説明

薄板軽量形鋼造用の壁パネル

【課題】折板におけるねじ接合部の支圧変形を安定的に確保可能な壁パネルを提供する。
【解決手段】間隔をおいて対向するように配置された少なくとも一対の枠材2と、これら一対の枠材2に渡って固定される薄鋼板の折板3からなる面材とを少なくとも備え、面材は一対の枠材2間に渡る方向に延びる山部6と谷部7とを有した折板3であり、折板3の谷部7と枠材2とがねじで固定されると共に、構面内せん断力が作用した際にねじ周りの折板3が支圧変形して抵抗する耐力壁用の壁パネル1において、面材(折板3)と枠材2のねじ接合部は、面材の支圧変形時にねじ軸部が傾斜可能に接合されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄板軽量形鋼造建築物等の建築物に用いられる薄板軽量形鋼造用の壁パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、薄板軽量形鋼造用の耐力壁における壁パネルとして、枠材の片面または両面に面材としての折板を接合した壁パネルが用いられている(例えば、特許文献1〜3参照)。
【0003】
特許文献1、2に記載された耐力壁では、折板が枠材に溶接されたり、補強部材を介して枠材に固定されたりなど、折板と枠材とが剛に接合されるとともに、枠材自体も剛なフレームとされて梁などの建物躯体に固定されている。このような耐力壁では、地震等の水平力が建物に作用した際に、折板がせん断力を負担することで建物の水平耐力を確保するように構成されており、折板のせん断耐力に基づいて建物の保有水平耐力が決定されるようになっている。
【0004】
また、特許文献3には、縦枠に折板をねじ止めし、折板を縦枠の補強材と兼用することが提案されている。また、特許文献3では、薄板軽量形鋼からなる枠材を変形させない鋼板面材として折板が有効であり、しかも目地を枠材と直交方向とすることで耐力と変形性能に優れた耐力壁にできることが知られていると記載されている。
【0005】
なお、本出願人により、特許文献4には、折板耐力壁の変形性能を更に高めるため、ねじ接合部における面材の支圧変形を起こさせるよう、面材の全体座屈および局部座屈を回避する折板形状にすること、および、ねじ接合部では、ねじの抜け出し、枠材の支圧破壊、ねじの破断等を回避する部材の組み合わせとすることが提案され、また、ねじ孔の支圧変形により形成された長孔からねじが抜け出さないよう、ねじ頭を大きくするとともに、ねじ孔周辺の局所変形(皺)が起きないようねじ軸径はあまり大きくしないことが必要であることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開平2―49449号公報
【特許文献2】特開平9―228520号公報
【特許文献3】特開2007―303269号公報
【特許文献4】特開2009―209582号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記従来の耐力壁では、折板のせん断耐力に基づいて建物が設計されているため、折板と枠材との接合部分や耐力壁と建物躯体との接合部分が剛接合とされ、これらの接合強度が折板のせん断耐力以上となるように設定されている。このため、接合構造が大掛かりになり、製造や現場施工の手間やコストが増大してしまうという問題がある。また、特許文献4に記載の壁パネルでは、折板の機械的特性(降伏比あるいは破断伸び等)について明確に示唆されていないため、折板におけるねじ接合部の支圧変形を安定的に確保できず、最大耐力発揮後の耐力低下が大きい場合が生じる可能性もあるという問題がある。
【0008】
本発明は前記の課題を解決し、折板におけるねじ接合部の支圧変形を安定的に確保可能で変形性能に優れた壁パネルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の課題を有利に解決するために、第1発明の壁パネルにおいては、間隔をおいて対向するように配置された少なくとも一対の枠材と、これら一対の枠材に渡って固定される薄鋼板の折板からなる面材とを少なくとも備え、前記面材は前記一対の枠材間に渡る方向に延びる山部と谷部とを有した折板であり、前記折板の谷部と前記枠材とがねじで固定されると共に、構面内せん断力が作用した際にねじ周りの前記折板が支圧変形して抵抗する耐力壁用の壁パネルにおいて、前記面材と前記枠材のねじ接合部は、前記面材の支圧変形時にねじ軸部が傾斜可能に接合されていることを特徴とする。
【0010】
第2発明では、第1発明の壁パネルにおいて、前記面材の支圧耐力に対する前記ねじの抜け出し耐力の比が0.7以上であることを特徴とする。
【0011】
第3発明では、第1発明または第2発明のいずれかの壁パネルにおいて、前記面材の支圧耐力に対する前記ねじの抜け出し耐力の比が1.6以下であることを特徴とする。
【0012】
第4発明では、第1発明〜第3発明の壁パネルにおいて、前記面材として、その破断伸びが1%以上〜16%未満である、破断伸びが小さい面材を用いたことを特徴とする。
【0013】
第5発明では、第2発明の壁パネルにおいて、前記面材の少なくとも外周および縦枠に接合するねじにワッシャを挿入し、前記ねじの軸径に対する前記ワッシャの外径の比が3.0以上であることを特徴とする。
【0014】
第6発明では、第5発明の壁パネルにおいて、前記ワッシャの厚さに対する、ワッシャ内径と前記ねじの軸径の差との比が、0.1〜0.6であることを特徴とする。
【0015】
第7発明では、第1発明〜第6発明のいずれかの壁パネルにおいて、前記ねじ接合部におけるねじのねじ山のピッチを、前記枠材の板厚寸法以下としたことを特徴とする。
【0016】
第8発明では、第1発明〜第7発明のいずれかの壁パネルにおいて、前記面材として、降伏比が77%〜96%である、降伏比が高い面材を用いたことを特徴とする。
【0017】
第9発明では、第1発明〜第8発明のいずれかの壁パネルにおいて、前記面材の谷部におけるねじ接合部の少なくとも片側に、前記折板の折り筋方向に対して直交する方向に延長するリブを設けたことを特徴とする。
【0018】
第10発明では、第1発明〜第8発明のいずれかの壁パネルにおいて、前記面材の谷部におけるねじ接合孔を中心とし、前記折板の折り筋方向に対して直交する方向に延長するように、谷部の板厚よりも板厚寸法を小さくした薄板部分を設けたことを特徴とする。
【0019】
第11発明では、第1発明〜第8発明のいずれかの壁パネルにおいて、前記面材の谷部におけるねじ接合孔を中心とし、前記折板の折り筋方向に対して直交する方向に延長するように、谷部の強度よりも強度を低下させた部分を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によると、耐力壁に構面内せん断力が作用した際に面材におけるねじ接合部の面材を支圧変形する場合に、ねじ周りの局所座屈を抑制し、ねじ接合部の面材を安定的に塑性変形させて、エネルギー吸収することができ、また、面材の変形性能を高めた上で、従来の耐力壁に比べて、耐力壁の急激な耐力低下を防止することができ、変形性能に優れた壁パネルとすることができる。また、ねじ孔付近に集まる塑性化されたねじ孔周りの面材を、ねじの傾斜を利用して、ねじ孔から掻き出すことができる効果が得られる。
