説明

薄型二次電池用充放電試験装置のチャック機構

【課題】 本発明は薄型二次電池用充放電試験装置のチャック機構に係り、従来の煩わしい作業、即ち、例えば多数の薄型二次電池を収納容器等に収納、固定するといった作業を軽減し、併せて薄型二次電池(電極)に対する確実なチャックを可能としたチャック機構を提供することを目的とする。
【解決手段】 並列する複数の薄型二次電池を保持する電池収納体に結合可能な第1ガイド部と、前記第1ガイド部と連結されて弾性的に並列する複数のチャック部とを備え、前記各チャック部は、前記電池収納体の対応する所定数の薄型二次電池と弾性的に位置合わせする第2ガイド部を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板状に形成された薄型二次電池の充放電試験装置に用いる電極端子のチャック機構に関する。
【背景技術】
【0002】
図23及び図24の如く板状に形成された薄型二次電池1が多くの技術分野で利用されており、この薄型二次電池1は、扁平なケース3から1組の薄片状の電極端子5、7が一方向に突出した構造となっている。
【0003】
そして、従来の二次電池と同様、この薄型二次電池1も、工場生産されてから何回かの充放電試験の品質検査が行われた後、合格品が半充電されて製品として出荷されている。
【0004】
図25は特許文献1に開示された薄型二次電池の充放電試験装置を示し、この充放電試験装置9は、薄型二次電池1の電極端子5、7に接続するクリップ型接続端子11群を垂架状に備えた充放電用ラック13と、前記接続端子11群に対向して配置され、各接続端子11に接離する接触子15群を支持する接触子支持体17と、前記接触子支持体17を所定方向に進退させ、対応する接続端子11及び接触子15を接離する支持体進退機構19と、前記接触子15群にそれぞれ接続する充放電電源21とを備えたもので、当該充放電試験装置9によって一度に多くの薄型二次電池1の充放電試験が可能となっている。
【0005】
また、特許文献2には、底板に形成された多くの挿通穴に薄型二次電池の電極端子を夫々挿入して、多数の薄型二次電池を一定方向に収納、配置する電池収納容器と、前記電池収納容器の挿通穴から突出する各電極端子をチャックするチャック機構を備え、前記電池収納容器に多数の薄型二次電池を収納、配置した後、第1動作(昇降)機構によりチャック機構を電池収納容器に近づけ、その後、第2動作(昇降)機構によって各電極端子をチャック機構でチャックさせる薄型二次電池の充放電及び検査システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−58135号公報
【特許文献2】特開2004−319334号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
而して、前記充放電試験装置9は一度に多くの薄型二次電池1の充放電試験が可能であるが、多数のクリップ型接続端子11群への薄型二次電池1(電極端子5、7)の取付けが面倒であった。
【0008】
而も、接続端子11群を備えた充放電用ラック13が充放電試験装置9に一体に組み込まれているため、充放電試験の場所的制限を受けると共に、装置全体が大型化してしまう欠点が指摘されていた。
【0009】
また、特許文献2に開示された従来例にあっても、一度に多くの薄型二次電池の充放電試験が可能であるが、試験に先立ち、多くの薄型二次電池を電池収納容器に収納、配置する作業を要し、作業性が悪いといった不具合がある。
【0010】
しかし、一方で充放電試験を行うに当たり、前記電池収納容器の如く薄型二次電池を固定する構造がないと、薄型二次電池の電極の位置が不規則となって、精度よくチャックをできなくなる虞があった。
【0011】
本発明は斯かる実情に鑑み案出されたもので、一度に多くの薄型二次電池の充放電試験を行うに当たり、既述した従来の煩わしい作業、即ち、クリップ型接続端子群への薄型二次電池の取付けや、多数の薄型二次電池を電池収納容器に収納、配置するといった作業を軽減し、併せて薄型二次電池(電極)に対する確実なチャックを可能とした薄型二次電池用充放電試験装置のチャック機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
斯かる目的を達成するため、請求項1に係る薄型二次電池用充放電試験装置のチャック機構は、並列する複数の薄型二次電池を保持する電池収納体に結合可能な第1ガイド部と、前記第1ガイド部と連結されて弾性的に並列する複数のチャック部とを備え、前記各チャック部は、前記電池収納体の対応する所定数の薄型二次電池と弾性的に位置合わせする第2ガイド部を有することを特徴とする。
【0013】
