説明

薄型表示装置

【課題】 両面粘着テープ部材により被貼着物を貼着対象物に貼着時に、貼着面に閉じ込められた気泡を排出させ、所望の貼着信頼性を確保する手段を提供する。
【解決手段】 両面粘着テープが貼着された被貼着物を貼着する薄型表示装置の筐体外表面および該両面粘着テープの貼着面の筐体外表面に通気溝6および該通機溝に連通し該薄型表示装置の筐体内部方向に貫通した排気口7を形成する。この結果、該両面粘着テープおよび貼着対象物との貼着面に捕捉された気泡により貼着強度が低下することを防止すると共に、製品の外観を損なうことなく美麗な仕上がりを維持することを可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は音響機器やテレビなどのオーディオビジュアル機器、電子レンジや洗濯機などの家庭用電化機器において、該機器筐体外表面に操作表示パネルや装飾板を貼着時、外観を美麗に維持し、且つ該操作表示パネルや該装飾板の貼着強度を確保する貼着手段を提供するものである。
【背景技術】
【0002】
音響機器やテレビなどのオーディオビジュアル機器、電子レンジや洗濯機などの家庭用電化機器において、樹脂部材や金属部材で構成する操作表示パネルや装飾板などの被貼着物を該機器の筐体外表面に貼着することが広く行われている。液状接着剤による貼着手段では、接着剤の塗布量の不均一や接着剤塗布から貼り合わせまでの適正な放置時間(オープンタイム)を確保しないことに起因する接着強度のばらつき、接着剤に含まれる揮発性溶剤による人体への危害、接着剤の垂れによる職場環境汚染などの理由から、接着用部材としては該液状接着剤から両面粘着テープによる貼着手段に移行しつつある。
【0003】
両面粘着テープが貼着された被貼着物を貼着対象物に貼着する作業時に、両面粘着テープおよび貼着対象物間に気泡が入り込み、貼着時に両面粘着テープが貼着された被貼着物を貼着対象物に強く押圧しても、両面粘着テープおよび貼着対象物間の貼着面内に閉じ込められた気泡を貼着面から完全に排出することは困難であり、貼着面に気泡を捕捉した状態では貼着面積が減少し、または使用環境の温度変化に伴う気泡内の空気の膨張収縮の繰り返しにより長期間の使用中に該貼着面が徐々に剥離、または貼着強度が低下するなど、貼着信頼性を低下させる原因となっていた。
【0004】
両面粘着テープが貼着された被貼着物を貼着対象物に貼着時に、貼着面に捕捉された気泡を排出させ、所望の貼着信頼性を確保する従来技術としては、図5(a)の貼着部の縦断面図および5(b)の側面図に示すごとく、両面粘着テープ24および貼着対象物21の張着面に捕捉された気泡を貼着対象物面に形成された通気溝22を通じ、該通気溝22端部の排気口23から大気に排出する手段が適用され、同手段のさらなる改良案として特許文献1による考案もなされている。
【0005】
しかしながら、前述の従来技術によれば、図5(b)に示すごとく、両面粘着テープ24および貼着対象物21の接着面に捕捉された気泡は通気溝22に導かれ、さらに該気泡を大気に排出させるための多数の排気口23が筐体外表面の可視領域に露出し、機器の外観を損なう原因となり意匠デザイン面から好ましくない問題を有していた。
【特許文献1】特開2001−152100号公報
【0006】
特に薄型表示装置としての液晶テレビは、機器全体のプロポーションが薄型であるため、製品としての総体的な意匠デザインの印象は液晶表示面を含む前面部が大きく影響する。薄型表示装置のこのような特性から、前面の意匠デザインに種々のバリエーションを持たせる必要があるが、画面が大型化するにつれキャビネットの前部を樹脂材料の成型加工により形成す場合には、成型用金型投資が莫大なものとなる。この対応のため少量生産機種では、平坦な樹脂板の抜き加工による装飾板を筐体の前面部に貼着する加工手段が有効となる。このような状況に鑑み本発明はなされたものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
