説明

蓋付容器

【課題】電子レンジで加熱して冷却した後に蓋戻りをしない蓋付容器を提供すること。
【解決手段】蓋付容器1は、平面が矩形状とされた容器本体2と、平面が略矩形状とされた蓋体3とが略線状に形成されたつなぎ部4を介して一体的に形成されている。つなぎ部4は、その両端部41から所定の長さまで延びたスリット状の空隙部5Aを有する。空隙部5Aを除いたつなぎ部4の長手方向に沿った寸法の合計L1は、容器本体2および蓋体3の長辺方向の長さをLに対して50%以下、好ましくは、40%以下となるように形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓋と容器が一体的に形成された蓋付容器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スーパー、コンビニエンスストア等の店舗で弁当、焼きそば、たこ焼き、ピラフ等フードパックに入った食品を、電子レンジで加熱して食すような商品展開がなされている。単身者、共働き夫婦の増加などにより簡便性が求められ、食品メーカーもそれをターゲットに食品開発を積極的に展開している。味の改善、種類の豊富さが増し、今後さらにその需要は伸びるものと思われる。
これらの食品を収納するための容器はプラスチック製のものが多く、例えば、蓋と容器がヒンジ部をもって連結し、一体成形された蓋付容器はすでに公知で多数市場に出回っている。また、この形態の容器において更なる付加価値を与えるための改良も多種行われている。
例えば、収納物の外観を維持でき、ラップ包装が簡易的であるもの(特許文献1)、2重底、2重蓋のための形状提案(特許文献2)、密封性改良のためのヒンジ部、フランジ部の形状提案(特許文献3)および内容物の移動防止のための形状提案(特許文献4)などがある。
【0003】
また、これら食品形態の容器は、コンビニエンスストアなどにおいて電子レンジで再加熱してもらうパターンが多く、加熱時における容器の改良発明も行われており、特許文献5では、加熱により蓋が自動開封する蓋付容器が開発されている。
【0004】
【特許文献1】特開平4−267755号公報
【特許文献2】特開平4−6035号公報
【特許文献3】実公平6−6017号公報
【特許文献4】実公平7−2432号公報
【特許文献5】実公平7−1054号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、蓋付容器を電子レンジ等で加熱後、多少冷めた状態になった時に蓋を開けて食べようとすると、蓋戻りを起こし、非常に食べにくいという問題がある。これは、蓋を閉じた状態で加熱した後にそのまま冷却されることにより、蓋付容器が熱硬化されるために起こる。
特許文献1〜5で記載された蓋付容器では、蓋戻りを解消するという概念がなく、
蓋戻りして食べにくい状態が発生する。
【0006】
本発明の目的は、加熱して冷却した後に開封した蓋体が戻ることがない蓋付容器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の蓋付容器は、容器本体と蓋体とを備え、前記容器本体の開口縁部の一部と前記蓋体の縁部の一部が一方向に延びるつなぎ部を介して一体的に形成された蓋付容器であって、前記蓋体が前記容器本体へ戻ろうとする付勢力を阻止する付勢力阻止部が前記一方向に沿って形成されていることを特徴とする。
蓋付容器は、蓋体を閉じた状態で電子レンジ等で加熱され後に冷却されると、蓋体を開けても、熱硬化によって蓋体が閉じる方向へ付勢され、容器本体に収納された焼きそばなどの内容物が食べづらい状態となる。
この発明によれば、容器本体と蓋体とを連結するつなぎ部に付勢力阻止部を設けたから、付勢力阻止部により蓋体が容器本体に戻ろうとする付勢力が阻止され、蓋体は開いた状態を維持できることになる。
【0008】