そして、請求項2に係る発明は、請求項1に記載の薄型二次電池用充放電試験装置のチャック機構に於て、前記第2ガイド部は、前記各チャック部に対応して電池収納体側に形成された位置決め部を挟持する2本一対の位置決めピンからなり、各対の位置決めピンは、並列する複数のチャック部の両端側から中央のチャック部へと順次短寸とされていることを特徴とする。
【0014】
また、請求項3に係る発明は、請求項1または請求項2に記載の薄型二次電池用充放電試験装置のチャック機構に於て、前記チャック部は、支持基台に装着した駆動手段の駆動で支持基台の前後方向へ移動可能で、前面に縦方向に複数対のローラを並列した複数の分割ローラ保持部材を、支持基台の左右方向に配したシャフトを介して移動可能に並列したローラ保持部材と、前記各分割ローラ保持部材と、夫々、一つのユニットとした複数の分割チャック保持部材を、支持基台の左右方向に配したシャフトを介して弾性的に移動可能に並列したチャック保持部材とからなり、前記分割チャック保持部材は、前記各対のローラ間を挿通して先端側が前方へ平面視略V字状に拡開し、後端側に充放電試験装置の電線が接続された2枚1組の短冊状の金属板からなる複数のチャック部材が取り付くと共に、各分割チャック保持部材に、前記第2ガイド部が設けられていることを特徴とする。
【0015】
更に、請求項4に係る発明は、請求項1に記載の薄型二次電池用充放電試験装置のチャック機構に於て、2枚1組の前記チャック部材の先端に、チャック面に多数の突起が突設された酸化皮膜剥離挟持部材が装着されていることを特徴とし、請求項5に係る発明は、請求項4に記載の薄型二次電池用充放電試験装置のチャック機構に於て、前記酸化皮膜剥離挟持部材は、チャック部材の先端側から前記挟持面へと内方に傾斜したガイド部が形成されていることを特徴とする。
【0016】
そして、請求項6に係る発明は、請求項4または請求項5に記載の薄型二次電池用充放電試験装置のチャック機構に於て、前記チャック部材の先端にスリットが前後方向に形成され、当当該スリットで区画されたチャック部材の各先端に、前記酸化皮膜剥離挟持部材が装着されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、充放電試験に先立ち、従来の如く多数の薄型二次電池を所定の収納容器等内に収納、固定させるというような煩わしい作業を軽減しつつ、正確、良好にチャック部で電極端子をチャックすることができる。
【0018】
つまり、本発明は、電池収納体側では並列させた薄型二次電池を挟持するだけで、後は電池収納体側をチャック機構に近づけることで、先ず、第1ガイド部によって電池収納体側の電池収容幅に応じたチャック機構のチャック幅が調整され、この後は、第2ガイド部によって、第1ガイド部と弾性的に連結するチャック部が、順次自動的、弾性的に薄型二次電池と位置合わせが行われる構造のため、結果的に作業負担を少なくしつつチャック精度が向上する利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】請求項1乃至請求項6の一実施形態に係るチャック機構の正面側斜視図である。
【図2】チャック機構の背面側斜視図である。
【図3】チャック機構の背面側斜視図である。
【図4】チャック機構の背面側斜視図である。
【図5】チャック機構の背面側斜視図である。
【図6】チャック機構の平面図である。
【図7】チャック機構の側面図である。
【図8】チャック部材がローラで閉じられた状態のチャック機構の平面図である。
【図9】チャック部材がローラで閉じられた状態のチャック機構の側面図である。
【図10】チャック機構の要部拡大斜視図である。
【図11】分割ローラ保持部材と分割チャック保持部材の正面側斜視図である。
【図12】分割ローラ保持部材と分割チャック保持部材の背面側斜視図である。
【図13】剥離挟持部材の平面図、正面図、底面図である。
【図14】マガジンの正面側斜視図である。
【図15】チャック機構とこれに対向配置されたマガジンの要部拡大斜視図である。
【図16】チャック機構とこれに対向配置されたマガジンの斜視図である。
【図17】チャック機構とこれに対向配置されたマガジンの平面図である。
【図18】チャック機構とこれに対向配置されたマガジンの側面図である。
【図19】チャック機構とこれに対向配置されたマガジンの平面図である。
【図20】チャック機構とこれに対向配置されたマガジンの側面図である。
【図21】チャック部材が電極端子を挟持している状態のチャック機構とマガジンの平面図である。
【図22】チャック部材が電極端子を挟持している状態のチャック機構とマガジンの側面図である。
【図23】薄型二次電池の斜視図である。
【図24】薄型二次電池の平面図である。
【図25】特許文献1に開示された充放電試験装置の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0021】
