説明

蓄熱空調システム

【課題】家屋の下の土壌を蓄熱層及び蓄冷層とし、当該蓄熱層に保存した熱(暖気、冷気)を使用した空調システムを提供する。
【解決手段】地中に設置された蓄熱交換層25及び/又は蓄冷交換層75と、地中の土壌からなる蓄熱層21及び/又は蓄冷層71を有し、蓄熱交換層及び/又は蓄冷交換層は気体供給手段によって地上から導入された暖気及び/又は冷気と熱交換を行い、蓄熱層及び/又は蓄冷層は暖気及び/又は冷気を保存し、蓄熱層は暖気を冷気に熱交換し、蓄冷層は冷気を暖気に熱交換し、熱交換後の暖気及び/又は冷気を地上に排出して、家屋の冷暖房に利用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外気の温度を蓄熱及び蓄冷することによって、季節に応じて建築物を冷暖房する空調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
高気密高断熱構造の建物について、床下の構造を使用して、冷暖房をするものとして、
特許文献1及び特許文献2が提案されている。
【0003】
特許文献1は、貯水タンクと、貯温水タンクを地中に埋設し、両タンク内に、外気取入口から各室の給気パイプに連通する熱交換パイプを配管し、貯水タンクを水で満たすと共に、貯温水タンクは太陽熱温水器からの温水で満たし、給気パイプに設けた開閉バルブを操作する事によって、外気と水/温水とが熱交換を行い、夏季においては、冬季の冷たい外気で冷やしておいた貯水タンク内の冷水を利用して、暑い外気を冷やして各室に給気し冷風運転を行うことが出来き、また、冬季においては、夏季の暑い外気で温めておいた貯水タンクの弱温水の中を、冷たい外気を暖め、さらに、太陽熱温水器により温められた貯温水タンク内の熱交換パイプを経由させて、温風を各室に送り込むことが可能となる、地中熱と太陽エネルギーを利用した冷暖房システムが開示されている。
【0004】
特許文献2は、家屋の外壁及び屋根が断熱材で形成してある家屋の地熱利用の冷暖房装置についての発明が開示されている。家屋の近傍乃至真下に軸線が垂直にして地中に埋設してある鋼管杭の中に第1冷媒液が蓄えてあり、この鋼管杭中に熱伝導体よりなる密閉型の第1熱交換体が沈設してあり、他方前記鋼管杭に支持されたベタ基礎コンクリート層の表層中には不錆材よりなる密閉型の第2熱交換体が埋設してあり、前記第1及び第2の熱交換体は適宜のパイプ及び送水ポンプを介して循環液路が形成してあり、これら循環液路には第2の冷熱媒液が液張りしてあり、前記第2の熱交換体を含むベタ基礎コンクリート層が少なくとも蓄熱層としてあり、床下空間は外気遮断型空間としてあり、この床下空間と負荷部たる家屋内とは循環空気路で連通している熱利用家屋冷暖房装置である。
【0005】
前記鋼管杭中に第1冷熱媒液及び第2の冷熱媒液は概ね地中温度となっており、夏季は、冷房すべき上部の部屋の温度が高い時に前記液体循環ポンプを運転すると、ベタ基礎コンクリート層中の第2熱交換体も冷却されて、熱容量の大きいベタ基礎コンクリート層も次第にゆっくりと冷却されこの冷却されたベタ基礎コンクリート層によって、これと床材及びこれらと外壁周面で囲まれた空間の空気も冷却される。次に空気循環ファンを運転することによって、床下の空間の冷却された空気は部屋を冷房し、再び床下の空間に戻り、再度冷却され循環する。また、外気温が高いとき、及び鋼管杭の外周の地下水が低いときは、冷房すべき部屋の温度が幾分低下する。冬季或いは寒冷地においては、地中熱は外気温より充分に高いから、前記液体循環ポンプを運転することによって、ベタ基礎コンクリート層の温度は地中温度近くまでゆっくりと上昇し、前記空間の空気温度を温め自然対流若しくは空気ファンを運転することによって、部屋を暖房する、地中熱利用家屋冷暖房装置が開示されている。
【0006】
【特許文献1】特開2008−185323号公報
【特許文献2】特開2006−100098号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1は貯水タンク及び貯温タンクを地中に埋設し、特許文献2に記載の発明は、垂直に鋼管杭、第一熱交換体、及び第二熱交換体を地中に埋設している。これらの構造物は、設置までに、地中深く器具を埋め込むこと、コンクリートの乾燥に時間掛かることや、建設コスト高となる。また、家屋の下に埋設されるため、故障等の修理の際には、家屋の床下を発掘する等、大規模な工事、時間、コスト等が掛かる。また、撤去時の作業の困難さや、器具が再利用することができない等の問題を有している。
【0008】
そこで本発明では、大規模な装置を使用せずに、家屋の下の土壌を蓄熱層及び蓄冷層としみなし、当該蓄熱層に保存した熱(暖気、冷気)を使用するものであって、夏季は冬季に蓄えた冷気によって家屋を冷却し、冬季は夏季に蓄えた暖気によって家屋を暖房する、蓄熱を使用した空調システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る蓄熱を使用した空調システムは、地中に設置された蓄熱交換層及び/又は蓄冷交換層と、地中の土壌からなる蓄熱層及び/又は蓄冷層を有し、前記蓄熱交換層及び/又は前記蓄冷交換層は気体供給手段によって地上から導入された暖気及び/又は冷気と熱交換を行い、前記蓄熱層及び/又は前記蓄冷層は前記蓄熱交換層及び/又は前記蓄冷交換層と熱交換を行い、前記蓄熱層及び/又は前記蓄冷層は暖気及び/又は冷気を保存することを特徴とする。
【0010】
本発明に係る蓄熱を使用した空調システムは、前記蓄熱交換層及び/又は前記蓄冷交換層は前記気体供給手段によって地上から導入された暖気及び/又は冷気と熱交換を行い、前記蓄熱層及び/又は前記蓄冷層は前記蓄熱交換層及び/又は前記蓄冷交換層と熱交換を行い、前記蓄熱層は前記暖気を冷気に熱交換し、及び/又は前記蓄冷層は前記冷気を暖気に熱交換し、前記熱交換後の暖気及び/又は冷気を地上に排出することを特徴とする。
【0011】
