説明

薄片状αアルミナの製造方法

【課題】工業的規模での実施に好適な薄片状αアルミナの製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の製造方法は、αアルミナ前駆体粉末およびケイフッ化物粉末を含み、αアルミナ(Al23)換算のAl含有量100質量部あたり、SiF6の含有量が0.3〜5質量部であり、Fの総含有量が10質量部以下であり、SiO2換算のSiの総含有量が10質量部以下である粉末混合物を焼成することを特徴とする。αアルミナ前駆体粉末はアルミナ水和物、遷移アルミナなどの粉末であり、ケイフッ化物粉末はアルカリ金属ケイフッ化物などの粉末である。粉末混合物は他のフッ化物の粉末、ヒュームドシリカのような他のケイ素化合物の粉末を含んでいてもよい。好ましくは見掛け気孔率25%以下のセラミックス材料製の焼成容器およびフタを用い、粉末混合物をこの焼成容器に収容し、このフタをした状態で加熱して焼成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄片状αアルミナの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
薄片状αアルミナは、例えばパウダーファンデーションなどの化粧品に含まれる体質顔料などとして有用であり、艶と伸びのよいパウダーファンデーションとなしうる点で、厚みの変動係数(CV)が小さいものが望まれている。かかる薄片状αアルミナの製造方法として、特許文献1〔特開平3−131517号公報〕には、αアルミナ前駆体粉末をヘキサフルオロアルミニウム酸(H2AlF6)のアルカリ金属塩と混合し、焼成容器内で加熱することにより焼成する方法が記載されている。かかる方法によれば、加熱することにより溶融状態となったヘキサフルオロアルミニウム酸のアルカリ金属塩中で、αアルミナ前駆体が薄片状に結晶成長しながらα化し、目的の薄片状αアルミナを得ることができる。
【0003】
しかし、ヘキサフルオロアルミニウム酸のアルカリ金属塩を加熱溶融状態とすると高い腐食性を示すため、アルミナ材料などのような比較的安価なセラミックス材料で構成された焼成容器では、これを侵食し易いという問題がある。
【0004】
かかる問題のない薄片状αアルミナの製造方法としては、特許文献2〔特開平9−227337号公報の段落番号0015〕に記載されるように、αアルミナ前駆体粉末を酸化ケイ素粉末およびフッ化水素酸と混合し、焼成容器内で加熱して焼成する方法が挙げられる。かかる方法によれば、フッ化水素酸は、焼成の進行と共に揮散するので、焼成容器としてアルミナ材料製のものを用いても、侵食は僅かである。
【0005】
しかし、フッ化水素酸は、揮発性があると共に強い腐食性を有することから、その保管、運搬、取扱いなどの点で問題がある。
【0006】
【特許文献1】特開平3−131517号公報
【特許文献2】特開平9−227337号公報の段落番号0015
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本発明者は、このような問題がなく、工業的規模での実施に好適な薄片状αアルミナの製造方法を開発するべく鋭意検討した結果、本発明に至った。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち本発明は、αアルミナ前駆体粉末およびケイフッ化物粉末を含み、αアルミナ(Al23)換算のアルミニウム含有量100質量部あたり、ケイフッ化物根(SiF6)の含有量が0.3質量部〜10質量部であり、フッ素原子(F)の総含有量が10質量部以下であり、二酸化ケイ素(SiO2)換算のケイ素原子(Si)の総含有量が10質量部以下である粉末混合物を焼成することを特徴とする薄片状αアルミナの製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の製造方法は、αアルミナ前駆体粉末を原料として工業的規模で薄片状αアルミナを製造しうる方法として好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の製造方法では、αアルミナ前駆体粉末およびケイフッ化物粉末の混合粉末を焼成する。