本発明では、前記付勢力阻止部は、前記つなぎ部の端部を含む空隙部であり、前記空隙部を除いた前記つなぎ部の前記一方向に沿った寸法の合計が、前記容器本体の前記一方向に沿った長さ寸法の50%以下であることが好ましく、40%以下であることがより好ましい。
ここで、空隙部とは、スリットや打ち抜き(パンチ)等の適宜な手段により形成される孔部である。
空隙部を除いたつなぎ部の寸法の合計が容器本体の長さ寸法の50%を超えると、付勢力が十分に阻止されないので、蓋戻り現象、つまり、蓋体が閉じてしまう。
【0009】
前記付勢力阻止部は、前記つなぎ部の端部から所定の距離に形成された空隙部であり、前記空隙部を除いた前記つなぎ部の前記一方向に沿った寸法の合計が、前記容器本体の前記一方向に沿った長さ寸法の40%以下である構成が好ましい。
空隙部を除いたつなぎ部の寸法の合計が容器本体の長さ寸法の40%を超えると、付勢力が十分に阻止されないので、蓋戻り現象が生じる。
この発明によれば、つなぎ部の端部から所定の距離に空隙部が形成されるので、つなぎ部の端部から誤ってつなぎ部に亀裂が入ることがない。そのため、蓋付容器が取扱中に誤って破損することを防止できる。
【0010】
前記つなぎ部は前記一方向に沿って連続形成された湾曲部を有し、前記付勢力阻止部は、前記湾曲部の頂部において前記一方向に沿って設けられた凹部である構成が好ましい。
この発明によれば、凹部は、蓋付容器の成形時に同時に形成することができるので、手間や製造コストの低減が図れる。
【0011】
前記つなぎ部は前記一方向に沿って連続形成された湾曲部を有し、前記付勢力阻止部は、前記湾曲部の頂部において前記一方向に沿って設けられた凸部である構成が好ましい。
この発明では、凹部を湾曲部の頂部に形成した場合と同様の効果を奏することができる。
【0012】
蓋付容器を、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリスチレンシート、非晶ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン若しくはポリ塩化ビニル、またはこれらを発泡させたもののうちいずれか一以上を含むシートから形成することが好ましい。

ここで、ポリプロピレンとしては、例えば、ホモポリプロピレン、ランダムポリプロピレン、ブロックポリプロピレン等のポリプロピレン樹脂のほか、プロピレン共重合体が挙げられ、これらの一種を単独で使用してもよく、また、これらの二種以上を組み合わせて使用するようにしてもよい。
電子レンジ等で加熱することを考慮すれば、耐熱性の高いポリプロピレン系シートを用いることが好ましく、これらの材質のうち、コンビニエンスストアなどの店舗での展示において、視認性を上げるためには透明ポリプロピレンが好ましい。
【0013】
蓋付容器は、平均球晶半径が0.1μm以上4μm以下、シート断面の平均球晶数が600個/mm2以下、個体密度が0.895g/cm3以下、示差走査熱分析(DSC)曲線の最大吸熱ピークの融解エンタルピーΔHが90J/g未満、少なくとも片面の光沢が90%以上、かつ、前記最大吸熱ピークの低温側に1J/g以上の発熱ピークを有し、厚さ50μm以上である低結晶性ポリプロピレンシートから形成されることが好ましい。
平均球晶半径が4μmより大きいと、内部ヘイズが高くなり(透明性が低下して)好ましくない。より好ましくは、平均球晶半径3μm以下である。また、シート断面の平均球晶数が600個/mm2より多いと、シートの軟化点温度が高くなり好ましくない。より好ましくは、平均球晶数400個/mm2以下である。さらに、固体密度が0.895g/cm3より大きいと、密度が大きすぎる、すなわち、結晶化度が高すぎて好ましくない。そして、シートの厚さが50μm未満であると、熱成形した後に剛性を有する成形品(容器等)を造ることが困難になり好ましくない。
なお、本発明における低結晶性ポリプロピレンシートは、低結晶性ポリプロピレンの単層シート、低結晶性ポリプロピレンシートを含む多層シートのどちらでも構わない。
【0014】
