説明

薄肉ブローボトル

【課題】 極薄肉ボトルにおいて、口部にポンプを取着可能とするとともに、ポンプの吸込パイプを利用して、ボトル胴部の座屈強度を強化した薄肉ブローボトルを提供する。
【解決手段】 ボトルの単位容量あたり樹脂重量が0.03g/ml〜0.015g/mlの合成樹脂をもって成形され、口部にポンプを取着可能とした極薄肉ボトルであって、ポンプは、ピストンとシリンダー、シリンダーの下端から垂下する吸込パイプとを具備しており、ポンプの吸込パイプの下端をボトルの底壁内面に接触させることによってボトルの座屈強度を補強するようにしたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、薄肉ボトル、とくに口部にポンプを交換可能として取着した薄肉ブローボトルに関する。
【0002】
【発明が解決しようとする課題】近年、プラスチック成形材料の節減とともに再利用が奨励され、廃棄ボトルの押潰し回収ということからもボトルの薄肉化が求められるようになっており、手で簡単に押潰して廃棄することができる薄肉ボトルも周知となっている。
【0003】しかしながら、従来の薄肉ボトルは、例えばPPの場合、単位容量あたりの樹脂重量は0.065g/mlであったが、さらに成形材料を節減し押潰しを容易にするため樹脂重量を0.05g/ml以下とし、さらに極薄肉ボトルとして0.03g/ml以下とすると、ボトルとしての保形性を保つことが困難になるという問題があった。
【0004】また、極薄肉ボトルは、直接ポンプを取着して液注出容器として用いるには強度が不足するので、内容液を入れ替えるための詰め替え用のボトルとしてのみに用いられるものと考えられていた。
【0005】しかしながら、詰め替えボトルが極薄肉となると、キャップを取外すときに肩部、胴部をつかんでボトルを保持しなくてはならず、詰め替えにあたって注意しないと胴部を押さえることで内容液が溢れ、液注出容器本体、或いはその周辺を汚すというおそれがあった。
【0006】これを解決するため、口部を保持しやすくした極薄肉ボトルも提案されているが、詰め替えボトルとして用いているので、液注出容器本体からのポンプと詰め替えボトルのキャップの取り外し、液注出容器本体への内容液の注入、ポンプの取付けということでは手間がかかり、煩わしいということでは従来の薄肉の詰め替えボトルと変わらなかった。さらに、口部にポンプを取着して液注出容器として用いると、ポンプの操作時にボトルが変形したり、さらには座屈を起こすという問題があった。
【0007】本発明は、上記問題を解決することを課題とし、押潰しが簡単にできるように壁面を極薄肉とし、保形性を保つよう胴部、底部を強化し、口部を保持しやすくした極薄肉ボトルにおいて、口部にポンプを取着可能とするとともに、ポンプの吸込パイプを利用して、ボトル胴部の座屈強度をさらに強化した薄肉ブローボトルを提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記の課題を解決するため、薄肉ブローボトルとして、ボトルの単位容量あたり樹脂重量が0.03g/ml〜0.015g/mlの合成樹脂をもって成形され、口部にポンプを取着可能とした極薄肉ボトルであって、ポンプは、ピストンとシリンダー、シリンダーの下端から垂下する吸込パイプとを具備しており、ポンプの吸込パイプの下端をボトルの底壁内面に接触させることによってボトルの座屈強度を補強するようにしたことを特徴とする構成を採用する。
【0009】また、ボトルの口部にポンプを取着可能とするための実施態様として、上記構成に付加して、ボトル口部が、外周にネジを螺設した上部口筒部と、その下方に突設され、外周にローレットを刻設した把持リングと、該把持リングから肩部に続く一定高さの下部口筒部とからなることを特徴とする構成を採用する。
【0010】ここでいう下部口筒部についての一定高さとは、把持リングと肩部の間に手指を入れボトルの口部のみを保持できる高さである。また本明細書では、ボトルの単位容量あたり樹脂重量が0.03g/ml〜0.015g/mlの合成樹脂をもって成形され、肉厚が0.4mm以下であるボトルを従来の薄肉ボトルと区別するため、極薄肉ボトルという。
【0011】
【発明の実施の形態】次に、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。図1において、Aはダイレクトブローによって成形された薄肉の扁平のブローボトル、BはブローボトルAの口部に取着され、交換可能なポンプ、Cはポンプを取着するためのキャップである。
【0012】図1〜3に示すように、ボトルAは、口部1、肩部2、胴部3、底部4とからなっており、基材樹脂としてPE、PP、その他の合成樹脂が用いられ、単層または積層としてブロー成形されている。
【0013】口部1は、上部口筒部5と口部1の中間部に位置する把持リング6と、その下方から肩部2に続く下部口筒部7とからなっている。上部口筒部5の外周面には、ネジ8が設けられ、把持リング6の外周面は、口部1の上部口筒部5および下部口筒部7から突出しており、外周面の一部または全周にわたってローレット9が刻設されている。下部口筒部7は、手指を入れボトルAを把持できるだけの高さを有しており肩部2に続いている。
