説明

薄切片標本作製装置及び薄切片標本作製方法

【課題】薄切片を基板上に、基板に対して予め定められた向きで確実に載置すること。
【解決手段】包埋ブロックBから切削され、搬送手段3で搬送された矩形状の薄切片Mを、搬送手段から離間して配置された矩形状の基板Gに受け渡して薄切片標本を作製する装置であって、薄切片が着脱可能に定着される定着面5を有する中継体6と、搬送手段と基板との間で中継体を移動させると共に、中継体を定着面に直交する回転軸37A回りに回転させる移動回転手段7と、移動回転手段により、中継体を搬送手段に移動させ、搬送手段で搬送された薄切片を定着面で受け取って定着させた後、中継体を基板に移動させ、定着面に定着された薄切片を離脱させて基板に受け渡す制御部と、を備え、制御部は、薄切片を基板に受け渡す前に、予め設定された定着面及び薄切片の相対的な回転軸回りの位置に基づいて移動回転手段により中継体を回転させる薄切片標本作製装置1を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄切片標本作製装置及び薄切片標本作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、理化学実験や顕微鏡観察に用いられる薄切片標本を作製する装置として、ミクロトームが一般的に知られている。この薄切片標本は、厚さが数μm(例えば、3μm〜5μm)の矩形状の薄切片を、スライドガラス等の矩形状の基板上に固定させたものである。ここで、ミクロトームを利用して薄切片標本を作製する一般的な方法について説明する。
【0003】
まず、ホルマリン固定された生物や動物等の生体試料をパラフィン置換した後、更に周囲をパラフィンで固めて強固にして、直方体状の包埋ブロックを作製する。次に、この包埋ブロックを専用の薄切り装置であるミクロトームにセットして、粗削りを行う。この粗削りによって、包埋ブロックの表面が平滑面となると共に、実験や観察の対象物である包埋された生体試料の観察したい面が表面に露出した状態となる。
【0004】
粗削りが終了した後、本削りを行う。これは、ミクロトームが有する切断刃により、包埋ブロックを上述した厚みで極薄にスライスする工程である。これにより、目的の面を持った薄切片を得ることができる。この際、包埋ブロックをミクロンオーダで制御し、薄くスライスすることで、薄切片の厚みを細胞レベルの厚みに近付けることができるので、より観察し易い薄切片標本を得ることができる。よって、可能な限り厚さが制御された薄い薄切片を作製することが求められている。なお、この本削りは、必要枚数の薄切片が得られるまで連続して行う。
【0005】
次いで、本削りによって得られた薄切片を伸展させる伸展工程を行う。つまり、本削りによって作製された薄切片は、上述したように極薄の厚みでスライスされたものであるので、皺がついた状態や、丸まった状態(例えば、Uの字状)となってしまう。そこで、この伸展工程によって、皺や丸み等の変形を取って伸ばす。この際、例えば、本削りによって得られた薄切片を水に浮かべることで、生体試料を包埋しているパラフィン同士のくっつきを防止しながら、薄切片の大きな皺や丸みを取ることができる。
そして、水面上の薄切片をスライドガラス等の基板で掬って該基板上に載置する。この結果、薄切片標本を作製することができる。
【0006】
以上に示した過程において、薄切片を基板で掬って該基板上に載置する際に、基板に対する薄切片の向きが水面上でばらつくため、基板で掬い上げた薄切片の一部がその基板からはみ出てしまい、基板上に載置できないことがある。そこで、下記特許文献1に示されるように、包埋ブロックから作製された薄切片を、予め定められた向きに整えながら基板で掬い取る位置まで搬送する装置が知られている。この装置は、底面と対向する2つの側面とで囲まれた空間に液体が貯留され、搬送ポイント及び処理ポイントを通過するように配置された水路と、貯留された液体を水路に沿って搬送ポイントから処理ポイントに向けて流動させ、薄切片を液体の流れに乗せて移動させる流動手段とを備えている。また、前記水路は、薄切片が処理ポイントに達したときに、該薄切片の向きが予め定められた向きとなるように姿勢を調整しながら移動させる。この装置によれば、処理ポイントまで搬送された薄切片を、1枚1枚薄切片の向きを確認せずに掬い取り、薄切片を基板上に確実に載置することができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−026176号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前記従来の装置では、薄切片を液体の流れに乗せて移動させることから、水路に予期せぬ外力などが加わり液体の流れに乱れが生じた場合に、処理ポイントに達する薄切片を、前記予め定められた向きに高精度に調整することが困難である。そのため、この薄切片を基板で掬い上げたときに、基板に対する薄切片の相対的な向きが予め定められた向きにならず、薄切片を基板上に確実に載置することはやはり困難であった。
【0009】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、薄切片を基板上に、基板に対して予め定められた向きで確実に載置することができる薄切片標本作製装置及び薄切片標本作製方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提案している。
本発明に係る薄切片標本作製装置は、生体試料が包埋された包埋ブロックから切削され、搬送手段で搬送された矩形状の薄切片を、前記搬送手段から離間して配置された矩形状の基板に受け渡して薄切片標本を作製する薄切片標本作製装置であって、前記薄切片が着脱可能に定着される定着面を有する中継体と、前記搬送手段と前記基板との間で前記中継体を移動させると共に、前記中継体を前記定着面に直交する回転軸回りに回転させる移動回転手段と、前記移動回転手段により、前記中継体を前記搬送手段に移動させ、前記搬送手段で搬送された前記薄切片を前記定着面で受け取って定着させた後、前記中継体を前記基板に移動させ、前記定着面に定着された前記薄切片を離脱させて前記基板に受け渡す制御部と、を備え、前記制御部は、前記薄切片を前記基板に受け渡す前に、予め設定された前記定着面及び前記薄切片の相対的な前記回転軸回りの位置に基づいて前記移動回転手段により前記中継体を回転させることを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る薄切片標本作製方法は、生体試料が包埋された包埋ブロックから切削された矩形状の薄切片を搬送する搬送手段と、前記薄切片が着脱可能に定着される定着面を有する中継体と、前記搬送手段から離間して配置された矩形状の基板と前記搬送手段との間で前記中継体を移動させると共に、前記中継体を前記定着面に直交する回転軸回りに回転させる移動回転手段と、を備える薄切片標本作製装置を用いて、前記搬送手段で搬送された前記薄切片を前記基板に受け渡して薄切片標本を作製する薄切片標本作製方法であって、前記移動回転手段により、前記中継体を前記搬送手段に移動させ、前記搬送手段で搬送された前記薄切片を前記定着面で受け取って定着させる受取工程と、前記受取工程の後、前記移動回転手段により、前記中継体を前記基板に移動させ、前記定着面に定着された前記薄切片を離脱させて前記基板に受け渡す受渡工程と、を備え、前記受取工程と前記受渡工程の間に、予め設定された前記定着面及び前記薄切片の相対的な前記回転軸回りの位置に基づいて前記移動回転手段により前記中継体を回転させる回転工程を更に備えていることを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、受取工程と受渡工程の間に、予め設定された定着面及び薄切片の相対的な回転軸回りの位置に基づいて移動回転手段により中継体を回転させる回転工程を行うので、受渡工程において基板に対する薄切片の相対的な向きが予め定められた向きになるように回転させることが可能となる。しかも、薄切片が定着面に定着されていることから前記従来技術のように液体の流れに影響されることが無いので、受渡工程において、薄切片を基板上に、基板に対して予め定められた向きで確実に載置することができる。
【0013】
また、本発明に係る薄切片標本作製装置では、前記薄切片が定着された前記定着面を撮像する撮像手段を備え、前記制御部は、前記予め設定された前記定着面及び前記薄切片の相対的な前記回転軸回りの位置を表す基準データと前記撮像手段で得られた撮像データとに基づいて前記移動回転手段により前記中継体を回転させても良い。
【0014】
また、本発明に係る薄切片標本作製方法では、前記薄切片が定着された前記定着面を撮像する撮像工程を備え、前記回転工程は、前記予め設定された前記定着面及び前記薄切片の相対的な前記回転軸回りの位置を表す基準データと前記撮像工程で得られた撮像データとに基づいて前記移動回転手段により前記中継体を回転させても良い。
【0015】
この場合、回転工程において、前記基準データと前記撮像データとに基づいて中継体を回転させるので、受渡工程において基板に対する薄切片の相対的な向きが予め定められた向きになるようにより高精度に回転させることができ、薄切片を基板上に、基板に対して予め定められた向きでより確実に載置することができる。
【0016】
また、本発明に係る薄切片標本作製装置では、前記制御部は、前記基板に前記薄切片を受け渡すときに、前記基準データと前記撮像データとに基づいて前記移動回転手段により前記基板に対して前記中継体を移動させても良い。
【0017】
また、本発明に係る薄切片標本作製方法では、前記受渡工程は、前記基準データと前記撮像データとに基づいて前記移動回転手段により前記基板に対して前記中継体を移動させても良い。
【0018】
この場合、受渡工程において、前記基準データと前記撮像データとに基づいて基板に対して中継体を移動させるので、薄切片が定着面に定着される位置によらず、薄切片を基板上に、基板に対して予め定められた向きでより一層確実に載置することができる。
【0019】
また、本発明に係る薄切片標本作製装置では、前記定着面に定着された前記薄切片を前記定着面から離脱させて廃棄する廃棄部を備え、前記移動回転手段は、前記中継体を前記廃棄部に移動可能に形成され、前記制御部は、前記撮像データに基づいて前記薄切片が不良か否かを判定し、前記薄切片を不良と判定した場合に、前記移動回転手段により前記中継体を前記廃棄部に移動させて前記薄切片を廃棄しても良い。
【0020】
また、本発明に係る薄切片標本作製方法では、前記定着面に定着された前記薄切片を前記定着面から離脱させて廃棄する廃棄工程と、前記撮像データに基づいて前記薄切片が不良か否かを判定する判定工程と、を備え、前記判定工程は、前記薄切片を不良と判定した場合に、前記廃棄工程を行っても良い。
【0021】
この場合、判定工程において、薄切片を不良と判定した場合に廃棄工程を行うことから、不良の薄切片が基板に受け渡されることがないので、薄切片の不要な受け渡し作業を削減することが可能となり、薄切片の受け渡しの作業効率を向上させることができる。