【0011】
αアルミナ前駆体粉末は、αアルミナ前駆体の粉末である。αアルミナ前駆体は、これを単独で焼成することによりαアルミナに遷移しうる化合物であって、例えばアルミナ水和物、遷移アルミナ、アルミニウム塩などである。
【0012】
アルミナ水和物は、式(1)
Al23・nH2O … (1)
で示されるアルミニウム化合物であって、nが1以上3以下のものであり、例えば水酸化アルミニウム(n=3)などが挙げられる。
【0013】
遷移アルミナは、式(1)で示されるアルミニウム化合物であって、nが1未満のものであり、例えばγアルミナ、δアルミナ、θアルミナなどが挙げられる。
【0014】
アルミニウム塩は、アルミニウムと酸との塩であって、例えばフッ化アルミニウム、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、炭酸アルミニウム、明礬(AlK(SO4)2)、ドーソナイト、シュウ酸アルミニウムなどが挙げられる。
【0015】
αアルミナ前駆体粉末は、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0016】
αアルミナ前駆体粉末の粒子径は、ケイフッ化物粉末と均一に混合し易い点で、通常0.1μm〜1mmである。
【0017】
ケイフッ化物粉末は、ケイフッ化物の粉末である。ケイフッ化物としては、例えばヘキサフルオロケイ酸〔H2SiF6〕の塩が挙げられ、通常は式(2)
2/xSiF6 … (2)
〔式中、Mは1価〜3価の陽イオンを示し、xは陽イオンMの価数を示す。〕
で示される化合物が使用される。
【0018】
陽イオンMとしては、例えばリチウム、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属、マグネシウム、カルシウム、バリウムなどのアルカリ土類金属、アルミニウム、亜鉛などの金属のイオン、アンモニウムイオンなどが挙げられる。
【0019】
ケイフッ化物として具体的には、例えばケイフッ化リチウム、ケイフッ化ナトリウム、ケイフッ化カリウムなどのアルカリ金属ケイフッ化物、ケイフッ化マグネシウム、ケイフッ化カルシウム、ケイフッ化バリウムなどのアルカリ土類金属ケイフッ化物、ケイフッ化アルミニウム、ケイフッ化亜鉛などの遷移金属ケイフッ化物、ケイフッ化アンモニウムなどが挙げられ、好ましくはアルカリ金属ケイフッ化物である。
【0020】
ケイフッ化物粉末の粒子径は、αアルミナ前駆体粉末と均一に混合し易い点で、通常0.1μm〜1mmである。
【0021】
粉末混合物は、αアルミナ前駆体およびケイフッ化物以外の他のフッ化物の粉末を含んでいてもよい。かかる他のフッ化物としては、例えばフッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化カリウムなどのアルカリ金属フッ化物、フッ化カルシウムなどのアルカリ土類金属フッ化物、フッ化亜鉛などの遷移金属フッ化物などの金属フッ化物が挙げられる。
【0022】
他のフッ化物の粉末の粒子径は、αアルミナ前駆体粉末およびケイフッ化物粉末と均一に混合し易い点で、通常0.1μm〜1mmである。
【0023】
粉末混合物は、ケイフッ化物以外の他のケイ素化合物の粉末を含んでいてもよい。かかる他のケイ素化合物としては、例えばケイ酸、ケイ酸アルカリ金属塩、酸化ケイ素(シリカ)などの無機ケイ素化合物、メチルハイドロジェンポリシロキサン、ジメチルポリシロキサンなどのシリコーンなどの有機ケイ素化合物などのようなフッ素原子を含まないものが挙げられ、好ましくはシリカの微粉末であるヒュームドシリカである。
【0024】
粉末混合物におけるαアルミナ(Al23)換算のアルミニウム含有量100質量部あたりのケイフッ化物根(SiF6)の含有量は、0.3質量部〜10質量部である。ケイフッ化物混(SiF6)の総含有量が0.3質量部未満であったり、10質量部を超えると、得られる薄片状αアルミナの厚みが不均一なものとなり易い。
