説明

蒲鉾板

【課題】
杉、もみの天然木板の使用を前提としながらも気泡の生じないかまぼこ板、またかまぼこにおける気泡の発生を防止すると共に、かまぼこ板を長期間にわたって在庫したときでも木口にひび割れが生ずることがないようにする。
【解決手段】
かまぼこ板を高温加熱処理して、木材中の水分を低減させて、その木材蒲鉾板の切断面両木口にポリウレタン樹脂を塗布、噴霧又は浸透などの処理をすることによりポリウレタン樹脂が導管内に入り込み、乾燥することによりポリウレタン樹脂が硬化し導管を塞ぐため、導管からの空気や液体が入り込むことを防止させた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、かまぼこに気泡を発生させないように処理したかまぼこ板に関するものである。特にかまぼこに気泡を発生させないようにした良質な板付かまぼこを製造することのできるかまぼこ板に係るものである。
【背景技術】
【0002】
かまぼこは、かまぼこ板に接触している部分に多数の小さな気泡が発生することがある。このような気泡は、かまぼこ板の導管から空気又は液体がかまぼこ板内に入り込み、この空気又は液体が加熱により膨張することに起因するものと思われる。そこで、特公平5−66097号公報は、けい素樹脂又はその含有物を用いてかまぼこ板を処理することによりかまぼこ板の導管を封ずるようにしたかまぼこ板を提供している。
【0003】
板付きかまぼこは、かまぼこ板に接している部分に大小多数の気泡が発生することがある。そこで、けい素樹脂又はその含有物を用いてかまぼこ板を処理する(特許文献1参照)、酢酸ビニルエマルジョンを用いてかまぼこ板を処理することによりかまぼこ板の導管を封ずるようにしたかまぼこ板を提供している(特許文献2参照)。
【0004】
耐水性、耐熱性に優れ、分子が小さく導管内に浸透し乾燥後も膨張しないアクリル樹脂により木口を処理したかまぼこ板を提供するものである(特許文献3参照)。
板付かまぼこの製造方法は、かまぼこ板の上に魚肉すり身の原料を盛り付け、これを蒸熱処理して原料の蛋白変性と塩分による架橋作用とを促し製品としているが、一部樹脂材料への切り替え等の試みはあるが、総合的には天然木板が優れており、現在も主流となっている。
【0005】
しかしながらこのような天然木板の場合には水分を含んだすり身原料における水分をかまぼこ板が吸収して、製造時における加熱工程においては、この水分が沸点以上に加熱されることにより気化し、結果的にかまぼこに気泡が生じた状態の製品が生じてしまう。このような現象は特に原料素材を吟味した高級かまぼこの場合では、消費者の品質に対する期待感を裏切る結果となり、その改善が求められていた。
【0006】
【特許文献1】特公平5−66097号公報
【特許文献2】特開平7−327643号公報
【特許文献3】特開2003−319765号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
けい素樹脂及びその含有物を用いて処理したかまぼこ板を例えば1〜10ヶ月間程度の長期間にわたって在庫した場合、かまぼこ板の木口にひび割れが生じることがある。また酢酸ビニルエマルジョンで処理したかまぼこ板は気泡防止効果が小さいことが問題となっている。また耐水性、耐熱性に優れ、分子が小さく導管内に浸透し乾燥後も膨張しないアクリル樹脂により木口を処理したかまぼこ板を提供するものであるが十分な効果を示していない。
【0008】
このような背景を考慮してなされたものであって、天然木板の使用を前提としながらもかまぼこ内に気泡の生じなく、ヤニ臭もないかまぼこ板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
けい素樹脂又はその含有物を用いて処理したかまぼこ板の木口にひび割れが生ずる原因は次の通りであると思われる。即ち、けい素樹脂は分子が小さいため、木の導管中に深く浸透し易く、しかもけい素樹脂は乾燥すると膨張する性質がある。木の導管中に深く浸透したけい素樹脂が乾燥して膨張すると、かまぼこ板はこれに耐え切れずに木口にひび割れが生ずるのである。酢酸ビニル、アクリル酸などを種々検討した結果、分子が大きくて木の導管中に深く浸透し難く、十分な効果を示していない。
【0010】
しかも乾燥しても膨張しないポリウレタン樹脂を使用することにより、上記課題を解決することができるという結論に達した。本発明は、ポリウレタン樹脂により木口を処理したことを特徴とするかまぼこ板を提供するものである。
蒲鉾板用の木材を加温処理して、木質内の水分を減少させたものを、ポリウレタン樹脂により木口を処理した蒲鉾用板である。
【0011】
かまぼこ板の加熱処理は90℃〜150℃の水蒸気処理した後、80℃から150℃の範囲で、1〜10時間処理して、木材の水分量10%以下にする。好ましくは90℃〜140℃水蒸気で、2時間〜8時間で処理することであって、板の部分の外部から適切な内部を処理することで効果を示した。また前記木材を120℃から徐々に温度を降下させて乾燥させて、木材の残存水分量を5〜10%にすることが望ましい。