両面粘着テープが貼着された被貼着物を貼着対象物に貼着時に、貼着面に捕捉された気泡を排出させ、所望の貼着信頼性を確保するための従来の対応技術としては、貼着面の気泡を通気溝に導き、該通気溝の端部の排気口から大気に排出させていたが、多数の該排気口が筐体外表面の可視領域に露出することから、外観が損なわれ意匠面で好ましくない問題を有していた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
両面粘着テープが貼着された被貼着物を貼着する薄型表示装置において、該薄型表示装置の筐体外表面および両面粘着テープの当接面に大気と連通する通気溝を具備する。
【0009】
該薄型表示装置の筐体外表面および両面粘着テープの当接面に大気と連通する通気溝の端部を大気に開放するための該薄型表示装筐体の外表面に形成された排気口を閉塞し、該通機溝に連通し該薄型表示装置筐体の部材の厚さ方向に貫通した排気口を具備する。
【発明の効果】
【0010】
両面粘着テープが貼着された被貼着物を貼着対象物に貼着時に、該両面粘着テープおよび貼着対象物との貼着面に捕捉された気泡により貼着強度が低下することを防止するとともに、貼着面に捕捉された気泡を大気に排出させるための排気口の配設位置を製品外観の可視領域を避け、該製品の筐体内部に開放するよう排気口を設けることにより、製品の外観を損なうことなく美麗な仕上がりを維持することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図に基づいて本発明の実施形態を薄型表示装置の例として液晶テレビに適用した場合に関し以下に説明する。図1は本発明の実施例としての液晶テレビの外観斜視図で、1は画像表示を行う液晶表示パネル、2は前キャビネット、3は裏面が平坦に仕上げられた装飾用パネルで、4は後ろキャビネット、5は操作部である。
【0012】
図2は本発明の実施形態を示し、図2(a)は液晶テレビの前面部から装飾用パネルを取り外した前キャビネット2の前面図である。該前キャビネット2の前面部には通気溝6が略全面にわたり一様に分布し、各通気溝6は隔離されることなく相互に連通している。また複数の通気溝6が合流する点には、該通気溝6と連通し、該前キャビネット2の部材の厚さ方向に貫通し、該通気溝6の端部が筐体内部に開口する多数の排気孔7が配設されている。
【0013】
図2(b)は図2(a)中に鎖線A−Aで示す切断線に沿って切断した縦断面図、図2(c)は同様に図2(a)中に鎖線B−Bで示す切断線で示す切断線に沿って切断した横断面図である。図2(b)および図2(c)に示すごとく、予め両面粘着テープ8が貼着された被貼着物としての装飾用パネルの裏面が、前キャビネット2の表面に押圧され貼着されるが、該装飾用パネルおよび該前キャビネット2の貼着面に捕捉された気泡は、該前キャビネット2の前面部の略全面に分布する通気溝6中に押し出され、さらに該前キャビネット2の裏面に配設された排気孔7を通じ大気に排出される。
【0014】
図2(b)または図2(c)に示すごとく、両面粘着テープ8の貼着面は、貼着対象物としての前キャビネット2のみならず、被貼着物としての装飾用パネルとの貼着面としても存在するが、図3に示すごとく被貼着物としての装飾用パネル3に両面粘着テープ8を貼着する貼着手段が適用されため、該装飾用パネル3および両面粘着テープ8間の貼着面が気泡を捕捉する問題は発生しない。
【0015】
詳細には、図3に示す未使用状態の両面粘着テープ8の両面には該両面粘着テープ8の粘着面と弱粘着性を持たせるために、保護シート部材および粘着テープの当接面には、表面平滑化のためのフッ素樹脂コーティングを施した第1の保護シート9、および第2の保護シート10が貼着されており、両面粘着テープ8を該装飾用パネル3に貼着直前に図3に示すごとく両面粘着テープ8から第2の保護シート10を剥離し、第1の保護シート9の外面を転圧ローラー11により装飾用パネル3に押圧し両面テープ8を貼着する。
【0016】
このとき、両面粘着テープ8、第1の保護シート9および第2の保護シート10は共に薄いフィルム状の柔軟で可撓性の優れた部材で構成されているため、両面粘着テープ8および第1の保護シート9は、転圧ローラー11の円筒状の曲面に沿いながら装飾用パネル3および両面粘着テープ8間の空気を、図3中に示す鎖線方向に向かい押し出しながら装飾用パネル3に貼着される。このため両面粘着テープ8および装飾用パネル3が貼着面に気泡を捕捉することはない。
