説明

葉除去装置

【課題】植物を連続的に流しながら葉を取り除くことができるようにして効率よく葉を取り除くことにある。
【解決手段】刈り取った長尺状の茎92を有する植物90から該植物90の茎92に備えられた枝葉94を除去する葉除去装置10であって、回転駆動源からの回転動力により回転させられる回転軸30a〜c,32a〜cと、該回転軸30a〜c,32a〜cに設けられ該回転軸30a〜c,32a〜cの回転により連れ回り回転し枝葉94を叩打して枝葉94を茎92から落すことのできる可撓性の線状部材40とを有し、線状部材40を植設した回転軸30a〜c,32a〜cが、植物90をその長尺状の茎92を並列状態として搬送する搬送経路24に沿って複数個配設されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、葉除去装置に関する。より詳しくは、刈り取った長尺状の茎を有する植物から該植物の茎に備えた枝葉を除去する葉除去装置に関する。
【背景技術】
【0002】
チョマ(苧麻、ラミー)等の草本から得られる繊維は、近年、非木材繊維として環境保全の観点でその更なる普及が期待されている。中でも、チョマは1年間に複数回収穫可能であり、茎の靭皮から得られる繊維は特に強靭であるため各種分野への展開が期待されている。チョマから靭皮繊維を得るためには、先ず収穫したチョマの茎から葉を取り除き、茎を分離することが必要となる。チョマは直立した分岐しない茎に柔らかい葉が付いているので、茎を手で扱けば比較的容易に取り除くことができるが、手作業では時間がかかり効率が悪かった。
【0003】
ところで、特許文献1には、菊の切花の茎の下の方に付いた不要な葉を取り除く装置が開示されている。この装置では、水平に保持された菊に対して茎の軸方向と直交する軸周りに回転するブラシが設けられている。その回転ブラシが葉を掻き落としながら茎の軸方向に沿って移動することで不要な葉を取り除くことができる。
【0004】
また、特許文献2には、松の枝に付いた葉を取り除く装置が開示されている。この装置では、湾曲したワイヤの両端が水平な回転軸に固定されており、回転するワイヤで葉を掻き落とす構成となっている。回転軸が上下移動するとともに、枝を自転させることにより、葉を万遍なく取り除くことができる。
【0005】
【特許文献1】特開平6−292460号公報
【特許文献2】特開平1−157317号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1,2に記載の装置を用いて葉を取り除けば人手を削減することはできる。しかし、これらの装置では、植物を一定位置で保持した状態で葉を取り除く処理するため、処理効率の向上には限界があった。
【0007】
そこで、本発明の課題は、植物を連続的に流しながら葉を取り除くことができるようにして効率よく葉を取り除くことにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するために以下の手段をとる。
第1の発明は、刈り取った長尺状の茎を有する植物から該植物の茎に備えられた枝葉を除去する葉除去装置であって、回転駆動源からの回転動力により回転させられる回転軸と、該回転軸に設けられ該回転軸の回転により連れ回り回転し枝葉を叩打して枝葉を茎から落すことのできる可撓性の線状部材とを有し、前記線状部材を備えた回転軸が、前記植物をその長尺状の茎を並列状態として搬送する搬送経路に沿って複数個配設されていることを特徴とする。
第1の発明によれば、連れ周り回転する可撓性の線状部材を備えた回転軸が植物の搬送経路に沿って配設されている。これは、回転軸が植物の搬送経路の脇に植物とは一定距離を保って回転軸が設けられていることを意味しており、植物の搬送方向と回転軸との相対角度は限定するものではない。回転する可撓性の線状部材により搬送されている植物の枝葉を叩打して取り除くため、植物を連続的に流しながら葉を取り除くことができる。そして、植物をその長尺状の茎を並列状態として搬送するように構成されているので、植物の茎の一端を保持して搬送することができ、より容易に搬送することが可能となっている。したがって、効率よく葉を取り除くことができる。
【0009】
第2の発明は、前記回転軸は前記搬送経路を搬送される植物の茎に対して直交方向に配設されていることを特徴とする。
第2の発明によれば、回転軸に備えられた線状部材は植物の葉を該植物の搬送方向と直交する方向に叩打することとなる。そのため、叩打する作用力により植物全体が撓んだり揺れ動いたりしにくいため、搬送されている植物の枝葉をより確実に除去することができる。
