説明

蓄熱ボードおよびその製造方法

【課題】耐久性、保温性、施工性の良好な蓄熱ボードとその製造方法を提供する。
【解決手段】熱可塑性樹脂製第1板材102と、該熱可塑性樹脂製第1板材と対向する熱可塑性樹脂製第2板材とを有し、それぞれの周縁部同士を接着することにより、内部に密閉中空部が構成され、該熱可塑性樹脂製第1板材は、内表面側で突出するように複数の凹陥部110を外表面に有し、該複数の凹陥部それぞれは、先端に突き合わせ平面部を有し、該突き合わせ平面部が該熱可塑性樹脂製第2板材に突き合わせ溶着することにより、両板材間を延びる環状リブが形成され、該密閉中空部内に蓄熱剤が充填され、さらに面状発熱体を有し、該面状発熱体は、前記熱可塑性樹脂製第2板材の外表面側から前記熱可塑性樹脂製第2板材内に埋め込まれる形態で、前記周囲の熱可塑性樹脂を通じて熱可塑性樹脂製第2板材に圧着される、ことを特徴とする蓄熱ボード10。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄熱ボードおよびその製造方法に関し、より詳細には、耐久性および保温性に優れ、かつ施工性の良好な蓄熱ボードおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、樹脂製蓄熱ボードが、たとえば建築構造物等に埋め込んで、暖房パネルとして用いられている。
特許文献1は、その例として床暖房設備を開示する。
この床暖房設備は、内部に蓄熱剤を充填した蓄熱用容器を有し、この蓄熱用容器の外表面には、溝部が設けられ、この溝部に熱媒体流通管を配設し、その上にフローリング等の床仕上材を敷設している。
このような構成によれば、熱媒体流通管内を流通する熱媒体の熱が床仕上材に直接伝達されるとともに、下方に逃げる熱は蓄熱剤により蓄熱されるようにされている点において、保温性に優れるが、床暖房設備の施工性に劣る。
より詳細には、蓄熱用容器の外表面には、溝部を設けたうえで、この溝部に熱媒体流通管を配設する必要があり、現場での効率な施工が困難である。
それに対して、特許文献2は、このような施工性を改善した暖房材を開示する。
この暖房材は、内部に中空部を形成するように対向する樹脂パネルを有し、一方の樹脂パネルには、内部に突出する凸部を設け、中空部に配置された面状発熱体を凸部によって他方の樹脂パネルの内壁面に挟み固定し、中空部には、蓄熱剤を充填するようにしている。
このような構成によれば、内部に突出成形される凸部が面状発熱体に圧接することにより、面状発熱体を樹脂パネルの内壁とそれに対向する凸部とにより強固に固定することが可能であるので、組立加工性が高まる。
しかしながら、このような構成では、両樹脂パネルにより、面状発熱体が挟み固定されることから、両樹脂パネル同士の固定が不十分であり、暖房材としての耐久性に問題を生じるとともに、保温性が不十分である。
より詳細には、一方の樹脂パネルに形成される凸部の先端部は、他方の樹脂パネルの内面に溶着されず、面状発熱体を介して両樹脂パネルが連結されるだけで、両樹脂パネルは、その周縁部同士でのみ連結されるに過ぎないことから、特に圧縮荷重が常時負荷される床暖房材に利用する場合には、その耐久性が損なわれる。
【0003】
その一方、面状発熱体は両樹脂パネルにより形成される密閉中空部内に配置されることになるので、暖房材の上に床仕上材を敷設しても、特許文献1のように、面状発熱体から発熱する熱は、床仕上材に直接伝達されず、一旦蓄熱剤に伝達され、その後に床仕上材に伝達されることになるため、効率的な保温を達成することが困難である。
【特許文献1】特開2003−194356
【特許文献2】特開平8−273809
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
以上の技術的問題点に鑑み、本発明の目的は、耐久性および保温性に優れ、かつ施工性の良好な蓄熱ボードおよびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を達成するために、本発明の蓄熱ボードは、
