説明

蓋付き容器

【課題】安定した段積みを行うことのできる蓋部材を備えた蓋付き容器を提供する。
【解決手段】蓋付き容器1は、上方に開口する略箱状の容器本体2と、容器本体2に被せられ、容器本体2の上縁部から上方に膨出した形状をなす蓋部材3とを備えている。蓋部材3は、容器本体2の内側空間の上方に位置する部位において水平方向に対して傾いた傾斜部31を備えるとともに、傾斜部31において当該傾斜部31の厚み方向に貫通する挿通開口部32が形成されている。さらに、挿通開口部32の周縁部のうち少なくとも上縁部を含む部位から蓋部材3の外方に向けてほぼ水平に延出する庇部33と、挿通開口部32の周縁部のうち庇部33が延設されていない残りの部位全域から蓋部材3の内方に向けてほぼ水平に延出する受部34とが設けられている。また、庇部33の突出方向先端縁と、受部34の突出方向先端縁とが、鉛直方向に延びる同一の仮想平面上に延在している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品の回収等に使用される蓋付き容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、資源ごみ等の回収に使用される容器、所謂ゴミ箱として、上方に開口する箱状の容器本体と、容器本体の開口部を覆うようにして容器本体に被せられ、容器本体の上縁部から上方に膨出した略ドーム形状をなす蓋部材とを備えたものが知られている。さらに、蓋部材を被せた状態でも容器本体に物品を投入できるように、蓋部材には、蓋部材の内側空間と外部とを連通させる投入口が形成されている。
【0003】
また一般に、上記のような蓋付き容器は、蓋部材の上面において別の物品が載置されたり、雨水や塵等が溜まったりしないように、基本的に、蓋部材の上面全域が傾斜をもって形成されている。ところが、傾斜部位に投入口を形成すると、投入口が上方にも開口することから、投入口を介して雨水や塵等が容器本体に侵入し易くなってしまうおそれがある。
【0004】
これに対し、投入口の周縁部から蓋部材の外方に向けてほぼ水平に突出する筒状部を設けることによって、投入口に雨水等が進入し難くなるように構成されたものがある(例えば、特許文献1等参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−45204号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された蓋部材同士を複数個重ねて段積みしようとしても、筒状部が邪魔になって上手く段積みすることができないおそれがある。このため、複数の蓋付き容器をまとめて運搬・保管する際の効率の悪化を招くおそれがある。また、特許文献1に記載された蓋部材全体を一体形成しようとする場合、蓋部材を成形する金型装置において、蓋部材の外側面及び内側面を成形する2つの金型の他に、筒状部の内周面等を成形するための金型(スライドコア)が必要になるため、コストアップ等を招くことが懸念される。
【0007】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、安定した段積みを行うことのできる蓋部材を備えた蓋付き容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下、上記目的等を解決するのに適した各手段につき項分けして説明する。なお、必要に応じて対応する手段に特有の作用効果等を付記する。
【0009】
手段1.上方に開口する略箱状の容器本体と、
前記容器本体に被せられ、前記容器本体の上縁部から上方に膨出した形状をなす蓋部材とを備え、
前記蓋部材は、前記容器本体の内側空間の上方に位置する部位において水平方向に対して傾いた傾斜部を備えるとともに、前記傾斜部において当該傾斜部の厚み方向に貫通する挿通開口部が形成され、
前記挿通開口部の周縁部のうち少なくとも上縁部を含む部位から前記蓋部材の外方に向けてほぼ水平に延出する庇部と、
前記挿通開口部の周縁部のうち前記庇部が延設されていない残りの部位(全域)から前記蓋部材の内方に向けてほぼ水平に延出する受部とを備え、
前記庇部の突出方向先端縁と、前記受部の突出方向先端縁とが、鉛直方向に延びる同一の仮想平面上に延在することを特徴とする蓋付き容器。
【0010】
