説明

蒟蒻含有動物用飼料

【目的】 蒟蒻を含有したダイエット用動物用飼料を提供する。
【効果】 低カロリ−かつ低コストで、嗜好性の高い動物用飼料を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイット用動物用飼料に関し、さらに詳しくは、犬、猫等の雑食、肉食性ペット用のダイット用飼料、および、動物園などで飼育される雑食、肉食性動物用のダイット用飼料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ペットとして犬、猫などを飼育する家庭が増加しているが、とかく食事の取りすぎなどにより、肥満状態に陥っていることが少なくない。
【0003】
愛犬の病気と若死は食べすぎ、肥えすぎに始まる。犬にとって「肥満」ほどやっかいな病気はない。コロコロと太って元気だった犬の動きがだんだん鈍くなり、食べては寝て、寝ては食べて、の毎日になる。やがて余分な栄養と体重の負担が内臓や骨を圧迫し、わずかのきっかけでとりかえしのつかない病気や怪我に襲われる。
【0004】
犬の食事は成犬で1日1回が普通だが、同居する雑食型人間の生活空間には、ほかの動物には考えられないほど多量の食べものがある。それに飼い主は、愛犬の食欲をまるで愛情のバロメーターのように気にかける。そこで、つい、食卓を飾る肉や菓子を間食に食べさせる。あまりにおいしそうに食べるので、さらに与える。愛犬が食べすぎて食欲不振になると、気をもんで、さらにもっとおいしい(高栄養の)食べものを口に押し込んでしまう。
【0005】
そんなふうに、犬の生育に必要な以上の、豪華な(栄養の偏った)食事がいつの間にか定着する。こうなると、発育ざかりの幼犬期を過ぎた犬にとっては、余分な栄養をひたすら体内に蓄積させていくしか道がない。人間同じく、慢性的な運動不足が体重増加に輪をかける。肥満犬では、心臓が胸腔いっぱいに肥大している。
【0006】
体重60kgの人間が5kgや6kg肥えても、それほど問題ではない。しかし成犬で5kgや10kg、あるいは20kg前後の犬が5kg増えるというのは苛酷な話である。犬の体は、それぞれの犬種の体格にふさわしい構造と機能を有している。それが犬本来の体重の1.2倍か1.5倍、ひどければ2倍の体を動かそうとすれば、当然に内臓や骨格に大きな負担となる。
【0007】
まず、体内のすみずみに血液を供給する心臓がネをあげる。いままでの大きさでは出力不足のため、どんどん肥大化する。獣医師がそんな犬の胸に聴診器をあてると、ザーザーという苦しげな心臓の悲鳴が聞こえる。そしてレントゲン写真をとると、胸腔いっぱいに肥大化した心臓が写っている場合が少なくない。
【0008】
肥満して体にいいことは何もない。過度の体重を支えられなくて、骨格がきしみだし、もろくなる。股関節脱臼が日常化する。おまけにほんの少しジャンプしただけで足腰を骨折する。運動不足が重なって、さらに肥満が進行する。塩分過多、糖分過多、脂肪過多、過度の栄養が心臓や肝臓、膵臓や腎臓などをむしばんでいく。また、分泌異常で皮膚病や目の病気にもなりやすい。
【0009】
犬の体は、人間と違って汗腺がない。そのため、ハーハーと口を通じて熱交換を行って、体温調整をしている。そんな犬たちが猛暑になると、大変である。ことに、マグロのような皮下脂肪が体の周囲を取り巻いている肥満犬となれば、なおさらである。ぶ厚い脂肪の層が保温材となって、いくらハーハーと呼吸しても、体温が下がらない。結局、熱射病で病院にかつぎこまれる。この場合治療法としては、ひたすら体に水をかけ、肛門から直腸に水を入れて冷やす。熱射病は、命にかかわる病気のひとつである。
【0010】
もちろん犬も自衛する。室内犬なら、すっとクーラーの下に涼みにゆく。でも肥満犬にとって、クーラーも危険である。体の外側がいくら冷えても、脂肪の多い体内が簡単に冷えないから、肥満犬はなかなかクーラーの下を動こうとしない。そして体内が冷えた頃には、表皮は冷えきってしまっている。だから、神経痛にかかる犬も少なくない。それに表皮の血液が心臓に集まり、心臓の負担がさらに増えることになる。
【0011】
痒がって、体をボリボリとかくのは、皮膚のなかの肥満細胞が分泌する物質 (ヒスタミン)のせいである。皮膚のどこかが赤くはれて、かゆくなる。花粉症でしきりに鼻水が出る。これは、生物が、外部から入った「異物」をやっつけようとする作用である。そのときの主役が、皮膚をはじめ体のあちこちにひそんでいる「肥満細胞」である。虫にさされたり、花粉などの「異物」が体内に侵入すると、肥満細胞がせっせとヒスタミンなどの物質を分泌して、かゆみ、炎症を起こして免疫機能を高めたり、鼻水を出して、「異物」を体外に排出しようとする。
しかし犬や猫が歳を取って、免疫機能のバランスが壊れたりすると、肥満細胞の働きが過剰になり、肥満細胞が固まりをつくり、腫瘍化しやすくなる。それが「肥満細胞腫」であり、犬の腫瘍のなかで、乳腺腫瘍に次いで二番目に多い腫瘍となっている(また、犬の皮膚腫瘍の7〜21%を占める)。