熱可塑性樹脂製第1板材と、該熱可塑性樹脂製第1板材と対向する熱可塑性樹脂製第2板材とを有し、
該熱可塑性樹脂製第1板材および該熱可塑性樹脂製第2板材それぞれの周縁部同士を接着することにより、側周面が形成されるとともに、内部に密閉中空部が構成され、
該熱可塑性樹脂製第1板材は、内表面側で突出するように複数の凹陥部を外表面に有し、
該複数の凹陥部それぞれは、先端に突き合わせ平面部を有し、該突き合わせ平面部が該熱可塑性樹脂製第2板材に突き合わせ溶着することにより、両板材間を延びる環状リブが形成され、
該密閉中空部内に蓄熱剤が充填され、
さらに、導電体を熱可塑性樹脂で被覆した線状体からなるメッシュ状の面状発熱体を有し、
該面状発熱体は、前記熱可塑性樹脂製第2板材の外表面側から前記熱可塑性樹脂製第2板材内に埋め込まれる形態で熱可塑性樹脂製第2板材に固着される、構成としている。
【0006】
以上の構成を有する蓄熱ボードによれば、面状発熱体により発熱した熱を蓄熱剤により蓄熱する際、メッシュ状の面状発熱体が、熱可塑性樹脂製第2板材内に埋め込まれる形態で、熱可塑性樹脂製第2板材に固着され、面状発熱体と熱可塑性樹脂製第2板材とは密着されるので、両者の間で伝熱面積を十分に確保しつつ、特に熱可塑性樹脂製第2板材の外表面側を上に向けて、その上に床仕上材を配置する場合には、面状発熱体により発熱した熱を床仕上材に直接伝達することが可能であり、保温性に優れ、その一方、熱可塑性樹脂製第1板材と熱可塑性樹脂製第2板材とは、複数の凹陥部を介して直接突き合わせ溶着され、両板材間を延びる環状リブにより特に圧縮剛性を確保することにより、耐久性を確保することも可能である。
また、線状体から構成される面状発熱体が熱可塑性樹脂製第2板材内に埋め込まれているため、蓄熱ボードの使用に際して荷重が加わった場合であっても線状体が切れて面状発熱体の断線による不具合を防止することができる。
さらに、従来のように、板材に溝部を設けたうえで、発熱体としての加熱用の温水パイプやケーブルヒーターをこのような溝部に敷設する必要なしに、熱可塑性樹脂製第2板材内に埋め込まれる形態で熱可塑性樹脂製第2板材に固着するので蓄熱ボードの施工性に優れる。

また、前記面状発熱体の導電体を被覆する熱可塑性樹脂は、前記熱可塑性樹脂製第2板材と同じ種類の樹脂であり、前記面状発熱体は、該熱可塑性樹脂を介して前記熱可塑性樹脂製第2板材に溶着されるのがよい。
さらに、前記複数の凹陥部はそれぞれ、所定の放熱性を確保するように所定面積を有する側周面と、所定の蓄熱量を確保するように所定内容積を有するのがよい。
さらにまた、前記複数の凹陥部はそれぞれ、正六角形の開口を外表面に有し、ハニカム状に配置されるのでもよい。
【0007】
上記課題を達成するために、本発明の蓄熱ボードの製造方法は、
蓄熱ボードの製造方法であって、
キャビティのまわりに環状に形成され、対向する金型に向かって突出するピンチオフ部がそれぞれ設けられた一対の分割形式の金型の一方のキャビティに対して、導電体を熱可塑性樹脂で被覆した線状体からなる面状発熱体を保持する段階と、
一対の分割形式の金型のキャビティのまわりにはみ出す形態で、溶融状態の熱可塑性樹脂を一対の分割形式の金型間に垂下させ位置決めする段階と、
溶融状態の熱可塑性樹脂の各々を一対の分割形式の対応する金型のキャビティに押し当てて、一方のキャビティに保持された面状発熱体を一方の熱可塑性樹脂製シート内に埋め込む態様で圧着するとともに、他方の熱可塑性樹脂製シートの他方のキャビティに対向する表面に凹陥部を賦形しつつ、一対の分割形式の金型それぞれのピンチオフ部同士を当接させるように、一対の分割形式の金型を型締して、2条の熱可塑性樹脂製シートを溶着する段階と、を有し、
それにより、ピンチオフ部に対応する周縁部が溶着された密封中空状の板状体を形成し、
さらに、前記密閉中空部内に注入口を介して蓄熱剤を充填する段階と、
前記注入口を閉鎖する段階とを有する、構成としている。

【0008】
