説明

落下防止装置

【課題】開口部下方に形成される空間部の有効利用が可能であり、簡単な構成で安価に製造できる落下防止装置の提供。
【解決手段】床面1に形成された開口部2を覆う安全ネット3と、この安全ネット3を上記の開口部2に対して略垂直な収納位置と、同じく開口部2に対して略平行でこの開口部2を覆う展開位置とを取り得るように、上記の安全ネット3の基端を回動可能に軸支する枠体と、上記の枠体5と安全ネット3との間に配置された駆動部材7とを備えた落下防止装置であって、上記の駆動部材7を、基端が枠体5に回動可能に支持されると共に、ピストンロッド8が上記開口部2と略平行方向に伸縮するように配置されたシリンダ9と、先端が上記の安全ネット3に回動可能に連結された腕部材11と、これらピストンロッド8および腕部間11に連結された二等辺三角形状をなす三角ブラケット12とから構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、落下防止装置に関し、特に、舞台装置としての迫りに用いられる落下防止装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
劇場等では、舞台や花道の床面の一部を上下動する床面、すなわち、迫りに設定し、舞台の下方の奈落からこの迫りに立ち入った演者が舞台や花道に現われる演出が行われることがある。
【0003】
ところで、このような迫りが奈落に下り、したがって、舞台や花道の床面に開口部が形成されるときには、奈落への人や物の落下を防止する必要があり、このため、従来から、この開口部の下方に落下防止装置が設けられている。
【0004】
このような落下防止装置としては、たとえば、跳ね上げ式のものがあり、この跳ね上げ式のものは、長方形の鋼製フレームの間に安全ネットを張った一対の扉を、開口部の下方に観音開きに設置した構造のものであり、迫りが下がっているときには、開口部に向かって扉が閉じられることにより、開口部を安全ネットで塞ぐようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9‐253345号公報(明細書中の段落0001〜0005参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように構成された落下防止装置においては、特に問題がある訳ではないが、以下に示す課題が発生する場合がある。
【0007】
すなわち、上記した跳ね上げ式の落下防止装置は、安全ネットを張った扉を一対の観音開き構造として開口部の下方に設置することで、これらの扉の開口部下方への突出を防止し、奈落内の空間部の有効利用を図っている。
【0008】
しかしながら、この場合には、上記一対の扉を開閉駆動させる装置が各扉に対して必要となるため、これらの駆動機構はできるだけ簡単な構成で、しかも安価に製造可能であることが望ましい。
【0009】
そこで、この発明の目的は、開口部下方に形成される空間部、たとえば、奈落内の有効利用が可能であることは勿論、簡単な構成で安価に製造できる落下防止装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するため、この発明による落下防止装置の構成を、基本的には、床面に形成された開口部を覆う安全ネットと、この安全ネットを上記の開口部に対して略垂直な収納位置と同じく開口部に対して略平行でこの開口部を覆う展開位置とを取り得るように上記の安全ネットの基端を回動可能に軸支する枠体と、この枠体と安全ネットとの間に配置された駆動部材とを備えた落下防止装置であって、上記の駆動部材を基端が上記の枠体に回動可能に支持されると共にピストンロッドが上記の開口部と略平行方向に伸縮するように配置されたシリンダと、先端が上記の安全ネットに回動可能に連結された腕部材と、上記のピストンロッドおよび腕部材間に連結された二等辺三角形状をなす三角ブラケットとから構成し、この三角ブラケットの一方の底角部を力点として上記のシリンダにおけるピストンロッドに回動可能に連結し、他方の底角部を作用点として上記の腕部材の基端に回動可能に連結すると共に、頂角部を支点として上記の枠体に設けた支持部に回動可能に連結してなるとする。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、枠体に対して回動可能に軸支された安全ネットを電動シリンダ,三角ブラケットおよび腕部材と言う簡単な構成で収納位置と展開位置とを取り得るように回動可能としたため、安価なコストで製造可能となる。
