の部分はSDDの一部であり、他の部分はSDDの外部である。
【0044】
SDDは、陰極201と陽極202、ゲートが陽極202と接続するFET203、一面が陽極202と接続するフィードバックキャパシタ205、及び、陰極がSDDの陽極202と接続するダイオード204の形態をとるリセット素子を有する。SDDの陰極、FETのソースとドレイン、陽極202と接続しないフィードバックキャパシタの面、及び、リセットダイオードの陽極は、SDDの出力と接続する。陰極201とFETのソースとの外部接続は、接地電位で1つに結ばれる。FETのドレインは増幅器206に接続する。増幅器206の出力は、SDD上のフィードバックキャパシタと接続する。よって電荷増幅器が形成される。さらにリセット論理が増幅器の出力と接続する。これにより、リセットダイオードの陽極へのパルスが生成される。その結果SDDはリセットされる。
【0045】
FETがソースフォロワーとして用いられ、かつドレインとゲートとの間の電圧Vdgが変化するとき、検出器は、所謂「連続リセットモード」で動作してよい。連続リセットモードでは、リセット論理はアクティブではなく、又は存在すらせず、FETのドレイン/ゲート電圧は、誘起された(平均)陽極/陰極電流を補償する(電圧依存の)漏れ電流を生成する。
【0046】
図示されていないが、陽極202、FETのドレイン、及び同心円状リング107-iにバイアス印加する電子機器は、検出器を動作させるのに必要である。同心円状リングの電圧は、SDD上であって陽極と陰極との間に集積された抵抗ネットワークから得ることができることに留意して欲しい。
【0047】
増幅器の出力が他の電子機器及び論理と接続することで、光子の入射により生じる電荷増幅器のパルス高さを決定することに留意して欲しい。
【0048】
非特許文献3の図10及びそれに関連する記載には、この回路のノイズについて論じられている。
【0049】
図2Bは、本発明による検出器(の一部)を電子回路図で表現している。
【0050】
本発明による検出器は、図2Aに図示された従来技術に係る検出器と似ている。フィードバックループにおいてスイッチ209によって選択的に接続可能なフィードバック抵抗器208の形態をとるフィードバック素子を加えることによって、検出器は、スイッチ209が開かれて、フィードバック素子が起動しない通常のパルス高さ測定モード(PHMM)から、スイッチ209が閉じられて、フィードバック素子がフィードバックループの一部となる電流測定モード(CMM)に切りかわることができる。このモードでは、リセット論理207は不稼働でなければならない。
【0051】
スイッチ209は、機械リレー(たとえばリードリレー)又は電子スイッチ(たとえばFET)であってよいことに留意して欲しい。キャパシタ205を介したフィードバックを不稼働にする必要はない。なぜならキャパシタ205を介したフィードバックは、抵抗器208を介したフィードバックに影響しないからである。しかしスイッチはまた、二重極スイッチとして実行されるときには、キャパシタ206と抵抗器との間でのフィードバックをも選択してよい。
【0052】
フィードバック素子はまた、非線形(非オーム型)の電圧/電流特性を示してよい、換言すると、フィードバック素子は抵抗器とは異なってよいことにもさらに留意して欲しい。対数応答は、たとえばフィードバック素子としてのダイオードを用いることによって実現されてよい。ダイオードは通常リセットダイオードの形態で存在するので、検出器は従来技術に係るSDDを用いてよい。その結果得られる検出器は、CMMにおいて大きなダイナミックレンジを有する。
【0053】
このモードでは、ダイオードをフィードバック素子として用いることは、リセット論理207が連続的に高い信号を生成する従来技術に係る検出器とは同一ではない。リセット論理は、陽極をリセットする特定の電圧を有するパルスを生成する。CMMでは、ダイオード上での電圧は、陽極202と陰極201との間で誘起される電流に依存する。ダイオードを流れる電流は、陽極と陰極との間を流れる電流に等しい。
【0054】
特許文献4は、第1増幅器の入力がFETのソースと接続するSDDを有する検出器について記載している。特許文献4がこれを典型的な利用として記載しているとしても、他の文献−たとえば非特許文献4−は、ソースフォロワー構成の欠点は、陽極からの全体のキャパシタンスによりなされる電荷−電圧変換が不安定なことであるとして、電荷感受性を有する増幅器の構成において検出器を用いることについて述べている。
【0055】
しかし本発明はまた、ソースフォロワーモードにおいてSDDを有する検出器にも妥当である。増幅器の増幅の極性は2つのモード(ソースが増幅器と接続するモードのソースフォロワーと、ドレインが増幅器と接続するモードのソースフォロワー)とは異なることに留意して欲しい。
【0056】
これらの実施例では、環状の対称性を有するSDDが図示されているが、非対称−たとえばしずく形状−のSDDも知られていることに留意して欲しい。陽極/FETは中心及びシリコンの一部に集積された複数のSDDから離れて設けられる。
【0057】
荷電粒子装置−たとえばSEM、STEM、又はFIB−で用いるため、試料を照射する荷電粒子ビームを通過させる中心の貫通孔を有する1つのSDD又はその中心の貫通孔の周囲に配置される複数のSDDが考えられ得る。