以上の構成を有する蓄熱ボードの製造方法によれば、通常金属またはカーボンブラック等の導電体を熱可塑性樹脂にて被覆した線状体からなる面状発熱体を用いることにより、溶融状態の熱可塑性樹脂から蓄熱ボードを製造する際、熱可塑性樹脂を面状発熱体を保持した対応するキャビティに対して押し当てることにより、面状発熱体を周囲の熱可塑性樹脂を介して熱可塑性樹脂に溶着することが可能であり、従来のように、板材に溝部を設けたうえで、発熱体としての加熱用の温水パイプやケーブルヒーターをこのような溝部に敷設する必要なしに、熱可塑性樹脂製第2板材内に埋め込まれる形態で、メッシュ状の面状発熱体を熱可塑性樹脂製第2板材に圧着することが可能となるから、蓄熱ボードの施工性に優れる。

【0009】
また、前記賦形段階は、一対の分割形式の金型の前記他方のキャビティに複数設けられた突起体であって、対向する分割形式の金型に向かって先細の形状を有する複数の突起体に対して、対応する熱可塑性樹脂製シートを押し当てることにより、熱可塑性樹脂製シートの表面に複数の突起体に対応する複数の凹陥部を賦形するのがよい。
さらに、前記環状リブの形成段階は、一方の熱可塑性樹脂製シートの表面に形成された前記複数の凹陥部の先端部を他方の熱可塑性樹脂製シートに突き合わせ溶着させる段階を有するのがよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
暖房する対象が床の場合を例として、本発明に係る蓄熱ボード10の実施形態を、図面を参照しながら、以下に詳細に説明する。
蓄熱ボード10は、図1ないし図3に示すように、全体として矩形形状の薄板状であり、樹脂製第1板材102と、樹脂製第1板材102と対向する樹脂製第2板材104とを有し、樹脂製第1板材102および樹脂製第2板材104それぞれの周縁部同士を溶着することにより、側周面106が形成されて、内部に中空部108が構成される。後に説明する蓄熱剤を中空部108内に充填するのに、側周面106に充填剤の注入口109が設けられる。
より詳細には、後に説明するように、蓄熱ボード10をブロー成形により成形する際、樹脂製第1板材102と対向する樹脂製第2板材104それぞれの周縁部同士を溶着して、側周面106を形成した後、側周面106に開口を設けて、中空部108内に蓄熱剤を充填後に、注入口109を溶着して封止するようにしている。
なお、注入口109を側周面106でなく、樹脂製第1板材102および樹脂製第2板材104いずれかの表面に設けてもよく、充填する蓄熱剤の量、内部圧力に応じて、封止した注入口109からの蓄熱剤の漏れ出しの恐れがある場合には、キャップ式を採用すればよい。
蓄熱剤は、ポリエチレングリコール等のパラフィン系、酢酸ナトリウム水和物、硫酸ナトリウム水和物等の無機系のものを用いることができる。
樹脂製第1板材102および樹脂製第2板材104を構成する材料は、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ABS、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、等の合成樹脂を用いることができる。
板材の強度あるいは剛性を向上するために、タルク、炭酸カルシウムなどの無機充填剤を添加してもよく、熱線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、難燃剤などの添加剤を添加してもよい。
【0011】
樹脂製第1板材102は、内表面側で突出するように内方に向かって先細の複数の凹陥部110を外表面103に有する。凹陥部110は、有底であり、内表面側に向かって先細の角錐台形状で、開口105は、正六角形である。これにより、蓄熱ボード10を後に説明する、溶融樹脂材料を用いてブロー成形により一体成形する場合、凹陥部110に対応する突起部を金型のキャビティに設ける場合、ブロー圧によりキャビティに対して押し付けられて賦形された溶融樹脂材料がキャビティから抜きやすいようにしている。この観点から、凹陥部110の内周面113と板材との交差角度は、75ないし85°、特に約80°が好適である。
