説明

蒸気発生装置

【課題】導出される水蒸気に含まれる水滴を低減できる蒸気発生装置を提供すること。
【解決手段】本発明は、円筒状に構成され、軸方向Jが実質的に水平となるように配置される円筒容器2と、円筒容器2の内部を軸方向Jに貫通して配置され、内部に加熱装置16が挿入可能な貫通管5(5A)と、円筒容器2の上部に形成される蒸気導出開口23と、蒸気導出開口23を塞ぐように設けられ、上方に延びる蒸気導出筒6と、円筒容器2の内部における蒸気導出開口23の下方に、水平方向Hに対して所定角度θ傾斜して配置されるバッフル板7と、を備える蒸気発生装置1である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸気発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ハロゲンヒータ等の加熱手段の輻射熱を利用して水蒸気を発生させる蒸気発生装置が提案されている。例えば、特許文献1には、軸方向が水平に設置された円筒容器と、この円筒容器の内部を軸方向に貫通する内管と、この内管の内部に配置されたハロゲンヒータと、円筒容器の内部に水を供給する給水部と、円筒容器の上部に設けられた蒸気出口部と、を備える蒸気発生装置が提案されている。
【0003】
特許文献1で提案された蒸気発生装置においては、給水部から円筒容器の内部に供給された水は、内管の内側に配置されたハロゲンヒータの輻射熱により加熱されて水蒸気となり、この水蒸気は、円筒容器の上部に設けられた蒸気出口部から導出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−356301号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、以上の蒸気発生装置においては、円筒容器の内部において発生した水蒸気は、水面から離脱する際に、微細な水滴を伴った状態で上昇するため、水滴を含む水蒸気が蒸気出口部から導出されるおそれがある。このように、水蒸気が水滴を含んでしまうと、水蒸気の乾き度が低下してしまう。半導体の洗浄等に用いられる超純水水蒸気を生成する超純水蒸気発生装置のような小型の蒸気発生装置では、円筒容器の内部における水面の位置から蒸気出口部までの距離が短くなり、蒸気出口部から導出される水蒸気に水滴が含まれやすくなるため、この問題は、特に顕著となる。
【0006】
従って、本発明は、導出される水蒸気に含まれる水滴を低減できる蒸気発生装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、円筒状に構成され、軸方向が実質的に水平となるように配置される円筒容器と、前記円筒容器の内部を前記軸方向に貫通して配置され、内部に加熱装置が挿入可能な貫通管と、前記円筒容器の上部に形成される開口部と、前記開口部を塞ぐように設けられ、上方に延びる蒸気導出筒と、前記円筒容器の内部における前記開口部の下方に配置されるバッフル板と、を備える蒸気発生装置に関する。
【0008】
また、前記バッフル板は、水平方向に対して所定角度傾斜して配置されることが好ましい。
【0009】
また、前記所定角度は、1〜5度であることが好ましい。
【0010】
また、前記円筒容器は、水平方向に対して1〜5度傾斜して配置されることが好ましい。
【0011】
また、前記円筒容器の軸方向の一端側の下部に設けられ、該円筒容器に水を供給する給水管を更に備え、前記バッフル板は、前記給水管が取り付けられた側が下がるように傾斜して配置されることが好ましい。
【0012】
また、前記蒸気導出筒は、前記円筒容器の軸方向の略中央部に配置されることが好ましい。
【0013】
また、前記貫通管は、前記円筒容器の中心軸に対して同心円状に複数配置され、前記バッフル板は、複数の前記貫通管のうちの上方に位置する貫通管に支持されることが好ましい。
【0014】
また、実質的に石英素材により構成されることが好ましい。
【0015】
また、前記バッフル板は、前記円筒容器の軸方向における前記開口部の開口幅の長さの2倍以上の長さに構成されることが好ましい。
【0016】
また、本発明は、円筒状に構成され、軸方向が水平方向に対して所定角度傾斜して配置される円筒容器と、前記円筒容器の内部を前記軸方向に貫通して配置され、内部に加熱装置が挿入可能な貫通管と、前記円筒容器の上部に形成される開口部と、前記開口部を塞ぐように設けられ、上方に延びる蒸気導出筒と、を備える蒸気発生装置に関する。