この発明によれば、平均球晶半径が0.1μm以上4μm以下、平均球晶数600個/mm2以下、固体密度が0.895g/cm3以下という特性を有する造核剤非添加のポリプロピレンシートを使用する。したがって、加熱軟化点温度が低く、低温熱成形可能、かつ、内部ヘイズ(透明性)の良好なシートを得ることができる。また、特殊な成形装置を使用する必要もないから、製造コストの低減も図ることができる。さらに、このような低結晶性ポリプロピレンシートを熱成形することで、透明性および光沢の高い蓋付容器を得ることができる。
また、融解エンタルピーΔHが90J/g未満と比較的小さく、かつ、低温側で1J/g以上の発熱が見られるから、シートを軟化させるのに外部から供給しなければならない熱量が少なく、かつ、軟化時の加熱温度が比較的低いので、低温熱成形が一層容易になる。さらに、90%以上の光沢を有する低結晶性ポリプロピレンシートであるから、シートの光沢が高く、これを熱成形して得られる蓋付容器の光沢度も高くなるので、蓋付容器の商品価値が高くなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。各実施形態の説明において同一符号を付した部材は説明を省略もしくは簡略にする。
まず、本発明の第1実施形態を図1から図3に基づいて説明する。
[第1実施形態]
図1は第1実施形態にかかる蓋付容器において蓋が閉じた状態を示す斜視図、図2は第1実施形態の蓋付容器において蓋が開いた状態を示す斜視図である。
【0016】
図1および図2の外嵌合容器において、蓋付容器1は、平面が矩形状とされた容器本体2と、平面が略矩形状とされた蓋体3とが略線状に形成されたつなぎ部4を介して一体的に形成された容器である。
容器本体2は焼きそばなどの内容物を収納するための皿状部2Aと、この皿状部2Aの開口部21の周縁に沿って形成された突起部22とを有する。突起部22の外周に沿って開口縁部23が形成されている。
蓋体3は縁部31を有し、縁部31の内周側には、蓋体3を閉じる際に容器本体2の突起部22と嵌合するような嵌合部32が形成されている。蓋体3を閉じると、開口縁部23と縁部31が密着し、かつ、突起部22の外周面と上面が嵌合部32と密着して、蓋付容器1は完全に閉じられる。
つなぎ部4とは開口部21を挟んで反対側に位置した縁部31の両角部には、それぞれ網目状のつまみ部24,33がそれぞれ形成されている。これらのつまみ部24,33は平面略三角形に形成されており、その正面が網目状になっている。これらのつまみ部24,33を上下に開いて、蓋付容器1を開けることができる。
【0017】
蓋付容器1は合成樹脂製シートから形成される。本実施形態で使用できる合成樹脂は、ホモポリプロピレン、ランダムポリプロピレン、ブロックポリプロピレン等のポリプロピレン(PP)のほか、ポリスチレン(PS)、ポリスチレンシート(OPS)、非晶ポリエチレンテレフタレート(A−PET)、ポリエチレン(PE)、ポリ塩化ビニル(PVC)などを1種又は2種以上組み合わせて用いることができ、さらには、これらの合成樹脂を発泡させたものも有用である。
これらの合成樹脂には、タルク、炭酸カルシウム等の無機フィラーを混入したものが使用できる。
このようにして得られた合成樹脂製シートは単層で使用してもよく、また、複数を組み合わせて多層構成として使用することもできる。
このような合成樹脂製シートの製造方法としては、通常の押出機にて溶融、Tダイにて平板化したメルトウェブをエアナイフ法やタッチロール法で冷却して得ることができる。
【0018】
合成樹脂製シートとして低結晶性ポリプロピレンシートを用いた場合には、平均球晶半径が0.1μm以上4μm以下、好ましくは、3μm以下である。平均球晶半径が4μmより大きいと、内部ヘイズが高くなり好ましくない。
シート断面の平均球晶数は600個/mm2以下、より好ましくは、400個/mm2以下である。シート断面の平均球晶数が600個/mm2より多いと、シートの軟化点温度が高くなり好ましくない。
