説明

蒲鉾

【課題】従来の蟹風蒲鉾よりも実際の蟹肉に近い蒲鉾であり、より高級な食材とすることができる新規な蒲鉾を提供する。また、商品価値の低い若蟹を有効に活用する。
【解決手段】魚のすり身を主原料とする練り物10を加熱して得られる蒲鉾10であって、蟹の殻30内に詰められてなる。また、蟹の殻30内において、蟹の殻30が備えていた薄皮31で覆われている。さらに、蟹の殻30内において、表面及び/又は内部に、蟹の蟹肉32を混入させている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、魚のすり身を主原料とする蒲鉾に関し、特に、脱皮直後の若蟹を有効に活用することにより、蟹の風味と食感を備えた蒲鉾に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、蒲鉾の原料となる魚は、スケトウダラ、イシモチ、ニベ、イサキ、オオギス、ムツ、ハモ、サメ等の白身の魚である。そして、白身の部分をすり潰して、砂糖、塩、みりん、卵白等を加えて練り合わせた練り物とする。加工を容易にするために、増粘安定剤等の食品添加物を加えることも少なくない。
【0003】
最も一般的な板付き蒲鉾は、上記の練り物を蒲鉾板の上に、断面が半円状となるように盛り付けたものを加熱する。加熱方法には、蒸して加熱する方法や、焼いて加熱する方法等がある。蒲鉾板を使用せずに練り物をそのまま成形し、茹でたものは、はんぺん、つみれ、等となる。また、練り物をそのまま成形して油で揚げたものは薩摩揚げとなる。
【0004】
特許文献1には、タラバ蟹風の蒲鉾の製造方法が記載されている。この方法は、1mm程度の板状に成形した練り物を低い温度で半加熱した後、細く切断して線状体(麺状)としている。そして、多数の線状体の束をスクリューポンプ又はベーンポンプによりランダムに結着させてスティック状に製造する方法である。
【0005】
このようにして得られるタラバ蟹風の蒲鉾は、タラバ蟹の蟹肉に類似の線状体の集合からなるために、これを食した際に、タラバ蟹の蟹肉に類似の「引き裂き感」を得ることができる。そして、低価格で市販されていることから、人気商品となっている。
【0006】
一方、蟹漁においては、高価な堅蟹に混じって捕獲される若蟹の問題がある。「若蟹」とは、脱皮したばかりの蟹のことを指し、蟹肉は堅蟹の半分以下であり、ミソも少ないので商品価値の低い蟹のことである。そして、陸揚げされた後に選別されるので、その有効活用が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−174858号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この発明が解決しようとする課題は、従来の蟹風蒲鉾よりも実際の蟹肉に近い風味を備えた蒲鉾であり、より高級な食材とすることができる新規な蒲鉾を提供することにある。また、蟹漁において商品価値が低いとされる脱皮直後の若蟹を有効活用することにより、新規な高級蒲鉾を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の請求項1に係る蒲鉾は、魚のすり身を主原料とする練り物を加熱して得られる蒲鉾であって、蟹の殻内に詰められてなる手段を採用している。また、本発明の請求項2に係る蒲鉾は、請求項1に記載の蒲鉾であって、前記蟹の殻内において、前記蟹の殻が備えていた薄皮で覆われている手段を採用している。また、本発明の請求項3に係る蒲鉾は、請求項1又は2に記載の蒲鉾であって、前記蟹の殻内において、表面及び/又は内部に、前記蟹の蟹肉を混入させている手段を採用している。また、本発明の請求項4に係る蒲鉾は、請求項1乃至3の何れかに記載の蒲鉾であって、前記蟹の殻が、若蟹の殻である手段を採用している。また、本発明の請求項5に係る蒲鉾は、請求項1乃至4の何れかに記載の蒲鉾であって、多数の麺状体を一体化して形成することにより、引き裂き感を備えている手段を採用している。
【発明の効果】
【0010】
本発明の蒲鉾は、白身の魚のすり身を主原料とする練り物を加熱して製造することができるので、従来と同等以上の品質を備える蒲鉾とすることができる。そして、実際の蟹の殻内に、練り物をそのまま、或いは半加熱した状態で注入して製品とするので、使用する蟹の内側にある薄皮により蒲鉾が覆われることになる。また、使用する殻の殻内にある蟹肉が蒲鉾の表面及び/又は内部に混入することになる。
【0011】
したがって、薄皮及び蟹肉に含まれる旨みの成分が、この蒲鉾に全て引き継がれることになる。そして、実際に蟹の殻を割って食べることになるので、従来の蟹風味蒲鉾と比較して格段に付加価値の高い、高級な蒲鉾とすることができる。また、蟹漁において、今まで商品価値の低かった脱皮直後の若蟹を有効に活用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の蒲鉾の形態を示す概略図であり、(A)は蟹の足1本全体の殻を利用した場合を示し、(B)は太目部分のみの殻を利用した場合を示す。(C)は(A)又は(B)の概略断面を示す。
