説明

蒲鉾の製造方法と、シート状蒲鉾及び渦巻蒲鉾

【課題】押出成形により形作る蒲鉾について、例えば赤と白というように色分け等ができる蒲鉾の製造方法と、この製法によって、食彩豊かなシート状蒲鉾及び渦巻蒲鉾を提供する。
【解決手段】原料としての摺身を真ん中に繰り込むように前後一対の繰込ローラが内装され、底部に原料を帯状に押し出す成形用口金が設けられる成形ホッパーが主体であって、成形ホッパーの内部を仕切板で前後に少なくとも2室に分け、色彩等の材質が異なる摺身を各室に投入し、成形用口金で一体接合させて幅方向に前記材質が異なる配列を有する中間製品を成形する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、蒲鉾の製造方法と、それを利用したシート状蒲鉾及び渦巻蒲鉾に関する。
【背景技術】
【0002】
蒲鉾は、魚肉の摺り身を原料としてそれを一定の形状に成形してから、加熱により固めたもので、タイ等に似せた細工蒲鉾や、板の上に載せて成形した板蒲鉾など、地方により多様な形態に製造されている。渦巻蒲鉾は、主に富山県の名産として知られるもので、造り方については、摺身からなり加熱処理されたシート状蒲鉾を造り、この上に蒲鉾本体となる摺身を塗り合わせ、それをシート状蒲鉾が外側になるように巻き丸めてから加熱処理して製品とされる(特許文献1)。
【0003】
シート状蒲鉾は、このように渦巻蒲鉾の製造に使用されるが、従来、その製造においては、ホッパーの中に前後一対の巻込ローラを内装し(図1参照)、下端の出口に成形用口金を取り付けた製造装置を使用し、両繰込ローラの間から摺身を繰り込んで口金より押し出す方法をとっていた。シート状蒲鉾をそのまま蒲鉾製品として提供され得る。また、シート状蒲鉾は太く巻いてこの間にマヨネーズ等の調味料を巻き込んだ蒲鉾製品として提案も見られる(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭60−67094号公報
【特許文献2】特開平8−228724号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のシート状蒲鉾は、上記のような製法から同一材料による成形物であるので、色彩、風味などの材質的要素が同一であったから、食卓が楽しくなるような彩りある食味を求めるとすると、何か物足りない点があった。また、渦巻蒲鉾について見ると、シート状蒲鉾を着色剤で赤に造り(青、緑などの場合もある)、側面や断面において赤の渦巻き模様が表れているが、外面全体がシート状蒲鉾であるため、全体的に赤い外皮で覆われる形態であるので、彩りに今一つ乏しかった。
【0006】
この発明は、上記のような実情に鑑みて、押出成形により形作る蒲鉾について、例えば赤と白というように色分け等ができる蒲鉾の製造方法と、この製法によって、食彩豊かなシート状蒲鉾及び渦巻蒲鉾を提供することを課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、この発明は、原料としての摺身を真ん中に繰り込むように前後一対の繰込ローラが内装され、底部に原料を帯状に押し出す成形用口金が設けられる成形ホッパーが主体であって、成形ホッパーの内部を仕切板で前後に少なくとも2室に分け、色彩等の材質が異なる摺身を各室に投入し、成形用口金で一体接合させて幅方向に前記材質が異なる配列を有する中間製品を成形することを特徴とする蒲鉾の製造方法を提供する。
【0008】
蒲鉾の製造方法を上記のように構成したので、仕切板により区切られた成形ホッパーの各室に色彩等が異なる摺身を投入すると、それが成形用口金から接合した状態で押し出され、異なる色彩が帯状ないし筋状に配列される中間製品が造られるので、それを加熱し切断することにより様々な形態の蒲鉾とすることができ、また、シート状蒲鉾として提供できるだけでなく(請求項2)、シート状蒲鉾を皮として巻き込むと、色彩がほゞ半々に外面に表れる艶やかな渦巻蒲鉾(請求項3)を造ることもできる。
【発明の効果】
【0009】