【0022】
また、本発明に係る薄切片標本作製装置では、液体が貯留された中継液槽を備え、前記搬送手段は、上面に載置された前記薄切片を搬送すると共に一端部が前記中継液槽に浸漬された搬送体を有し、前記制御部は、前記搬送手段で搬送された前記薄切片を前記定着面で受け取って定着させるときに、前記薄切片の一部が前記搬送体から離脱して前記液体の液面に浮かぶと共に当該薄切片の他の一部が前記搬送体の上面に残った状態で、前記薄切片の一部が前記定着面に接触するように、前記移動回転手段により前記中継体を移動させても良い。
【0023】
また、本発明に係る薄切片標本作製方法では、前記薄切片標本作製装置は、液体が貯留された中継液槽を備え、前記搬送手段が、上面に載置された前記薄切片を搬送すると共に一端部が前記中継液槽に浸漬された搬送体を有する構成とされ、前記受取工程は、前記薄切片の一部が前記搬送体から離脱して前記液体の液面に浮かぶと共に当該薄切片の他の一部が前記搬送体の上面に残った状態で、前記薄切片の一部が前記定着面に接触するように、前記移動回転手段により前記中継体を移動させても良い。
【0024】
この場合、受取工程において、薄切片を液面に浮かばせながら中継体に受け渡すので、受取工程において薄切片の伸展を行うことが可能となり、定着面に定着される薄切片を伸展させて変形が抑制されたものとすることができる。従って、この薄切片を基板上に受け渡すに際し、薄切片を基板上に、基板に対して予め定められた向きでより確実に載置することができる。
また、受取工程は、薄切片の一部が搬送体から離脱して液面に浮かぶと共に当該薄切片の他の一部が搬送体の上面に残った状態で、前記薄切片の一部が定着面に接触するように中継体を移動させるので、中継液槽の液面上で薄切片の姿勢が搬送体もしくは中継体のいずれか一方で規制される。従って、薄切片を確実に定着面に定着させることができる。
【0025】
また、本発明に係る薄切片標本作製装置では、前記液面に浮かんだ前記薄切片を検出する検出手段を備え、前記制御部は、前記検出手段により得られた検出データに基づいて、前記移動回転手段により前記中継体を移動させて前記薄切片を前記定着面に定着させても良い。
【0026】
また、本発明に係る薄切片標本作製方法では、前記液面に浮かんだ前記薄切片を検出する検出工程を備え、前記受取工程は、前記検出工程により得られた検出データに基づいて、前記移動回転手段により前記中継体を移動させて前記薄切片を前記定着面に定着させても良い。
【0027】
この場合、受取工程において、検出工程により得られた検出データに基づいて、移動回転手段により中継体を移動させて薄切片を定着面に定着させるので、薄切片をより確実に定着面に定着させることができる。
【0028】
また、本発明に係る薄切片標本作製装置では、前記基板は、前記搬送手段から離間すると共に一部が前記中継液槽に浸漬された基板位置に配置され、前記制御部は、前記定着面に定着された前記薄切片を離脱させて前記基板に受け渡すときに、前記薄切片の一部が前記中継体から離脱して前記液体の液面に浮かぶと共に当該薄切片の他の一部が前記定着面に残った状態で、前記薄切片の一部が前記基板位置に配置された前記基板に接触するように、前記移動回転手段により前記中継体を移動させても良い。
【0029】
また、本発明に係る薄切片標本作製方法では、前記薄切片標本作製装置は、前記基板が、前記搬送手段から離間すると共に一部が前記中継液槽に浸漬された基板位置に配置される構成とされ、前記受渡工程は、前記薄切片の一部が前記中継体から離脱して前記液体の液面に浮かぶと共に当該薄切片の他の一部が前記定着面に残った状態で、前記薄切片の一部が前記基板位置に配置された前記基板に接触するように、前記移動回転手段により前記中継体を移動させても良い。
【0030】
この場合、受渡工程において、薄切片を液面に浮かばせながら基板に受け渡すので、受渡工程において薄切片の伸展を行うことが可能となり、基板上に受け渡される薄切片を伸展させて変形が抑制された高品質なものとすることができる。
また、受渡工程は、薄切片の一部が定着面から離脱して液面に浮かぶと共に当該薄切片の他の一部が定着面に残った状態で、薄切片の一部が前記基板位置に配置された基板に接触するように中継体を移動させるので、中継液槽の液面上で薄切片の姿勢が中継体もしくは基板のいずれか一方で規制される。従って、薄切片を基板上に、基板に対して予め定められた向きでより確実に載置することができる。
【0031】
また、本発明に係る薄切片標本作製装置では、前記基板を把持して前記基板位置に配置させると共に、前記基板を前記中継液槽の液面に対して昇降可能に形成された基板搬送手段を備え、前記制御部は、前記定着面に定着された前記薄切片を離脱させて前記基板に受け渡す前に、前記基板搬送手段により前記中継液槽に貯留された液体に前記基板を前記基板位置よりも深くまで浸漬させた後に当該基板を引き上げて前記基板位置に配置させても良い。
【0032】
また、本発明に係る薄切片標本作製方法では、前記薄切片標本作製装置は、前記基板を把持して前記基板位置に配置させると共に、前記基板を前記中継液槽の液面に対して昇降可能に形成された基板搬送手段を備える構成とされ、前記受渡工程は、前記基板搬送手段により前記中継液槽に貯留された液体に前記基板を前記基板位置よりも深くまで浸漬させた後に当該基板を引き上げて前記基板位置に配置させても良い。
【0033】
この場合、受渡工程において、基板搬送手段により中継液槽の液体に基板を前記基板位置よりも深くまで浸漬させた後に当該基板を引き上げて前記基板位置に配置させるので、薄切片の一部が前記基板位置に配置された基板に接触する際に、基板の表面を中継液槽内の液体で湿らせておくことが可能となり、この液体により基板の表面に薄切片を確実に定着させることができる。従って、中継液槽の液面上で薄切片の姿勢が中継体により規制された状態で、前記薄切片の一部を基板の表面に確実に定着させることが可能となり、薄切片を基板上に、基板に対して予め決められた向きでより一層確実に載置することができる。
【0034】
また、本発明に係る薄切片標本作製装置では、前記定着面には、この定着面と交差する方向に前記中継体を貫通する網目が形成されていても良い。
【0035】
この場合、定着面に前記網目が形成されていることから、液面に浮くことで薄切片が吸収した液体を、定着面から網目を通して反対側の面に排出することが可能となるので、定着面に親水性を具備させつつ液膜が形成されることを抑制し、定着面に薄切片を安定して定着させることができる。従って、この定着面に定着された薄切片を基板上に受け渡すに際し、薄切片を基板上に、基板に対して予め定められた向きでより確実に受け渡すことができる。
【0036】
また、本発明に係る薄切片標本作製装置では、液体が貯留されたクリーニング液槽を備え、前記移動回転手段は、前記クリーニング液槽に移動可能に形成されていても良い。
【0037】
この場合、移動回転手段がクリーニング液槽に移動可能に形成されているので、薄切片の定着が困難なほど定着面が汚染される前に、移動回転手段により中継体をクリーニング液槽に移動させ、定着面の清掃を行うことができる。従って、定着面の清浄度を確保することができるので、搬送手段で搬送された薄切片を定着面で受け取って定着させるに際し薄切片をより確実に定着面に定着させることができる。
【0038】
また、本発明に係る薄切片標本作製装置では、前記移動回転手段は、前記中継体を把持及び把持解除可能に形成された把持部と、前記中継体が載置可能に形成され、載置された前記中継体を前記回転軸回りに回転させる回転台と、前記搬送手段、前記基板及び前記回転台の間を前記中継体が移動するように前記把持部を移動させる移動部と、を有し、前記制御部は、前記中継体を前記回転軸回りに回転させるときに、前記把持部に把持された前記中継体を前記移動部により前記回転台に移動させた後、前記把持部による前記中継体の把持を解除して前記中継体を前記回転台に載置し、その後、前記回転台により前記中継体を回転させても良い。
【0039】
この場合、移動部により回転台を移動させる必要が無く、中継体を回転軸回りに回転させる機構を把持部と共に移動させる場合に比べて、移動部により移動される当該薄切片標本作製装置の構成要素を小型化することが可能となり、当該薄切片標本作製装置を小型化することができる。これにより、薄切片を基板に受け渡すに際し、薄切片を移動させる距離を短縮することが可能となり、薄切片の受け渡しの作業効率を向上させることができる。
【0040】
また、本発明に係る薄切片標本作製装置では、前記中継体は、円盤状に形成され、前記把持部は、前記中継体の外周部を挟持して把持しても良い。
【0041】
この場合、中継体が円盤状であることから、その外周部が周方向位置によらず同形状となっているので、把持部による中継体の外周部の挟持を容易なものとすることが可能となり、薄切片の受け渡しの作業効率をより向上させることができる。
【0042】
また、本発明に係る薄切片標本作製装置では、前記中継体の外周部には、周方向の全域に亘る凹溝が形成され、前記把持部は、互いに対向して配置され、接近することで前記中継体を挟持し、離間することで前記中継体を挟持解除する第1部材及び第2部材を有し、前記第1部材には、前記中継体の外周面に倣って形成されると共に前記第2部材との間で前記中継体を挟持するときに前記中継体の外周面に当接する当接面が形成され、前記第2部材には、互いに間隔をあけて設けられると共に前記第1部材との間で前記中継体を挟持するときに前記凹溝に係合される係合凸部が突設されていても良い。
【0043】
この場合、把持部が中継体を把持するときに、第1部材の前記当接面が中継体の外周面に当接すると共に、第2部材の係合凸部が中継体の前記凹溝に係合される。従って、把持部により中継体を周方向に強固に位置決めした状態で挟持することが可能となり、把持部に把持される中継体の姿勢を安定したものとすることができる。これにより、この中継体に定着された薄切片を基板上に受け渡すに際し、薄切片を基板上に、基板に対して予め定められた向きでより確実に載置することができる。
【発明の効果】
【0044】
本発明によれば、薄切片を基板上に、基板に対して予め定められた向きで確実に載置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明に係る薄切片標本作製装置において作製される薄切片標本の斜視図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る薄切片標本作製装置の上面図である。
【図3】図2に示す薄切片標本作製装置の正面図である。
【図4】図2に示す薄切片標本作製装置の制御ブロック図である。
【図5】図2に示す薄切片標本作製装置の中継液槽近傍の断面図である。
【図6】図2に示す薄切片標本作製装置の基板搬送手段近傍の側面図である。
【図7】図2に示す薄切片標本作製装置の中継体の平面図である。
【図8】図7に示す中継体を把持部で把持した状態を示す部分拡大図である。
【図9】図7に示す中継体を把持部で把持した状態を示す部分断面図である。