手段1によれば、蓋部材の傾斜部に形成された挿通開口部の下縁部から蓋部材の内方に延出する受部の突出方向先端縁と、挿通開口部の上縁部から蓋部材の外方に延出する庇部の突出方向先端縁とが、鉛直方向に延びる同一の仮想平面上に延在することから、挿通開口部を鉛直方向から見ると、該挿通開口部が受部及び庇部によって塞がれているように視認される。一方、挿通開口部を水平方向(正面)から見ると、庇部と受部との間に挿通開口部を視認することができる。つまり、庇部の突出方向先端縁と、受部の突出方向先端縁とによって、蓋部材の内側空間と外部とを連通させ、物品を容器本体へ投入可能とする投入口が形成されている。そして、当該投入口に物品を通過させることで、該物品を容器本体に投入することができるようになっている。このため、蓋部材を被せた状態でも物品を容器本体に投入可能としつつ、投入口が上方に向けて開口するような形状を回避することで、投入口(挿通開口部)を介して容器本体に雨水や埃等が侵入してしまうといった事態を抑制することができる。
【0011】
さらに、鉛直方向において、庇部と受部とが重ならないため、蓋部材同士を段積みした場合に、上側の蓋部材の受部と、下側の蓋部材の庇部とが干渉してしまうといった事態を回避することができる。このため、蓋部材同士を、ほぼ鉛直方向にバランス良くスムースに段積みすることができる。従って、複数の蓋付き容器をまとめて運搬・保管する際の効率を向上させることができるとともに、出荷時等に蓋部材同士を段積みする際の作業性の向上等を図ることができる。
【0012】
また、庇部及び受部の先端縁が仮想の同一平面上にあることから、蓋部材の外側面を成形する第1金型と、蓋部材の内側面を成形する第2金型とを備える金型装置において、第1金型と第2金型とを型抜きの方向に対して直交する方向に当接させることで上記投入口を形成することができる。従って、第1金型と第2金型とで蓋部材を一体形成することができ、第1及び第2金型以外に投入口(庇部下面や受部上面)を形成するための金型を別途用意する必要がない。この点において、金型装置の簡素化を図ることができる。結果として、コストの削減、製造作業性の向上等を図ることができる。
【0013】
さらに、庇部及び受部の先端縁は鉛直方向に延びる仮想平面上に延在するようになっている。このため、蓋部材を成形する金型装置の型抜きの方向を、成形された蓋部材に対し、当該蓋部材の容器本体への装着状態において鉛直方向となる方向にすることができる。つまり、型抜きの方向が斜めであると、蓋部材において鉛直方向に延びる部位を形成しようとしても当該部位がアンダーカット形状になってしまう場合があるが、本手段ではかかる事態を回避することができる。従って、蓋部材の下縁部から下方に延出し、容器本体への装着状態において容器本体の上縁部に嵌合する嵌合部を設けることができ、蓋部材の水平方向への位置ずれを防止することができる。
【0014】
また、挿通開口部の上縁部から略水平に突出する庇部を設けることで、挿通開口部の上方の傾斜部に降った雨水等がそのまま投入口に向けて流れてしまうといった事態を抑制することができる。特に、庇部上面が側方に傾斜していたり、投入口から離間する方向に下方傾斜していたりする場合には、庇部に降った雨水等が受部に流れてしまうといった事態をより一層抑制することができる。
【0015】
さらに、受部を設けることによって、上面視で挿通開口部を覆うようにして設けられる庇部の突出長を短くすることができ、蓋部材の大型化を抑制することができる。また、物品の投入に際して、受部の上面で物品を案内することができ、本手段のように投入口が鉛直に切り立つ場合であっても物品を比較的投入し易くすることができる。
【0016】
手段2.前記庇部の突出方向先端縁と前記傾斜部との連接部には、前記庇部の突出方向先端縁と前記傾斜部とでなすコーナー部の内側領域を埋めるようにして補強部が形成されていることを特徴とする手段1に記載の蓋付き容器。
【0017】
手段2によれば、庇部の先端縁の両端部に対応して補強部を設けることによって、庇部の強度の向上を図ることができ、庇部に対して上方からの応力が付加された場合等に庇部が損傷してしまうといった事態を抑制することができる。また、補強部を設けることによって、庇部側方の傾斜部から投入口の直前方に回り込もうとするような雨水等を堰き止めたり、前記雨水等を投入口から遠ざけるように下方や側方に案内したりすることができる。従って、傾斜部や庇部に落下した雨水等が投入口の直前方(受部の先端縁)に落下して、投入口に侵入してしまうといった事態をより一層抑制することができる。
【0018】
手段3.前記受部の突出方向先端縁と前記傾斜部との連接部には、前記受部の突出方向先端縁と前記傾斜部とでなすコーナー部の内側領域を埋めるようにして補強部が形成されていることを特徴とする手段1又は2に記載の蓋付き容器。
【0019】