本発明に係る蓄熱を使用した空調システムにおける、前記気体供給手段は、ダクト及びファンを有し、暖気及び/又は冷気をファンの動作によってダクトを経由させて、蓄熱層及び/又は前記蓄冷層に強制的に送風することを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の蓄熱を使用した空調システム。
【0012】
本発明に係る蓄熱を使用した空調システムにおける、前記蓄熱交換層及び/又は前記蓄冷交換層は、鋼管、山砂、及び砕石からなり、多層構造を構成することを特徴とする。
【0013】
本発明に係る蓄熱を使用した空調システムにおける、前記蓄熱層への蓄熱は、冬季以外の前記暖気が30度以上の場合に行われ、前記蓄熱層にて冷気を暖気へ熱変換する場合は、冬季に行われることを特徴とする。
【0014】
本発明に係る蓄熱を使用した空調システムにおける、前記蓄冷層への蓄冷は、夏季以外の前記冷気が10度以下の場合に行われ、前記蓄冷層にて暖気を冷気へ熱変換する場合は、夏季に行われることを特徴とする。
【0015】
本発明に係る蓄熱を使用した空調システムは、建築物の上部に設置され、空気が流動する通気層を備える集熱体と、地中に前記蓄熱交換層及び/又は前記蓄冷交換層と、前記蓄熱層及び/又は前記蓄冷層と、前記気体供給手段とを有する建築物であって、前記熱交換後の暖気及び/又は冷気を冷暖房に使用することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、屋外の空気を集熱体(集熱板)で暖め(暖気)、家屋に設置したファンを動作させ、暖気をダクトを通過させて地中に設置した蓄熱交換層に導き、前記蓄熱交換層で前記暖気の熱と蓄熱層の熱を交換し、暖気を地中の前記蓄熱層に蓄えることができる。この時、使用するエネルギーは太陽熱及びファンの駆動に掛かる電源のみなので、エネルギー使用を最小限に抑え、経済的であるという効果を有する。
【0017】
また、前記蓄熱層に蓄えた熱を、冬季に家屋に設置したファンを動作させ、屋外の冷たい空気(冷気)をダクトを通過させて地中に設置した蓄熱交換層に導き、蓄熱交換層で前記蓄えた熱と冷気を熱交換して暖め、その暖気を家屋内に流入させることで、家屋内を暖房することができる。この時、使用するエネルギーは蓄熱及びファンによる電源のみなので、エネルギー使用を最小限に抑え、経済的であるという効果を有する。
【0018】
冬季は、屋外の冷気を、家外に設置したファンを動作させてダクトに流入させ、ダクトを通過させて地中に設置した蓄冷交換層に導き、蓄冷交換層で前記冷気と蓄冷層の熱を交換し、冷気を地中の蓄冷層に蓄えることができる。この時、使用するエネルギーはファンによる電源のみなので、エネルギー使用を最小限に抑え、経済的であるという効果を有する。
【0019】
また、前記蓄冷層に蓄えた冷気を、夏季の暑い外気(暑気)を家屋に設置したファンを動作させてダクトを通過させて地中に設置した蓄冷交換層に導き、蓄冷層で前記蓄えた冷気と暑気を熱交換して暑気を冷却し、その冷却を家屋内に流入させることで、家屋内を冷房することができる。この時、使用するエネルギーは蓄冷及びファンによる電源のみなので、エネルギー使用を最小限に抑え、経済的であるという効果を有する。
【0020】
また、前記蓄熱層は通常の家屋、マンション及びビル等の建築物を構築することができる土壌で有れば熱を蓄えることができる。また、蓄熱交換層及び蓄冷交換層は、熱交換率の良い鋼管、山砂、及び砕石から成り、設置が容易であり、材料費、建築コストも抑えることができる。解体後も資材を他に転用することができる。
【0021】
また、地蓄熱交換層及び蓄冷交換層は、取り壊しが容易であり、解体後も資材を他に転用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る蓄熱空調システムの第1の実施の形態が適用された家屋を示す断面図である。
【図2】図2(A)は図1の集熱板を示す断面図、図2(B)は集熱板の正面図である。
【図3】蓄熱層の地中温度を示すグラフである。
【図4】蓄冷層の地中温度を示すグラフである。
【図5】本発明に係る蓄熱空調システムの第2の実施の形態が適用された家屋を示す断面図である。
【図6】図6(A)は図5の第2集熱板を示す断面図、図6(B)は第2集熱板の正面図である。
【図7】本発明に係る蓄熱空調システムの第3の実施の形態が適用された家屋を示す断面図である。
【図8】第3集熱体の構成を示す図であり、図8(A)は、第3集熱体の正面図、図8(B)は、第3集熱体の右側面図、図8(C)は、(A)に示す図から上板を除いて示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、図面に基づき説明する。
【0024】
[第一の実施例]
図1は、本発明に係る蓄熱空調システムの第1の実施の形態が適用された家屋を示す断面図である。図2(A)は図1の集熱板を示す断面図、図2(B)は集熱板の正面図である。
【0025】
家屋10は、基礎11と、基礎11上に設けられた床14と、下階空間を構成する一階空間17と、上階空間を構成する二階空間18及び小屋裏空間19とを有する。屋根13は、山形形状の切妻または寄せ棟形式に構成され、この屋根13の下方に、上記小屋裏空間19が設けられる。この小屋裏空間19は二階空間18に連通されている。また、一階空間17及び二階空間18は、仕切壁(図示せず)によってそれぞれ複数の部屋に仕切ってもよい。
【0026】
家屋10の基礎11(本実施形態ではベタ基礎)には換気口が設けられておらず、その外部の側面には、押出法ポリスチレンフォーム等の断熱材15が貼着され、前記断熱材15は地中約1m深くまで当該基礎11の側面を覆って、この基礎11が地表面付近の水平方向の熱の影響を受けないように配慮されている。また、基礎11と床14の間には断熱材を設置しないため、後述するように、蓄熱の熱が基礎を伝導し、家屋10内を暖めることができる。なお、家屋10は、一戸建てやアパート、ビル、マンション等の建築物でもよい。
【0027】
また、家屋10は、一階空間17及び二階空間18等の床上空間16を冷暖房するため、蓄熱システム30及び蓄冷システム60を有する。
【0028】