【0010】
第3の発明は、前記植物の搬送経路と前記回転軸との間に、前記植物の茎が回転軸に近づくのを妨げることのできるガイドバーを配設したことを特徴とする。
第3の発明によれば、ガイドバーにより植物の茎が回転軸に近づくのが妨げられるため、植物全体が回転軸に巻き込まれるのを防ぐことができる。植物の茎が回転軸に近づくのを妨げることのできるガイドバーは、例えば、回転軸を水平に設けた場合は、回転軸又は植物の搬送経路と平行に設けることができる。
【0011】
第4の発明は、前記搬送経路の植物の搬送は、該植物の茎の一端を両側から把持して搬送するコンベヤ式の搬送手段により行われることを特徴とする。
第4の発明によれば、植物の搬送がコンベヤ式の搬送手段により自動化されることにより、より容易に枝葉を除去することができる。
【0012】
第5の発明は、前記コンベヤ式の搬送手段の両側のコンベヤの搬送速度を異ならせて、植物の搬送時に植物の茎を自転させることを特徴とする。
第5の発明によれば、植物の茎を自転させることにより、茎周りのどの位置に付いた枝葉もより容易に除去することが可能となる。
【発明の効果】
【0013】
上記第1の発明によれば、植物を連続的に流しながら葉を取り除くことができるようにして効率よく葉を取り除くことができる。
上記第2の発明によれば、より確実に枝葉を除去することができる。
上記第3の発明によれば、植物全体が回転軸に巻き込まれるのを防ぐことができる。
上記第4の発明によれば、より容易に枝葉を除去することができる。
上記第5の発明によれば、茎周りのどの角度に付いた枝葉もより容易に除去することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら本実施形態の葉除去装置について説明する。本実施形態の葉除去装置10は、刈り取った長尺状の茎を有する植物から該植物の茎に備えられた枝葉を除去することができるものである。ここでは、チョマの葉を除去する実施形態を例に挙げて説明する。チョマは、茎が次々と葉をつけながら上に伸びる草本である。茎の上の方で新しい葉ができる一方、下の方の葉は枯れて落下する。そのため、典型的には、根元で切って刈り取ったチョマの茎には生育状態の上下で見て上方の約3分の2に葉が付いている。なお、図1には、刈り取られたチョマ90を生育状態の上下で見て上下反転させた下向き状態で示している。以下、生育しているチョマの茎を根元で切って刈り取ったものを単にチョマと称する。
【0015】
葉除去装置10は、箱を左右に分割したような一対のハウジング20,22を有しており、このハウジング20,22が間隔をあけて相対向して設置されている。葉除去装置10は、ハウジング20,22内に、複数のワイヤ40・・40の植設された6本の回転軸30a〜c,32a〜cと、6本のガイドバー50・・50とを備えている。そして、ハウジング20,22の上面には植物を搬送する搬送手段60が備えられている。この葉除去装置10は、下向き状態のチョマ90の上端(生育状態の根元)を搬送手段60で把持し、図1に矢印で示されるように水平方向に搬送する。したがって、複数のチョマ90は、茎92が相互に平行な並列状態で搬送される。そして、チョマ90がハウジング20,22の間に設けられた通路24を通過している間に葉94をワイヤ40で叩き落して茎92から取り除くように構成されている。
【0016】
回転軸30a〜c,32a〜cは、それぞれその軸方向がチョマ90の搬送経路(通路24)と平行に、言い換えればチョマ90の茎92に対して直交するように配設されており、各ハウジング20,22内に3本ずつ上下方向に並べて回転可能に支承されている。各回転軸30a〜c,32a〜cは、図示しない回転駆動源からの回転動力により回転可能となっており、その回転方向がチョマ90が搬送される通路24側で下向きになるように設定されている。すなわち、図2で見て、通路24の右側に設けられた回転軸30a〜cは左回り、通路24の左側に設けられた回転軸32a〜cは右回りに回転する。
各回転軸30a〜c,32a〜cには、その表面に複数のワイヤ40・・40が植設されている。このワイヤ40は、プラスチックを細長く成形した可撓性の部材であり、本発明の線状部材に相当する。ワイヤ40は、一端が回転軸30a〜c,32a〜cの表面に固定されており、他端が回転軸30a〜c,32a〜cの外方向に突出している。回転軸30a〜c,32a〜cの回転により連れ回り回転する。ワイヤ40は、回転時に通路24を搬送されるチョマ90の葉94に当たり、且つ後述するガイドバー50に当たらない長さに設定されており、回転してチョマ90の葉94(葉身94a、葉柄94b)を叩打して茎から落す。なお、図2においては、通路24の左側には複数のワイヤ40が連れ回し回転する様子が示されており、通路24の右側にはワイヤ40がチョマ90の葉94を落す様子が示されている。回転軸30a〜c,32a〜cの回転速度は、ワイヤ90がチョマ90の茎92に当たった場合でも靭皮を傷つけない程度に調整するのが好ましい。
