説明

蒸気配管系の液膜分離装置

【課題】絞り部後流側における配管減肉を防止することができる蒸気配管系の液膜分離装置を提供する。
【解決手段】上記課題の解決のために、蒸気配管の直線部に絞り部を備え、その後流側に蒸気配管の曲線部が存在する蒸気配管系の液膜分離装置において、絞り部の蒸気流入側の蒸気配管に設けられた溝と、溝を流入口とした蒸気配管壁面外側に設けられるスチームトラップとを含む排出用配管を備え、蒸気配管の内壁面を流れる液膜を蒸気配管から排出用配管に排出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸気配管の直線部に絞り部を備え、その後流側に曲線部が存在する蒸気配管系の液膜分離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般の蒸気配管は、良質な蒸気を安定して円滑に蒸気使用設備まで供給することを目的とするため、配管中に発生するドレンが滞留しないように、迅速かつ確実にドレンを排除する設備を設置している。
【0003】
ドレンを排除するには、蒸気配管にドレン抜きのスチームトラップを設置している。蒸気配管が直線部にて、適切な間隔でスチームトラップを設置する。また、重力の影響で蒸気の流れに逆らう立ち上がり部や、自重によるたわみが生じる配管の低い箇所などにもスチームトラップを設置している。このようにして集積されたドレンは、一般には蒸気配管の外に放出されている。
【0004】
なお、原子力発電プラントの場合にも、一般の蒸気配管と同様にドレンを放出されるが、ドレンが放射性物質を含有しているので、蒸気配管の外に放出したドレンを復水器に送水し回収している。復水器にドレンを回収する蒸気配管の系統としては、低圧タービン入り口よりも下流側の蒸気配管系統、主給水ポンプ駆動用タービンから復水器への戻り配管系統などがある。
【0005】
蒸気配管の中には、直線部に絞り部(オリフィス等)を備え、その後流側に曲線部が存在する蒸気配管系がある。例えば、特許文献1の図32には、直線部にオリフィス710と液滴トラップ713を備え、その後流側に立ち上がり部(曲線部)を有する蒸気配管系が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−229583号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来のドレンを除去する機構では、液膜がドレン抜きに流入せずに蒸気流により下流に流される場合がある。この場合に例えば、オリフィス(絞り部)が存在しない配管であれば、液膜は配管壁を伝わって流れるために下流に流された液膜により下流側の設備が何らかの影響を受けることはない。
【0008】
これに対し、オリフィスが存在する配管の場合、オリフィス部で液膜が、蒸気流れに引きちぎられ液滴となって飛散する可能性がある。この液滴は、オリフィス部の絞り部は蒸気流速が速いために、高速の液滴となっている。このため、オリフィスの下流にエルボのような曲がり管が存在すると、高速の液滴の衝突により曲がり管の壁面が減肉する可能性がある。よって、液滴による配管減肉を防止する必要がある。
【0009】
本発明は、かかる技術的な課題を解決するためになされたもので、絞り部後流側における配管減肉を防止することができる蒸気配管系の液膜分離装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明においては、上記課題の解決のために、蒸気配管の直線部に絞り部を備え、その後流側に蒸気配管の曲線部が存在する蒸気配管系の液膜分離装置において、絞り部の蒸気流入側の蒸気配管に設けられた溝と、溝を流入口とした蒸気配管壁面外側に設けられるスチームトラップとを含む排出用配管を備え、蒸気配管の内壁面を流れる液膜を蒸気配管から排出用配管に排出する。
【0011】
また、溝は、絞り部を構成する蒸気配管径方向の壁面に設けられる。
【0012】
また、蒸気配管は、蒸気発生器に接続された配管であり、その曲線部下流側に蒸気を復水に戻すための復水器が接続されている。
【0013】
また、排出用配管の他方が、復水器に接続されている。
【0014】
本発明においては、上記課題の解決のために、蒸気発生器で発生した蒸気が、蒸気を復水に戻すための復水器に至るまでの蒸気配管であって、その一部の直線部に絞り部を備え、その後流側に蒸気配管の曲線部が存在する蒸気配管系の液膜分離装置において、絞り部の蒸気流入側の蒸気配管に設けられた溝と、溝を流入口とした蒸気配管壁面外側に設けられるスチームトラップとを含む排出用配管を備え、蒸気配管の内壁面を流れる液膜を蒸気配管から排出用配管に排出する。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る液膜分離装置によれば、オリフィス部の壁面で蒸気流れにより液膜が引きちぎられ、液膜の飛散することにより発生する液滴を低減することが可能であり、液滴による配管減肉を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の配管内オリフィス形状と配管系統を示す図。