【図10】制御部に予め記憶されている基準データを説明する図である。
【図11】図2で示した薄切片標本作製装置を用いた薄切片標本作製方法を説明する一工程図である。
【図12】図2で示した薄切片標本作製装置を用いた薄切片標本作製方法を説明する一工程図である。
【図13】図2で示した薄切片標本作製装置を用いた薄切片標本作製方法を説明する一工程図である。
【図14】図2で示した薄切片標本作製装置を用いた薄切片標本作製方法を説明する一工程図である。
【図15】図2で示した薄切片標本作製装置を用いた薄切片標本作製方法を説明する一工程図である。
【図16】本発明の第2実施形態に係る薄切片標本作製装置を用いた薄切片標本作製方法を説明する一工程図である。
【図17】本発明の第2実施形態に係る薄切片標本作製装置を用いた薄切片標本作製方法を説明する一工程図である。
【図18】本発明の第2実施形態に係る薄切片標本作製装置を用いた薄切片標本作製方法を説明する一工程図である。
【図19】本発明の第3実施形態に係る薄切片標本作製装置を用いた薄切片標本作製方法を説明する一工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態に係る薄切片標本作製装置を、図面を参照して説明する。図1から図4に示すように、薄切片標本作製装置1は、生体試料Sが包埋された包埋ブロックBを薄切して長方形状(矩形状)の薄切片Mを作製した後、この薄切片Mを長方形状(矩形状)のスライドガラス(基板)Gの上面に受け渡して載置し、薄切片標本Nを作製する装置である。
【0047】
(薄切片標本)
まず、薄切片Mについて簡単に説明する。この薄切片Mは、図1に示すように、直方体状の包埋ブロックB(図2参照)を例えば3μm〜5μmの極薄に薄切することで形成されるものである。なお、包埋ブロックBは、ホルマリン固定された生体試料S内の水分をパラフィン置換した後、さらに周囲をパラフィン等の包埋剤によってブロック状に固めたものである。これにより、生体試料Sがパラフィン内に包埋された状態となっている。また、生体試料Sとしては、例えば、人体や実験動物等から取り出した臓器等の組織であり、医療分野、製薬分野、食品分野、生物分野等で適時選択されるものである。なお、図2以下では、図面の見易さのため、生体試料Sの図示を省略する。
【0048】
そして、薄切片標本Nは、前記薄切片Mと、薄切片Mが上面に載置されたスライドガラスGとで構成される。ここで、薄切片標本Nにおける薄切片Mは、スライドガラスGに対して予め定められた向きでスライドガラスG上に載置されている。本実施形態では、スライドガラスG及び薄切片Mそれぞれの対応する辺部M1、G1が薄切片標本Nの平面視で向き合うように、スライドガラスGの上面に載置されている。更に図示の例では、薄切片Mは、スライドガラスG及び薄切片Mそれぞれの対応する辺部M1、G1が平行になるように載置されている。このようにスライドガラスG上に薄切片Mが載置されて構成される薄切片標本Nは、スライドガラスGの長手方向に沿った辺部G1と薄切片Mの長手方向に沿った辺部M1とが平行になっており、理化学実験や顕微鏡観察などを容易に行うことができるため好適に利用される。
以下、薄切片標本作製装置1について説明する。
【0049】
(薄切片標本作製装置)
図2から図4に示すように、薄切片標本作製装置1は、包埋ブロックBを薄切して薄切片Mを作製する薄切手段2と、薄切手段2で薄切された薄切片Mを搬送する搬送手段3と、搬送手段3から離間した位置でスライドガラスGを把持する基板搬送手段4と、薄切片Mが着脱可能に定着される定着面5を有する中継体6と、搬送手段3とスライドガラスGとの間で中継体6を移動させると共に、中継体6を定着面5に直交する後述する回転軸37A回りに回転させる移動回転手段7と、これらの各構成要素を支持する架台8と、薄切手段2、搬送手段3、基板搬送手段4、移動回転手段7を制御する制御部9と、を備えている。更に、本実施形態では、薄切片Mが定着された中継体6の定着面5を撮像する撮像手段10と、水(液体)Wがそれぞれ貯留された中継液槽11及びクリーニング液槽12と、を備え、撮像手段10も制御部9により制御される。
【0050】
(薄切手段)
図2に示すように、薄切手段2は、包埋ブロックBを支持する支持台21と、包埋ブロックBを薄切するカッター22と、支持台21とカッター22とを水平面と平行な切削方向D3に沿って相対的に進退移動させてカッター22により包埋ブロックBを薄切して薄切片Mを作製する切削ステージ23と、支持台21とカッター22とを相対的に水平面と直交するZ方向に沿って進退移動させてカッター22に対する包埋ブロックBのZ方向の位置を調整する図示しないZステージと、を備えている。
【0051】
図示の例では、カッター22は、水平面と平行なX方向に固定され、更にその刃先がX方向と直交するY方向に沿って延在した状態で固定されている。そして、切削ステージ23は、水平面上でX方向と交差する前記切削方向D3に沿って支持台21を移動させており、これにより、支持台21とカッター22とが相対的に前記切削方向D3に沿って進退移動される。また、図示の例では、カッター22がZ方向に固定されていると共に、Zステージが支持台21をZ方向に沿って移動させており、これにより、支持台21とカッター22とが相対的にZ方向に沿って進退移動される。
【0052】
このように構成された薄切手段2によれば、Zステージがカッター22に対する包埋ブロックBのZ方向の位置を調節してカッター22により薄切される薄切片Mの厚さを調整した上で、切削ステージ23がカッター22により包埋ブロックBを薄切して薄切片Mを作製することができる。
なお、支持台21は、包埋ブロックBを、その長手方向が前記切削方向D3と平行になるように支持可能に形成されている。
【0053】
(中継液槽)
中継液槽11は、架台8上においてカッター22とX方向に離間した位置に設けられており、図示の例では、架台8に凹設されている。
【0054】
(搬送手段)
搬送手段3は、薄切片Mを中継液槽11に搬送するものであって、上面に載置された薄切片Mを搬送すると共に一端部24aが中継液槽11に浸漬された搬送ベルト(搬送体)24と、この搬送ベルト24が巻回されるローラ群25と、ローラ群25のうちの一つのローラを駆動させて搬送ベルト24を走行させる図示しない駆動部と、を備えている。
図示の例では、搬送ベルト24により搬送される薄切片Mの搬送方向D1は、当該薄切片標本作製装置1の上面視でX方向に沿っており、搬送ベルト24は、前記上面視でX方向に沿って延在している。つまり、前記搬送方向D1は、前記切削方向D3に対して前記上面視で傾いている。そして、ローラ群25は、前記上面視でX方向に互いに間隔をあけて配設されており、ローラ群25のうち最も薄切手段2側にある前部ローラは、カッター22の上方に近接して設けられている。これにより、薄切片Mは、カッター22により切削されながらその先端側が上方に捲り上げられて搬送ベルト24によって受け取られる。
また、図3に示すように、搬送ベルト24は、X方向における中継液槽11側部分が、中継液槽11に向かうに従って漸次下側に向かっており、前記一端部24aが中継液槽11内の水Wに浸漬されている。
【0055】
このように構成された搬送手段3によれば、図2に示すように、薄切手段2により切削された薄切片Mを搬送ベルト24の上面で受け取り、前記搬送方向D1に沿って前進側D1aに中継液槽11に向けて搬送することができる。また、図5に示すように、この搬送手段3により搬送された薄切片Mの一部が前記一端部24aまで搬送されたときには、薄切片Mは、水Wの表面張力により前記薄切片Mの一部が搬送ベルト24の上面から離脱して水面(液面)W1に沿って移動する。これにより、薄切片Mは、水面W1上でX方向に沿って移動しながら搬送ベルト24から漸次離脱される。
【0056】
また、本実施形態では、中継液槽11には、この中継液槽11内に水Wを流入させる流入口11aと、この中継液槽11内の水Wを流出させる流出口11bと、が設けられている。図示の例では、中継液槽11の水面W1近傍、つまり中継液槽11の表層の水Wは、流入口11aから流入された後に流出口11bから流出されることで、前記上面視において前記搬送方向D1に沿って平行に且つ前進側D1aに向けて流れるようになっている。これにより、前記表層の水Wが流れる方向と、薄切片Mが搬送ベルト24の上面から離脱する方向と、が一致するので、前述の離脱を円滑なものとすることができる。
【0057】
(検出手段)
また、図5に示すように、中継液槽11の近傍には、水面W1上に浮かんだ薄切片Mを検出する検出手段26が設けられている。この検出手段26は、薄切片Mの一部が搬送ベルト24から離脱して水面W1に浮かぶと共に当該薄切片Mの他の一部が搬送ベルト24の上面に残った状態の薄切片Mを検出するように配置されている。図示の例では、搬送ベルト24で搬送された薄切片Mが搬送ベルト24から離脱される位置である搬送ベルト24の上面と水面W1とが交差する位置から、X方向に沿って、水面W1において薄切片Mの長手方向に沿った大きさ以内の位置である検出位置P1に浮かんだ薄切片Mを検出することができるようになっている。そして、検出手段26は、薄切片Mを検出した検出タイミングを制御部9に送出するように構成されている。
なお、図示の例では、検出手段26として、例えば遮光式の光電センサを採用しており、検出手段26は、中継液槽11の上方に、その信号光が中継液槽11の水面W1を貫通するように配設されている。
【0058】
(基板搬送手段)
図2及び図6に示すように、基板搬送手段4は、図示しないスライドガラス収納棚に収納されたスライドガラスGを着脱可能に把持すると共に、把持したスライドガラスGを、中継液槽11と図示しない薄切片標本収納棚との間で搬送する。図6に示すように、本実施形態では、基板搬送手段4は、スライドガラスGを挟持及び挟持可能に形成されたグリッパ28と、グリッパ28を水平面と平行なチルト軸回りに回転可能に支持するチルトアクチュエータ29と、チルトアクチュエータ29を水平面と平行で且つ前記チルト軸と直交する方向に進退移動可能に支持するスライドテーブル30と、スライドテーブル30をZ方向に沿った旋回軸回りに回転可能に支持する旋回アクチュエータ31と、架台8上に固定され旋回アクチュエータ31をX方向、水平面に平行で且つX方向に直交するY方向及びZ方向の3方向に沿って移動させる直交3軸ロボット32と、を備えている。
【0059】
図2に示すように、図示の例では、基板搬送手段4は、前記上面視で搬送手段3に対して中継液槽11を挟んで前記搬送方向D1の前進側D1aに位置するように配設されている。
また、直交3軸ロボット32は、中継液槽11と、前記スライドガラス収納棚と、前記薄切片標本収納棚と、の間でグリッパ28を移動させることができるように形成されている。また、チルトアクチュエータ29、スライドテーブル30及び旋回アクチュエータ31は、直交3軸ロボット32により前記スライドガラス収納棚や前記薄切片標本収納棚に移動されたグリッパ28の位置を微調整できるように形成されている。