【図2】蟹の部位を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明者等は、新規な蟹風味の蒲鉾を開発すべく鋭意研究の結果、蟹の殻内に蒲鉾の素材である練り物を詰めた後、これを加熱することによって、予想以上に強い蟹の風味を備えた新規な蒲鉾となることを発見した。特に、薄皮付きの殻を利用した場合には、薄皮に含まれる蟹の風味が蒲鉾に浸透して、豊かな蟹風味の蒲鉾となることを発見した。
【0014】
本発明の蒲鉾に用いられる蟹は、タラバガニ、ズワイガニ、ケガニ等、一般に食用されている蟹を全て使用することができる。そして、使用する蟹は、生であるものや冷凍したものを使用することができる。或いは、茹でたものや茹でた後に冷凍したものを使用することができる。
【0015】
図2に蟹40の各部位を示す。使用する蟹40の部位は、特に限定されないが、歩脚20(いわゆる足)を利用することが好ましい。鉗脚41(いわゆる鋏)も利用できるが、やや食べ難いので除いた方が好ましい。頭胸部42は、内部に食べられない部分があり、その選別に手間が掛るので、使用しない方が良い。
【0016】
利用する歩脚20は、図1(A)に示すように、1本の歩脚20の基節21から指節22までの全体を使用することができる。また、図1(B)に示すように、歩脚20の長節23の部分(最も太い部位)のみを使用することもできる。
【0017】
そして、内部に骨や蟹肉を付けたままの歩脚20であっても良いし、歩脚20から蟹肉や骨を取り外して単に殻だけとなった歩脚20であっても良い。或いは、蟹肉や骨を除いているが、殻の内側に薄皮を残した歩脚20であっても良い。
【0018】
蒲鉾の原料となる魚は、特に限定されないが、高級感を得るためには、スケトウダラ、イシモチ、ニベ、イサキ、オオギス、ムツ、ハモ、サメ等の白身の魚を用いることが好ましい。これらの魚をすり潰して、砂糖、塩、みりん、卵白等を加えて練り合わせた練り物とする。加工を容易にするために、増粘安定剤等の食品添加物を加える。
【0019】
このようにして得られる練り物10を、スクリューポンプ又はベーンポンプにより加圧し、直径が1〜5mmの管部を備える注入器を用いて歩脚20等の殻内に注入する。注入器を挿入する場所は、片方の端部から挿入することができる。或いは、殻の何れかの部分に穴を開けて挿入することもできる。そして、所定の温度に加熱することにより本発明の蒲鉾10が完成する。
【0020】
図1(C)に、本発明の蒲鉾10を断面図で示す。蟹の殻30の中に魚のすり身からなる練り物10が詰められている。練り物10は、蟹の薄皮31によって包まれることとなる。また、練り物10の表面及び内部に蟹肉32が混入することとなる。
【0021】
したがって、蟹の殻30に残留する風味が、次第に蒲鉾内に浸透することになる。このとき、殻30の内側に薄皮31が残留している場合には、薄皮31の持つ風味により、一層強い風味を得ることができる。さらに、当然のことであるが、若蟹を利用して、当該蒲鉾の表面や内部に若蟹の殻30に含まれる蟹肉32を混入させることにより、画期的に超高級な蒲鉾10とすることができる。
【0022】
練り物10を殻内に注入するときに、特許文献1に記載されているように、多数の麺状体を一体化して形成されたものを用いることにより、蟹肉に匹敵する「引き裂き感」が得られ、より高級な蟹風味の蒲鉾とすることができる。
【符号の説明】
【0023】
10 蒲鉾(練り物)
20 歩脚
21 基節
22 指節
23 長節
30 殻
31 薄皮
32 蟹肉
40 蟹
41 鉗脚
42 頭胸部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
魚のすり身を主原料とする練り物を加熱して得られる蒲鉾であって、蟹の殻内に詰められてなることを特徴とする蒲鉾。
【請求項2】
前記蟹の殻内において、前記蟹の殻が備えていた薄皮で覆われていることを特徴とする請求項1に記載の蒲鉾。
【請求項3】
前記蟹の殻内において、表面及び/又は内部に、前記蟹の蟹肉を混入させていることを特徴とする請求項1又は2に記載の蒲鉾。
【請求項4】
前記蟹の殻が、若蟹の殻であることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の蒲鉾。
【請求項5】
多数の麺状体を一体化して形成することにより、引き裂き感を備えていることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の蒲鉾。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−200688(P2010−200688A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−50696(P2009−50696)
【出願日】平成21年3月4日(2009.3.4)
【出願人】(509063133)
【Fターム(参考)】