説明

蓄電装置

【課題】 小型で、かつ、大容量で大きな電気エネルギーを得ることができる蓄電装置を提供することを目的とする。
【解決手段】 第一の電極4と、導電性材料で形成され第一の電極4と向かい合うように位置付けられている第二の電極7と、第一の電極4と第二の電極7に挟まれるように形成された電解質層6とを備えている蓄電装置であって、第一の電極4と電解質層6との間および第二の電極7と電解質層6との間に、金属微粒子層5が集電体層として形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気を蓄積する蓄電装置に関し、例えば電極間に電気を蓄積する蓄電装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電気を蓄える(蓄電)ものとして大容量キャパシタの提案がなされ、開発・製造・使用されてきた。一般的に容量の大きなキャパシタとしては、電解キャパシタ(コンデンサ)、積層セラミックキャパシタ、タンタルキャパシタなどが使用されてきた。
【0003】
しかし、近年になって、電気自動車で代表されるように、更に容量の大きなバッテリのニーズから、リチウムイオン電池の大容量化が進み、又大容量のキャパシタとして電解キャパシタの機能を拡充した電気二重層キャパシタの改良・開発が盛んに行われ、実用化されている。
【0004】
この電気二重層キャパシタは、歴史的には、1879年にヘルムホルツが導体を電解液中に浸すと、導体の界面に分子1層分の薄い層が生じてその外側に拡散層が生じる現象、即ち電気二重層を発見したことから始まる。1970年代後半になって、日本の電子部品製造業者が電気二重層を用い、従来の電解コンデンサの1000倍位の容量の製品を開発し販売を開始した。以後世界的に各社が各様で電気二重層を開発・製造の競争を行っている。
【0005】
また、積層セラミックキャパシタも薄膜技術を用いた大容量化の研究がなされている。電気二重層キャパシタは、電圧を外部から加えると、電解質中の陽イオン並びに陰イオンがそれぞれ電極のマイナスとプラスの電極の表面に分子一層分の厚みの領域で電気二重層を構成し、電荷が蓄積され、電流が流れる。
【0006】
電気二重層キャパシタの蓄電容量、即ち蓄電可能な電荷量は、外部から流入する電流量と電解質中のイオン量、イオンを吸着し電荷を蓄える電極表面積で決定されている。蓄電容量を拡大するためには、電極部に活性炭や、カボーンブラックや、ナノカーボンチューブを分極性電極使用し、また陽イオンと陰イオンを含む電解質の工夫をするなど多くの技術が提供されている。
【0007】
ここで、積層セラミックキャパシタなどの所謂コンデンサには、総合的な性能を低下させる電流リークの問題があった。また、リチウムイオン電池などの化学変化により電気エネルギーを蓄積する電池は、充放電サイクルにより性能が低下するという寿命の問題があった。
【0008】
このような問題を解決するために、例えば、特許文献1、2,3では巨大磁気抵抗効果を利用した電気エネルギー蓄積装置が提案されている。ここで、巨大磁気抵抗効果(GMR:Giant Magneto-resistance Effect)とは、薄い磁性セクションと薄い非磁性セクションとが交互に形成された、構造中でみられる量子力学的効果を利用する提案である。外部磁界が印加されると、巨大磁気抵抗効果によりゼロ磁場の高抵抗状態から高磁場の低抵抗状態へと電気抵抗が大幅に変化する。そのため、巨大磁気抵抗効果は、良好な性能を有する絶縁体として利用することができ、巨大磁気抵抗効果を有する装置は、電気エネルギーを蓄積、即ち蓄電することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008−177535号公報
【特許文献2】特開2008−177536号公報
【特許文献3】特開2009−049351号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1〜3に記載された電気エネルギー蓄積装置は、磁性セクションが薄膜で形成されており、容量を増大するためには磁性セクションを2次元方向に拡大して面積を増やすことが考えられるが、これでは装置の大型化が避けられず、小型化が困難になるという問題があった。
【0011】
また、電気二重層電池は、使用される材料がカーボンであるために大電圧や大電流を取り出すことが困難であり、大きな電気エネルギーを得ることが困難であった。
本発明は、以上の課題に鑑みてなされたもので、小型で、かつ、大容量で大きな電気エネルギーを得ることができる蓄電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決し、上記目的を達成する一手段として例えば以下の構成を備える。