【0021】
第2発明によると、ねじが傾斜する前にねじの先端が枠材から抜けてしまうのを防ぐことができる。
【0022】
第3発明によると、ねじ頭部が面材に潜り込むことなく、面材支圧耐力とねじ抜け出し耐力とのバランスにおいて、ねじを傾斜させることができる。
【0023】
また、高伸び性能の面材の場合には、ねじ軸部に塑性化されたねじ孔近傍の面材がまとわり付くため、ねじの負担が増えて、耐力壁の耐力上昇あるいは、ねじのねじ孔からの抜け出しを生じる恐れがあるが、低伸び性能(脆い性能)の面材と組み合わせると、ねじ孔近傍の塑性化された面材は、容易に切り屑となって排除することができるため、ねじ軸部の負担が極端に高まることがなく、耐力壁の耐力が安定した耐力と変形性能を発揮できる効果が得られる。すなわち、第4発明によると、ねじ接合部におけるねじにより、これに支圧されるねじ孔周りの面材の塑性化部が、ねじに接触するねじ孔先端部に集まるようになる場合に、集まった面材が粉砕されて排除され易くなるため、ねじ孔周りの面材の塑性化を、集まった面材における鋼板により抵抗させることなく、安定して塑性変形させることができ、安定した耐力と変形性能を発揮させることができる。
【0024】
第5発明によると、ねじ周りの大きな応力が作用する範囲にワッシャを配置することにより、ねじ頭部が面材に潜り込むことなく、ねじが傾斜することができる。
【0025】
第6発明によると、ワッシャ内径とねじ軸部とのクリアランスにより、ねじの傾斜の適正な範囲を制限できる。
【0026】
第7発明では、ねじ接合部におけるねじが傾斜するような場合でも、枠材からのねじの抜け出しを防止して、安定した耐力を発揮させることができる。
【0027】
第8発明によると、ねじ軸周りの面材を塑性変形させる場合に、面材として低YR鋼を使用した場合に比べて、高YR鋼を使用しているので、ねじ軸部の支圧によりねじ孔周りの面材を塑性変形させる場合に、ねじ孔周りの面材の塑性化領域を狭くすることができ、ねじ孔の孔幅が極端に広がることがないので、耐力壁が大きくせん断変形しても、耐力壁の耐力を安定させることができる。
【0028】
第9発明によると、折板における塑性化させる方向と直交する方向における面材の局部座屈を防止することができ、耐力壁における所定の方向に面材を塑性化させることができる効果が得られる。
【0029】
第10発明によると、折板におけるねじ接合部をねじにより塑性化させる場合に、薄板部分に場所を特定して塑性化させることができる効果が得られる。
【0030】
第11発明によると、折板におけるねじ接合部をねじにより塑性化させる場合に、強度を低下させた部分に場所を特定して塑性化させることにより、大変形時も耐力壁の耐力を安定させることができる等の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の第1実施形態の耐力壁に適用される壁パネルを示す正面図である。
【図2】図1の側面図である。
【図3】図1のA―A線断面図である。
【図4】図1に示す壁パネルの概略斜視図である。
【図5】図1に示す壁パネルの端部の一部を示す拡大斜視図である。
【図6】ねじ接合部における破壊モードを示す説明図である。
【図7】折板ねじ接合部の要素試験の説明図である。
【図8】折板の単位形態を示す断面図である。
【図9】図7の折板ねじ接合部の要素試験によって得られた荷重―変形関係の包絡線を比較した図である。
【図10】ねじと折板における面材の塑性化部との関係を示す図であり、(a)はねじが傾斜せず、ねじ頭が面材に潜り込み、鋼板に生じたねじ孔からねじ頭が出た場合の説明図、(b),(c)は、破断伸びが大きな折板に対してねじが塑性化させる場合にねじが傾斜した場合の説明図、(d),(e)は、破断伸びが小さな折板に対してねじが塑性化させる場合にねじが傾斜した場合の説明図である。
【図11】枠材と面材とを接合しているねじ接合部を示し、(a)はねじが傾いた状態の説明図であり、(b)は(a)におけるA―A断面におけるねじ径と面材最外縁のひずみとの関係について示した説明図である。
【図12】日本鋼構造協会編「鋼構造接合資料集成」の図―II.5.12に掲載の、ボルト孔周辺の応力分布を示す説明図である。
【図13】日本鋼構造協会編「鋼構造接合資料集成」の図―II.5.12に掲載の、ボルト心からの距離による応力分布を示すグラフである。
【図14】ワッシャ内径とねじ軸部とのクリアランスによるボルトとワッシャの傾きを説明する断面図であり、(a)はクリアランスが小さい場合、(b)はクリアランスが大きい場合である。
【図15】折板ねじ接合部の異なる要素試験の説明図である。
【図16】折板の単位形態を示す断面図である。
【図17】図15の折板ねじ接合部の要素試験によって得られた荷重―変形関係の包絡線を比較した図である。
【図18】壁耐力試験の試験体を示す正面図である。
【図19】図18の壁耐力試験によって得られた荷重―変形角関係図である。
【図20】ねじのねじ山ピッチとねじの傾斜抜け出しとの関係を説明するための説明図である。
【図21】先端が先鋭なねじを枠材に取り付けた場合を示す断面図である。
【図22】壁パネルを載荷試験装置にセットして載荷試験をしている状況を示す図である。
【図23】図22の載荷試験装置によって得られた荷重―変形角関係の包絡線を比較した図である。
【図24】枠材と面材とを接合しているねじ接合部に、枠材と面材との構面内においてずらす方向の力が働いている場合の力の作用および変形の状態を示す説明図であり、(a)はねじ軸部から低YRの面材に支圧力が作用している状態を示す一部縦断正面図、(b)は(a)の状態から枠材と面材とがずれた状態で面材が塑性変形している状態を示す一部縦断正面図、(c)は(a)に対応した図であり高YRの面材に支圧力が作用している状態を示す一部縦断正面図、(d)は(c)の状態から枠材と面材とがずれた状態で面材が塑性変形している状態を示す一部縦断正面図である。
【図25】枠材と面材とを接合しているねじ接合部を示し、(a)はねじが傾く前の状態の説明図であり、(b)は面材の降伏比YRと面材の塑性化領域の関係について示した説明図である。
【図26】本発明の他の実施形態の壁パネルを示す図であり、(a)は部分正面図、(b)は部分平面図、(c)は(a)の側面図である。