【0012】
肥満細胞は、皮膚のどの部位にも存在するから、どこにでも、肥満細胞腫はおこりうる可能性がある。また、脾臓や腸管などの内臓でも発症するケースもある。ことに犬は悪性腫瘍、いわゆるがん化することが多いので、要注意である。
【0013】
猫でも肥満細胞腫は多く、猫の全腫瘍の15%ほどを占める。また、猫は、顔面にできることも少なくない。
【0014】
肥満細胞腫の直接的な要因は、まだ明らかにされていないが、犬、猫ともに老齢期に多く、老齢病の一つともいえる。なお、猫で顔面に発症する場合、アレルギー性皮膚炎などで炎症をおこす部位にできることが多。いずれにせよ、肥満細胞が過剰に働いて炎症などをおこしやすいところは、それだけ、細胞の遺伝子が傷つきやすくなる。
【0015】
肥満とは、体脂肪が基準より過剰についた状態のことをいう。通常適性体重の15%を超えると、治療(減量)の必要があるとされている。
肥満になる一番の原因は、動物たちではなく飼い主にある。犬などが確かに喜んで食べている姿を見るとこっちまで嬉しくなってくるが、結果的には、この様な行いが愛犬の肥満につながる。本当に愛犬の健康を考えるのなら、必要以上には、与えないということが愛情である。
【0016】
全国で飼われている犬の数は、過去最高の1113万匹。そのうち、およそ4割が肥満の傾向にあるとみる専門家もいる。病院に運び込まれる犬のうち、70%近くが標準体重を超えている。
【0017】
痩せさせたいと思って、太ってしまった犬に無理矢理運動量を増やしたりすると大変なことになる。太ったことで体に負担がかかっているので、急に激しい運動をさせると足や腰を悪くしたり、病気を悪化させることにもなる。
【0018】
上記に詳述したように、犬、猫にとって、肥満は生命に危険を及ぼす重大な病気である。
【0019】
このような理由で、犬や猫の肥満防止対策として、各種のダイエット用飼料がが開発されている。しかし、犬、猫の嗜好にあわず、なかなか摂取されないことが多い。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
これまでの製品では、嗜好性を落とさずに、低コストで低カロリ−の動物用飼料を得ることは容易でなかった。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明は、前記した従来技術の欠点を解消するべく創意されたものである。本発明者らは、嗜好性を落とさずに、かつ満腹感を得られ、しかも栄養バランスを損なわずに、低カロリ−の動物用飼料を製造すべく、しゅしゅの研究をおこなった。その結果、従来の動物用飼料に、無限膨潤性蒟蒻を添加することによって、目的を達成することに成功した。
【0022】
蒟蒻は、こんにゃく芋を精製して得られる精製粉を水にといて、硬化剤を添加し、加熱して、半固化して、使用される。通常使用されているものは、体積で96〜98%が水分である。したがって、カロリ−はゼロに近い。蒟蒻を食することは、水と芋の持つミネラルだけを食べることになるので、ダイエット食としては、最適な素材である。
【0023】
こんにゃく芋の精製粉は、無限膨潤性を有する。即ち、いくらでも水分を吸収する。精製粉が、硬化剤を添加物され、高温に加熱されると半固化され、通常見られる蒟蒻となり、水溶液中で加熱されても、これ以上水分を吸収しなくなる。即ち有限膨張性である。これは、蒟蒻粒子が互いに付着して網目状の構造を作ることによる。このために、水分の含有量は、網目構造の内部に含有できるだけの量に限られるのである。
【0024】
本出願と同じ目的の特許に特許番号第3079362号がある。同特許は、「蒟蒻製品を脱水・乾燥して粉末状の蒟蒻を得て、これを他の飼料と混合したもの」である。すなわち、同特許は、蒟蒻の原料粉(これを精製粉という)に、カルシウムなどの添加物を加え、加熱して、一旦製品状態とした蒟蒻を、脱水・乾燥し、次にこれを粉末状にしたものである。この工程中に、精製粉は、添加物および加熱によって、半固化し、通常目にすることのできる蒟蒻製品となる。このものは、水中に浸積しても、これ以上はあまり水分を吸収することはない。すなわち、有限膨張性である。したがって、同特許により得られた製品は、他の飼料と通常の蒟蒻の混合状態となっている。
【0025】
これに対し、本発明は、精製粉に添加剤を加え、前処理として、無限膨潤性を損なわない範囲内で、温度および時間を選んで、加熱し、その状態で、他の飼料と混合する。通常はその後に、缶詰などに充填する。最後に、高温加熱処理を行う。蒟蒻がまだ無限膨潤性を有している状態で混合するので、同時に充填する肉類など他の飼料の味や香りが、水分とともに十分にしみ込んだ蒟蒻となる。このために、動物は、肉類と蒟蒻の区別がつかず、喜んで摂取する。
