説明

落下記録装置

【課題】落下による衝撃があったときのみの履歴を記録しながら、落下による衝撃により電池が外れた場合でも履歴を記録することのできる落下記録装置を提供する。
【解決手段】本発明の落下記録装置は、加速度を検出する加速度検出部101と、加速度検出部により検出された加速度から前記装置が落下状態かどうかの判定を行う落下状態検出部102と、衝撃を検出する衝撃検出部103と、落下状態検出部により落下状態を検出した場合に前記装置の落下開始からの時間を測定するタイマー部104と、落下状態検出部により落下状態を検出した場合に前記装置の落下の履歴を蓄積する落下履歴蓄積部106と、タイマー部により測定された時間が規定時間以内であるうちに、衝撃検出部により衝撃が検出されなかった場合には、前記落下履歴蓄積部に最後に蓄積した落下履歴情報を消去する落下履歴制御部105と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器の落下記録装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
携帯して持ち運ぶ電子機器の故障要因として落下による故障がある。しかし、一般に故障要因の解析においては、実際にユーザーが落下させたのか、通常の使用で故障したのかを判別することが難しい。そのため、落下の履歴を記録しておくことは故障要因の解析および対策検討において非常に有用である。
落下記録装置は、一般に加速度センサーを使用して加速度を監視することによって実現される。加速度は通常の使用時には1G(9.8m/s)の重力加速度が検出される。落下時には、まず加速度は0Gの自由落下状態となり、次いで床面等への着地の衝撃により数Gの加速度が検出される。落下記録装置はこれらの加速度の変化を監視して落下の発生を検出して記録する。
従来の落下記録装置としては、加速度が閾値より小さい時間が一定時間維持されたことにより、自由落下が発生したと判定する方法がある(例えば、特許文献1参照)。図5に従来の落下記録装置のブロック図を示す。従来の落下記録装置は、加速度を検出する加速度検出部501と、検出した加速度が閾値より小さい時間が一定時間維持されたことから装置が自由落下状態であることの検出を行う自由落下状態検出部502と、自由落下状態を検出した場合に自由落下履歴情報を蓄積する落下履歴蓄積部503から構成されている。この構成により、落下発生時に、加速度が閾値より小さい時間が一定時間維持されたことを検出して記録することを可能としている。
また、例えば、自由落下により加速度が0になったときから、大きな衝撃が発生するまでの時間を測定し、落下高さを算出して記録する方法がある(例えば、特許文献2参照)。図6に従来の落下記録装置のブロック図を示す。従来の落下記録装置は、加速度を検出する加速度検出部101と、検出した加速度から装置が自由落下状態かどうかの判定を行う自由落下状態検出部102と、着地時の衝撃を検出する衝撃検出部103と、落下開始からの時間を測定するタイマー部104と、落下の履歴を蓄積する落下履歴蓄積部106と、自由落下状態検出から一定時間内に衝撃を検出した場合に、自由落下開始から衝撃検知までの時間から落下高さを算出して落下履歴蓄積部106に蓄積する落下履歴制御部105とで構成されている。この構成により、落下発生時に、自由落下開始から衝撃検知までの時間から落下高さを算出して記録することを可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−105994号公報
【特許文献2】特公平5−064746号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の落下記録装置で、加速度が閾値より小さい時間が一定時間維持されたことにより落下の検出を行う方法においては、故障の要因である大きな衝撃が発生する床面等との衝突がなく、やわらかい場所に着地した場合も落下と判定してしまう。そのため、故障要因解析のための落下履歴の記録という観点からは不十分なものであった。
また、自由落下により加速度が0になったときから、大きな衝撃が発生するまでの時間を測定して記録する方法においては、落下の衝撃で電子機器の電池が外れてしまった場合に落下記録装置の動作が停止してしまい、落下の記録を残せなくなってしまうという課題を有していた。
【0005】
本発明は、このような従来の課題を解決するためになされたもので、落下による衝撃があったときのみの履歴を記録しながら、落下による衝撃により装置の電池が外れた場合でも履歴を記録することのできる落下記録装置を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の落下記録装置は、装置の加速度を検出する加速度検出部と、加速度検出部により検出された加速度から前記装置が落下状態かどうかの判定を行う落下状態検出部と、装置の衝撃を検出する衝撃検出部と、落下状態検出部により落下状態を検出した場合に装置の落下開始からの時間を測定するタイマー部と、落下状態検出部により落下状態を検出した場合に前記装置の落下の履歴を蓄積する落下履歴蓄積部と、タイマー部により測定された時間が規定時間以内であるうちに、衝撃検出部により衝撃が検出されなかった場合には、落下履歴蓄積部に最後に蓄積した落下履歴情報を消去する落下履歴制御部と、を備えた構成を有している。
【0007】