【0017】
また、前記円筒容器の軸方向の一端側の下部に設けられ、該円筒容器に水を供給する給水管を更に備え、前記蒸気導出筒は、前記円筒容器の軸方向の他端側に配置されることが好ましい。
【0018】
また、前記円筒容器は、前記軸方向の一端側が下がるように傾斜して配置されることが好ましい。
【0019】
また、前記所定角度は、1〜5度であることが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明の蒸気発生装置によれば、導出される水蒸気に含まれる水滴を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】第1実施形態の蒸気発生装置を正面(筒状容器の側面側)から視た縦断面図である。
【図2】第1実施形態の蒸気発生装置を側方(筒状容器の平蓋部側)から視た縦断面図である。
【図3A】第1実施形態の蒸気発生装置に給水された状態を正面から視た縦断面図である。
【図3B】第1実施形態の蒸気発生装置に給水された状態を側方から視た縦断面図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係る蒸気発生装置を正面(筒状容器の側面側)から視た縦断面図である。
【図5】第2実施形態の蒸気発生装置を側方(筒状容器の平蓋部側)から視た縦断面図である。
【図6A】第2実施形態の蒸気発生装置に給水された状態を正面から視た縦断面図である。
【図6B】第2実施形態の蒸気発生装置に給水された状態を側方から視た縦断面図である。
【図7】第2実施形態の蒸気発生装置の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の蒸気発生装置の好ましい各実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0023】
まず、第1実施形態の蒸気発生装置について、図1〜図3Bを参照しながら説明する。図1は、第1実施形態の蒸気発生装置を正面(筒状容器の側面側)から視た縦断面図である。図2は、第1実施形態の蒸気発生装置を側方(筒状容器の平蓋部側)から視た縦断面図である。図3Aは、第1実施形態の蒸気発生装置に給水された状態を正面から視た縦断面図である。図3Bは、第1実施形態の蒸気発生装置に給水された状態を側方から視た縦断面図である。
【0024】
第1実施形態の蒸気発生装置1は、図1及び図2に示すように、円筒容器2と、給水管3と、ブロー管4と、複数の貫通管5と、蒸気導出筒6と、バッフル板7と、を備えている。
【0025】
円筒容器2は、水蒸気の源になる水を貯蓄する貯水タンクの役割を果たす。この円筒容器2は、図1及び図2に示すように、筒体部21と、平蓋部22と、開口部としての蒸気導出開口23と、給水開口24と、ブロー開口25と、を有する。
【0026】
筒体部21は、図1及び図2に示すように、円筒状に形成されており、その軸方向Jが実質的に水平となるように配置される。「実質的に水平」とは、水平方向Hに完全に平行であるか、又は水平方向Hからわずかに傾いていることを意味する。
【0027】
平蓋部22は、図2〜図3Bに示すように、筒体部21の軸方向Jの両端に蓋をする板状の部分である。この平蓋部22は、後述の貫通管5が貫通する5個の貫通口221をそれぞれ有する。
【0028】
蒸気導出開口23は、図1及び図2に示すように、円筒容器2の上部に形成される。この蒸気導出開口23は、円筒容器2の軸方向Jの略中央部に配置される。蒸気導出開口23の形状としては、円筒容器2の湾曲側面に沿って変形した略多角形や略円形等の種々の形状が挙げられる。第1実施形態における蒸気導出開口23は、円筒容器2の湾曲側面に沿って変形した略円形状に形成されている。
【0029】
給水開口24は、円筒容器2の軸方向Jの一端側(図1における左側)の下部に形成される。ブロー開口25は、円筒容器2の軸方向Jの他端側(図1における右側)の下部に形成される。給水開口24及びブロー開口25は、いずれも、円筒容器2の湾曲側面に沿って変形した略円形状に形成されている。
【0030】