【0058】
しずく形状のSDD及び中心孔を備える四重極SDDの例が、たとえば非特許文献5から既知である。1つのチップ上に多数のSDDを備える−各々は電子機器で接続されている−利点は、複数のSDDが並列検出を行うことで、最大計数速度が改善されることである。
【符号の説明】
【0059】
10 Siウエハ
11 第1面
12 電極
13 電極
14 電極
15 電極
16 陽極
17-i 電極
19 陰極
20 感受性体積
21 メタライゼーション
201 陰極
202 陽極
203 FET
204 リセット素子
205 フィードバックキャパシタ
206 増幅器
207 リセット論理回路
208 フィードバック抵抗器
209 スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線検出用放射線検出器であって、
当該検出器はシリコンドリフトダイオード(SDD)を有し、前記SDDは陽極と出力を有し、前記SDDは、1つの検出された光子に応答して前記出力上にパルスを生成し、前記パルスの高さは、前記光子の検出により生成される電子−正孔対の数に比例し、前記出力は、前記出力の信号を測定する電子回路に接続され、
前記シリコンドリフトダイオードは、I/Oポートと陽極との間に電圧/電流変換器を有し、
当該放射線検出器は、アナログフィードバックループにおいて、スイッチを介して前記電圧/電流変換器を選択的に接続するように備えられ、その結果、前記シリコンドリフトダイオードは、パルス高さ測定モード又は電流測定モードで切り換え可能に動作するように備えられる、
放射線検出器。
【請求項2】
前記電圧/電流変換器が抵抗器で、その結果、前記電流測定モードは、線形の電流測定モードとなる、請求項1に記載の放射線検出器。
【請求項3】
前記電圧/電流変換器がダイオードで、その結果、前記電流測定モードは、対数の電流測定モードとなる、請求項1に記載の放射線検出器。
【請求項4】
前記SDDは放射線感受性を有する表面を有し、
前記放射線感受性を有する表面は、前記陽極が形成される表面に対向し、
前記SDDは、前記放射線感受性を有する表面に近接する活性体積を有し、前記放射線感受性を有する表面と前記活性体積との間の間隔は、20keV、より具体的には2keV、さらに具体的には500eVのエネルギーを有する電子が、前記活性体積へ進入して、前記活性体積内で電子−正孔対を生成するのに十分な程度短く、その結果、当該検出器は、荷電粒子装置内において、X線を検出する検出器として、又は、X線と電子を検出する検出器として選択的に用いられてよい、
請求項1乃至3のいずれかに記載の放射線検出器。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の放射線検出器が備えられている荷電粒子装置であって、
当該荷電粒子装置は、微細に集束した荷電粒子ビームによって試料を走査するように備えられ、その結果、X線、後方散乱電子、及び2次電子を含む2次放射線が前記試料から放出され、
当該荷電粒子装置には、前記試料から放出される後方散乱電子及び2次電子が当該検出器へ到達するのを選択的に阻止し、又は、前記後方散乱電子及び/若しくは2次電子を通過させる手段が備えられ、
前記手段は、前記試料から放出されるX線を透過する、
荷電粒子装置。
【請求項6】
前記試料から放出される後方散乱電子及び2次電子が当該検出器へ到達するのを選択的に阻止し、又は、前記後方散乱電子及び/若しくは2次電子を通過させる手段は、切り換え可能な磁気又は静電偏向場の形態をとる、請求項5に記載の荷電粒子装置。
【請求項7】
前記試料から放出される後方散乱電子及び2次電子が当該検出器へ到達するのを選択的に阻止し、又は、前記後方散乱電子及び/若しくは2次電子を通過させる手段は、前記電子を阻止するとき前記電子を反射させる切り換え可能な静電減速場の形態をとる、請求項5に記載の荷電粒子装置。
【請求項8】
前記試料から放出される後方散乱電子及び2次電子が当該検出器へ到達するのを選択的に阻止し、又は、前記後方散乱電子及び/若しくは2次電子を通過させる手段は、前記電子を通過させるとき前記電子を反射させるホイルの形態をとる、請求項5に記載の荷電粒子装を阻止するときには当該検出器と前記試料との間に挿入され、かつ、前記電子を通過させるとき当該検出器と前記試料との間から除去されるホイルの形態をとる、請求項5に記載の荷電粒子装置。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【公開番号】特開2013−19897(P2013−19897A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−152136(P2012−152136)
【出願日】平成24年7月6日(2012.7.6)
【出願人】(501233536)エフ イー アイ カンパニ (87)
【氏名又は名称原語表記】FEI COMPANY
【住所又は居所原語表記】7451 NW Evergreen Parkway, Hillsboro, OR 97124−5830 USA
【Fターム(参考)】