説明

蒸気調理機

【目的】 蒸気発生容器の温度低下を抑え、高温蒸気を効率的に発生させる。
【構成】 筐体32の適宜位置に、ヒータ38により加熱される蒸気発生容器34が配設される。筐体32の上面に、所要量の水を貯留可能な貯水タンク44が配置される。貯水タンク44は、第1給水管48、開閉弁50および第2給水管52を介して蒸気発生容器34に連通接続される。貯水タンク44は、蒸気発生容器34のフランジ34bに当接している。すなわち、貯水タンク44に貯留される水は、蒸気発生容器34から伝達される熱により加温され、この加温された水が蒸気発生容器34に供給される。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、高温蒸気を利用して被調理品を調理する蒸気調理機に関するものである。
【0002】
【従来技術】麺類やまんじゅうあるいは冷凍食品等の被調理品を、連続的に発生する高温蒸気により蒸したり解凍する蒸気調理機が、レストランその他各種の厨房施設で好適に使用されている。図5は、典型的な蒸気調理機の基本構造を示すものであって、該調理機10は、本体をなす筐体12の上板に所要直径の開口12aが開設され、該開口12aを介して上方に開放する箱状の蒸気発生容器14が内装されている。蒸気発生容器14の上面に、該容器14の開口14aを上方から覆うトレーケース16が配置されており、このケース16には、被調理品18を載せたトレー20が挿脱自在に収納されるようになっている。また蒸気発生容器14の下部には、図示しない温度検知手段によりON−OFF制御される加熱用のヒータ22が配設され、該ヒータ22により蒸気発生容器14は100℃以上に加熱される。更に、蒸気発生容器14には、外部水道系に接続する水供給管24が開閉弁26を介して連通接続され、該弁26を開放することにより蒸気発生容器14中に水を供給するよう構成している。
【0003】このように構成した蒸気調理機10は、前記ヒータ22により蒸気発生容器14を加熱すると共に、前記開閉弁26を開放して外部水道系から水を蒸気発生容器14に供給する。このとき蒸気発生容器14は、ヒータ22により100℃以上に加熱されているので、該容器14に供給された水は蒸発し、この高温蒸気が前記開口14aを介してトレーケース16に充満する。従って、トレーケース16にトレー20を介して収納された被調理品18は、高温蒸気により調理される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】前記蒸気調理機10では、蒸気発生容器14に一度に多量の水が供給されると、該容器14の温度が低下して効率的に高温蒸気を発生し得なくなる。そこで、調理運転中は前記開閉弁26をタイマー等の制御手段により開閉制御することにより、蒸気発生容器14に水を適正量づつ間欠的に供給することが行なわれている。しかるに、前記開閉弁26には外部水道系に連通する水供給管24が直結されているため、該開閉弁26を一定時間毎に開閉しても、その開放している間の外部水道系における水圧の変化によって供給される水量が変わってしまうことが往々にある。そして殊に水量が低下した場合には、蒸気の発生が中断されることとなり、被調理品18の効率的な調理をなし得なくなる問題を生ずる。また水量が増えた場合には、前述したように水の蒸発効率が低下する欠点を招いてしまう。更に、タイマー等の電気部品が増えることにより装置全体の制御回路が複雑となる難点も指摘される。
【0005】そこで、これに対処し得る蒸気調理機が、本件出願人により提案されている。この蒸気調理機は、蒸気発生容器の配設レベルより高いレベルに、所要量の水を貯留する貯水タンクを配設すると共に、該貯水タンクの下方から導出した給水管を開閉弁を介して蒸気発生容器に連通接続するよう構成されている。そしてこの蒸気調理機では、開閉弁を開放すると、前記貯水タンク中の水が給水管を介して蒸気発生容器に連続的に供給されると共に、前記蒸気発生容器で発生した高温蒸気により該容器内に生ずる圧力が、前記給水管からの給水圧力を超えた際に、前記蒸気発生容器への水の供給が停止される。すなわち、開閉弁を開閉制御することなくタンク中の水を蒸気発生容器に一定量づつ間欠的に供給することができ、蒸気発生容器内で蒸気を効率的に発生させ得る。また開閉弁の制御手段を省略し得るので、部品点数を少なくして構造の簡略化を達成し得るものである。
【0006】この場合において、前記貯水タンクには外部水道系から供給された常温の水が貯留されるため、この常温の水を蒸気発生容器に供給した際には該容器自体の熱が多く奪われ、蒸気の発生効率が僅かではあるが低下する難点があり、これを何如に解決するか、が解決課題となっている。なお前述した従来の蒸気調理機においても、蒸気発生容器に水道水が直接供給されるので、同様の問題を内在していた。
【0007】
