説明

薄肉耐圧容器のハッチ取付構造

【課題】薄肉耐圧容器にインサートプレートを用いてハッチを取り付ける際に、インサートプレートを取り付ける開口部の楕円化を軽減できる薄肉耐圧容器のハッチ取付構造を提供することにある。
【解決手段】内圧力がかかる薄肉耐圧容器1の胴部5に開口部10を形成し、その開口部10にインサートプレート7を取り付け、そのインサートプレート7にハッチ6を取り付けるためのハッチの取付構造において、前記開口部10に取り付ける前記インサートプレート7の外周部の板厚を前記胴部5の板厚と同じ形成すると共に、前記インサートプレート7の中央部7tの板厚をテーパ面12を介して前記胴部の板厚より厚く形成し、そのインサートプレート7のテーパ面12が、前記胴部5の内側に位置するようにインサートプレート7を前記開口部10に取り付けるようにしたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気圧タンクなど、内圧がかかる薄肉耐圧容器の胴部にインサートプレートを介して取り付けるハッチに係り、特に、ハッチを胴部に取り付けるためのインサートプレートの取り付けを改良した薄肉耐圧容器のハッチ取付構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、図4に示すように気圧タンクなどの薄肉耐圧容器1の胴部5には、その内部に資材を搬出入したり作業者が出入りするためのハッチ6が設けられている。
【0003】
気圧タンクなどの薄肉耐圧容器1は、内圧力がかかるものの胴部5の板厚は薄く、胴部5に直接ハッチ6を溶接等にて取り付けることはできないため、胴部5の板厚より厚く形成したインサートプレート7を介してハッチ6を取り付けている。
【0004】
このハッチ6は、インサートプレート7を貫通して取り付けられる貫通スリーブ9を設け、そのスリーブ9にハッチ蓋6aを設けたフランジ継手8を取り付けて構成され、資材等の搬入の際には、薄肉耐圧容器1の内圧力を解除して大気圧と同じにした後、フランジ継手8にてハッチ蓋6aを開け、そのハッチ6の貫通孔13を通して資材等を搬入するようになっている。
【0005】
このハッチ6を取り付けるインサートプレート7は、略円形に形成され、中央部の板厚は胴部5の板厚より厚肉に形成されており、その外周部の厚さはテーパ面を介して胴部5の板厚と同じになるように形成される。
【0006】
図2、図3は、インサートプレート7に形成されるテーパ面12に応じた従来のハッチ6の取付構造の詳細を示したもので、図中胴部5の左側が、薄肉耐圧容器1の外面(大気圧側)で、右側が、薄肉耐圧容器1の圧力がかかる内面である。
【0007】
図2は、インサートプレート7の内側面を、薄肉耐圧容器1の胴部5の内周面と同じとし、テーパ面12を胴部5の外面に位置するようにインサートプレート7を、胴部5の開口部10に設けたものであり、図3は、インサートプレート7の外周部の内外にテーパ面12a、12bを形成し、インサートプレート7の板芯が胴部5の板芯と一致するようにインサートプレート7を、胴部5の開口部10に取り付けたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】実開平5−92794号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、図2に示す内面合わせや、図3に示す板芯合わせでは、薄肉耐圧容器1の胴部5の開口部10の径が大きくなると、薄肉耐圧容器1の胴部5の内外にかかる圧力差で、開口部10が楕円に変形し、これに影響されて、このインサートプレート7に取り付けられた貫通スリーブ9も楕円に変形し、ハッチ6のフランジ継手8がずれるため、ハッチ6の封止性を損なう可能性があった。
【0010】
すなわち、薄肉耐圧容器1の内外圧差に応じて、胴部5は、その弾性力で円周方向に伸びて内外圧力差とバランスする。この胴部5に作用する円周応力は、胴部5の内周側が外周側より大きくなる。これに対し板厚の厚いインサートプレート7に作用する円周応力は小さく、インサートプレート7の円周方向の伸びは少ないため、インサートプレート7のテーパ面12の外周部と胴部5の接続部に応力が集中し易い状態にある。ここで、図2の内面合わせのインサートプレート7は、胴部5の外面に凸となるテーパ面12が形成されており、外側のテーパ面12では、インサートプレート7の内外にかかる圧力差で開口部10を拡径する力が作用する。この結果、インサートプレート7のテーパ面12の外周部には、円周方向の引張力による円周応力の他に、インサートプレート7を屈曲させる力が作用する。この屈曲力は円周応力より十分に小さいものの、インサートプレート7を屈曲させるに十分な力であり、インサートプレート7のテーパ面12の外周部の内外周に、その変形力が作用し、その結果、インサートプレート7は、外側に凸或いは内側に凸となるように屈曲されて楕円状に変形してしまう。