【0017】
貼着対象物としての装飾用パネル3の排気孔7は、両面粘着テープ8および装飾用パネル3間の貼着面に捕捉された気泡を大気へ排出させるための開口であるが、近時の地球環境保全を目的に資源の再利用が強く要請されている状況から、当該機器を使用後に廃棄する場合に、該機器を構成する各部を解体し構成材料別に分別する必要がある。しかしながら、図4に示す金属製銘板36のごとく貼着対象物である樹脂部材により構成される前キャビネット31の外表面に形成された取り付け用凹部32に埋設され、該取り付け用凹部32から該金属製銘板を引き剥がすための手がかりも無い構造で該金属製銘板36が両面粘着テープ35で貼着されている場合には、樹脂部材による前キャビネット31から金属銘板36を取り外すには困難を極める。
【0018】
上記問題への対応のために、図4に示すごとく押し出しピン37の先端を前キャビネット31裏面の排気孔34に図中の鎖線矢印方向に差込むことにより金属製銘板36および前キャビネット31との貼着面が剥離し、両面粘着テープ35により貼着された前キャビネット31および金属製銘板36が分離解体され、異種材料で構成された前キャビネット31および金属製銘板36の分別が可能となり資源再利用に資することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明の実施形態を説明するために薄型表示装置としての液晶テレビを実施例として説明しているが、これに限定せず航空機や車両のインスツルーメントパネルなどへの装備品の取り付け手段として適用しても同様に好適であり、また機器廃棄時の解体作業を効率化に役立てることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施例としての液晶テレビの外観斜視図である。
【図2】図2(a)は装飾用パネルを取り外した前キャビネットの前面図、図2(b)は図2(a)中に鎖線A−Aで示す切断線に沿って切断した縦断面図、 図2(c)は同B−Bで示す切断線に沿って切断した横断面図である。
【図3】被貼着物としての装飾用パネル裏面への両面粘着テープの貼着作業を示すイメージ図である。
【図4】機器廃棄時の資源再利用を目的に、貼着対象物の排気孔に挿通した押し出しピンにより被貼着物を剥離させる解体作業を示すイメージ図である。
【図5】図5(a)は被貼着物および貼着対象物が貼着する両面粘着テープ貼着面の気泡排出手段の従来例を示す縦断面図、図5(b)は側面図である。
【符号の説明】
【0021】
1: 液晶表示パネル
2: 前キャビネット
3: 装飾用パネル
4: 後ろキャビネット
5: 操作部
6: 通気溝
7: 排気孔
8: 両面粘着テープ
9: 第1の粘着材保護紙
10: 第2の粘着材保護紙
11: 転圧ローラー
20: 被貼着物
21: 貼着対象物
22: 通気溝
23: 排気口
24: 両面粘着テープ
31: 前キャビネット
32: 取り付け用凹部
33: 通気溝
34: 排気孔
35: 両面粘着テープ
36: 金属製銘板
37: 押し出しピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
両面粘着テープが貼着された被貼着物を貼着する薄型表示装置において、該薄型表示装置の筐体外表面および該両面粘着テープの当接面に大気と連通する通気溝を具備したことを特徴とする薄型表示装置。
【請求項2】
請求項1に記載の薄型表示装置において、該薄型表示装置の筐体外表面および両面粘着テープの当接面の通気溝端部の筐体外観面への開口を閉塞したこと特徴とする薄型表示装置。
【請求項3】
請求項1または2のいずれかに記載の薄型表示装置において、該薄型表示装置の筐体外表面および両面粘着テープの当接面に形成した通気溝と連通し、且つ該薄型表示装置筐体の部材の厚さ方向に貫通した排気孔を具備したことを特徴とする薄型表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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