説明

薄膜カートリッジおよび薄膜カートリッジを作製するための方法

【課題】確実かつ再現可能に開放することのできる簡単かつ安価に作製可能な薄膜カートリッジを形成する。
【解決手段】薄膜カートリッジは、少なくとも1つのチャンバ110,112を周方向に包囲する薄膜チューブ106と、薄膜チューブ106とは別個の、薄膜チューブ106の軸線方向端部を閉鎖するカバー116であって、それぞれのチャンバ110,112のために、チャンバ110,112に充填材を充填することができる少なくとも1つの第1開口118が形成されたカバー116と、第1開口118を閉鎖する蓋とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄膜カートリッジおよび薄膜カートリッジを作製するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、充填材、シール材または接着材などのなどのペースト状化学物質を含む1つ以上のチャンバを有する薄膜カートリッジが既知である。このような薄膜カートリッジは、ディスペンサのカートリッジホルダ内に挿入され、ディスペンサにより、前記化学物質が所望の箇所に塗布される。
【0003】
チャンバが実質的に薄膜チューブによって形成された薄膜カートリッジを使用することは、所要スペースを取らずに、たいした手間もなしに空のカートリッジを廃棄できるので都合が良い。例えば、ドイツ国実用新案第29501255号により、薄膜バッグの2つの端部を1つの編組の形にまとめ、これをそれぞれ金属クリップにより閉じることによって、チャンバを形成することが既知である。しかしながらこれは、一方ではチャンバの軸線方向端部が気密に閉じられておらず、したがって、特に可動な流体部分が部分的には編組の毛管効果によって常にある程度漏出してしまうことが欠点であることが明らかとなった。他方では、薄膜バッグを開口する際の再現性が問題である。このために、ドイツ国特許実用新案第29501255号では、薄膜バッグを所定の形状で開口させるべく2つの穿刺スペードを有する穿刺装置が使用される。しかしながら、開口の実際の形状は、薄膜材が個々の場合にどのように裂断するかに依存している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】ドイツ国特許実用新案第29501255号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、確実かつ再現可能に開口することのできる簡単かつ安価に作製可能な薄膜カートリッジを形成することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は、少なくとも1つのチャンバを周方向に包囲する薄膜チューブと、薄膜チューブとは別個の、薄膜チューブの軸線方向端部を閉鎖するカバーであって、それぞれのチャンバのために、チャンバに充填材を充填することができる少なくとも1つの第1開口が形成されたカバーと、第1開口を閉鎖する蓋とを有する薄膜カートリッジによって解決される。薄膜チューブを使うことによってその利点、すなわち、迅速で安価な作製ならびに排出後のスペースを取らない保管という利点が保持される。しかも薄膜チューブとは別個のカバーの使用により、必要に応じて所定の形状安定的な開口を設けることが可能となり、これらの開口は、蓋を除去または破壊することによって所定の直径で意図的に開放することができる。この開放は、有利には薄膜カートリッジをディスペンサに挿入した時に行われる。特にこのような構成により、薄膜カートリッジをまず作製し、次いで充填することができる。なぜなら、第1開口は、作成とは別個の充填プロセス後に簡単に閉鎖することもできるからである。これまでの薄膜カートリッジでは、作製と充填とは1つの作業工程で行われた。なぜなら、薄膜バッグは両端で固く閉じられ、したがって充填を行うことができる開口を備えていなかったからである。
【0007】
薄膜チューブの第2の軸線方向端部は、薄膜チューブとは別個の、薄膜チューブに結合された底部によって閉じられていてもよい。このようにして、所定の容積を有する円筒状のチャンバを簡単に形成することができる。底部は、例えばカバーまたは薄膜チューブの材料からなっており、寸法については少なくともほぼカバーに相当していてもよい。
【0008】
カバーは、有利には薄膜チューブよりも剛性のある材料、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレンテレフタレートまたはアクリロニトリル-ブタジエン-スチロールからなっている。
【0009】
薄膜カートリッジは、複数チャンバ式カートリッジとして形成してもよい。この場合、異なるチャンバは異なる充填材を収容することができ、これらの充填材が材料の吐出時にはじめて相互に混合されるようにしてもよい。
【0010】
複数のチャンバを設けた場合、これらのチャンバには異なる充填材を充填してもよい。充填材は、例えばシール材、モルタル、被覆材、色素、発砲性半製品、接着材または着色剤の複合成分からなっていてもよい。しかしながら、高い混合比を実現するために少なくとも2つのチャンバに同じ充填材を充填することも可能である。複数のチャンバは、例えば薄膜チューブを仕切りによって軸線方向に相互に並行に延在する複数のチャンバに区画することによって形成してもよい。このために、薄膜チューブに対して軸線方向に並行に延在する1つ以上の薄膜部分を薄膜チューブ内に挿入し、薄膜チューブの壁ならびに相互に接着または溶接してもよい。個々のチャンバは、薄膜カートリッジが閉じられている場合には相互に完全に分離されている。
【0011】