蓄熱システム30は、家屋10の上部に設置されて、空気が流動する通気層31を備える屋根13(南側屋根面13A及び北側屋根面13B)と、集熱体40としての南側屋根面13Aの通気層31と、気体供給手段としての第一ファン34を連通する第一ダクト33aと、第一ファン34と蓄熱交換層25とを連通する第二ダクト33bと、地中に設置された蓄熱交換層25と、蓄熱層21と、蓄熱交換層25から一階空間17に設置されたダクト切替機37とを連通する第三ダクト36と、ダクト切替機37から一階空間17に連通し、空気を一階空間17に排出する室内用暖気ダクト38と、ダクト切替機37から家屋10の外へ連通する排気用暖気ダクト39とから構成される。
【0029】
上記第一ダクト33aは、上流端のダクト流入口32が南側屋根面13Aの通気層31内に開口され、第一ファン34が動作することによって、ダクト流入口32から、空気が第一ダクト33aに流入し、第一ダクト33aに連接された第二ダクト33bにそのまま送風される。
【0030】
第二ダクト33bの他端は、家屋10の基礎11の下面に埋設された蓄熱交換層25に連接している。第二ダクト33bに流入した空気は、蓄熱交換層25に設置された鋼管22に流入する。
【0031】
また、第二ダクト33bから蓄熱交換層25に流入した前記空気を排出するために、蓄熱交換層25に連接して、鉛直方向の地上に向かって、第三ダクト36が設置されている。第三ダクト36は地上側先端部に、送風を2方向に切り替える、ダクト切替機37を連接する。
【0032】
ダクト切替機37は、一端に送風を家屋10内に送風するための室内用暖気ダクト38及び、送風を野外に排出する為の排気用暖気ダクト39が連接される。ダクト切替機37は自動又は手動で切替え、ダクト切替機37からの送風が、室内用暖気ダクト38又は排気用暖気ダクト39に流れるようにする。室内用暖気ダクト38は、暖気を家屋10内に送風し、一階空間17及び二階空間18を暖房する。暖気は下から上へ上昇するため、室内用暖気ダクト38は一階空間17に設置することが望ましい。
【0033】
また、前記気体供給手段を構成する、第一ダクト33a、第二ダクト33b、第三ダクト36、室内用暖気ダクト38及び排気用暖気ダクト39は、内部に暖気が流れるので、空気からの放熱を防止するために断熱材で被覆する。
【0034】
蓄熱交換層25は、鋼管22、山砂23、及び砕石24から成り、家屋10の基礎11の下面と蓄熱層21の上面の間に、家屋10の底面と平行に設置される。蓄熱交換層25の範囲は基礎11と同等以下の面積であれば良く、蓄熱層21との接地面積大きいほど熱交換の効率が上がる。
【0035】
蓄熱交換層25は、まず、蓄熱層21の上面に砕石24を敷き詰めて層を作り、前記砕石層の上側に鋼管22を等間隔に蛇行して折り返して配置する。鋼管22を蛇行させることで、蓄熱交換層25内での鋼管22の総延長をなるべく長くするようにし、鋼管22の表面積を増やして、熱交換の効率を向上させる。鋼管22の隙間を山砂23で埋め、鋼管22を固定すると共に、熱交換の媒体とする。鋼管22は熱伝導率の良い金属(炭素鋼、合金鋼、ステンレス鋼等)を用いるのが好適である。そして、山砂23の上面に再び砕石24を敷き詰めて層を作ることで、蓄熱交換層25が構成される。
【0036】
蓄熱層21は、家屋10を建設するための一般的な地面をそのまま使用することができる。一般的な家屋やビル等が建設可能な地面の土壌等であれば、特別な加工や機器の設置は不要であり、その土壌をそのまま蓄熱層21とすることができる。蓄熱層21の範囲は、水平方向は基礎11で覆われた面積と同等の範囲であり、深度は約5m程度が好適であるが、特に限定するものではない。例えば、家屋10の床面積が70平方メートル(m)、蓄熱層21の深さが5mの場合、蓄熱層の体積は350立方メートル(m)となる。
【0037】
なお、蓄熱層21の熱は蓄熱交換層25、基礎11を伝導し、家屋10内の空気を暖めるが、当該伝導による家屋の暖房を考慮しないので有れば、蓄熱層21の直上に家屋10は無くても良く、代わりに駐車場等の施設、畑(ビニールハウス等を含む)、空地でも良い。
【0038】
蓄冷システム60は、気体供給手段として、屋外設置され、空気を送風するための蓄冷用ダクト流入口62、蓄冷用ファン64、蓄冷第一ダクト63と、前記空気を地中から排出するための蓄冷第二ダクト66、蓄冷ダクト切替機67、家屋10内に送風するための室内用冷気ダクト68、送風を野外に排出する為の排気用蓄冷ダクト69、及び、地中の蓄冷交換層75、蓄冷層71から構成される。
【0039】
屋外の地上には、空気を送風するための蓄冷用ダクト流入口62が設置され、蓄冷用ダクト流入口62の近傍には、蓄冷用ファン64が設置される。蓄冷用ファン64が動作すると、蓄冷用ダクト流入口62から空気を蓄冷第一ダクト63に送風される。蓄冷第一ダクト63は他端が地中の蓄冷交換層75に連接され、前記空気を蓄冷第一ダクト63から蓄冷交換層75に設置された蓄冷用鋼管72に送風する。
【0040】
また、蓄冷第一ダクト63から蓄冷交換層75に流入した前記空気を排出するために、蓄冷交換層75に連接して、鉛直方向の地上に向かって、蓄冷第二ダクト66が設置されている。蓄冷第二ダクト66は地上側先端部に、送風を2方向に切り替える為の、蓄冷ダクト切替機67を連接する。
【0041】
蓄冷ダクト切替機67は一端に空気を家屋10内に送風するための室内用冷気ダクト68及び、前記空気を野外に排出する為の排気用蓄冷ダクト69が連接される。蓄冷ダクト切替機67は自動又は手動で切替え、蓄冷第二ダクト66からの送風が、室内用冷気ダクト68又は排気用蓄冷ダクト69に流れるようにする。室内用冷気ダクト68は、冷気を家屋10内に送風し、一階空間17及び二階空間18を冷房する。冷気は上から下へと下降するため、室内用冷気ダクト68は二階空間18に設置することが望ましい。
【0042】
また、蓄冷第一ダクト63、蓄冷第二ダクト66、室内用冷気ダクト68及び排気用蓄冷ダクト69は、内部に冷気が流れるので、空気からの放熱を防止するために断熱材が覆されている。
【0043】