【0025】
粉末混合物におけるαアルミナ(Al23)換算のアルミニウム含有量100質量部あたりのフッ素原子(F)の総含有量、すなわちケイフッ化物粉末を構成するフッ素原子、ならびにαアルミナ前駆体粉末としてフッ化アルミニウム粉末を用いる場合には、これを構成するフッ素原子、および他のフッ化物の粉末を用いる場合には、これを構成するフッ素原子を合わせた含有量は、焼成の際の周囲への影響が少なく、得られる薄片状αアルミナの凝集が少ない点で10質量部以下、好ましくは4質量部以下である。フッ素原子(F)の総含有量が10質量部を超えると、得られる薄片状αアルミナが凝集の多いものとなる。
【0026】
粉末混合物におけるαアルミナ(Al23)換算のアルミニウム含有量100質量部あたりのケイ素原子(Si)の総含有量、すなわちケイフッ化物粉末を構成するケイ素原子、および他のケイ素化合物を用いる場合には、これを構成するケイ素原子を合わせた含有量は、二酸化ケイ素(SiO2)換算で10質量部以下である。ケイ素原子の総含有量(SiO2換算)が10質量部を超えると、得られる薄片状αアルミナの厚みが不均一なものとなり易い。
【0027】
かかる粉末混合物は、αアルミナ前駆体粉末およびケイフッ化物粉末を、例えばナウターミキサー、V型混合機などの混合機を用いて混合することにより得ることができ、より均一に混合された粉末混合物が得られる点で、振動ミル、ボールミルなどの分散機を用いて十分な動力で混合してもよい。
【0028】
粉末混合物がαアルミナ前駆体およびケイフッ化物以外の他のフッ化物の粉末や、ケイフッ化物以外の他のケイ素化合物の粉末を含む場合、これらの粉末は通常、αアルミナ前駆体粉末およびケイフッ化物粉末と共に撹拌される。
【0029】
本発明の製造方法では、かかる粉末混合物を焼成することにより、目的の薄片状αアルミナを得る。焼成は通常、粉末混合物を焼成容器に収容し、フタをした状態で加熱することにより焼成する。焼成容器およびフタとして通常は、セラミックス材料製のものが用いられ、例えばアルミナ材料製、ムライト材料製のものが用いられるが、本発明の製造方法では、アルミナ材料製の焼成容器およびフタを用いても、焼成時の該焼成容器およびフタの侵食が少ない。
【0030】
焼成容器およびフタを構成するセラミックス材料の見掛け気孔率は、25%以下であることが、平均差し渡し径(d)と平均厚み(t)との比で示されるアスペクト比(d/t)がより大きな薄片状αアルミナ粒子が得られる点で好ましく、気孔が全くなくて見掛け気孔率が0%であってもよい。見掛け気孔率25%以下のセラミックス材料で構成された焼成容器およびフタとしては、例えばアルミナ粉末を成形し、焼成により、互いに焼結させて得られるアルミナ材料製のものが市販されている。
【0031】
焼成温度は通常900℃〜1350℃、好ましくは1000℃〜1200℃であり、焼成時間は通常1時間〜10時間である。焼成は通常、大気中で行われる。
【0032】
本発明で規定する粉末混合物を焼成することにより、ケイフッ化物粉末が溶融状態となり、この溶融状態のケイフッ化物の存在下にαアルミナ前駆体が薄片状に結晶成長しながらα化して、目的の薄片状αアルミナが得られるものと考えられる。
【0033】
焼成することにより得られる薄片状αアルミナは強固に凝集してた凝集物となっていることもあるが、このような場合には、例えばジェットミル、ボールミル、振動ミル、ビーズミルなどの粉砕機により凝集物を粉砕すればよい。
【0034】
本発明の製造方法により得られる薄片状αアルミナ粒子は、平均差し渡し径(d)が通常3μm〜30μm、平均厚み(t)が通常0.1μm〜1μm、アスペクト比(d/t)が通常5以上、好ましくは20以上、通常60以下の形状であるので、例えば、そのままパウダーファンデーションなどの化粧品に含まれる体質顔料として用いることにより、艶と伸びのよいパウダーファンデーションを得ることができる。また、自動車などのタイヤのゴムに充填されて用いられるタイヤゴム用充填材、合成樹脂材料の機械的強度を向上させるための合成樹脂用充填材などとして用いることもできる。本発明の製造方法により得られる薄片状αアルミナ粒子は、表面に金属酸化物をコーティングして、パール調の光沢を有する体質顔料として用いることもできる。
