説明

蒸気タービン

【課題】ケーシングとダイアフラム外輪との間の冷却媒体流路から主蒸気流路への冷却媒体の流出を防止することができる蒸気タービンを提供する。
【解決手段】実施形態の蒸気タービン10は、内部ケーシング20の内周に軸方向に配置され、ダイアフラム内輪27およびダイアフラム外輪25によって支持された静翼翼列と、タービンロータ22に構成され、静翼翼列と軸方向に交互に設けられた動翼翼列と、内部ケーシング20とダイアフラム外輪25との間に冷却媒体流路33を備える。ダイアフラム外輪25どうしが所定の間隙を有して軸方向に隣接され、ダイアフラム外輪25において、上流端側の側面に周方向に上流端側段部51を、下流端側の側面に周方向に下流端側段部52を有する。下流端側段部52から上流端側段部51に亘って、ダイアフラム外輪間の間隙を覆うように、周方向に環状の封止部材60が配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、蒸気タービンに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、蒸気タービンが用いられる火力発電プラントにおいて、CO排出量削減の必要性や化石燃料価格の高騰の影響により、蒸気タービンの内部効率向上の要求がこれまで以上に高まってきている。
【0003】
蒸気タービンは、ケーシングの内周に取り付けられ、ダイアフラム内輪とダイアフラム外輪との間に支持されたノズルと、このノズルとタービンロータ軸方向に交互になるように配置され、ケーシング内に貫設されたタービンロータに植設された動翼とを備えている。このような構成を備える蒸気タービンは、蒸気の熱エネルギをノズルにおいて速度エネルギに変換し、動翼において速度エネルギを機械エネルギへ変換する。
【0004】
蒸気タービンの内部効率を向上させるために、蒸気流路部の形状の改良、作動流体の高温化が検討されている。特に後者に関して、ランキンサイクルを利用した蒸気タービンにおいては、入口温度(主蒸気の温度)を上昇させることによって、内部効率を向上させることができる。そのため、近年、主流蒸気の温度を650〜750℃程度とする蒸気タービンの開発が進められている。
【0005】
このように主蒸気の温度が高温となる蒸気タービンでは、運転時における構成部品の機械的強度を維持するために、高温特性に優れた耐熱材料を使用することが必要となる。しかしながら、耐熱材料は、既存の材料と比較して高価であるため、製造コストが増加するという問題を有している。さらに、耐熱材料において大型部品の製作が困難であるなどの問題も有している。そこで、高温となる構成部品を冷却することで高温化による材料の機械的強度の低下を抑制し、従来の安価で製造性に優れた材料を使用することが検討されている。
【0006】
構成部品の冷却方法として、例えば、ケーシングとダイアフラム外輪との間に冷却媒体流路を形成し、この冷却媒体流路に冷却媒体を流すことで構成部品を冷却する方法が挙げられる。この冷却方法では、冷却媒体流路に流れる冷却媒体の圧力を、主蒸気流路を流れる主蒸気の圧力よりも高くすることにより、隣接するダイアフラム外輪間に形成される軸方向の間隙から冷却媒体の一部を主蒸気流路へ噴出させ、ケーシングを冷却している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−97544号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記したように、従来の構成部品の冷却方法においては、隣接するダイアフラム外輪間に形成される軸方向の間隙から冷却媒体の一部が主蒸気流路へ噴出される。また、冷却媒体の主蒸気流路へ噴出量を抑制するために、ダイアフラム外輪間に形成される軸方向の間隙にシール装置を備える場合においても、冷却媒体の主蒸気流路への流出を完全に防止することはできない。
【0009】
そのため、主蒸気流路を流れる主蒸気の温度が低下し、蒸気タービンの内部効率を向上させるために主蒸気の温度を上昇させた効果が十分に発揮されていなかった。また、隣接するダイアフラム外輪間に形成される軸方向の間隙は狭いため、シール装置を設置するのは容易ではなかった。
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、ケーシングとダイアフラム外輪との間の冷却媒体流路から主蒸気流路への冷却媒体の流出を防止することができる蒸気タービンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