手段3によれば、受部の先端縁の両端部に対応して補強部を設けることによって、受部の強度の向上を図ることができ、受部が損傷してしまうといった事態を抑制することができる。また、当該補強部の形成部位は、庇部の突出方向先端部を下支えする部位でもあることから、庇部の強度の向上、庇部の変形防止等を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】蓋付き容器の斜視図である。
【図2】図1のA−A線断面図である。
【図3】図2のJ部を示す部分拡大断面図である。
【図4】容器本体の斜視図である。
【図5】蓋部材を上方から見た斜視図である。
【図6】蓋部材を下方から見た斜視図である。
【図7】挿通開口部周縁部位を示す部分拡大斜視図である。
【図8】図5のB−B線断面図である。
【図9】段積みされた蓋部材を示す斜視図である。
【図10】段積みされた蓋部材を示す断面図である。
【図11】段積みされた蓋付き容器を示す斜視図である。
【図12】金型装置の模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、一実施形態について図面を参照して説明する。図1、図2等に示すように、蓋付き容器1は、上方に開口する箱状の容器本体2と、容器本体2の開口を覆うようにして容器本体2に被せられる蓋部材3とを備えている。本実施形態では、蓋付き容器1は、例えば、屋外で空き缶或いは空のペットボトルを回収する目的で使用される。また、詳しくは後述するが、蓋部材3には、容器本体2に被せられた状態でも空き缶等の物品を容器本体2へ投入できるように円形の投入口5が形成されている。加えて、本実施形態の容器本体2及び蓋部材3は、それぞれポリプロピレンにより構成されている。
【0022】
図4等に示すように、容器本体2は、上方に開口する略直方体形状の収容部11と、収容部11の上縁部全周から開口部の外周方向に延出するフランジ部12と、フランジ部12の先端縁から下方に延出する折り返し部13とを備え、これらが一体的に形成されている。また、容器本体2には、図3に示すように、フランジ部12の下面と、折り返し部13の内周面と、収容部11の外周面との間を連結する補強リブ14が、フランジ部12の周方向において所定間隔毎に設けられている。加えて、収容部11は上方に向けて拡径するテーパ状に構成されている。このため、容器本体2同士を上下に段積みすることができるようになっている(図11参照)。
【0023】
図5、図6等に示すように、蓋部材3は、収容部11の開口形状(フランジ部12)に対応して長方形枠状をなす枠部21と、枠部21の外周縁から下方に延出する嵌合部22と、枠部21の内周縁から上方に膨出した略ドーム形状をなす蓋本体23とを備え、これらが一体的に形成されている。そして、図2に示すように、蓋部材3を容器本体2に被せる(装着する)と、枠部21がフランジ部12の上面に当接して支持されるとともに、嵌合部22が折り返し部13の外周側に嵌合することとなる。嵌合部22の存在によって、蓋部材3の容器本体2への装着状態において、蓋部材3の水平方向における位置ずれが防止されるとともに、蓋部材3と容器本体2との間のシール性が向上する。
【0024】
さらに、図3、図6に示すように、蓋部材3には、嵌合部22の内周面から突出する係止爪25が設けられており、蓋部材3の容器本体2への装着状態では、係止爪25が折り返し部13の下縁部に係止される。これにより、蓋部材3の脱落がより確実に防止されるようになっている。尚、係止爪25は、蓋部材3の相対する一対の短辺部において合計3つ設けられ、特に、図6に示すように、係止爪25が1つだけ設けられた短辺部には、係止爪25の両側方において切欠き部26が形成されている。従って、切欠き部26で挟まれた係止爪25を傾倒変位させることで、容器本体2に対して蓋部材3を着脱することができる。
【0025】
また、図5、図8等に示すように、蓋本体23は、基本的に湾曲した形状に構成されているが、蓋本体23の頂部と枠部21の一方の短辺部とにかけては、両者間を真っ直ぐに連結するようにして、枠部21の短辺部の内周側の縁部から枠部21の内周側かつ上方に傾斜して延びる略平板状の傾斜部31が形成されている。また、蓋本体23は、枠部21の内周縁から枠部21の内周側かつ上方に延出しており、枠部21の内周側の範囲に収まっている。
【0026】
さて、傾斜部31の略中央部(図8において符号Xで示す範囲)には、傾斜部31の厚み方向に貫通する楕円形の挿通開口部32が形成されている。本実施形態の挿通開口部32は、水平方向から正面視すると略正円状となっている。
【0027】
