説明

蓋と蓋固定具

【課題】 爪の組み立てが不要で、しかも操作が簡単な蓋と蓋を容器本体に固定する蓋固定具を提供する。
【解決手段】 蓋は、載置部の内側に下方に突出した側壁の下端に連続して設けた上面板に封緘具を装着する封緘具用コ字状突起を突設するとともに、前記側壁に爪挿入孔を穿設してなる。前記封緘具用コ字状突起は、前記上面板に設けた溝内に突設するか、上面板上の平行なリブの間に突設してもよい。前記載置部の外周端に下向きのフランジを突設することが好ましい。一方、蓋固定具は、平面長方形状の板体からなる本体部の両端に爪を突設し、本体部に透孔を形成するとともに、前記透孔に隣接して封緘具用突起を設けてなる。前記爪は、封緘具用コ字状突起に近い方の爪を他方の爪よりも長く形成することが好ましい。また、前記本体部の周縁を周縁リブによって、縁取ることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、容器の上部開口部に嵌合する蓋と、前記蓋を容器に固定するための蓋固定具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、蓋付き容器には、容器の上部開口部に嵌合した蓋が不正に開けられないように、蓋をロック状態となるように嵌合したり、蓋を嵌合した後、封緘具で結束することによってロック状態とする容器がある。例えば、図13以下に示す蓋付き容器は、平面方形状に形成されており、蓋に設けた爪を容器本体の上部に設けた孔に差し込み、封緘具で固定するものである。
【0003】
即ち、蓋1は、周縁を容器本体2の上端面に載置する載置部3となし、載置部3の内側に下向きに形成した側壁4に上面板5を設け、上面を凹面に形成するとともに、前記上面板5には対向する側壁4に開口する溝6を設けてなる。前記溝6の一端側に側壁4から外方に突出した固定爪7を突設し、他方側の溝6には、可動爪8を摺動自在に装着した可動爪保持部9を突設してなる。前記可動爪保持部9は、可動爪挿入孔10と封緘具用コ字状突起11を上下に有しており、可動爪8の後端部は直角に立ち上がっており、封緘具用挿入孔12が穿設されている。
【0004】
一方、容器本体2は、上部開口部は前記蓋1の側壁4が嵌入する大きさであって、上部には外方に突出した水平なフランジ15が設けられている。側壁の対向する側面上部には蓋1を装着したとき蓋1の固定爪7と可動爪8を挿入する爪挿入孔17,18が穿設されている。
【0005】
上記構成の蓋1を容器本体2に嵌合してロック状態とするには、まず、固定爪7を爪挿入孔17に挿入して容器本体2の水平フランジ15に蓋1の載置部3を載置すると同時に、側壁4を容器本体2の上部開口部に嵌入する。次いで、可動爪8をスライドさせて爪挿入孔18に挿入する。このようにして、蓋1は容器本体2に確実に嵌合される。
【0006】
さらに、運搬中や保管中に蓋2を不正に開けて収納物を抜き取られることがないように、蓋1と容器本体2とをロック状態とする。蓋1と容器本体2とをロック状態にするには、可動爪保持部9の封緘具用コ字状突起11と可動爪8の封緘具用挿入孔12に封緘具、例えばインシュロックのバンド部を挿入して締結すればよい。封緘具によって可動爪8は可動爪保持部9に固定されるから、蓋1は封緘具を破損しない限り開けることができない。従って、収納物を不正に抜き取られるのを防止することができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記構成のような公知の蓋構造は、図14に示すように、別途成型した爪を蓋に取り付ける構造であるために、部品点数が多く成型費が高くなり、またこれらの部品を保管するのに手間がかかるという問題がある。また、爪は蓋に一体に取り付けられるが、これらの組立費が嵩みコストアップになるという問題がある。さらに、爪が破損すると蓋自体が使用することができなくなり、蓋自体を取り換えなければならないという問題がある。
【0008】