実施形態の蒸気タービンは、ケーシングの内周に軸方向に間隔をあけて複数配置され、周方向に配置された複数のノズルの内周部がダイアフラム内輪で支持され、外周部がダイアフラム外輪で支持された静翼翼列と、前記ケーシング内に貫設されたタービンロータの周方向に複数の動翼が植設されて構成され、前記静翼翼列と軸方向に交互に設けられた動翼翼列と、前記ケーシングと前記ダイアフラム外輪との間に冷却媒体を流す冷却媒体流路とを備えている。また、前記ダイアフラム外輪どうしが所定の間隙を有して軸方向に隣接され、前記ダイアフラム外輪における上流端側の側面に周方向に上流端側段部を有し、前記ダイアフラム外輪における下流端側の側面に周方向に下流端側段部を有している。さらに、前記下流端側段部から前記上流端側段部に亘って、前記ダイアフラム外輪間の間隙を覆うように、周方向に環状の封止部材が配置されている。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る第1の実施の形態の蒸気タービンの子午断面を示す図である。
【図2】本発明に係る第1の実施の形態の蒸気タービンの冷却媒体流路の構成を説明するために、蒸気タービンの子午断面の一部を拡大した図である。
【図3】本発明に係る第1の実施の形態の蒸気タービンの封止部材を軸方向側から見たときの側面図である。
【図4】本発明に係る第1の実施の形態の蒸気タービンの封止部材を軸方向に沿う一方の側面側から見たときの側面図である。
【図5】本発明に係る第1の実施の形態の他の構成を備える蒸気タービンの子午断面を示す図である。
【図6】本発明に係る第2の実施の形態の蒸気タービンの冷却媒体流路の構成を説明するために、蒸気タービンの子午断面の一部を拡大した図である。
【図7】本発明に係る第2の実施の形態の蒸気タービンの冷却媒体流路の他の構成を説明するために、蒸気タービンの子午断面の一部を拡大した図である。
【図8】本発明に係る第3の実施の形態の蒸気タービンの冷却媒体流路に備えられる封止部材を構成する分割構成部材を半径方向外側から見たときの平面図である。
【図9】本発明に係る第3の実施の形態の蒸気タービンの冷却媒体流路に備えられる封止部材を構成する分割構成部材を、周方向の一方の側から見たときの平面図である。
【図10】本発明に係る第3の実施の形態の蒸気タービンの冷却媒体流路に備えられる封止部材を構成する分割構成部材の他の構成を、周方向の一方の側から見たときの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0014】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明に係る第1の実施の形態の蒸気タービン10の子午断面を示す図である。図2は、本発明に係る第1の実施の形態の蒸気タービン10の冷却媒体流路33の構成を説明するために、蒸気タービン10の子午断面の一部を拡大した図である。なお、以下に示す実施の形態において、同一の構成部分には同一の符号を付して、重複する説明を省略または簡略する。
【0015】
図1に示すように、蒸気タービン10は、内部ケーシング20とその外側に設けられた外部ケーシング21とから構成される二重構造のケーシングを備えている。また、内部ケーシング20内に、タービンロータ22が貫設されている。このタービンロータ22のロータディスク23には、周方向に複数の動翼24が植設され、動翼翼列を構成している。この動翼翼列は、タービンロータ22の軸方向に複数段形成されている。なお、タービンロータ22は、図示しないロータ軸受によって回転可能に支持されている。
【0016】
また、内部ケーシング20の内周には、ダイアフラム外輪25が設けられ、ノズル26の外周部を支持している。ノズル26の内周部は、ダイアフラム内輪27によって支持されている。このように、ダイアフラム外輪25とダイアフラム内輪27との間に周方向に配置された複数のノズル26が支持され、静翼翼列を構成している。この静翼翼列は軸方向に間隔をあけて複数配置され、各静翼翼列は、タービンロータ22の動翼翼列それぞれの上流側に配置される。すなわち静翼翼列と動翼翼列は交互に複数段配設され、静翼翼列と動翼翼列の一組から構成されるタービン段落が複数形成されている。
【0017】
