説明

蒸気タービン

【課題】蒸気タービンにおいて、隔壁と内部車室の熱変形による熱応力の発生を効果的に抑制可能とする。
【解決手段】所定の位置に設置される支持台11に外部車室12を固定し、その内部に蒸気入口部24を有する内部車室13を配置して外周部をフランジ部16,17,20,21により支持台に支持し、動翼を有するロータ52が貫通すると共に静翼が固定される2つの翼環リング25,26を内部車室13内に配置し、隔壁42,43の内周部を翼環リング25,26の外周部に固定し、外周部を内部車室13に所定隙間をもって連結して構成し、隔壁42,43の外周部と内部車室13の内周部との間の所定隙間をフランジ部16,17,20,21に対応する位置で最大に設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸気を用いてロータを回転駆動することで発電を行う蒸気タービンに関し、特に、低圧の内部車室を区画する隔壁の嵌合部におけるシール構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的な蒸気タービンは、外部車室内に内部車室が設けられると共に、上部に蒸気入口部が設けられ、中心部にロータが回転自在に支持され、このロータに複数の動翼が多段にわたって固定される一方、内部車室に支持された翼環リングに静翼が多段にわたって固定され、多段の動翼と静翼が交互に配設されて構成されている。
【0003】
従って、蒸気が蒸気入口部から内部車室に入ると、この蒸気は隔壁を介して内部車室に導入され、多段の静翼と動翼に供給されることで、この多段の動翼を介してロータを回転させ、このロータに連結された発電機を駆動する。
【0004】
ところで、蒸気入口部から内部車室に入った蒸気は、静翼及び動翼に供給されるが、この静翼及び動翼を通過するときに、その一部が隔壁に区画された翼環蒸気室を介して外部に抽気される。この場合、隔壁は、蒸気によって加熱されて蒸気入口部側と翼環蒸気室側とで温度差、圧力差が発生し、熱変形を生じてしまう。すると、隔壁や内部車室に応力が集中して亀裂などを招いてしまうおそれがある。
【0005】
このような問題を解決するものとして、例えば、下記特許文献1に記載されたものがある。この特許文献1に記載された蒸気タービンは、隔壁の基端部を翼環リングに固定し、先端部を嵌合部により内部車室に嵌合して翼環蒸気室を区画し、この嵌合部にて、内部車室に形成した嵌合突起を隔壁の先端部に形成した嵌合凹部に隙間を介して嵌合し、嵌合凹部と嵌合突起との間にチューブ部材を介装したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−040156号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した特許文献1に記載された蒸気タービンでは、隔壁と内部車室との間の熱変形量を両者の間に設けた隙間により吸収し、亀裂などの発生を防止している。ところが、隔壁と内部車室との間の熱変形量は、隙間によりある程度吸収することができるものの、熱変形量が大きいときには、隔壁と内部車室との間に応力が発生し、隔壁や内部車室に亀裂などが発生してしまうおそれがある。
【0008】
本発明は上述した課題を解決するものであり、隔壁と内部車室の熱変形による熱応力の発生を効果的に抑制可能とする蒸気タービンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するための本発明の蒸気タービンは、所定の位置に設置される支持台と、蒸気入口部を有して外周部が支持部材により前記支持台に支持される内部車室と、複数の静翼が固定されて前記内部車室に位置決め支持される翼環リングと、複数の動翼が固定されて前記内部車室に回転自在に支持されるロータと、一端部が前記翼環リングに固定されて他端部が前記内部車室に所定隙間をもって連結されることで翼環蒸気室を区画する隔壁と、を備える蒸気タービンにおいて、前記隔壁の他端部と前記内部車室との間の前記所定隙間が前記支持部材に対応する位置で最大に設定される、ことを特徴とするものである。
【0010】
従って、隔壁の一端部を翼環リングに固定し、他端部を内部車室に所定隙間をもって連結しており、隔壁と内部車室との熱変形量に差があっても、所定隙間により熱応力の発生を抑制することができ、また、隔壁と内部車室との熱変形量の差により両者が接触しても、内部車室の変形により対応が可能であると共に、支持部材に対応する位置で所定隙間が最大であるため、この位置での隔壁と内部車室との接触が防止され、隔壁と内部車室の熱変形による熱応力の発生を効果的に抑制することができる。