【0012】
図3および図4に示すように、複数の凹陥部110それぞれは、最先細部に突き合わせ平面部112を有し、凹陥部110の突き合わせ平面部112を樹脂製第2板材104の内面に対して突き合わせ溶着することにより、両板材102、104間を延びる環状リブ50が形成される。この環状リブ50により、実質的に蓄熱ボード10の厚みが構成され、蓄熱ボード10の厚み方向に荷重が負荷される場合に、圧縮強度を確保するようにしている。複数の凹陥部110の数、環状リブ50の高さ等は、このような観点から定めればよい。
【0013】
複数の凹陥部110はそれぞれ、樹脂製第1板材102の外表面103における開口105が正六角形の角錐台であり、外表面上で開口105がハニカム状に配置されている。これにより、外表面103に最も密に複数の凹陥部110を配置することが可能である。複数の凹陥部110それぞれの開口105の大きさ、凹陥部110の深さおよび隣り合う凹陥部110同士の間隔について、開口105の大きさが大きく、凹陥部110の深さが深く、隣合う凹陥部110同士の間隔が小さいほど、蓄熱ボード10全体としての空隙率を向上することが可能であり、軽量化に資する反面、密閉中空部108の容積が低減することから、蓄熱剤の注入量が低減し、蓄熱ボード10の蓄熱特性に影響を与えるとともに、凹陥部110の内周面113からの放熱特性にも影響が及ぶ。
【0014】
より詳細には、充填された蓄熱剤により所望の蓄熱特性を得るのに、環状リブ50の数を増やして圧縮剛性を確保するとすれば、その分、蓄熱ボード10の密閉中空部108の容積が低減することから、蓄熱剤の注入圧力を高めて密閉中空部108に注入せざるを得ず、それにより注入口109からの蓄熱剤の漏れ出しの危険性が高まる。
【0015】
つまり、同じ蓄熱特性を得る前提で、蓄熱ボード10の圧縮剛性と、蓄熱剤の漏れ出しの危険性は、トレードオフの関係にあり、蓄熱ボード10の用途に応じて、たとえば蓄熱ボード10を床暖房パネルに用いる場合には、圧縮剛性が必要とされることから、蓄熱剤の漏れ出しの危険性が高まり、そのため、注入口109は、キャップ方式とするのがよく、それに対して、たとえば壁あるいは天井暖房パネルに用いる場合には、圧縮剛性がさほど必要とされないことから、蓄熱剤の漏れ出しの危険性は小さく、そのため、注入口109はキャップ方式とすることなく、切り抜き開口を溶着により封止するだけでもよい。
【0016】
このような観点から、外表面103における凹陥部110の対角線長さ(最大長径)は、5ないし30mm、特に5ないし15mm程度が好適である。外表面103におけるすべての凹陥部110の開口面積の合計は、樹脂製第1板材102の外表面103の面積の10ないし70%、特に20ないし45%程度が好適である。また、板材102、104の厚みは、たとえば、床暖房用蓄熱ボード10の場合であれば、3ないし20mm,特に5ないし10mm程度が好適である。
一方、図3および図4に示すように、樹脂製第2板材104は、樹脂製第1板材102と異なり、凹陥部110は設けられず、内部に面状発熱体300が埋め込まれている。
【0017】
より詳細には、図5および図6に示すように、面状発熱体300は、たとえば、樹脂製第2板材104の全体に亘って、電気抵抗の高い導電体であるニクロム線等の周囲を樹脂302で被覆している。特に、樹脂製第2板材104の材質と同じ種類の熱可塑性樹脂とすることにより、後に説明するように、溶融状態の熱可塑性樹脂を成形して蓄熱ボード10を製造する際、樹脂製第2板材104に容易に溶着するようにしている。尚、本発明において被覆とは、電線状の導電体をコートするものだけでなく、粉状の導電体を熱可塑性樹脂中に分散配置させた状態を含むものである。
【0018】