この構成により、故障の要因である大きな衝撃が発生する床面等との衝突がなく、やわらかい場所に着地した場合には、衝撃の履歴が記録されず、また、自由落下の履歴も消去されるため、故障解析に不要な記録は残さないことが可能となるとともに、かつ、故障解析に必要な落下の衝撃により電池が脱落してしまう等の動作が停止した場合の履歴も自由落下の履歴として残すことが可能となる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の落下記録装置は、必要な情報を確実に落下の履歴として残すことが可能なる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施の形態1における落下記録装置の構成を示すブロック図
【図2】本発明の実施の形態1における処理を示すフローチャートを示す図
【図3】本発明の実施の形態1における処理を示すフローチャートを示す図
【図4】本発明の実施の形態1における処理を示すフローチャートを示す図
【図5】従来の落下記録装置のブロック図
【図6】従来の落下記録装置のブロック図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の落下記録装置の実施の形態について、図面を用いて説明する。
【0011】
図1は、本発明の実施の形態1の落下記録装置の構成を示すブロック図である。
【0012】
図1において、本実施の形態の落下記録装置は、加速度を検出する加速度検出部101と、検出した加速度から装置が自由落下状態かどうかの判定を行う自由落下状態検出部102と、着地時の衝撃を検出する衝撃検出部103と、落下開始からの時間を測定するタイマー部104と、落下の履歴を蓄積する落下履歴蓄積部106と、自由落下状態を検出した場合に自由落下履歴情報を落下履歴蓄積部106に記録し、自由落下状態検出から一定時間内に衝撃を検出した場合に衝撃履歴情報を落下履歴蓄積部106に蓄積するとともに、タイマー部104が測定した時間が閾値に達したときに落下履歴蓄積部に蓄積した最後の自由落下履歴情報を消去する落下履歴制御部105とで構成されている。
【0013】
次に、動作の詳細について、図2、図3、図4を用いて説明する。
【0014】
まず、図2について説明する。加速度検出部101が加速度データをサンプリングし(step101)、次に現在のモードによって処理を切り替え(step102)、後述するそれぞれのモードに応じた処理を実行する(step103、step104)。ここで、モードとしては、落下していない状態である「待ち受け状態」と落下開始から落下終了判定までの状態を示す「落下中」の2種類がある。これら一連の処理を、適切なサンプリング周期毎に実行する。
【0015】
次に図3について説明する。図3は前述の待ち受け中の処理を示したものである。まず、自由落下検出部102が、検出した加速度が閾値以下である時間が規定時間(T0)以上継続したかどうかを判定する(step201)。判定がNoの場合はそこで処理を抜けるが、判定がYesの場合は、落下履歴制御部105が落下履歴蓄積部106に自由落下開始を記録するとともに、(step202)、タイマー部での時間計測を開始し(step203)、モードを「落下中」に変更する(step204)。
【0016】
次に図4について説明する。図4は前述の落下中の処理を示したものである。まず、着地の衝撃の有無を判定するために、衝撃検出部103が検出した加速度が閾値以上かどうかを判定する(step301)。加速度が閾値以上、つまり、着地したと判定された場合は、落下履歴制御部105が落下履歴蓄積部106に着地を記録するとともに、(step302)、タイマー部での時間計測を終了し(step303)、モードを「待ち受け中」に変更する(step304)。
【0017】
一方、step301にて検出した加速度が閾値以下であると判定された場合は、まず落下履歴制御部105がタイマー部104のタイマー値より落下中のモードを継続している時間が規定時間(T1)に到達したがどうかを判定する(step305)。ここで、T1は、一般的に落下にかかる時間より十分長い時間に設定する。落下中のモードの継続時間がT1に到達していないときは、そのまま処理を抜けるが、到達していた場合は、自由落下は開始したものの柔らかい場所等に着地する等して衝撃を受けずに着地したと判断して、落下の履歴を残さないようにするために自由落下開始の記録を消去し (step306)、タイマー部での時間計測を終了し(step303)、モードを「待ち受け中」に変更する(step304)。
【0018】
また、ここでは、自由落下の記録の消去を、タイマー部が測定した時間が規定時間に達したときとしたが、これに限定するものではなく、衝撃を検出したときにも消去するようにしてもよいし、または、落下開始ともに計時開始し、自由落下履歴を消去するときに計時停止するタイマーを別途用意し、待ち受け中、落下中のモードの違いにかかわらず常にこのタイマーを監視し、このタイマーが規定時間となったときに自由落下の記録を消去するようにしてもよい。
【0019】
自由落下開始、および、着地の記録の内容としては、タイマー部104で測定した落下時間、落下時間から算出した落下距離、衝撃検出時の加速度、自由落下検出の回数、衝撃検出の回数、等々が考えられる。なお、これらに限定するものではなく、これらの情報を適宜組み合わせても良いし、その他の情報を残しても良い。また、日時を計時する時計部を追加し、日時と合わせて記録するようにしても良い。
以上のように実施の形態1の落下記録装置によれば、自由落下開始の記録を残すとともに、自由落下を検出してから規定時間内に衝撃が無い場合は柔らかい場所に着地する等したと判断して、自由落下開始の記録を削除するようにしたことで、故障要因とならない落下の記録は残さないようにすることと、落下の衝撃で電池が外れた場合でも落下の記録を残すことの両立を実現することが可能となった。