【0060】
以上のように構成された基板搬送手段4によれば、前記スライドガラス収納棚からスライドガラスGを把持し、また、薄切片Mが載置されたスライドガラスGである薄切片標本Nを前記薄切片標本収納棚に収納することができる。なお、図6に示すように、本実施形態では、グリッパ28によるスライドガラスGの把持に際し、グリッパ28は、スライドガラスGをこのスライドガラスGの長手方向の一端部を把持するように制御部9により制御される。
【0061】
また、図6に示すように、本実施形態では、基板搬送手段4は、薄切片Mの受け渡しに際し、スライドガラスGを、搬送手段3から離間していると共にスライドガラスGの一部が中継液槽11に浸漬される基板位置Gaに配置可能に形成されている。図示の例では、前記基板位置GaのスライドガラスGは、その長手方向の他端部が中継液槽11内の水Wに浸漬されると共に、その上面が前記搬送方向D1の後退側D1bを向き且つY方向に沿うように把持される。また、前記基板位置GaのスライドガラスGは、その長手方向に沿った辺部G1が、前記上面視で前記搬送方向D1と平行になるように把持される。
以上のように構成された基板搬送手段4によれば、スライドガラスGを把持して前記基板位置Gaに配置させると共に、スライドガラスGを中継液槽11の水面W1に対して昇降させることができる。
【0062】
(クリーニング液槽)
図2に示すように、クリーニング液槽12は、架台8上において中継液槽11に対してY方向に離間した位置に設けられており、図示の例では、架台8に凹設されている。また、クリーニング液槽12のX方向に沿った大きさは、中継液槽11のX方向に沿った大きさよりも小さくなっており、クリーニング液槽12は、中継液槽11のX方向の内側に位置するように設けられている。
【0063】
また、図3に示すように、本実施形態では、クリーニング液槽12には、このクリーニング液槽12内に水Wを流入させる流入口12aと、このクリーニング液槽12内の水Wを流出させる流出口12bと、が設けられている。図示の例では、クリーニング液槽12の水面W1近傍、つまりクリーニング液槽12の表層の水Wは、流入口12aから流入された後に流出口12bから流出されることで、水面W1に沿った水流方向に向けて流れるようになっている。
【0064】
更に、クリーニング液槽12には、クリーニング液槽12の水W内に滞留する薄切片Mの屑である切片屑が流出口12bに吸引されないように水Wからろ過するフィルタ12dが、流出口12bを覆うように設けられている。このフィルタ12dは、クリーニング液槽12に対して着脱可能に形成されており、このフィルタ12dが切片屑で詰まったときに交換できるようになっている。
【0065】
(中継体)
図7に示すように、中継体6は円盤状に形成されている。本実施形態では、中継体6は、リング状のフレーム部33と、フレーム部33の内周面に固定された網部34と、を備えている。このように構成された中継体6においては、フレーム部33が、中継体6の外周部を構成すると共に、網部34の表面が、前記定着面5を構成する。
また、フレーム部33の一方の端面には、周方向の全域に亘る凹溝35が形成されている。また、定着面5には、この定着面5と交差する方向に網部34を貫通する網目34aが形成されている。なお、図示の例では、網部34の外形が円形状となっており、網部34の中心軸線とフレーム部33の中心軸線とが、中継体6の中心軸線L1として一致している。
【0066】
(移動回転手段)
図2及び図3に示すように、移動回転手段7は、中継体6を把持及び把持解除可能に形成された把持部36と、中継体6が載置可能に形成され、載置された中継体6を回転軸37A回りに回転させる回転台37と、搬送手段3、前記基板位置Gaで把持されたスライドガラスG、回転台37及びクリーニング液槽12の間を中継体6が移動するように把持部36を移動させる移動部38と、を備えている。
【0067】
図8に示すように、本実施形態では、把持部36は、中継体6のフレーム部33の周方向における一部分を中継体6の径方向の外側から把持する。また、図9に示すように、把持部36は、中継体6のフレーム部33を挟持して把持する。図示の例では、把持部36は、互いに対向して配置され、接近することで中継体6を挟持し、離間することで中継体6を挟持解除する第1部材39及び第2部材40と、第1部材39及び第2部材40を接近もしくは離間するように移動させる駆動部41と、を備えている。なお、図示の例では、第1部材39及び第2部材40それぞれの一端がいずれも駆動部41に支持されており、駆動部41の駆動軸41a回りに両者が相対的に回転移動して接近もしくは離間するようになっている。また、駆動部41は、制御部9により作動が制御される。
【0068】
図8に示すように、第1部材39は、一端が駆動部41に支持された第1基部42と、第1基部42の他端に連結され、中継体6のフレーム部33に沿うように形成された第1挟持部43と、を備えている。また、図示の例では、第1部材39は、中継体6を挟持する挟持方向D2視において、全体としてY字状の平板に形成されると共に、前記駆動軸41aと直交し且つ把持部36により把持される中継体6の中心軸線L1を通る基準軸L2を軸として線対称になるように形成されている。
【0069】
また、図9に示すように、第1挟持部43には、中継体6の外周面に倣って形成されると共に第2部材40との間で中継体6を挟持するときに中継体6の外周面に当接する当接面44が形成されている。図示の例では、第1挟持部43には、第2部材40と対向する内面における第1基部42の反対側に凹段部が形成されており、第1挟持部43の断面視形状はL字状になっている。そして、凹段部を画成する面のうち前記挟持方向D2を向く面が、中継体6を挟持するときに中継体6の端面が当接する第1挟持面46となっており、凹段部を画成する面のうちこの第1挟持面46に連なる面が前記当接面44となっている。
【0070】
また、図示の例では、第2部材40は、一端が駆動部41に支持された第2基部47と、第2基部47の他端に連結され、中継体6のフレーム部33に沿うように形成された第2挟持部48と、を備え、前記挟持方向D2視において、全体としてY字状の平板に形成されると共に、前記基準軸L2を軸として線対称になるように形成されている。
また、第2挟持部48には、互いに間隔をあけて設けられると共に第1部材39との間で中継体6を挟持するときにフレーム部33の凹溝35に係合される2つの係合凸部49が形成されている。図示の例では、第2挟持部48には、第1部材39と対向する内面における第2基部47の反対側に凹段部が形成されており、第2挟持部48の断面視形状がL字状になっている。また、凹段部を画成する面のうち前記挟持方向D2を向く面が、中継体6を挟持するときに中継体6の端面が当接する第2挟持面51となっている。そして、係合凸部49は、第2挟持面51に前記基準軸L2を軸として線対称の位置にそれぞれ突設されている。
【0071】
以上のように構成された把持部36によれば、把持部36が中継体6を把持するときに、第1部材39の当接面44が中継体6の外周面に当接すると共に、第2部材40の係合凸部49が中継体6の凹溝35に係合される。従って、把持部36により中継体6を周方向に強固に位置決めした状態で挟持することが可能となる。なお、係合凸部49の形状、及び数は、前述したものに限られない。
【0072】
図2に示すように、回転台37は、中継液槽11とクリーニング液槽12との間に、前記上面視形状が中継体6の外形状よりも小さい円形状に形成されている。また、図3に示すように、回転台37は、架台8から上方に向けて突設されており、その上面が、定着面5が水平面と平行になるように中継体6を載置可能に形成されている。そして、回転台37は、そのZ方向に沿った中心軸線である回転軸37A回りに旋回移動する。
このように形成された回転台37によれば、上面に載置された中継体6の定着面5と回転軸37Aとが直交するので、その定着面5が回転軸37Aと直交した状態で中継体6を回転軸37A回りに回転させることができる。
【0073】
図2及び図3に示すように、移動部38は、把持部36に把持された中継体6を水平面に平行なチルト軸回りに回転可能に支持するチルト機構52と、チルト機構52をZ方向に沿った旋回軸回りに回転可能に支持する旋回機構53と、旋回機構53をX方向、Y方向及びZ方向の3方向に沿って移動させると共に架台8上に固定された直交3軸ロボット54と、を備えている。
【0074】
図3に示すように、チルト機構52は、把持部36に把持された中継体6の定着面5を、Z方向に沿った姿勢から水平面と平行な姿勢にするまでチルト軸回りに回転可能に形成されている。また、チルト軸は、把持部36の前記駆動軸41aと平行になっている。
また、図2及び図3に示すように、直交3軸ロボット54は、中継液槽11、クリーニング液槽12及び回転台37をY方向に挟んで架台8上に立設された一対のX移動部55と、一対のX移動部55に架設され、X移動部55によりX方向に沿って移動されるY移動部56と、Y移動部56に支持され、Y移動部56によりY方向に沿って移動されるZ移動部57と、を備えている。図3に示すように、X移動部55の上端は、搬送手段3の上端よりも上方に位置し、また、Z移動部57は、把持部36に把持された中継体6を、中継液槽11及びクリーニング液槽12に浸漬される高さから、回転台37の上面より上方に位置する高さまで、Z方向に沿って移動可能に形成されている。
以上のように構成された移動部38によれば、把持部36に把持された中継体6を、搬送手段3、前記基板位置Gaで把持されたスライドガラスG、回転台37及びクリーニング液槽12の間で移動させることができる。
【0075】
(撮像手段)
撮像手段10は、回転台37に対して上方から光を照射する照明系58と、照明系58により照射された回転台37を上方から撮像して撮像データを制御部9に送出する撮像カメラ59と、を備えている。図示の例では、照明系58は、例えば落射照明系を採用している。
図3に示すように、これらの照明系58及び撮像カメラ59は、X移動部55に固定された固定部材60を介して、回転台37に対して上方に固定されて配置されている。なお、照明系58及び撮像カメラ59は、移動部38の直交3軸ロボット54の上端よりも上方に配設されており、これにより、移動部38による中継体6の移動が撮像手段10を起因として阻害されることがない。
【0076】
(制御部)
図10に示すように、制御部9には、予め設定された定着面5及び薄切片Mの相対的な回転軸37A回りの位置を表し、後述する回転工程で用いる基準データが記憶されている。図示の例では、基準データとして、把持部36に把持された中継体6の定着面5において、中継体6の中心軸線L1と薄切片Mの中心とが一致して且つ薄切片Mの長手方向に沿った辺部M1が前記基準軸L2と平行であるように定着された薄切片Mである基準薄切片R、及び定着面5の相対的な前記中心軸線L1回りの位置が記憶されている。具体的には、前記基準軸L2に対する前記基準薄切片Rの辺部M1の傾きが記憶されている。