【0014】口部1は、胴部3と比較して厚肉となつているが、それでも従来のものと比較して薄肉となっているので、口部1の中間部に外方に突出するよう把持リング6を形成することによって口部1を強化して、ボトルAを把持できるようにし、その外周面にローレット9を設けることによって、ボトルの搬送時、内容液充填後のキャップ締着時にボトルが廻動しないようにしている。
【0015】肩部2と胴部3の間には、段部10が形成され、図3、4に示すように肩部2及び胴部3の断面形状は前後を楕円面とし、両側を平面とした扁平断面11となっている。胴部3は、前後壁面12と左右の側壁面13とからなっており、側壁面13は、前後壁面12の楕円面を切裁する垂直な平面で、その上端は肩部2まで延び、その端縁と前後壁面12の端部との間は細幅の弧状壁14によって接続されている。
【0016】胴部3の前後壁面12は、横方向にのびる凹溝15が上下に等間隔に配設されており、凹溝15によって、前後壁面12は上下方向に波うった波形の壁面となっている。左右の側壁面13は、弧状壁14と一定の角度をもって交わり、側壁面13の表面には上下方向に等間隔に複数個の円形の補強凹部16が配設されている。胴部3の下端部には、上部との間に段差を有する膨出周壁17が配設されており、底部4に続いている。
【0017】図1,2,4に示すように、底部4は、底周壁18と底壁19とからなっており、底周壁18は、僅かに傾斜した前後壁20と、所定角度に傾斜した左右側壁21とから形成されている。底周壁18と胴部3の膨出周壁17との接続部には、全周にわたる上横リブ22が設けられており、前後壁20には、一定間隔を置いて複数個の縦リブ23が設けられている。
【0018】底周壁18の下端部には、全周にわたる下横リブ24が配設され、該下横リブ24の下側には、底壁19の接地端壁19aが連続している。底壁19は、上方に凹んだ湾曲面25として形成され、その中央部は平坦となっている。また必要に応じて、後述するパイプの下端を囲み、パイプ下端のずれを防止するため、図4に示すように、中央に平底壁26を有する円形の凹部27を設けるか、または底壁19上面にパイプの下端外周を囲む複数個の突起を形成するようにしてもよい(図示は省略)。
【0019】底周壁18は上下の横リブ22,24と縦リブ23によって補強され、左右側壁21が傾斜して底周壁18下端と底壁19との接続部が厚肉となっているので、底部4はボトルAの落下衝撃、座屈に対して強化されている。
【0020】次に、成形方法について説明すると、本発明のボトルは、従来より周知のダイレクトブロー成形によって成形される。保形性を保ち、押潰しが簡単にできる薄肉ボトルとして、従来例のものでは0.067g/mlの樹脂重量が使用されていたが、本発明では、胴部壁面と底部周壁に補強部を配設することによって、単位容量あたりの樹脂重量を低くし、樹脂重量を0.05〜0.015g/mlとしている。
【0021】極薄肉ボトルとして、さらに軽量且つ押潰しが簡単にできるようにするため、単位容量あたりの樹脂重量を0.03g/ml以下とし、胴部周壁の肉厚を0.4mm以下としている。一つの実施例では、樹脂重量が0.027g/mlで、胴部3の側壁面13の肉厚は0.1〜0.15mmであり、胴部3の前後壁面12で0.15〜0.3mmである。
【0022】次に、ポンプBとキャップCについて説明する。ポンプBは、周知の構成を有するもので、簡単に説明すると、図5に示すように、ポンプBは、ピストン部材を内蔵し、取付部材30に取着されたシリンダー31と、下端に前記ピストン部材を取着したステム32と、ステム32の上端に取着されたノズルを具えたノズルヘッド33と、シリンダー31に取着された吸込パイプ34とを備えている。
【0023】吸込パイプ34は、PEその他の合成樹脂を素材としており、その下端35には、図1,4に示すように複数の切欠けが設けられ、吸込口36が形成されている。吸込パイプ34の直径と肉厚については、必要とする座屈強度に応じて適宜に設定することができる。
【0024】キャップCは、シリンダー31と共に取付部材30に取着され、前記ボトル口部1に螺着され、パッキンを介してボトル内部を密封するようになっている。
【0025】キャップCを螺合してポンプBをボトルAに取着したときには、吸込パイプ34は、その下端35がボトルAの底壁19の中央部内面に接触するか、或いは間隙があっても所定の距離以上に離れないような長さとしている。また、中央部に凹部27を設けられているか、または吸込パイプ下端外周を囲む複数個の突起が設けられている場合には、パイプの下端35が凹部27内または突起内に挿入され保持される。
【0026】次に、上記構成に基づく作用効果について説明する。本発明薄肉ボトルは、ポンプを取着した液注出容器、及び内容液を入れ仮キャップで被蓋した詰め替え容器としてともに市場に出される。その使用に当たって、液注出容器として内容液を使い終わった時には、液注出容器のポンプと詰め替え容器のキャップを取り外して、ポンプを詰め替え容器の薄肉ボトルの口部に取り付け、使用済みの液注出容器は手で押潰して廃棄する。