例えば、導電性材料で形成された第一の電極と、導電性材料で形成され前記第一の電極と向かい合うように位置付けられている第二の電極と、前記第一の電極と前記第二の電極に挟まれるように形成された電解質層とを備えている蓄電装置であって、前記第一の電極と前記電解質層との間および前記第二の電極と前記電解質層との間に、金属微粒子層が集電体層として形成されていることを特徴とする。
【0013】
又例えば、前記集電体層が金属ポーラス層および金属メッシュ層であることを特徴とする。更に例えば、前記集電体層の材質が、磁性材料で形成されていることを特徴とする。あるいは、前記集電体層の材質が、着磁されていることを特徴とする。
【0014】
又例えば、導電性材料で形成された複数の第一の電極と、導電性材料で形成され複数の前記第一の電極とそれぞれ向かい合うように位置付けられている複数の第二の電極と、前記第一の電極と前記第二の電極に挟まれるように形成された複数の電解質層と、を備えている蓄電装置であって、前記第一の電極と前記第二の電極に挟まれた前記電解質層が順次積層され、前記複数の第一の電極同士を接続する配線と、前記複数の第二の電極同士を接続する配線とを備え、前記第一の電極と前記電解質層との間および前記第二の電極と前記電解質層との間には、金属微粒子層が集電体層として形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように本発明によれば、大型化せずに蓄積できる電気エネルギーを増大させることができる。また、大電圧や大電流を取り出すことが可能となり、大きな電気エネルギーを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る一発明の実施の形態例の電気エネルギー蓄積装置を模式的に示した断面図である。
【図2】図1に示す電気エネルギー蓄積装置の電極と集電体層を模式的に示した拡大図である。
【0017】
【図3】本発明に係る第2の実施の形態例の電気エネルギー蓄積装置を模式的に示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(第1の実施の形態例)
以下、図面を参照して本発明に係る第1の実施の形態例を図1および図2を参照して詳細に説明する。図1は本発明に係る一発明の実施の形態例の電気エネルギー蓄積装置を模式的に示した断面図、図2は図1に示す電気エネルギー蓄積装置の電極と集電体層を模式的に示した拡大図である。
【0019】
図1に示す電気エネルギー蓄積装置1は、少なくとも支持基板2と、バッファ層3と、第1電極4と、微粒子層5と、電解質層6と、第2電極7と、第1電極4に電気的に接続された端子8と、第2電極7に電気的に接続された端子9とを備えている。
【0020】
支持基板2は、特に材質を限定しないが、例えば、シリコン単結晶、SiGe単結晶、GaAs単結晶、InP単結晶、SrTiO3単結晶、MgO単結晶、LaAlO3単結晶、ZrO2単結晶、MgAl24単結晶、NdGaO3単結晶、NdAlO3単結晶、LaGaO3単結晶などによって形成することができる。これらの中では、低コストのため、シリコン単結晶が最も好ましい。また、支持基板2の厚さは、蓄電装置1全体の機械的強度を確保することができれば、とくに限定されるものではなく、例えば、10μm乃至1000μm程度に設定すればよい。
【0021】
バッファ層3は、支持基板2の上層に形成され、支持基板2と第1電極4を構成する電極薄膜との反応を防ぐバリア層としての役割を果たす。バッファ層3を形成するための材料は、例えば、ZrO2、ReO2、ReO2−ZrO2(Reはイットリウム(Y)または希土類元素)、MgAlO4、γ−Al23、SrTiO3、LaAlO3などによって、形成することができる。具体的には、これらの中から、支持基板2との格子整合性に優れ、熱膨張係数が、支持基板2と電解質層6を構成する薄膜材料の間にある材料を選択して、バッファ層3を形成することが好ましい。また、バッファ層3は単層構造であっても、多層構造であってもよい。そして、バッファ層3の厚さは、支持基板2と第1電極4を構成する電極薄膜との反応を防ぐバリア層としての機能を確保することができれば、特に限定されず、例えば、1mm乃至1000nm程度に設定すればよい。
【0022】
なお、バッファ層3は設けなくてもよい。バッファ層3を設けない場合は、支持基板2の表面に詳細を後述する第1電極4を形成する。
【0023】
第1電極4は、バッファ層3の上層に薄膜状に形成される。例えば、白金(Pt)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、イリジウム(Ir)、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、アルミニウム(A≡)などの導電性の金属によって形成することができる。具体的には、これらの材料の中から、支持基板2あるいはバッファ層3との格子整合性に優れた材料を選択して形成することが好ましい。また、第1電極4の電極薄膜の厚さは、薄膜キャパシタの一方の電極として機能することができれば、特に限定されるものではなく、例えば、500〜1000nm程度に設定すればよい。