以上の円筒容器2は、水平方向Hに対して1〜5度の傾斜角θで傾斜して配置されることが好ましい。第1実施形態の円筒容器2は、給水開口24が形成された一端側が下がるように、水平方向Hに対して2度の傾斜角θで傾斜して配置される。
【0031】
第1実施形態の円筒容器2に関する各種寸法は次の通りである。円筒容器2の内径は113mm、その外径は120mmであり、円筒容器2の軸方向Jの長さは390mmである。円筒容器2の平蓋部22の厚さは各5mmであり、その貫通口221の内径は27mmである。円筒容器2の軸方向J及びその直交方向における蒸気導出開口23の各幅は各70mmである。
【0032】
給水管3は、円筒容器2に水を供給する管であり、図2に示すように、給水開口24に接続されている。即ち、給水管3は、円筒容器2の下部における円筒容器2の軸方向Jの一端側(図1における左側)に配置されている。給水管3の下端部近傍には、給水管3の側面に沿った円環溝部が設けられている。
【0033】
第1実施形態の給水管3に関する各種寸法は次の通りである。給水管3の内径は12mm、その外径は16mmであり、給水管3の軸方向の長さは60mmである。また、円筒容器2の軸方向Jの一端から給水管3の中心軸までの距離は27mmである。
【0034】
ブロー管4は、円筒容器2に貯留された水を排出する場合に用いられる管であり、ブロー開口25に接続されている。また、このブロー管4は、円筒容器2の内部に貯留された水の水面W(図3A、図3B参照)の位置を計測する水面計(図示せず)に連通している。ブロー管4の下端部近傍には、ブロー管4の側面に沿った円環溝部が設けられる。
【0035】
第1実施形態のブロー管4に関する各種寸法は次の通りである。ブロー管4の内径は12mm、その外径は16mmであり、ブロー管4の軸方向の長さは60mmである。また、円筒容器2の軸方向Jの他端からブロー管4の中心軸までの距離は70mmである。
【0036】
貫通管5は、図1及び図2に示すように、円筒容器2の内部を円筒容器2の軸方向Jに貫通して配置される。貫通管5は、円筒容器2の中心軸J1に対する同心円の円周上に、等間隔で複数配置される。第1実施形態では、貫通管5は5本配置され、それぞれの貫通管5の両端部は、平蓋部22における貫通口221の周縁部に接合される。
これらの貫通管5には、図1及び図2に示すように、加熱装置としてのハロゲンヒータ16が挿入される。より具体的には、第1実施形態では、5本の貫通管5のうちの下方に位置する3本の貫通管5Aにハロゲンヒータ16が挿入される。
【0037】
第1実施形態の貫通管5に関する各種寸法は次の通りである。貫通管5の内径は21mm、その外径は27mmである。貫通管5の軸方向の長さは390mmであり、円筒容器2の軸方向Jの長さと同じである。貫通管5の配置本数は5本、円筒容器2の中心軸J1に対する同心円の直径は70mm、貫通管5の配置間隔は60°である。
【0038】
蒸気導出筒6は、円筒容器2内で発生した蒸気を上方に導く筒である。この蒸気導出筒6は、図1及び図2に示すように、円筒容器2の蒸気導出開口23を塞ぐように設けられ、上方に延びる。蒸気導出筒6は、円筒容器2の軸方向Jの略中央部に配置され、その上端にドーム部11を有する。
【0039】
第1実施形態の蒸気導出筒6に関する各種寸法は次の通りである。蒸気導出筒6の内径は66mm、その外径は70mmである。蒸気導出筒6の軸方向における円筒容器2の上部から蒸気導出筒6のドーム部11までの距離は127mmであり、半球状のドーム部11の半径は35mmである。
【0040】
以上の蒸気導出筒6には、図1及び図2に示すように、蒸気出口管12、水面制御管13及び安全弁接続管14が接続される。
【0041】
蒸気出口管12は、蒸気導出筒6の内部の蒸気を外部に排出する管である。図1及び図2に示すように、この蒸気出口管12は、一端部において蒸気導出筒6の側面に貫通して接続されている。蒸気出口管12の他端側は、円筒容器2の軸方向Jに直交する方向に略水平に延びている。蒸気導出筒6の一端部は、図2に示すように、斜めに切断された形状になっており、蒸気導出筒6の内部において、上方を向いて開口している。
【0042】
第1実施形態の蒸気出口管12に関する各種寸法は次の通りである。蒸気出口管12の内径は16mm、その外径は20mmである。蒸気出口管12の軸方向の長さは95mmであり、蒸気導出筒6の側面から蒸気出口管12の出口までの長さは60mmである。また、円筒容器2の上部から蒸気出口管12の中心軸までの距離は109mmである。