【0011】
本発明の蒸気タービンでは、前記隔壁の他端部と前記内部車室とのいずれか一方に嵌合突起が形成され、前記他方に前記嵌合突起が嵌入する嵌合凹部が形成され、前記嵌合突起と前記嵌合凹部との間に、前記ロータの軸方向に沿った軸方向隙間が設けられると共に、前記ロータの径方向に沿った径方向隙間が設けられ、前記軸方向隙間が前記支持部材に対応する位置で最大に設定されることを特徴としている。
【0012】
従って、隔壁と内部車室との間で嵌合突起と嵌合凹部が軸方向隙間及び径方向隙間を介して嵌合しており、軸方向隙間が支持部材に対応する位置で最大であるため、隔壁が軸方向に変形しても、内部車室との接触が防止され、隔壁の熱変形による熱応力の発生を効果的に抑制することができる。
【0013】
本発明の蒸気タービンでは、前記嵌合突起が前記支持部材に対応する位置以外の位置で形成されることを特徴としている。
【0014】
従って、支持部材に対応する位置で隔壁と内部車室との間で嵌合突起が嵌合凹部に嵌合していないことから、隔壁が軸方向に変形しても、内部車室との接触が防止され、簡単な構成で容易に熱応力の発生を抑制することができる。
【0015】
本発明の蒸気タービンでは、前記内部車室は、内部車室上部と内部車室下部が組み合わされたリング形状をなし、前記内部車室上部と前記内部車室下部の連結部が前記支持部材により前記支持台に支持されることを特徴としている。
【0016】
従って、内部車室上部と内部車室下部との連結部は、所定の厚さを確保して剛性が高いことから、内部車室上部及び内部車室下部の変形限界量が少ないこととなり、この位置の所定隙間を最大とすることで、隔壁と内部車室の熱変形による熱応力の発生を効果的に抑制することができる。
【0017】
本発明の蒸気タービンでは、前記所定隙間にシール部材が設けられることを特徴としている。
【0018】
従って、隔壁が熱変形すると、シール部材を押圧しながら移動することとなり、隔壁と内部車室との間の十分なシール性を確保することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の蒸気タービンによれば、隔壁の他端部を内部車室に所定隙間をもって連結し、支持部材に対応する位置で所定隙間を最大としたので、隔壁と内部車室の熱変形による熱応力の発生を効果的に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、本発明の実施例1に係る蒸気タービンを表す断面図である。
【図2】図2は、隔壁の上部と内部車室上部との連結構造を表す図1のII−II断面図である。
【図3】図3は、隔壁の側部と内部車室下部との連結構造を表す図1のIII−III断面図である。
【図4】図4は、隔壁の側部と内部車室との連結構造を表す断面図である。
【図5】図5は、本発明の実施例2に係る蒸気タービンにおける隔壁の側部と内部車室下部との連結構造を表す概略図である。
【図6】図6は、実施例2の蒸気タービンにおける隔壁の側部と内部車室下部との連結構造の変形例を表す概略図である。
【図7】図7は、実施例2の蒸気タービンにおける隔壁の側部と内部車室下部との連結構造の変形例を表す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に添付図面を参照して、本発明に係る蒸気タービンの好適な実施例を詳細に説明する。なお、この実施例により本発明が限定されるものではなく、また、実施例が複数ある場合には、各実施例を組み合わせて構成するものも含むものである。
【実施例1】
【0022】
図1は、本発明の実施例1に係る蒸気タービンを表す断面図、図2は、隔壁の上部と内部車室上部との連結構造を表す図1のII−II断面図、図3は、隔壁の側部と内部車室下部との連結構造を表す図1のIII−III断面図、図4は、隔壁の側部と内部車室との連結構造を表す断面図である。
【0023】
実施例1の蒸気タービンにおいて、図1乃至図4に示すように、支持台11は、上方が開口した形状をなし、所定の位置に設置されている。外部車室12は、下方が開口した断面が半円形状をなし、支持台11の上部に固定されている。内部車室13は、断面が半円形状をなす内部車室上部14と内部車室下部15とが組み合わされたリング形状をなし、支持台11と外部車室12のより形成された中空部内に配置されている。
【0024】