また、図2に示すように、内部ケーシング20の内周面には、タービンロータ22側に周方向に突出する突条部28が形成されている。この突条部28は、各タービン段落に対応して、タービンロータ22の軸方向に複数形成されている。この突条部28間の溝部に、ダイアフラム外輪25に形成された半径方向に突出する突出部50が位置する。そして、突条部28の上流側の側面28aに、ダイアフラム外輪25の突出部50の下流側端面50aが当接し、ダイアフラム外輪25のタービンロータ22の軸方向の下流側への移動が防止される。
【0018】
ダイアフラム内輪27のタービンロータ22側には、図1に示すように、ラビリンスシール部29が設けられ、ダイアフラム内輪27とタービンロータ22との間からの蒸気の漏洩を抑制している。なお、ラビリンスシール部29は、円周方向に、例えば8つなど複数に分割された構成となっており、それぞれダイアフラム内輪27の内周側に設けられた溝部に、円周方向に挿入され嵌合するようになっている。
【0019】
ここで、ダイアフラム外輪25およびダイアフラム内輪27は、2つの半円筒形状の部材を組み合わせて円筒形状に構成されている。そのため、半円筒形状の部材の両端部には、半円筒形状の部材どうしを組み合わせて固定するためのフランジ部(図示しない)を有している。
【0020】
また、蒸気タービン10には、外部ケーシング21と、内部ケーシング20とを連通するように、外部からの蒸気が導入される蒸気入口管30が備えられている。蒸気入口管30は、ノズルボックス31に連通するように接続されている。また、ノズルボックス31の出口には、第1段のノズル26を備える静翼翼列が構成されている。
【0021】
また、蒸気タービン10には、最終段の動翼24を通過した作動流体である蒸気を内部ケーシング20内から外部に導く排気流路32が設けられている。
【0022】
内部ケーシング20とダイアフラム外輪25との間には、冷却媒体CMを通す冷却媒体流路33が形成されている。また、上記した突条部28またはダイアフラム外輪25の突出部50には、冷却媒体CMを上流側から下流側へ通過させる通過孔(図示しない)が周方向の数箇所に形成されている。そのため、突条部28の上流側の側面28aに、ダイアフラム外輪25の突出部50の下流側端面50aが当接したときでも、冷却媒体CMを上流側から下流側へ導くことができる。
【0023】
また、図1に示すように、この冷却媒体流路33に冷却媒体CMを供給する供給配管34が設けられている。この供給配管34は、外部ケーシング21を貫通し、一端が内部ケーシング20に設けられた貫通口に嵌合されている。ここでは、第2段のタービン段落の冷却媒体流路33に冷却媒体CMを供給するように供給配管34が設けられているが、この位置に限られるものではない。
【0024】
ここで、ダイアフラム外輪25は、図2に示すように、間隙Lをおいて軸方向に隣接して設置されている。また、ダイアフラム外輪25は、支持するノズル26の直下流に位置する動翼24の外周を取り囲むように下流方向に延設されている。
【0025】
また、ダイアフラム外輪25の上流端側の側面25aに周方向に上流端側段部51が形成されている。また、ダイアフラム外輪25の下流端側の側面25bに周方向に下流端側段部52が形成されている。図2に示すように、上流端側段部51は、ダイアフラム外輪25の上流端側の外径を小さくすることで形成された段部であり、下流端側段部52は、ダイアフラム外輪25の下流端側の外径を小さくすることで形成された段部である。
【0026】
図2に示すように、軸方向に隣接するダイアフラム外輪25のうち、下流側に位置するダイアフラム外輪25の上流端側段部51から上流側に位置するダイアフラム外輪25の下流端側段部52に亘って、ダイアフラム外輪25間の間隙Lを覆うように、環状の封止部材60が周方向に配置されている。このように封止部材60を設けることで、ダイアフラム外輪25間の軸方向の間隙Lを塞ぐことができる。換言すると、蒸気が流れる主蒸気流路35と、冷却媒体CMが流れる冷却媒体流路33との間を封止することができる。
【0027】
封止部材60は、平板状の部材で構成されている。封止部材60は、ダイアフラム外輪25を構成する材料よりもヤング率の小さな材料で構成されることが好ましい。封止部材60をダイアフラム外輪25を構成する材料よりもヤング率の小さな材料で構成することで、例えば、蒸気タービン運転時にダイアフラム外輪25が変形しても、その変形に追従して封止部材60が変形することができる。そのため、封止部材60が、隣接するダイアフラム外輪25の上流端側段部51と下流端側段部52との間に的確に嵌合し、封止性能を維持することができる。
【0028】