シートの個体密度は0.895g/cm3以下である。固体密度が0.895g/cm3より大きいと、密度が大きすぎる、すなわち、結晶化度が高すぎて好ましくない。
【0019】
合成樹脂製シートの示差走査熱分析(DSC)曲線の最大吸熱ピークの融解エンタルピーΔHは90J/g未満であり、少なくとも片面の光沢が90%以上、かつ、前記最大吸熱ピークの低温側に1J/g以上の発熱ピークを有する。
融解エンタルピーΔHが90J/g未満と比較的小さく、かつ、低温側で1J/g以上の発熱が見られるから、シートを軟化させるのに外部から供給しなければならない熱量が少なく、かつ、軟化時の加熱温度が比較的低いので、低温熱成形が一層容易になる。低結晶性ポリプロピレンシートの光沢が90%未満であると、シートを熱成形して得られる蓋付容器の光沢度が低いものとなり、蓋付容器自体の商品価値が低くなる。
低結晶ポリプロピレンシートの厚さは50μm以上である。シートの厚さが50μm未満であると、熱成形した後の蓋付容器の剛性が不十分となる。
このような合成樹脂製シートの製造方法としては、押出機にて溶融、Tダイにて平板化したPPのメルトウェブをベルト急冷法にて得る方法(例えば、特開2001-213976参照)を用いると、視認性が向上するので特によい。
【0020】
図3には第1実施形態にかかる蓋付容器1の要部が示されている。図3は蓋付容器1の蓋を開いた状態を示す平面図である。
図3において、つなぎ部4は、容器本体2と蓋体3との長辺方向に延びて形成されており、その両端部41から所定の長さまで延びて空隙部5Aがそれぞれ形成されている。空隙部5Aは蓋体3が容器本体2へ戻ろうとする付勢力を阻止する付勢力阻止部として機能するものであり、第1実施形態では、各空隙部5Aはスリットとして形成されている。
第1実施形態では、空隙部5Aを除いたつなぎ部4の長手方向に沿った寸法の合計L1
は、容器本体2および蓋体3の長辺方向の長さをLに対して50%以下、好ましくは、40%以下であって、5%以上である。つまり、0.05≦(L1/L)≦0.5、好ましくは、0.05≦(L1/L)≦0.4である。
【0021】
ここで、空隙部5Aを除いたつなぎ部4の長手方向に沿った寸法の合計L1が容器本体2および蓋体3の長辺方向の長さをLに対して50%を超えると、付勢力を十分に阻止することができず、その付勢力により蓋戻りが生じてしまう。この蓋戻りを確実に阻止するには、つなぎ部4の空隙部5Aを除いた合計L1が容器本体2および蓋体3の長辺方向の長さLに対して40%以下にする。また、蓋体3が容器本体2から取れないようにするためにL1のLに対する割合は5%以上である。
【0022】
第1実施形態の蓋付容器1は、合成樹脂製シートから通常の真空成形、真空圧空成形、熱板圧空成形等を用いることにより製造する。
この製造工程において、空隙部5Aを形成するためには、トムソン刃などが用いられるが、通常の真空成形などで成形された蓋付容器1の外周の最終打ち抜きと同時に空隙部5Aを形成してもよいし、蓋付容器1の外周の最終打ち抜きの前工程に、空隙部5Aをトムソン刃などにより形成し、その後外周を最終的に打ち抜くような2段階の工程でもよい。第1実施形態では、空隙部5Aを形成するのにトムソン刃に代えてダイセットやパンチ等を用いることができる。
【0023】
このようにして得られた蓋付容器1では、容器本体2に焼きそばなどの内容物を収納して蓋をした状態で、電子レンジで加熱する。その後、蓋付容器1が冷却された後、蓋体3を容器本体2に対して開くと、容器自体の熱硬化によって蓋体3がつなぎ部4を回動中心として閉じる方向へ付勢されるが、第1実施形態では、空隙部5Aにより、蓋体3の付勢力が阻止される。つまり、つなぎ部4には空隙部5Aが形成されているため、蓋体3が容器本体2に対して戻ろうとする力が働くのはつなぎ部4の空隙部5Aを除いた部分のみであり、空隙部5Aがある部分は蓋体3が戻ろうとする力が容器本体2に伝達されない。そのため、蓋体3が戻ろうとする付勢力は空隙部5Aで阻止され、蓋体3が開いた状態が維持される。