以上説明したように、この発明方法によれば、既存の蒲鉾製造機を利用することが可能であって量産に適することはもちろん、その成形ホッパーに仕切板を装着するだけで、2以上の色彩や食味等が帯状ないし筋状に配合された半製品を押出成形することができ、それを加熱処理し切断するだけで彩り豊かな、又は食味豊かな蒲鉾を製造することができるという優れた効果がある。
【0010】
また、請求項2の発明によれば、色彩が異なって配列されるシート状蒲鉾であるので、そのままで彩りが豊かであるだけでなく、重ねて製品としたり、太巻きして製品としたりして、さらに豊かな食彩とすることができる。
【0011】
さらに、請求項3の発明によれば、渦巻蒲鉾の外周がほゞ半々に異なる色彩であるので、単調さがなくなり一個でめでたい紅白の渦巻蒲鉾としても提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】この発明の蒲鉾の製造方法に用いる装置の概略を示す断面図である。
【図2】同装置の要部を拡大して示す平面図である。ず
【図3】同装置に使用する仕切板の正面図である。
【図4】同装置により押出成形したシート状蒲鉾の原型(帯状)の平面図である。
【図5】図4のA−A線矢視の拡大断面図である。
【図6】同装置により押出成形して製造したシート状蒲鉾を皮として使用した渦巻蒲鉾の斜視図である。
【図7】同渦巻蒲鉾を製造するために用いたシート状蒲鉾の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、この発明の蒲鉾の製造方法と、シート状蒲鉾及び渦巻蒲鉾を図面に基づいて関連させながら説明する。成形ホッパー3には仕切板Pにより異なる原料1を投入することにより、複合色のシート状蒲鉾Sが成形される。色分けは白地部2aと色付部2bとしたが、他の色分けの場合もあるし、材料の種類で分けたり、味付け(例えば甘口、辛口等)で分けたりすることもある。
【0014】
また、原料1については特に制限するものではないが、例えば、蛋白質、澱粉、小麦粉、蓄肉、増粘類、魚肉等が使用される。
【実施例】
【0015】
図1は、シート状蒲鉾を製造する既存の装置を使用し、この発明の複合色の色分けシート状蒲鉾Sを製造するように改良したものであって、それには仕切板Pを使用した。
【0016】
既存の機械的構造についてまず説明すると、蒲鉾の原料1として摺身を投入し押出成形するように構成された成形ホッパー3を起点としたもので、繰出直後の一次加熱装置5、それに続く二次加熱装置7、それに続く冷却装置9、それに続く収容台11が装備される。
【0017】
成形ホッパー3は、底部に前後一対の繰込ローラ13,13が内装され、底部の前端に出口を設けるとともに、そこに成形用口金15(詳細図は省略する)が取り替え可能に取り付けられているので、成形ホッパー3に原料1が投入されると、両繰込ローラ13,13の間から底部に押し込まれ、その圧力で一次加熱装置5の送りベルト17の上に押し出され、搬送中にバーナー19により加熱乾燥され、送りベルト17の先端では二次加熱装置7の送りベルト21に引き上げられ、そのベルト21で送られるうちにもバーナー19により加熱乾燥され、さらに上の冷却装置9に引き上げられ、そこにおけるファン23により冷却されてから、収容台11の上に折り畳まれる。なお、冷却装置9は、帯状中間製品Saが掛かる多数の搬送ローラ20,20,・・の配列により構成される。
【0018】
収容台11の上に折り畳まれた時点においては既に加熱処理されているので、この時点で食することのできるシート状蒲鉾Sが完成している。したがって、短片に切って製品とし、或いは、太巻きにして製品とすることができる。この点については従来と同じであるが、シート状蒲鉾Sは単色ではない点で異なるものである。
【0019】
シート状蒲鉾Sは、色分け複合色とした。これには、成形ホッパー3に繰込ローラ13,13と直交するように仕切板Pを組み込むことにより、成形ホッパー3の内部を二つの室8,8に分け、それぞれに異なる色彩の原料1,1が投入される。なお、複数の仕切板Pで成形ホッパー3を区切るようにすることができる。
【0020】