図1乃至図12は請求項1乃至請求項6の一実施形態に係る薄型二次電池用充放電試験装置のチャック機構を示し、図1乃至図5に於て、31は前後左右に配した複数の支柱31a〜31wで形成された直方体形状の枠体からなる支持基台で、図1及び図2に示すように左右側方の支柱31o、31p間に架設された支柱31wと、左右後方の支柱31m、31n間に架設された支柱31qとの間に平面視矩形状の載置板33が取り付き、当当該載置板33上に、図6乃至図9の如くピストンロッド35が支持基台31の前後方向に伸縮するエアシリンダ(駆動手段)37が装着されている。
【0022】
そして、図6乃至図9に示すように、ピストンロッド35の先端に支持枠体39を介してローラ保持部材41が取り付き、更に、当当該ローラ保持部材41に対応してチャック保持部材43が、支持基台31の左右の支柱31k、31l間に架設した1本のシャフト45に沿って支持基台31の左右方向に移動可能に装着されており、前記ローラ保持部材41とチャック保持部材43とによって本実施形態に於けるチャック部が構成されている。
【0023】
即ち、図2、図6及び図8に示すようにエアシリンダ37のケーシング37aには、ピストンロッド35に沿ってその左右に夫々1本の円柱状のガイド部材47が挿通している。
そして、両ガイド部材47とピストンロッド35の先端に、周縁部に補強用の立壁49が形成された一枚の板材からなる正面視矩形状の連結プレート51が、支持基台31の正面に向かって横方向に長尺に固着されている。
【0024】
また、連結プレート51には、所定の間隔を空けて6本の支柱53a、53b、53c、53d、53e、53fが上下方向に固着され、更に、各支柱53a、53b、53c、53d、53e、53fの上下に、夫々、1本の支柱55、57が支持基台31の左右方向に固着されている。そして、図2、図3、図7及び図9に示すように、上下の支柱55、57の左右端部間に、夫々、一枚の側面視コ字状の支持プレート59、61が固着されており、支柱55、57が夫々支持プレート59、61の基部59a、61aの上下に連結されて、前記支持枠体39が形成されている。
【0025】
そして、図1乃至図6、図10に示すように、支持プレート59、61の基部59a、61aの上部から前方に突出する上側アーム59b、61bの先端側に1本のシャフト63が架設され、更に、基部59a、61aの下部から前方に突出する下側アーム59c、61cの先端側に、1本のシャフト65が前記シャフト63と平行に架設されている。そして、この上下2本のシャフト63、65間に、複数の分割ローラ保持部材67が並列されてローラ保持部材41が形成されている。
【0026】
図11及び図12は分割ローラ保持部材67とこれとユニット化された分割チャック保持部材69を示し、既述したようにシャフト63、65間に複数の分割ローラ保持部材67が並列されてローラ保持部材41が形成され、後述するように前記シャフト45に複数の分割チャック保持部材69が並列されてチャック保持部材43が形成されている。
【0027】
而して、図11及び図12中、71は一枚のプレートからなるローラ取付板で、上部と下部に断面略L字状の取付フランジ73、75が形成され、左右側部には補強用の立壁77が形成されている。そして、図10に示すように上方の取付フランジ73に、前記シャフト63が挿通するブロック状の保持部材79が固着され、下方の取付フランジ75に、前記シャフト65が挿通するブロック状の保持部材81が固着されており、総ての分割ローラ保持部材67は、前記保持部材79、81を介して上下のシャフト63、65間に移動可能に取り付けられている。
【0028】
更に、図11に示すようにローラ取付板71の正面に、後述する複数対のチャック部材83、85が挿通する正面視矩形状の挿通穴87、89が上下に形成され、両挿通穴87、89間に長穴91が横方向に開口している。そして、上方の挿通穴87の上下に、一対のローラ取付ブラケット93、95が固着され、両ローラ取付ブラケット93、95間に4対の円柱状のローラ97が回転可能に取り付けられている。
【0029】
図11に示すように上方のローラ取付ブラケット93は、前記ローラ97が挿通する複数のローラ挿通穴99が先端側に等間隔に開口する断面略L字状の第1ローラ取付ブラケット93aと、当当該第1ローラ取付ブラケット93aと若干の隙間を空けてその上方に配置された断面略L字状の第2ローラ取付ブラケット93bとで構成されており、第2ローラ取付ブラケット93bの先端側には、ローラ97の軸部101を支持する支持穴103が前記ローラ挿通穴99に対応して設けられている。
【0030】
