説明

菓子及びその製造方法

【課題】新規な味わいであって且つ食する際に箸や黒文字・爪楊枝、フォーク等の食器を必ずしも必要とせず、直接取り上げても手が汚れない又は手が汚れにくい菓子を提供する。
【解決手段】菓子1は、甘味材料である丸めた餡130の周囲を飯120で包み、飯120表面に花鰹110を付着して形成してある。甘味材料としては小豆の漉し餡を使用しているが、該原料及び餡の種類に限定するものではなく、各種変更が可能である。なお、飯に変えて餅を使用することもできる。また、乾燥魚類を原料とする粉末、薄片又はリボン状物として、鰹節を薄くリボン状に削ったいわゆる花鰹を使用しているが、鰹節及びリボン状の形状に限定するものではない。例えば、リボン状の乾燥魚類は、単一の幅のもののみならず様々な幅のものを組み合わせてもよいし、粉末、薄片又はリボン状物を各々適宜組み合わせて使用してもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な食味の菓子であって、食する際に箸や黒文字・爪楊枝、フォーク等の食器を必ずしも必要とせず、直接取り上げても手が汚れない又は汚れにくい菓子、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、もち米、うるち米を蒸したもの(以下「飯」という。)、または、もち米、うるち米又はその他の殿粉を蒸してつくった餅(以下「餅」という。)で小豆等の餡を包んだ菓子がある。一般的に、これらは、萩の餅(いわゆる「おはぎ」。以下「おはぎ」という。)、桜餅、うぐいす餅、大福餅または大仏餅等と呼ばれている。
前記菓子には、その表面に黄粉、青海苔、胡麻、ずんだ(枝豆を茹で、薄皮を剥いて潰し、砂糖を混ぜてできたもの)を付着させたものがあり、これらの付着物は、乾きやすい飯や餅等の表面を覆うことで乾燥を防ぎ、また、付着物自身の風味によって食味を向上させたり、菓子の外観の変化を通じて、購買者の購買意欲を刺激したりしている。
【0003】
一方、前記の菓子を食する際には箸や黒文字・爪楊枝、フォーク等の食器を使用するが、該食器類が無く、菓子を直接手にとって食べるような場合には、手がべとついたり汚れたりしてしまう。
【0004】
前記課題を解決すべく、下記特許文献1に示すような被覆おはぎが提案されている。
特許文献1記載の被覆おはぎは、中に飯、外側に餡が配置されたおはぎの表面に、餅を薄く延ばした生地を被覆したものである。
【0005】
【特許文献1】実開平06−84882号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1にかかる被覆おはぎは、中に飯、外側に餅といった構成であるため、食が細い女性や老人にとって食感が重く感じられる場合があり、また、飯も餅も似たような味わいであるため、味が単調になるという課題もあった。
【0007】
なお、特許文献1には特に記載されていないが、通常、表面に餅が配された菓子は、容器等に収容する際に隣り合う菓子が互いにくっつかないようにするため、或いは、容器自体へくっつかないようにするために、手粉(てごな。餅取り粉又は打ち粉ともいい、餅が手等につかないように付着させる片栗粉等の粉)を餅の表面に付着させる必要がある。
特許文献1の被覆おはぎについても、出荷用容器等に収容する際に被覆おはぎ表面に手粉を付着するであろうことから、結局需要者の手が手粉によって汚れることは避けられない。
【0008】
本発明者は、前記課題を解決すべく研究を重ね、菓子の表面を被覆するものとして乾燥魚類に着目し、乾燥魚類を原料とする粉末、薄片又はリボン状物を被覆部として使用すれば、箸等の食器を使用せずに手掴みで食べても手が汚れず、かつ新規な味わいの菓子を得ることができることを知見し、本発明を完成するに至った。
【0009】
(発明の目的)
そこで、本発明の目的は、新規な味わいであって、かつ、食する際に箸や黒文字・爪楊枝、フォーク等の食器を必ずしも必要とせず、直接取り上げても手が汚れない又は手が汚れにくい菓子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために講じた本発明の手段は次のとおりである。
本発明は、甘味材料を餅または飯で包むか若しくは餅または飯を甘味材料で包んで成り、べたつく表面を有する菓子本体の当該表面の主要部または全体を、乾燥魚類を原料とした粉末、薄片またはリボン状物から選ばれた一または二以上で被覆している、菓子である。
【0011】
また、本発明は、甘味材料を餅または飯で包むか若しくは餅または飯を甘味材料で包んで菓子本体を作り、べたつく表面を有する菓子本体の当該表面の主要部または全体を、乾燥魚類を原料とした粉末、薄片またはリボン状物から選ばれた一または二以上で被覆する、菓子の製造方法である。
