説明

蒸気質モニタリング装置

【課題】 蒸気や凝縮水の冷却に空冷式の熱交換器を用いた場合であっても、蒸気中の酸素ガス濃度を、凝縮水中の溶存酸素濃度を用いて適正に計測できる蒸気質モニタリング装置を提供する。
【解決手段】 ボイラ500で発生した蒸気Sを冷却して凝縮水W2にし、この凝縮水W2を所定温度まで冷却して、その水質を水質計測器4により計測することにより、蒸気Sの質をモニタリングするとともに、蒸気Sと凝縮水W2のうち、少なくとも何れか一方を、大気中の空気で強制的に冷却する空冷式の熱交換器3を備えた蒸気質モニタリング装置1であって、熱交換器3下流側の凝縮水W2の流路8,43中に、熱交換器3側に背圧をかける背圧手段5を設けている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボイラで発生した蒸気を冷却し、このとき発生した凝縮水の水質を計測することにより、蒸気の質をモニタリングする蒸気質モニタリング装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ボイラで発生した蒸気を冷却して凝縮水にし、この凝縮水を所定温度まで冷却して、その水質を水質計測器により計測することにより、蒸気の質、すなわち、蒸気中に含まれる不純物量や蒸気の腐食性等をリアルタイムにモニタリング(監視)する、蒸気質モニタリング装置は知られている。
【0003】
かかる蒸気質モニタリング装置には、冷却水を用いて蒸気を冷却させる水冷式の熱交換器を用いたもの(例えば、特許文献1、特許文献2)の他、大気中の空気で蒸気や凝縮水を強制的に冷却する空冷式の熱交換器を用いたもの(特許文献3)もある。水冷式の熱交換器を用いた蒸気質モニタリング装置は、蒸気等の冷却効率がよいので多く使用されているが、冷却水が容易に利用できない現場等では、空冷式の熱交換器を用いたものの利用価値も高い。
【0004】
空冷式の熱交換器を用いた蒸気質モニタリング装置では、サンプリングされた蒸気を、空冷式の熱交換器等に通して所定温度の凝縮水にまで冷却した後、この凝縮水を、流量をコントロールすることなく、そのまま水質計測器に送り、この水質計測器により、凝縮水の水質を計測している。なお、水質計測器に送られる凝縮水の流量と温度は、水質計測器に合った所定の流量条件及び温度条件を満たす必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−93128号公報
【特許文献2】特願2008−202342号公報
【特許文献3】特願2009−165000号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、上記空冷式の熱交換器を用いた蒸気質モニタリング装置では、凝縮水の流量と温度とが、計測に必要な条件を満たしているにもかかわらず、凝縮水中に高濃度の溶存酸素を含む場合に、計測された溶存酸素濃度が、蒸気中の酸素ガス濃度に比べて、低くでてしまうという問題があった。
【0007】
なお、水冷式の熱交換器を用いた蒸気質モニタリング装置では、蒸気中の酸素ガス濃度を、凝縮水の溶存酸素濃度によって適正に計測できることが実証されている。
【0008】
この発明は、以上の点に鑑み、蒸気や凝縮水の冷却に空冷式の熱交換器を用いた場合であっても、蒸気中の酸素ガス濃度を、凝縮水中の溶存酸素濃度を用いて適正に計測できる蒸気質モニタリング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明の請求項1記載の発明は、ボイラで発生した蒸気を冷却して凝縮水にし、この凝縮水を所定温度まで冷却して、その水質を水質計測器により計測することにより、前記蒸気の質をモニタリングするとともに、前記蒸気と凝縮水のうち、少なくとも何れか一方を、大気中の空気で強制的に冷却する空冷式の熱交換器を備えた蒸気質モニタリング装置であって、前記熱交換器下流側の前記凝縮水の流路中に、前記熱交換器側に背圧をかける背圧手段を設けていることを特徴とする。