封止部材60は、使用される温度条件に応じて、例えば、Ni基合金や12Cr鋼、あるいはCrMoV鋼などの金属材料とするほか、樹脂材料、あるいはセラミックス材料を使用することもできる。なお、ダイアフラム外輪25は、例えば、Ni基合金や12Cr鋼、あるいはCrMoV鋼などの金属材料で構成される。
【0029】
また、封止部材60は、ダイアフラム外輪25やダイアフラム内輪27と同様に、2つの半円筒形状の部材を組み合わせて円筒形状に構成されている。
【0030】
ここで、半円筒形状の部材を組み合わせ部の構造を次のように構成してもよい。図3は、本発明に係る第1の実施の形態の蒸気タービン10の封止部材60を軸方向側から見たときの側面図である。図4は、本発明に係る第1の実施の形態の蒸気タービン10の封止部材60を軸方向に沿う一方の側面側から見たときの側面図である。
【0031】
図3および図4に示すように、例えば、上半部における封止部材60の両端部側の側面と、下半部における封止部材60の両端部側の側面に嵌合部材70a、70b、70c、70dを設けてもよい。
【0032】
嵌合部材70a、70b、70c、70dの構造は特に限定されるものではない。例えば、図3および図4に示すように、上半部における封止部材60の一方の端部側の側面に設けられた嵌合部材70aには、棒状の突起部71aと、対向する嵌合部材70cの棒状の突起部71cを挿入するための挿入孔72aが設けられている。一方、この嵌合部材70aに対向する、下半部における封止部材60の一方の端部側の側面に設けられた嵌合部材70cには、嵌合部材70aの挿入孔72aに挿入するための棒状の突起部71cと、嵌合部材70aの突起部71aを挿入するための挿入孔72cが設けられている。
【0033】
なお、上半部における封止部材60の他方の端部側の側面に設けられた嵌合部材70bと、下半部における封止部材60の他方の端部側の側面に設けられた嵌合部材70dの構成も、上記した嵌合部材70aおよび嵌合部材70cの構成と同じである。
【0034】
上記した、対応する嵌合部材70a、70b、70c、70dどうしを嵌合することで、上半部における封止部材60と下半部における封止部材60とを適正に結合することができる。これによって、封止部材60が、隣接するダイアフラム外輪25の下流端側段部52と上流端側段部51との間に的確に嵌合し、封止性能を維持することができる。
【0035】
また、第1の実施の形態の蒸気タービン10は、封止部材60における封止性能を向上させるために、次のような構成を備えてもよい。図5は、本発明に係る第1の実施の形態の他の構成を備える蒸気タービン10の子午断面を示す図である。
【0036】
図5に示すように、内部ケーシング20の突条部28の内周面と封止部材60との間に、封止部材60の半径方向の位置を固定するための固定部材75を備えてもよい。この固定部材75は、周方向に所定の間隔をおいて複数設けられることが好ましい。また、固定部材75は、間隙L上以外の位置に配置されることが好ましい。例えば、封止部材60を介して下流端側段部52上となる位置に、固定部材75を配置することができる。
【0037】
また、固定部材75の半径方向の高さは、封止部材60を確実に固定するため、突条部28の内周面と封止部材60との間の間隙の高さよりも若干高く構成されることが好ましい。なお、固定部材75は、封止部材60の冷却媒体流路33側の表面、または突条部28の内周面に形成されてもよい。このように、固定部材75を備えることで、封止部材60の封止性能を向上させることができる。
【0038】
ここで、冷却媒体流路33における冷却媒体CMの圧力は、主蒸気流路35における主蒸気の圧力よりも高く設定される。冷却媒体CMとしては、例えば、他の蒸気タービンから抽気された蒸気、他の蒸気タービンから排気された蒸気、ボイラから抽気された蒸気などを使用することができる。蒸気タービン10が、中圧タービンである場合は、冷却媒体CMとして、例えば高圧タービンから抽気された蒸気を使用することができる。また、蒸気タービン10が、高圧タービンである場合は、冷却媒体CMとして、例えばボイラから抽気された蒸気を使用することができる。なお、冷却媒体CMの温度は、冷却する内部ケーシング20やダイアフラム外輪25などの部品に大きな熱応力が発生しない程度の温度に設定されることが好ましい。
【0039】
次に、第1の実施の形態の蒸気タービン10の作用について説明する。
【0040】
上記した構成を備える蒸気タービン10において、蒸気入口管30を経て、ノズルボックス31内に流入した蒸気は、各段落のノズル26と動翼24との間の主蒸気流路35を通り、タービンロータ22を回転させる。また、膨張仕事をした蒸気の大部分は、排気流路32に排出される。