蓄冷交換層75は、蓄冷用鋼管72、蓄冷用山砂73、及び蓄冷用砕石74から成り、蓄冷用断熱材76を、地中約50cmの位置に地面と平行に敷き詰め、蓄冷用断熱材76の縁折り曲げ、鉛直下方に約1m程埋設して設置し、蓄冷用断熱材76の下面と蓄冷層61の上面の間に設置される。
【0044】
蓄冷交換層75は、まず、蓄冷層61の上面に蓄冷用砕石74を敷き詰めて層を作り、前記砕石層の上に蓄冷用鋼管72を折り返して蛇行させ等間隔に配置する。蓄冷用鋼管72を蛇行させることで、蓄冷交換層75内での蓄冷用鋼管72の総延長をなるべく長くするようにし、蓄冷用鋼管72の表面積を増やして、熱交換の効率を向上させる。蓄冷用鋼管72の隙間を蓄冷用山砂73で埋め、固定すると共に、熱交換の媒体とする。蓄冷用鋼管72は熱伝導率の良い金属(炭素鋼、合金鋼、ステンレス鋼等)を用いるのが好適である。また、蓄冷交換層75の上面は、押出法ポリスチレンフォーム等の蓄冷用断熱材76が設置され、蓄冷用断熱材76は端部を折り曲げ、地中約90cmまでを覆って、蓄冷交換層75が地上の熱の影響を受けないように配慮されている。
【0045】
蓄冷層71は、一般的な地面をそのまま使用するものである。一般的な家屋やビル等の建築物が建設可能な地面の土壌等であれば、特別な加工や機器の設置は不要であり、その土壌をそのまま畜冷層71とすることができる。又、地上に建築物の有無を訪わないため、駐車場、公園及び空地等の地中を使用しても良い。また、冷気を保つために、建築物の北側の日陰の場所が好適である。蓄冷層71の範囲は、面積は蓄冷交換層75と同等以下であり、深度は約5m程度が好適であるが、特に限定するものではない。
【0046】
[蓄熱層・蓄冷層の効果]
図3及び図4を用いて蓄熱層21及び蓄冷層71の保温効果について説明する。図3は、蓄熱層の年間温度変化を示す。図4は、蓄冷層の年間温度変化を示す。図中の線は、地中0.1m乃至地中5.0mの各深度の年間の温度変化を示している。なお、図3及び図4に示す実線の蓄熱層21及び蓄熱層71の温度は、地中0m〜5.0mの各深度の測定温度の平均値を示したものである。
【0047】
地中は、地上の気温に対して、温度変化が少なく、地中深くなればなるほど、一年間を通じてほぼ一定に近い温度/湿度を維持することが知られており、一般に、冷蔵庫や保管庫代わりに使用されている。例えば、東京の地中温度は、図3及び図4に示す様に、地中0.1mでは、地上の気温の影響を多大に受け、2月は約3度、8月は約29度まで温度変化が激しい。しかし、地中5mでは、2月は約17度、7月は約15度と一年間を通じて温度変化が少なくなっている。
【0048】
上記の結果を踏まえて、本願出願人は、地上が1年で最も暑い夏季でも、地中温度は地上温度と比較して十分に低温であり、地上が1年で最も寒い冬季は、地中温度は地上温度と比較して十分に暖かくあり、約半年程度、季節と温度の逆転現象が発生していること、及び深度が深くなるほど保温性に優れることに着目した。このような地中の温度の特性を利用し、暖かい季節の熱を地中の蓄熱層に蓄熱し、約半年後の外気が寒い季節に、前記蓄熱層の熱を使用して空気を暖め暖房に使用すること、及び、寒い季節の冷気を地中の蓄冷層に蓄冷し、約半年後の外気が暑い季節に、前記蓄冷層の冷気を使用して、空気を冷却し、冷房に使用することを実現した。
【0049】
実験の結果、図3に示すように、冬季の12月〜3月における地中の温度は、地中深度0.1mの温度は5度以下、地中深度5.0mの温度は約17度であるが、蓄熱層に初秋以降、本発明の蓄熱を行った場合、12月〜3月における前記蓄熱層の温度は約20度と、蓄熱の効果が表れている。
【0050】
また、図4に示すように、夏季の6月〜9月における地中の温度は、地中深度0.1mの温度は約23〜29度、地中深度5.0mの温度は約15度であるが、蓄熱層に初冬以降、本発明の蓄冷を行った場合、6月〜9月における前記蓄冷層の温度は約13〜17度と、蓄冷の効果が表れている。
【0051】
このように、半年前の熱及び冷気を地中に蓄え、即ち、気温の異なる他の季節への熱及び冷気を積極的に地中に蓄え、地中に蓄えた熱及び冷気を家屋内の冷暖房に使用することにより、効率的で、経済的な空調システムを構築することができる
[蓄熱層への蓄熱]
図1を用いて、蓄熱及び室内の暖房の方法について説明する。蓄熱期間は、土壌への蓄熱層に蓄熱するために約2月を要するため、家屋内の暖房が必要となる11月下旬頃から逆算し、初秋〜初春(9月下旬〜翌年3月下旬)に行うと好適である。盛夏の7〜8月頃は、蓄熱を行うと、蓄熱層の熱が、床14、基礎11、蓄熱交換層25から熱交換され、家屋10内に流入するので、家屋内に溜まり、不快を感じる高温と成ってしまうため蓄熱を行わない。また、蓄熱期間は、地域の気候や使用者の体感温度等から、任意な時期に実行しても良いことは当然である。
【0052】
まず、暖気をダクト流入口32から第一ダクト33に流入させるため、暖気を屋根13にて収集する。前記屋根13は、図2及び図3に示すように、南側屋根面13Aの全面に通気層31が形成される。この屋根13は、梁42、43間に屋根垂木44が複数本掛け渡され、これらの屋根垂木44に構造用合板45が敷設され、この構造用合板45に気密シート46を介してプラスチック系の断熱材47が設置され、この断熱材47に通気層形成部材としての通気垂木48が複数本配置され、この通気垂木48に屋根仕上げ体49が敷設されて構成される。断熱材47と屋根仕上げ体49との間に、通気垂木48の存在によって通気層31が形成される。
【0053】
上記屋根仕上げ体49は、構造用合板50上にルーフィング51を介して金属板52が設置されたものである。この金属板52は、熱伝導性の良好な銅板、ステンレス鋼板またはガルバニウム鋼板などが好ましく、いずれも黒色など暗い色に塗装されて吸熱性を高めたものがよい。尚、金属板52に代えてカラーベスト(登録商標)を用いてもよい。
【0054】
第一ダクト33aのダクト流入口32は、上記通気層31内に開口し、図3に示すように、南側屋根面13Aの左右方向中央位置で、且つ当該南側屋根面13Aの水上縁53から所定距離aだけ上下方向中央寄りの位置に設定される。この所定距離aは、南側屋根面13Aの水上縁53と水下縁54間の距離Lに対する比として設定され、約1/5<a/L<約1/2の範囲の値に設定されるのが好ましい。所定距離aの値が上記範囲に設定されることで、第一ダクト33aのダクト流入口32内へは、通気層31を流れて太陽熱により暖められた空気(暖気)が導入されることになる。