また、図8等に示すように、挿通開口部32の上半分の周縁部から蓋部材3の外方に向けて略水平に突出する断面略円弧状の庇部33が形成されている。以下、説明の便宜上、庇部33の突出方向を前方と言い、その反対方向を後方と言う。庇部33を設けることで、挿通開口部32の上方の傾斜部31に降った雨水等が前方の挿通開口部32に流れ込んでしまうといった事態を抑制することができる。特に、庇部33の上面は、断面円弧状をなして両側方に傾いているだけでなく、若干後方(投入口5から離間する方向)にも傾斜しているため、庇部33に落下した雨水等が前方の挿通開口部32側へ流れるといった事態がより確実に抑制されるようになっている。
【0028】
さらに、挿通開口部32の下半分の周縁部から蓋部材3の内方(後方)に向けて略水平に突出する断面略円弧状の受部34が形成されている。本実施形態では、庇部33の突出方向先端縁(前縁部)と、受部34の突出方向先端縁(後縁部)とが、鉛直方向に延びる同一の仮想平面上に延在するように構成されている。このため、挿通開口部32を鉛直方向から見ると、該挿通開口部32が受部34及び庇部33によって塞がれているように視認される。
【0029】
一方、挿通開口部32を正面から水平に見ると、庇部33と受部34との間に挿通開口部32を視認することができる。そして、庇部33の前縁部と、受部34の後縁部とで囲まれた領域に物品を通過させることで、該物品が容器本体2に投入されるようになっている。つまり、庇部33の突出方向先端縁と、受部34の突出方向先端縁とによって(図8において符号Yで示す範囲に)、蓋部材3の内側空間と外部とを連通させ、物品を容器本体2へ投入可能とする投入口5が形成されている。尚、受部34の上面は、若干前方に向けて下方傾斜している。このため、受部34に落下した雨水等が投入口5に案内されるといった事態が防止される。
【0030】
さらに、図7に示すように、本実施形態では、庇部33のうち投入口5を形成する突出方向先端縁(前縁)と傾斜部31との連接部には、庇部33の前縁と傾斜部31の上面とでなすコーナー部の内側領域を埋めるようにして補強部37が形成されている。補強部37は、側方から見ると略三角形状(R形状)をなし、上方から見ると下方に向けて受部34から遠ざかる方に幅が広くなる略台形状をなしている。このように、補強部37は、投入口5を画定する庇部33の前縁から前方に突出形成されていることから、庇部33と傾斜部31との連接部に沿って流れてきた雨水等を投入口5よりも下流側に受け流すことができる。尚、補強部37は、庇部33の前縁の両端部近傍にのみ形成されており、挿通開口部32の内周側(挿通開口部32の上方)にほぼ突出しないように構成されている。
【0031】
また、図7に示すように、受部34の上面と傾斜部31の上面との境界部には、間口が若干広げられるようにして、面取り加工が施されている。さらに、庇部33の下面と傾斜部31の下面との境界部の一部についても、庇部33の下方に位置する傾斜部31が斜めに削られる格好で面取り加工が施されている。但し、庇部33の前端部近傍部位においては、かかる面取り加工は施されていない。しかも、図7、図8に示すように、受部34の突出方向先端縁(後縁)と、傾斜部31の下面との境界部においては、受部34の突出方向先端縁と、傾斜部31の下面とでなすコーナー部を埋めるようにして補強部39が設けられている。
【0032】
また、本実施形態の蓋部材3は、鉛直方向において庇部33と受部34とが重ならないことから、図9、図10等に示すように、蓋部材3同士を同じ向きでほぼ鉛直方向に段積みすることができる。さらに、蓋本体23が枠部21の内周側に収まるため、図11に示すように、蓋部材3を裏返しにして(上下反対にして)、枠部21のうち通常であれば上方を向く面(裏返すことで下向きとなった面)を容器本体2のフランジ部12上面に支持させることで、蓋本体23を収容部11に挿入させるようにして、容器本体2に載せることができる。
【0033】
加えて、本実施形態における蓋部材3は、図12に示すように、蓋部材3の外側面を成形する第1金型42と、蓋部材3の内側面を成形する第2金型43とを備える金型装置41によって一体的に成形される。特に、投入口5に関しては、第1金型42と第2金型43とを型抜きの方向に対して直交する方向に当接させることで形成される。
【0034】
以上詳述したように、本実施形態によれば、庇部33の前縁部と受部34の後縁部とが鉛直方向に延びる仮想の同一平面上に延在するように構成されている。これにより、蓋部材3を被せた状態でも物品を容器本体2に投入可能としつつ、物品を容器本体2へ投入可能とする投入口5が上方に向けて開口するといった事態を回避することができる。従って、投入口5(挿通開口部32)を介して容器本体2に雨水や埃等が侵入してしまうといった事態を抑制することができる。