そして、他方のローラ取付ブラケット91の先端側には、ローラ97の軸部101を支持する支持穴105が前記支持穴103に対応して形成されており、前記ローラ挿通穴99と支持穴103、105を介してローラ取付ブラケット93、95間に4対のローラ97が回転可能に取り付けられている。
【0031】
一方、下方の挿通穴89には、当当該挿通穴89の下部に前記ローラ取付ブラケット939が上下を反転させて取り付き、挿通穴89の上部にローラ取付ブラケット95が上下を反転させて取り付いて、両ローラ取付ブラケット93、95間に4対のローラ97が回転可能に取り付けられている。
【0032】
分割ローラ保持部材67はこのように構成されており、複数の分割ローラ保持部材67が前記シャフト63、65間に移動可能に取り付いて、エアシリンダ37の駆動で支持基台31の前後方向に移動可能なローラ保持部材41が形成されている。
【0033】
次に、チャック保持部材43について説明すると、図1乃至図10に示すように支持基台31の左右の支柱31k、31lの略中央に、夫々、支持ブラケット107、109が取り付き、両支持ブラケット107、109間に1本のシャフト45がシャフト63、65と平行に架設されている。そして、図11及び図12に示すように前記シャフト45が、各分割チャック保持部材69の保持部材111を挿通している。
【0034】
既述したように分割チャック保持部材69は、前記分割ローラ保持部材67とユニット化されて対をなし、複数の分割チャック保持部材69がシャフト45に沿って並列されてチャック保持部材43を構成している。
【0035】
図11及び図12に於て、113はローラ取付板71に沿って配置された厚肉なチャック取付板で、その背面側中央に、シャフト45が挿通するブロック状の前記保持部材111が取り付けられている。そして、チャック取付板113の前面に、既述した各対のローラ97に対応して4つのチャック部材83、85が横方向に上下二段に並設されている。
【0036】
図示するようにチャック部材83、85は、夫々、一例としてリン青銅等のバネ性を有する2枚1組の短冊状の金属板115、117からなり、2枚の金属板115、117の後端側は重合してチャック取付板113に形成された貫通穴(図示せず)を貫通している。そして、チャック取付板113の背面から突出した一方の金属板115の後端は、チャック取付板113の背面に沿ってL字状に折曲されて当該背面にネジ止めされている。
【0037】
同様に、チャック取付板113の背面から突出した他方の金属板117の後端は、チャック取付板113の背面に沿ってL字状に折曲されて当該背面にネジ止めされており、図12に示すように金属板115、117の後端は上下方向に短寸法に切り欠かれてチャック取付板113の背面の上下に配されている。そして、チャック取付板113の背面から突出した金属板115、117の後端に、夫々、充放電試験装置からの電線が接続できるようになっている。
【0038】
そして、図11に示すようにチャック取付板113の前側に突出するチャック部材83、85(金属板115、117)毎に対応して、既述した一対のローラ97が配置されており、各対のローラ97間に各対の金属板115、117が挿通している。
【0039】
図示するようにローラ97間を挿通する金属板115、117の先端側は平面視略V字状に拡開して先端がやや内方へ折曲されており、後述するようにエアシリンダ37の駆動でローラ保持部材41が前方へ移動すると、平面視略V字状に拡開していた金属板115、117(チャック部材83、85)が、夫々、一対のローラ97で閉じられるようになっている。
【0040】
また、金属板115、117の先端には、夫々、スリット119が前後方向に形成されており、上側のチャック部材83を構成する金属板115、117には、夫々、3本のスリット119が形成され、下側のチャック部材85を構成する金属板115、117には、夫々、2本のスリット119が形成されている。
【0041】
そして、図11に示すようにスリット119で区画された各金属板115、117の先端側に、一対の酸化皮膜剥離挟持部材(以下、「剥離挟持部材」という)121がカシメ固定されている。
【0042】
即ち、図10に示すようにスリット119で区画された各金属板115、117の先端側には、前記剥離挟持部材121をカシメ固定する取付穴123が設けられている。そして、図13(a)〜(c)に示すように剥離挟持部材121は、前記取付穴123にカシメ固定される脚部121aと、これに一体形成された平面視円形状の厚肉な円板状の頭部121bとで構成されている。そして、頭部121bの頂部たる挟持面125に6本のスパイクピン127が突設されており、後述するように薄型二次電池1の電極端子5、7が金属板115、117間に配置された状態で、金属板115、117が一対のローラ97で閉じられると、一対の剥離挟持部材121の6本のスパイクピン127が電極端子5、7の表裏に圧接して、電極端子5、7の表面に形成された酸化皮膜を剥離するようになっている。