【0012】
本明細書及び本特許請求の範囲の甘味材料としては、例えば豆、芋、栗、蓮の実、胡麻、胡桃、冬瓜、棗、果実を原料とし、ペースト状にしたいわゆる漉し餡が挙げられ、また、前記漉し餡に豆、芋、栗、蓮の実、胡麻、胡桃、冬瓜、棗、果実の粒状物を含んでなる半ペースト状のもの(いわゆる、粒餡)が挙げられる。
より具体的な甘味材料の原料としては、豆としては小豆、白インゲンや白小豆、枝豆、緑豆、青エンドウ、落花生等、芋としてはサツマ芋、紫芋等、胡麻としては黒胡麻、白胡麻等、果実としてはミカン等の柑橘類、バナナ、パイナップル、リンゴ、イチゴ、梅等が挙げられる。
また、前記原料のうち他種類のもの同士を組み合わせたもの(例えば、砕いた栗の粒状物と小豆の漉し餡を組み合わせたもの、砕いた胡桃の粒状物と白インゲンの漉し餡を組み合わせたもの、等。)であってもよい。
【0013】
本明細書及び本特許請求の範囲の飯としては、例えば、もち米、うるち米、又はこれらを適宜配合したものを蒸してなる飯が挙げられ、また、餅としては、もち米、うるち米又はその他の殿粉、又はこれらを適宜配合したものを蒸して作られた餅、求肥が挙げられる。しかしながら、これらに限定するものではなく、前記飯又は餅に雑穀等を混合したものであってもよい。また、前記「雑穀等」は、例えば、糯黍、粳黍、糯粟、粳粟、粳稗、高黍、黒米、赤米、アマランサス、キヌア(キノアともいう)等の穀類のほか、鳩麦、蕎麦、大麦、大豆、小豆、緑豆等の豆類、トウモロコシ、胡麻等も含む意味で使用している。
【0014】
本明細書及び本特許請求の範囲にいう乾燥魚類を原料とする粉末、薄片としては、例えば鰹節を削る又は粉砕して製造した粉末、薄片又はリボン状物(いわゆる花鰹や削り節)が好適に使用されるが、これに限定するものではなく、乾燥魚類はソウダガツオ、ゴマサバ、マグロ、ムロアジ、カタクチイワシ、マイワシ、サンマ、ニシン、またはサケを原料とするものであってもよい。また、各種乾燥魚類の粉末等を適宜混合して使用してもよい。
【0015】
(作 用)
本発明に係る菓子の作用を説明する。
[工程1]
甘味材料を飯又は餅で包んだ菓子本体を作る。または、飯又は餅を甘味材料で包んだ菓子本体を作る。
[工程2]
工程1で作られた菓子の表面に、乾燥魚類を原料とする粉末、薄片又はリボン状物から選ばれた一または二以上を付着させる。
以上の工程を経て、本発明に係る菓子が完成する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、次の効果を奏する。
(1)べたつく表面を有する菓子本体の当該表面の主要部または全体が、乾燥魚類を原料とした粉末、薄片またはリボン状物から選ばれた一または二以上により被覆してあるので、食べる者が菓子を手で持ったとしても、菓子本体の飯又は餅、甘味材料の何れもが手にくっつかず又はくっつきにくい。このため、箸等の食器を必ずしも必要としない。
(2)前記菓子は、その表面が乾燥魚類を原料とする薄片又はリボン状物で覆われているため、ふわっとした食感を備え、新規な味覚と食感を備えた菓子を提供できる。また、前記菓子は乾燥魚類を原料とした粉末、薄片またはリボン状物を使用しているので、おやつ等として菓子を食しながらも魚類蛋白を摂取することができ、栄養バランスの向上を図ることができる。
(3)乾燥魚類を原料とする粉末、薄片又はリボン状物の被覆部は、黄粉や青のりとは異なり水分を吸収しにくく、仮に吸収しても色の変化が少ないので、見た目の良い菓子が提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の実施の形態を図面に基づき更に詳細に説明する。
図1は第1実施形態に係る菓子の斜視図、図2は第1実施形態に係る菓子の縦方向断面図である。
【0018】
[第1実施形態]
図1及び図2に示す菓子1について説明する。
菓子1は、甘味材料である丸めた餡130の周囲を飯120で包み、飯120の表面に花鰹110を付着して形成してある。
本実施の形態では、甘味材料として原料が小豆の漉し餡を使用しているが、当該原料及び餡の種類に限定するものではなく、各種の変更が可能である。なお、飯に変えて餅を使用することもできる。
また、乾燥魚類を原料とする粉末、薄片又はリボン状物として、鰹節を薄くリボン状に削ったいわゆる花鰹を使用しているが、鰹節及びリボン状の形状に限定するものではない。例えば、リボン状の形態の乾燥魚類は、単一の幅のもののみならず様々な幅のものを組み合わせてもよいし、粉末、薄片又はリボン状物をそれぞれ適宜組み合わせて使用してもよい。
【0019】