【図27】本発明のさらに他の実施形態の壁パネルを示す図であり、(a)は部分正面図、(b)は部分平面図、(c)は(a)の側面図、(d)は折板における薄板部分を拡大して示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施の形態を、図を参照して説明する。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する要素においては、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0033】
図1は、本発明の一実施形態に係る壁パネル1を示す正面図、図2は側面図、図3は図1のA―A線断面図である。図4は、壁パネル1を示す斜視図、図5は、壁パネル1の一部を拡大して示す斜視図である。
【0034】
壁パネル1は、枠組壁工法建築物に耐力壁として用いられるもので、例えば、基礎上に設置されて下端部がアンカーボルトと連結され、上端部が建物の梁や床パネルと連結されたり、あるいは上下の端部が上下の梁や床パネルに連結されたりして設置される。壁パネル1は、薄板軽量形鋼(リップ溝形鋼)からなる枠材2と、この枠材2を四周枠組みした一方の面に接合される薄板鋼板からなる面材としての折板3とで構成されている。ここで、枠組壁工法建築物としては、例えば、2階建て〜4階建て程度の比較的小規模な建物が好適であり、壁パネル1の他に、柱、梁、床パネル、屋根、外装材、内装材等を有して構成されている。
【0035】
壁パネル1の枠材2は、ウェブ4と、このウェブ4の両端部に連続する一対のフランジ5とを有し、断面略コ字形(C字形)に形成されている。そして、枠材2のうち、両側端縁に設けられる縦の枠材2は、2つの溝形鋼がウェブ4同士で接合されて形成されている。また、折板3は、縦の枠材2間に渡る方向に延びて交互に設けられる山部6と谷部7とを有して形成され、谷部7がねじ8で枠材2に接合されている。ねじ8は、タッピングビスなどであり、枠材2と反対側から折板3の谷部7を貫通したねじ8が枠材2に螺合することで、枠材2と折板3とが接合されるようになっている。
【0036】
壁パネル1のねじ8の頭部径Dと軸部径dと折板3の板厚tについて、以下の式(1)で設定されている。
(D―d)>α・t …(1)
【0037】
ここで、αはねじ軸部の支圧により鋼板に生じたねじ孔からねじ頭が抜け出さないための条件を表す係数であり、αは7.0以上であることが望ましい。このような構成によれば、折板3のねじ周りが支圧変形し、繰り返し荷重によりねじ孔が大きくなっていっても、ねじ頭部が折板3に引っ掛かることで折板3からねじ8が脱落することが防止でき、変形性能を確保することができる。
【0038】
また、壁パネル1のねじ8の軸部径dと折板3の板厚tについて、以下の式(2)で設定されている。
<α・t …(2)
【0039】
ここで、αはねじ軸部により鋼板に生じた局所座屈によりねじ孔の成長が阻害されないための条件を表す係数であり、αは13以上であることが望ましい。このような構成によれば、ねじ軸部の支圧により折板3にはねじ孔を起点とする長孔が形成され、ねじ周りに皺がよる支圧変形に比べてより高い変形性能を確保できる。
【0040】
上記の変形(破壊モ―ド)を実現するには、他の破壊モードを起こさない条件を設定することが必要となる。これはねじ接合部において設定する必要があり、また壁パネル1全体でも設定する必要がある。
【0041】
まず壁パネル1における枠材2と折板3とのねじ接合部を設定する。ここでは、例えば、社団法人日本鉄鋼連盟著「ドリルねじ接合 設計施工指針」によるねじ接合部の許容せん断耐力(Ras)の算定式を利用し、次の式(3〉のように設定する。
as=Ras3―1<min(α・Ras2,α・Ras3―2,α・Ras4) …(3)
【0042】
式(3)において、Ras2は、図6(a)に示すねじ8の抜け出し耐力(kN)であり、以下の式(4)で算出され、Ras3―1は、図6(b)に示す折板3のねじ周り支圧耐力(kN)であり、式(5)で算出され、Ras3―2は、図6(c)に示す枠材2のねじ周り支圧耐力(kN)であり、式(6)で算出され、Ras4は、図6(d)に示すねじ8の軸部せん断耐力(kN)であり、式(7)で算出される。各式(4)〜(7)において、tは、折板3の設計用板厚(mm)、tは、枠材2の設計用板厚(mm)、Fu1は、折板3の引張強さ(N/mm)、Fu2は、枠材2の引張強さ(N/mm)、dは、ねじ8の軸部径(mm)、Aは、ねじ8の軸部断面積(mm)、Dは、ねじ8の頭部径(mm)である。
【0043】
ねじの抜け出し耐力Ras2(kN)は、次式(4)により求めることができる。
as2=Cs×Ce×d×t×Fu2 …(4)
Cs=1.3―0.3×(d/5)
Ce=0.28×3.95×ξ0.5×(t/d0.5
ここで、ξは影響係数であり、次式で算出される。
ξ=3.1―5.6(t/t)+3.5(t/t
Csは、ねじ径を考慮する係数である。また、Ceは、ねじ径と枠材板厚を考慮する係数である。
【0044】
折板のねじ周り支圧耐力Ras3―1(kN)は、次式(5)により求めることができる。
as3―1=Cs×Ce×d×t×Fu1 …(5)
Ce=min(Ce,Ce
Ce=0.28×{0.471+9.42×t/d
Ce=0.959
ここで、Ceは、ねじ径と折板板厚を考慮する係数である。また、Ceは、定数である。
【0045】
枠材のねじ周り支圧耐力Ras3―2(kN)は、次式(6)により求めることができる。
as3―2=Cs×Ce×d×t×Fu2 …(6)
Ce=min(Ce,Ce
Ce=0.28×{1.18+5.26×t/d
Ce=0.677
ここで、Ceは、ねじ径と枠材板厚を考慮する係数である。また、Ceは、定数である。
【0046】
ねじ8の軸部せん断耐力Ras4(kN)は、次式(7)により求めることができる。
as4=fs×A≒120×A …(7)
ここで、fsはドリルねじの基準強度(N/mm)である。
【0047】
以上のように枠材2と折板3との接合部分のせん断耐力Rasが設定されていることで、接合部分における破断モードは、折板3のねじ周り支圧耐力Ras3―1により決定され、壁パネル1にせん断力が作用した際には、図示を省略するが、ねじ8で貫通された部分の折板3が支圧変形し、ねじ8の抜け出し(ねじ8の抜け出し耐力Ras2)や、枠材2のねじ周り支圧変形(枠材2のねじ周り支圧耐力Ras3―2)、ねじ8の軸部破断(ねじ8の軸部せん断耐力Ras4)等は発生しないようになっている。なお、式(3)の根拠となった式は最初に発現する破壊モードで耐力を定める式であったが、本発明においては初めから折板3のねじ周り支圧モードが発現しなくともよく、他のモードが発現した後で発現してもよいため、α〜αは1.0である必要はない。α〜αには上限はなく、下限は0.5以上が望ましい。αは、小さすぎるとねじが抜け出しやすく、大きすぎるとねじが傾かない可能性があるので、0.7〜4.0の範囲が望ましい。
【0048】