内部車室下部15は、径方向の水平な両側の外周部にフランジ部(支持部材)16,17が固定され、各フランジ部16,17が支持台11の切欠部11a,11bに載置されている。また、内部車室下部15は、下部にアクシャルキー18が固定され、このアクシャルキー18が支持台11に固定されたアクシャルキー19に位置決め支持されている。一方、内部車室上部14は、内部車室下部15と同様に、径方向の水平な両側の外周部にフランジ部(支持部材)20,21が固定され、各フランジ部20,21が支持台11の切欠部11a,11bに載置されている。また、内部車室上部14は、上部には開口部22が形成され、ここに蒸気管台23が固定されることで、蒸気入口部24が設けられている。
【0025】
2つの翼環リング25,26は、リング形状をなし、内部車室13の内側で、蒸気入口部24の両側に位置するように配置されている。この翼環リング25,26は、半円形状をなす翼環リング上部27,28と翼環リング下部29,30とが組み合わされることでリング形状をなしている。翼環リング下部29,30は、内部車室下部15の内側に配置され、径方向の水平な両側の外周部にフランジ部31,32,33,34が固定され、各フランジ部31,32,33,34が内部車室下部15に連結されると共に、この翼環リング下部29,30間に固定されたリブ35がアクシャルキー18に位置決め支持されている。一方、翼環リング上部27,28は、内部車室上部14の内側に配置され、径方向の水平な両側の外周部にフランジ部36,37,38,39が固定され、各フランジ部36,37,38,39が内部車室上部14に連結されると共に、この翼環リング上部27,28間に固定されたリブ40が内部車室上部14に固定されたリブ41に位置決め支持されている。
【0026】
4つの隔壁42,43は、リング形状をなし、内部車室13と翼環リング25,26との間で、蒸気入口部24の両側に位置するように配置されている。この隔壁42,43は、半円形状をなす隔壁上部44,45と隔壁下部46,47とが組み合わされることでリング形状をなしている。隔壁下部46,47は、内周部(一端部)が翼環リング下部29,30の外周部に固定され、周方向端部がフランジ部31,32,33,34に固定されている。また、隔壁下部46,47は、外周部(他端部)が内部車室下部15に所定隙間をもって連結されている。一方、隔壁上部44,45は、内周部(一端部)が翼環リング上部27,28の外周部に固定され、周方向端部がフランジ部36,37,38,39に固定されている。また、隔壁上部44,45は、外周部(他端部)が内部車室上部14に所定隙間をもって連結されている。
【0027】
そして、内部車室13の内側で、且つ、各翼環リング25,26の外側が、4つの隔壁42,43などにより区画されることで、蒸気入口部24の両側の翼環蒸気室48,49が形成されることとなる。そして、この翼環蒸気室48,49は、抽気管50,51が連結されている。
【0028】
なお、各翼環リング25,26は、その内側にロータ52が貫通し、図示しない軸受により回転自在に支持されている。そして、図示しない複数の動翼がこのロータ52の外周面に周方向に沿って固定されると共に、軸方向に沿って多段に設けられている。また、図示しない複数の静翼が翼環リング25,26に周方向に沿って固定されると共に、軸方向に沿って多段に設けられている。この場合、動翼と静翼がロータ52の軸方向に交互に配置される。
【0029】
従って、蒸気タービンの運転時に、蒸気が蒸気入口部24から内部車室13に入ると、この蒸気は、隔壁42,43に案内されて翼環リング25,26に支持された複数の静翼を経て動翼に噴出することでロータ52を回転させ、このロータ52に連結された図示しない発電機を駆動する。また、蒸気入口部24から内部車室13に入った蒸気は、隔壁42,43により静翼及び動翼に噴出するが、この静翼及び動翼を通過するときに、その一部が翼環蒸気室48,49に流れ、抽気管50,51により外部に抽気される。
【0030】
このように構成された実施例1の蒸気タービンにて、隔壁42,43と内部車室13との連結部にて、隔壁42,43は、蒸気入口24から入る蒸気により加熱されることから、内部車室13より高温となって熱変形量が大きくなり、隔壁42,43が内部車室13を押圧してしまう。そこで、実施例1では、隔壁42,43は、外周部が内部車室13に対して所定隙間をもって連結されており、隔壁42,43の熱変形を所定量だけ吸収可能となっている。
【0031】
しかし、隔壁42,43が所定隙間を越えて熱変形した場合、外周部が内部車室13に接触して押圧してしまう。このとき、内部車室13は、板金加工により形成されていることから、隔壁42,43に押圧されても、変形可能量が大きいが、フランジ部16,17,20,21により支持台11に支持されている位置では、剛性が高いことから、変形可能量が小さく、接触により熱応力が発生してしまう。そこで、実施例1では、隔壁42,43が内部車室13と所定隙間をもって嵌合するが、フランジ部16,17,20,21に対応する位置では、この所定隙間を最大に設定し、隔壁42,43の熱変形に対する吸収量を大きくしている。
