説明

蓄熱槽

【課題】狭隘な敷地に設置する場合にも、コストを抑えながら、極力大容量化を図り得る蓄熱槽を提供する。
【解決手段】現場打ち鉄筋コンクリートの圧入ケーソン工法により施工された地下部蓄熱槽1と、それに隣接して施工され、上端が地下部蓄熱槽1の上部に連結されると共に他端が地盤Ga内の支持層Gbに定着されることにより地下部蓄熱槽1の浮力に対抗する抵抗力を発揮する永久型のグランドアンカー10と、底部が地盤内の支持層に位置する地下部蓄熱槽1を基礎にしてその上に載置されたプレストレストコンクリート製の地上部蓄熱槽とからなり、複合型として構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱エネルギーを蓄えるための蓄熱槽に関する。
【背景技術】
【0002】
地域熱供給システムや建物の空調システムなどに、蓄熱槽を使用することが多くなってきた。都市部の建物では、一般的に建物の地下階に蓄熱槽としての水槽を設けている例が多い(特許文献1参照)。
【0003】
ところで、蓄熱槽を後から増設する場合には、建物の地下階に設けることは難しいことが多く、その場合は、周辺の狭隘な敷地に設置する必要性が出てくる。
【0004】
狭隘な敷地に蓄熱槽を設ける場合に利用できる従来の例として、地上式杭基礎蓄熱槽や圧入ケーソンによる地下式円筒型蓄熱槽がある。圧入ケーソンによる地下構造物の構築については、特許文献2に参考例が示されている。
【0005】
図3(a)は地上式杭基礎蓄熱槽の例を示し、(b)は圧入ケーソンによる地下式円筒型蓄熱槽の例を示している。
【0006】
(a)に示すように、地上式の場合は、地盤Ga中に杭基礎21を施工し、その上に地上部蓄熱槽20を支持した構造としている。また、(b)に示すように、地下式の場合は、地盤Ga中にプレストレストコンクリートによる圧入ケーソンを沈設していき、支持層Gbに達するように地下部蓄熱槽22を構築した構造としている。この場合、従来では、地下部蓄熱槽22の側壁を厚くして自重増を図ることにより、水替え時に発生する浮力に対抗させている。
【特許文献1】特開平5−272785号公報
【特許文献2】特開2002−146812号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上述した従来の地上式蓄熱槽は、狭隘な敷地に設置する場合に直径や高さが制限されることから、高容量化を図ることが難しい。また、杭基礎を施工する必要があるので、容量の割に施工コストが嵩む問題がある。また、従来の地下式蓄熱槽は、側壁を厚く設定することで、地下水位による浮力に対抗させるようにしているが、側壁が厚くなる分だけ、容量の確保が難しくなるという問題がある。
【0008】
本発明は、上記事情を考慮し、狭隘な敷地に設置する場合にも、コストを抑えながら、極力大容量化を図り得るようにした蓄熱槽を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明の蓄熱槽は、圧入ケーソン工法により施工された地下部蓄熱槽と、それに隣接して施工され、上端が前記地下部蓄熱槽の上部に連結されると共に他端が地盤内の支持層に定着されることにより前記地下部蓄熱槽の浮力に対抗する抵抗力を発揮する永久型のグランドアンカーと、を備えることを特徴とする。
【0010】
請求項2の発明の蓄熱槽は、請求項1において、前記地下部蓄熱槽が、現場打ち鉄筋コンクリートの圧入ケーソンによって形成されていることを特徴とする。
【0011】
請求項3の発明の蓄熱槽は、請求項1または2において、前記地下部蓄熱槽の底部が地盤内の支持層に位置しており、前記グランドアンカーの下端が、前記地下部蓄熱槽の底部よりも深い地盤に定着されていることを特徴とする。
【0012】
請求項4の発明の蓄熱槽は、請求項3に記載の前記地下部蓄熱槽を基礎にして、その地下部蓄熱槽の上に地上部蓄熱槽が載置されることで、複合型として構成されていることを特徴とする。
【0013】
請求項5の発明の蓄熱槽は、請求項4において、前記地上部蓄熱槽が、プレストレストコンクリートより構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の発明によれば、地下部蓄熱槽に隣接して施工した永久型のグランドアンカーで、水替え時に発生する浮力に対抗するようにしているので、その分、地下部蓄熱槽の自重増を目的とした壁厚増大を抑制することができる。従って、壁厚増大の抑制により、敷地面積が限定され、外形寸法が制限されるような場合でも、大きな容量を容易に確保することができる。
【0015】
請求項2の発明によれば、現場打ち鉄筋コンクリートの圧入ケーソンによって地下部蓄熱槽を形成するので、プレストレストコンクリートで施工する場合に比べてコストの削減を図ることができる。
【0016】
請求項3の発明によれば、地下部蓄熱槽の底版を地盤内の支持層に位置させると共に、グランドアンカーの下端を地下部蓄熱槽の底版よりも深い地盤に定着させたので、高い支持強度を確保することができる。
【0017】
請求項4の発明によれば、高い支持力を持つ地下部蓄熱槽を基礎として、その上に地上部蓄熱槽を載置したので、基礎杭を使用せずに、コストを抑えながら地上部蓄熱槽を安定支持することができ、狭隘な敷地であっても、地下と地上を合わせた大容量の蓄熱槽を低コストで実現することができる。
【0018】
請求項5の発明によれば、地上部蓄熱槽をプレストレストコンクリート製としたので、地上部蓄熱槽の施工の簡略化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