【0020】
また、本発明の落下記録装置の落下履歴制御部を自由落下状態が一定時間続いた後に衝撃を検出した場合にも最後の自由落下履歴情報を消去するように構成した場合、衝撃履歴情報を記録した場合には不要となる自由落下履歴を消去することが可能となる。
【0021】
また、本発明の落下記録装置の落下履歴制御部を自由落下状態が一定時間続いた後に衝撃を検出したときに着地の情報を記録するように構成した場合、落下の衝撃で電池が外れた場合は自由落下開始の記録のみが残り、電池が外れなかった場合は着地の記録も残るため、落下時に電池が外れたかどうかの判定か可能となる。
また、本発明の落下記録装置の自由落下状態判定部を加速度が閾値以下である時間が規定時間以上継続したことで自由落下状態と判定するようにした場合、故障解析に必要な、一定時間以上落下したことで着地の衝撃が大きい可能性が高い落下情報をのみを記録することが可能となる。
【0022】
また、本発明の落下記録装置の衝撃検出部を加速度が閾値以上であることで衝撃の発生を検出する構成とした場合、着地の衝撃が大きい落下情報をのみを記録することが可能となる。
【0023】
また、本発明の落下記録装置のタイマー部での時間計測開始を自由落下判定部が自由落下状態と判定したときとする構成にした場合、自由落下開始からの時間を測定して、履歴の記録の制御を正確に行うことが可能となる。
【0024】
また、本発明の落下記録装置の落下履歴蓄積部に保存する情報をタイマー部で測定した時間とする構成にした場合、自由落下の時間を記録することができ、故障解析において落下の高さおよび衝撃の強さを推定することが可能となる。
また、本発明の落下記録装置の落下履歴蓄積部に保存する情報をタイマー部で測定した落下時間から算出した落下距離であるとする構成とした場合、故障解析に有用な落下距離を記録することが可能となる。
また、本発明の落下記録装置の落下履歴蓄積部に保存する情報を衝撃発生時の加速度であるとする構成とした場合、故障解析に有用な落下時の衝撃の強さを記録することが可能となる。
また、本発明の落下記録装置の落下履歴蓄積部に保存する情報を落下発生日時であるとする構成にした場合、落下発生の日時を記録することが可能となる。
【0025】
また、本発明の落下記録装置の落下履歴蓄積部に保存する情報は、自由落下状態検出の回数であるとする構成とした場合、落下の回数を瞬時に判断して、装置の取り扱われ方を類推して故障解析に有用に活用することが可能となる。
また、本発明の落下記録装置の落下履歴蓄積部に保存する情報は、衝撃検出の回数であるとする構成とした場合、落下の回数を瞬時に判断して、装置の取り扱われ方を類推して故障解析に有用に活用することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0026】
以上のように、本発明にかかる落下記録装置は、落下による衝撃があったときのみの履歴を記録しながら、落下による衝撃により電池が外れた場合でも履歴を記録することのできるという効果を有し、携帯電話機、PDAなどの落下記録装置などとして有用である。
【符号の説明】
【0027】
101 加速度検出部
102 自由落下検出部
103 衝撃検出部
104 タイマー部
105 落下履歴制御部
106 落下履歴蓄積部
501 加速度検出部
502 自由落下検出部
503 加速度検出部落下履歴蓄積部
601 加速度検出部
602 自由落下検出部
603 衝撃検出部
604 タイマー部
605 落下履歴制御部
606 落下履歴蓄積部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
落下を検出する落下検出装置であって、
前記装置の加速度を検出する加速度検出部と、
前記加速度検出部により検出された加速度から前記装置が落下状態かどうかの判定を行う落下状態検出部と、
前記装置の衝撃を検出する衝撃検出部と、
前記落下状態検出部により落下状態を検出した場合に前記装置の落下開始からの時間を測定するタイマー部と、
前記落下状態検出部により落下状態を検出した場合に前記装置の落下の履歴を蓄積する落下履歴蓄積部と、
前記タイマー部により測定された時間が規定時間以内であるうちに、前記衝撃検出部により衝撃が検出されなかった場合には、前記落下履歴蓄積部に最後に蓄積した落下履歴情報を消去する落下履歴制御部と、
を備えた落下記録装置。
【請求項2】
前記落下履歴制御部は、タイマー部により測定された時間が規定時間以内であるうちに、衝撃を検出した場合に、前記落下履歴蓄積部に衝撃の履歴を残すとともに、最後の落下履歴情報を消去することを特徴とする請求項1に記載の落下記録装置。
【請求項3】
前記落下履歴制御部は、タイマー部により測定された時間が規定時間以内であるうちに、衝撃を検出した場合に、前記落下履歴蓄積部に衝撃の履歴を残すとともに、衝撃の有無に関わらずタイマー部により測定された時間が規定の時間となったときに最後の落下履歴情報を消去することを特徴とする請求項1に記載の落下記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−99758(P2011−99758A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−254676(P2009−254676)
【出願日】平成21年11月6日(2009.11.6)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)