【0055】
断熱材47と屋根仕上げ体49との間に通気層31を形成する通気垂木48は、第一ダクト33aの上記ダクト流入口32へ向かう方向に、傾斜角αで斜めに配置され、互いに平行に複数本設けられる。この傾斜角αは、例えば45度である。また、図2に示すように、屋根13の軒下に軒下部材55が設けられ、この軒下部材55に空気流入口56が形成される。また、屋根13の棟に棟部材57が設置され、この棟部材57に空気流出入口58が形成される。
【0056】
前記暖気は、図1に示すように、冬季には、第一ファン34の運転により、上記空気流入口56及び空気流出入口58から南側屋根面13Aの水下縁54、水上縁53を経て通気層31内へ流入し、この通気層31の複数本の通気垂木48に沿ってダクト流入口32へ向かって流動する間に、太陽熱で暖められまたは放射冷却されて、このダクト流入口32から第一ダクト33a内へ導入される。
【0057】
第一ファン34は温度センサー(図示せず)と連動しており、前記暖気が温度30度以上で、第一ファン34が運転を開始するようにすることが望ましい。なお、前記暖気は、夏は約60〜70度、冬は約45度程度まで暖かくなるため、冬季でも相当の時間第一ファン34が稼働し、相当量の前記暖気がダクト流入口32から第一ダクト33a内へ導入されることとなる。
【0058】
第一ダクト33a内を流れる前記暖気は、第一ファン34を経由して、第二ダクト33bに送られる。第二ダクト38は、床14及び基礎11を貫き、蓄熱交換層25に設けられた、鋼管22内部に前記暖気を送風する。鋼管22の内部に送風された前記暖気は、当該鋼管22と熱交換を行い、前記空気の熱で鋼管22が暖められる。
【0059】
次に鋼管22の熱と外接する山砂23との熱交換によって、山砂23が暖められる。山砂23は鋼管22全体を包むように被せてあるので、鋼管22の全体から発する熱を、山砂23は効率よく吸収できる。また、鋼管22は蓄熱交換層25の内部を蛇行して総延長を長くしているため、熱交換を効率よく行うことができる。
【0060】
次に、山砂23との熱は、山砂23の下面に配置された砕石24との熱交換によって、砕石24が暖められる。そして、砕石24の熱は、砕石24の下面に有る蓄熱層21との熱交換によって、蓄熱層21が暖められる。このようにして、前記暖気の熱は熱伝導を繰り返し、最終的に蓄熱層21に熱が蓄えられる。
【0061】
前記暖気は熱交換をしながら、鋼管22を通り抜け、第三ダクト36に送風される。第三ダクト36の先端はダクト切替機37に連接されている。前記空気を屋外に排出する場合は、ダクト切替機37で排気用暖気ダクト39の方向に空気の流れを切り替え、前記空気は、排気用暖気ダクト39から屋外に空気を排出される。また、前記空気を家屋10の内部へ引き込む場合は、ダクト切替機37で室内用暖気ダクト38の方向に空気の流れを切り替え、前記空気は、室内用暖気ダクト38から家屋10に送風される。なお、ダクト切替機37の切替方式は手動方式でも良く、温度センサを備えた自動方式でも良い。
【0062】
[冬季の蓄熱による暖房]
次に、蓄熱を使用して、冬季に暖房を行う場合の説明を示す。冬季は、ダクト流入口32から、第一ダクト33a及び第二ダクト33bに冷気を流入させ、さらに、蓄熱交換層25に設けられた鋼管22内部に冷気を流入させる。蓄熱層21の温度は、前記空気よりも暖かいので、そこで、熱交換が発生し、蓄熱層21の蓄熱が、砕石24、山砂23、鋼管22の順番で熱交換が起こり、鋼管22内の前記空気を暖める(温風)。前記温風は、鋼管22から排出され、第三ダクト36を経由して、ダクト切替機37で方向が切り替えられ、室内用暖気ダクト38から家屋10に送風される。家屋10の内部は前記温風によって暖められ、暖房として使用することができる。また、蓄熱層の温度が家屋10の室温より高い場合、蓄熱層21の熱が、蓄熱交換層25、基礎11及び床14と熱交換を行い、家屋10を暖房する効果も生じる。
【0063】
このように、空気の熱を地熱層に蓄え、冬季にその地熱層に蓄えた熱を使用することで家屋内の暖房を行うことができる。また、使用する電源はファンの電源のみであるので、経済的な暖房システムを構築することができる。
【0064】
[蓄冷層への蓄冷]
図1を用いて、蓄冷及び室内の冷房の方法について説明する。蓄冷期間は、土壌への蓄冷層に蓄冷するために約2月を要するため、家屋内の冷房が必要となる6月下旬頃から逆算し、初春(4月下旬)より前に行うことが目安である。しかし、蓄熱層と異なり畜冷層の地上部分には家屋が無いため、畜冷中に蓄冷層の冷気が地上に放出されても問題はない。このため、厳冬期の12月〜2月の最も冷たい冷気を畜冷層に畜冷することは、エネルギー効率が良い。そこで、一定温度以下(例えば、10度以下)の場合に、畜冷用ファン64の稼働が開始するように、実施することが好適である。
【0065】
まず、冷気を蓄冷用ダクト流入口62から蓄冷第一ダクト63に流入させるため、蓄冷用ファン64を作動させる。蓄冷用ファン64は温度センサー(図示せず)と連動しており、前記冷気が温度10度以下で、蓄冷用ファン64が運転を開始するようにすることが望ましい。
【0066】
蓄冷用ファン64の稼働によって、前記冷気が蓄冷用ダクト流入口62から蓄冷第一ダクト63内へ送風され、蓄冷第一ダクト63を通り、蓄冷交換層75に設けられた、蓄冷用鋼管72内部に送風される。前記冷気は、蓄冷用鋼管72よりも温度が低いので、蓄冷用鋼管72と熱交換を行い、前記冷気によって蓄冷用鋼管72が冷却される。
【0067】
次に蓄冷用鋼管72の冷気と外接する蓄冷用山砂73との熱交換によって、蓄冷用山砂73が冷却される。蓄冷用山砂73は蓄冷用鋼管72全体を包むように被せてあるので、蓄冷用鋼管72の全体から発する冷気を、蓄冷用山砂73は効率よく吸収できる。また、蓄冷用鋼管72は蓄冷交換層75の内部を蛇行して総延長を長くしているため、熱交換を効率よく行うことができる。