【0011】
また、図3の板芯合わせでは、内圧がかかるインサートプレート7の内側面では、このテーパ面12aにかかる圧力で開口部10を内側に縮径する力が作用するものの、インサートプレート7の外側のテーパ面12bでは、図2の従来例と同様に、開口部10を拡径する力が作用するため、インサートプレート7に屈曲力が作用するため楕円化が避けられない。
【0012】
そこで本発明の目的は、上記課題を解決するために、薄肉耐圧容器にインサートプレートを用いてハッチを取り付ける際に、インサートプレートを取り付ける開口部の楕円化を軽減できる薄肉耐圧容器のハッチ取付構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、内圧力がかかる薄肉耐圧容器の胴部に開口部を形成し、その開口部にインサートプレートを取り付け、そのインサートプレートにハッチを取り付けるためのハッチの取付構造において、前記開口部に取り付ける前記インサートプレートの外周部の板厚を前記胴部の板厚と同じ形成すると共に、前記インサートプレートの中央部の板厚をテーパ面を介して前記胴部の板厚より厚く形成し、そのインサートプレートのテーパ面が、前記胴部内に位置するようにインサートプレートを前記開口部に取り付けるようにしたことを特徴とする薄肉耐圧容器のハッチ取付構造である。
【0014】
請求項2の発明は、前記インサートプレートの中央部の厚肉部には、前記ハッチが接続される貫通スリーブを取り付ける取り付け穴が形成される請求項1記載の薄肉耐圧容器のハッチ取付構造である。
【0015】
請求項3の発明は、前記貫通スリーブの内側に前記ハッチのフランジ継手が接続される請求項2記載の薄肉耐圧容器のハッチ取付構造である。
【0016】
請求項4の発明は、前記インサートプレートの外側面が前記胴部と同一面となるように取り付けられる請求項1〜3いずれかに記載の薄肉耐圧容器のハッチ取付構造である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、インサートプレートの外側面が胴部の外面と同一面となるように取り付け、前記インサートプレートのテーパ面を胴部の内面に位置させることにより、開口部周りの力のバランスを変えることで、胴部の開口部廻りの楕円化を軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態を示し、薄肉耐圧容器にハッチを取り付けるインサートプレートを外面合わせで設置したハッチ取付構造の断面図である。
【図2】薄肉耐圧容器にハッチを取り付けるインサートプレートを内面合わせで設置した従来のハッチ取付構造の断面図である。
【図3】薄肉耐圧容器にハッチを取り付けるインサートプレートを板芯合わせで設置した従来のハッチ取付構造の断面図である。
【図4】薄肉耐圧容器の胴部にハッチを取り付ける概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態を添付図に基づいて説明する。
【0020】
図1(a)、図1(b)は、本発明の内圧力がかかる薄肉耐圧容器1の胴部5に、ハッチ6を取り付ける薄肉耐圧容器1のハッチ取付構造を示したもので、図1(a)はハッチ6を取り付ける薄肉耐圧容器1の胴部5の縦断面図、図1(b)は水平断面図である。
【0021】
図1(a)、図1(b)に示すように、薄肉耐圧容器1の胴部5には、内部に資材を搬入搬出するためのハッチ6を取り付けるための、所定の径を有する開口部10が形成される。この開口部10には、リング状で、胴部5の周面に合わせて円弧状に形成したインサートプレート7が溶接接合されて取り付けられている。
【0022】
このインサートプレート7は、外周部の板厚が、胴部5の板厚と同じに形成され、中央部7tの板厚が、テーパ面12を介して、胴部5の板厚より2〜3倍厚く形成される。