次に、壁パネル1の条件を設定する。壁パネル1全体におけるせん断耐力Qは、次の式(8)を満足するように設定する。式(8)において、Qは式(9)に示す前記接合部分の許容せん断耐力Rasに基づくせん断耐力(kN)であり、Qは式(10)に示す折板3のせん断降伏耐力(kN)であり、Qは式(11)に示す折板3の全体座屈強度τcr,Gに基づくせん断降伏耐力(kN)であり、Qは式(12)に示す折板3の谷部7の局部座屈強度τcr,Lに基づくせん断降伏耐力(kN)である。なお、式(11)と式(12)については、例えば、波形鋼ウェブ合成構造研究会著「波形鋼板ウェブPC橋計画マニュアル、1998年12月発行」にある式を利用している。
【0049】
=Q<min(α・Q,α・Q,α・Q) …(8)
【0050】
=α・Ras・h/p …(9)
【0051】
式(9)において、Rasはねじ接合部の長期許容せん断耐力で、最大耐力はその約3倍であるが、ねじが全て均等に荷重を負担することは困難なので、αは3.0〜2.0とする。なお、hは壁パネルの幅(mm)、pはねじピッチ(mm)である。
【0052】
=F/√3・h・t …(10)
【0053】
式(10)において、hは壁パネルの幅(mm)、tは折板3の厚さ(mm)、Fは折板3のF値(N/mm)ある。
【0054】
=τcr,G・h・t=36β{(EI1/4×(EI3/4}h/hd …(11)
=t(δ十1)/(6η) …(11a)
=t/{12(1―μ)} …(11b)
【0055】
式(11)において、βは、材端の固定度を示す係数で、ここではピンの場合のβ=1.0であり、Eは、折板3のヤング係数(E=200(kN/mm))であり、Iは、折板3の折り筋方向に対して直交する方向中立軸に関する単位長さ当たりの断面2次モーメントであり、式(11a)で算出される。この式(11a)において、tは、折板3の厚さ(mm)であり、δは、山高板厚比であり、dを山高とした場合に、δ=d/tとなり、ηは、長さ減少率である。hdは折板の幅方向支点間距離で、中桟が1本の場合はhd=h/2である。また、式(11)において、Iは、折板3の折り筋方向に対して並行する方向中立軸に関する単位長さ当たりの断面2次モーメントであり、式(11b)で算出される。この式(11b)において、μは、折板3のポアソン比(μ=0.3)である。
【0056】
このような式(11)で決定される折板3の全体座屈強度としては、図示を省略するが、複数の山部6および谷部7を跨いで座屈が折板3全体に発生するような破壊モードを示すものである。そして、全体座屈強度を決定する大きな要因が山高dであり、この山高dを所定値以上に設定することで、全体座屈強度が確保できる。
【0057】
=τcr,L・h・t=k(πE)/{12(1一μ)}・γ・h・t…(12)
【0058】
式(12)において、kは、せん断座屈係数(k=4.00+5.34/α)である。ここで、αは、縦横比(α=a/h)であり、aは、折板3の谷幅(mm)、hは、壁パネルの幅(mm)である。また、式(12)において、πは、円周率であり、γは、折板3の幅厚比(γ=t/h)である。このような式(12)で決定される折板3の谷部7の局部座屈強度としては、図示を省略するが、個々の谷部7で座屈が発生するような破壊モードを示すものであり、局部座屈強度を決定する大きな要因が谷部7の幅厚比γであり、すなわち谷部7の谷幅を所定値以下に設定することで、局部座屈強度が確保できる。
【0059】
なお、式(8)については、ねじ接合部破壊モードが、他のモードが発現した後で発現してもよいため、α〜αは1.0である必要はなく、0.5以上が望ましい。
【0060】
このような構成によれば、折板3のねじ周りの支圧耐力で決定されるせん断耐力が、折板3のせん断降伏耐力よりも小さく設定されているので、折板3がせん断降伏するよりも前に折板3のねじ周りが支圧変形し、その負担荷重を保持することとなり、壁パネル1のせん断降伏が防止できる。従って、脆性的なせん断降伏を防止するとともに、折板3のねじ周りの支圧変形によって靭性が確保でき、壁パネル1のエネルギー吸収性能を高めることができる。すなわち、折板3の全体座屈や局部座屈などの座屈が発生すると、せん断応力が保持できずに、急激に耐力が低下して変形が増大するような脆性破壊に至ってしまうため、このような座屈を防止することで、壁パネル1の変形性能を向上させることができる。この際、折板3の全体座屈により決定されるせん断降伏耐力としては、折板3の山高寸法の影響が大きく、山高寸法を所定値以上に大きく設定することで、折板3のねじ周りの支圧耐力で決定されるせん断耐力を上回ることができる。また、折板3の局部座屈により決定されるせん断降伏耐力としては、折板3の谷幅寸法の影響が大きく、谷幅寸法を所値以下に抑えて設定することで、折板3のねじ周りの支圧耐力で決定されるせん断耐力を上回ることができる。
【0061】
また、以上の壁パネル1によれば、折板3と枠材2とのねじ8による接合部における接合耐力が、折板3のねじ周りの支圧耐力により決定され、外力が作用した際に折板3のねじ周りが支圧変形するように構成されているので、折板3の全体座屈、局部座屈、枠材2の変形などにより急激に耐力低下することなく、負担荷重を保持することができる。従って、比較的大きな変形角(例えば、層間変形角で1/30rad程度)まで壁パネル1の耐力が低下せずに荷重を保持する、つまり変形性能を高めることができるので、構造特性係数を小さく設定することが可能になり、これにより耐力壁の枚数(壁長)を少なくし、枠材板厚や接合金物の耐力を抑えることにより、経済的かつ建築計画上の自由度を高めることができる。そして、ねじ止めによって枠材2と折板3とを接合することで、接合構造が簡単になり、製造および施工の手間やコストを低減させることができる。
【0062】
そして、ねじ接合部におけるねじ8による折板3の支圧変形を確実に安定して起こさせることを探求するために、折板3の機械的な性質と、ねじ接合部付近の塑性化について、試験および検討して、本発明を完成させた。
【0063】
試験および検討の条件として、押し引きによる支圧力をねじ接合部に作用させ、ねじ接合部を支圧変形させた場合のねじ接合部の破壊モードとして下記(i)〜(iv)のパターンが考えられるが、(i)、(ii)のパターンであることを前提とした。
(i)折板におけるねじ接合部付近の支圧変形時に、ねじ先が抜けることにより接合部が破壊される場合。
(ii)ねじ接合部付近の支圧変形時に、折板(面材)が支圧変形して、接合部が破壊される場合。
(iii)ねじ接合部付近の支圧変形時に、枠材が支圧変形して、接合部が破壊される場合。
(iv)ねじ接合部付近の支圧変形時に、ねじ軸部が破断する接合部が破壊される場合。
【0064】