【0010】
蒸気中に比較的多量の酸素ガスが含まれている場合には、蒸気の凝縮段階において、蒸気や凝縮水に、ある程度の圧力がかけられていないと、酸素ガスが凝縮水中に溶解しにくいという現象が実験により確かめられている。そこで、この発明では、熱交換器下流側の凝縮水の流路中に背圧手段を設け、熱交換器側に背圧をかけるようにした。
【0011】
この発明の請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明の場合において、前記凝縮水の流路が、前記水質計測器中の溶存酸素濃度計測用のフローセルの、前記凝縮水の出口側流路であることを特徴とする。
【0012】
溶存酸素濃度測定用のフローセルの、凝縮水の出口側流路に背圧手段が設けられていると、空冷式の熱交換器から溶存酸素濃度計測用のフローセル内までの凝縮水にも、背圧手段により背圧がかけられる。一般に、ガスの溶解量は圧力に比例するため、溶存酸素濃度を計測するまでの凝縮水にも圧力(背圧)をかけることにより、蒸気中の酸素ガスをより確実に凝縮水中に溶解させることができることとなる。
【0013】
この発明の請求項3記載の発明は、請求項1記載の発明の場合において、前記凝縮水の流路が、前記水質計測器中の溶存酸素濃度計測用のフローセル直前の、このフローセルへの入口側流路であることを特徴とする。
【0014】
この発明の請求項4記載の発明は、請求項1乃至3の何れかに記載の発明の場合において、前記水質計測器にて水質が計測された後の前記凝縮水で、前記ボイラからの蒸気を、前記熱交換器に先だって冷却する凝縮水冷却器が設けられていることを特徴とする。
【0015】
この発明では、ボイラからの蒸気は、凝縮水冷却器と空冷式の熱交換器とにより、冷却されて所定温度の凝縮水に変えられるが、いずれの機器に対しても、背圧手段により背圧をかけることができる。
【0016】
この発明の請求項5記載の発明は、請求項1乃至4の何れかに記載の発明の場合において、前記背圧手段が背圧弁であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
この発明の請求項1記載の発明によれば、蒸気や凝縮水の冷却に空冷式の熱交換器を用いた場合であっても、背圧手段を用いて熱交換器側に背圧をかけることにより、蒸気中の酸素ガスを凝縮水中に充分に溶解させることができるので、蒸気中の酸素ガス濃度を、凝縮水の溶存酸素濃度により適正に計測することができる。
【0018】
この発明の請求項2記載の発明によれば、溶存酸素濃度を計測するまでの凝縮水にも圧力(背圧)をかけることができるので、蒸気中の酸素ガスを確実に凝縮水中に溶解させることができ、凝縮水中の溶存酸素濃度により、蒸気中の酸素ガス濃度をより確実に知ることができる。
【0019】
この発明の請求項3記載の発明によれば、溶存酸素濃度計測用のフローセルに耐圧性がない場合であっても、溶存酸素濃度計測用のフローセル直前まで、凝縮水に背圧をかけることができるので、蒸気中の酸素ガスを充分に凝縮水中に溶解させることができ、蒸気中の酸素ガス濃度を、凝縮水の溶存酸素濃度により適正に計測することができる。
【0020】
この発明の請求項4記載の発明によれば、水質計測器にて水質が計測された後の凝縮水で蒸気を冷却することにより、蒸気や凝縮水の冷却効率のアップを図ることができる。
【0021】
この発明の請求項5記載の発明によれば、オリフィス等の背圧手段と比較して、背圧弁は、背圧の大きさを容易に変えることができ、かつ、使用も容易である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】この発明の一実施の形態に係る蒸気質モニタリング装置を示す図である。
【図2】水冷式の熱交換器を有する従来の蒸気質モニタリング装置を示す図である。
【図3】空冷式の熱交換器を有するが、この熱交換器の下流側に背圧弁を有さない蒸気質モニタリング装置を示す図である。