【0023】
開口部10へのインサートプレート7の取り付けは、その外側面7oが胴部5の外周面と同じに形成され、テーパ面12が形成された内側面7iが、薄肉耐圧容器1内に位置するように取り付けられる。
【0024】
インサートプレート7に取り付けるハッチ6は、インサートプレート7を貫通して貫通スリーブ9が設けられ、その貫通スリーブ9に従来と同様に、フランジ継手8を介してハッチ蓋6aが取り付けられて構成される。
【0025】
これを詳しく説明すると、インサートプレート7の中央部7tには、取り付け穴11が形成され、その取り付け穴11に、実質的に搬入搬出口を形成する貫通スリーブ9が挿入されて溶接接合され、この貫通スリーブ9の内側、すなわち薄肉耐圧容器1内に位置した側には、ハッチ蓋6aを取り付けたフランジ継手8が接合される。またハッチ蓋6aは、断面円形状に形成されると共に、内側に凸となるようフランジ継手8に取り付けられる。
【0026】
本発明の実施形態における作用を説明する。
【0027】
本発明においては、インサートプレート7の外側面7oが、薄肉耐圧容器1の胴部5の外周面と同じ面になるように形成され、内側面7iは、テーパ面12にて、内圧力がかかる胴部5内に突出するように設けられている。このため、インサートプレート7の外側面7oでは、一様な円周応力が作用し、内側面7iでは、内圧力がテーパ面12にかかることにより、その内圧力が、インサートプレート7を縮径する力が作用し、この力でインサートプレート7を屈曲させる力が生じるが、外側面7oには、屈曲させる力より十分大きな、一様な円周応力が作用しているために、インサートプレート7が屈曲することがなく、開口部10の楕円化が軽減され、同時に、貫通スリーブ9の楕円化が軽減される。
【0028】
よって、従来の図2に示す内面合わせや、図3に示す板芯合わせのように、内圧力により貫通スリーブ9が楕円化してしまうことが軽減され、ハッチ6の封止性を損なうこともない。
【0029】
さらに、図2に示す内面合わせや、図3に示す板芯合わせでは、貫通スリーブ9の楕円化を軽減する場合に、インサートプレート7を、より厚くする、薄肉耐圧容器1全体の板厚を厚くする等の対策をとる必要があり、コストが高くなるという問題があったが、本発明では、薄肉耐圧容器1の厚さや、インサートプレート7の厚さを、従来のものと変えることなく、インサートプレート7の外側面が胴部5と同一面となるように取り付け、インサートプレート7のテーパ面12を有する内側面7i側が胴部5の内面に突出するように形成して、取り付けることのみで、開口部10や貫通スリーブ9の楕円化を軽減することが可能であり、コストの面で優位である。
【符号の説明】
【0030】
1 薄肉耐圧容器
5 胴部
6 ハッチ
7 インサートプレート
7i 内側面
8 フランジ継手
9 貫通スリーブ
10 開口部
12 テーパ面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内圧力がかかる薄肉耐圧容器の胴部に開口部を形成し、その開口部にインサートプレートを取り付け、そのインサートプレートにハッチを取り付けるためのハッチの取付構造において、前記開口部に取り付ける前記インサートプレートの外周部の板厚を前記胴部の板厚と同じ形成すると共に、前記インサートプレートの中央部の板厚をテーパ面を介して前記胴部の板厚より厚く形成し、そのインサートプレートのテーパ面が、前記胴部内に位置するようにインサートプレートを前記開口部に取り付けるようにしたことを特徴とする薄肉耐圧容器のハッチ取付構造。
【請求項2】
前記インサートプレートの中央部の厚肉部には、前記ハッチが接続される貫通スリーブを取り付ける取り付け穴が形成される請求項1記載の薄肉耐圧容器のハッチ取付構造。
【請求項3】
前記貫通スリーブの内側に前記ハッチのフランジ継手が接続される請求項2記載の薄肉耐圧容器のハッチ取付構造。
【請求項4】
前記インサートプレートの外側面が前記胴部の外側面と同一面となるように取り付けられる請求項1〜3いずれかに記載の薄肉耐圧容器のハッチ取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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