先ず、折板3のねじ周り支圧耐力Ras3―1に対するねじ8の抜け出し耐力Ras2(Ras2/Ras3―1)に関しては、Ras2/Ras3―1が1.0を下回ると、ねじ8の抜け出し耐力Ras2が小さすぎてねじ先端が枠材から抜け出しやすくなる。また、逆にRas2/Ras3―1の値が大きすぎると、ねじが動かず、ねじ頭部が面材に潜り込んでしまう。これらの場合、いずれも、ねじ軸部の傾斜を確保できず、ねじ接合部の面材を安定的に塑性変形させてエネルギー吸収し耐力壁の急激な耐力低下を防止することができなくなる。したがって、Ras2/Ras3―1は、0.7〜1.6の範囲とすることが望ましい。ただし、後述のワッシャを用いた場合には、0.7〜4.0の範囲であればよい。
【0065】
壁パネルとしての耐力および変形性能を推定するために、ねじ接合部についての要素試験を行った。
【0066】
図7には、ねじ接合部の要素試験の状況が示され、要素の載荷試験装置14は、一方に二股状の取り付けアーム15を有する第1加力治具16を備えていると共に、他方に厚板連結鋼板を有する第2加力治具17を備えている。
【0067】
前記二股状の取り付けアーム15に渡って折り筋が向くように折板3の一部である折板片3aの両端部を配置すると共に、その折り筋方向の谷部面材を、それぞれ3つの座金18を介して固定ボルト19により固定し、折板片3aの中央部下面に、枠材2の一部である枠材片2aの一端側のウェブ4をビスなどのねじ8により接合し、枠材片2aの他端部を厚板連結鋼板20の一端部に重合させて3本のボルト19により固定し、その厚板連結鋼板20の他端部を前記第2加圧治具17に重合させて座金および3本のボルト19により固定している。
【0068】
折板片3aの試験体の形状および板厚が異なる4種類の折板の要素片を製作して試験を行った。折板片3aに対する載荷は、図7に矢印で示すように、図示省略の油圧ジャッキ等により正負漸増繰り返し荷重を負荷した。
【0069】
試験にあたって、折板片3aと、枠材片2aと、ねじ8の条件としては、下記の通りである。
(i)断面形状は図8に示す形状とした。
(ii)枠材片2aはSGCC400を使用し、枠材の板厚を1.6mmのものを使用し、ウェブ幅寸法が89mmで、フランジ幅が44.5mmのものを使用した。
(iii)折板3と枠材片2aを1箇所で接合するねじ8は、六角頭ねじを使用し、呼び径が4.8mmのものを使用し、折板3と枠材片2aとに渡って、折板3の谷部7に六角頭が接触するまでねじ込んで接合した。
【0070】
折板片3aの各試験体は、表1に示すような4種の鋼材を用いた試験体である。この試験で得られた荷重―変形関係を図9に示す。
【0071】
【表1】

【0072】
鋼材Bの試験体は、面材の支圧耐力に対するねじの抜け出し耐力の比が0.68で十分な変形性能を発揮していることから、請求項2に記載した面材の支圧耐力に対するねじの抜け出し耐力の比の下限を0.7とした。また、鋼材B2の試験体は、鋼材Bの試験体と面材およびねじ径は同一であるが、枠材を2枚重ねしてねじの抜け出し耐力を高め、ねじを傾きにくくした試験体である。鋼材B2の試験体は、面材の支圧耐力に対するねじの抜け出し耐力の比が1.66であり、変形性能に乏しく、鋼材Aの試験体は、面材の支圧耐力に対するねじの抜け出し耐力の比が1.44で、十分な変形性能を発揮していることから、請求項3に記載した面材の支圧耐力に対するねじの抜け出し耐力の比の上限を1.6とした。なお、この上限は、市販のねじを用いた場合の数値であり、後述の、大径ワッシャを用いた場合は上限が高くなる。
【0073】
鋼材Dの試験体は、面材の支圧耐力に対するねじの抜け出し耐力の比が鋼材Bの試験体よりも高いにもかかわらず、変形性能が乏しかった。これは、鋼材Bは特殊な低破断伸び鋼で、破壊メカニズムが違うためであり、一般的な鋼材Dのみを考えた場合は、面材の支圧耐力に対するねじの抜け出し耐力の比の下限は高くなると考えられる。
【0074】
一般的には、たとえば、Ras3―1<<Ras2であってねじ接合部でねじが傾かない場合、図10(a)に示すように、ねじ接合部におけるねじ8による支圧により、ねじ孔周辺の折板3における鋼板部分が、押しのけられて、前面側あるいは側面側に屈曲部22を形成するようにして小さく集まるようになり、この屈曲部22が抵抗になり耐力が上昇するようになる。そして、鋼板は面外方向に浮き上がり(ねじ頭が面材に潜り込み)、折板3の耐力、ひいては壁パネルの耐力が安定しないようになる。
【0075】
なお、前述のごとく、ねじ抜け出し耐力が、面材支圧破壊耐力よりも小さい場合でも、面材が支圧変形する場合があることがわかった。
【0076】
そして、図10(b)(c)に示すように、載荷されて、ねじ8により面材(折板3)におけるねじ孔周囲の面材を支圧変形している場合に、ねじ8が傾くようになると、ねじ軸部8aに接触しているねじ孔側の支圧されている面材は、ねじ8の傾斜に沿ってめくれ上がるようになり、高破断伸びの面材(折板3)では、めくれ上がった部分の頂部に亀裂23が入りねじが抜け出すようになり、また、低破断伸びでは、めくれ上がった部分の裾に亀裂23が入り切り屑26となって除去されるようになることがわかった。
【0077】
また、前記のように、ねじ8が傾斜している場合に、折板3が、高破断伸びの材料であると、ねじ8軸部により支圧変形されている場合に、塑性化されている部分21がねじ軸部にまとわり付くため、ねじ軸部の負担が増えるようになり、面材の耐力が上昇し、壁パネルの耐力が上昇するが、ねじ8が枠材5から抜け出すようになる。反対に、折板3が、低破断伸びの材料である場合には、脆いため、図10(d)(e)に示すように、ねじ軸部8aに支圧変形されている部分(特に、先端側)は、粉砕されて切り屑26となって、ねじ8に作用している支圧力(負荷)は、不変で安定化するようになり、壁パネル1の耐力が安定するようになる。
【0078】
具体的には、前記の表1における鋼材Bのように、破断伸びが15.9%より小さい場合には、図10(d)に示すように、ねじ接合部におけるねじ8により、これに支圧されるねじ孔周りの面材における面材の塑性化部21が、ねじに接触するねじ孔先端部に集まることはなく、集まった面材における鋼板を粉砕して排除され易くなるため、面材におけるねじ孔周り面材の塑性化を、集まった面材における鋼板により抵抗させることなく、安定して塑性変形させることができ、安定した耐力を発揮させることができた。
【0079】
前記面材としての折板3として、鋼板を用いた場合の破断伸びの影響について、図11に示すモデルより検討する。
【0080】
ねじ軸部に乗りあげた鋼板が砕けて切り屑になるためには、鋼板の板厚中心に対して外周面の伸びが材料の破断伸びEl以上となればいいので、下式(13)を満たす必要がある。
(d/2+t)/(d/2+t/2)>El …(13)
【0081】
例えば、上記実験から、dを4.8mm、tを0.6mmとした場合、Elは11%以下にする必要があることがわかる。
【0082】
式(13)によれば、ねじ径dは小さく、鋼板の板厚tは厚くすることで、破断伸びの上限を上げることができる。3階建て以下程度のスチールハウスであれば、dは4.2mm以上、tは0.8mm以下となるので、破断伸びの上限は下式で求められる。