【実施例】
【0035】
以下、実施例によって本発明をより詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例によって限定されるものではない。
【0036】
なお、各実施例で得た薄片状αアルミナの差し渡し径および厚みおよび変動係数(CV)は、焼成容器内から薄片状αアルミナをサンプリングし、任意の20個の薄片状αアルミナを走査型電子顕微鏡(SEM)で観察して、その差し渡し径と厚みを測定し、それぞれの測定値の数平均を差し渡し径(d)および厚み(t)とした。
厚みの均一性は、厚みの測定値の標準偏差(σt)および厚み(t)から、式(2)
CVt=σt/t×100(%) …(2)
により粒子厚みの変動係数CVtを求め、以下の基準で評価した。
◎: 0%<CVt≦20%
○:20%<CVt≦50%
△:50%<CVt≦80%
×:80%<CVt≦100%
薄片状αアルミナの結晶型は、粉末X線回折装置〔フィリップス社製、「X’Pert−MPD」〕を用いて得たX線回折スペクトルから同定した。
焼成容器およびフタを構成するセラミックス材料の見掛け気孔率は、JIS R2205による測定値である。
【0037】
実施例1
市販の水酸化アルミニウム粉末〔住友化学社製、「C−301」、Al23・3H2O、粒子径0.8μm〜1mm〕1kgおよび市販のケイフッ化カリウム粉末〔森田化学社製、K2SiF6、粒子径0.2μm〜0.5mm〕31.5gを加え、V型混合機にて室温で30分撹拌することにより混合物を得た。
この混合物の全量をアルミナ材料製焼成容器〔ヨータイ社製、見掛け気孔率19%、内寸法縦200mm×横200mm×高さ10×高さ70mm、側壁の厚みは10mm、内容積は4.84L〕に入れ、アルミナ材料製のフタ〔ヨータイ社製、見掛け気孔率19%、縦220mm×横220mm×厚み10mm〕を被せた。次いで大気中、電気炉にて1100℃に加熱し、同温度を6時間保持して焼成して白色粉末を得た。
この白色粉末をSEMにて観察したところ、薄片状であり、その差し渡し径の平均値(d)は20μm、厚みの平均値(t)は0.4μm、厚みの均一性評価結果は「◎」であった。アスペクト比は50である。結晶型はαアルミナであった。
【0038】
実施例2
ケイフッ化カリウム〔K2SiF6〕粉末の使用量を3.8gとした以外は実施例1と同様に操作して、白色粉末を得た。
この白色粉末をSEMにて観察したところ、薄片状であり、その差し渡し径の平均値(d)は5μm、厚みの平均値(t)は0.7μm、厚みの均一性評価結果は「◎」であった。アスペクト比は7である。結晶型はαアルミナであった。
【0039】
実施例3
ケイフッ化カリウム〔K2SiF6〕粉末の使用量を101gとした以外は実施例1と同様に操作して、白色粉末を得た。
この白色粉末をSEMにて観察したところ、薄片状であり、その差し渡し径の平均値(d)は30μm、厚み(t)は0.8μm、厚みの均一性評価結果は「◎」であった。アスペクト比は38である。結晶型はαアルミナであった。
【0040】
実施例4
ケイフッ化カリウム粉末に代えてケイフッ化ナトリウム粉末〔森田化学社製、、Na2SiF6、粒子径0.2μm〜0.5mm〕21.6gを用いた以外は実施例1と同様に操作して、白色粉末を得た。
この白色粉末をSEMにて観察したところ、薄片状であり、その差し渡し径(d)の平均値は20μm、厚み(t)の平均値は0.5μm、厚みの均一性評価結果は「◎」であった。アスペクト比は40である。結晶型はαアルミナであった。
【0041】
実施例5
ケイフッ化カリウム〔K2SiF6〕粉末30gと共に、ヒュームドシリカ〔日本アエロジル社製、「R974」、粒子径12μm(規格値)〕4.5gを加えた以外は実施例1と同様に操作して、白色粉末を得た。。