また、図4に示すように、制御部9には、当該薄切片標本作製装置1の操作者が外部から各種情報を入力可能な操作部61が接続されている。
なお、制御部9による各構成要素の制御の詳細については、以下に示す薄切片標本作製方法と共に説明する。
【0077】
(薄切片標本作製方法)
次に、本実施形態に係る薄切片標本作製方法について説明する。
始めに、図2に示すように、支持台21に包埋ブロックBをセットするセットするセット工程を行う。この際、前記搬送方向D1に対する包埋ブロックBの長手方向の相対的な傾きが、予め決められた傾きになるようにセットする。図示の例では、操作者は、包埋ブロックBを、その長手方向が前記切削方向D3と平行になるように支持台21にセットする。
【0078】
次いで、制御部9は、薄切手段2を制御して、包埋ブロックBから薄切片Mを薄切する薄切工程を行う。これにより、搬送ベルト24上には、長方形状の薄切片Mが、その長手方向に沿った辺部M1が前記搬送方向D1に対して傾いた状態(前記切削方向D3に沿った状態)で載置される。また、本実施形態では、包埋ブロックBから薄切片Mを薄切するに際し、包埋ブロックBと薄切片Mとを単に前記切削方向D3に沿って進退移動させるだけなので、薄切片Mが切削される度に、搬送ベルト24上に受け渡される薄切片Mの位置がY方向にずれるのを抑制することが可能となり、搬送ベルト24上におけるY方向の所定位置に薄切片Mを安定して載置することができる。
【0079】
次いで、制御部9は、搬送手段3の駆動部を駆動して搬送ベルト24を走行させ、薄切片Mを中継液槽11に搬送する搬送工程を行う。この際、制御部9は、予め記憶されている搬送速度で薄切片Mが搬送されるように駆動部を制御する。
また、図11に示すように、制御部9は、移動回転手段7により、中継体6を搬送手段3に移動させ、搬送手段3で搬送された薄切片Mを中継体6の定着面5で受け取って定着させる受取工程を行う。
【0080】
受取工程について詳しく説明すると、まず、制御部9は、移動部38を制御して、中継体6を搬送手段3に移動させる第1移動工程を行う。この際、制御部9は、薄切片Mの一部が搬送ベルト24から離脱して水面W1に浮かぶと共に当該薄切片Mの他の一部が搬送ベルト24の上面に残った状態で、前記薄切片Mの一部が定着面5に接触するように、移動回転手段7により中継体6を移動させる。
図示の例では、制御部9は、把持部36が中継体6に対して上側に位置すると共に前記基準軸L2が前記上面視で前記搬送方向D1と一致するように中継体6を移動させる。また、定着面5がX方向を向いて搬送ベルト24と対向すると共に、定着面5がY方向に沿うように中継体6を移動させる。更に、中継体6の一部を中継液槽11内の水Wに浸漬させ、搬送ベルト24の上面と水面W1とが交差する位置と、定着面5と水面W1とが交差する定着開始位置P2との間のX方向に沿った大きさが、薄切片Mの長手方向に沿った大きさよりも小さく、且つ前記定着開始位置P2が、前記検出位置P1よりも搬送ベルト24から離間するように中継体6を移動する。更にまた、図示の例では、定着面5が上側に向かうに従って搬送ベルト24から離間するように中継体6を移動する。
なお、制御部9は、第1移動工程を、前記検出位置P1に薄切片Mが到達する前に、好ましくは、薄切片Mにおける前記搬送方向D1の前進側D1a部分が水面W1に到達する前に行う。
【0081】
次に、水面W1に浮かんだ薄切片Mを検出手段26により検出する検出工程を行う。これにより、制御部9には、薄切片Mが前記検出位置P1に到達した検出タイミングが、検出手段26から送出される。
そして、検出工程において薄切片Mが検出された後、搬送手段3で搬送された薄切片Mを中継体6の定着面5で受け取って定着させる引き上げ工程を行う。本実施形態では、制御部9が、中継体6が中継液槽11内の水Wから引き上げられるように把持部36を移動させる。
【0082】
この際、まず、制御部9は、搬送ベルト24の前記搬送速度と、前記検出位置P1と前記定着開始位置P2との間のX方向に沿った大きさと、前記検出タイミングと、に基づいて、定着面5が前記定着開始位置P2に到着するタイミングを算出する。そして、制御部9は、このタイミングに基づいて、移動部38により中継体6の引き上げを開始すると共に、前記搬送速度に基づいて、中継体6を水面W1に対して引き上げる方向及び速度を調整して引き上げる。
この結果、搬送手段3で搬送された薄切片Mが、中継体6の定着面5で受け取られて定着面5に定着される。
以上で受取工程が終了する。
【0083】
次いで、図12に示すように、中継体6を移動部38により回転台37に移動させる第2移動工程を行う。本実施形態では、まず、制御部9が、移動部38により、回転台37の上方で、定着面5が水平面と平行になると共に薄切片Mが中継体6に対して上側に定着されているように中継体6を移動させる。この際、制御部9は、中継体6の中心軸線L1と、回転台37の回転軸37Aとが一致するように、移動部38を制御する。次に、制御部9は、Z移動部57により中継体6を下降させて回転台37上に中継体6を載置する。ここで、回転台37上に中継体6を載置したときの回転台37に対する把持部36の相対的な位置を把持位置P3とする。その後、制御部9は、前記把持位置P3に位置する把持部36による中継体6の把持を解除して、移動部38により把持部36を回転台37から離間させる。
【0084】
次いで、薄切片Mが定着された定着面5を撮像する撮像工程を行う。本実施形態では、制御部9が、照明系58により回転台37に載置された中継体6に光を照射すると共に、撮像カメラ59により光が照射された中継体6を撮像する。中継体6を撮像した撮像カメラ59は、撮像データを制御部9に送出する。
なお、以下では、図13に示すように、定着面5に定着された薄切片Mは、中継体6が前記把持位置P3で把持されたときに、前記基準データの基準薄切片Rに対して、中心が一致すると共に、回転角θだけ傾いている場合について説明する。つまり、薄切片Mの長手方向に沿った辺部M1は、中継体6が前記把持位置P3で把持されたときの前記基準軸L2に対して回転角θだけ傾いている。このような場合は、例えば前記搬送方向D1が、前記切削方向D3に対して角度θだけ傾いているとき等に想定される。
【0085】
次いで、前記基準データと前記撮像データとに基づいて移動回転手段7により中継体6を回転させる回転工程を行う。この際、後述する受渡工程においてスライドガラスGに対する薄切片Mの相対的な向きが予め定められた向きになるように回転させる。本実施形態では、スライドガラスG及びスライドガラスGに受け渡される薄切片Mそれぞれの辺部M1、G1同士が前記上面視で平行になるように、移動回転手段7により中継体6を回転させる。
この際、制御部9は、まず、前記撮像データ及び前記基準データに基づいて、前記回転角θを算出する。そして、中継体6が前記把持位置P3で把持されたときの定着面5における薄切片Mの長手方向に沿った辺部M1の前記基準軸L2に対する傾きが、前記基準データの定着面5における基準薄切片Rの長手方向に沿った辺部M1の前記基準軸L2に対する傾きと一致するように、算出した回転角θだけ回転軸37A回りに中継体6を回転させる。
【0086】
次いで、制御部9は、移動回転手段7により、中継体6をスライドガラスGに移動させ、定着面5に定着された薄切片Mを離脱させてスライドガラスGに受け渡す受渡工程を行う。
この受渡工程について詳しく説明すると、始めに、図14に示すように、制御部9は、基板搬送手段4により、スライドガラスGを前記基板位置Gaで把持する基板配置工程を行う。この際、本実施形態では、制御部9は、基板搬送手段4により中継液槽11の水WにスライドガラスGを前記基板位置Gaよりも深くまで浸漬させた後に当該スライドガラスGを引き上げて前記基板位置Gaに配置させる。これにより、スライドガラスGの表面を中継液槽11内の水Wで湿らせておくことができる。
【0087】
また、制御部9は、中継体6を前記基板位置Gaで把持されたスライドガラスGに移動させる第3移動工程を行う。この際、制御部9は、移動部38により把持部36を移動させ、回転台37に載置された中継体6を把持部36に前記把持位置P3で把持させる。ここで、前述したように、中継体6は、この中継体6が前記把持位置P3で把持されたときの定着面5における薄切片Mの長手方向に沿った辺部M1の前記基準軸L2に対する傾きと、前記基準データの定着面5における基準薄切片Rの長手方向に沿った辺部M1の前記基準軸L2に対する傾きとが一致するように回転されているので、薄切片Mの長手方向に沿った辺部M1が、前記基準軸L2と平行になる。しかも、前記基準薄切片Rと薄切片Mとは、互いの中心が一致しているので、定着面5における薄切片Mの位置は、前記基準データの定着面5における基準薄切片Rの位置と一致する。そして、把持部36により中継体6を把持した後、制御部9は、移動部38により中継体6を中継液槽11に移動させる。
また、この第3移動工程と並行して、薄切片Mを中継体6から離脱させる離脱工程を行う。本実施形態では、制御部9は、薄切片Mの一部が中継体6から離脱して水面W1に浮かぶと共に当該薄切片Mの他の一部が定着面5に残った状態で、前記薄切片Mの一部が前記基板位置GaのスライドガラスGに受け渡されるように移動部38により中継体6を移動させる。
【0088】
これらの第3移動工程及び離脱工程について、図14及び図15に基づいて説明すると、まず、制御部9は、移動部38により中継体6を、中継液槽11上に予め決められた受渡位置6aに移動させる。この受渡位置6aは、前記基準データの定着面5における基準薄切片Rの位置を基準として予め決められたものである。図示の例では、把持部36が中継体6に対して上側に位置すると共に、前記基板位置GaのスライドガラスGに対して定着面5に定着された薄切片MがX方向で対向するように中継体6を移動させる。また、定着面5がY方向に沿うと共に、前記上面視で前記基準軸L2が、前記基板位置GaのスライドガラスGの長手方向に沿った辺部G1と平行になるように移動させる。以上により、スライドガラスGの辺部G1と、定着面5に定着された薄切片Mの辺部M1と、を互いに平行にすることができる。更に、前記上面視において、薄切片Mの長手方向に沿った両辺部M1が、前記基板位置GaのスライドガラスGの長手方向に沿った両辺部G1の内側に位置するように中継体6を移動させる。これにより、スライドガラスG及び薄切片Mそれぞれの辺部M1、G1を前記上面視で向き合わせることができる。
【0089】
次いで、制御部9は、移動部38により、予め決められた離脱速度で予め決められた水面W1に対する離脱傾きで中継体6を下降させる。図示の例では、制御部9は、中継体6をY方向の位置を固定した状態でX方向に沿ってスライドガラスG側に向かわせながら下降させる。これにより、定着面5に定着された薄切片Mの一部が水面W1に達するまで中継体6が下降されたとき、水Wの表面張力により前記一部が定着面5から離脱して、水面W1に沿って移動する。その結果、薄切片Mは、水面W1上でX方向に沿って移動しながら定着面5から漸次離脱される。この際、本実施形態では、中継液槽11に流入口11a及び流出口11bが設けられていることから、中継液槽11の表層の水Wが、前記上面視において前記搬送方向D1に平行で且つ前進側D1aに向けて流されるので、薄切片Mを定着面5から円滑に離脱させることができる。