【0043】
また、図11及び図13(a)〜(c)に示すように前記頭部121bには、チャック部材83、85の先端側から挟持面125へと内方に傾斜したガイド部129が形成されており、斯かるガイド部材129が、位置ズレした電極端子5、7を挟持面125へとガイドするようになっている。
【0044】
そして、既述したように複数の分割チャック保持部材69がシャフト45に並列してチャック保持部材43が構成されているが、図1、図6及び図10に示すように支持基台31の支柱31l側には、後述するマガジン(電池収納体)131の電池押圧板133を挟持する一つの幅決め挟持部材(第1ガイド部)135が、シャフト45に移動可能に取り付けられている。
【0045】
図示するように幅決め挟持部材135は、チャック取付板113と同一の肉厚からなる正面視矩形状の基台137の正面に平面視U字状の挟持アーム139が取り付き、基台137の裏面側に前記保持部材111が取り付いて構成されている。また、基台137の左右の側面の下方には、有底で内部に段差を有するシャフト挿入穴141が設けられており、図10に示すように両シャフト挿入穴141に、夫々、1本の位置決めシャフト143が挿入され、更に、当当該位置決めシャフト143の外周にコイルスプリング145が巻装されている。
【0046】
そして、支柱31l側のシャフト挿入穴141に挿入された位置決めシャフト143は、支柱支柱31lに取り付く支持ブラケット109のバネ挿入穴(図示せず)内に挿入、支持され、コイルスプリング145の一端側は当当該バネ挿入穴内に挿入、保持されている。
【0047】
一方、反支柱31l側のシャフト挿入穴(図示せず)に挿入された図示しない位置決めシャフトとコイルスプリングは、これに隣接するチャック取付板113に設けたバネ挿入穴147内に挿入、支持されている。
【0048】
即ち、図11に示すようにチャック取付板113の左側側面には、コイルスプリング145の一端側が挿入、保持されたバネ取付穴149が形成されると共に、その下側に位置決めピン(回転止めピン)151が突設されている。
【0049】
一方、図12に示すようにチャック取付板113の右側側面には、隣接するチャック取付板113側の前記コイルスプリング147が挿入可能なバネ挿入穴147と、前記位置決めピン151が挿入可能な位置決めピン挿入穴153が形成されている。
【0050】
更に、図7の如く支柱31kに取り付く支持ブラケット107には、当当該支柱31kに隣接するチャック取付板113のコイルスプリング147と位置決めピン153を保持する受部155、157が上下に形成されており、シャフト45に沿って左右の支柱31k、31l間に配列した分割チャック保持部材69と幅決め挟持部材135は、夫々、前記コイルスプリング145と位置決めピン151を介して互いに連設されると共に、コイルスプリング147のバネ力によって支柱31k、31l間に均等に離間配置されている。
【0051】
図14は充放電試験を行う多数の薄型二次電池1が収容されたマガジン131を示し、図示するようにマガジン131は、平面視矩形状の基台159上の左右に設置された一対の側板161、163と、両側板161、163間に配置された複数枚の隔壁165と、前記幅決め挟持部材135に対応して隔壁165群の一端側(一方の側板163側)に配置された電池押圧板133と、前記隔壁165と電池押圧板133の四隅を貫通して側板161、163の四隅間に架設された4本のガイドステー167を備え、隔壁165と電池押圧板133はガイドステー167に沿って移動可能となっている。
【0052】
図14及び図17に示すように隔壁165は、電極端子5、7を前方(チャック部材83、85側)に突出させて1枚宛の薄型二次電池1を縦方向に収納する収納室を側板161と電池押圧板133との間に区画形成するもので、隔壁165で区画された収容室の数は上下のチャック部材83、85の数と一致している。
【0053】
そして、電池押圧板133の側面に図示しない螺着部が形成され、当当該螺着部に、側板163を挿通する1本の調整ネジ169の一端側が螺着している。そして、当当該調整ネジ169を緩めると、側板161と電池押圧板133との間で各隔壁165がガイドステー167に沿って移動可能となり、各収容室内に薄型二次電池1を1枚宛収容した後、調整ネジ169を締め付けると、電池押圧板133が各隔壁165を押圧、固定して、隔壁165の数に応じたマガジン131の電池収容幅Lが決定されるようになっている。
【0054】
また、図14及び図19に示すように電池押圧板133には、前記幅決め挟持部材139側に突出する先細な挟持片(位置決め部)171が設けられており、後述するようにマガジン131を本実施形態のチャック機構173側に引き寄せた際に、図19に示すように、先ず、前記挟持アーム139が挟持片171を挟持するようになっている。