この白色粉末をSEMにて観察したところ、薄片状であり、その差し渡し径(d)の平均値は25μm、厚み(t)の平均値は0.5μm、厚みの均一性評価結果は「○」であった。アスペクト比は50である。結晶型はαアルミナであった。
【0042】
実施例6
ケイフッ化カリウム粉末の使用量を12.6gとし、これと共に、フッ化アルミニウム粉末〔ステラケミファ社製「光学用フッ化アルミニウム」、ALF3、粒子径0.2μm〜0.5mm〕9.6gを加えた以外は実施例1と同様に操作して、白色粉末を得た。
この白色粉末をSEMにて観察したところ、薄片状であり、その差し渡し径(d)の平均値は10μm、厚み(t)の平均値は0.3μm、厚みの均一性評価結果は「○」であった。アスペクト比は33である。結晶型はαアルミナであった。
【0043】
実施例7
水酸化アルミニウム粉末に代えてδアルミナ粉末〔日本アエロジル社製「酸化アルミニウムC」、粒子径13nm(規格値)〕40gを用いた以外は実施例1と同様に操作して、白色粉末を得た。
この白色粉末をSEMにて観察したところ、薄片状であり、その差し渡し径(d)の平均値は15μm、厚み(t)の平均値は0.3μm、厚みの均一性評価結果は「○」であった。アスペクト比は50である。結晶型はαアルミナであった。
【0044】
実施例8
実施例1で用いたアルミナ材料製焼成容器およびアルミナ材料製フタに代えて、同寸法で見掛け気孔率40%のムライト材料製のもの〔朝日濾過材社製〕をそれぞれ用いた以外は実施例1と同様に操作して、白色粉末を得た。
この白色粉末をSEMにて観察したところ、薄片状であり、その差し渡し径(d)の平均値は20μm、厚み(t)の平均値は1μm、厚みの均一性評価結果は「」であった。アスペクト比は33である。結晶型はαアルミナであった。
【0045】
比較例1
ケイフッ化カリウム粉末に代えて、実施例6で用いたと同じフッ化アルミニウム粉末24gを用い、実施例1で用いた焼成容器およびフタに代えて、実施例8で用いたと同じもの〔朝日濾過材社製〕を用いた以外は実施例1と同様に操作して、白色粉末を得た。
この白色粉末をSEMにて観察したところ、薄片状であり、その差し渡し径(d)の平均値は6μm、厚み(t)の平均値は1.5μm、厚みの均一性の評価結果は「◎」であった。アスペクト比は4である。結晶型はαアルミナであった。
【0046】
なお、各実施例および比較例で使用したアルミナ材料製またはムライト材料製の焼成容器およびフタを目視で観察したところ、侵食は認められなかった。
実施例および比較例の結果を以下の第1表および第2表にまとめて示す。
【0047】
第 1 表
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
実施例
1 2 3 4 5 6
────────────────────────────────────────
使用量(g)
Al2O3・3H2O 1000 1000 1000 1000 1000 1000
Al2O3(δ) -- -- -- -- -- --
AlF3 -- -- -- -- -- 9.6
K2SiF6 31.5 3.8 101 31.5 12.6
Na2SiF6 -- -- -- 21.6 -- --
SiO2 -- -- -- -- 4.5 --
────────────────────────────────────────
使用量比(質量比)
SiF6/Al2O3 3.12/100 0.37/100 9.97/100 2.49/100 3.12/100 1.25/100
F /Al2O3 2.5 /100 0.3 /100 8.0 /100 2.0 /100 2.5 /100 2.0 /100
SiO2/Al2O3 1.32/100 0.16/100 4.22/100 1.05/100 2.00/100 0.52/100
────────────────────────────────────────
評価結果
差し渡し径平均値(μm) 20 5 30 20 25 10
厚み(t)平均値 (μm) 0.4 0.7 0.8 0.5 0.5 0.3