【0024】
微粒子層5は、電解質層6の上下面にそれぞれ電解質層6を挟み込むように形成され第1電極4と第2電極7に挟み込まれるように形成されている。微粒子層5は、例えば、金属微粒子で形成する。微粒子層5は集電体層として機能し、微粒子の粒径はナノメートルオーダーとすることが好ましく、ナノメートルオーダー金属微粒子層とすることにより、より小型化が実現する。何れの場合においても、大電圧や大電流に対する耐性がより高くなり、大電圧や大電流を取り出すことが可能となる。
【0025】
尚、集電体層としての微粒子層5に変え、同じ集電作用が期待できる金属ポーラス体、金属メッシュ、金属細線で形成された金属不織布などで集電体層を構成してもよい。この場合にも微粒子層と同じような効果が期待できる。更に、集電体層としてナノメートルオーダーの厚みで積層した金属ポーラス体あるいは金属メッシュ体としてもよい。、金属細線で形成された金属不織布などで集電体層を構成してもよい。
【0026】
電解質層6は、いわゆるコンデンサや電池におけセパレータに対応する層で、電極間を電気的に絶縁させている。本実施の形態例では、電極間を電気的に絶縁状態に維持する。
【0027】
以上説明したように本発明に係る一発明の実施の形態例によれば、第一の電極と電解質層との間および第二の電極と電解質層との間に、金属微粒子層による集電体層が形成されているので、第一の電極および第二の電極の表面積を拡大することができ、蓄積できる電気エネルギーを増大させることができる。また、集電体が金属で形成されているので、大電圧や大電流を取り出すことができ、大きな電気エネルギーを得ることができる。
【0028】
(第2の実施の形態例)
本発明に係る第2の実施の形態例を図3を参照して説明する。なお、前述した第1の実施形態と同一部分には、同一符号を付して説明を省略する。図3は本発明に係る第2の実施の形態例の電気エネルギー蓄積装置を模式的に示した断面図である。
【0029】
第2の実施の形態例は、図3に示すように、支持基板2、バッファ層3の上層に、第1電極4、微粒子層5、電解質層6、微粒子層5、第2電極7、微粒子層5、電解質層6、微粒子層5、第1電極4、…、というように第1電極4または第2電極7のいずれかと微粒子層5および電解質層6さらにその上に形成される微粒子層5が順次交互に奇数層を積層する。
【0030】
積層にあたり各電極は交互にボンディングされ一対の対極を構成するために、1層おきに交互にボンディングを可能とするようにマスキングにより部分露出を行う。積層数(形成される薄膜キャパシタの積層数、つまり電解質層6の数)を例えば5〜100程度を設定する。
【0031】
第1電極4と第2電極7は、交互にボンディング線10、11によりそれぞれ結合されることで、最下位の電極から数えて奇数電極を第1電極4、偶数電極を第2電極7として分離される。即ち、ボンディング線10、11が複数の第一の電極同士を接続する配線および複数の第二の電極同士を接続する配線となる。そして、第1電極4、第2電極7それぞれから端子8、9を引き出し、図示しない入出力回路等に接続される。
【0032】
このようにすることで、複数の第1電極4と複数の第2電極7と複数の電解質層6とを備え、第1電極4(微粒子層5)と第2電極7(微粒子層5)に挟まれた電解質層6が順次積層された電気エネルギー蓄積装置1´を構成することができる。
【0033】
本実施形態によれば、第1電極4(微粒子層5)と第2電極7(微粒子層5)に挟まれた電解質層6が複数積層されて、それぞれがボンディング線10、11によって並列に接続されるので、単層よりもさらに多くの蓄電ができ、電気エネルギーを増大させることができる。
【0034】
以上説明したように第2の実施の形態例によれば、複数の第一の電極と、複数の第二の電極と、複数の電解質層と、複数の第一の電極同士を接続する配線と、複数の第二の電極同士を接続する配線とを備え、第一の電極と第二の電極に挟まれた電解質層が順次積層されているので、それぞれが配線によって並列に接続されるので、単層よりも蓄積できる電気エネルギーを増大させることができる。また、集電体が金属で形成されているので、大電圧や大電流を取り出すことができ、大きな電気エネルギーを得ることができる。また、各電極と電解質層を薄膜で形成し粒径がナノオーダーの微粒子を用いることで装置の小型化を図ることができる。
【0035】
なお微粒子層5を集電体層としてナノメートルオーダーの厚みで積層した金属ポーラス体あるいは金属メッシュ体で形成してもよい。
【0036】
(他の実施の形態例)
以上に説明した2つの実施の形態例では、各層は矩形平型の形状で積層していく例を説明した。しかしながら、本発明は以上の例に限定されるものではなく、マスキングの方式、薄膜成形方式により自由な形状を選択することが出来る。