【0068】
次に、蓄冷用山砂73との冷気は、蓄冷用山砂73の下面に配置された蓄冷用砕石74との熱交換によって、蓄冷用砕石74が冷却される。そして、蓄冷用砕石74の冷気は、蓄冷用砕石74の下面に有る蓄冷層71との熱交換によって、蓄冷層71が冷却される。このようにして、前記冷気は熱伝導を繰り返し、最終的に蓄冷層71に冷気が蓄えられる。
【0069】
前記冷気は熱交換をしながら、蓄冷用鋼管72を通り抜け、蓄冷第二ダクト66に送風される。蓄冷第二ダクト66の先端は蓄冷ダクト切替機67に連接されており、蓄冷ダクト切替機67は、前記空気を屋外に排出する場合は、排気用蓄冷ダクト69に空気の流れを切り替え、また、前記空気を家屋10内に送風する場合には、室内用冷気ダクト78に空気の流れを切り替える。蓄冷ダクト切替機67の切替方式は手動方式でも良く、温度センサを備えた自動方式でも良い。
【0070】
このように、蓄冷層71に熱を蓄えるために、蓄冷用ダクト流入口62から冷気を流入し、排気用蓄冷ダクト69から屋外に空気を排出する。
【0071】
[冷房方法]
また、夏季は、蓄冷用ダクト流入口62から、蓄冷第一ダクト63に空気を流入させ、さらに、蓄冷交換層75に設けられた蓄冷用鋼管72内部に暑気が流入させる。蓄冷層71の温度は、前記暑気よりも低いので、そこで、熱交換が発生し、蓄冷層71の蓄熱が、蓄冷用砕石74、蓄冷用山砂73、蓄冷用鋼管72の順番で熱交換が起こり、蓄冷用鋼管72内の前記暑気を冷却(冷却風)する。前記冷却風は、蓄冷用鋼管72から排出され、蓄冷第二ダクト66を経由して、蓄冷ダクト切替機67で方向が切り替えられ、室内用冷気ダクト68から家屋10に送風される。家屋10の内部は前記冷却風によって冷やされ、冷房として使用することができる。
【0072】
このように、暖気の熱を地熱層に蓄え、冬季にその地熱層に蓄えた熱を使用することで家屋内の冷房を行うことができる。また、使用する電源はファンの電源のみであるので、経済的な冷房システムを構築することができる。
【0073】
[第二の実施例]
本発明に係る、第二の実施例について、図5及び図6を用いて説明する。図5は、本発明に係る蓄熱空調システムの第二の実施例の形態が適用された家屋を示す断面図、図6(A)は、第2集熱板を示す断面図、図6(B)は第2集熱板の正面図である。なお、第1の実施例と同じ構成品は、第1の実施例と同じ符号を付与した。
【0074】
家屋110は、第1の実施例の家屋10と同じ構造になっており、特に蓄熱システム130の構造が、特に集熱板の構造が、第1の実施例と異なっている。
【0075】
ベランダ120は家屋10と連接するベランダ床部122とベランダ床部122から立接するベランダ目隠し部121からなる。ベランダ床部122には、暖気を送風するベランダ床部ダクト124がベランダ床部122に内蔵若しくは外設され、ベランダ目隠し部121には、暖気を送風するベランダ目隠し部ダクト123がベランダ床部122に内蔵若しくは外設される。ベランダ目隠し部ダクト123はベランダ床部ダクト124と連通し、ベランダ床部ダクト124の他端は、家屋に設置された第一ダクト133aと連通する。
【0076】
蓄熱システム130は、家屋10の2階部分に設置されるベランダ120と、ベランダ目隠し部121に設置された第2集熱板140と、気体供給手段としての第一ファン134を連通する第一ダクト133aと、第一ファン134と蓄熱交換層25とを連通する第二ダクト133b、及び、蓄熱交換層25とから構成される。蓄熱交換層25の構造は、第1の実施例と同じ構造である。
【0077】
これら、前記気体供給手段を構成する第一ダクト133a、第二ダクト133b、ベランダ目隠し部ダクト123及びベランダ床部ダクト124は、内部に暖気が流れるので、空気からの放熱を防止するために断熱材で被覆されている。
【0078】
第2集熱板140は、図6(A)及び図6(B)に示すように、全面に通気層87が形成される。この第2集熱板140は、底板88と天板89との間に、通気層形成部材としての仕切板90が、水上縁91及び水下縁92に平行に複数枚配置されて構成される。通気層87は、底板88と天板89間の空間に複数枚の仕切板90に仕切られて形成される。
【0079】
第2集熱板140では、水上縁91側に断熱材93が配置され、この水上縁91の両側で当該水上縁91に直交する両辺のそれぞれに断熱材94、95が設置される。隣り合う複数枚の仕切板90と断熱材93とは、ひとつ置きに断熱材94または95に接触し、非接触の断熱材94または95との間に通気隙間96が形成される。また、ダクト流入口132は、水上縁91から所定距離aの位置に設置される。
【0080】
第一ファン34の電源をONにすると空気は、図6の矢印に示すように、第2集熱板140の水下縁92側及び水上縁91側の通気隙間96から通気層87内に流入する。この空気は通気層87内で、通気隙間96を通過して仕切板90に沿って移動し、通気層87内を蛇行して流動する。この間に空気は太陽熱により暖められ、または放射冷却されてダクト流入口132に至る。暖気は、ダクト流入口132から、ベランダ目隠し部ダクト121及びベランダ床部ダクト122に流入し、第一ダクト133aへ導かれる。第一ダクト133aへ導かれた空気は、第一ファン34によって第二ダクト133bに送風され、さらに第二ダクト133bに連接された蓄熱交換層25に送風される。蓄熱交換層25では、前記暖気と、蓄熱層21との熱交換が行われ、蓄熱層21に蓄熱される。
【0081】
また、本実施例では、第2集熱板140の代わりに、集熱体40を小型化した物を使用しても良い。
【0082】
このように、本実施形態では、ベランダの目隠し部121に集熱板が設置されるので、設置範囲、設置費用を抑えることができる。また、屋根13のスペースを専有しないので、屋根13には、太陽光発電等の他の装置を設置することもできる。
【0083】
[第三の実施例]
本発明に係る、第三の実施例について、図7を用いて説明する。図7は、本発明に係る蓄熱空調システムの第三の実施例が適用された家屋を示す断面図である。なお、第1の実施例と同じ構成品は、第一の実施例と同じ符号を付与した。