図1は実施形態として示す複合型蓄熱槽の縦断面図、図2はその複合型蓄熱槽を設置する敷地のレイアウト図である。
【0020】
図1に示すように、この複合型蓄熱槽は、現場打ち鉄筋コンクリートの圧入ケーソン工法により地盤Ga中に施工された円筒形の地下部蓄熱槽1と、その地下部蓄熱槽1を基礎として、その上に載置・施工されたプレストレストコンクリート製の円筒状の地上部蓄熱槽3と、地下部蓄熱槽1に隣接して施工された永久型のグランドアンカー10と、から構成されており、例えば、図2に示すような狭隘な敷地に施工されている。図2において、100は全体敷地、101は建物、102は建物の周辺の狭隘な敷地、103は複合型蓄熱槽の施工場所である。
【0021】
図1に示すように、グランドアンカー10は、上端が地下部蓄熱槽1の上部に連結され、他端が地盤Ga内の支持層Gbに定着されることにより、地下部蓄熱槽1の浮力に対抗する抵抗力を発揮するように構成されている。地下部蓄熱槽1の底部は、地盤Ga内の支持層Gbに達しており、支持層Gbにより安定支持されている。また、グランドアンカー10の下端は、地下部蓄熱槽1の底部よりも深い地盤に定着されている。
【0022】
この複合型蓄熱槽を構築するには、まず、鉄筋コンクリート造の地下部蓄熱槽1を圧入ケーソン工法により施工する。即ち、地上で所定高さの円筒型枠を組んで、その中に鉄筋を配置し、コンクリートを打設する。コンクリート硬化後に型枠を外すことで、短円筒状の圧入ケーソンができあがる。
【0023】
これを、予め地中深くに埋設したグランドアンカー10に反力をとって、油圧ジャッキにより地中に圧入していき、ケーソン内部を水中掘削しながら、ケーソンを圧入・沈設していく。このケーソンの構築・圧入・掘削の工程を所定高さ毎に繰り返して、全ての円筒壁1Aを沈設したら、底部に水中コンクリート1Bを打設し、底版1Cを施工し、最後に頂版1Dを施工して、地下部蓄熱槽1を完成する。2は内部に充填された蓄熱水である。地下部蓄熱槽1が完成したら、その地下部蓄熱槽1を基礎として、その上に地上部蓄熱槽3を構築する。
【0024】
この複合型蓄熱槽では、地下部蓄熱槽1に隣接して施工した永久型のグランドアンカー10で、地下部蓄熱槽1の水替え時に発生する浮力に対抗するようにしているので、その分、地下部蓄熱槽1の自重増を目的とした壁厚増大を抑制することができる。例えば、側壁の厚さを1100mmから600mmに減らすことができる。そのため、壁厚の減少により、外径が同じ場合でも、大きな容量を容易に確保することができる。
【0025】
また、この複合型蓄熱槽では、現場打ち鉄筋コンクリートの圧入ケーソンによって地下部蓄熱槽1を形成しているので、プレストレストコンクリートで施工する場合に比べてコストの削減を図ることができる。
【0026】
また、地下部蓄熱槽1の底部を地盤Ga内の支持層Gbに到達させ、グランドアンカー10の下端を地下部蓄熱槽1の底部よりも深い地盤に定着させているので、高い支持強度を確保することができる。そして、その高い支持力を持つ地下部蓄熱槽1を基礎として、その上に地上部蓄熱槽3を、基礎杭を使用せずに載置し得ている。従って、コストを抑えながら地上部蓄熱槽3を安定支持することができ、狭隘な敷地であっても、地下と地上を合わせた大容量の蓄熱槽を低コストで実現することができる。また、地上部蓄熱槽3は、プレストレストコンクリート製としたので、施工の簡略化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施形態の複合型蓄熱槽の縦断面図である。
【図2】実施形態の複合型蓄熱槽を設置する敷地のレイアウト図である。
【図3】従来例の説明図で、(a)は地上式杭基礎蓄熱槽の例、(b)は圧入ケーソンによる地下式円筒型蓄熱槽の例を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0028】
1 地下部蓄熱槽
2 蓄熱水
3 地上部蓄熱槽
10 グランドアンカー
Ga 地盤
Gb 支持層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧入ケーソン工法により施工された地下部蓄熱槽と、それに隣接して施工され、上端が前記地下部蓄熱槽の上部に連結されると共に他端が地盤内の支持層に定着されることにより前記地下部蓄熱槽の浮力に対抗する抵抗力を発揮する永久型のグランドアンカーと、を備えることを特徴とする蓄熱槽。
【請求項2】
前記地下部蓄熱槽が、現場打ち鉄筋コンクリートの圧入ケーソンによって形成されていることを特徴とする請求項1に記載の蓄熱槽。
【請求項3】
前記地下部蓄熱槽の底部が地盤内の支持層に位置しており、前記グランドアンカーの下端が、前記地下部蓄熱槽の底部よりも深い地盤に定着されていることを特徴とする請求項1または2に記載の蓄熱槽。
【請求項4】
請求項3に記載の前記地下部蓄熱槽を基礎にして、その地下部蓄熱槽の上に地上部蓄熱槽が載置されることで、複合型として構成されていることを特徴とする蓄熱槽。
【請求項5】
前記地上部蓄熱槽が、プレストレストコンクリートより構成されていることを特徴とする請求項4に記載の蓄熱槽。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−336399(P2006−336399A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−165225(P2005−165225)
【出願日】平成17年6月6日(2005.6.6)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【Fターム(参考)】