そこで、この発明は、爪の組み立てが不要で、しかも操作が簡単な蓋と蓋を容器に固定する蓋固定具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明に係る蓋は、載置部の内側に下方に突出した側壁の下端に連続して設けた上面板に封緘具を装着する封緘具用コ字状突起を突設するとともに、側壁に爪挿入孔を穿設したことを特徴とする。前記封緘具用コ字状突起は、前記上面板に設けた溝内に突設されており、溝の両端面における前記側壁に爪挿入孔を穿設した構成とすることができる。また、前記封緘具用コ字状突起は、前記上面板上の平行なリブの間に突設されており、平行なリブの間の側壁に爪挿入孔を穿設した構成としてもよい。また、前記載置部の外周端に下向きのフランジを突設してもよい。
【0010】
この発明に係る蓋固定具は、平面長方形状の板体からなる本体部の両端に爪を突設し、本体部に透孔を形成するとともに、前記透孔に隣接して封緘具用突起を形成したことを特徴とする。前記封緘具用突起に近い方の爪を他方の爪よりも長く形成することが好ましい。また、前記本体部の周縁を周縁リブによって縁取ることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
この発明に係る蓋は、構造が簡単であり、一般の蓋と同様に成型することができ、爪を組み立てることは不要であるから、成型費が高くなることはなく、組立費も不要である。一方、この発明に係る蓋固定具は、蓋とは別途成型され、使用するときに組み合わせて使用する構造であるから、組み立てによる費用のアップを抑えることができる。また、蓋固定具をスライドさせるだけで蓋を容器本体にロック状態にしたり、ロック状態を解除することができるので、操作がきわめて簡単である。また、蓋固定具は、溝又はリブ間をスライドさせる構成としたから、スムーズに操作することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照してこの発明に係る蓋と蓋固定具の実施の形態を説明する。図1は、蓋と蓋固定具と容器本体との関係を示す斜視図である。まず、蓋20について説明する。蓋20は、平面方形状であって、周縁を容器本体の上端面に載置する載置部21となし、載置部21の内側から下方に突出した側壁22を設け、前記側壁22の下端に連続して上面板23を設けてなる。従って、蓋の上面は凹面に形成されている。
【0013】
前記上面板23の下面には、図3に示すように、補強リブ24が設けられている。前記補強リブ24は、上面板の下面周縁を縁取る周縁リブ24aと、その内側に設けられた内側リブ24bと、前記周縁リブ24aの対角を連結する略X字状の連結リブ24cによって形成されている。前記載置部21の外周端には下向きフランジ25が突設されている。
【0014】
前記上面板23の中央部には、短手方向と平行な溝27が対向する側壁22、22に両端部を開口するように設けられている。前記溝27は、上面板23を凹ませて形成されており、略中間部は広幅部27aとされていて、中央部に封緘具用コ字状突起28が設けられている。前記封緘具用コ字状突起28は、溝27の底面よりも上方に断面コ字状の突片28aを突設し、前記突片28aの内側は封緘具を挿通する挿通孔28bとしている。
【0015】
尚、溝27を設けることによって蓋20の強度を高めることができ、しかも蓋20の上面に上段の容器本体を積み重ねる際にも支障がない。また、前記広幅部27aを設けることにより蓋固定具の両側を挟んで蓋固定具を溝27に装着したり取り出したりすることができるが、必ずしも広幅部27aを設ける必要はなく、溝27全体を同じ幅寸法に形成してもよい。
【0016】
さらに、前記溝27の両端側における側壁22には、蓋固定具の両端部の爪を挿入する爪挿入孔29、30が設けられている。前記爪挿入孔29、30は、図4及び図5に示すように、溝27の底面より上方に位置し、蓋固定具をスライドさせて爪を挿入できるように設けられている。
【0017】
また、短手方向の載置部21と側壁22には、隅部近くにそれぞれ透孔31、32が設けられている。この透孔31、32は、容器本体に嵌合した蓋20の上面に上段の容器本体を積み重ねたとき、容器本体の側面に設けた膨出部50の下端部に突設された突起51が嵌入するように形成したものであって、容器本体の形状により適宜省略することができる。
【0018】