【0032】
図1及び図2に示すように、隔壁上部44,45と内部車室上部14との上部嵌合部(上部連結部)において、隔壁上部44,45は、外周部に支持リング61,62が形成され、この支持リング61,62の外周部に嵌合突起63,64が形成されている。一方、内部車室上部14は、内周部に支持リング65,66が形成され、この支持リング65,66の内周部に嵌合凹部67,68が形成されている。そして、隔壁上部44,45側の嵌合突起63,64が内部車室上部14側の嵌合凹部67,68に所定隙間をもって嵌合している。
【0033】
この場合、嵌合突起63,64と嵌合凹部67,68との間には、所定隙間として、ロータ52の軸方向(図2にて、左右方向)隙間が形成されると共に、ロータ52の径方向(図2にて、上下方向)隙間が形成されている。なお、嵌合突起63,64と嵌合凹部67,68との間における軸方向隙間や径方向隙間に、シール部材を介装することで、蒸気の漏洩を防止することができる。
【0034】
一方、図1及び図3に示すように、隔壁下部46,47と内部車室上部14との側部嵌合部(側部連結部)において、隔壁上部44,45は、外周部に支持リング71,72が形成されているものの、この支持リング71,72の外周部に嵌合突起73,74(図4参照)は形成されていない。一方、内部車室下部15は、内周部に支持リング75,76が形成され、この支持リング75,76の内周部に嵌合凹部77,78が形成されている。そして、隔壁下部46,47側の支持リング71,72が内部車室下部15側の支持リング75,76と所定隙間をもって対向している。
【0035】
なお、ここでは、隔壁上部44,45と内部車室上部14との上部嵌合部と、隔壁下部46,47と内部車室下部15との側部嵌合部についてのみ説明したが、その以外の嵌合部でも同様の構成となっている。即ち、隔壁下部46,47と内部車室下部15との下部嵌合部は、隔壁上部44,45と内部車室上部14との上部嵌合部とほぼ同様に構成をなしている。また、隔壁上部44,45と内部車室上部14との反対側の側部嵌合部、隔壁上部42,43と内部車室上部14との各側部嵌合部は、隔壁下部46,47と内部車室下部15との側部嵌合部とほぼ同様に構成をなしている。
【0036】
つまり、図4に示すように、内部車室13を構成する内部車室上部14及び内部車室下部15は、その内周部の全周にわたって嵌合凹部67,68,77,78が形成されている。一方、隔壁42,43を構成する隔壁上部44,45及び隔壁下部46,47は、その内周部に嵌合突起63,64,73,74が形成されているものの、フランジ部16,17,20,21に対向(対応)する位置には形成されていない。
【0037】
従って、蒸気入口部24は、翼環蒸気室48,49よりも高温高圧状態にあり、特に、隔壁上部42,43は、翼環蒸気室48,49側の面よりも蒸気入口部24側の面の方の熱膨張が大きくなり、この蒸気入口部24側に面した隔壁上部44,45は、外周部側が翼環蒸気室48,49側に変形しやすくなる。実施例1では、隔壁上部44,45の嵌合突起63,64が、内部車室上部14の嵌合凹部67,68に、軸方向隙間及び径方向隙間をもって嵌合している。そのため、隔壁上部44,45が熱変形することで、嵌合突起63,64が互いに離間する方向に変形移動しても、その変形量が軸方向隙間により吸収され、内部車室上部14が隔壁上部44,45から応力を受けることがない。
【0038】
また、隔壁上部44,45の熱変形が大きくなり、嵌合突起63,64がその変形移動により内部車室上部14の嵌合凹部67,68に接触したとしても、板金製の内部車室上部14は、自身が変形しやすいため、熱応力の程度が小さい。そして、内部車室上部14及び内部車室下部15は、側部が各フランジ部16,17,20,21に支持されており、剛性が高いものの、この各フランジ部16,17,20,21に対向する位置では、隔壁上部44,45及び隔壁下部46,47に嵌合突起63,64,73,74が形成されていない。そのため、この位置で、隔壁上部44,45及び隔壁下部46,47の熱変形が大きくなっても、内部車室上部14及び内部車室下部15が隔壁上部44,45及び隔壁下部46,47から拘束を受けることがない。
【0039】