(d/2+t)/(d/2+t/2)=1.16>El
【0083】
式(13)により数値計算解析した結果、折板3は、その破断伸びが16%未満である、破断伸びが小さい面材を用いるのが望ましい。その理由は、ねじ軸部により支圧されるねじ軸周りの面材の塑性化した場合に、ねじ軸の傾斜に沿って上昇する場合に粉砕されて除去され易くなるためであり、面材の破断伸びが1%を下回ると、折板加工時に割れが発生しやすくなるため、望ましくなく、また面材の破断伸びが16%を上回ると粉砕しにくくなるため、望ましくない。
【0084】
したがって、折板3を構成する鋼材の破断伸びを、16%未満とすることで、ねじ軸部によりねじ孔周りの折板3の鋼板が塑性化される時に、ねじ孔先端に集まる折板3の鋼材が粉砕され、ねじ軸にまとわりつかないため、ねじ軸による支圧方向に細長いねじ孔の形成に対する抵抗を排除し、折板3および壁パネルの耐力を安定さえながら変形性能を確保することができる。
【0085】
次に、接合部のねじにワッシャを用いた場合の効果について文献調査し、日本鋼構造協会編「鋼構造接合資料集成」の図−II.5.12から有効な情報を得た。図12にボルト孔周辺の応力分布、図13にボルト心からの距離による応力値を示す。図13に示すように、ボルト心からの距離がボルト半径の3倍以内の範囲では、応力の変化勾配が大きく、この範囲にワッシャを用いることにより、ねじ頭部が面材に潜り込むのを抑制できる。また、図13に示すように、鋼板の降伏比YR(図13中にはβで表記)が高いほど応力の変化勾配が大きく、塑性化領域が狭いことが分かる。ワッシャの外径Dw/ねじの軸径dの値は3.0以上で十分な効果が得られると考えられるが、実際に、軸径dが4.2mmのねじに対し、ねじの軸径dの5倍である外径21mmのワッシャを用いて、図7に示すねじ接合部の要素試験および後述する図22の壁パネル載荷試験を行ったところ、ワッシャを挿入しない場合はねじ頭部が面材に潜り込んで耐力が保持できず、耐力壁の劣化が激しかったのに対し、ワッシャを挿入した場合には、各々のねじが耐力を保持し、耐力壁全体の大変形時にも耐力を保持することができた。
【0086】
さらに、ワッシャ内径とねじの軸部とのクリアランスによる接合部のねじの傾きについて説明する。図14(a)に示すように、クリアランスが小さいと、僅かな変形でねじ8とワッシャ33が一体化し、ワッシャ33の浮き上がりが抑えられるため、折板3の谷部の局部座屈の折れ曲がり線が、ワッシャ33の外縁から発生する。これに対し、図14(b)に示すように、クリアランスが大きいと、ねじ8とワッシャ33は、大変形時までそれぞれ独立して傾き、ワッシャ33の浮き上がりが抑制されないため、折板3の谷部の局部座屈の折れ曲がり線が、ねじ心から発生する。つまり、折板谷部の端(斜面の麓)までの距離を座屈長さとすると、クリアランスが大きい場合には、折板谷部の局部座屈が早期に起こりやすくなる。したがって、ワッシャ33の厚さtwに対するクリアランス(ワッシャ内径dwとねじの軸径dの差)、すなわち(dw―d)/twの値は、0.1〜0.5が望ましい。実際に、(dw―d)/twの値が0.13のワッシャ(Dw=18mm,dw=5.5mm,tw=2.0mm)と0.65のワッシャ(Dw=21mm,dw=4.5mm,tw=2.3mm)を用いて、図15に示すねじ接合部の要素試験および後述する図22の壁パネル載荷試験を行ったところ、クリアランスが小さい方は、ワッシャ外周縁から折板のしわが発生し、折板谷部の局部座屈が抑制されたのに対し、クリアランスが大きい方は、ねじ心から折板のしわが発生し、折板谷部の局部座屈が早期に発生した。
【0087】
図15は、ねじ接合部の要素試験の状況を示す。これは、図7に対し、ねじと固定ボルトの位置を交換した治具である。
【0088】
折板片3aの試験体の形状および板厚が異なる5種類の折板の要素片を製作して、試験を行った。
【0089】
試験にあたって、折板片3aと、枠材片2aと、ねじ8の条件としては、下記の通りである。
(i)面材の断面形状は図16に示す形状とし、0.55mmのSGC400(降伏点373N/mm、引張強さ505N/mm、破断伸び32%)とした。
(ii)枠材片2aはSGCC400を使用し、枠材の板厚を1.6mmのものを使用し、ウェブ幅寸法が89mmで、フランジ幅が44.5mmのものを使用した。
(iii)折板3と枠材片2aを1箇所で接合するねじ8は、六角頭ねじを使用し、呼び径が4.2mmのものを使用し、折板3と枠材片2aとに渡って、折板3の谷部7に六角頭が接触するまでねじ込んで接合した。
【0090】
折板片3aの各試験体は、表2に示すような5種の鋼材を用いた。この試験で得られた荷重―変形関係を図17に示す。
【0091】
【表2】

【0092】
鋼材E1の試験体は面材の支圧耐力に対するねじの抜け出し耐力の比が1.32で、十分な変形性能を発揮しているが、枠材を2枚重ねた鋼材E2の試験体は面材の支圧耐力に対するねじの抜け出し耐力の比が3.16と高くなり、変形性能が乏しくなった。一方、鋼材E2の試験体に対し、ワッシャ外径21mm、ワッシャ内径とねじ軸径とのクリアランスが0.3mmのE3の試験体は十分な変形性能を発揮したことから、適切なワッシャを用いることにより、請求項3の上限は緩和できることがわかった。なお、ワッシャ内径と軸径とのクリアランスが無い(ワッシャには小さな先孔しかあけず、ワッシャ自体をねじでねじ切りしてねじと一体化した)鋼材E5の試験体については、クリアランスが0.3mmのE4の試験体に較べて小さな変形でねじの軸部が破断し、変形性能が乏しかった。この結果より、変形性能を確保するには適度なクリアランスが必要で、実験ではワッシャ厚さに対するクリアランスは0.15(=0.3/2.0)であったことから、請求項6に記載したワッシャの厚さに対する、ワッシャ内径と前記ねじの軸径の差との比の下限値を、0.1とした。
【0093】
図18は、ワッシャの厚さに対する、ワッシャ内径と前記ねじの軸径の差との比の上限値を設定した根拠となる壁耐力試験体を、図19は、図22の載荷試験装置を用いて得られた荷重―変形角関係を示す。なお、図18に示すように、耐力壁には、外周の左右両端辺のみにワッシャ付きねじを用いて、それ以外はワッシャ無しねじを用いた。鋼材E6の試験体と鋼材E7の試験体の面材は同一で、0.55mmのSGC400(降伏点373N/mm、引張強さ505N/mm、破断伸び32%)、ワッシャの外径は18mm、厚み2.0mmでクリアランスのみを実験変数としており、E6は0.3mm、E7は1.3mmとした。載荷の結果、2体とも耐力はほぼ同一だが、クリアランスの大きなE7の方が剛性が低く、変形角1/100radの前で折板谷部のねじ周りに局所座屈(皺)が発生し、耐力を失った。この実験から、E7のワッシャ厚さに対するクリアランスは0.65(=1.3/2.0)であったことから、請求項6に記載したワッシャの厚さに対する、ワッシャ内径と前記ねじの軸径の差との比の上限値を0.6とした。
