説明

落雪式屋根

【課題】一般に緩勾配の屋根では、屋根の落雪する作用が弱いため雪が屋根上に堆積しやすく、豪雪地方では雪下ろしが必要となる。一方、急勾配の屋根は雪下ろしが不要となる反面、その分住宅が高価なものになる。本発明は、緩勾配の屋根より落雪作用が強い住宅を屋根全体を急勾配とした住宅より廉価に提供するものである。
【解決手段】屋根全体としては緩勾配であるが、棟付近は急勾配の屋根とする。または既存の住宅の棟およびその近傍の屋根の形状に適合する形状をした弾性体の底と、急勾配の剛体の平面により構成された構造物を棟の上に装着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は住宅の構造および住宅の屋根に付着する構造物に関し、特に屋根の落雪作用を助長する発明に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の落雪方式の屋根には、軒の急勾配と小屋裏からの熱気により屋根の雪を軒先より順に落下させるものがある。
【特許文献1】特開2002−021370号公報。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
一般に緩勾配の屋根では、屋根の落雪する作用が弱いため雪が屋根上に堆積しやすく、豪雪地方では雪下ろしが必要となる。
【0004】
一方、急勾配の屋根は落雪作用が強く雪下ろしが不要となるが、反面、住宅の高さが増しその分材料費や工賃が掛かり高価なものになる。
【0005】
特許文献1記載の従来技術は、小屋裏からの熱気により屋根上の雪が滑落する作用を増すが、外壁中心線より内側の屋根の勾配が緩いため、落雪作用は小さい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
屋根全体としては緩勾配であるが、棟付近は急勾配の屋根とする。(請求項1記載の発明)
【0007】
底部に棟およびその近傍の屋根の形状に適合する形状の窪みを有し、当該底部以外は棟およびその近傍の屋根の勾配より急な勾配の平面により構成された弾性体と、当該平面を覆う剛体の建材によって構成された構造物を棟の上に装着させる。(請求項2記載の発明)
【発明の効果】
【0008】
棟近辺に急勾配の屋根を形成することにより、急勾配の屋根に堆積した雪は隣接する緩勾配の屋根に堆積した雪に落雪する方向に力を加える。
【0009】
その力は徐々に伝わり、軒近辺の雪または屋根全体の雪を落雪させる力となる。
【0010】
落雪する作用は緩勾配の屋根にもあるが、雪の付着力によりその力は相殺されることが多い。
【0011】
一方、屋根の勾配が雪の安息角を越えると(例えば丸い形状のあられの場合は約45度)、落雪作用は強まる。
【0012】
本発明は、棟近辺に急勾配の屋根を設けることで屋根全体の落雪作用を増すが、屋根全体を急勾配とした住宅より廉価な住宅を提供するものである。
【0013】
また本発明を特許文献1記載の従来技術に適用すれば、屋根全体の落雪作用が増し円滑な落雪が可能となる。
【0014】
請求項2の発明は、すでに出来上がった緩勾配の住宅に対し、大掛かりな改築をすることなく請求項1の発明と同等の効果をもたらすものである。
【0015】
既成の住宅の棟の上に本発明を結合することで棟近辺に急勾配が形成され、屋根全体の落雪作用を増すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1に請求項1の発明の最良の形態である木造住宅の構造を示す。
【0017】
図1中、1は棟木であり、2aおよび2bは母屋であり、3は鼻母屋であり、4は瓦であり、5は垂木であり、6は軒天井であり、7は真束であり、8は二重梁であり、9aおよび9bは小屋束であり、10は方杖であり、11は小屋梁であり、12aおよび12bおよび12cは敷桁であり、13aおよび13bおよび13cは柱である。
【0018】
図1に見るように棟木1近辺の屋根および軒は急勾配となっているが、それ以外の屋根は緩勾配となっている。
【0019】
図2に請求項1の発明の最良の形態に雪が積もった状態を示す。
【0020】
図2中、14は屋根に積もった雪であり、15は緩勾配に積もった雪を急勾配に積もった雪が押す力であり、16は軒に積もった雪が緩勾配に積もった雪を引っ張る力であり、17は力15および力16を受ける積雪の範囲の想像線である。
【0021】
棟木1近辺の屋根は急勾配でありこのため落雪しようとする力が強い。
【0022】
しかしながら棟木1近辺の屋根に積もった雪は、緩勾配に積もった雪に阻まれ落雪することができない。
【0023】
このため棟木1近辺の屋根に積もった雪は、緩勾配に積もった雪に力15を及ぼす。