【0012】
また、上記のシリンダをそのピストンロッドが上記の開口部と並行に伸縮するように上記の枠体に対して水平状態に配置したので、シリンダの上記の開口部下方への突出を最小限に留めることができ、開口部下方に形成される空間部の有効利用を図れる。
【0013】
したがって、上記の空間部の有効利用が可能となるばかりでなく、簡単な構成で安価に製造できる落下防止装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】この発明の落下防止装置を舞台装置としての迫り具体化した実施形態を示し、一対の観音開き構造における片側の安全ネットが収納位置にある状態を示す側面図である。
【図2】図1において安全ネットが展開位置にある状態を示す側面図である。
【図3】図1における要部正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、図示した実施形態に基づいて、この発明を説明するが、図示するところでは、この発明の落下防止装置が舞台装置たる迫りに具体化されてなる。
【0016】
この落下防止装置は、一対の観音開き構造として迫りの開口部の下方に配置されており、図1〜図3においては片側のみを図示するが、床面1に形成された開口部2を覆う安全ネット3と、この安全ネット3を上記の開口部2に対して略垂直な収納位置と、同じく開口部2に対して略平行でこの開口部2を覆う展開位置とを取り得るように、上記の安全ネット3の基端を回動可能に軸支する枠体5と、上記の枠体5と安全ネット3との間に配置された駆動部材7とを備えてなる。
【0017】
そして、この落下防止装置にあっては、上記の駆動部材7を基端が枠体5に回動可能に支持されると共にピストンロッド8が上記の開口部2と略平行方向に伸縮するように配置されたシリンダと、先端が上記の安全ネット3に回動可能に連結された腕部材11と、上記のピストンロッド8および腕部材11間に連結された略二等辺三角形状をなす三角ブラケット12とから構成し、この三角ブラケット12の一方の底角部12aを力点として上記のシリンダにおけるピストンロッドに回動可能に連結し、他方の底角部12bを作用点として上記の腕部材11の基端に回動可能に連結すると共に、頂角部12cを支点として上記の枠体5に設けた支持部5aに回動可能に連結している。
【0018】
以下、さらに詳述すると、上記の床面1は、木製の大引き1aと、この大引き1aの上に配置された同じく木製の根太1bと、この根太1bの上面に配置された複数枚の床板1cとによって構成されると共に、これら床面1は、コンクリート製の梁4の上に同じくコンクリート製の支持部材4bを介して配置されている。
【0019】
そして、上記の大引き1a,根太1bおよび床板1cの先端(図1および図2における右側を言う)に配置した枠部材2aによって上記の開口部2が形成されると共に、枠部材2aの下端には目隠し用の幕板2bが取付けられている。
【0020】
上記の枠体5は、上記の梁4に連結部材13を介して取付けられる上部フレーム14と、上部フレーム14の基端側(図1および図2における左側を言う)から下方に突出する取付けフレーム15と、上部フレーム14から取付けフレーム15に連結された補強フレーム16とから構成されており、上記の連結部材13は、梁4の先端側となる上記の開口部2側下面に接着系アンカー17を用いて固定されている。
【0021】
また、梁4における基端側下面には下方へ突出する取付部4cが設けられており、この取付部4cを挟むように上記取付フレーム15が取付けられている。
【0022】
取付けフレーム15は、上記の補強フレーム16が接合された先端側フレーム15aと、取付部4cを挟んだ反対側に配置された基端側フレーム15bと、これら先端側および基端側フレーム15a,15bの下端において連結された下部フレーム15cとから構成されている。
【0023】
そして、先端側フレーム15aおよび基端側フレーム15bは、上記の付部4cの側面に対しては取付板18を介して上記接着系アンカー17を用いて固定され、取付部4cの下面に対しては上記の取付板18に連結されたフランジ部材18aを介して上記の接着系アンカー17を用いて固定されている。
【0024】
上部フレーム14の先端には軸受け部材20がボルトおよびナット(符示せず)を用いて固定されており、この軸受け部材20に対して上記の安全ネット3の基端が回動可能に軸支されている。