【0024】
従って、第1実施形態によれば、次の作用効果を奏することができる。
(1)容器本体2と蓋体3とがつなぎ部4を介して一体的に形成された蓋付容器1であって、蓋体3が容器本体2へ戻ろうとする付勢力を阻止する付勢力阻止部として空隙部5Aを形成したから、空隙部5により蓋体3が容器本体2に戻ろうとする付勢力が阻止され、蓋体2は開いた状態を維持できる。従って、蓋付容器1を電子レンジで加熱後冷却しても、蓋戻りがないので、容器本体2に収納された焼きそばなどの内容物が非常に食べやすくなる。
【0025】
(2)空隙部5Aはつなぎ部5の端部を含む形状であり、空隙部5Aを除いたつなぎ部4の容器長辺方向に沿った寸法の合計L1が容器本体2の長辺方向に沿った長さ寸法Lの50%以下としたから、蓋戻り現象を確実に阻止することができる。
(3)蓋付容器1を、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリスチレンシート、非晶ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン若しくはポリ塩化ビニル、またはこれらを発泡させたもののうちいずれか一以上を含む合成樹脂製シートから形成したから、蓋付容器1が電子レンジでの加熱に耐えることができる。
【0026】
(4)空隙部5Aをスリットから形成したから、空隙部5Aが成形しやくなり、蓋付容器1を簡単に製造することができる。また、スリットは、トムソン刃などの位置を変更することで、スリット長さを調整しやすいことから、容器本体2の長辺方向寸法Lの変更に合わせてスリットの長さを調整し、空隙部5Aを除いたつなぎ部4の容器長辺方向に沿った寸法L1を適正なものにすることができる。
【0027】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について図4に基づいて説明する。
図4は第2実施形態の平面図である。第2実施形態ではつなぎ部4に形成された空隙部5Bの形状以外は、第1実施形態と同様の構成である。
第2本実施形態では、空隙部5Bは、つなぎ部4の端部41から所定の長さまで打ち抜かれたもので、その平面形状が円弧状である。
第2実施形態においても、第1実施形態と同様に、空隙部5Bを除いたつなぎ部4の容器長辺方向に沿った寸法の合計L1が容器本体2の長辺方向に沿った長さ寸法Lの50%以下、好ましくは40%以下である。
第2実施形態の空隙部5Bは、例えば、ダイセットなどにより形成することができる。
従って、第2実施形態では、第1実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0028】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態について図5に基づいて説明する。
図5は第3実施形態の平面図である。第3実施形態ではつなぎ部4に形成された空隙部5Cの形状以外は、第1実施形態と同様の構成である。
第3本実施形態では、空隙部5Cは、つなぎ部4の一方向に沿って形成されたミシン目状に形成された複数のスリットであり、その両側に位置するスリットは、つなぎ部4の端部41をそれぞれ含んでいる。隣り合うスリットの間の長さをL1、L2、L3、L4とすると、L1+L2+L3+L4の長さの合計は、容器本体2の長辺方向長さLの50%以下、好ましくは、40%以下である。
従って、第3実施形態では、第1実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0029】
[第4実施形態]
次に、本発明の第4実施形態について図6に基づいて説明する。
図6は第4実施形態の平面図である。第4実施形態ではつなぎ部4に形成された空隙部5Dの形状以外は、第1実施形態と同様の構成である。