均一性 ◎ ◎ ◎ ◎ ○ ○
アスペクト比 50 7 38 40 50 33
結晶型 α α α α α α
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

【0048】
第 2 表
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
実施例 比較例
7 8 1
─────────────────────────
使用量(g)
Al2O3・3H2O -- 1000 1000
Al2O3(δ) 40 -- --
AlF3 -- -- 24
K2SiF6 1.9 31.5 --
Na2SiF6 -- -- --
SiO2 -- -- --
─────────────────────────
使用量比(質量比)
SiF6/Al2O3 3.12/100 3.12/100 0.0 /100
F /Al2O3 2.5 /100 2.5 /100 2.5 /100
SiO2/Al2O3 1.32/100 1.32/100 0.0 /100
─────────────────────────
評価結果
差し渡し径平均値(μm) 15 20 6
厚み(t)平均値 (μm) 0.3 1 1.5
均一性 ○ △ ◎
アスペクト比 50 33 4
結晶型 α α α
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
αアルミナ前駆体粉末およびケイフッ化物粉末を含み、αアルミナ(Al23)換算のアルミニウム含有量100質量部あたり、ケイフッ化物根(SiF6)の含有量が0.3質量部〜10質量部であり、フッ素原子(F)の総含有量が10質量部以下であり、二酸化ケイ素(SiO2)換算のケイ素原子(Si)の総含有量が10質量部以下である粉末混合物を焼成することを特徴とする薄片状αアルミナの製造方法。
【請求項2】
αアルミナ前駆体粉末が、アルミナ水和物、遷移アルミナまたはアルミニウム塩の粉末である請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
ケイフッ化物粉末が、アルカリ金属ケイフッ化物の粉末である請求項1または請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記粉末混合物が、ケイフッ化物およびαアルミナ前駆体以外の他のフッ化物の粉末を含む請求項1〜請求項3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
前記粉末混合物が、ケイフッ化物以外の他のケイ素化合物の粉末を含む請求項1〜請求項4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
前記他のケイ素化合物の粉末がヒュームドシリカである請求項7に記載の製造方法。
【請求項7】
見掛け気孔率25%以下のセラミックス材料製の焼成容器およびフタを用い、該焼成容器に前記粉末混合物を収容し、前記フタをした状態で加熱して焼成する請求項1〜請求項6のいずれかに記載の製造方法。
【請求項8】
900℃〜1350℃で焼成する請求項1〜請求項7のいずれかに記載の製造方法。
【請求項9】
αアルミナ前駆体粉末およびケイフッ化物粉末を含み、αアルミナ(Al23)換算のアルミニウム含有量100質量部あたり、ケイフッ化物根(SiF6)の総含有量が0.3質量部〜10質量部であり、フッ素原子(F)の総含有量が10質量部以下であり、二酸化ケイ素(SiO2)換算のケイ素原子(Si)の総含有量が10質量部以下である粉末混合物。

【公開番号】特開2009−35430(P2009−35430A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−198537(P2007−198537)
【出願日】平成19年7月31日(2007.7.31)
【出願人】(000213840)朝日化学工業株式会社 (47)
【Fターム(参考)】