【0055】
従って、既述したようにシャフト45に沿って左右の支柱31k、31l間にコイルスプリング147のバネ力で均等に離間配置されていた分割チャック保持部材69と幅決め挟持部材135は、新たに電池収容幅Lの寸法内で自動的にバネ力で均等に離間調整されることとなる。このとき、各分割チャック保持部材69に設けた位置決めピン151が、隣接する分割チャック保持部材69のピン挿入穴153に挿入して分割チャック保持部材69を位置決めし、シャフト45を中心としたチャック保持部材43の回転を防止することとなる。
【0056】
更に、図14及び図15に示すように各隔壁165の中央には、チャック機構173側に突出する第2の挟持片(位置決め部)175が突設されており、当当該挟持片175は先細で前記挟持片171よりも後方に配置されている。
【0057】
一方、図11に示すように各分割チャック保持部材69には、ローラ取付板71の長穴91を挿通して2本の位置決めピン(第2ガイド部)177が前方へ突設されており、既述したように挟持アーム139が挟持片171を挟持した後、更に、マガジン131がチャック機構173側へ引き寄せられると、2本の位置決めピン177がこれに対向する一つの挟持片175を左右から挟持するようになっている。
【0058】
尚、図15に示すように2本1組の位置決めピン177は、左右の分割チャック保持部材69から中央の分割チャック保持部材69へと順次短寸に形成されており、一度に総ての位置決めピン177が挟持片175を挟持せず、左右両側の位置決めピン177から中央の位置決めピン177へと順次挟持片175を挟持していくようになっている。
【0059】
本実施形態に係るチャック機構173とマガジン131はこのように構成されており、当当該チャック機構173を用いて薄型二次電池1の充放電試験を行うには、図16に示すように先ず、チャック機構173を所定の載置台179上に設置する。
【0060】
図15及び図16に示すように載置台179の前方には、2本のガイドレール181上に移動台183が移動可能に取り付くガイド機構185が設置されている。そして、移動台183には、載置台179の裏面側に装着した図示しないエアシリンダのピストンロッドが連結されており、当当該エアシリンダの駆動で載置台179がガイドレール181に沿って前後方向に移動できるようになっている。
【0061】
次に、複数の薄型二次電池1を各収容室に収容した図14のマガジン131を、スタッカークレーンで移動台183上に搬送して、基台159を移動台183に固定する。尚、このとき、マガジン131は既に調整ネジ169が締め付けられて所定の電池収容幅Lが設定されている。
【0062】
これにより、図15乃至図18の如くチャック機構173に対向してマガジン131が移動台183上に配置され、各チャック部材83、85に対応して各薄型二次電池1の電極端子5、7が対向配置される。
【0063】
尚、このとき、電池押圧板133に対応して幅決め挟持部材135の挟持アーム139が対向配置されるようにチャック機構173とマガジン131は予め設計されている。また、既述したように隔壁165で区画された収容室の数はチャック部材83、85の数と一致しているため、チャック部材83、85と薄型二次電池1の数は一致している。
【0064】
この後、載置台179の裏面側のエアシリンダを駆動して、移動台183に連結させたピストンロッドを縮退させると、ガイドレール181に沿ってマガジン131がチャック機構173側へ移動し乍ら、先ず、挟持アーム139が電池押圧板131の挟持片171を挟持する。
【0065】
すると、左右の支柱31k、31l間にコイルスプリング147のバネ力で均等に離間配置されていた分割チャック保持部材69が、幅決め挟持部材135と支柱31kとの間で、新たに電池収容幅Lの寸法内で自動的にバネ力で均等に離間調整され、このとき、位置決めピン151が、隣接する分割チャック保持部材69のピン挿入穴153に挿入して分割チャック保持部材69を位置決めし、シャフト45を中心としたチャック保持部材43の回転を常時防止する。
【0066】
そして、マガジン131の更なる移動に伴い、左右の分割チャック保持部材69に突設された長尺な位置決めピン177から順次挟持片175を挟持し乍ら、その間の分割チャック保持部材69がコイルスプリング147のバネ力でならされて、更に順次均等に離間調整されていくこととなる。そして、図19及び図20に示すようにマガジン131が所定寸法移動してエアシリンダが停止すると、上下の各チャック部材83、85の2枚の金属板115、117間に、夫々、1枚の薄型二次電池1の電極端子5、7が配置される。