(作 用)
図1及び図2を参照して、菓子1の作用を説明する。
[工程1]
小豆を砂糖で煮詰め、それを漉して餡130を作る。
もち米とうるち米を混合して炊飯し、炊きあがった後に一旦冷やし、冷えた後に混ぜて適度に潰したものを、飯120とする
餡130を球状に丸め、飯120で包んだ菓子本体を作る。
[工程2]
工程1で作られた菓子本体の表面に、花鰹110を付着させる。
以上の工程を経て、菓子1が完成する。
【0020】
完成した菓子1は、花鰹110で飯120が覆われている。このため、食べる者が菓子1を手で持ったとしても、菓子1に係る飯120が手にくっつかず又はくっつきにくい。つまり、菓子1は、食する際に箸等の食器を必ずしも必要せず、食器等が無くとも手を汚さない又は汚しにくい。
【0021】
また、菓子1は、その表面が花鰹110で覆われているためにふわっとした食感を備え、食する者に新規な味覚と食感を与える。また、飯120を覆うものは花鰹110であるので、おやつ等として菓子1を食しながらも魚類蛋白を摂取でき、栄養バランスの向上を図ることができる。
【0022】
前記花鰹110は、黄粉や青のりとは異なり飯120の水分を吸収しにくく、仮に吸収しても色の変化が少ない。このため、製造後一定時間が経過しても、見た目が良い。
【0023】
[第2実施形態]
図3は第2実施形態に係る菓子の縦方向断面図である。本発明の他の実施の形態を、図3に基づき更に詳細に説明する。
なお、下記菓子2は、先に説明した菓子1と近似するものであるため、構造及び作用のうち重複する部分の説明は省略し、相違する部分についてのみ説明する。また、菓子1と同一又は同等の部分に関しては同一の符号を付するものとする。
【0024】
図3に示す菓子2について説明する。
菓子2は、丸めた飯220の周囲を餡230で包み、餡230の表面に花鰹110を付着して形成してある。
【0025】
(作 用)
図3を参照して、菓子2の作用を説明する。なお、飯220及び餡230は、先に説明した飯120及び餡130と同じものであるため、説明を省略する。
[工程1]
飯220を球状に丸め、その周りを餡230で包んだ菓子本体を作る。
[工程2]
工程1で作られた菓子本体の表面に、花鰹110を付着させる。
以上の工程を経て、菓子2が完成する。
【0026】
前記工程により完成した菓子2は、その表面が花鰹110で覆われているので、食べる者が菓子2を手で持ったとしても、餡230が手にくっつかず又はくっつきにくい。
また、花鰹110は、黄粉や青のりとは異なり餡230の水分を吸収しにくく、仮に吸収しても色の変化が少ない。また、餡230を覆う花鰹110により餡表面が乾燥しにくい。このため、製造後一定時間が経過しても、見た目が良い。
【0027】
本明細書及び特許請求の範囲で使用している用語と表現は、あくまでも説明上のものであって、なんら限定的なものではなく、本明細書及び特許請求の範囲に記述された特徴およびその一部と等価の用語や表現を除外する意図はない。また、本発明の技術思想の範囲内で、種々の変形態様が可能であるということは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】第1実施形態に係る菓子の斜視図。
【図2】第1実施形態に係る菓子の縦方向断面図。
【図3】第2実施形態に係る菓子の縦方向断面図。
【符号の説明】
【0029】
1,2 菓子
110 花鰹
120,220 飯
130,230 餡

【特許請求の範囲】
【請求項1】
甘味材料(130,230)を餅または飯(120,220)で包むか若しくは餅または飯(120,220)を甘味材料(130,230)で包んで成り、べたつく表面を有する菓子本体の当該表面の主要部または全体を、乾燥魚類を原料とした粉末、薄片またはリボン状物(110)から選ばれた一または二以上で被覆している、
菓子。
【請求項2】
甘味材料(130,230)を餅または飯(120,220)で包むか若しくは餅または飯(120,220)を甘味材料(130,230)で包んで菓子本体を作り、べたつく表面を有する菓子本体の当該表面の主要部または全体を、乾燥魚類を原料とした粉末、薄片またはリボン状物(110)から選ばれた一または二以上で被覆する、
菓子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−213444(P2009−213444A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−63166(P2008−63166)
【出願日】平成20年3月12日(2008.3.12)
【出願人】(593184352)
【Fターム(参考)】