面状発熱体300は、後に説明するように、溶融状態の熱可塑性樹脂を面状発熱体300に対して押し当てることにより、樹脂製第2板材104の外表面側から内部に埋め込まれる形態で、樹脂製第2板材104に固着されており、面状発熱体300は導電体を被覆する熱可塑性樹脂302を介して樹脂製第2板材104に密着しており、面状発熱体300と樹脂製第2板材104との間の効率的な熱伝達を可能にしている。ここで、面状発熱体300は導電体を熱可塑性樹脂で被覆した線状体をメッシュ状とした形態であり、線状体の表面積のうち1/3以上、好ましくは1/2以上の部分が樹脂製第2板材104の外表面側から内部に埋没した状態で固着される。
図2に示すように、蓄熱ボード10は、さらに、面状発熱体300の運転状態を制御する制御部304と、外部電源306および面状発熱体300に電気的に接続されるとともに、制御部304により制御され、電源をオンオフする電源装置308と、蓄熱剤に蓄熱されている熱量を検出する温度センサー310とを有する。
【0019】
制御部304は、蓄熱ボード10による暖房運転の開始が指令されると、蓄熱ボード10により暖房対象の床を暖房し、蓄熱ボード10による暖房運転の停止が指令されると、蓄熱ボード10による暖房を停止するようにしている。この場合、制御部304は、暖房運転中には、温度センサー310の検出情報に基づいて、蓄熱ボード10における蓄熱量が設定蓄熱量になるように、電源装置308のオンオフ状態を制御する蓄熱制御処理を実行するようにしている。これにより、面状発熱体300を無駄に運転させることを防止しながら、暖房対象の床を暖房することが可能となるので、ランニングコストの低下を達成することが可能である。
なお、このような制御は、蓄熱ボード10による暖房運転の開始および停止などを指定するリモコン操作部を設けることにより行ってもよい。
次に、蓄熱ボード10の成形装置について、以下に説明する。
図7に示すように、蓄熱ボード10の成形装置60は、溶融樹脂の押出装置62と、押出装置62の下方に配置された、金型73の型締装置64とを有し、押出装置62から押出された溶融状態の熱可塑性樹脂を型締装置64に送り、型締装置64により溶融状態の熱可塑性樹脂を成形するようにしている。
【0020】
押出装置62は、従来既知のTダイ71であり、その詳しい説明は省略するが、細長矩形開口の押出スリットを通じて、溶融状態のシート状熱可塑性樹脂Pが押し出され、型締装置64の分割金型73の間に垂下される。この押出装置62は、樹脂製第1板材102および樹脂製第2板材104それぞれに対して設けられ、所定間隔を隔てて2条のシート状熱可塑性樹脂Pが垂下されるようにしている。
【0021】
押出スリットは、鉛直下向きに配置され、押出スリットから押し出されたシート状熱可塑性樹脂Pは、そのまま押出スリットから垂下する形態で、鉛直下向きに送られるようにしている。押出スリットは、その間隔を可変とすることにより、シート状熱可塑性樹脂Pの厚みを変更することが可能である。これにより、シート状熱可塑性樹脂Pが上下方向(押出方向)に一様な厚みを有する状態で、分割金型73の間に配置される。
型締装置64は、一対の分割形式の金型73と、金型73駆動装置とを有する。
【0022】
2つの分割形式の金型73は、キャビティ74を対向させた状態で配置され、それぞれキャビティ74が略鉛直方向に沿うように配置される。樹脂製第1板材102を成形するキャビティ74表面には、樹脂製第1板材102に設ける複数の凹陥部110に応じて複数の突起体が設けられる。より詳細には、金型73のキャビティ74の所定位置に、他方の金型73に向かって突出し、凹陥部の形状に合致する外形を備えた突起体が設けられる。一方、樹脂製第2板材104を成形するキャビティ74表面には、樹脂製第2板材104の内部に埋め込む形態で溶着させる面状発熱体300を保持するようにしている。
【0023】
2つの分割形式の金型73それぞれにおいて、キャビティ74のまわりには、ピンチオフ部76が形成され、このピンチオフ部76は、キャビティ74のまわりに環状に形成され、対向する金型73に向かって突出する。これにより、2つの分割形式の金型73を型締する際、それぞれのピンチオフ部76の先端部が当接し、2条のシート状熱可塑性樹脂Pは、その周縁にパーティングラインが形成されるように溶着され、中空部を閉塞する外周壁が形成される。