このように実施例1の蒸気タービンにあっては、所定の位置に設置される支持台11に外部車室12を固定し、その内部に蒸気入口部24を有する内部車室13を配置して外周部をフランジ部16,17,20,21により支持台に支持し、動翼を有するロータ52が貫通すると共に静翼が固定される2つの翼環リング25,26を内部車室13内に配置し、隔壁42,43の内周部を翼環リング25,26の外周部に固定し、外周部を内部車室13に所定隙間をもって連結して構成し、隔壁42,43の外周部と内部車室13の内周部との間の所定隙間をフランジ部16,17,20,21に対応する位置で最大に設定している。
【0040】
従って、隔壁42,43の内周部を翼環リング25,26に固定し、外周部を内部車室13に所定隙間をもって連結しており、隔壁42,43と内部車室13との熱変形量に差があっても、所定隙間によりこれを吸収して熱応力の発生を抑制することができる。また、隔壁42,43と内部車室13との熱変形量の差により両者が接触しても、板金製の内部車室13の変形により対応が可能であり、フランジ部16,17,20,21に対応する位置では所定隙間が最大であるため、この位置での隔壁42,43と内部車室13との接触が抑制され、隔壁42,43の熱変形による内部車室13での熱応力の発生を効果的に抑制することができる。
【0041】
また、実施例1の蒸気タービンでは、隔壁42,43の外周部に嵌合突起63,64,73,74を形成し、内部車室13の内周部に嵌合凹部67,68,77,78を形成し、嵌合突起63,64,73,74と嵌合凹部67,68,77,78との間に、軸方向隙間と径方向隙間を設け、軸方向隙間がフランジ部16,17,20,21に対応する位置で最大に設定している。従って、軸方向隙間がフランジ部16,17,20,21に対応する位置で最大であるため、隔壁42,43が軸方向に変形しても、内部車室13との接触が防止され、隔壁42,43の熱変形による内部車室13での熱応力の発生を効果的に抑制することができる。
【0042】
また、実施例1の蒸気タービンでは、嵌合突起63,64,73,74がフランジ部16,17,20,21に対応する位置以外の位置で形成されている。従って、フランジ部16,17,20,21に対応する位置で隔壁42,43と内部車室13との間で嵌合突起63,64,73,74が嵌合凹部67,68,77,78に嵌合していないことから、隔壁42,43が軸方向に変形しても、内部車室13との接触が防止され、簡単な構成で容易に熱応力の発生を抑制することができる。
【0043】
また、実施例1の蒸気タービンでは、内部車室13は、内部車室上部14と内部車室下部15が組み合わされたリング形状をなし、内部車室上部14と内部車室下部15の連結部がフランジ部16,17,20,21により支持台11に支持されている。従って、フランジ部16,17,20,21により支持された内部車室上部14と内部車室下部15の連結部の変形限界量が少ないこととなり、この位置の所定隙間を最大とすることで、熱応力の発生を効果的に抑制することができる。
【実施例2】
【0044】
図5は、本発明の実施例2に係る蒸気タービンにおける隔壁の側部と内部車室下部との連結構造を表す概略図、図6は、実施例2の蒸気タービンにおける隔壁の側部と内部車室下部との連結構造の変形例を表す概略図、図7は、実施例2の蒸気タービンにおける隔壁の側部と内部車室下部との連結構造の変形例を表す概略図である。なお、本実施例の蒸気タービンの基本的な構成は、上述した実施例1とほぼ同様の構成であり、図1を用いて説明すると共に、上述した実施例と同様の機能を有する部材には、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0045】
実施例2の蒸気タービンでは、図1及び図5に示すように、隔壁下部46,47と内部車室下部15との嵌合部にて、フランジ部16,17,20,21に対応した位置では、フランジ部31,32(隔壁下部46,47)の外周部に形成された支持リング71,72に嵌合突起73,74はなく、内部車室下部14の内周部に形成された支持リング75,76に嵌合凹部67,68,77,78が形成されている。そして、隔壁下部46,47側の支持リング71,72にブラシシール(シール部材)81の基端部が固定され、先端部が内部車室下部14側の嵌合凹部67,68,77,78に挿入されて接触している。
【0046】
従って、隔壁42,43(隔壁下部46,47)が軸方向に変形しても、内部車室下部14(内部車室13)との接触が防止され、隔壁42,43の熱変形による内部車室13での熱応力の発生を効果的に抑制することができる。また、このとき、隔壁42,43と内部車室13の間にブラシシール81が設けられていることから、ブラシシール81が変形しても、隔壁42,43と内部車室13との間の十分なシール性を確保することができる。