【図2】原子力発電システム系統を示す図。
【図3】従来の配管内オリフィス形状と配管系統を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の実施例について説明する。
【実施例】
【0018】
本発明が適用される一例として原子力発電プラントは、図2に示すように構成されている。
【0019】
原子力発電プラントでは、原子炉容器2で発生した蒸気を、主蒸気系配管3を介して高圧タービン4及び低圧タービン6に送り、発電機7を駆動して電気出力を得る。
【0020】
また、低圧タービン6で仕事を終えた蒸気は、復水器8にて凝縮されて水に戻され、給復水系配管10上に設けられた復水ポンプ9、主給水ポンプ11及び給水加熱器12を介して、原子炉容器2に給水されている。
【0021】
また、高圧タービン4と低圧タービン6の間にある湿分分離器5下流から蒸気を抽気し、抽気蒸気を主給水ポンプ駆動用タービン13に導いて主給水ポンプ11を駆動し、その排気蒸気を復水器8へ送る抽気系配管14を備えている。なお、主給水ポンプ駆動用タービン13の軸封部でも、シール部からケーシング外へ漏洩を防ぐために、蒸気を復水器8に送り水に戻すための軸封系配管30が設けられている。
【0022】
係る原子力発電プラントでは、原子炉容器2内の炉心1に核分裂性物質を収納している。このため原子炉容器2に流入し、流出する水や蒸気を搬送する為の各種配管からの流体の外部流出を阻止する構成としている。例えば、主蒸気系配管3、抽気系配管14、軸封系配管30内の蒸気は、全て復水器8に回収される。また給復水系配管10も含めた全ての配管は、原子炉容器2と復水器8の間で循環する閉ループ系とされている。
【0023】
係る図2において、一点差線で示す配管系統が蒸気あるいは抽気の配管系統であり、この部分に本発明で対策すべき絞り部を有する直線部と、その後流側の曲線部が存在する。具体的には、低圧タービン6の入口から復水器8に至るまでの下流側主蒸気系配管3、および低圧タービン6の入口から主給水ポンプ駆動用タービン13を経由して復水器8に至る抽気系配管14、軸封系配管30内に、絞り部を有する直線部と、その後流側の曲線部が存在する。
【0024】
これら配管の、絞り部を有する直線部と、その後流側の曲線部において、液滴衝撃エロージョンによる配管減肉が発生する可能性がある。図3に、典型的な絞り部を有する直線部と、その後流側の曲線部の構成を示す。この例に記載されるように、主蒸気系配管3あるいは抽気系配管14内には、流速制限のために設置された直線部上のオリフィス15(絞り部)と、オリフィス15下流に曲がり管16が存在する。係る配管系統では、液滴エロージョンにより、主に曲がり管壁面で減肉が発生する可能性がある。
【0025】
液滴エロージョンによる曲がり管壁面での減肉発生メカニズムについて説明する。配管3,14内にオリフィス15のような絞り部が存在すると、絞り部が流路断面積が小さいために、蒸気主流19の流速が増加することによって、配管内の平均流速に比べ、オリフィス内の平均流速は格段に大きくなる。
【0026】
この場合に、オリフィス内流れ方向に対して平行な壁面に液膜が存在すると、液膜18はオリフィス壁面を伝わって下流に流され、オリフィス壁面の後端部分で引きちぎられ、液滴17となって飛散する。オリフィスの下流に曲がり管16があると、液滴が衝突し、曲がり管16が減肉する可能性がある。
以上のことから本発明では図1に示すように、オリフィス15の直前に溝20を設ける。
【0027】
図1の構成によると、流れ方向に対し垂直なオリフィス壁面でせきとめられた流れとオリフィスの上流流れの圧力差は、オリフィス壁面がない場合と比較し大きくなる。よって、オリフィスの上流側における流れ方向に対し、垂直な壁面に設けられた溝を設けることにより、この圧力差で配管壁面上の液膜が前記溝に容易に流入することができ、オリフィス上流の配管壁面に存在する液膜を低減し、オリフィスの壁面から蒸気流れによって液膜が引きちぎられることによって発生する液滴を低減できる。
【0028】
溝20を設置した上で本発明においては、オリフィス15の上流側と復水器8の間にバイパス配管23を設置する。バイパス配管23は、オリフィス15の上流側における流れ方向(蒸気主流19の方向)に対し垂直な壁面に設けられた溝20、圧力差により流れ出た液膜18を貯留するスチームトラップ22を含む。
【0029】