【0024】
金型73駆動装置については、従来と同様のものであり、その説明は省略するが、2つの分割形式の金型73はそれぞれ、金型73駆動装置により駆動され、開位置において、2つの分割金型73の間に、2条のシート状熱可塑性樹脂Pが所定の間隔を隔てて配置可能なようにされ、一方閉位置において、2つの分割金型73のピンチオフ部76が当接し、環状のピンチオフ部76が互いに当接することにより、2つの分割金型73内に密閉空間が形成されるようにしている。
分割金型73には、金型73を型締したときに両金型73により形成される密閉空間内から吹き込み圧をかけることが可能なように、従来既知のブローピン(図示せず)が設置されている。

以上の構成を有する蓄熱ボード10の成形装置60を利用した蓄熱ボード10の製造方法について以下に説明する。
まず、樹脂製第2板材104を成形する一方の金型73のキャビティ74表面に、面状発熱体300をキャビティ74の表面に面接触する形態で保持する。
【0025】
次いで、各々の押出スリットから、貯留された熱可塑性樹脂を単位時間当たり所定押出量で間欠的に押し出すことにより、熱可塑性樹脂はスウェルし、溶融状態のシート状熱可塑性樹脂Pが下方に垂下するように所定の厚みにて所定押出速度で押し出され、分割金型73の間に2条のシート状熱可塑性樹脂Pを配置する。この場合、2条の熱可塑性樹脂製シートは
次いで、分割金型73を型締して、金型73内に密閉空間を形成する。
【0026】
次いで、ブローピンを介して型締された金型73内の密閉空間からブロー圧をかけることにより、それぞれのシート状熱可塑性樹脂Pを対応する金型73のキャビティ74に向かって押し付けることにより、シート状熱可塑性樹脂Pを賦形する。より詳細には、ピンチオフ部76の内周面113により周壁が賦形されるとともに、樹脂製第1板材102用のシート状熱可塑性樹脂Pのキャビティ74に対向する面には、キャビティ74の突起体の外形に応じた形状が賦形され、突き合わせ平面部が樹脂製第2板材104用のシート状熱可塑性樹脂Pの内面に突き合わせ溶着されて、凹陥部110、かくして環状リブ52が形成され、一方、樹脂製第2板材104用のシート状熱可塑性樹脂Pのキャビティ74に対向する面(外表面)には、キャビティ74に保持された面状発熱体300が押し当てられ、面状発熱体300はシート状熱可塑性樹脂Pの内部に埋め込まれ、周囲を被覆する熱可塑性樹脂を通じてシート状熱可塑性樹脂Pに密着形態で溶着する。
次いで、一対の分割金型73を型開きして、成形品を取り出し、ピンチオフ部76の外側のバリ部分Bを切断し、以上で成形が完了する。
次いで、蓄熱剤を注入口109から密閉中空部109内に流し込み、注入口109を熱融着等により封止し、温度センサー310、制御部304および電源装置308の電気接続を行って、蓄熱ボード10が完成する。
【0027】
以上のように、溶融状態の熱可塑性樹脂を間欠的に押し出すたびに、以上のような工程を繰り返すことにより、蓄熱ボード10を次々に成形することが可能であり、押出成形により間欠的に溶融状態のシート状熱可塑性樹脂Pとして押し出し、押し出されたシート状熱可塑性樹脂Pを金型73を用いて所定の形状に賦形することが可能である。
尚、蓄熱ボードの製造方法において2条の熱可塑性樹脂製シートを用いるものとして説明したが、2条の熱可塑性樹脂製シートに代えて円筒状のパリソンを用いて成形することが可能である。
【0028】
このような蓄熱ボード10を複数用いて、床暖房パネルとして利用する場合、環状リブ50を介して樹脂製第1板材102と樹脂製第2板材104とが強固に溶着されており、特に圧縮剛性が確保可能であることから、床暖房パネルとしての耐久性に優れ、また樹脂製第2板材1042の外表面107側を上側に向けて、樹脂製第2板材104の上に床仕上材を敷設することにより、面状発熱体300は、樹脂製第2板材104の外表面107側から樹脂製第2板材104の内部に埋め込まれていることから、面状発熱体300から発熱する熱は、樹脂製第2板材104の外表面107に接する床仕上材に直接伝達されることから、効率的に保温することが可能である。