【0067】
尚、既述したように金属板115、117に取り付く剥離挟持部材121には、チャック部材83、85の先端側から挟持面125へと内方に傾斜したガイド部129が形成されているため、斯かるガイド部材129が、位置ズレした電極端子5、7を挟持面125へとガイドする。
【0068】
この後、各分割チャック保持部材69のチャック取付板113の背面から突出した金属板115、117の後端に充放電試験装置の電線を接続してエアシリンダ37を駆動させると、ピストンロッド35が前方へ伸長して、ピストンロッド35に取り付くローラ保持部材41(各分割ローラ保持部材67)が前方へ移動する。そして、斯様にローラ保持部材41が移動すると、図21及び図22に示すように平面視略V字状に拡開していた各チャック部材83、85の金属板115、117が、夫々、一対のローラ97で閉じられて、各金属板115、117の先端側に取り付く剥離挟持部材121の挟持面125が、各薄型二次電池1の上下の電極端子5、7を夫々左右から挟持する。
【0069】
そして、本実施形態では、各金属板115、117の先端に複数のスリット119を前後方向に設けて金属板115、117の先端側を細分化しているため、金属板115、117に組付誤差等があっても、金属板115、117の剥離挟持部材121が電極端子5、7の表面に確実に圧接し、挟持面125に突設したスパイクピン127が電極端子5、7の表面に形成された酸化皮膜を剥離する。
【0070】
この後、チャック部材83、85(金属板115、117)の後端側に接続された充放電試験の電線を介して電気が供給されて、各チャック部材83、85で挟持された各薄型二次電池1の充放電試験が開始される。
【0071】
そして、試験終了後、エアシリンダ37のピストンロッド35を後方へ縮退させてローラ保持部材41を後方へ移動操作すれば、ローラ97で閉じられていた各チャック部材83、85の金属板115、117が図19の如く再び拡開することとなる。
【0072】
このように、薄型二次電池1の充放電試験を行うに当たり、本実施形態に係るチャック機構173を用いれば、一度に多くの薄型二次電池1の充放電試験が可能になることは勿論、特許文献1の従来例の如く充放電試験に先立ち多数の薄型二次電池1を1個宛クリップ型接続端子群へ接続したり、特許文献2の従来例の如く多くの薄型二次電池を電池収納容器の挿通穴に挿入、収納するといった煩わしい作業を軽減しつつ、正確、良好に電極端子5、7をチャック部材83、85でチャックすることができる。
【0073】
つまり、既述したように本実施形態は、マガジン131側では収納室内に薄型二次電池1を挟持するだけで、後はマガジン131側をチャック機構173に近づけることで、先ず、挟持アーム139が電池押圧板131の挟持片171を挟持して電池収容幅Lが調整され、この後は、左右の分割チャック保持部材69側に突設された長尺な位置決めピン177から順次挟持片175を挟持し乍ら、その間の分割チャック保持部材69がコイルスプリング147のバネ力でならされて、更に順次均等に離間調整されていく構造のため、結果的に作業負担を少なくしつつチャック精度を向上させている。
【0074】
更に、多数の薄型二次電池1を収容したマガジン131をチャック機構173の前面まで運搬するだけて速やかに充放電試験ができ、充放電試験の場所的制限を受けることもない。
【0075】
そして、一対のローラ97を用いて、拡開しているチャック部材83、85の金属板115、117を同時に閉じるように構成しているので、金属板115、117の開閉動作を滑らかに行うことができ、また、金属板115、117先端に複数のスリット119を前後方向に設けて金属板115、117の先端側を細分化し、更には剥離挟持部材121のガイド部材129が位置ズレした電極端子5、7を挟持面125へとガイドするように構成しているため、金属板115、117に組付誤差等があっても、金属板115、117(剥離挟持部材121)によって電極端子5、7を確実に挟持することができると共に、スパイクピン127によって電極端子5、7の表面の酸化皮膜を良好に剥離することができる利点を有する。
【0076】
また、複数の分割ローラ保持部材67を横方向に並列してローラ保持部材41を構成し、複数の分割チャック保持部材69を横方向に並列してチャック保持部材43を構成しているため、個々の部品交換が容易でメンテナンスがし易い利点を有する。
【0077】
尚、前記実施形態は、第2ガイド部たる2本一対の位置決めピン177を、左右の分割チャック保持部材69から中央の分割チャック保持部材69へと順次短寸に形成したが、2本一対の位置決めピン177を、第1ガイド部たる幅決め挟持部材135側から他方の支柱31k方向に亘って順次短寸に形成してもよく、斯かる実施形態によっても、前記実施形態と同様、所期の目的を達成することが可能である。