【図4】図1の蒸気質モニタリング装置による溶存酸素濃度の計測値と、図2の蒸気質モニタリング装置による溶存酸素濃度の計測値と、図3の蒸気質モニタリング装置による溶存酸素濃度の計測値とを比較したグラフである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、この発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
図1はこの発明の一実施の形態に係る蒸気質モニタリング装置を示している。
【0024】
蒸気質モニタリング装置1は、図1で示されるように、凝縮水冷却器2と、空冷式熱交換器3と、水質計測器4と、背圧手段としての背圧弁5と、蒸気Sや凝縮水W2の流路を形成する、蒸気ライン6、気水混合ライン7、凝縮水ライン8、計測済み凝縮水ライン9とから構成されている。
【0025】
凝縮水冷却器2は、図1で示されるように、蒸気Sを、計測済み凝縮水W3によって冷却して、蒸気混合水W1を作るものであり、計測済み凝縮水W3が貯められるケーシング20内に、熱交換部21が収納されたものである。ケーシング20の上部の蓋部分には、大気開放用のベント管20aと計測済み凝縮水ライン9とつながるノズル20bが設けられている。また、ケーシング20の側壁には、計測済み凝縮水W3のオーバーフロー管20cが設けられている。熱交換部21は、一端側が蒸気ライン6に接続され、他端側が気水混合ライン7に接続されている。この熱交換部21は、例えば、内径2.17mmで所定長さの伝熱管から形成されている。
【0026】
空冷式熱交換器3は、蒸気混合水W1を、大気中の空気Aによって強制冷却して、水質測定用の凝縮水W2を作るものであり、図1で示されるように、送風機30と、ダクト31と、熱交換部32とから構成されている。ダクト31内に収納された熱交換部32の入口側は、気水混合ライン7に接続され、出口側は凝縮水ライン8に接続されている。ダクト31の一端側、すなわち、熱交換部32の出口側には送風機30が取り付けられ、ダクト31の他端側、すなわち、熱交換部32の入口側は、送風機30からの空気Aを排出するために開放されている。熱交換部32は、例えば、内径が2.17mmで所定長さの伝熱管から形成されている。
【0027】
水質計測器4は、凝縮水W2の種々の水質、例えば、溶存酸素濃度(DO)と電気伝導率(EC)とpH値とを計測するものである。この水質計測器4は、図1で示されるように、フローセル40a中に溶存酸素濃度センサ40bが設けられている溶存酸素濃度計40と、フローセル41a中に電気伝導率センサ41bが設けられている電気伝導率計41と、フローセル42a中にpHセンサ42bが設けられているpH計42と、溶存酸素濃度計40と電気伝導率計41とを連結する凝縮水流路43と、電気伝導率計41とpH計42とを連結する凝縮水流路44とから構成されている。なお、溶存酸素濃度計40は、これに所定の圧力がかけられても、凝縮水W2中の溶存酸素濃度を適正に計測できるように、耐圧性能を有している。
【0028】
この水質計測器4は、溶存酸素濃度計40の入口部が、凝縮水ライン8に接続され、pH計42の出口部が、計測済み凝縮水ライン9に接続されている。凝縮水流路43,44の配管径は、内径が2.17mmとなっている。
【0029】
背圧弁5は、図1で示されるように、空冷式熱交換器3下流側にある水質測定器4内の、溶存酸素計測用のフローセル40a出口直後の凝縮水流路43中に設けられている。この背圧弁5は、凝縮水W2の流量を絞るようにして、空冷式熱交換器3を含めた溶存酸素濃度計40より上流側に背圧をかける背圧手段である。この背圧弁5には、凝縮水W2の流量コントロールをして、空冷式熱交換器3側に背圧がかけられるような流量調整弁、例えば、ニードル弁が使用されている。
【0030】
蒸気ライン6は、ボイラ500側の蒸気Sを、詳細には、図1で示されるように、ボイラ500の蒸気ヘッダ501に設けられた圧力計502横の枝管R1側からの蒸気Sを、凝縮水冷却器2側に取り込むためのものである。この蒸気ライン6中には、蒸気Sの流れに沿って、止め弁61と、電磁弁62と、フィルタ63とが設けられている。なお、フィルタ63より下流側の配管径は、内径が2.17mmとなっている。