【0043】
水面制御管13は、円筒容器2に貯留された水の水面Wの位置を計測する水面計に連通する。この水面制御管13は、図1及び図2に示すように、蒸気出口管12の下方に配置され、蒸気出口管12と略平行に延びる。
【0044】
第1実施形態の水面制御管13に関する各種寸法は次の通りである。水面制御管13の内径は12mm、その外径は16mmであり、水面制御管13の軸方向の長さは60mmである。また、円筒容器2の上部から水面制御管13の中心軸までの距離は59mmである。
【0045】
安全弁接続管14は、円筒容器2の内部において規定圧以上の水蒸気が発生した場合に、円筒容器2の内部の水蒸気を強制排出するための管である。この安全弁接続管14は、図1及び図2に示すように、蒸気出口管12と水面制御管13との上下方向の間に位置し、蒸気導出筒6の側面から円筒容器2の軸方向Jと平行に延びて配置される。
【0046】
第1実施形態の安全弁接続管14に関する各種寸法は次の通りである。安全弁接続管14の内径は12mm、その外径は16mmであり、安全弁接続管14の軸方向の長さは60mmである。また、円筒容器2の上部から安全弁接続管14の中心軸までの距離は74mmである。
【0047】
バッフル板7は、図1及び図2に示すように、円筒容器2の内部において円筒容器2の蒸気導出開口23の下方に(つまり、蒸気導出筒6の下方に)配置される。このバッフル板7は、円筒容器2の軸方向Jにおいて給水管3が取り付けられた側が下がるように水平方向Hに対して所定角度θだけ傾斜して、配置される。所定角度θとしては、1〜5度が好ましい。
第1実施形態のバッフル板7は、所定角度θとして2度だけ傾斜して配置されている。第1実施形態では、正面視で、バッフル板7の傾斜角θが円筒容器2の傾斜角θと同じであるため、バッフル板7は、円筒容器2の軸方向Jと平行に延びることになる。
【0048】
バッフル板7は、支持部材15を介して、複数の貫通管5のうちの上方に位置する貫通管5Bに支持される。第1実施形態では、支持部材15は、円筒容器2の軸方向Jに延びる2個の部材により構成される。支持部材15は、上方に位置する2本の貫通管5Bの上部であって円筒容器2の蒸気導出開口23の下方の位置に、配置される。支持部材15は、バッフル板7の下面を支持する。
【0049】
バッフル板7は、円筒容器2の軸方向Jにおいて、円筒容器2の蒸気導出開口23に係る開口幅の長さの2倍以上の長さに形成されている。
【0050】
第1実施形態のバッフル板7に関する各種寸法は次の通りである。バッフル板7が薄い長方形板の場合、バッフル板7の円筒容器2の軸方向Jにおける長さは150mm、その直交方向の長さは80mm、その厚さは2mmである。また、円筒容器2の軸方向Jにおける各支持部材15の長さは各60mm、その高さは各8.9mm、その幅は各3mmである。
【0051】
第1実施形態の蒸気発生装置1は、実質的に石英素材により構成される。「実質的に石英素材により構成される」とは、装置における全ての部材が石英ガラス等の石英部材により構成される場合のみならず、この装置を固定するための部材等、円筒容器2に供給される水や装置内で発生した水蒸気に接触せずに水蒸気の純度に関連しない部材については、石英素材でない場合も含む。第1実施形態の蒸気発生装置1において、石英素材により形成された上記の各種部材は、溶融接合法により互いに接合されている。
【0052】
図3Aは、第1実施形態の蒸気発生装置1に給水された状態を正面から視た縦断面図である。図3Bは、第1実施形態の蒸気発生装置1に給水された状態を側方から視た縦断面図である。
【0053】
第1実施形態の蒸気発生装置1は、図3A及び図3Bに示すように、給水管3から円筒容器2に給水が行われ、円筒容器2の内部に水が貯留された状態で使用される。ここで、円筒容器2を水平方向Hに対して2度程度の傾斜角θで傾斜させて配置した場合に、ハロゲンヒータ16が挿入された3本の貫通管5Aが水面Wから露出することを防ぎつつ、水面Wとバッフル板7との間に所定の空間を形成させる観点から、円筒容器2の内部の水面Wの高さは、円筒容器2の最下部から87mm〜96mmであることが好ましい。