【0078】
また、前記実施形態は、ローラ保持部材41を前後動させる駆動手段としてエアシリンダ37を用いたが、駆動手段はエアシリンダに限定されず、モータやその他のアクチュエータを駆動手段として用いてもよい。
【符号の説明】
【0079】
1 薄型二次電池
5、7 電極端子
31 支持基台
35 ピストンロッド
37 エアシリンダ
39 支持枠体
41 ローラ保持部材
43 チャック保持部材
45、63、65 シャフト
51 連結プレート
59、61 支持プレート
67 分割ローラ保持部材
69 分割チャック保持部材
71 ローラ取付板
79、81、111 保持部材
83、85 チャック部材
93、95 ローラ取付ブラケット
97 ローラ
107、109 支持ブラケット
113 チャック取付板
115、117 金属板
119 スリット
121 剥離挟持部材
125 挟持面
127 スパイクピン
129 ガイド部
131 マガジン
133 電池押圧板
135 幅決め挟持部材(第1ガイド部)
139 挟持アーム
141 シャフト挿入穴
143 位置決めシャフト
145 コイルスプリング
147 バネ挿入穴
149 バネ取付穴
177 位置決めピン(第2ガイド部)
153 ピン挿入穴
155、157 受部
159 基台
161、163 側板
165 隔壁
167 ガイドステー
169 調整ネジ
171、175 挟持片
173 チャック機構
179 載置台
181 ガイドレール
183 移動台
185 ガイド機構


【特許請求の範囲】
【請求項1】
並列する複数の薄型二次電池を保持する電池収納体に結合可能な第1ガイド部と、
前記第1ガイド部と連結されて弾性的に並列する複数のチャック部とを備え、
前記各チャック部は、前記電池収納体の対応する所定数の薄型二次電池と弾性的に位置合わせする第2ガイド部を有することを特徴とする薄型二次電池用充放電試験装置のチャック機構。
【請求項2】
前記第2ガイド部は、前記各チャック部に対応して電池収納体側に形成された位置決め部を挟持する2本一対の位置決めピンからなり、各対の位置決めピンは、並列する複数のチャック部の両端側から中央のチャック部へと順次短寸とされていることを特徴とする請求項1に記載の薄型二次電池用充放電試験装。
【請求項3】
前記チャック部は、支持基台に装着した駆動手段の駆動で支持基台の前後方向へ移動可能で、前面に縦方向に複数対のローラを並列した複数の分割ローラ保持部材を、支持基台の左右方向に配したシャフトを介して移動可能に並列したローラ保持部材と、
前記各分割ローラ保持部材と、夫々、一つのユニットとした複数の分割チャック保持部材を、支持基台の左右方向に配したシャフトを介して弾性的に移動可能に並列したチャック保持部材とからなり、
前記分割チャック保持部材は、前記各対のローラ間を挿通して先端側が前方へ平面視略V字状に拡開し、後端側に充放電試験装置の電線が接続された2枚1組の短冊状の金属板からなる複数のチャック部材が取り付くと共に、各分割チャック保持部材に、前記第2ガイド部が設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の薄型二次電池用充放電試験装置のチャック機構。
【請求項4】
2枚1組の前記チャック部材の先端に、チャック面に多数の突起が突設された酸化皮膜剥離挟持部材が装着されていることを特徴とする請求項3に記載の薄型二次電池用充放電試験装置のチャック機構。
【請求項5】
前記酸化皮膜剥離挟持部材は、チャック部材の先端側から前記挟持面へと内方に傾斜したガイド部が形成されていることを特徴とする請求項4に記載の薄型二次電池用充放電試験装置のチャック機構。
【請求項6】
前記チャック部材の先端にスリットが前後方向に形成され、当該スリットで区画されたチャック部材の各先端に、前記酸化皮膜剥離挟持部材が装着されていることを特徴とする請求項4または請求項5に記載の薄型二次電池用充放電試験装置のチャック機構。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2012−3959(P2012−3959A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−138189(P2010−138189)
【出願日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【出願人】(000237662)富士通テレコムネットワークス株式会社 (682)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【出願人】(507357232)オートモーティブエナジーサプライ株式会社 (12)
【Fターム(参考)】