【0041】
供給配管34から冷却媒体流路33に導入された冷却媒体CMは、内部ケーシング20およびダイアフラム外輪25を冷却しながら下流方向へ流れ、例えば、排気流路32に排出される。ここで、前述したように、冷却媒体流路33における冷却媒体CMの圧力は、主蒸気流路35を流れる主蒸気の圧力よりも高く設定されているため、この差圧により、封止部材60には、タービンロータ22側の方向に押し付ける力が作用する。そのため、主蒸気流路35と冷却媒体流路33との間の封止効果が向上され、冷却媒体CMの主蒸気流路35への流出を防止することができる。
【0042】
上記した第1の実施の形態の蒸気タービン10によれば、封止部材60を備えることで、内部ケーシング20とダイアフラム外輪25との間の冷却媒体流路33から主蒸気流路35への冷却媒体CMの流出を防止することができる。また、封止部材60を容易に設置することができる。
【0043】
(第2の実施の形態)
本発明に係る第2の実施の形態の蒸気タービン10では、ダイアフラム外輪25の上流端側段部51および下流端側段部52の構成および封止部材90の構成が、前述した第1の実施の形態の蒸気タービン10におけるダイアフラム外輪25の上流端側段部51および下流端側段部52の構成および封止部材60の構成と異なるので、ここでは主にこの異なる構成について説明する。
【0044】
図6は、本発明に係る第2の実施の形態の蒸気タービン10の冷却媒体流路33の構成を説明するために、蒸気タービン10の子午断面の一部を拡大した図である。図7は、本発明に係る第2の実施の形態の蒸気タービン10の冷却媒体流路33の他の構成を説明するために、蒸気タービン10の子午断面の一部を拡大した図である。
【0045】
なお、図6は、蒸気タービン10が運転されていない状態、または、蒸気タービン10が運転されている状態であって、蒸気タービンの構成部品の熱伸び差に起因する内部ケーシング20の変形などが生じていない状態を示している。また、図7は、蒸気タービン10が運転されている状態であって、蒸気タービンの構成部品の熱伸び差に起因する内部ケーシング20の変形などが発生し、隣接するダイアフラム外輪25の半径方向の位置に相違が生じている状態を示している。
【0046】
図6に示すように、ダイアフラム外輪25の上流端側段部51は、周方向に垂直な断面における形状が凹状の溝80で構成され、この溝80は、周方向に形成されている。また、溝80を形成するために、ダイアフラム外輪25の上流端部には、半径方向に突出した端部側壁部81が形成されている。
【0047】
ダイアフラム外輪25の下流端側段部52は、上流端側段部51と同様に、周方向に垂直な断面における形状が凹状の溝82で構成され、この溝82は、周方向に形成されている。また、溝82を形成するために、ダイアフラム外輪25の下流流端部には、半径方向に突出した端部側壁部83が形成されている。また、端部側壁部81、83の先端は、円弧状に形成することが好ましい。
【0048】
封止部材90は、周方向に垂直な断面における形状がコ字状の環状の部材で構成されている。図6に示すように、軸方向に隣接するダイアフラム外輪25のうち、下流側に位置するダイアフラム外輪25の上流端側段部51の溝80に、封止部材90一方の側端部91が挿入される。さらに、上流側に位置するダイアフラム外輪25の下流端側段部52の溝82に、封止部材90他方の側端部92が挿入される。すなわち、封止部材90は、ダイアフラム外輪25間の間隙Lを覆うように、周方向に配置されている。
【0049】
この際、封止部材90の、側端部91と側端部92との間に位置する内壁面90aは、端部側壁部81および端部側壁部83の先端と当接している。上記したように、端部側壁部81、83の先端を円弧状に形成することで、図7に示すように、蒸気タービンの運転時において、隣接するダイアフラム外輪25の半径方向の位置に相違が生じたときでも、封止部材90の内壁面90aと端部側壁部81、83の先端とを確実に当接させることができる。
【0050】
また、封止部材90の側端部91の端面91aは、溝80の底面80aと当接するように構成することが好ましい。同様に、封止部材90の側端部92の端面92aは、溝82の底面82aと当接するように構成することが好ましい。なお、封止部材90を構成する材料は、第1の実施の形態の封止部材60と同じ材料である。
【0051】
ここで、端部側壁部81、83の先端が、ダイアフラム外輪25および封止部材90を構成する材料よりもヤング率の小さな材料で構成されていることが好ましい。端部側壁部81、83の先端を構成する材料は、例えば、金属材料のほか、樹脂材料、あるいはセラミックス材料を使用することもできる。