【0047】
また、図1及び図6に示すように、隔壁下部46,47と内部車室下部15との嵌合部にて、フランジ部16,17,20,21に対応した位置では、フランジ部31,32(隔壁下部46,47)の外周部に形成された支持リング71,72に嵌合突起82が形成され、内部車室下部14の内周部に形成された支持リング75,76に嵌合凹部67,68,77,78が形成されている。
【0048】
また、図1及び図7に示すように、隔壁下部46,47と内部車室下部15との嵌合部にて、フランジ部16,17,20,21に対応した位置では、フランジ部31,32(隔壁下部46,47)の外周部に形成された支持リング71,72に嵌合突起83が形成され、内部車室下部15の内周部に形成された支持リング75,76に嵌合凹部67,68,77,78が形成されている。
【0049】
即ち、嵌合凹部67,68,77,78に入り込む嵌合突起82,83は、その形状が限定されるものではなく、図6に示すように、薄い板形状の嵌合突起82としたり、図7に示すように、先細形状の嵌合突起83としたりしてもよい。
【0050】
なお、上述した各実施例にあっては、隔壁42,43の外周部に嵌合突起63,64,73,74を形成し、内部車室13の内周部に嵌合凹部67,68,77,78を形成したが、隔壁42,43の外周部に嵌合凹部を形成し、内部車室13の内周部に嵌合突起を形成してもよい。また、内部車室13、翼環リング25,26、隔壁42,43などを水平位置で上下2分割としたが、分割位置はこの位置に限定されるものではなく、3分割以上であってもよい。
【0051】
また、本発明の蒸気タービンは、隔壁の他端部と内部車室との間の所定隙間が支持部材に対応する位置で最大に設定するものであり、この場合、各実施例のように、嵌合突起をなくしたり、嵌合突起の幅を小さくしてもよいものである。
【符号の説明】
【0052】
11 支持台
12 外部車室
13 内部車室
14 内部車室上部
15 内部車室下部
16,17,20,21 フランジ部(支持部材)
24 蒸気入口部
25,26 翼環リング
27,28 翼環リング上部
29,30 翼環リング下部
42,43 隔壁
44,45 隔壁上部
46,47 隔壁下部
61,62,65,66,71,72,75,76 支持リング
63,64,73,74,82,83 嵌合突起
67,68,77,78 嵌合凹部
81 ブラシシール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の位置に設置される支持台と、
蒸気入口部を有して外周部が支持部材により前記支持台に支持される内部車室と、
複数の静翼が固定されて前記内部車室に位置決め支持される翼環リングと、
複数の動翼が固定されて前記内部車室に回転自在に支持されるロータと、
一端部が前記翼環リングに固定されて他端部が前記内部車室に所定隙間をもって連結されることで翼環蒸気室を区画する隔壁と、
を備える蒸気タービンにおいて、
前記隔壁の他端部と前記内部車室との間の前記所定隙間が前記支持部材に対応する位置で最大に設定される、
ことを特徴とする蒸気タービン。
【請求項2】
前記隔壁の他端部と前記内部車室とのいずれか一方に嵌合突起が形成され、前記他方に前記嵌合突起が嵌入する嵌合凹部が形成され、前記嵌合突起と前記嵌合凹部との間に、前記ロータの軸方向に沿った軸方向隙間が設けられると共に、前記ロータの径方向に沿った径方向隙間が設けられ、前記軸方向隙間が前記支持部材に対応する位置で最大に設定されることを特徴とする請求項1に記載の蒸気タービン。
【請求項3】
前記嵌合突起が前記支持部材に対応する位置以外の位置で形成されることを特徴とする請求項2に記載の蒸気タービン。
【請求項4】
前記内部車室は、内部車室上部と内部車室下部が組み合わされたリング形状をなし、前記内部車室上部と前記内部車室下部の連結部が前記支持部材により前記支持台に支持されることを特徴とする請求項1から3のいずれか一つに記載の蒸気タービン。
【請求項5】
前記所定隙間にシール部材が設けられることを特徴とする請求項1から4のいずれか一つに記載の蒸気タービン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−53537(P2013−53537A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−191059(P2011−191059)
【出願日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】