【0031】
気水混合ライン7は、凝縮水冷却器2出口の蒸気混合水W1を、空冷式熱交換器3側に送るものであり、その配管径は、内径が2.17mmとなっている。
【0032】
凝縮水ライン8は、空冷式熱交換器3出口の凝縮水W2を水質計測器4側に送るものであり、内部にサーモスタット81が設けられている。サーモスタット81は、バイメタル式であり、高温の凝縮水W2や蒸気Sが水質計測器4側に流れ込むのを防止すると同時に、凝縮水W2の温度が所定値以上の高温に達すると、蒸気ライン6中の電磁弁62を閉じさせる。凝縮水ライン8の配管径は、内径が2.17mmとなっている。
【0033】
計測済み凝縮水ライン9は、水質計測器4からの計測済み凝縮水W3を凝縮水冷却器2に供給するためのものであり、その配管径は、内径が4.0mmとなっている。
【0034】
この蒸気質モニタリング装置1では、蒸気ライン6を通って取り込まれたボイラ500側の蒸気Sは、凝縮水冷却器2により冷却されて蒸気混合水W1に変えられた後、気水混合ライン7を通って空冷式熱交換器3に送られる。蒸気混合水W1は、空冷式熱交換器3により冷却されて、水質計測に適した温度と流量の凝縮水W2に変えられた後、凝縮水ライン8を通って水質計測器4に送られる。凝縮水W2は、水質計測器4と計測済み凝縮水ライン9を通って、計測済み凝縮水W3として凝縮水冷却器2に送られる。計測済み凝縮水W3は、凝縮水冷却器2内で蒸気Sと熱交換された後、ベント管20aから一部蒸気に変えられ大気に放出されるとともに、オーバーフロー管20cから残りのものが外部に排出される。なお、凝縮水冷却器2中には、予め冷却用の水が入れられており、これに、計測済み凝縮水W3が補給されていく。
【0035】
以上のような運転を一定時間継続し、凝縮水冷却器2中の冷却媒体として、計測済み凝縮水W3が補給されていくとともに、凝縮水W2の温度と流量が計測に適した、一定値になると、水質計測器4により、凝縮水W2の溶存酸素濃度と電気伝導度とpH値とが計測される。なお、計測に適した凝縮水W2の流量は、5mL/min以上であり、計測に適した凝縮水W2の温度は、10〜40℃である。
【0036】
つぎに、空冷式熱交換器3の下流側の水質計測装置3内に置かれた背圧弁5の作用効果について、図4を参照しつつ説明する。なお、図4は、ボイラ500からの蒸気Sの凝縮水W2中の溶存酸素濃度を、この蒸気質モニタリング装置1と、図2で示される蒸気質モニタリング装置100と、図3で示される蒸気質モニタリング装置200とで計測した結果を示している。
【0037】
図2で示されるような、水冷式熱交換器10を備えた蒸気質モニタリング装置100では、計測された凝縮水W2の溶存酸素濃度が、蒸気S中の酸素ガス濃度を適正に示していることが確かめられている。したがって、図4で示されるような、蒸気質モニタリング装置100により計測された溶存酸素濃度の計測値K1(測定点は□で示されている)は適正な値ということができる。
【0038】
この蒸気質モニタリング装置100は、図2で示されるように、蒸気質モニタリング装置1の蒸気ラインと6と凝縮水ライン8間に、凝縮水冷却器2や空冷式熱交換器3に換えて、水冷式熱交換器10を設けるとともに、蒸気質モニタリング装置1の凝縮水ライン8中に、流量調整弁11を設けたものである。この蒸気質モニタリング装置100では、冷却水Cの流量コントロールによって、凝縮水W2の温度が計測に適したものとなるようにコントロールされるとともに、流量調整弁11によって、凝縮水Wの流量が計測に適したものになるようにコントロールされる。この蒸気質モニタリング装置1でも、蒸気Sを凝縮させる水冷式熱交換器10側に、流量調整弁11によって一定の背圧がかけられている。
【0039】
一方、蒸気S中に比較的多量の酸素ガス(例えば、凝縮水W2中では8〜13mg/Lの溶存酸素濃度)が含まれている場合には、蒸気Sの凝縮段階において、蒸気Sや凝縮水W2に、ある程度の圧力がかけられていないと、酸素ガスが凝縮水W2中に充分に溶解しないという現象が実験により確かめられている。