【0024】
一方、軒においても勾配が急となっており、このため軒に積もった雪は落雪しようとする力が強い。
【0025】
しかし雪の粘弾性が軒に積もった雪が落雪しようとする力より強い場合、雪は落雪せずそのまま軒に留まり、緩勾配に積もった雪に引っ張る力16を及ぼす。
【0026】
力15および力16は共に緩勾配に積もった雪を落雪させるように働き、このため屋根全体の落雪する作用は強まる。
【0027】
図3に請求項1の発明の最良の形態で使用する屋根材とその作用を示す。
【0028】
図3中、18はトタンであり、19はガラスであり、20は積雪であり、21は日光の想像線であり、22は熱伝導の想像線である。
【0029】
ガラスなどの親水性のある物質は、疎水性素材より滑雪特性が優れている。
【0030】
一方、金属の熱伝導性はガラスなどの非結晶物質より優れている。
【0031】
本発明の最良の形態では、おもて面をガラスでコーティングしたトタンを屋根材として使用する。
【0032】
図3に見るように、斜面の雪が滑落することにより屋根に積雪していない屋根材が現れる。
【0033】
この積雪していない屋根材に日光21が当たるとその熱はトタン18を熱伝導22となって伝わる。
【0034】
この結果、積雪20の下のガラス19の温度が上昇し、積雪20の底部の雪が一部融解する。
【0035】
これにより雪20の付着力は低下し、屋根の落雪作用は高まる。
【0036】
図4に請求項2の発明の最良の形態の構造を示す。
【0037】
図4中、23はポリウレタンであり、24はホーロー鋼板である。
【0038】
ポリウレタン23の底部は、装着する屋根の形状に加工されており、底部以外は平面で構成されているが平面のなす角は90度以下とする。
【0039】
ポリウレタン23の平面は、ホーロー鋼板24に覆われ、両者は接着剤により結合されている。
【0040】
図5に請求項2の発明の最良の形態を適用した木造住宅の構造を示す。
【0041】
図5に見るように請求項2の発明の最良の形態を木造住宅の棟近辺に装着することにより、棟近辺の屋根は急勾配となる。
【0042】
このことにより屋根に雪が積もった場合、急勾配に積もった雪が緩勾配に積もった雪を押し、屋根全体の落雪作用が高まる。
【0043】
請求項2の発明は、風で容易に飛ばされない重さとし、既存の屋根に接着剤等で固定する。
【実施例1】
【0044】
本発明における急勾配は、約45度とする。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、豪雪地帯など雪下ろしの必要な地域の住宅に適する。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】請求項1の発明の最良の形態である木造住宅の構造を示す図である。
【図2】請求項1の発明の最良の形態に雪が積もった状態を示す図である。
【図3】請求項1の発明の最良の形態で使用する屋根材とその作用を示す図である。
【図4】請求項2の発明の最良の形態の構造を示す図である。
【図5】請求項2の発明の最良の形態を適用した木造住宅の構造を示す図である。
【符号の説明】
【0047】
1 棟木
2a,2b 母屋
3 鼻母屋
4 瓦
5 垂木
6 軒天井
7 真束
8 二重梁
9a,9b 小屋束
10 方杖
11 小屋梁
12a,12b,12c 敷桁
13a,13b,13c 柱
14 屋根に積もった雪
15 緩勾配に積もった雪を急勾配に積もった雪が押す力
16 軒に積もった雪が緩勾配に積もった雪を引っ張る力
17 力15および力16を受ける積雪の範囲の想像線
18 トタン
19 ガラス
20 積雪
21 日光の想像線
22 熱伝導の想像線
23 ポリウレタン
24 ホーロー鋼板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
棟付近における急勾配屋根と当該急勾配屋根の裾から外壁中心線までの緩い勾配屋根を特徴とした住宅。
【請求項2】
底部に住宅の棟およびその近傍の屋根の形状に適合する形状の窪みを有し、当該底部以外は当該棟およびその近傍の屋根の勾配より急な勾配の平面により形成された弾性体と、当該平面を覆う剛体の建材によって構成された屋根の付属構造物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−205037(P2007−205037A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−25156(P2006−25156)
【出願日】平成18年2月1日(2006.2.1)
【出願人】(305025887)