【0025】
安全ネット3は、図示はしないが、ハシゴ状をなす金属製の枠部材に金網を取付けることによって形成され、人等が落下しても安全に受け止められるようになっている。
【0026】
また、安全ネット3の裏面(図1および図2における左側を言う)にはネット用軸受け部材21が設けられ、このネット用軸受け部材21には上記の腕部材11の先端(図1および図2における右側を言う)が回動可能に連結されている。
【0027】
上記の軸受け部材20と隣接する上部フレーム14の下面には上記の支持部5aがボルトおよびナット(符示せず)を用いて固定されており、この支持部5aに対して上記三角ブラケット12の頂角部12cが支点として回動可能に連結されている。
【0028】
上記の支持部5aと隣接する上部フレーム14の下面には先端に検出センサとしての光電管22が取付けられた検出部材23が下方に向かって延設されており、上記の開口部2に向かって上昇する迫り上におけるはみ出し部分の有無を検出するようになっている。
【0029】
上記の下部フレーム15cには、図示しない電動モータの回転駆動が伝達されることでピストンロッド8が伸縮するシリンダとしてのボールネジタイプの電動シリンダ9の基端が、回動可能に取付けられると共に、そのピストンロッド8が上記の開口部2と略並行方向へ伸縮するように略水平状態に配置されている。
【0030】
なお、図示する実施の形態では、複数の電動シリンダ9を一個の電動モータで駆動するよう構成されており、各電動シリンダ9を用いて安全ネット3の展開位置と収納位置と設定するための回転数検出機28が連結ベルト29により連結されている。
【0031】
上記の腕部材11の基端(図1および図2における左側を言う)には上記の三角ブラケット12の他方の底角部(図1、2における右側を言う)12bが力点として回動可能に軸支されており、上記の電動シリンダ9のピストンロッド8先端にはこの三角ブラケット12の一方の底角部12aが力点として回動可能に軸支されている。
【0032】
したがって、上記の電動シリンダ9のピストンロッド8を伸長させることで、図2に示すように、三角ブラケット12を上方へ回動させると共に、その他方の底角部12bに連結された腕部材11を介して上記の安全ネット3を上記の開口部2と略並行となってこの開口部2を覆う展開位置へ回動させ、また、この状態からピストンロッド8を収縮させることで、図1に示すように、三角ブラケット12を下方へ回動させると共に、その他方の底角部12bに連結された腕部材11を介して上記の安全ネット3を上記の開口部2と略垂直となる収納位置へ回動させるようになっている。
【0033】
図3に示すように、上記の一対の安全ネット3が配置された開口部2の側面側と隣合う側面には、基端が第2の梁26に上記の接着系アンカー17を用いて固定された取付部材24が上記の開口部2と略並行に延設されると共に、この取付部材24の先端には開口部2と垂直方向に延設される固定フェンス25が取付けられており、この部分から人や物が落下しないようになっている。
【0034】
上記のように構成されたこの実施形態の落下防止装置の作用を説明すると、床面1に形成された上記の開口部2は、図示しない迫りが上昇してくると、この開口部2が塞がれるようになっており、この場合には、図1に示すように、上記の安全ネット3は、開口部2に対して略垂直な収納位置にある。
【0035】
その後、迫りが奈落の下方に下降し、その状態を維持している場合には、上記の電動モータを駆動させて電動シリンダ9を伸長させる。
【0036】
すると、電動シリンダ9のピストンロッド8の伸長動作によって、図2に示すように、三角ブラケット12が上記の頂角部12cを支点として上方へ回動すると共に、その他方の底角部12bに連結された腕部材11を押し上げることで、上記の安全ネット3を上記開口部2と略並行でこの開口部2を覆う展開位置へ回動する。
【0037】
したがって、この状態では、上記した一対の安全ネット3と、上記の固定フェンス25とで開口部2の四方が囲まれるので、人や物が落下してもこれらによって安全且つ確実に保持される。
【0038】
その後、上記の電動モータを駆動させて電動シリンダ9を収縮させると、電動シリンダ9のピストンロッド8の収縮動作によって、図1に示すように、三角ブラケット12が上記の頂角部12cを支点として下方へ回動すると共に、その他方の底角部12bに連結された腕部材11を引き込むことで、上記の安全ネット3を上記の開口部2と略垂直となる収納位置へ回動する。