スチームトラップ22には、蒸気24と液膜18が貯水されたドレン25が一時的に滞留するドレンポケット21を設ける。ドレンポケット21の下流にスチームトラップ22の本機能を設置し、ドレン25と蒸気24を分離して、ドレン25を復水器8に送る。
【0030】
万一、スチームトラップ22が作動しない場合には、安全弁26をスチームトラップ22とは並列に設置し、ドレン25を復水器8まで送水するのに支障をきたさないようにする。
【0031】
以上本発明を原子力発電プラントの電動機駆動ポンプの場合において説明したが、タービン駆動ポンプを用いない炉の場合にも適用できる。また原子力発電プラントの蒸気、抽気系配管に適用することについて説明したが、同様のことは火力発電プラントの蒸気、抽気系配管に適用してもよく、液滴エロージョンによる曲がり管壁面での減肉発生を抑止することができる。
【0032】
なお、火力発電プラントの場合には、水や蒸気は核分裂性物質を含まないので、回収したドレンを復水器8に戻さないという選択肢もあり得る。この場合に、バイパス配管23は、排出用配管として設置されればよい。バイパス用配管も、広義の意味では(配管3,14内の液膜から捉えると)排出用配管であるといえる。
【0033】
また、火力発電プラントの場合には、原子炉容器2の代わりにボイラと復水器の間の主蒸気配管などに適用することができる。原子炉容器もボイラも、蒸気発生器である。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明によれば、蒸気配管の損傷を抑止することができるので、火力、原子力発電プラントに広く適用することができる。
【符号の説明】
【0035】
1:炉心
2:原子炉容器
3:主蒸気系配管
4:高圧タービン
5:湿分分離器
6:低圧タービン
7:発電機
8:復水器
9:復水ポンプ
10:給復水系配管
11:給水ポンプ
12:給水加熱器
13:駆動用タービン
14:抽出系配管
15:オリフィス
16:曲がり管
17:液滴
18:液膜
19:蒸気主流
20:流れ方向に対し垂直なオリフィス壁面に設けられた溝
21:ドレンポケット
22:スチームトラップ
23:バイパス配管
24:蒸気
25:ドレン
26:安全弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気配管の直線部に絞り部を備え、その後流側に蒸気配管の曲線部が存在する蒸気配管系の液膜分離装置において、
前記絞り部の蒸気流入側の蒸気配管に設けられた溝と、該溝を流入口とした前記蒸気配管壁面外側に設けられるスチームトラップとを含む排出用配管を備え、前記蒸気配管の内壁面を流れる液膜を前記蒸気配管から前記排出用配管に排出することを特徴とする蒸気配管系の液膜分離装置。
【請求項2】
請求項1記載の蒸気配管系の液膜分離装置において、
前記溝は、前記絞り部を構成する蒸気配管径方向の壁面に設けられたことを特徴とする蒸気配管系の液膜分離装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載の蒸気配管系の液膜分離装置において、
前記蒸気配管は、蒸気発生器に接続された配管であり、その曲線部下流側に蒸気を復水に戻すための復水器が接続されていることを特徴とする蒸気配管系の液膜分離装置。
【請求項4】
請求項3記載の蒸気配管系の液膜分離装置において、
前記排出用配管の他方が、前記復水器に接続されていることを特徴とする蒸気配管系の液膜分離装置。
【請求項5】
蒸気発生器で発生した蒸気が、蒸気を復水に戻すための復水器に至るまでの蒸気配管であって、その一部の直線部に絞り部を備え、その後流側に蒸気配管の曲線部が存在する蒸気配管系の液膜分離装置において、
前記絞り部の蒸気流入側の蒸気配管に設けられた溝と、該溝を流入口とした前記蒸気配管壁面外側に設けられるスチームトラップとを含む排出用配管を備え、前記蒸気配管の内壁面を流れる液膜を前記蒸気配管から前記排出用配管に排出することを特徴とする蒸気配管系の液膜分離装置。
【請求項6】
請求項5記載の蒸気配管系の液膜分離装置において、
前記溝は、前記絞り部を構成する蒸気配管径方向の壁面に設けられたことを特徴とする蒸気配管系の液膜分離装置。
【請求項7】
請求項5または請求項6記載の蒸気配管系の液膜分離装置において、
前記排出用配管の他方が、前記復水器に接続されていることを特徴とする蒸気配管系の液膜分離装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−2291(P2013−2291A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−131055(P2011−131055)
【出願日】平成23年6月13日(2011.6.13)
【出願人】(507250427)日立GEニュークリア・エナジー株式会社 (858)