【0052】
このように端部側壁部81、83の先端を構成することで、主蒸気流路35と冷却媒体流路33との差圧によって封止部材90が端部側壁部81、83に押し付けられた際、先端と封止部材90との密着性が増し、封止効果が向上される。
【0053】
また、図7に示すように、端部側壁部81、83に対向して形成され、端部側壁部81、83とともに溝80、82を構成する壁部の表面100、101に快削材層102、103を形成してもよい。また、溝80、82の底面104、105に快削材層106、107を形成してもよい。なお、快削材層は、表面100、101または底面104、105の少なくとも一方に形成されていればよく、図7に示すように、表面100、101および底面104、105に形成されてもよい。
【0054】
ここで、快削材層102、103、106、107は、例えば、コバルト、ニッケル、クロム、アルミニウムおよびイットリウム系の材料(CoNiCrAlY系材料)、ニッケル、クロム、アルミニウム系の材料(NiCrAl系材料)、あるいはニッケル、クロム、鉄、アルミニウム、ホウ素および窒素系の材料(NiCrFeAlBN系材料)などの材料で構成される。また、快削材層102、103、106、107は、これらの少なくともいずれかの材料を、例えば溶射することによって形成可能である。
【0055】
図7に示すように、蒸気タービンの運転時において、隣接するダイアフラム外輪25の半径方向の位置に相違が生じたときでも、封止部材90が、例えば、快削材層103を介して表面101に接触する。また、封止部材90が、快削材層106を介して底面104に接触する。この際、快削材層103、106が削られ、封止部材90が快削材層103、106と密着し、封止効果を向上させることができる。
【0056】
なお、封止部材90は、第1の実施の形態で説明した嵌合部材70a、70b、70c、70dと同様の嵌合部材を備えることによって、封止部材90の上半部と下半部とを適正に結合することができる。
【0057】
上記した第2の実施の形態の蒸気タービン10によれば、封止部材90を備えることで、内部ケーシング20とダイアフラム外輪25との間の冷却媒体流路33から主蒸気流路35への冷却媒体CMの流出を防止することができる。また、封止部材90を容易に設置することができる。
【0058】
(第3の実施の形態)
本発明に係る第3の実施の形態の蒸気タービン10では、封止部材110の構成が、前述した第2の実施の形態の蒸気タービン10における封止部材90の構成と異なるので、ここでは主にこの異なる構成について説明する。
【0059】
図8は、本発明に係る第3の実施の形態の蒸気タービン10の冷却媒体流路33に備えられる封止部材110を構成する分割構成部材120を半径方向外側から見たときの平面図である。図9は、本発明に係る第3の実施の形態の蒸気タービン10の冷却媒体流路33に備えられる封止部材110を構成する分割構成部材120を、周方向の一方の側(図8の左側)から見たときの平面図である。図10は、本発明に係る第3の実施の形態の蒸気タービン10の冷却媒体流路33に備えられる封止部材110を構成する分割構成部材120の他の構成を、周方向の一方の側(図8の左側)から見たときの平面図である。
【0060】
第3の実施の形態における封止部材110は、周方向に分割された複数の分割構成部材120で形成されている。分割構成部材120は、第2の実施の形態における封止部材90と同様に、周方向に垂直な断面における形状がコ字状に形成されている。
【0061】
コ字状に開口された側の反対側となる半径方向外側には、図9に示すように、リング状の貫通部材130を貫通させ、各分割構成部材120を連結して環状に構成するための貫通孔121が形成されている。なお、貫通孔121は、分割構成部材120の半径方向外側に設けられることに限られず、図10に示すように、周方向に垂直な断面における中央部に設けられてもよい。
【0062】
また、分割構成部材120は、図8に示すように、連結する分割構成部材120の連結部122、123どうしが互いに重なり合う構造に形成されている。このように、互いに重なり合う連結部122、123を備えることで、連結部における封止効果を向上させることができる。
【0063】
また、連結部122、123において、互いに接触する接触面の少なくとも一方の接触面に、ダイアフラム外輪25および封止部材110を構成する材料よりもヤング率の小さな材料で構成される摺動層(図示しない)を形成してもよい。