【0012】
ポリウレタン樹脂は分子量1000〜10000のもので、溶媒に溶解して使用するものであり、好ましくは2000〜9000の分子量のものである。分子量が大きいと木材の導管に入らず、また小さいものは導管の内部まで入って使用量が多くなってくる。木材の木口部分を刷毛、スプレーなどで、少量で、しかも均一に塗布するものである。
【0013】
この発明における作用としては、木材における木口面の導管内のヤニ樹脂部分を水蒸気によって除去して、木口にポリウレタン樹脂によって処理することである。
このポリウレタン樹脂の溶液をハケ、スプレーガン、ローラー等を用いてかまぼこ板1木口2部の両面に(この液1Lに10〜25m2の木口の塗布)塗ることができる。
【0014】
ポリウレタン樹脂の該混合物中に木口2部の両面を漬けることもある。ポリウレタン樹脂エマルジョンは導管を塞ぐのに足りる量を使用する。一例としてスプレーガンの場合、塗布直後に塗装面に塗料が浮く程度の量をスプレーする。木口2を処理した後、温風等により乾燥させる。
【0015】
前記の加熱温度、時間、更には前述の水蒸気圧力、水所気処理の時間、乾燥時間等は、素材の性状、加工後の要求性状に応じ、またポリウレタン樹脂の塗布は前記した条件の範囲でも行ってもよい。
【0016】
本発明においてかまぼこ板の木口を処理した場合には、ウレタン樹脂は導管内に深く入り込むことなく木口附近に付着して導管を塞ぐため、けい素樹脂又はその含有物を用いてかまぼこ板を処理した場合と同様に、かまぼこにおける気泡の発生が防止される。
【0017】
しかして、ポリウレタン樹脂は分子が大きくて木の導管中に深く浸透し難く、しかも乾燥しても膨張しないため、ポリウレタン樹脂によりかまぼこ板の木口を処理した場合には木口にひび割れが生ずることはない。なお、ポリウレタン樹脂によりかまぼこ板の木口を処理した場合には、該かまぼこ板を例えば約3〜10ケ月程度の長期間にわたって在庫したときでも木口にひび割れが生ずることはない。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、本発明においては、水蒸気による処理とポリウレタン樹脂によりかまぼこ板の木口を処理するようにしたため、かまぼこにおける気泡の発生、およびかまぼこへのヤニ臭の付着が防止され、しかもかまぼこ板を長期間にわたって在庫したときでも木口にひび割れが生ずることがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明においては、かまぼこ板の切断面の両木口にポリウレタン樹脂を塗布、噴霧又は浸透等の処理をした後、乾燥することによりポリウレタン樹脂が硬化し導管からの空気や液体が入り込むことを防止する。以下本発明を図示の実施の形態に基づき説明する。
【実施例1】
【0020】
次に、本発明の実施例を図面に従って説明する。
図1に示すように、加工すべきかまぼこ板の素材である杉板を載せた状態で120℃の水蒸気によって適宜に水蒸気処理する。
【0021】
図1に示すようなかまぼこ板の加工時に水蒸気による加熱を行った。なお加熱する場合には、水蒸気での加圧時において120℃程度の範囲の温度で10時間水蒸気によって加熱処理した。この水蒸気加熱が終了すると、水蒸気の処理を止めて、徐々に温度を下げて100℃から60℃までで乾燥した。
【0022】
上記得られたかまぼこ板の木口に、分子量5000のポリウレタン樹脂エマルジョン1重量部と水3重量部とを混合した。この混合物をハケによってかまぼこ板1の木口2部の両面にこの液1Lに15m2の木口の割合で塗布した。この板を乾燥機で100℃から徐々に低下して60℃で5時間かけた。前記の木口2を処理した後、温風等により乾燥させた。
【0023】
得られたかまぼこ板に魚肉のすり身を載せて、板付きかまぼことした場合、気泡もなく、木質特有の臭いもなかった。また板自身も5月保存しても変化していなかった。
【実施例2】
【0024】
次に、実施例を添付図面の図2の(A)と(B)に従って説明する。本発明においては、図2の(A)は蒲鉾板の詳細図である。木材には導管1が縦横に存在している。蒲鉾板の木口にも導管の入り口があり、また板面に導管の出口2があって、通常は蒲鉾を板に載せて熱処理すると、導管内にあるヤニによって、匂いをつけ、さらに内部の気泡によって蒲鉾内に気泡を発生させることである。
【0025】
一方、蒲鉾板の木材を水蒸気で処理した場合、導管内部のヤニを取り出して、ヤニの臭いをなくすことが出来た。その後水蒸気を遮断して、乾燥して60℃近くまで下げて、木材の水分は10%以下にした。この状態で木材の木口にポリウレタン樹脂のエマルジョンによりかまぼこ板の木口を処理した。かまぼこ板の木口を処理するに当っては、図2(B)に示すように、かまぼこ板の材料となる材木の木口5にエマルジョンを塗布させて、木口を完全に塞いだ。
【0026】