【0054】
円筒容器2の内部に貯留された水は、貫通管5Aに挿入されたハロゲンヒータ16の輻射熱により加熱される。すると、円筒容器2の内部に貯留された水は気化し、水蒸気が発生する。ここで、円筒容器2の内部で発生した水蒸気は、水面Wから離脱するときに、微細な水滴を伴った状態で上昇する。水滴を伴った状態で円筒容器2の内部を上昇した水蒸気は、円筒容器2の上面及びバッフル板7に衝突して、水蒸気と水滴とが分離される。そして、水滴が分離された水蒸気は蒸気導出筒6に導出される。
【0055】
ここで、バッフル板7及び円筒容器2は、水平方向Hに対して2度の傾斜角θで傾斜して、配置されている。これにより、バッフル板7に衝突して水蒸気から分離された水滴は、円筒容器2の上面の傾斜及びバッフル板7の傾斜に沿って下方に流れ、円筒容器2の内部の水面Wに落下する。そのため、円筒容器2の上面及びバッフル板7の下面に水滴が滞留しにくいので、円筒容器2の上面及びバッフル板7の下面において、滞留した水滴が再び水蒸気と接触して水蒸気の乾き度が低下することを抑制できる。
【0056】
以上説明した第1実施形態の蒸気発生装置1によれば、以下のような効果を奏する。
【0057】
(1)第1実施形態においては、バッフル板7を、円筒容器2の内部における蒸気導出開口23の下方に配置した。これにより、円筒容器2内の水面Wから上昇した水滴を含む水蒸気をバッフル板7に衝突させ、水蒸気と水滴とを分離できる。よって、バッフル板7により水滴が分離された水蒸気を、バッフル板7の上方に配置された蒸気導出筒6に導出できるので、蒸気導出筒6から導出される水蒸気に含まれる水滴を低減できる。この効果は、円筒容器2の内部の水面Wの位置から蒸気導出筒6までの距離が短い小型の蒸気発生装置において、特に発揮される。
【0058】
(2)第1実施形態においては、バッフル板7を、水平方向Hに対して所定角度θ傾斜させて配置した。これにより、バッフル板7に衝突して水蒸気から分離された水滴を、バッフル板7の傾斜角θの傾斜に沿って流下させ、円筒容器2の内部の水面Wに落下できる。よって、バッフル板7の下面に水滴が滞留しにくいので、バッフル板7の下面に滞留した水滴が再び水蒸気と接触して水蒸気の乾き度が低下することを抑制できる。また、バッフル板7を傾斜させたので、バッフル板7の下方における水蒸気の流れを、一方向に方向付けられる。よって、バッフル板7の下方において水蒸気の流れが乱れることに起因するキャビテーション(振動)の発生を抑制できる。
【0059】
(3)第1実施形態においては、バッフル板7の傾斜角θを1〜5度に設定した。これにより、気液分離の促進とバッフル板7に衝突して生じた水滴の落下とを両立できる。
【0060】
(4)第1実施形態においては、円筒容器2を、水平方向Hに対して1〜5度の傾斜角θで傾斜させて配置した。これにより、円筒容器2の内部における水蒸気の流れを一方向に方向付けられる。よって、円筒容器2の内部における水蒸気の流れを円滑にできるので、水蒸気の流れが乱れることに起因するキャビテーション(振動)の発生を抑制できる。
【0061】
(5)第1実施形態においては、蒸気導出筒6を、円筒容器2の軸方向Jの略中央部に配置した。これにより、蒸気導出筒6を端部に配置した構造と比較して、水蒸気の左右流入の比率の偏り(流速の不均衡)により生じる水滴の伴流を抑制できる。
【0062】
(6)第1実施形態においては、貫通管5を、円筒容器2の中心軸J1に対して同心円状に複数配置し、バッフル板7を複数の貫通管5のうちの上方に位置する貫通管5Bに支持させた。これにより、円筒容器2の水の熱分布を均等化し、円筒容器2の水を効率良く蒸発させることができると共に、バッフル板7の支持を容易にすることができる。
【0063】
(7)第1実施形態においては、蒸気発生装置1を実質的に石英素材により構成した。これにより、金属成分が含まれない純度の高い水蒸気を発生させることができる。
【0064】
(8)第1実施形態においては、バッフル板7を、円筒容器2の軸方向Jにおける蒸気導出開口23の開口幅の長さの2倍以上の長さに構成した。これにより、蒸気導出開口23の両側から流れ込む蒸気の流速の平均化を促進することができる。
【0065】