【0027】その際、ボトル口部1の中間に把持リング6を形成し、下部口筒部7を拡径し、手指で保持できるようにしたから、ポンプBの取り替えにあたって、薄肉のボトルAを安定的に保持できポンプBの取り換えが簡単にできる。
【0028】胴部3の前後壁面12を上下方向に波うって波形の壁面とし、側壁面13を垂直面とすること、及び底部4にリブを配設すること等によってボトル全体の剛性、座屈強度が強化されており、さらに、ポンプBを取着したときに、吸込パイプ34の下端35が底壁19に接触するか、間隙を所定の距離以下となるようにしたから、吸込パイプ34が補強材料としての役割を果たし、ボトルとしての座屈強度を高くしている。
【0029】次に、吸込パイプ34の下端35とボトルAの底壁19との間の間隙について説明する。吸込パイプ34は、前述のようにPE樹脂等を素材として成形され、パイプの径、肉厚を選択することによって必要な座屈強度と持たせるようにしている。吸込パイプ34の下端35が底壁19に接触している場合には、吸込パイプによってボトル自体の座屈強度が維持されることになる。
【0030】しかしながら、底壁19と吸込パイプ34の下端35との間隙は、ブロー成形時におけるボトルの寸法のバラツキ、ポンプ部材の成形時の寸法のバラツキ、ポンプ組立時の寸法のバラツキなどにより、ポンプの取付時に、すべてのボトルとポンプとの間で間隙が一致する、或いは0となるとは限らない。
【0031】そして、少しの間隙があっても、ポンプの押圧操作時にボトルが若干変形した時に、吸込パイプ34の下端35が底壁19に接圧し吸込パイプ34が座屈に対する補強部材となって、ボトルを一定の状態に維持するよう作用する。しかし、間隙が大きくなると、座屈強度は主としてボトルに依存することになり、極薄肉ボトルであるため座屈強度が弱く、ボトル上下間に一定の押圧力が加えられると、ボトルの胴部、底部に座屈が起こされる。
【0032】吸込パイプ34によってボトルの座屈強度が維持される間隙の限度は、ボトルの単位容積あたりの樹脂重量、肉厚によって異なり、5mm以内であることが好ましい限度であるが、場合によっては5mm〜10mmの間隙があっても吸込パイプが補強部材として作用することが実験を通じて認められた。
【0033】前記実施形態では、吸込パイプ34の下端に複数の切込みを設け吸込口36を形成するようにしたが、吸込口を円筒のまわりに等間隔をおいて配置した縦方向のスリット、或いは開口としてもよい。
【0034】また、前記実施形態では、扁平ボトルについて説明したが、ボトルの肩部、胴部、底部の横断面が円形である円形ボトルであってもよい。
【0035】
【発明の効果】本発明は、上記のように構成されているから、次の効果を奏する。ポンプの吸込パイプの下端をボトルの底壁面に接触させることによってボトルの座屈強度を補強するようにしたから、極薄肉ボトルでもポンプを交換取着して使用できるようになった。
【0036】口部に一定高さの下部口筒部を設け、ボトルの口部のみを掴んでボトルを保持できるようにしたから、ポンプを取着して、その取外し、交換が容易にできるようになっている。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明ポンプを取り付けたブローボトルの一部断面正面図である。
【図2】ボトルの側面図である。
【図3】ボトルの平面図である。
【図4】ボトル底部の変形例を示す断面図である。
【図5】ポンプとキャップの説明図である。
【符号の説明】
A ブローボトル
B ポンプ
C キャップ
1 口部
2 肩部
3 胴部
4 底部
19 底壁
19a 接地端壁
26 平底壁
27 凹部
30 取付部材
31 シリンダー
32 ステム
33 ノズルヘッド
34 吸込パイプ
35 下端
36 吸込口

【特許請求の範囲】
【請求項1】 ボトルの単位容量あたり樹脂重量が0.03g/ml〜0.015g/mlの合成樹脂をもって成形され、口部にポンプを取着可能とした極薄肉ボトルであって、ポンプは、ピストンとシリンダー、シリンダーの下端から垂下する吸込パイプとを具備しており、ポンプの吸込パイプの下端をボトルの底壁内面に接触させることによってボトルの座屈強度を補強するようにしたことを特徴とする薄肉ブローボトル。
【請求項2】 ボトル口部が、外周にネジを螺設した上部口筒部と、その下方に突設され、外周にローレットを刻設した把持リングと、該把持リングから肩部に続く一定高さの下部口筒部とからなることを特徴とする請求項1記載の薄肉ブローボトル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2000−313465(P2000−313465A)
【公開日】平成12年11月14日(2000.11.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平11−125164
【出願日】平成11年4月30日(1999.4.30)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】