一例としてポリウレタン樹脂のエマルジョン1重量部と水4重量部とを混合し、この混合物をハケによって、木口6に塗り、導管を塞ぐに足る量を使用した。従って、その使用量は導管の太さ、数等により異なった。このようにしてポリウレタン樹脂のエマルジョンにより木口6を処理した後、100℃程度の熱風により約2分間乾燥させて、処理した木口にした。
得られたかまぼこ板に魚肉のすり身を載せて、板付きかまぼことした場合、気泡もなく、木質特有の臭いもなかった。また板自身も6ケ月保存しても変化していなかった。
【実施例3】
【0027】
図1に示すように、加工すべきかまぼこ板の素材例えば樅(モミ)の板を載せた状態で130℃の水蒸気によって適宜の水蒸気処理する。
図1に示すようなかまぼこ板の加工時に水蒸気による加熱を行う。なお加熱する場合には、水蒸気での加圧時において130℃程度の範囲の温度で8時間水蒸気によって加熱処理した。この水蒸気加熱が終了すると、水蒸気の処理を止めて、徐々に温度を下げて100℃から60℃までで乾燥した。
【0028】
上記得られたかまぼこ板の木口に、分子量6000のポリウレタン樹脂エマルジョン1重量部に水3重量部とを混合した。この混合物をハケを用いてかまぼこ板1の木口2部の両面にこの液1Lに15m2の木口の割合で塗布した。この板を乾燥機で100℃から徐々に低下して60℃で5時間かけた。前記の木口2を処理した後、温風等により乾燥させた。
得られたかまぼこ板に魚肉のすり身を載せて、板付きかまぼことした場合、気泡もなく、木質特有の臭いもなかった。また板自身も5月保存しても変化していなかった。
「比較例1」
【0029】
図1に示すように、加工すべきかまぼこ板の素材である、杉板を載せた状態で水蒸気によって適宜の水蒸気処理を行わなかった。
図1に示すようなかまぼこ板の加工時、水蒸気の処理をせずに、乾燥温度を100℃から60℃まで行った。
【0030】
上記得られたかまぼこ板の木口に、分子量6000のポリウレタン樹脂エマルジョン1重量部に水3重量部とを混合した。この混合物をハケによってかまぼこ板の木口部の両面に、この液1Lに15m2の木口の割合で塗布した。この板を乾燥機で100℃から徐々に低下して60℃で5時間かけた。前記の木口2を処理した後、温風等により乾燥させた。
得られたかまぼこ板に魚肉のすり身を載せて、板付きかまぼことした場合、気泡はなかったが、、木質特有の臭いがあった。
「比較例2」
【0031】
図1に示すように、加工すべきかまぼこ板の素材例えば樅(モミ)の板を載せた状態で130℃の水蒸気によって適宜の水蒸気処理した。
図1に示すようなかまぼこ板の加工時に水蒸気による加熱を行った。なお加熱する場合には、水蒸気での加圧時において130℃程度の範囲の温度で、8時間水蒸気で加熱処理した。この水蒸気加熱が終了すると、水蒸気の処理を止めて、徐々に温度を下げて100℃から60℃までで乾燥した。
【0032】
上記得られたかまぼこ板の木口に、樹脂関係の試薬を塗布せず、この板に魚肉のすり身を載せて蒲鉾を調製した。
得られたかまぼこ板にかまぼこを載せて、板付きかまぼことした場合、蒲鉾内に気泡が発生した。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】かまぼこの板の状態図
【図2−A】かまぼこ板の内部の導管と塗膜状態(全体図)
【図2−B】かまぼこ板の内部の導管と塗膜状態(細部図)
【符号の説明】
【0034】
1導管
2導管出口
3ウレタン塗膜
4スチーム加工による熱影響部
5樹脂(ヤニ)
6木口


【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒲鉾板用の木材を水蒸気処理した後、加温処理して、水分を減少させたものを、ポリウレタン樹脂により木口を処理したことを特徴とする蒲鉾用板。
【請求項2】
請求項1において、加熱処理は90℃〜150℃の水蒸気で30分から10時間処理した後、80℃から150℃の範囲で、1〜10時間熱処理して、木材の水分量10%以下にしたことを特徴とする蒲鉾用板
【請求項3】
請求項1においてポリウレタン樹脂は分子量1000〜10000のもので、溶媒に溶解して使用することを特徴とする蒲鉾用板


【図1】
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【図2−A】
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【図2−B】
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【公開番号】特開2009−100650(P2009−100650A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−272666(P2007−272666)
【出願日】平成19年10月19日(2007.10.19)
【出願人】(598095123)株式会社大川鉄工 (4)
【出願人】(306029604)株式会社高瀬文夫商店 (2)
【Fターム(参考)】