【0064】
摺動層を構成する材料は、例えば、金属材料のほか、樹脂材料、あるいはセラミックス材料を使用することができる。
【0065】
このように摺動層を設けた場合、隣接する分割構成部材120の連結部122、123における接触面に力が作用すると、摺動層が変形し、接触面における封止効果をより向上させることができる。
【0066】
ここで、図6に示した封止部材90の場合と同様に、軸方向に隣接するダイアフラム外輪25のうち、下流側に位置するダイアフラム外輪25の上流端側段部51の溝80に、分割構成部材120の一方の側端部124が挿入される。さらに、上流側に位置するダイアフラム外輪25の下流端側段部52の溝82に、分割構成部材120の他方の側端部125が挿入される。この際、分割構成部材120の、側端部124と側端部125との間に位置する内壁面120aは、ダイアフラム外輪25の端部側壁部81、83の先端と当接している。
【0067】
また、分割構成部材120の側端部124の端面124aは、溝80の底面80aと当接するように構成することが好ましい。同様に、分割構成部材120の側端部125の端面125aは、溝82の底面82aと当接するように構成することが好ましい。
【0068】
貫通部材130は、貫通孔121の形状に対応した円形の断面形状を有する半環状の部材である。
【0069】
そして、貫通孔121に貫通部材130を貫通し、連結する分割構成部材120の連結部122、123どうしを互いに重なり合わせて周方向に連結し、複数の分割構成部材120からなる環状の封止部材110を形成する。
【0070】
上記した第3の実施の形態の蒸気タービン10によれば、封止部材110を複数の分割構成部材120で構成することで、蒸気タービンの運転時において、隣接するダイアフラム外輪25の半径方向の位置に相違が生じたときでも、周方向に分割された分割構成部材120がそれぞれに個々にその相違に応じて傾斜することができる。特に、半径方向の位置の相違が周方向に不均一となる場合であっても、周方向に分割された分割構成部材120がそれぞれに個々にその相違に応じて傾斜することができる。そのため、内部ケーシング20とダイアフラム外輪25との間の冷却媒体流路33から主蒸気流路35への冷却媒体CMの流出を防止することができる。
【0071】
さらに、互いに重なり合う連結部122、123を備えることで、連結部における封止効果を向上させることができる。また、封止部材110を容易に設置することができる。
【0072】
ここで、貫通孔121の形状は、上記した形状に限られるものではない。貫通孔121の形状を、例えば、四角形、五角形などの多角形としてもよい。この場合、貫通部材130の断面形状も、貫通孔121の形状に対応して多角形に形成される。
【0073】
このように、貫通孔121の形状を多角形とすることで、分割構成部材120の回転が互いに独立でなくなり、分割構成部材120の水平方向に対する傾斜角度θ(図7参照)が大きな分割構成部材120に対しては、傾斜角度θを小さくする方向に、貫通部材130によって力が作用する。一方、傾斜角度θが小さな分割構成部材120に対しては、傾斜角度θを大きくする方向に、貫通部材130によって力が作用する。そのため、分割構成部材120に作用する力を周方向に均一化することができる。
【0074】
なお、上記した実施形態において、内部ケーシング20と外部ケーシング21とから構成される二重構造のケーシングを備える蒸気タービン10を例示して説明したが、これに限られるものではない。例えば、ケーシングの構成が一重構造の蒸気タービンにおいても、上記した実施形態の構成を適用することができ、上記した実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0075】
以上説明した実施形態によれば、ケーシングとダイアフラム外輪との間の冷却媒体流路から主蒸気流路への冷却媒体の流出を防止することが可能となる。
【0076】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0077】
10…蒸気タービン、20…内部ケーシング、21…外部ケーシング、22…タービンロータ、23…ロータディスク、24…動翼、25…ダイアフラム外輪、25a、25b、28a…側面、26…ノズル、27…ダイアフラム内輪、28…突条部、29…ラビリンスシール部、30…蒸気入口管、31…ノズルボックス、32…排気流路、33…冷却媒体流路、34…供給配管、35…主蒸気流路、50…突出部、50a…下流側端面