【0029】
成形手順として、上述のように、分割金型73を型締することにより、分割金型73内に密閉空間を形成し、この密閉空間からブロー圧をかけることにより、樹脂材料を成形するだけでなく、成形前にシート状樹脂とする場合には、分割金型73を型締する前にキャビティ74と樹脂材料との間に密閉空間を形成し、キャビティ74側から樹脂材料を吸引することにより、樹脂材料を予備賦形し、さらに分割金型73を型締後、同様に密閉空間からブロー圧をかけることにより、樹脂材料を本賦形するのでもよい。
【0030】
この方法によれば、本賦形前に予備賦形することにより、複雑な形状の成形であっても良好な成形性を確保することができる。さらに、分割金型73を型締する際、キャビティ74側から樹脂材料を吸引しつつ密閉空間からブロー圧をかけることにより、樹脂材料を賦形するのでもよい。この方法によれば、吸引によりキャビティ74の凹部に溜まった空気を除去しつつブロー圧をかけることにより、同様に良好な成形性を確保することが可能である。
【0031】
以上の構成を有する蓄熱ボード10によれば、面状発熱体300により発熱した熱を蓄熱剤により蓄熱する際、周囲を熱可塑性樹脂で被覆した面状発熱体300が、熱可塑性樹脂製第2板材内に埋め込まれる形態で、周囲の熱可塑性樹脂を通じて熱可塑性樹脂製第2板材に固着され、面状発熱体300と熱可塑性樹脂製第2板材とは密着されるので、両者の間で伝熱面積を十分に確保しつつ、特に熱可塑性樹脂製第2板材の外表面側を上に向けて、その上に床仕上材を配置する場合には、面状発熱体300により発熱した熱を床仕上材に直接伝達することが可能であり、保温性に優れ、その一方、熱可塑性樹脂製第1板材と熱可塑性樹脂製第2板材とは、複数の凹陥部を介して直接突き合わせ溶着され、両板材間を延びる環状リブにより特に圧縮剛性を確保することにより、耐久性を確保することも可能である。
【0032】
さらに、従来のように、板材に溝部を設けたうえで、発熱体としての加熱用の温水パイプやケーブルヒーターをこのような溝部に敷設する必要なしに、熱可塑性樹脂製第2板材内に埋め込まれる形態で、面状発熱体300の導電体を被覆する熱可塑性樹脂を通じて熱可塑性樹脂製第2板材に固着するので蓄熱ボード10の施工性に優れる。
以上、本発明の実施形態を詳細に説明したが、本発明の範囲から逸脱しない範囲内において、当業者であれば、種々の修正あるいは変更が可能である。
たとえば、本実施形態においては、正六角形の角錐台状の複数の凹陥部110を板材の表面にハニカム状に配置する場合を説明したが、それに限定されることなく、たとえば円形開口の円錐台状の複数の凹陥部110を千鳥格子状に配置してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施形態に係る蓄熱ボード10のおもて面の平面図である。
【図2】本発明の実施形態に係る蓄熱ボード10の裏面の平面図である。
【図3】(a)図は、図1のシェルの部分拡大図、(b)は、(a)図のB−B線に沿う断面図、(c)図は、(a)図のC−C線に沿う断面図である。
【図4】本発明の実施形態に係る蓄熱ボード10のシェルの部分断面斜視図である。
【図5】本発明の実施形態に係る蓄熱ボード10の断面図である。
【図6】図5のA部の部分詳細図である。
【図7】本発明の実施形態に係る蓄熱ボード10の成形装置60の概略図である。
【符号の説明】
【0034】
P シート状熱可塑性樹脂P
10 蓄熱ボード
60 成形装置
62 押し出し装置
64 型締装置
71 Tダイ
73 金型
74 キャビティ
76 ピンチオフ部
102 樹脂製第1板材
103 外表面
104 樹脂製第2板材
105 開口
106 周側面
107 外表面
108 密閉中空部
109 注入口
110 凹陥部
112 平面部
113 内周面
200 窪み
202 底面
204 周側面
206 環状傾斜部
208 環状立ち上がり部
210 第2凹陥部