【0035】
さらに、鉛直方向において、庇部33と受部34とが重ならないため、蓋部材3同士を段積みした場合に、上側の蓋部材3の受部34と、下側の蓋部材3の庇部33とが干渉してしまうといった事態を回避することができる。このため、蓋部材3同士を、鉛直方向にバランス良く、スムースに段積みすることができる。従って、複数の蓋付き容器1をまとめて運搬・保管する際の効率を向上させることができるとともに、出荷時等に蓋部材3同士を段積みする際の作業性の向上等を図ることができる。
【0036】
また、庇部33及び受部34の先端縁が仮想の同一平面上にあることから、蓋部材3の外側面を成形する第1金型42と、蓋部材3の内側面を成形する第2金型43とを備える金型装置41において、第1金型42と第2金型43とを型抜きの方向に対して直交する方向に当接させることで投入口5を形成することができる。従って、第1金型42と第2金型43とで蓋部材3を一体形成することができ、第1及び第2金型42、43以外に投入口5(庇部33下面や受部34上面)を形成するための金型を別途用意する場合に比べ、金型装置41の簡素化を図ることができる。結果として、コストの削減、製造作業性の向上等を図ることができる。
【0037】
さらに、庇部33及び受部34の先端縁は鉛直方向に延びる仮想平面上に延在するようになっている。このため、蓋部材3を成形する金型装置41の型抜きの方向を、成形された蓋部材3に対し、当該蓋部材3の容器本体2への装着状態において鉛直方向となる方向にすることができる。つまり、型抜きの方向が斜めであると、蓋部材3において鉛直方向に延びる部位を形成しようとしても当該部位がアンダーカット形状になってしまう場合があるが、本実施形態ではかかる事態を回避することができる。従って、蓋部材3の下縁部から下方に延出し、容器本体2への装着状態において容器本体2の上縁部(折り返し部13)に嵌合する嵌合部22を設けることができ、蓋部材3の水平方向への位置ずれを防止することができる。
【0038】
加えて、受部34を設けることによって、例えば、庇部33だけで挿通開口部32を覆う(上面視で挿通開口部32が塞がれるように突出させる)場合に比べ、庇部33の突出長を短くすることができ、蓋部材3の大型化を抑制することができる。さらに、物品の投入に際して、受部34の上面で物品を案内することができ、本実施形態のように投入口5が鉛直に切り立つ場合であっても物品を比較的投入し易くすることができる。
【0039】
また、庇部33の前縁と傾斜部31の上面との連接部に補強部37が形成されているため、庇部33の強度の向上を図ることができ、庇部33に対して上方からの応力が付加された場合等に庇部33が損傷してしまうといった事態を抑制することができる。また、補強部37を設けることによって、庇部33側方の傾斜部31から投入口5の直前方に回り込もうとするような雨水等を堰き止めたり、前記雨水等を投入口5から遠ざけるように下方や側方に案内したりすることができる。従って、傾斜部31や庇部33に落下した雨水等が投入口5の直前方(受部34の先端縁)に落下して、投入口5に侵入してしまうといった事態をより一層抑制することができる。
【0040】
さらに、受部34の後縁と傾斜部31の下面との連接部に補強部39が設けられているため、受部34の強度の向上を図ることができ、受部34が損傷してしまうといった事態を抑制することができる。また、当該補強部39の形成部位は、庇部33の前端部を下支えする部位でもあることから、庇部33の強度の向上、庇部33の変形防止等を図ることができる。
【0041】
尚、上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施してもよい。勿論、以下において例示しない他の応用例、変更例も当然可能である。
【0042】
(a)蓋部材3の形状は特に限定されるものではなく、蓋本体23が枠部21よりも外周側にはみ出さないように構成されていれば適宜変更可能である。但し、上面において、極力水平面が形成されないように構成することが望ましい。例えば、傾斜部31の上辺部の位置を蓋部材3の長手方向にずらし、傾斜部31の角度をきつくしたり緩くしたりしてもよい。さらに、挿通開口部32が形成される傾斜部31は必ずしも平板状でなくてもよく、湾曲していてもよい。また、上記実施形態において、補強部37をより大きく形成したり、補強部37を省略したりすることとしてもよい。但し、型抜きを考慮すると、鉛直方向において受部34の上面と補強部37とが極力上下に重ならないように構成されていることが望ましい。加えて、係止爪25を省略することも可能である。