次に、本発明の第2実施形態に係る蒸気発生装置1Aについて、図4及び図5を参照しながら説明する。図4は、第2実施形態の蒸気発生装置1Aを正面(円筒容器2の側面側)から視た縦断面図である。図5は、第2実施形態の蒸気発生装置1Aを側方(円筒容器2の平蓋部9側)から視た縦断面図である。
【0066】
第2実施形態以降の説明にあたって、第1実施形態と同一構成要件については同一符号を付し、その説明を省略もしくは簡略化する。
【0067】
第2実施形態の蒸気発生装置1Aは、図4及び図5に示すように、円筒容器2と、給水管3と、ブロー管4と、複数の貫通管5と、蒸気導出筒6と、を備えている。第2実施形態の蒸気発生装置1Aは、図1から図3Bに示す第1実施形態とは、バッフル板7及び支持部材15を備えていない点並びに蒸気導出筒6の位置が主として異なる。
【0068】
円筒容器2は、軸方向Jが水平方向Hに対して所定角度θ傾斜して、配置されている。所定角度θとしては、1〜5度が好ましい。第2実施形態における円筒容器2は、2度の傾斜角θで傾斜して配置される。円筒容器2は、給水管3が設けられた円筒容器2の軸方向Jの一端側(図4における左側)が下がるように傾斜して、配置される。
【0069】
蒸気導出筒6及び蒸気導出開口23は、円筒容器2の軸方向Jの他端側(図4における右側)に配置される。蒸気導出筒6は、蒸気導出開口23を塞ぐように設けられる。蒸気導出筒6は、円筒容器2の軸方向Jにおける上下方向に高い側に、配置される。
【0070】
次に、第2実施形態の蒸気発生装置1Aの動作について、図6A及び図6Bを参照しながら説明する。図6Aは、第2実施形態の蒸気発生装置1Aに給水された状態を正面から視た縦断面図である。図6Bは、第2実施形態の蒸気発生装置1Aに給水された状態を側方から視た縦断面図である。
【0071】
第2実施形態の蒸気発生装置1Aは、図6A及び図6Bに示すように、給水管3から円筒容器2に給水が行われ、円筒容器2の内部に水が貯留された状態で使用される。ここで、円筒容器2の内部の水面Wの高さは、第1実施形態と同様に、円筒容器2の最下部から87mm〜96mmであることが好ましい。
【0072】
円筒容器2の内部に貯留された水は、貫通管5(5A)に挿入されたハロゲンヒータ16の輻射熱により加熱される。すると、円筒容器2の内部に貯留された水は気化し、水蒸気が発生する。ここで、円筒容器2の内部で発生した水蒸気は、水面Wから離脱するときに、微細な水滴を伴った状態で上昇する。水滴を伴った状態で円筒容器2の内部を上昇した水蒸気は、円筒容器2の上面に衝突して、水蒸気と水滴とが分離される。そして、水滴が分離された水蒸気が蒸気導出筒6に導出される。
【0073】
ここで、円筒容器2は、蒸気導出筒6が配置された他端側(図4における右側)が上方に位置するように、水平方向Hに対して2度の傾斜角θで傾斜して配置されている。これにより、バッフル板7に衝突して水蒸気から分離された水滴は、円筒容器2の上面の傾斜に沿って円筒容器2の一端側に流れ、円筒容器2の内部の水面Wに落下する。一方、水蒸気は、円筒容器2の上面に沿って上昇し、他端側に配置された蒸気導出筒6に導出される。このように、円筒容器2の内部の上面近傍において、水蒸気の流れと水滴の流れとを逆方向に方向付けられるので、円筒容器2の内部における水蒸気と水滴との気液分離を好適に行える。また、円筒容器2の上面に水滴が滞留しにくいので、円筒容器2の上面において、滞留した水滴が再び水蒸気と接触して水蒸気の乾き度が低下することを抑制できる。
【0074】
以上説明した第2実施形態の蒸気発生装置1Aによれば、上述した(4)、(6)、(7)の効果を奏する他、以下のような効果を奏する。
【0075】
(9)第2実施形態においては、円筒容器2を、軸方向Jの一端側が下がるように傾斜させて配置し、蒸気導出筒6を、円筒容器2の軸方向Jの他端側に配置した。これにより、円筒容器2の軸方向Jの他端側において、円筒容器2の内面上部と円筒容器2の水面Wとの間の気相部の厚みを一層大きくできる。よって、円筒容器2の水面Wから蒸気導出筒6までの距離を長くできるので、水面Wから離脱して上昇する水蒸気に含まれる水滴を、蒸気導出筒6に到達するまでに減少できる。その結果、蒸気導出筒6から導出される水蒸気に含まれる水滴を低減できる。
【0076】
以上、本発明の好ましい各実施形態について説明したが、本発明は、上述した各実施形態に制限されるものではなく、適宜変更が可能である。