211 先端部
300 面状発熱体
304 制御部
306 外部電源
308 電源装置
310 温度センサー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂製第1板材と、該熱可塑性樹脂製第1板材と対向する熱可塑性樹脂製第2板材とを有し、
該熱可塑性樹脂製第1板材および該熱可塑性樹脂製第2板材それぞれの周縁部同士を接着することにより、側周面が形成されるとともに、内部に密閉中空部が構成され、
該熱可塑性樹脂製第1板材は、内表面側で突出するように複数の凹陥部を外表面に有し、
該複数の凹陥部それぞれは、先端に突き合わせ平面部を有し、該突き合わせ平面部が該熱可塑性樹脂製第2板材に突き合わせ溶着することにより、両板材間を延びる環状リブが形成され、
該密閉中空部内に蓄熱剤が充填され、
さらに、導電体を熱可塑性樹脂で被覆した線状体からなるメッシュ状の面状発熱体を有し、
該面状発熱体は、前記熱可塑性樹脂製第2板材の外表面側から前記熱可塑性樹脂製第2板材内に埋め込まれる形態で熱可塑性樹脂製第2板材に固着される、
ことを特徴とする蓄熱ボード。
【請求項2】
前記面状発熱体の導電体を被覆する熱可塑性樹脂は、前記熱可塑性樹脂製第2板材と同じ種類の樹脂であり、前記面状発熱体は、該熱可塑性樹脂を介して前記熱可塑性樹脂製第2板材に溶着される、請求項1に記載の蓄熱ボード。
【請求項3】
前記複数の凹陥部はそれぞれ、所定の放熱性を確保するように所定面積を有する側周面と、所定の蓄熱量を確保するように所定内容積を有する、請求項1に記載の蓄熱ボード。
【請求項4】
前記複数の凹陥部はそれぞれ、正六角形の開口を外表面に有し、ハニカム状に配置される、請求項1に記載の蓄熱ボード。
【請求項5】
蓄熱ボードの製造方法であって、
キャビティのまわりに環状に形成され、対向する金型に向かって突出するピンチオフ部がそれぞれ設けられた一対の分割形式の金型の一方のキャビティに対して、導電体を熱可塑性樹脂で被覆した線状体からなる面状発熱体を保持する段階と、
一対の分割形式の金型のキャビティのまわりにはみ出す形態で、溶融状態の熱可塑性樹脂を一対の分割形式の金型間に垂下させ位置決めする段階と、
溶融状態の熱可塑性樹脂の各々を一対の分割形式の対応する金型のキャビティに押し当てて、一方のキャビティに保持された面状発熱体を一方の熱可塑性樹脂製シート内に埋め込む態様で圧着するとともに、他方の熱可塑性樹脂製シートの他方のキャビティに対向する表面に凹陥部を賦形しつつ、一対の分割形式の金型それぞれのピンチオフ部同士を当接させるように、一対の分割形式の金型を型締する段階と、を有し、
それにより、ピンチオフ部に対応する周縁部が溶着された密封中空状の板状体を形成し、
さらに、前記密閉中空部内に注入口を介して蓄熱剤を充填する段階と、
前記注入口を閉鎖する段階とを有する、ことを特徴とする蓄熱ボードの製造方法。
【請求項6】
前記賦形段階は、一対の分割形式の金型の前記他方のキャビティに複数設けられた突起体であって、対向する分割形式の金型に向かって先細の形状を有する複数の突起体に対して、対応する熱可塑性樹脂を押し当てることにより、熱可塑性樹脂の表面に複数の突起体に対応する複数の凹陥部を賦形する、請求項5に記載の蓄熱ボードの製造方法。
【請求項7】
前記環状リブの形成段階は、一方の熱可塑性樹脂の表面に形成された前記複数の凹陥部の先端部を他方の熱可塑性樹脂に突き合わせ溶着させる段階を有する、請求項5に記載の蓄熱ボードの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−107826(P2012−107826A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−257703(P2010−257703)
【出願日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【出願人】(000104674)キョーラク株式会社 (292)
【Fターム(参考)】