【0090】
また、制御部9は、前記基板位置GaのスライドガラスGのX方向で中継体6側を向く面と中継液槽11内の水面W1とが交差する受渡開始位置P4と、薄切片Mの長手方向の大きさと、に基づいて中継体6のX方向の位置を調整して、定着面5から薄切片Mが完全に離脱する前にスライドガラスGに薄切片Mの一部が接触するように中継体6を下降させる。また、制御部9は、前記離脱速度及び前記離脱傾きと、中継体6のX方向の位置と、前記受渡開始位置P4とに基づいて、スライドガラスGに前記薄切片Mの一部が接触するタイミングを判定する。
【0091】
そして、制御部9は、スライドガラスGに薄切片Mの一部が接触した判定したときに、基板搬送手段4によりスライドガラスGを引き上げる基板引き上げ工程を行う。この際、制御部9は、前記離脱傾きと前記離脱速度とに基づいて、薄切片MがスライドガラスGの上面に定着されるように、基板搬送手段4によりスライドガラスGを水面W1に対して引き上げる引上速度及び引上向きを算出し、これらの引上速度及び引上向きで引き上げる。
この結果、上面に薄切片Mが載置されたスライドガラスGが、中継液槽11内の水Wから引き上げられ、受渡工程が終了する。以上により、薄切片MをスライドガラスG上に、スライドガラスGに対して予め定められた向きで確実に載置することができる。
【0092】
その後、本実施形態では、制御部9は、基板搬送手段4により、薄切片Mが載置されたスライドガラスGである薄切片標本Nを、前記薄切片標本収納棚に収納する収納工程を行う。
また、本実施形態では、制御部9は、移動回転手段7により、薄切片Mを受け渡した中継体6をクリーニング液槽12に移動させて定着面5を清掃する清掃工程を行う。この際、制御部9は、移動回転手段7により、クリーニング液槽12内で前記水流方向に沿って流れる表層の水Wが網部34の網目34aを通過するように、中継体6をクリーニング液槽12の水Wに浸漬させる。これにより、中継体6の定着面5を円滑かつ確実に清掃することができる。
【0093】
以上に示した薄切片標本作製装置1及び薄切片標本作製方法によれば、受取工程と受渡工程の間に、予め設定された定着面5及び薄切片Mの相対的な回転軸37A回りの位置に基づいて移動回転手段7により中継体6を回転させる回転工程を行うので、受渡工程においてスライドガラスGに対する薄切片Mの相対的な向きが予め定められた向きになるように回転させることが可能となる。本実施形態では、スライドガラスG及びスライドガラスGに受け渡される薄切片Mそれぞれの辺部M1、G1同士が前記上面視で平行になるように、移動回転手段7により中継体6を回転させることができる。しかも、薄切片Mが定着面5に定着されていることから前記従来技術のように液体の流れに影響されること無いので、受渡工程において、薄切片MをスライドガラスG上に、スライドガラスGに対して予め定められた向きで確実に載置することができる。
【0094】
また、回転工程において、前記基準データと前記撮像データとに基づいて中継体6を回転させるので、受渡工程においてスライドガラスGに対する薄切片Mの相対的な向きが予め定められた向きになるようにより高精度に回転させることが可能となり、薄切片MをスライドガラスG上に、スライドガラスGに対して予め定められた向きでより確実に載置することができる。
【0095】
また、受取工程において、薄切片Mを水面W1に浮かばせながら中継体6に受け渡すので、受取工程において薄切片Mの伸展を行うことが可能となり、定着面5に定着される薄切片Mを伸展させて変形が抑制されたものとすることができる。従って、定着面5における薄切片Mの形状が薄切片Mごとにばらつくのを抑制することが可能となり、この薄切片MをスライドガラスG上に受け渡すに際し、薄切片MをスライドガラスG上に、スライドガラスGに対して予め定められた向きでより確実に載置することができる。
【0096】
また、受取工程は、薄切片Mの一部が搬送ベルト24から離脱して水面W1に浮かぶと共に当該薄切片Mの他の一部が搬送ベルト24の上面に残った状態で、前記薄切片Mの一部が定着面5に接触するように中継体6を移動させるので、中継液槽11の水面W1上で薄切片Mの姿勢が搬送ベルト24もしくは中継体6のいずれか一方で規制される。従って、薄切片Mを確実に定着面5に定着させると共に、定着面5における薄切片Mの位置が薄切片Mごとにばらつくのを抑制することが可能となり、薄切片MをスライドガラスG上に受け渡すに際し、薄切片MをスライドガラスG上に、スライドガラスGに対して予め定められた向きでより確実に載置することができる。
【0097】
また、受取工程において、検出工程により得られた検出データに基づいて、移動回転手段7により中継体6を移動させて薄切片Mを定着面5に定着させるので、薄切片Mをより確実に定着面5に定着させると共に、定着面5における薄切片Mの位置が薄切片Mごとにばらつくのを一層抑制することが可能となり、薄切片MをスライドガラスG上に受け渡すに際し、薄切片MをスライドガラスG上に、スライドガラスGに対して予め定められた向きでより一層確実に載置することができる。
【0098】
また、定着面5に前記網目34aが形成されていることから、水面W1に浮くことで薄切片Mが吸収した水Wを、定着面5から網目34aを通して反対側の面に排出することが可能となるので、定着面5に親水性を具備させつつ液膜が形成されることを抑制し、定着面5に薄切片Mを安定して定着させることができる。従って、この定着面5に定着された薄切片MをスライドガラスG上に受け渡すに際し、薄切片MをスライドガラスG上に、スライドガラスGに対して予め定められた向きでより確実に受け渡すことができる。
【0099】
また、受渡工程において、薄切片Mを水面W1に浮かばせながらスライドガラスGに受け渡すので、受渡工程において薄切片Mの伸展を行うことが可能となり、スライドガラスG上に受け渡される薄切片Mを伸展させて変形が抑制された高品質なものとすることができる。
また、受渡工程は、薄切片Mの一部が定着面5から離脱して水面W1に浮かぶと共に当該薄切片Mの他の一部が定着面5に残った状態で、薄切片Mの一部が前記基板位置Gaに配置されるスライドガラスGに接触するように中継体6を移動させるので、中継液槽11の水面W1上で薄切片Mの姿勢が中継体6もしくはスライドガラスGのいずれか一方で規制される。従って、薄切片MをスライドガラスG上に、スライドガラスGに対して予め定められた向きでより確実に載置することができる。
【0100】
また、受渡工程において、基板搬送手段4により中継液槽11の水WにスライドガラスGを前記基板位置Gaよりも深くまで浸漬させた後に当該スライドガラスGを引き上げて前記基板位置Gaに配置させるので、薄切片Mの一部が前記基板位置Gaに配置されたスライドガラスGに接触する際に、スライドガラスGの表面を中継液槽11内の水Wで湿らせておくことが可能となり、この水WによりスライドガラスGの表面に薄切片Mを確実に定着させることができる。従って、中継液槽11の水面W1上で薄切片Mの姿勢が中継体6により規制された状態で、前記薄切片Mの一部をスライドガラスGの表面に確実に定着させることが可能となり、薄切片MをスライドガラスG上に、スライドガラスGに対して予め決められた向きでより一層確実に載置することができる。
【0101】
また、移動回転手段7がクリーニング液槽12に移動可能に形成されているので、薄切片Mの定着が困難なほど定着面5が汚染される前に、移動回転手段7により中継体6をクリーニング液槽12に移動させ、定着面5の清掃を行うことができる。従って、定着面5の清浄度を確保することができるので、搬送手段3で搬送された薄切片Mを定着面5で受け取って定着させるに際し薄切片Mをより確実に定着面5に定着させることができる。
【0102】
また、移動部38により回転台37を移動させる必要が無く、中継体6を回転軸37A回りに回転させる機構を把持部36と共に移動させる場合に比べて、移動部38により移動される当該薄切片標本作製装置1の構成要素を小型化することが可能となり、当該薄切片標本作製装置1を小型化することができる。これにより、薄切片MをスライドガラスGに受け渡すに際し、薄切片Mを移動させる距離を短縮することが可能となり、薄切片Mの受け渡しの作業効率を向上させることができる。
また、中継体6が円盤状であり、フレーム部33が周方向位置によらず同形状となっているので、把持部36による中継体6のフレーム部33の挟持を容易なものとすることが可能となり、薄切片Mの受け渡しの作業効率をより向上させることができる。
また、第1部材39が当接面44を有すると共に、第2部材40が係合凸部49を有していることから、把持部36に把持される中継体6の姿勢を安定したものとすることができる。これにより、この中継体6に定着された薄切片MをスライドガラスG上に受け渡すに際し、薄切片MをスライドガラスG上に、スライドガラスGに対して予め決められた向きでより確実に載置することができる。
【0103】
(第2実施形態)
次に、本発明に係る第2実施形態を説明する。なお、この第2実施形態においては、第1実施形態における構成要素と同一の部分については同一の符号を付し、その説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。
本実施形態の薄切片標本作製装置70では、図10に示すように、制御部71には、基準データとして、前記基準薄切片Rの一つの基準角部R1について、前記基準軸L2をA軸とし、定着面5に沿うと共に前記中心軸線L1を通り前記A軸と直交する軸をB軸とするAB座標系での位置座標が予め記憶されている。制御部71の構成の詳細については、以下に示す薄切片標本作製方法と共に説明する。
【0104】
本実施形態に係る薄切片標本作製装置70を用いた薄切片標本作製方法について説明すると、まず、撮像工程までは前記第1実施形態と同様に行う。なお、本実施形態では、図16に示すように、定着面5に定着された薄切片Mが中心軸線L1に対して位置ずれしていると共に、当該薄切片Mの長手方向に沿った辺部M1が前記基準薄切片Rの辺部M1に対して回転角θだけ傾いた状態である場合について説明する。
【0105】
次いで、制御部71は、回転工程を行う。この際、まず、前記第1実施形態と同様に前記回転角θを算出し、中継体6が前記把持位置P3で把持されたときの定着面5における薄切片Mの長手方向に沿った辺部M1の前記基準軸L2に対する傾きが、前記基準データの定着面5における基準薄切片Rの長手方向に沿った辺部M1の前記基準軸L2に対する傾きと一致するように、算出した回転角θだけ回転軸37A回りに中継体6を回転させる。
【0106】