第4実施形態では、空隙部5Dは、つなぎ部4の内部に形成されたスリットであり、つなぎ部4の端部41を含んでいない。ここで、一方の端部41から空隙部5Dの一端までの長さをL1、他方の端部41から空隙部5Dの他端までの長さをL2とすると、つなぎ部4の空隙部5Dを除く寸法の合計の長さ(L1+L2)は、容器本体2の長辺方向の長さLに対して40%以下である。40%を超えると、付勢力が十分に阻止されず、蓋体3が閉じてしまう。下限値は特に定めないが、蓋付容器1の外観、機能性が劣らない程度であればよく、例えば、5%以上が好ましい。
【0030】
従って、本実施形態によれば、第1実施形態の(1)(3)(4)と同様の作用効果を奏することができる他、次の作用効果を奏することができる。
(5)つなぎ部4の端部41から所定の寸法離れて空隙部5Dが形成されるので、つなぎ部4の端部から誤って亀裂が入ることがない。つまり、端部41を含むスリットを形成すると、蓋体3と容器本体2とに互いに離れる力が誤ってかかると、スリットから亀裂が生じる恐れがあり、蓋付容器が破損することにもなりかねないが、本実施形態では、端部41にスリットが面していないので、このような不都合を回避することができる。
【0031】
[第5実施形態]
次に、本発明の第5実施形態について図7に基づいて説明する。
図7は第5実施形態の平面図である。第5実施形態ではつなぎ部4に形成された空隙部5Eの形状以外は、第4実施形態と同様の構成である。
本実施形態では、空隙部5Eは、つなぎ部4の内部に形成された平面長円状であり、つなぎ部4の端部41を含んでいない。
つなぎ部4の一方の端部41から空隙部5Eの一端までの長さをL1、他方の端部41から空隙部5Eの他端までの長さをL2とすると、つなぎ部4の空隙部5Eを除く長さの合計(L1+L2)は、容器本体2の長辺方向の長さLの40%以下である。
本実施形態の空隙部5Eは、パンチなどにより形成することができる。
本実施形態によれば、第4実施形態と同じ作用効果を奏することができる。
【0032】
[第6実施形態]
次に、本発明の第6実施形態について図8に基づいて説明する。
図8は第6実施形態の平面図である。第6実施形態ではつなぎ部4に形成された空隙部5Fの形状以外は、第1実施形態と同様の構成である。
本実施形態では、空隙部5Fは、つなぎ部4の一方向に沿って断続して形成された複数の打ち抜きであり、両側に配置された打ち抜きも端部41を含んでいない。空隙部5Fを構成する打ち抜きは平面円形である。
ここで、つなぎ部4の一方の端部41から最も近いの打ち抜きまでの長さをL1、各打ち抜き間の長さを順にL2、L3、L4、最後の打ち抜きから他方の端部41までの長さをL5とすると、つなぎ部4の空隙部5Fを除く長さの合計(L1+L2+L3+L4+L5)は、容器本体2の長辺方向の長さLの40%以下である。
従って、本実施形態によれば、空隙部5Fにより、第5実施形態と同じ作用効果を奏することができる。
【0033】
[第7実施形態]
次に、本発明の第7実施形態について図9から図11に基づいて説明する。
図9は第7実施形態の平面図、図10は図9の側面図、図11は第7実施形態の要部拡大断面図である。
これらの図において、蓋付容器1は、容器本体2と蓋体3を備え、つなぎ部4を介して一体的に形成されている。つなぎ部4は、その長手方向、つまり、容器本体2の長辺方向に沿って連続形成された湾曲部6を有している。この湾曲部6の頂部に湾曲部6より曲率半径が小さい凹部7が連続形成されている。この凹部7は蓋体3が容器本体2へ戻ろうとする付勢力を阻止する付勢力阻止部として機能する。つまり、蓋付容器1が電子レンジで加熱して冷却された後、蓋体3を容器本体2に対して開くと、容器自体の熱硬化によって蓋体3がつなぎ部4を回動中心として閉じる方向へ付勢されるが、凹部7によりこの付勢力が緩和されることで蓋体3が戻ろうとする力が容器本体2に伝達されない。そのため、蓋体3が戻ろうとする付勢力は凹部7で阻止され、蓋体3が開いた状態が維持される。
【0034】
第7実施形態では、凹部7は、蓋付容器1を通常の真空成形、真空圧空成形、熱板圧空成形等により成形する際に、一体的に成形される。