【0026】
本発明は、精製粉に添加剤を加え、前処理を行わずに、他の飼料と混合しても良い。その状態で、缶詰などに充填する。最後に、高温加熱処理を行う。精製粉が無限膨潤性を有している状態で混合するので、同時に充填する肉類など他の飼料の味や香りが、水分とともに十分にしみ込んだ蒟蒻となる。このために、動物は、肉類と蒟蒻の区別がつかず、喜んで摂取する。
【0027】
本発明の方法によれば、カロリ−の低い動物用飼料を任意に得ることができるが、含有量があまり少なくても、ダイエット効果が期待できないので、含有量を3%以上とした。また、含有量があまり多いと、味覚が落ちて、摂取しづらくなるので、含有量の上限を60%とした。
【0028】
本発明品は缶詰やレトルトパウチの形状で供給される。
【0029】
本発明品は、蛋白物質、または蛋白物質と脂肪物質からなる有機栄養を主成分に、無限膨潤性蒟蒻を添加して製造する。 蛋白物質および脂肪物質はペ−スト状に製造し、これに無限膨潤性蒟蒻を添加して製造する。蛋白物質および/または脂肪物質は、ブロック状にしても良い。
【0030】
前項のようにして製造された本発明品に、カルシウム等の無機栄養、ビタミンを主体とすう栄養等を添加することもできる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、低カロリ−かつ低コストで、嗜好性の高い動物用飼料を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
従来の動物用飼料の包装形態は、必要な栄養を、ゼラチン、スタ−チなどの糊科的性質を利用して、混合し固形化し、袋詰や缶詰などのような密閉密封状態にしたものが一般的である。本発明品は、袋詰や缶詰でも、いずれにも使用可能である。
【0033】
動物用飼料は、成長や生存に必要な栄養素をバランスよく摂取されることが望ましく、一般に、蛋白物質および脂肪物質からなる有機栄養源を主成分とし、カルシウム、燐などの無機栄養源、ビタミンを主体とする栄養剤および塩、砂糖などを添加した配合物からなる動物用飼料の種類や形態に特に制約はない。
【0034】
本発明品に含有せしめる蒟蒻の量は、最低3%以上含有することが望ましく、それ以下では、カロリ−の節減量が少なすぎて、ダイエットの効果がでにくい。また、60%以上では、動物が、食べたがらない傾向がある。
【0035】
本発明品は、犬、猫などのペット用飼料のみならず、動物園で飼育されている動物にも、まったく同様にして使用される。
【実施例1】
【0036】
以下本発明の一実施例について説明するが、本発明はこの実施例に限定さらえるものではない。
【0037】
「実施例1」表1に示すペ−スト状の飼料に、同じくペ−スト状の無限膨潤性蒟蒻を、重量%で30%になるように混合し、よく攪拌して均一とした後、70℃で加熱した。得たものの外観は元のペ−スト状の飼料と全く変わらない。このものを、年齢4歳の雄成犬に与えたところ、喜んで摂取した。本実施例の供試品の、カロリ−、栄養などは、単純に30%減になっている。
表1 基本飼料成分


【特許請求の範囲】
【請求項1】
3〜60重量%の、無限膨潤性蒟蒻、またはこんにゃく芋を精製して得られる精製粉を、混合せしめることを特徴とする動物用飼料。
【請求項2】
蛋白物質からなる有機栄養を主成分とした動物用飼料に、3〜60重量%の、無限膨潤性蒟蒻、またはこんにゃく芋を精製して得られる精製粉を混合し、その後に加熱して、蒟蒻を有限膨張性にすることを特徴とする動物用飼料。
【請求項3】
蛋白物質および脂肪物質からなる有機栄養を主成分とした動物用飼料に、3〜60重量%の、無限膨潤性蒟蒻、またはこんにゃく芋を精製して得られる精製粉を混合し、その後に加熱して、蒟蒻を有限膨張性にすることを特徴とする動物用飼料。
【請求項4】
蛋白物質からなる有機栄養を主成分とし、カルシウム等の無機栄養、ビタミンを主体とすう栄養等を添加した動物用飼料に、3〜60重量%の、無限膨潤性蒟蒻、またはこんにゃく芋を精製して得られる精製粉を混合し、その後に加熱して、蒟蒻を有限膨張性にすることを特徴とする動物用飼料。
【請求項5】
蛋白物質および脂肪物質からなる有機栄養を主成分とし、カルシウム等の無機栄養、ビタミンを主体とすう栄養等を添加した動物用飼料に、5〜60重量%の、無限膨潤性蒟蒻、またはこんにゃく芋を精製して得られる精製粉を混合し、その後に加熱して、蒟蒻を有限膨張性にすることを特徴とする動物用飼料。

【公開番号】特開2006−149297(P2006−149297A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−345558(P2004−345558)
【出願日】平成16年11月30日(2004.11.30)
【出願人】(599055740)トリメックス株式会社 (1)
【Fターム(参考)】