【発明の目的】この発明は、前述した蒸気調理機に内在している前記課題に鑑み、これを好適に解決するべく提案されたものであって、蒸気発生容器の温度低下を抑え、高温蒸気を効率的に発生させ得る蒸気調理機を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】前述した課題を克服し、所期の目的を好適に達成するため本発明は、被調理品を収納するケースと、このケースに下方で連通してヒータにより加熱される蒸気発生容器とを備え、前記蒸気発生容器に水を供給することにより得られる高温蒸気によって、前記ケースに収納した被調理品を蒸気加熱するようにした蒸気調理機において、前記蒸気発生容器に連通接続されて所要量の水を貯留する貯水タンクを、該蒸気発生容器に近接または当接するよう配設したことを特徴とする。
【0009】
【実施例】次に、本発明に係る蒸気調理機につき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照しながら以下説明する。
【0010】図1は、実施例に係る蒸気調理機30の概略構造を示す縦断側面図であって、調理機本体をなす筐体32の適宜位置に、蒸気発生手段としての蒸気発生容器34が配設されている。この蒸気発生容器34は、上方に開放する箱状の本体34aと、該本体34aの上端外縁に一体的に形成したフランジ34bとから構成される。そして該容器34は、筐体32の上板に形成した開口32aを介して本体34aの下部が筐体内に垂下すると共に、筐体32の上方に臨むフランジ34bが、複数のスペーサ36を介して筐体上面に支持されている(図2R>2参照)。また、筐体32の開口32aは、容器本体34aの外部寸法より大径に寸法設定され、該本体34aは開口32aに対して非接触で挿通されている。すなわち蒸気発生容器34は、前記スペーサ36を介してのみ筐体32に接触し、後述する調理運転時に該容器34の熱が筐体32に伝わるのを抑制するようになっている。なお、スペーサ36を熱不良導材料で構成することにより、更に熱伝達を抑えることが可能となる。
【0011】前記蒸気発生容器34の下部に、加熱用のヒータ38が複数配設され、これらヒータ38を容器34の適宜位置に配設したサーモ感温筒40によりON−OFF制御することによって、蒸気発生容器34を常に100℃以上に加熱保持するよう構成されている。なお符号42は、ヒータ38や後述する開閉弁50等の制御回路が収納される制御ボックスを示す。
【0012】前記筐体32の上面には、図1に示す如く、所要量の水を貯留可能な貯水タンク44が配置され、該タンク44には、外部水道系に接続する供給管46を介して水が供給されるようになっている。この貯水タンク44は、図2に示す如く、前記蒸気発生容器34のフランジ34bに当接するよう位置決めされ、調理運転中は蒸気発生容器34から伝達される熱により加熱されるよう構成される。すなわち、外部水道系から貯水タンク44に供給された常温の水は、蒸気発生容器34からの熱により加温される。なお貯水タンク44の下部には、該タンク44の外側面に生じた露を集水する露受け47が配設されている。
【0013】前記貯水タンク44の底面に第1給水管48の一端が連通接続され、該給水管48の他端は、筐体内部下方に配設した開閉弁50の入口側に連通接続されている。また開閉弁50の出口側には、前記蒸気発生容器34に連通する第2給水管52が連通接続されている。なお貯水タンク44は、蒸気発生器34の配設レベルより高いレベルに臨んで、該タンク中に貯留される水の水面レベルが、第2給水管52における蒸気発生容器34に接続して開口するレベルよりも所要高さLだけ上方に位置するよう設定される。これにより、開閉弁50を開放すれば、前記貯水タンク44中の水(水面)に加わる圧力(第2給水管52からの給水圧力)P1により、該タンク44中の水は蒸気発生容器34に連続的に供給される(図3参照)。そしてこの水は、蒸気発生容器34内で蒸発して高温の蒸気となる。
【0014】前記蒸気発生容器34の上部に蓋部材54が着脱自在に載置され、該蓋部材54の下方に突出する突部54aが、蒸気発生容器34の上方に開放する開口34c内に挿入されて、該容器内に空間Sを画成するよう構成される。また蓋部材54には、空間Sと外部(上方外部)とを連通する複数の通孔54bが所要パターンで垂直に穿設され、空間S内で発生した高温蒸気は通孔54bを介して上方外部に噴出される。なお、蓋部材54における突部54aの外側面と蒸気発生容器34の内側面とはOリング56を介して密封されている。そして空間Sの内部寸法および通孔群の開口寸法は、該空間S内に供給された所要量の水(効率的に蒸発させ得る量の水)が蒸発した際の空間S内の圧力P2が、前記給水圧力P1以上(P1≦P2)となる値に設定されている。これにより、調理運転に際して開閉弁50を開放して貯水タンク44中の水が圧力P1で蒸気発生容器34の空間Sに供給されている状態で、所要量の水が蒸発することにより該空間S内の圧力P2が圧力P1以上に達すると、貯水タンク44からの水の供給は停止される(図4参照)。
【0015】前記蓋部材54の上に、前記通孔群の穿設部位を覆うようにトレーケース58が配置され、各通孔54bから噴出された高温蒸気がトレーケース内に充満するようになっている。このトレーケース58には、被調理品18を載置したトレー60が挿脱自在に収納されるよう構成されており、該ケース58に充満した高温蒸気により被調理品18が調理される。