第7実施形態によれば、凹部7が付勢力阻止部として機能するから、第1実施形態と同じ作用効果を奏することができる他、次の作用効果を奏することができる。
(6)つなぎ部4は長手方向に沿って連続形成された湾曲部6を有し、この湾曲部6の頂部において前記長手方向に沿って設けられた凹部7を付勢力阻止部としたから、凹部7を蓋付容器1の成形時に同時に形成することができるので、手間や製造コストの低減が図れる。
【0035】
[第8実施形態]
次に、本発明の第8実施形態について図12から図14に基づいて説明する。第8実施形態は第7実施形態に凹部7に代えて凸部を形成した点が異なるものであり、他の構成は第7実施形態と同じである。
図12は第8実施形態の平面図、図13は図12の側面図、図14は第8施形態の要部拡大断面図である。
これらの図において、つなぎ部4は容器本体2の長辺方向に沿って連続形成された湾曲部6を有しており、この湾曲部6の頂部に小さな凸部8が形成されている。この凸部8は蓋体3が容器本体2へ戻ろうとする付勢力を阻止する付勢力阻止部として機能する。
第8実施形態では、凸部8は、蓋付容器1を通常の真空成形、真空圧空成形、熱板圧空成形等により成形する際に、一体的に成形される。
第8実施形態によれば、凸部8が付勢力阻止部として機能するから、第7実施形態と同じ作用効果を奏することができる。
【0036】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、蓋付容器1の構成に突起部22と嵌合部32を有する外嵌合容器としたが、容器本体2と蓋体3の嵌合状態を逆転させた内嵌合容器でもよく、また、これらはなくてもよい。この場合、蓋体3を閉じる際には、開口縁部23と縁部31を密着させて、ホッチキスまたはテープなどでとめて蓋体3が開かないようにする。
【実施例】
【0037】
次に、本発明の効果を確認するために実施例について説明する。なお、本発明はその要旨を超えない限りこれらの実施例に限定されるものではない。
各実施例において、それぞれ容器本体2の縦幅寸法(長辺方向寸法)を185cmとし、蓋付容器1の蓋体3を開いた状態(例えば、図3参照)において、容器本体2および蓋体3横幅寸法とつなぎ部4の幅寸法との合計寸法を238cmとした。蓋付容器1に空隙部5A〜5Fを形成し、空隙部5A〜5Fの寸法の割合による蓋戻りの影響を確認した。
【0038】
[実施例1]
第1実施形態で説明した、つなぎ部4の端部を含むスリット状の空隙部5Aを有する蓋付容器。
【0039】
[実施例2]
第4実施形態で説明した、つなぎ部4の端部を含まない空隙部5Dを有する蓋付容器。
【0040】
上記形状を有する蓋付容器1について、スリットの寸法を変えて、100mlの水を容器に入れ、蓋を閉じた状態で1分半加熱(100℃)後、蓋戻りの評価を10回ずつ行った。評価内容を以下の表1および表2に示す。
<蓋戻りの評価>
○:蓋がほぼ180°開いた。
×:蓋が閉じた。
△:蓋が5回閉じた。
【0041】
【表1】

【0042】
【表2】

【0043】
実施例1では、残幅が50%以下では蓋戻りがなかった。
実施例2では、残幅が43%では蓋戻りする可能性があり、確実性がなかったが、40%以下になると確実に蓋戻りしなかった。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、焼きそば、弁当等の食品を収納する蓋付容器に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の第1実施形態にかかる蓋付容器を示すもので蓋を閉じた状態の斜視図。
【図2】第1実施形態の蓋付容器において蓋が開いた状態を示す斜視図。
【図3】第1実施形態にかかる蓋付容器において蓋を開いた状態を示す平面図。
【図4】本発明の第2実施形態を示すもので図3に相当する平面図。
【図5】本発明の第3実施形態を示すもので図3に相当する平面図。