【0039】
以上、詳述したように、この実施形態の落下防止装置によれば、枠体5に対して回動可能に軸支された安全ネット3を、電動シリンダ9,三角ブラケット12および腕部材11と言う簡単な構成で収納位置と展開位置とを取り得るように回動可能としたため、安価なコストで製造可能となる。
【0040】
また、上記した構成を床面1の下方に設けた梁4に取付けられる上部フレーム14と、上部フレーム14の基端側から下方に突出する取付けフレーム15と、上部フレーム14から取付けフレーム15に連結された補強フレーム16とから構成される枠体5に設けてユニット化したので、上記梁4に対する組付け性の向上やコンパクト化が可能となる。
【0041】
また、上記の電動シリンダ9をそのピストンロッド8が上記の開口部2と並行に伸縮するように上記の枠体5内に対して水平状態に配置したので、電動シリンダ9の上記の開口部2下方への突出を最小限に留めることができ、奈落内の空間部の有効利用を図れる。
【0042】
また、複数の電動シリンダ9を一個の電動モータで駆動するよう構成すると共に、上記の回転数検出器28で各電動シリンダ9を用いて安全ネット3の展開位置と収納位置と設定を行っているので、部品点数を減らして安価に製造可能となるばかりでなく、安全ネット3の回動動作を正確に行える。
【0043】
なお、この実施形態では、安全ネット3が一対の観音開き構造として迫りの開口部2の下方に配置されているが、必ずしも観音開き構造とする必要はなく、一方側から安全ネット3が開口部2を覆うように回動する構成としても良いことはもちろんである。
【0044】
また、この実施形態では、シリンダとして電動シリンダ9を用いたが、これに限定されるものではなく、油圧シリンダを用いても良いことはもちろんである。
【産業上の利用可能性】
【0045】
舞台装置たる迫りへの利用に向く。
【符号の説明】
【0046】
1 床面
2 開口部
3 安全ネット
5 枠体
5a 指示部
7 駆動部材
8 ピストンロッド
9 シリンダ
11 腕部材
12 三角ブラケット
12a 一方の底角部
12b 他方の底角部
12c 頂角部
14 上部フレーム
15 下部フレーム
16 補強フレーム
22 光電管(検出センサ)
23 検出部材


【特許請求の範囲】
【請求項1】
床面に形成された開口部を覆う安全ネットと、この安全ネットを上記の開口部に対して略垂直な収納位置と、同じく開口部に対して略平行でこの開口部を覆う展開位置とを取り得るように、上記の安全ネットの基端を回動可能に軸支する枠体と、上記の枠体と安全ネットとの間に配置された駆動部材とを備えた落下防止装置であって、上記の駆動部材を、基端が枠体に回動可能に支持されると共に、ピストンロッドが上記の開口部と略平行方向に伸縮するように配置されたシリンダと、先端が上記の安全ネットに回動可能に連結された腕部材と、これらピストンロッドおよび腕部材間に連結された略二等辺三角形状をなす三角ブラケットとから構成し、この三角ブラケットの一方の底角部を力点として上記シリンダのピストンロッドに回動可能に連結し、他方の底角部を作用点として上記の腕部材の基端に回動可能に連結すると共に、頂角部を支点として上記の枠体に設けた支持部に回動可能に連結したことを特徴とする落下防止装置。
【請求項2】
上記シリンダがボールネジを用いた電動シリンダとされてなる請求項1記載の落下防止装置。
【請求項3】
上記の枠体が床面の下方に設けた梁に取付けられる上部フレームと、上部フレームの基端側から下方に突出する取付けフレームと、上部フレームから取付けフレームに連結された補強フレームとから構成され、上部フレームの先端に上記の安全ネットの基端が回動可能に軸支されると共に、この安全ネットと近接した上部フレームに上記支持部が設けられ、さらに、取付けフレームに上記のシリンダの基端が回動可能に支持されてなる請求項1記載の落下防止装置。
【請求項4】
上記の上部フレームには、上記の開口部に向かって上昇する可動床上におけるはみ出し部分の有無を検出する検出センサを設けた検出部材が取付けられてなる請求項1記載の落下防止装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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