【0016】
【実施例の作用】次に、実施例に係る蒸気調理機の作用につき以下説明する。被調理品18の調理に先立ち、前記貯水タンク44に供給管46を介して所要量の水を貯留すると共に、前記ヒータ38により蒸気発生容器34を100℃以上に加熱する。貯水タンク44は、図2に示す如く、蒸気発生容器34のフランジ34bに当接しているので、該容器34から伝達される熱により加熱される。この結果として、該貯水タンク44に貯留されている常温の水が所要温度まで加温される。
【0017】この状態で、前記トレーケース58に、被調理品18を載せたトレー60を収納すると共に、前記開閉弁50を開放する。これにより、前記貯水タンク44に貯留されている加温水は、該タンク内の水面レベルと、前記第2給水管52の蒸気発生容器内での開口レベルとの差によって生ずる給水圧力P1で、第1給水管48、開閉弁50および第2給水管52を介して蒸気発生容器34に連続的に供給される(図3参照)。このとき蒸気発生容器34は100℃以上に加熱されているので、該容器34に供給された加温水は蒸発し、高温蒸気となる。また、貯水タンク44から蒸気発生容器34に供給される加温水は、常温の水道水に比較すれば相当温いため、蒸気発生容器34から奪われる熱量は少なく、該容器34の温度低下を抑えることができる。そしてこの高温蒸気は、図4に示す如く、前記蓋部材54に穿設した複数の通孔54bを介してトレーケース58内に噴出供給されて充満し、前記トレー60に載置されている被調理品18が調理される。
【0018】前記貯水タンク44から連続的に供給される加温水が所要量だけ蒸発することにより、前記空間S内の圧力P2が、前記第2給水管52からの給水圧力P1以上となると、第2給水管52からの給水は阻止される。そして、空間S内の高温蒸気が蓋部材54の通孔54bを介してトレーケース58に供給されることにより、該空間S内の圧力P2が圧力P1よりも低下すると、再び貯水タンク44中の加温水が第2給水管52を介して蒸気発生容器34に供給される。この繰返しにより、前記トレー60に載せられている被調理品18が調理される。
【0019】このように、前記貯水タンク44を100℃以上に加熱される蒸気発生容器34に当接させることにより、該容器34から伝わる熱によって貯留されている水を加温することができる。これにより、蒸気発生容器34に供給された水が蒸発する際に該容器34から奪われる熱量を少なくして温度低下を抑えることができ、高温蒸気を効率的に発生させることが可能となる。
【0020】なお実施例では、前記蒸気発生容器に貯水タンクを当接するよう構成した場合につき説明したが、本願はこれに限定されるものでなく、貯水タンクを蒸気発生容器からの熱が伝わる位置に近接配置するようにしてもよい。
【0021】
【発明の効果】以上に述べた如く、本発明に係る蒸気調理機によれば、ヒータにより加熱される蒸気発生容器に貯水タンクを近接または当接するよう配設したので、蒸気発生容器から伝わる熱によりタンクに貯留されている水を加温することができる。すなわち、加温された水を蒸気発生容器に供給することにより、水の蒸発時に蒸気発生容器から奪われる熱量を少なくして、その温度低下を抑えることができ、高温蒸気を効率的に発生させ得る。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例に係る蒸気調理機を示す縦断側面図である。
【図2】 実施例に係る蒸気調理機の要部を示す概略斜視図である。
【図3】 実施例に係る蒸気調理機による調理運転に際し、蒸気発生容器に水が供給される状態を示す説明図である。
【図4】 実施例に係る蒸気調理機による調理運転に際し、蒸気発生容器内の圧力が高まって給水が停止する状態を示す説明図である。
【図5】 従来技術に係る蒸気調理機を示す縦断側面図である。
【符号の説明】
18 被調理品,34 蒸気発生容器,38 ヒータ
44 貯水タンク,58 トレーケース

【特許請求の範囲】
【請求項1】 被調理品(18)を収納するケース(58)と、このケース(58)に下方で連通してヒータ(38)により加熱される蒸気発生容器(34)とを備え、前記蒸気発生容器(34)に水を供給することにより得られる高温蒸気によって、前記ケース(58)に収納した被調理品(18)を蒸気加熱するようにした蒸気調理機において、前記蒸気発生容器(34)に連通接続されて所要量の水を貯留する貯水タンク(44)を、該蒸気発生容器(34)に近接または当接するよう配設したことを特徴とする蒸気調理機。

【図2】
image rotate


【図3】
image rotate


【図1】
image rotate


【図4】
image rotate


【図5】
image rotate


【公開番号】特開平6−253978
【公開日】平成6年(1994)9月13日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平5−76308
【出願日】平成5年(1993)3月9日
【出願人】(000194893)ホシザキ電機株式会社 (989)