【0084】
上記家屋210は、基礎211上に設けられた床214と、下階空間を構成する一階空間217と、上階空間を構成する二階空間218及び小屋裏空間219とに区画される。屋根213は一方向が傾斜した片流れ形式に構成され、この屋根213の下方に、上記小屋裏空間219が設けられる。この小屋裏空間219は二階空間218に連通されている。また、一階空間217及び二階空間218は、仕切壁(図示せず)によってそれぞれ複数の部屋に仕切ってもよい。
【0085】
家屋210の基礎211(本実施形態ではベタ基礎)には換気口が設けられておらず、その外部の側面には、押出法ポリスチレンフォーム等の断熱材215が貼着され、地中約1m深くまで当該基礎211を覆って、この基礎211が地表面付近の熱の影響を受けないように配慮されている。なお、家屋210は、一戸建てやアパート、ビル、マンション等の建築物でもよい。
【0086】
また、家屋210は、一階空間217及び二階空間218等の床上空間216を暖房するため、蓄熱システム230を有する。
【0087】
蓄熱システム230は、家屋210の上部に設置されて、空気が流動する通気層231を備える集熱体としての外壁212(南側外壁212a及び北側外壁212b)と、この南側外壁212aと小屋裏空間219とを連通する通気口232と、小屋裏空間219の空気を送風するための第一ファン234と蓄熱交換層25とを連通するダクト233と、蓄熱交換層25から構成される。蓄熱交換層25の構造は、第1の実施例と同じ構造である。また、南側外壁212aには第2集熱板140(図6(A)及び図6(B)に示す)が設置されている。
【0088】
ファン234の電源をONにすると空気は、図6(A)の矢印に示すように、第2集熱板140の水下縁92側及び水上縁91側の通気隙間96から通気層87内に流入する。この空気は通気層87内で、通気隙間96を通過して仕切板90に沿って移動し、通気層87内を蛇行して流動する。この間に空気は太陽熱により暖められ、または放射冷却されて暖気はダクト流入口132に至る。
ダクト流入口132は通気口232に当接しており、前記暖気は、ダクト流入口132から、通気口232を通過し小屋裏空間219へ導かれる。
【0089】
小屋裏空間219へ導かれた前記暖気は、ファン234によってダクト233に送風され、さらにダクト233の他端に連接された蓄熱交換層25に送風される。蓄熱交換層25では、前記暖気と、蓄熱層21との熱交換が行われ、蓄熱層21に蓄熱される。
【0090】
また、第2集熱板140に代えて、第3集熱体240を設置しても良い。図8(A)乃至図8(C)に示すように、第3集熱体240は、直方体を成し、上板241、底板242、仕切板243及び外枠244からなる。上板241は、鉄板、ステンレス板等の熱伝導率の大きいものからなり、太陽光99が直接照射されて、太陽熱を集熱するものである。底板242は、外壁21と接する部分であり、木材、プラスチック等の断熱材からなる。仕切板243は、第3集熱体240内部を流れる空気の通気層253を形成するためのものである。外枠244は、水上縁245、水下縁246及び側縁247、248からなり、断熱材で形成されている。
【0091】
第3集熱体240は、図8(A)に示すように、全面に通気層253が形成される。この第3集熱体240は、底板242と上板241との間に、通気層形成部材としての仕切板243が、水上縁245及び水下縁246に平行に複数枚配置されて構成される。通気層253は、底板242と上板241間の空間に複数枚の仕切板243に仕切られて形成される。
【0092】
第3集熱体240では、外枠244の水上縁245及び水下縁246の両側で当該水上縁245及び水下縁246に直交する両辺のそれぞれに側縁247、248が設置される。隣り合う複数枚の仕切板243は、ひとつ置きに側縁247または248に接触し、非接触の側縁247または248との間に通気隙間254が形成される。
【0093】
図8(C)に示すように、底板242には、水下縁246側付近に水上縁245側に付近に空気流出口250が設けられている。底板242に設けた空気流出口250は、第3集熱体240の通気層253を流れた空気を排出するためのものである。
【0094】
また、図8(A)に示すように、上板241には、底板242の空気流出口250付近の位置に上部開閉がらり252がそれぞれ設けられている。上板241に設けた下部開閉がらり251は、夏季には外気を導入し、冬季には外気が流入しないようにするためのものである。また、上板241に設けた上部開閉がらり52は、夏季には蓄熱体の空気を排出し、冬季には蓄熱体の空気を外部に排出しないようにするためのものである。
【0095】
このように、第3集熱体240は、下部開閉がらり251から流入した空気を、太陽光を受けた上板241により加熱して暖気とし、図8(C)に矢印で示す空気の流れのように、暖気の上昇流によって仕切板243により形成されている通気層253を蛇行しながら下から上に流して、暖気を空気流出口250又は上部開閉がらり252から排出するものである。空気流出口250は、通気口232に当接しており、前記暖気は、通気口232を通過して、小屋裏空間219へ導かれる。
【0096】
以上述べたように、本発明によれば、屋外の空気を集熱体(集熱板)で暖め、家屋に設置したファンを動作させ、暖気をダクトを通過させて地中に設置した蓄熱交換層に導き、前記蓄熱交換層で前記暖気の熱と蓄熱層の熱を交換し、暖気を地中の前記蓄熱層に蓄えることができる。この時、使用するエネルギーは太陽熱及びファンの駆動に掛かる電源のみなので、エネルギー使用を最小限に抑え、経済的であるという効果を有する。
【0097】
また、前記蓄熱層に蓄えた熱を、冬季に家屋に設置したファンを動作させ、屋外の冷気をダクトを通過させて地中に設置した蓄熱交換層に導き、蓄熱交換層で前記蓄えた熱と空気の冷気を熱交換して暖め、その暖気を家屋内に流入させることで、家屋内を暖房することができる。この時、使用するエネルギーは蓄熱及びファンによる電源のみなので、エネルギー使用を最小限に抑え、経済的であるという効果を有する。