【0037】
また、集電体層の金属は、金属ポーラス層や金属メッシュ層でもよく、金属にはチタン、アルミ、銅等を使用できる。
【0038】
更に、集電体層(微粒子層5)を磁性材料で形成してもよい。集電体層(微粒子層5)を磁性材料で構成することにより、第一の電極と第二の電極との間に電圧を印加した場合に、電界により集電体の磁性性能による集電率の向上が可能になり、より多くの蓄電を行うことができる。
【0039】
又、集電体層(微粒子層5)を磁性材料で形成し、集電体層(微粒子層5)を予め着磁してもよい。集電体層(微粒子層5)を予め着磁することにより、後から着磁する必要が無く、そのための回路や装置等も必要なくなる。第一の電極と第二の電極との間に電圧を印加した場合に、電界により集電体の磁性性能による集電率の向上が可能になり、より多くの蓄電を行うことができる。
【0040】
以上説明したように本発明の各実施の形態例によれば、第一の電極と電解質層との間および第二の電極と電解質層との間に、金属微粒子層による集電体層が形成されているので、第一の電極および第二の電極の表面積を拡大することができ、そのために蓄積できる電気エネルギーを増大させることができる。また、集電体が金属で形成されているので、大電圧や大電流を取り出すことができ、大きな電気エネルギーを得ることができる。また、各電極と電解質層を薄膜で形成し粒径がナノオーダーの微粒子なので装置の小型化を図ることができる。
【0041】
又は、本実施の形態例によれば、集電体が、磁性材料で形成されているので、第一の電極と第二の電極との間に電圧を印加した場合に、電界により集電体の磁性性能による集電率の向上が可能になり、より多くの蓄電を行うことができる。
【0042】
又、集電体が、予め着磁されているので、後から着磁する必要が無く、そのための回路や装置等も必要なくなる。
【0043】
更に、複数の第一の電極と、複数の第二の電極と、複数の電解質層と、複数の第一の電極同士を接続する配線と、複数の第二の電極同士を接続する配線と、を備え、第一の電極と第二の電極に挟まれた電解質層が順次積層されているので、それぞれが配線によって並列に接続されるので、単層よりも蓄積できる電気エネルギーを増大させることができる。また、集電体が金属で形成されているので、大電圧や大電流を取り出すことができ、大きな電気エネルギーを得ることができる。また、各電極と電解質層を薄膜で形成し粒径がナノオーダーの微粒子を用いることで装置の小型化を図ることができる。なお集電体をナノオーダーの厚みで積層した金属ポーラス体あるいは金属メッシュ体でもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性材料で形成された第一の電極と、導電性材料で形成され前記第一の電極と向かい合うように位置付けられている第2の電極と、前記第一の電極と前記第二の電極に挟まれるように形成された電解質層と、を備えている蓄電装置において、
前記第一の電極と前記電解質層との間および前記第二の電極と前記電解質層との間に金属微粒子を含む集電体層が形成されていることを特徴とする蓄電装置。
【請求項2】
前記集電体層は金属ポーラス体あるいは金属メッシュあるいは金属不織布の少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項1記載の蓄電装置。
【請求項3】
前記集電体層は磁性材料で形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の蓄電装置。
【請求項4】
前記集電体層は着磁されていることを特徴とする請求項3記載の蓄電装置。
【請求項5】
導電性材料で形成された複数の第一の電極と、導電性材料で形成され複数の前記第一の電極とそれぞれ向かい合うように位置付けられている複数の第二の電極と、前記第一の電極と前記第二の電極に挟まれるように形成された複数の電解質層とを備えている電気エネルギーを蓄積する蓄積装置において、
前記第一の電極と前記第二の電極に挟まれた前記電解質層が順次積層されており、
前記複数の第一の電極同士を接続する配線と、
前記複数の第二の電極同士を接続する配線と、を備え、
前記第一の電極と前記電解質層との間および前記第二の電極と前記電解質層との間には、電解質を充填した金属集電体層が形成されていることを特徴とする蓄積装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−30515(P2013−30515A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−163754(P2011−163754)
【出願日】平成23年7月26日(2011.7.26)
【出願人】(597006458)アドバンストエレクトロニクス株式会社 (2)
【出願人】(511182013)
【Fターム(参考)】