次に、前記溝27に装着して蓋20を容器本体に固定する蓋固定具について説明する。蓋固定具33は、図1及び図6〜8に示すように、平面細長板状の本体部34の一方端に爪35を突設し、他方端に爪36を突設してなり、爪35は爪36よりも長く形成されている。その理由は、爪35を爪挿入孔29に先に挿入することにより蓋固定具を蓋に容易に固定することができ、逆に爪35を爪挿入孔29に奧まで挿入した状態で反対側の爪36を爪挿入孔30から取り出すことにより容易に解除することができるからである。前記本体部34は、前記溝27内に装着される大きさであって、両端部の爪35,36がそれぞれ爪挿入孔29、30に挿入される。
【0019】
前記本体部34の中央部には、蓋20の封緘具用コ字状突起28を嵌入する平面長方形状の透孔37が形成されており、前記透孔37に近接して封緘具用突起38が設けられている。本体部34の上面周縁部は、成型時における本体部34の変形を防止するとともに、補強のためのリブ39で縁取られている。前記封緘具用突起38がリブ39の対向する長手方向を連結するように設けられている。前記封緘具用突起38は、透孔37に近接して爪35側に設けられており、下端部中央には封緘具を挿通する封緘具挿通孔40が形成されている。
【0020】
前記封緘具挿通孔40は、封緘具用突起38の下方とその両側の本体部34を切り欠くことによって形成されている。従って、封緘具を封緘具用突起38の一方の側面側から反対側の側面側に挿通することができる。封緘具挿通孔40の大きさは使用する封緘具によって適宜決定すればよい。前記封緘具用突起38は、溝27内をスライドさせたり着脱する際につまみとしても機能させることができる。
【0021】
次に、図9及び図10に示す蓋の第2実施形態について説明する。蓋20Aは、蓋20の溝27に代えて平行リブ41,41を設けたもので、他の構成については蓋20と同様であるから同一符号を付してその説明は重複を避けるために省略する。
【0022】
平行リブ41,41は、上面板23の略中央部に対向する側壁22,22間に設けられており、図示する実施形態では側壁22,22と同じ高さに形成されている。前記平行リブ41,41は、側壁22,22の高さよりも低く形成してもよい。前記平行リブ41,41は、溝27と同様に蓋固定具33をスライドさせるときのガイドとなるとともに蓋20Aの補強材となるものであり、第1実施形態では、上面板23を凹ませて形成した溝27によって蓋固定具33をガイドする構成としたが、この第2実施形態では、上面板23を凹ませることなく同一面上に平行リブ41,41を形成することによって、蓋固定具33をガイドするようにしたものである。従って、平行リブ41,41は、蓋固定具33を装着できる間隔を有していればよい。
【0023】
上記実施形態の溝27又は平行リブ41,41は、蓋固定具33をスムーズにスライドさせるために設けたものであるから、これらの溝27又は平行リブ41,41を省略して上面板23を平滑な水平面とし、封緘具用コ字状突起28のみを突設する構成とすることも可能である。
【0024】
次に、蓋と前記蓋を固定する蓋固定具の使用方法を上記第1実施形態を例に説明する。まず、図1及び図11に示すように、容器本体43の上面開口部に蓋20を嵌合する。容器本体43には、上端縁に水平フランジ44が設けられており、対向する側面上部中央にそれぞれ爪挿入孔45,45が穿設されている。前記水平フランジ44に蓋20の載置部21を載置するとともに、下向きフランジ25に水平フランジ44の外面を嵌合させながら、側壁22を容器本体43の上面開口部に嵌入することによって蓋20を嵌合する。
【0025】
次に、蓋固定具33の爪35を蓋20の爪挿入孔29と容器本体の爪挿入孔45に挿入する。その後、蓋固定具33を水平にしながら蓋固定具33の透孔37に蓋20の封緘具用コ字状突起28を挿入し、蓋固定具33全体を溝27に嵌入する。蓋固定具33を溝27に嵌入した後、蓋固定具33をスライドさせて爪36を蓋20の爪挿入孔30と容器本体の爪挿入孔45に挿入する。
【0026】
このようにして、蓋固定具33をスライドさせると、蓋固定具33の封緘具用突起38が蓋20の封緘具用コ字状突起28に接近し、一方の爪35が蓋20の爪挿入孔29と容器本体の爪挿入孔45に挿入したまま、他方の爪36が蓋20の爪挿入孔30と容器本体の爪挿入孔45に挿入されて蓋20が容器本体43に固定される。
【0027】