【0017】
ガイドバー50は、棒状の鋼材からなり、図3に示されるように直線状のガイド部52の両端を折り曲げて全体を長尺なコの字状に形成したものである。ガイド部52が回転軸30a〜c,32a〜cの全長と略同じ長さである。ガイドバー50・・50は、通路24を搬送されるチョマ90と回転軸30a〜c,32a〜cとの間において、そのガイド部52がチョマ90の茎92に対して直交方向に配置され、両端部がハウジング20,22に固定されている。このガイドバー50のガイド部52により通路24の両側が区切られている。したがって、ガイドバー50によりチョマ90の茎92が回転軸30a〜c,32a〜cに近づくのが妨げられている。この葉除去装置10は、チョマ90の茎92が両側をガイドバー50・・50で区切られた通路24を通過するとき、広がった葉94に回転したワイヤ40が当たり、葉が落されるようになっている(図2参照)。
【0018】
植物を搬送する搬送手段60は、コンベア式の搬送手段であり、平行して設けられた一対のベルトコンベア60a,60bで構成されている。ベルトコンベア60a,60bは、それぞれ環状ベルト62,66と、2本のローラ64,64,68,68とを有している。2本のローラ64,64,68,68は、通路24の入り口側と出口側において、その回転軸が垂直に設置されている。そして、入り口側と出口側のローラ64,64,68,68に環状ベルト62,66が掛け渡されている。入り口側又は出口側のローラ64,68は図示しない回転駆動源からの回転動力により回転可能となっており、その回転するローラ64,68に従動して環状ベルト62,66が回転するようになっている。そして、2つのベルトコンベア60a,60bの環状ベルト62,66でチョマ90の茎92を挟み込み、当該環状ベルト62,66の弾発力により茎92を把持して搬送することができる。
【0019】
この葉除去装置10では、チョマ90は、生育状態で見て上下反転した略垂直な状態で根元側の葉94のない部分が搬送手段60を構成する環状ベルト62,66に両側から把持されて水平に搬送される。ワイヤ40が植設された回転軸30a〜c,32a〜cは、搬送されるチョマ90の葉94の付いた部分に対応する高さ位置全体に対応可能なように左右3段ずつ設けられており、茎92の軸方向のどの位置に付いた葉94も叩き落すことができるようになっている。叩き落された葉は、当該葉除去装置10の下部に設けられた傾斜したトレー70に落下し、トレー70の傾斜に沿って自然落下して葉除去装置10の外へ排出されるようになっている。
【0020】
以上の構成の葉除去装置10によれば、以下の作用効果を奏する。
可撓性のワイヤ40で葉を叩打するため、チョマのように葉の柔らかい草本植物であっても、該植物を搬送しながら葉を取り除くことができる。
また、ワイヤ40に葉94が巻き付いて回転軸30a〜c,32a〜cのいずれかにチョマ90全体が引っ張られた場合であっても、ガイドバー50に茎92が当接して、茎92が回転軸30a〜c,32a〜cに近づくのが妨げられる。したがって、チョマ90のように茎の柔らかい草本植物であっても、茎92までもが回転軸30a〜c,32a〜cに巻き込まれるのを防ぐことができる。
また、ワイヤ40の植設された回転軸30a〜c,32a〜cが上下に並べて設置されており、チョマ90の軸方向全体の葉を一度に処理することができる。
また、回転軸30a〜c,32a〜cがチョマ90の茎92に対して直交方向に配設されていることにより、ワイヤ40は、チョマ90の搬送方向と直交する方向に葉94を叩打することとなる。そのため、葉94を叩打する作用力によりチョマ90全体が搬送方向に揺れ動いたり撓んだりすることがなく、より効率よく葉94を取り除くことができる。
また、茎92を並列状態として一方向に搬送するため、茎92の一端のみを把持しながら搬送するようになっており、コンベア式の単純な搬送手段により連続的に搬送することが可能である。なお、各ベルトコンベア60a,60の環状ベルト62,66の回転速度を変えることで茎92を自転させながら搬送すれば、より取り残しなく葉94を取り除くことができる。