【0040】
すなわち、図3で示されるように、蒸気質モニタリング装置1中の背圧弁5を、蒸気ライン6側に配置し、背圧弁5による凝縮水W2の圧力損失を蒸気S側に持たせた蒸気質モニタリング装置200では、この背圧弁5の下流側には、凝縮水W2等の流量や圧力を制御するもの(背圧弁等)はないので、ボイラ500側の蒸気Sは、背圧弁5の下流側の蒸気圧力に見合った流量だけ、蒸気Sが凝縮水W2として取り込まれ、この凝縮水W2が水質計測器4側に送られる。この場合、水質計測器4の上流側の圧力は、水質計測器4内と計測済み凝縮水ライン9内とを流れる凝縮水W2の圧力損失分にしか過ぎないので、低いものとなり、この結果、蒸気Sの凝縮が生じる空冷式熱交換器3側の圧力も比較的低くなる。そして、この蒸気質モニタリング装置200による溶存酸素濃度の計測値K2は、流量と温度が計測条件を満足しているにもかかわらず、図4中の▲で示されるように、蒸気質モニタリング装置100による計測値より低く、上下に変動する不安定な値となっている。
【0041】
そこで、蒸気質モニタリング装置1では、背圧弁5を、空冷式熱交換器3の下流側に設置し、この背圧弁5によって、空冷式熱交換器3側に一定の背圧をかけようにした。このことにより、蒸気質モニタリング装置1による溶存酸素濃度の計測値K3は、図4中の●で示されるように、蒸気質モニタリング装置100による計測値K1とほぼ同じ値を示すとともに、上下に変動することなく安定した状態となった。すなわち、このことから、蒸気質モニタリング装置1では、蒸気S中に比較的多量の酸素ガスが含まれる場合でも、蒸気S中の酸素ガス濃度を適正に示す凝縮水W2中の溶存酸素濃度を計測していることが理解できる。
【0042】
ここで、蒸気Sの凝縮は、空冷式熱交換器3内だけでなく、凝縮水冷却器2内でも生じているが、この凝縮水冷却器2にも背圧弁5により一定の背圧がかけられているので、このことによっても、蒸気S中の酸素ガス濃度が、凝縮水W2中の溶存酸素濃度によって適正に計測されてことがわかる。
【0043】
つぎに、3つの蒸気質モニタリング装置1,100,200で、蒸気Sの質をモニタリングをする場合の、図4で示された凝縮水W2中の溶存酸素濃度の計測結果について、もう少し詳細に説明する。なお、図4のグラフは、縦軸が溶存酸素濃度mg/Lを示し、横軸が時間の経過を示している。
【0044】
ボイラ500側の蒸気Sの圧力は0.4MPaであり、蒸気ヘッダ501の圧力計502横の枝管R1に、空冷式熱交換器3は有するが、これより下流側に背圧弁5を有しない蒸気質モニタリング装置200が接続され、枝管R1横の枝管R2に、水冷式熱交換器10を有した蒸気質モニタリング装置100が接続されている。
【0045】
水冷式熱交換器10を有した蒸気質モニタリング装置100では、スタート時(00:00)から、02:09の時間が経過するまで、凝縮水W2に対して、9.2〜8.0mg/Lの溶存酸素濃度を計測している。一方、空冷式熱交換器3を有するが、これより下流側に背圧弁5を有しない蒸気質モニタリング装置200では、スタート時(00:00)から、01:12の時間が経過するまで、凝縮水W2に対して、5.0〜6.7mg/Lの溶存酸素濃度を計測しており、その値も上下に不安定に変動している。したがって、蒸気質モニタリング装置200では、蒸気S中に比較的多量の酸素ガスを有す場合に、この酸素ガスが凝縮水W2中に充分に溶解しきれていないのではないかとも考えられる。
【0046】