その後、図13以下に示す従来例と同様に、蓋20の封緘具用コ字状突起28の挿通孔28bと、蓋固定具33の封緘具用突起38の封緘具挿通孔40とに封緘具を挿通させて締結すればよい。図12は、封緘具にインシュロック52を用いて締結した場合の例である。
【0028】
即ち、インシュロック52を用いて締結するには、インシュロック52のバンド部を蓋20の封緘具用コ字状突起28の挿通孔28bに挿通し、さらに続けてバンド部を蓋固定具33の封緘具用突起38の挿通孔40に挿通する。次に、バンド部をインシュロック52の頭部のバンド挿入部に挿入して締結すればよい。インシュロック52により締結されると、ロック状態となりバンド部を切断しない限りロック状態を解除することができない。
【0029】
上記のように、この発明に係る蓋と前記蓋を固定する蓋固定具は、それぞれ別途形成されており、使用するときに組み合わせて使用するものであるから、安価に製造することができる。また、操作が簡単であり、爪が破損した場合にも蓋固定具を取り換えるだけで使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】この発明の一実施形態に係る蓋と蓋固定具と容器本体の関係を示す斜視図である。
【図2】蓋に蓋固定具を嵌入した状態の平面図である。
【図3】蓋の底面図である。
【図4】図2のA−A線における蓋の断面図である。
【図5】蓋の正面図である。
【図6】蓋固定具の平面図である。
【図7】蓋固定具の底面図である。
【図8】図6のB−B線断面図である。
【図9】第2実施形態の蓋を示す要部断面斜視図である。
【図10】図9におけるC−C線断面図である。
【図11】蓋を容器本体に嵌合した状態の斜視図である。
【図12】インシュロックにより封緘した封緘例を示す斜視図である。
【図13】一方側に固定爪を設け、他方側にスライド爪を設けた従来の蓋と容器本体を示す斜 視図である。
【図14】従来の蓋のスライド爪を容器本体に挿入した状態の要部断面図である。
【図15】従来の蓋の固定爪を容器本体に挿入した状態の要部断面図である。
【符号の説明】
【0031】
20:蓋
21:載置部
22:側壁
23:上面板
24:補強リブ
25:下向きフランジ
27:溝
28:封緘具用コ字状突起
29、30:爪挿入孔
31、32:透孔
33:蓋固定具
34:本体部
35,36:爪
37:透孔
38:封緘具用突起
39:リブ
40:封緘具挿通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
載置部の内側に下方に突出した側壁の下端に連続して設けた上面板に封緘具を装着する封緘具用コ字状突起を突設するとともに、前記側壁に爪挿入孔を穿設したことを特徴とする蓋。
【請求項2】
封緘具用コ字状突起は、前記上面板に設けた溝内に突設されており、溝の両端面における側壁に爪挿入孔を穿設したことを特徴とする請求項1に記載の蓋。
【請求項3】
封緘具用コ字状突起は前記上面板上の平行なリブの間に突設されており、平行なリブの間の側壁に爪挿入孔を穿設したことを特徴とする請求項1に記載の蓋。
【請求項4】
載置部の外周端に下向きのフランジを突設したことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の蓋。
【請求項5】
平面長方形状の板体からなる本体部の両端に爪を突設し、本体部に透孔を形成するとともに、前記透孔に隣接して封緘具用突起を設けたことを特徴とする蓋固定具。
【請求項6】
封緘具用コ字状突起に近い方の爪を他方の爪よりも長く形成したことを特徴とする請求項5に記載の蓋固定具。
【請求項7】
本体部の周縁は、周縁リブにより縁取られていることを特徴とする請求項5又は6に記載の蓋固定具

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2006−298406(P2006−298406A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−120167(P2005−120167)
【出願日】平成17年4月18日(2005.4.18)
【出願人】(000155229)株式会社明治ゴム化成 (63)
【Fターム(参考)】