【0043】
また、上記実施形態では、庇部33は断面円弧状をなしているが、断面略へ字状等のその他の形状に構成することも可能である。但し、庇部33の上面に関しても、別の物品が載置されたり、雨水や塵等が溜まったりしないように、傾斜面として構成されることが望ましく、さらには、庇部33に落下した雨水が庇部33の前方ではなく側方に案内されるように側方に傾いて構成されることがより望ましい。
【0044】
(b)上記実施形態では、容器本体2及び蓋部材3はポリプロピレンにより構成されているが、ポリエチレン、PET、ポリアミド等その他の樹脂材料により構成されることとしてもよい。また、上記実施形態では、空き缶用のゴミ箱として具体化されているが、その他の物品(樹脂トレー、紙パック、使用済み電池等の資源ごみ、可燃ごみ、不燃ごみ等)の回収等に使用される蓋付き容器として適用することも可能である。
【0045】
さらに、投入口5の開口形状は特に限定されるものではなく、収容する物品の形状に応じて、例えば、長方形状としてもよい。尚、挿通開口部32(投入口5)の下縁を下に凸となる円弧状にする場合においては、受部34を設けなければ、庇部33の突出方向先端縁を鉛直方向に延びる仮想の平面上に延在させることができないことから、庇部33だけでなく受部34についても形成する必要が生じる。これに対し、挿通開口部32(投入口5)の下縁部が水平に延びている場合にのみ、受部34を省略しても、挿通開口部32の下縁部を除く部位から前方に向けて挿通開口部32の下縁部と同じ前後位置となるまで略水平に庇部33を突出させることで、庇部33の先端縁を鉛直方向に延びる仮想の平面上に延在させることができる。但し、庇部33の突出長を長くしたり、庇部33を大きくしたりする必要が生じ、蓋部材3の大型化を招くおそれがある。従って、庇部33及び受部34の両方を設けることが好ましい。また、庇部33及び受部34の両方を設けることで、投入口5の前後位置等を比較的自由に設定することができる。
【0046】
加えて、上記実施形態では、蓋部材3に対して投入口5が1つ形成されているが、複数形成してもよい。また、複数の投入口5が形成される場合、各投入口5の庇部33同士が完全に離間していてもよいし、投入口5同士が1枚の壁部を隔てて隣接するように庇部33を連続的に形成してもよい。
【符号の説明】
【0047】
1…蓋付き容器、2…容器本体、3…蓋部材、5…投入口、31…傾斜部、32…挿通開口部、33…庇部、34…受部、37…補強部、39…補強部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方に開口する略箱状の容器本体と、
前記容器本体に被せられ、前記容器本体の上縁部から上方に膨出した形状をなす蓋部材とを備え、
前記蓋部材は、前記容器本体の内側空間の上方に位置する部位において水平方向に対して傾いた傾斜部を備えるとともに、前記傾斜部において当該傾斜部の厚み方向に貫通する挿通開口部が形成され、
前記挿通開口部の周縁部のうち少なくとも上縁部を含む部位から前記蓋部材の外方に向けてほぼ水平に延出する庇部と、
前記挿通開口部の周縁部のうち前記庇部が延設されていない残りの部位から前記蓋部材の内方に向けてほぼ水平に延出する受部とを備え、
前記庇部の突出方向先端縁と、前記受部の突出方向先端縁とが、鉛直方向に延びる同一の仮想平面上に延在することを特徴とする蓋付き容器。
【請求項2】
前記庇部の突出方向先端縁と前記傾斜部との連接部には、前記庇部の突出方向先端縁と前記傾斜部とでなすコーナー部の内側領域を埋めるようにして補強部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の蓋付き容器。
【請求項3】
前記受部の突出方向先端縁と前記傾斜部との連接部には、前記受部の突出方向先端縁と前記傾斜部とでなすコーナー部の内側領域を埋めるようにして補強部が形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の蓋付き容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−184095(P2012−184095A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−49754(P2011−49754)
【出願日】平成23年3月8日(2011.3.8)
【出願人】(591006944)三甲株式会社 (380)
【Fターム(参考)】