そこで、01:12の時間が経過した段階で、蒸気ヘッダ101の圧力計102横の枝管R1に、蒸気質モニタリング装置200に換えて、空冷式熱交換器3の下流側に背圧弁5を有する蒸気質モニタリング装置1を接続した。この蒸気質モニタリング装置1では、背圧弁5を用いて、蒸気Sの凝縮が生じている空冷式熱交換器3側に0.175MPaの背圧をかけたところ、02:09の時間までに、その凝縮水W2に対して、8.3〜7.9mg/Lの安定した状態の溶存酸素濃度が計測された。この溶存酸素濃度は、水冷式熱交換器10を有した蒸気質モニタリング装置200による計測値とほぼ同一であり、このことによって、蒸気S中に比較的多量の酸素ガスが含まれる場合でも、空冷式熱交換器3側に背圧をかけた蒸気質モニタリング装置1による溶存酸素濃度の計測が適正になされていることが理解できる。
【0047】
また、この蒸気質モニタリング装置1では、背圧弁5を、水質計測器4内の、溶存酸素濃度測定用のフローセル40a出口直後の凝縮水流路43中に設置しているので、背圧弁5によって、空冷式熱交換器3から、溶存酸素濃度計測用のフローセル40a内までの凝縮水W2にも、背圧がかけられることとなる。すなわち、この蒸気質モニタリング装置1では、一般に、ガスの溶解量は圧力に比例するため、蒸気S中の酸素ガスを確実に凝縮水W2中に溶存させることができ、凝縮水W2中の溶存酸素濃度により、蒸気S中の酸素ガス濃度をより確実に知ることができる。
【0048】
なお、この蒸気質モニタリング装置1では、凝縮水冷却器2を使用して蒸気Sの冷却を行っているが、蒸気Sや凝縮水W2の冷却を空冷式熱交換器3のみで行ってもよい。
【0049】
また、この蒸気質モニタリング装置1では、背圧手段として、背圧弁5を設けているが、この背圧手段は、凝縮水W2の流れに抵抗を与えるものであればどのようなもの(例えば、オリフィス)であってもよい。
【0050】
さらに、この蒸気質モニタリング装置1では、背圧弁5を水質測定器4内に設置しているが、これを、水質計測器4の上流側、すなわち、溶存酸素濃度測定用のフローセル40aの入口直前の凝縮水ライン8中に設置してもよい。この場合は、背圧弁5によって、水質測定器4内のフローセル40aに背圧がかけられることがないので、溶存酸素濃度計40、すなわち、水質測定器4に耐圧性能を持たせる必要はない。
【符号の説明】
【0051】
1 蒸気質モニタリング装置
2 凝縮水冷却器
3 空冷式熱交換器
4 水質計測器
5 背圧弁(背圧手段)
8 凝縮水ライン(凝縮水流路、フローセルへの入口側流路)
40a フローセル
43 凝縮水流路(フローセル出口側流路)
S 蒸気
W 凝縮水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボイラで発生した蒸気を冷却して凝縮水にし、この凝縮水を所定温度まで冷却して、その水質を水質計測器により計測することにより、前記蒸気の質をモニタリングするとともに、前記蒸気と凝縮水のうち、少なくとも何れか一方を、大気中の空気で強制的に冷却する空冷式の熱交換器を備えた蒸気質モニタリング装置であって、
前記熱交換器下流側の前記凝縮水の流路中に、前記熱交換器側に背圧をかける背圧手段を設けていることを特徴とする蒸気質モニタリング装置。
【請求項2】
前記凝縮水の流路が、前記水質計測器中の溶存酸素濃度計測用のフローセルの、前記凝縮水の出口側流路であることを特徴とする請求項1記載の蒸気質モニタリング装置。
【請求項3】
前記凝縮水の流路が、前記水質計測器中の溶存酸素濃度計測用のフローセル直前の、このフローセルへの入口側流路であることを特徴とする請求項1記載の蒸気質モニタリング装置。
【請求項4】
前記水質計測器にて水質が計測された後の前記凝縮水で、前記ボイラからの蒸気を、前記熱交換器に先だって冷却する凝縮水冷却器が設けられていることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の蒸気質モニタリング装置。
【請求項5】
前記背圧手段が背圧弁であることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の蒸気質モニタリング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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