【0098】
冬季は、屋外の冷気を、家外に設置したファンを動作させてダクトに流入させ、ダクトを通過させて地中に設置した蓄冷交換層に導き、蓄冷交換層で前記冷気と蓄冷層の熱を交換し、冷気を地中の蓄冷層に蓄えることができる。この時、使用するエネルギーはファンによる電源のみなので、エネルギー使用を最小限に抑え、経済的であるという効果を有する。
【0099】
また、前記蓄冷層に蓄えた冷気を、夏季の暑い外気(暑気)を家屋に設置したファンを動作させてダクトを通過させて地中に設置した蓄冷交換層に導き、蓄冷層で前記蓄えた冷気と暑気を熱交換して暑気を冷却し、その冷却を家屋内に流入させることで、家屋内を冷房することができる。この時、使用するエネルギーは蓄冷及びファンによる電源のみなので、エネルギー使用を最小限に抑え、経済的であるという効果を有する。
【0100】
また、前記蓄熱層は通常の家屋、マンション及びビル等の建築物を構築することができる土壌で有れば熱を蓄えることができる。また、蓄熱交換層及び蓄冷交換層は、熱交換率の良い鋼管、山砂、及び砕石から成り、設置が容易であり、材料費、建築コストも抑えることができる。解体後も資材を他に転用することができる。
【0101】
また、地蓄熱交換層及び蓄冷交換層は、取り壊しが容易であり、解体後も資材を他に転用することができる。
【0102】
この発明は、その本質的特性から逸脱することなく数多くの形式のものとして具体化することができる。よって、上述した実施形態は専ら説明上のものであり、本発明を制限するものではないことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0103】
10 家屋
11 基礎
12 外壁
13 屋根
13A 南側屋根面
13B 北側屋根面
14 床
15 断熱材
16 床上空間
17 一階空間
18 二階空間
19 小屋裏空間
21 蓄熱層
22 鋼管
23 山砂
24 砕石
25 蓄熱交換層
30 建物空調システム
31 通気層
32 ダクト流入口
33a 第一ダクト
33b 第二ダクト
34 第一ファン
36 第三ダクト
37 ダクト切替機
38 室内用暖気ダクト
39 排気用暖気ダクト
40 集熱体
42 梁
44 屋根垂木
45 構造用合板
46 気密シート
47 断熱材
48 通気垂木(通気層形成部材)
49 屋根仕上げ体
50 構造用合板
51 ルーフィング
52 金属板
53 水上縁
54 水下縁
55 軒下部材
56 空気流入口
56 上記空気流入口
57 棟部材
58 空気流出入口
60 蓄冷システム
62 蓄冷用ダクト流入口
63 蓄冷第一ダクト
64 蓄冷用ファン
66 蓄冷第二ダクト
67 蓄冷ダクト切替機
68 室内用冷気ダクト
69 排気用蓄冷ダクト
71 蓄冷層
72 蓄冷用鋼管
73 蓄冷用山砂
74 蓄冷用砕石
75 蓄冷交換層
76 蓄冷用断熱材
99 太陽熱

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中に設置された蓄熱交換層及び/又は蓄冷交換層と、地中の土壌からなる蓄熱層及び/又は蓄冷層を有し、
前記蓄熱交換層及び/又は前記蓄冷交換層は気体供給手段によって地上から導入された暖気及び/又は冷気と熱交換を行い、
前記蓄熱層及び/又は前記蓄冷層は前記蓄熱交換層及び/又は前記蓄冷交換層と熱交換を行い、前記蓄熱層及び/又は前記蓄冷層は暖気及び/又は冷気を保存すること
を特徴とする、蓄熱を使用した空調システム。
【請求項2】
前記蓄熱交換層及び/又は前記蓄冷交換層は前記気体供給手段によって地上から導入された暖気及び/又は冷気と熱交換を行い、
前記蓄熱層及び/又は前記蓄冷層は前記蓄熱交換層及び/又は前記蓄冷交換層と熱交換を行い、
前記蓄熱層は前記暖気を冷気に熱交換し、及び/又は前記蓄冷層は前記冷気を暖気に熱交換し、
前記熱交換後の暖気及び/又は冷気を地上に排出すること
を特徴とする、請求項1に記載の蓄熱を使用した空調システム。
【請求項3】
前記気体供給手段は、ダクト及びファンを有し、
暖気及び/又は冷気をファンの動作によってダクトを経由させて、蓄熱層及び/又は前記蓄冷層に強制的に送風すること
を特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の蓄熱を使用した空調システム。
【請求項4】
前記蓄熱交換層及び/又は前記蓄冷交換層は、鋼管、山砂、及び砕石からなり、
多層構造を構成すること
を特徴とする、請求項1乃至請求項3の何れか1に記載の蓄熱を使用した空調システム。
【請求項5】
前記蓄熱層への蓄熱は、冬季以外の前記暖気が30度以上の場合に行われ、前記蓄熱層にて冷気を暖気へ熱変換する場合は、冬季に行われること
を特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか1に記載の蓄熱を使用した空調システム。
【請求項6】
前記蓄冷層への蓄冷は、夏季以外の前記冷気が10度以下の場合に行われ、前記蓄冷層にて暖気を冷気へ熱変換する場合は、夏季に行われること
を特徴とする請求項1乃至請求項5の何れか1に記載の蓄熱を使用した空調システム。
【請求項7】
建築物の上部に設置され、空気が流動する通気層を備える集熱体と、
地中に前記蓄熱交換層及び/又は前記蓄冷交換層と、前記蓄熱層及び/又は前記蓄冷層と、前記気体供給手段とを有する建築物であって、
前記熱交換後の暖気及び/又は冷気を冷暖房に使用することを特徴とする、請求項1乃至請求項6の何れか1に記載の蓄熱を使用した空調システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−251677(P2012−251677A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−122793(P2011−122793)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(504114522)株式会社白岩工務所 (3)
【Fターム(参考)】