仕切板Pは、このように成形ホッパー3の内部を左右に分けるものであるため、両繰込ローラ13,13が嵌まる前後一対の切欠部25,25が設けられているが、底部では欠除し、その欠除部において左右原料1,1が粘着力で接合して合体し、そのまま成形用口金15から押し出される。押し出された帯状中間製品Saには、仕切板Pの位置において色分けされており、この実施例の場合であると、帯状中間製品Saには、摺身の地色の白地部2aと、紅で着色した色付部2bとに色分けされている。なお、この色分けの境界は、仕切板Pの位置調整により変えられる。
【0021】
仕切板Pを位置調整可能とするために、成形ホッパー3には、口部の前後両端に雄ねじの取付シャフト31,31を架設し、仕切板Pの前後両端部には取付シャフト31,31の通し孔33,33を設け、それぞれ一対のナット35,35で挟み付けて固定されるようになっている。
【0022】
図6は、上記のように白地部2aと色付部2bとに色分けしたシート状蒲鉾Sを渦巻蒲鉾10の巻込皮として使用した場合を示したもので、生地として白い身本体12の摺身と共にそれが巻き込まれて太巻きされる。この場合は、シート状蒲鉾Sの上に身本体12の摺身12aを塗り合わせた状態において、シート状蒲鉾Sが外側になるよう一端から巻かれる。これだけでは摺身12aは生であるので、加熱処理を経て食することのできる渦巻蒲鉾10とする。
【0023】
渦巻蒲鉾10は、側面(断面)でシート状蒲鉾Sが紅の色付部2bの部分で巻き込まれている状態が見える。これは普通の渦巻蒲鉾10とほゞ同じである。しかし、外周面ではほゞ半周ずつにおいて白と紅とに分かている。つまり、紅白のおめでたい色彩模様が現出されている。このような形態に造るためには、色付部2bを巻き込まれる部分37だけ白地部2aよりも長く取る必要がある。
【0024】
ちなみに、白地部2aは、色付部2bと共に渦巻蒲鉾10の外周面の全体を覆っているが、覆っていても下の身本体12と材料的に同じ白色系統の摺身の地色であって、太巻き時に粘着することでそれと識別できなく一体となっているため、白地部2aの存在は全く気付かれなく、したがって、外周面において色付部2b以外でもシート状蒲鉾Sであるにもかかわらず、この部分では身本体12が白く露出しているように見える。こうしてシート状蒲鉾Sが白地部2aで存在しないのと同じに視覚されることから(図6の鎖線参照)、渦巻蒲鉾でありながら、体裁良く紅白に分かれた外観となる。
【符号の説明】
【0025】
P 仕切板
S シート状蒲鉾
Sa 帯状中間製品
1 摺身としての原料
2a 白地部
2b 色付部
3 成形ホッパー
8 室
10 渦巻蒲鉾
12 身本体
13 繰込ローラ
15 成形用口金

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料としての摺身を真ん中に繰り込むように前後一対の繰込ローラが内装され、底部に原料を帯状に押し出す成形用口金が設けられる成形ホッパーが主体の製造装置を使用し、成形ホッパーの内部を仕切板で前後に少なくとも2室に分け、色彩等の材質が異なる摺身を各室に投入し、成形用口金で一体接合させて幅方向に前記材質が異なる配列を有する中間製品を成形することを特徴とする蒲鉾の製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の蒲鉾の製造方法により、異なる色彩の摺身を押出成形において一体接合させた帯状中間製品からなり、その接合により幅方向に色彩が異なって配列され複合色であることを特徴とするシート状蒲鉾。
【請求項3】
請求項1記載の蒲鉾の製造方法により、身本体の摺身の生地と同じ白色系の摺身と、赤や青等の他の色彩の摺身とを仕切板で分けることにより、白地部と色付部とが配列される複合色のシート状蒲鉾を造り、この一面に身本体の摺身を塗り合わせ、シート状蒲鉾が外側になるように太巻きし加熱することにより、外周が白地部と色付部がほゞ半々に表されてなることを特徴とする渦巻蒲鉾。











【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−68(P2011−68A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−146164(P2009−146164)
【出願日】平成21年6月19日(2009.6.19)
【出願人】(500358733)株式会社まるなか (1)
【Fターム(参考)】