【0094】
ドリリングタッピングねじなどのねじ8により、折板3裏面側の枠材2に固定する場合に、ドリリングタッピングねじなどのねじ8のねじ山ピッチPが、折板3裏面側の枠材2におけるフランジ5の板厚寸法よりも超えていると、ねじ山が枠材に全周360度引っ掛からないため、図20に示すように、ねじ8が傾斜した場合に抵抗力を発揮できず、ねじ8が抜け出す恐れが高くなる。
【0095】
したがって、ねじ接合部におけるねじのねじ山のピッチを、枠材2の板厚寸法以下とすると、ねじ接合部におけるねじ8が傾斜するような場合でも、枠材2からのねじ8の抜け出しを防止し、安定した耐力を発揮させることができる。
【0096】
なお、ドリリングタッピングねじで、呼び径が4.8mm、6.0mm、8.0mmのものが知られているが、そのねじ山ピッチは、呼び径が4.8mmのもので1.6mm、呼び径が6.0mmのもので1.8mm、呼び径が8.0mmのもので1.0mm、と呼び径とピッチは比例していないため、枠材2のフランジ5の板厚により、これらの板厚寸法よりも、小さいねじ山ピッチのねじ8を用いるようにするとよい。
【0097】
なお、図21に示すように、先端8bが先鋭に形成されたねじ8を用いた場合、ねじ8の先端8bにより円筒状に押し出し成形された部分の枠材2が、折れ曲がってねじ軸部8aに沿うため、ねじ軸部8aに対する枠材2の掛り部が大きくなる(ねじ山の掛かり数が増える)。したがって、ねじ山のピッチが枠材2の板厚よりも大きくても、ねじ8の抜け出しを防止できるので、殊に枠材2の板厚が薄い場合に有効である。
【0098】
ねじ接合部におけるねじによる折板3の支圧変形について、3種類の鋼材からなる折板を用いた壁パネルについて、図22に示すように、押し引き用の載荷試験による比較試験をおこなった。
【0099】
各壁パネル1は、その下部両側にそれぞれ接合したホールダウン金物26を介して下部側の加力治具27に接合し、壁パネル1の上部は、上部側の加力治具28に取り付けた載荷梁29に接合し、載荷梁に接合した加力ジャッキ30の押し引きにより載荷した。試験体の形状および折板の形状は図18と同様であるが、折板を枠材に接合したねじはすべてワッシャ無しねじである。載荷より得られた荷重―変形角関係を図23に示す。なお、図23の変形角は図22中にある2つの変形計32より算出した壁パネル1の傾きである。
【0100】
鋼材強度および降伏比YRの大小により、耐力壁としての壁パネル1の影響について、試験を行った結果、下記表3の結果を得た。なお、下記表3における鋼材A、Bは、前記の表1に属する形態としている。また、表3中の終局変形角Ruは最大耐力の80%まで低下した耐力時の変形角である。
【0101】
【表3】

【0102】
鋼材A、Bを用いた壁パネルの終局変形角Ruは、鋼材Cを用いた壁パネルの終局変形角Ruの1.3倍以上と大きかった。
【0103】
前記のような高降伏比鋼(高YR鋼)の面材と、低降伏比鋼(低YR鋼)の面材の試験結果から、図24に示すように、降伏比の高い鋼材の折板のほうが、ねじ孔周辺の鋼材の塑性化領域の広がりを抑え、安定した支圧変形を確保できる可能性があることを知見した。
【0104】
この結果より、面材として折板3の鋼材の降伏比YRを高め、例えば、降伏比YRを77%以上(鋼材の降伏比を少なくとも77%)とすることで、ねじ軸部によりねじ軸周りの面材が塑性化する場合に、ねじ孔周りの塑性化領域を抑え、ねじ頭が抜けないで、ねじ孔周辺が塑性化しても、幅の狭いねじ孔を形成することができ、耐力を安定させることができる。
【0105】
前記面材としての折板3として、鋼板を用いた場合の降伏比の影響について、図25に示すモデルより検討する。
【0106】
図25より、ねじ軸部に接した部分の面材(折板3の谷部7)が耐力を負担できる範囲を角度θとし、最大耐力時に形成される降伏領域の幅をBと仮定すると、下式が成り立つ。
/2・θ・Fu1=B・F
B=d/2・θ・Fu1/F
【0107】
ねじ軸部がねじ孔から抜け出さないようにするには、降伏領域の幅Bをねじの直径以下とすればよいので、下式を満たす必要がある。
>B
>B=d/2・θ・Fu1/F
θ/2<F/Fu1 …(14)
ここで、θ=90゜とすると
π/4<F/Fu1
0.785<F/Fu1
【0108】
式(14)により数値計算解析した結果、折板の降伏比(F/Fu1)は79%以上であることが望ましい。ただし、実験では77%未満の鋼材Aでも壁パネルの変形性能はあった。これは、ねじに接した部分の面材が均一に応力を負担していると仮定していること、および面材が耐力を負担できる範囲の角度θを90゜と仮定していること等によるものと考えられる。よって、実験値を踏まえ、降伏比は77%以上とするとよいことが分かる。77%未満の降伏比の折板3では、塑性化領域が広くなり孔幅が広がるため、折板の塑性化時に耐力が安定しないので、折板3の降伏比は77%以上とするとよいことが分かる。また、上限は特にないが、実験値で確認しているのは96%までなので、96%程度が望ましい。
【0109】
前記面材としての折板3として、77%〜96%の降伏比の高い面材を用いると、ねじ接合部におけるねじにより支圧される折板3の谷部の鋼板が塑性化されて変形する時に、塑性化領域がねじ孔径程度になり、ねじ孔の孔幅が広がらないため、変形しても耐力が安定化し、変形しても耐力が安定した壁パネルとすることができる。
【0110】
また、前記のような試験から、ねじ接合部でのねじ軸部8aによる折板の支圧変形(塑性化)、換言すると、ねじ孔の長孔化を安定的に形成できることを確保するためには、塑性化させる部分以外でその近傍部分の剛性を高めて、塑性化させる部分を限定させると共に周囲にしわ13の発生を防止する方法が有効であると考えられるので、この形態について、図26を参照して説明する。
【0111】
図26(a)(b)(c)に示す形態では、ねじ孔9の周囲で、面材としての折板3の谷部7におけるねじ接合部の両側に、折板3の折り筋方向に対して直交する方向に延長するリブ24を設けることにより、折板3における塑性化させる方向と直交する方向における折板における谷部7の面材にしわ13が発生するなどの局部座屈を防止することができ、また、耐力壁における所定の方向に面材を塑性化させることができるようになる。
【0112】
また、前記のリブ24を形成する手段としては、折板3のプレス成形時に同時に形成するようにしてもよく、折板3をロール加工した後、リブ24部分のみをプレス加工により形成するようにしてもよい。リブ24の加工長さとして、ねじ孔の直径以上で、山部近傍付近まで形成してもよい。リブ24は、塑性化時に、しわが発生すると想定される片側あるいは両側に設ける。
【0113】