またこの際、図16及び図17に示すように、制御部71は、定着面5に定着された薄切片Mにおいて前記基準角部R1に対応する角部M2の回転前の位置座標を前記撮像データに基づいて算出すると共に、当該角部M2の回転後の位置座標を前記回転角θに基づいて算出する。そして、前記基準角部R1の位置座標と回転後の前記角部M2の座標とに基づいて、定着面5に定着された薄切片Mの前記基準薄切片Rに対するA軸方向に沿ったズレ量d1とB軸方向に沿ったズレ量d2とをそれぞれ算出する。
【0107】
次いで、受渡工程を行う。この際、制御部71は、前記基準データと前記撮像データとに基づいて、移動回転手段7及び基板搬送手段4それぞれにより、中継体6とスライドガラスGとを相対的に移動させる。本実施形態では、制御部71は、スライドガラスG及びスライドガラスGに受け渡される薄切片Mそれぞれの辺部M1、G1同士が前記上面視で向き合うように、中継体6とスライドガラスGとを相対的に移動させる
詳しく説明すると、図18に示すように、制御部71は、基板配置工程において、スライドガラスGを前記基板位置Gaに配置した後、第3移動工程及び離脱工程において、前記受渡位置6aに対してY方向に薄切片Mの前記B軸方向に沿ったズレ量d2だけずらした位置に中継体6を移動させる。また、制御部71は、中継体6を下降させて薄切片Mの一部を離脱させた後、スライドガラスGに前記薄切片Mの一部が接触するタイミングを、前記離脱速度及び前記離脱傾きと、中継体6のX方向の位置と、前記受渡開始位置P4と、前記A軸方向に沿ったズレ量d1と、を用いて判定する。
そして、制御部71は、前記第1実施形態と同様に基板引き上げ工程を行うことで、上面に薄切片Mが載置されたスライドガラスGを中継液槽11内の水Wから引き上げる。以上で、受渡工程が終了する。
【0108】
以上に示した薄切片標本作製装置70及び薄切片標本作製方法によれば、前記第1実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
また、受渡工程において、前記基準データと前記撮像データとに基づいて中継体6とスライドガラスGとを相対的に移動させるので、薄切片Mが定着面5に定着される位置によらず、薄切片MをスライドガラスG上に、スライドガラスGに対して予め決められた向きでより一層確実に載置することができる。
【0109】
なお、本実施形態では、制御部71が、スライドガラスGを前記基板位置Gaに配置された状態で、移動部38により中継体6を前記受渡位置6aからずらされた位置に移動させるものとしたが、これに限られない。例えば、受渡工程において、制御部9は、移動回転手段7により中継体6を前記受渡位置6aに移動させる制御としたまま、スライドガラスGの前記基板位置Gaを基板搬送手段4によりずらして調整しても構わないし、前記受渡位置6a及び前記基板位置Gaのそれぞれをずらして調整しても構わない。
【0110】
(第3実施形態)
次に、本発明に係る第3実施形態を説明する。なお、この第3実施形態においては、第2実施形態における構成要素と同一の部分については同一の符号を付し、その説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。
本実施形態の薄切片標本作製装置80では、制御部81は、撮像手段10が撮像した撮像データに基づいて薄切片Mが不良か否かを判定することができるように構成されている。本実施形態では、制御部81には、前記基準データとして、前記基準薄切片Rの面積が記憶されており、制御部81は、例えば、面積が前記基準薄切片Rの面積より小さい薄切片M、または、図19に示すように、内部に開口M3が形成されている薄切片M、或いは、外周部に亀裂M4が形成されている薄切片Mをいずれも不良と判定する。
そして、制御部81は、薄切片Mを不良と判定した場合に、移動回転手段7により中継体6をクリーニング液槽12に移動させて薄切片Mを廃棄するように構成されている。つまり、クリーニング液槽12は、定着面5に定着された薄切片Mを定着面5から離脱させて廃棄する廃棄部を構成している。
【0111】
次に、本実施形態に係る薄切片標本作製装置80を用いた薄切片標本作製方法について、不良の薄切片Mが定着面5に定着されている場合について説明すると、まず、撮像工程までは前記第2実施形態と同様に行う。
そして、撮像工程の後、制御部81は、薄切片Mが不良か否かを判定する判定工程を行う。この判定工程において、薄切片Mを不良と判定した場合に、定着面5に定着された薄切片Mを定着面5から離脱させて廃棄する廃棄工程を行う。本実施形態では、制御部81が、中継体6をクリーニング液槽12に移動させると共に、クリーニング液槽12内の水Wに浸漬させることで薄切片Mを定着面5から離脱させて廃棄する。なおその後、操作者が、フィルタ12dを交換することで、フィルタ12dによりろ過された切片屑を廃棄しても良い。
【0112】
以上に示した薄切片標本作製装置80及び薄切片標本作製方法によれば、前記第2実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
また、判定工程において、薄切片Mを不良と判定した場合に廃棄工程を行うことから、不良の薄切片MがスライドガラスGに受け渡されることがないので、薄切片Mの不要な受け渡し作業を削減することが可能となり、薄切片Mの受け渡しの作業効率を向上させることができる。
【0113】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、搬送手段3は、薄切片Mを搬送可能に形成されていれば、前記各実施形態に示したものに限られない。
また、移動回転手段7の把持部36は、中継体6を把持及び把持解除可能に形成されていれば、前記各実施形態に示されたものに限られない。
【0114】
また、前記各実施形態では、薄切手段2を備えるものとしたが、薄切手段2は無くても構わない。この場合、例えば他の装置で包埋ブロックBから薄切された薄切片Mが搬送手段3により搬送される構成であっても良い。
また、前記各実施形態では、基板搬送手段4を備えるものとしたが、基板搬送手段4も無くても構わない。この場合、例えば前記基板位置GaでスライドガラスGを固定する固定部材を設け、受渡工程において、中継液槽11の流出口11bから流出させる水量を増加させることによって水面W1を下降させてスライドガラスGに薄切片Mを載置しても良い。
【0115】
また、前記各実施形態では、薄切片M及びスライドガラスGがいずれも長方形状であるものとしたが、これに限られるものではない。例えば、薄切片Mが正方形状(矩形状)で、スライドガラスGの辺部と対応関係がないものであっても良い。この場合、薄切片MがスライドガラスGに対して予め決められた向きで載置されたときに、スライドガラスG及び薄切片Mそれぞれの辺部が単に向き合うように載置されるものとしても良い。更に、薄切片M及びスライドガラスGそれぞれは、多角形状であっても良く、円形状であっても良い。
【0116】
また、前記各実施形態では、基板配置工程は、基板搬送手段4により中継液槽11に貯留された水WにスライドガラスGを前記基板位置Gaよりも深くまで浸漬させた後に当該スライドガラスGを引き上げて前記基板位置Gaに配置させるものとしたが、これに限られるものではない。
【0117】
また、前記各実施形態では、薄切片標本作製装置1、70、80は、撮像手段10を備えるものとしたが、撮像手段10は無くても良い。例えば、操作者が、予め設定された定着面5及び薄切片Mの相対的な回転軸37A回りの位置として前記回転角θを、操作部61を用いて制御部9、71、81に入力していても良い。
【0118】
また、前記各実施形態では、中継液槽11を備えるものとしたが、中継液槽11は無くても良い。例えば、薄切片M及び中継体のそれぞれに正負が異なる電荷を帯電させると共に、中継体及びスライドガラスGのそれぞれに正負が異なる電荷を帯電させる構成とし、静電気により薄切片Mを中継体に付着させてもよい。
また、前記各実施形態では、中継液槽11及びクリーニング液槽12に、液体として水Wが貯留されているものとしたが、貯留される液体は水Wに限られるものではない。
また、前記各実施形態では、受渡工程及び受取工程のいずれも中継液槽11で行うものとしたが、これに限られるものではなく、例えば受取工程をクリーニング液槽12で行っても良い。
また、前記各実施形態では、クリーニング液槽12を備えるものとしたが、クリーニング液槽12は無くても良い。
【0119】
また、前記各実施形態では、検出手段26を備えるものとしたが、検出手段26は無くても良い。例えば、制御部9、71、81が、薄切手段2により薄切片Mが薄切されたタイミングと、搬送手段3の搬送速度と、に基づいて、引き上げ工程を開始するタイミングを算出しても良い。
また、前記各実施形態では、定着面5には、この定着面5と交差する方向に中継体6を貫通する網目34aが形成されているものとしたが、網目34aは無くても良い。
【0120】
また、前記各実施形態では、移動回転手段7は、把持部36、回転台37及び移動部38を備えるものとしたが、これに限られるものではない。例えば、移動回転手段は、中継体6を移動させながら、中継体6の定着面5に直交する回転軸回りに中継体6を回転させるような構成であっても良い。
また、前記各実施形態では、中継体6は円盤状に形成されているものとしたが、これに限られるものではない。
【0121】
また、前記各実施形態では、中継液槽11及びクリーニング液槽12には、それぞれ流入口11a、12a及び流出口11b、12bが設けられているものとしたが、これに限られるものではなく、これらの流入口11a、12a及び流出口11b、12bはなくても良い。また、フィルタ12dは、設けられていなくても良い。
また、これらの流入口11a、12a及び流出口11b、12bは、各液槽11、12の表層の水Wをそれぞれ所定の方向(即ち、中継液槽11であれば、前記上面視において前記搬送方向D1に沿って平行に且つ前進側D1aに向く方向。クリーニング液槽12であれば、前記水流方向。)に向けて流すものであれば、前記各実施形態に示すものに限られない。
【0122】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0123】
1、70、80 薄切片標本作製装置
3 搬送手段
5 定着面
6 中継体
7 移動回転手段
9、71、81 制御部
10 撮像手段
11 中継液槽
12 クリーニング液槽
24 搬送ベルト(搬送体)
24a 一端部
26 検出手段
33 フレーム部(外周部)
34a 網目
35 凹溝
36 把持部
37 回転台
37A 回転軸
38 移動部
39 第1部材
40 第2部材
44 当接面
49 係合凸部
B 包埋ブロック
G スライドガラス(基板)
M 薄切片
S 生体試料
W 水(液体)
W1 水面(液面)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体試料が包埋された包埋ブロックから切削され、搬送手段で搬送された薄切片を、前記搬送手段から離間して配置された基板に受け渡して薄切片標本を作製する薄切片標本作製装置であって、
前記薄切片が着脱可能に定着される定着面を有する中継体と、