51…上流端側段部、52…下流端側段部、60,90,110…封止部材、70a,70b,70c,70d…嵌合部材、71a,71c…突起部、72a,72c…挿入孔、75…固定部材、80,82…溝、80a,82a,104…底面、81,83…端部側壁部、90a,120a…内壁面、91,92,124,125…側端部、91a,92a,124a,125a…端面、100…表面、102,103,106,107…快削材層、120…分割構成部材、121…貫通孔、122,123…連結部、130…貫通部材、CM…冷却媒体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシングの内周に軸方向に間隔をあけて複数配置され、周方向に配置された複数のノズルの内周部がダイアフラム内輪で支持され、外周部がダイアフラム外輪で支持された静翼翼列と、前記ケーシング内に貫設されたタービンロータの周方向に複数の動翼が植設されて構成され、前記静翼翼列と軸方向に交互に設けられた動翼翼列と、前記ケーシングと前記ダイアフラム外輪との間に冷却媒体を流す冷却媒体流路とを備えた蒸気タービンであって、
前記ダイアフラム外輪どうしが所定の間隙を有して軸方向に隣接され、前記ダイアフラム外輪における上流端側の側面に周方向に上流端側段部を有し、前記ダイアフラム外輪における下流端側の側面に周方向に下流端側段部を有し、
軸方向に隣接する前記ダイアフラム外輪のうち、下流側に位置する前記ダイアフラム外輪の前記上流端側段部から上流側に位置する前記ダイアフラム外輪の前記下流端側段部に亘って、前記ダイアフラム外輪間の間隙を覆うように、周方向に環状の封止部材が配置されていることを特徴とする蒸気タービン。
【請求項2】
前記上流端側段部および前記下流端側段部が、前記ダイアフラム外輪の外径を小さくすることで形成された段部であり、
前記封止部材が、平板状の部材で構成されていることを特徴とする請求項1記載の蒸気タービン。
【請求項3】
前記上流端側段部および前記下流端側段部が、周方向に垂直な断面における形状が凹状の溝を有し、
前記封止部材の周方向に垂直な断面における形状がコ字状に形成され、軸方向に隣接する前記ダイアフラム外輪のうち、下流側に位置する前記ダイアフラム外輪の前記上流端側段部の前記溝に、前記封止部材における一方の側端部が挿入され、かつ上流側に位置する前記ダイアフラム外輪の前記下流端側段部の前記溝に前記封止部材における他方の側端部が挿入され、それぞれの前記溝の端部側の半径方向に突出した端部側壁部の先端に、前記封止部材の内壁面が当接することを特徴とする請求項1記載の蒸気タービン。
【請求項4】
前記封止部材が、周方向に分割された複数の分割構成部材で形成され、各前記分割構成部材が周方向に貫通孔を有し、当該貫通孔にリング状の貫通部材を挿入して各前記分割構成部材を連結し、環状に構成することを特徴とする請求項3記載の蒸気タービン。
【請求項5】
前記貫通孔および前記貫通部材における周方向に垂直な断面の形状が円形であることを特徴とする請求項4記載の蒸気タービン。
【請求項6】
前記貫通孔および前記貫通部材における周方向に垂直な断面の形状が多角形であることを特徴とする請求項4記載の蒸気タービン。
【請求項7】
前記端部側壁部の先端が、前記ダイアフラム外輪および前記封止部材を構成する材料よりもヤング率の小さな材料で構成されていることを特徴とする請求項3乃至6のいずれか1項記載の蒸気タービン。
【請求項8】
前記端部側壁部に対向して形成され、前記端部側壁部とともに前記凹状の溝を構成する壁部の表面に快削材層を備えることを特徴とする請求項3乃至7のいずれか1項記載の蒸気タービン。
【請求項9】
前記凹状の溝の底面に快削材層を備えることを特徴とする請求項3乃至8のいずれか1項記載の蒸気タービン。
【請求項10】
前記封止部材が、前記ダイアフラム外輪を構成する材料よりもヤング率の小さな材料で構成されていることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項記載の蒸気タービン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−202248(P2012−202248A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−65471(P2011−65471)
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】