【0021】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲内でその他種々の実施形態が考えられるものである。
例えば、可撓性の線状部材は直線状のものに限定されず、直線状のワイヤの先端に結び目を形成したものでもよい。結び目を形成することで枝葉に対する衝撃性を高めることができる。また、図4に示すように両端が回転軸32aに固定されたループ状の線状部材41を用いてもよい。また、材質はプラスチックに限定されず、例えばゴムやロープであってもよい。また、可撓性の線状部材を回転軸に設ける手段は特に限定されるものではなく、上記実施形態のように、植えたように設けられていても(植設されていても)よいし、例えば、空回りしないように回転軸に縛り付けて取付けられていてもよい。
植物の搬送手段は、必ずしも限定されるものではなく、コンベア式でない自動化された搬送手段を用いてもよいし、手で搬送してもよい。
また、上記実施形態においては、植物の茎を垂直状態として水平に搬送しその搬送経路(通路24)に沿って回転軸30a〜c,32a〜cを水平に配設した例を示したが、植物の搬送経路に沿って設けられた回転軸の植物の搬送方向に対する相対角度は限定されるものではない。回転軸を植物の搬送経路の脇に垂直に立てて並べてもよい。あるいは、植物の搬送方向に対して回転軸を相対的に傾斜させて設けてもよい。例えば、上記実施形態を参照して説明すると、水平に設けられた回転軸30a〜c,32a〜cに対して、垂直なチョマ90を斜め上又は斜め下方向に角度をもって搬送してもよい。それにより、茎全体の葉をより確実に除去することができる。また、植物の茎が相互に並列状態として搬送されれば、その搬送方向は水平方向に限定されず、例えば垂直方向であってもよい。
また、葉を排出する手段は傾斜したトレー70に限らず、強制的に排出可能なコンベア等を用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本実施形態の斜視図である。
【図2】図1に示す葉除去装置のII−II線断面図である。
【図3】図1に示す葉除去装置のIII−III線断面図である。
【図4】ワイヤの変更例を図2に示すIV部分に対応して拡大して示した図である。
【符号の説明】
【0023】
10 葉除去装置
24 通路(搬送経路)
30a〜c,32a〜c 回転軸
40 ワイヤ(線状部材)
41 線状部材
50 ガイドバー
60 搬送手段
60a,60b ベルトコンベア
90 チョマ
92 茎
94 葉


【特許請求の範囲】
【請求項1】
刈り取った長尺状の茎を有する植物から該植物の茎に備えられた枝葉を除去する葉除去装置であって、
回転駆動源からの回転動力により回転させられる回転軸と、該回転軸に設けられ該回転軸の回転により連れ回り回転し枝葉を叩打して枝葉を茎から落すことのできる可撓性の線状部材とを有し、
前記線状部材を備えた回転軸が、前記植物をその長尺状の茎を並列状態として搬送する搬送経路に沿って複数個配設されていることを特徴とする葉除去装置。
【請求項2】
請求項1に記載の葉除去装置であって、
前記回転軸は前記搬送経路を搬送される植物の茎に対して直交方向に配設されていることを特徴とする葉除去装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の葉除去装置であって、
前記植物の搬送経路と前記回転軸との間に、前記植物の茎が回転軸に近づくのを妨げることのできるガイドバーを配設したことを特徴とする葉除去装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のうちいずれか1項に記載の葉除去装置であって、
前記搬送経路の植物の搬送は、該植物の茎の一端を両側から把持して搬送するコンベヤ式の搬送手段により行われることを特徴とする葉除去装置。
【請求項5】
請求項4に記載の葉除去装置であって、
前記コンベヤ式の搬送手段の両側のコンベヤの搬送速度を異ならせて、植物の搬送時に植物の茎を自転させることを特徴とする葉除去装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−142208(P2009−142208A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−322907(P2007−322907)
【出願日】平成19年12月14日(2007.12.14)
【出願人】(000110321)トヨタ車体株式会社 (1,272)
【出願人】(503421667)株式会社 匠 (1)
【出願人】(501199405)有限会社新福青果 (1)