【図6】本発明の第4実施形態を示すもので図3に相当する平面図。
【図7】本発明の第5実施形態を示すもので図3に相当する平面図。
【図8】本発明の第6実施形態を示すもので図3に相当する平面図。
【図9】本発明の第7実施形態にかかる蓋付容器において蓋を開いた状態を示す平面図。
【図10】図9の側面図。
【図11】第7実施形態の要部拡大断面図。
【図12】本発明の第8実施形態にかかる蓋付容器において蓋を開いた状態を示す平面図。
【図13】図12の側面図。
【図14】第8実施形態の要部拡大断面図。
【符号の説明】
【0046】
1 …蓋付容器
2 …容器本体
21…開口部
22…突起部
23…開口縁部
3 …蓋体
31…縁部
32…嵌合部
4 …つなぎ部
41…端部
5A、5B、5C、5D、5E、5F…空隙部
6 …湾曲部
7 …凹部
8 …凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器本体と蓋体とを備え、前記容器本体の開口縁部の一部と前記蓋体の縁部の一部が一方向に延びるつなぎ部を介して一体的に形成された蓋付容器であって、
前記蓋体が前記容器本体へ戻ろうとする付勢力を阻止する付勢力阻止部が前記一方向に沿って形成されていることを特徴とする蓋付容器。
【請求項2】
請求項1に記載の蓋付容器において、
前記付勢力阻止部は、前記つなぎ部の端部を含む空隙部であり、前記空隙部を除いた前記つなぎ部の前記一方向に沿った寸法の合計が、前記容器本体の前記一方向に沿った長さ寸法の50%以下であることを特徴とする蓋付容器。
【請求項3】
請求項1に記載の蓋付容器において、
前記付勢力阻止部は、前記つなぎ部の端部から所定の距離に形成された空隙部であり、前記空隙部を除いた前記つなぎ部の前記一方向に沿った寸法の合計が、前記容器本体の前記一方向に沿った長さ寸法の40%以下であることを特徴とする蓋付容器。
【請求項4】
請求項1に記載の蓋付容器において、
前記つなぎ部は前記一方向に沿って連続形成された湾曲部を有し、前記付勢力阻止部は、前記湾曲部の頂部において前記一方向に沿って設けられた凹部であることを特徴とする蓋付容器。
【請求項5】
請求項1に記載の蓋付容器において、
前記つなぎ部は前記一方向に沿って連続形成された湾曲部を有し、前記付勢力阻止部は、前記湾曲部の頂部において前記一方向に沿って設けられた凸部であることを特徴とする蓋付容器。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載の蓋付容器において、
ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリスチレンシート、非晶ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン若しくはポリ塩化ビニル、またはこれらを発泡させたもののうちいずれか一以上を含むシートからなることを特徴とする蓋付容器。
【請求項7】
請求項1から請求項5のいずれかに記載の蓋付容器において、
平均球晶半径が0.1μm以上4μm以下、シート断面の平均球晶数が600個/mm2以下、個体密度が0.895g/cm3以下、示差走査熱分析(DSC)曲線の最大吸熱ピークの融解エンタルピーΔHが90J/g未満、少なくとも片面の光沢が90%以上、かつ、前記最大吸熱ピークの低温側に1J/g以上の発熱ピークを有し、厚さ50μm以上である低結晶性ポリプロピレンシートからなることを特徴とする蓋付容器

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2007−302285(P2007−302285A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−131973(P2006−131973)
【出願日】平成18年5月10日(2006.5.10)
【出願人】(500163366)出光ユニテック株式会社 (128)
【Fターム(参考)】