例えば、第2実施形態では、蒸気発生装置1Aを、バッフル板を含まずに構成したが、これに限らない。即ち、図7に示すように、蒸気発生装置1Bを、バッフル板7を含んで構成してもよい。この場合、バッフル板7は、第1実施形態と同様、水平方向Hに対して所定角度θ(例えば2度)傾斜させて配置させてもよい。これにより、蒸気発生装置1Bに、上述した(1)、(2)、(4)、(6)〜(9)の効果を奏させることができる。
【符号の説明】
【0077】
1,1A 蒸気発生装置
2 円筒容器
3 給水管
4 ブロー管
5,5A,5B 貫通管
6 蒸気導出筒
7 バッフル板
11 ドーム部
12 蒸気出口管
13 水面制御管
14 安全弁接続管
15 支持部材
16 ハロゲンヒータ(加熱装置)
21 筒体部
22 平蓋部
23 蒸気導出開口(開口部)
W 水面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状に構成され、軸方向が実質的に水平となるように配置される円筒容器と、
前記円筒容器の内部を前記軸方向に貫通して配置され、内部に加熱装置が挿入可能な貫通管と、
前記円筒容器の上部に形成される開口部と、
前記開口部を塞ぐように設けられ、上方に延びる蒸気導出筒と、
前記円筒容器の内部における前記開口部の下方に配置されるバッフル板と、を備える蒸気発生装置。
【請求項2】
前記バッフル板は、水平方向に対して所定角度傾斜して配置される請求項1に記載の蒸気発生装置。
【請求項3】
前記所定角度は、1〜5度である請求項2に記載の蒸気発生装置。
【請求項4】
前記円筒容器は、水平方向に対して1〜5度傾斜して配置される請求項1〜3のいずれかに記載の蒸気発生装置。
【請求項5】
前記円筒容器の軸方向の一端側の下部に設けられ、該円筒容器に水を供給する給水管を更に備え、
前記バッフル板は、前記給水管が取り付けられた側が下がるように傾斜して配置される請求項1〜4のいずれかに記載の蒸気発生装置。
【請求項6】
前記蒸気導出筒は、前記円筒容器の軸方向の略中央部に配置される請求項1〜5のいずれかに記載の蒸気発生装置。
【請求項7】
前記貫通管は、前記円筒容器の中心軸に対して同心円状に複数配置され、
前記バッフル板は、複数の前記貫通管のうちの上方に位置する貫通管に支持される請求項1〜6のいずれかに記載の蒸気発生装置。
【請求項8】
実質的に石英素材により構成される請求項1〜7のいずれかに記載の蒸気発生装置。
【請求項9】
前記バッフル板は、前記円筒容器の軸方向における前記開口部の開口幅の長さの2倍以上の長さに構成される請求項1〜8のいずれかに記載の蒸気発生装置。
【請求項10】
円筒状に構成され、軸方向が水平方向に対して所定角度傾斜して配置される円筒容器と、
前記円筒容器の内部を前記軸方向に貫通して配置され、内部に加熱装置が挿入可能な貫通管と、
前記円筒容器の上部に形成される開口部と、
前記開口部を塞ぐように設けられ、上方に延びる蒸気導出筒と、を備える蒸気発生装置。
【請求項11】
前記円筒容器の軸方向の一端側の下部に設けられ、該円筒容器に水を供給する給水管を更に備え、
前記蒸気導出筒は、前記円筒容器の軸方向の他端側に配置される請求項10に記載の蒸気発生装置。
【請求項12】
前記円筒容器は、前記軸方向の一端側が下がるように傾斜して配置される請求項11に記載の蒸気発生装置。
【請求項13】
前記所定角度は、1〜5度である請求項10〜12のいずれかに記載の蒸気発生装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3A】
image rotate

【図3B】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6A】
image rotate

【図6B】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−251717(P2012−251717A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−124566(P2011−124566)
【出願日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【出願人】(000175272)三浦工業株式会社 (1,055)