前記搬送手段と前記基板との間で前記中継体を移動させると共に、前記中継体を前記定着面に直交する回転軸回りに回転させる移動回転手段と、
前記移動回転手段により、前記中継体を前記搬送手段に移動させ、前記搬送手段で搬送された前記薄切片を前記定着面で受け取って定着させた後、前記中継体を前記基板に移動させ、前記定着面に定着された前記薄切片を離脱させて前記基板に受け渡す制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記薄切片を前記基板に受け渡す前に、予め設定された前記定着面及び前記薄切片の相対的な前記回転軸回りの位置に基づいて前記移動回転手段により前記中継体を回転させることを特徴とする薄切片標本作製装置。
【請求項2】
請求項1に記載の薄切片標本作製装置であって、
前記薄切片が定着された前記定着面を撮像する撮像手段を備え、
前記制御部は、前記予め設定された前記定着面及び前記薄切片の相対的な前記回転軸回りの位置を表す基準データと前記撮像手段で得られた撮像データとに基づいて前記移動回転手段により前記中継体を回転させることを特徴とする薄切片標本作製装置。
【請求項3】
請求項2に記載の薄切片標本作製装置であって、
前記制御部は、前記基板に前記薄切片を受け渡すときに、前記基準データと前記撮像データとに基づいて前記移動回転手段により前記基板に対して前記中継体を移動させることを特徴とする薄切片標本作製装置。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の薄切片標本作製装置であって、
前記定着面に定着された前記薄切片を前記定着面から離脱させて廃棄する廃棄部を備え、
前記移動回転手段は、前記中継体を前記廃棄部に移動可能に形成され、
前記制御部は、前記撮像データに基づいて前記薄切片が不良か否かを判定し、前記薄切片を不良と判定した場合に、前記移動回転手段により前記中継体を前記廃棄部に移動させて前記薄切片を廃棄することを特徴とする薄切片標本作製装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の薄切片標本作製装置であって、
液体が貯留された中継液槽を備え、
前記搬送手段は、上面に載置された前記薄切片を搬送すると共に一端部が前記中継液槽に浸漬された搬送体を有し、
前記制御部は、前記搬送手段で搬送された前記薄切片を前記定着面で受け取って定着させるときに、前記薄切片の一部が前記搬送体から離脱して前記液体の液面に浮かぶと共に当該薄切片の他の一部が前記搬送体の上面に残った状態で、前記薄切片の一部が前記定着面に接触するように、前記移動回転手段により前記中継体を移動させることを特徴とする薄切片標本作製装置。
【請求項6】
請求項5に記載の薄切片標本作製装置であって、
前記液面に浮かんだ前記薄切片を検出する検出手段を備え、
前記制御部は、前記検出手段により得られた検出データに基づいて、前記移動回転手段により前記中継体を移動させて前記薄切片を前記定着面に定着させることを特徴とする薄切片標本作製装置。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の薄切片標本作製装置であって、
前記基板は、前記搬送手段から離間すると共に一部が前記中継液槽に浸漬された基板位置に配置され、
前記制御部は、前記定着面に定着された前記薄切片を離脱させて前記基板に受け渡すときに、前記薄切片の一部が前記中継体から離脱して前記液体の液面に浮かぶと共に当該薄切片の他の一部が前記定着面に残った状態で、前記薄切片の一部が前記基板位置に配置された前記基板に接触するように、前記移動回転手段により前記中継体を移動させることを特徴とする薄切片標本作製装置。
【請求項8】
請求項7に記載の薄切片標本作製装置であって、
前記基板を把持して前記基板位置に配置させると共に、前記基板を前記中継液槽の液面に対して昇降可能に形成された基板搬送手段を備え、
前記制御部は、前記定着面に定着された前記薄切片を離脱させて前記基板に受け渡す前に、前記基板搬送手段により前記中継液槽に貯留された前記液体に前記基板を前記基板位置よりも深くまで浸漬させた後に当該基板を引き上げて前記基板位置に配置させることを特徴とする薄切片標本作製装置。
【請求項9】
請求項5から8のいずれか1項に記載の薄切片標本作製装置であって、
前記定着面には、この定着面と交差する方向に前記中継体を貫通する網目が形成されていることを特徴とする薄切片標本作製装置。
【請求項10】
請求項5から9のいずれか1項に記載の薄切片標本作製装置であって、
液体が貯留されたクリーニング液槽を備え、
前記移動回転手段は、前記クリーニング液槽に移動可能に形成されていることを特徴とする薄切片標本作製装置。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか1項に記載の薄切片標本作製装置であって、
前記移動回転手段は、
前記中継体を把持及び把持解除可能に形成された把持部と、
前記中継体が載置可能に形成され、載置された前記中継体を前記回転軸回りに回転させる回転台と、
前記搬送手段、前記基板及び前記回転台の間を前記中継体が移動するように前記把持部を移動させる移動部と、
を有し、
前記制御部は、前記中継体を前記回転軸回りに回転させるときに、前記把持部に把持された前記中継体を前記移動部により前記回転台に移動させた後、前記把持部による前記中継体の把持を解除して前記中継体を前記回転台に載置し、その後、前記回転台により前記中継体を回転させることを特徴とする薄切片標本作製装置。
【請求項12】
請求項11に記載の薄切片標本作製装置であって、
前記中継体は、円盤状に形成され、
前記把持部は、前記中継体の外周部を挟持して把持することを特徴とする薄切片標本作製装置。
【請求項13】
請求項12に記載の薄切片標本作製装置であって、
前記中継体の外周部には、周方向の全域に亘る凹溝が形成され、
前記把持部は、互いに対向して配置され、接近することで前記中継体を挟持し、離間することで前記中継体を挟持解除する第1部材及び第2部材を有し、
前記第1部材には、前記中継体の外周面に倣って形成されると共に前記第2部材との間で前記中継体を挟持するときに前記中継体の外周面に当接する当接面が形成され、
前記第2部材には、互いに間隔をあけて設けられると共に前記第1部材との間で前記中継体を挟持するときに前記凹溝に係合される係合凸部が突設されていることを特徴とする薄切片標本作製装置。
【請求項14】
生体試料が包埋された包埋ブロックから切削された薄切片を搬送する搬送手段と、
前記薄切片が着脱可能に定着される定着面を有する中継体と、
前記搬送手段から離間して配置された基板と前記搬送手段との間で前記中継体を移動させると共に、前記中継体を前記定着面に直交する回転軸回りに回転させる移動回転手段と、
を備える薄切片標本作製装置を用いて、前記搬送手段で搬送された前記薄切片を前記基板に受け渡して薄切片標本を作製する薄切片標本作製方法であって、
前記移動回転手段により、前記中継体を前記搬送手段に移動させ、前記搬送手段で搬送された前記薄切片を前記定着面で受け取って定着させる受取工程と、
前記受取工程の後、前記移動回転手段により、前記中継体を前記基板に移動させ、前記定着面に定着された前記薄切片を離脱させて前記基板に受け渡す受渡工程と、
を備え、
前記受取工程と前記受渡工程の間に、予め設定された前記定着面及び前記薄切片の相対的な前記回転軸回りの位置に基づいて前記移動回転手段により前記中継体を回転させる回転工程を更に備えていることを特徴とする薄切片標本作製方法。
【請求項15】
請求項14に記載の薄切片標本作製方法であって、
前記薄切片が定着された前記定着面を撮像する撮像工程を備え、
前記回転工程は、前記予め設定された前記定着面及び前記薄切片の相対的な前記回転軸回りの位置を表す基準データと前記撮像工程で得られた撮像データとに基づいて前記移動回転手段により前記中継体を回転させることを特徴とする薄切片標本作製方法。
【請求項16】
請求項15に記載の薄切片標本作製方法であって、
前記受渡工程は、前記基準データと前記撮像データとに基づいて前記移動回転手段により前記基板に対して前記中継体を移動させることを特徴とする薄切片標本作製方法。
【請求項17】
請求項14又は15に記載の薄切片標本作製方法であって、
前記定着面に定着された前記薄切片を前記定着面から離脱させて廃棄する廃棄工程と、
前記撮像データに基づいて前記薄切片が不良か否かを判定する判定工程と、
を備え、
前記判定工程は、前記薄切片を不良と判定した場合に、前記廃棄工程を行うことを特徴とする薄切片標本作製方法。
【請求項18】
請求項14から17のいずれか1項に記載の薄切片標本作製方法であって、
前記薄切片標本作製装置は、
液体が貯留された中継液槽を備え、
前記搬送手段が、上面に載置された前記薄切片を搬送すると共に一端部が前記中継液槽に浸漬された搬送体を有する構成とされ、
前記受取工程は、前記薄切片の一部が前記搬送体から離脱して前記液体の液面に浮かぶと共に当該薄切片の他の一部が前記搬送体の上面に残った状態で、前記薄切片の一部が前記定着面に接触するように、前記移動回転手段により前記中継体を移動させることを特徴とする薄切片標本作製方法。
【請求項19】
請求項18に記載の薄切片標本作製方法であって、
前記液面に浮かんだ前記薄切片を検出する検出工程を備え、
前記受取工程は、前記検出工程により得られた検出データに基づいて、前記移動回転手段により前記中継体を移動させて前記薄切片を前記定着面に定着させることを特徴とする薄切片標本作製方法。
【請求項20】
請求項18又は19に記載の薄切片標本作製方法であって、
前記薄切片標本作製装置は、前記基板が、前記搬送手段から離間すると共に一部が前記中継液槽に浸漬された基板位置に配置される構成とされ、
前記受渡工程は、前記薄切片の一部が前記中継体から離脱して前記液体の液面に浮かぶと共に当該薄切片の他の一部が前記定着面に残った状態で、前記薄切片の一部が前記基板位置に配置された前記基板に接触するように、前記移動回転手段により前記中継体を移動させることを特徴とする薄切片標本作製方法。
【請求項21】
請求項20に記載の薄切片標本作製方法であって、
前記薄切片標本作製装置は、前記基板を把持して前記基板位置に配置させると共に、前記基板を前記中継液槽の液面に対して昇降可能に形成された基板搬送手段を備える構成とされ、
前記受渡工程は、前記基板搬送手段により前記中継液槽に貯留された前記液体に前記基板を前記基板位置よりも深くまで浸漬させた後に当該基板を引き上げて前記基板位置に配置させることを特徴とする薄切片標本作製方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2010−261794(P2010−261794A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−112284(P2009−112284)
【出願日】平成21年5月1日(2009.5.1)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】