図27(a)(b)(c)(d)に示す形態では、折板3の谷部におけるねじ接合孔を中心とし、折板の折り筋方向に対して直交する方向に延長するように、谷部の板厚よりも板厚寸法を小さくした薄板部分25を設けると、その部分の強度が低下した低強度部となるため、折板3におけるねじ接合部をねじにより塑性化させる場合に、薄板部分25に場所を特定して塑性化させることができ、耐力壁1の耐力が安定化させる効果が得られる。図示の形態では、ねじ孔に接続するように薄板部分25が形成されている前記の薄板部分25の形成する手段としては、折板3のプレス成形と同時に形成するようにしてもよく、例えば、折板3をロール加工した後、薄板部分25のみを加工して形成するようにしてもよい。加工方法としてはプレス加工や切削加工等が適していると考えられる。薄板部分25の加工幅として、幅がねじ孔の直径の幅程度で、長さは山部近傍付近まで形成してもよい。
【0114】
薄板部分25は、谷部7の表面側に切削等により凹部を設けることにより形成するようにしても、谷部7の裏面側に切削等により凹部を設けることにより形成するようにしてもよく、谷部7の表裏両面に凹部を切削等により設けることにより形成するようにしてもよい。薄板部分25が谷部7の表面側に形成された凹部であると、ねじのねじ込み時に凹部を、ねじ8のねじ込み時の位置決め用に利用することができる。
【0115】
なお、前記のように、ねじ軸部により支圧変形させて塑性化させる部分を薄板部分25として、強度を低下させるようにしてもよく、板厚を変えずに、熱処理あるいは薬品処理により材質強度を低下させて、低強度部を形成するようにしてもよい。
【0116】
前記のように、面材の谷部7におけるねじ接合孔付近に、折板の折り筋方向に対して直交する方向に延長するように、谷部7の強度よりも強度を低下させた部分を設けると、折板3におけるねじ接合部をねじにより塑性化させる場合に、強度を低下させた部分に場所を特定して塑性化させることができる等の効果が得られる。なお、薄板部分25にねじ用の先孔27を設けておくとよい。
【0117】
前記のスチールハウスは、普通、板厚0.4mm以上、2.3mm未満の薄板軽量形鋼による枠材と、この枠材に構造用面材を組み合わせて構成される鉄鋼系パネル構造の建物と定義される。
【0118】
なお、折板3または枠材2として、高降伏点(高YP)鋼を使用すると、軽量化を図ることができ、前記のように、高降伏比(高YR)の鋼材を折板3に使用すると、ねじ接合部における支圧変形時に、載荷される荷重に対して耐力が安定し、急激な耐力低下あるいは急激な耐力上昇が起こらないので、耐力壁としての壁パネルは、ねじ接合部で安定した耐力を発揮することができる。また、低破断伸び(低El)である鋼材による折板3であると、急激な耐力低下を伴うことなく細長いねじ孔が形成されるので、壁パネルの変形性能を確保しやすくなる。
【産業上の利用可能性】
【0119】
本発明は、薄板軽量形鋼造建築物等の建築物に用いられる薄板軽量形鋼造用の壁パネルに適用できる。
【符号の説明】
【0120】
1 壁パネル
2 枠材
2a 枠材片
3 折板
3a 折板片
4 ウェブ
5 フランジ
6 山部
7 谷部
8 ねじ
8a ねじ軸部
8b 先端
9 ねじ孔
10 長孔
11 破断線
12 破断線
13 しわ
14 載荷試験装置
15 アーム
16 第1加力治具
17 第2加力治具
18 座がね
19 ボルト
20 厚板連結鋼板
21 塑性化部
22 屈曲部
23 亀裂
24 リブ
25 薄板部分
26 ホールダウン金物
27 下部側の加力治具
28 上部側の加力治具
29 載荷梁
30 加力ジャッキ
31 先孔
32 変位計
33 ワッシャ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
間隔をおいて対向するように配置された少なくとも一対の枠材と、これら一対の枠材に渡って固定される薄鋼板の折板からなる面材とを少なくとも備え、前記面材は前記一対の枠材間に渡る方向に延びる山部と谷部とを有した折板であり、前記折板の谷部と前記枠材とがねじで固定されると共に、構面内せん断力が作用した際にねじ周りの前記折板が支圧変形して抵抗する耐力壁用の壁パネルにおいて、
前記面材と前記枠材のねじ接合部は、前記面材の支圧変形時にねじ軸部が傾斜可能に接合されていることを特徴とする壁パネル。
【請求項2】
前記面材の支圧耐力に対する前記ねじの抜け出し耐力の比が0.7以上であることを特徴とする請求項1に記載の壁パネル。
【請求項3】
前記面材の支圧耐力に対する前記ねじの抜け出し耐力の比が1.6以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の壁パネル。
【請求項4】
前記面材として、その破断伸びが1%以上〜16%未満である、破断伸びが小さい面材を用いたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の壁パネル。
【請求項5】
前記面材の少なくとも外周および縦枠に接合するねじにワッシャを挿入し、前記ねじの軸径に対する前記ワッシャの外径の比が3.0以上であることを特徴とする請求項2に記載の壁パネル。
【請求項6】
前記ワッシャの厚さに対する、ワッシャ内径と前記ねじの軸径の差との比が、0.1〜0.6であることを特徴とする請求項5に記載の壁パネル。
【請求項7】
前記ねじ接合部におけるねじのねじ山のピッチを、前記枠材の板厚寸法以下としたことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の壁パネル。
【請求項8】
前記面材として、降伏比が77%〜96%である、降伏比が高い面材を用いたことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の壁パネル。
【請求項9】
前記面材の谷部におけるねじ接合部の少なくとも片側に、前記折板の折り筋方向に対して直交する方向に延長するリブを設けたことを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の壁パネル。
【請求項10】
前記面材の谷部におけるねじ接合孔を中心とし、前記折板の折り筋方向に対して直交する方向に延長するように、谷部の板厚よりも板厚寸法を小さくした薄板部分を設けたことを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の壁パネル。
【請求項11】
前記面材の谷部におけるねじ接合孔を中心とし、前記折板の折り筋方向に対して直交する方向に延長するように、谷部の強度よりも強度を低下させた部分を設けたことを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の壁パネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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