複数のチャンバは、第1の薄膜チューブが第2の薄膜チューブに対して並行に延在するように第1の薄膜チューブ内に第2の薄膜チューブを配置することによって形成してもよい。このような構成により、特にチャンバ間に大きい容積差を設けることができる。第1の薄膜チューブの内部に位置する、より薄い第2の薄膜チューブは、完成した混合物内で極めて少ない割合の容積を占める成分を収容することもできる。チャンバは同軸的に配置されていてもよいが、内側の薄膜チューブは軸線からずれていてもよい。薄膜チューブと仕切りとを組み合わせることもでき、これにより、用途に応じてチャンバの適宜の構成を達成することができる。
【0012】
全てのチャンバは、有利にはそれぞれのチャンバと一対一に対応する第1開口を配設したカバーまで延在している。有利には全てのチャンバは底部まで延在している。
【0013】
好ましくは、カバーと堅固に結合され、充填材を吐出するための混合管を収容する収容部に設けられた吐出開口を備えるヘッド部が設けられている。ヘッド部は、吐出開口が材料の吐出時に変形されないように、有利には比較的堅固な材料から作製されている。
【0014】
吐出開口は、薄膜カートリッジの使用前には蓋によって閉じられていてもよい。
【0015】
カバーとヘッド部の内壁との間には、充填材を吐出開口に案内するための少なくとも1つの通路を形成してもよい。複数チャンバの場合、好ましくはチャンバにつき1つの通路が形成されており、通路は、有利には吐出開口まで別個に延びており、これにより、個々のチャンバの充填材が薄膜カートリッジ内で混合されることが防止される。通路を通って、個々の成分および充填材は、薄膜カートリッジが破断された場合にも吐出開口からの吐出前には相互に完全に分離されている。
【0016】
薄膜チューブとカバーもしくは底部との間ならびにカバーとヘッド部との間の結合は、接着または溶接、特に超音波、レーザまたは熱間溶接によって行ってもよい。
【0017】
ヘッド部とカバーとは、係止またはかしめによって結合してもよい。もちろん、これらの手段の組み合わせを使用してもよい。全ての結合部は、有利には、チャンバが気密に閉鎖されるように構成されている。
【0018】
本発明の好ましい実施形態では、各チャンバに対応して、第1開口とは別個の1つの排出開口がそれぞれ設けられている。これにより、薄膜カートリッジの充填時に様々な利点が得られる。例えば、第1開口を介して充填材を注入し、通路が吐出開口まで完全に充填材により充たされるまでチャンバを充填することが可能である。これにより、複数成分カートリッジにおける混合比は最初から所望の混合比に相当しているので混合比設定の手間を最小限にすることができる。
【0019】
隣接する第1開口、排出開口または充填開口同士を共通の蓋によって閉鎖することが可能である。
【0020】
第1開口、排出開口および吐出開口の蓋として、有利には1つ以上の薄膜、例えば複合薄膜または単一薄膜が設けられている。薄膜は、例えば1層以上のポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、エチレンビニル共重合体および/またはアルミニウムからなっていてもよい。
【0021】
蓋用の薄膜は、有利には開口の縁部に溶接または接着される。蓋を簡単に除去するために、薄膜は引き剥がすことのできるタブを備えていてもよい。
【0022】
特にヘッド部の充填開口のためには、蓋として金属小プレートまたは射出成形部材を設けてもよい。これらの蓋も開口の縁部に、有利には接着または溶接される。
【0023】
蓋は、それぞれの開口に直接取り付けてもよい。
【0024】
蓋を開放もしくは除去するためには複数の可能性が考えられる。例えば、薄膜は、薄膜全体が引き離し可能であり、薄膜の除去後に排出開口または吐出開口を完全に解放してもよい。しかしながら、薄膜は1つ以上の脆弱ゾーンを備えていてもよく、これらの脆弱ゾーンに沿って薄膜はディスペンサに加えられた圧力により制御された状態で裂断され、所定の態様で吐出開口または排出開口を解放する。脆弱ゾーンは、例えば、再現可能にレーザ剥離によって作製することができる。
【0025】
蓋、特に第1開口のための蓋には、例えば充填材の成分、バッチ番号または使用期限などの材料表示を設けてもよい。場合によっては薄膜カートリッジのラベリングに用いることもできる。
【0026】
充填プロセスを改善するためには、第1開口および/または排出開口の縁部に円錐状のテーパ部を設けてもよい。テーパ部は、注入ランスをセンタリングし、これにより、注入ランスと開口の縁部との間をより密に閉鎖する役割を果たす。
【0027】
有利には、第1開口および/または排出開口の縁部には少なくとも1つのリップが形成されている。有利には周方向に環状のリップまたはこれに対応するリッジが、注入ランスを引き戻す際に注入ランスから充填材を拭い取り、充填材が充填装置に入らないようにする役割を果たす。複数のリップまたはリッジを軸線方向に連続して配置することもでき、これにより、充填材のできるだけ多くの部分が拭い取られる。
【0028】
充填材の個々の成分には、粗い、または比較的大きい充填粒子を使用することもできる。なぜなら、第1開口はこのような成分を問題なしに充填することができる大きさに形成することができるからである。より粗い充填粒子を充填材に挿入することができるように通路の大きさを簡単に選択することもできる。
【0029】
チャンバは気密に閉鎖され、相互に分離されており、このようなチャンバ構成により漏出率は実質的にゼロにすることができるので、長い保管期間を達成することができる。
【0030】
薄膜カートリッジの外形は、使用される成分の数に関係なしに等しく形成することもできる。このようにして、異なる種類の充填材に対しても1つのディスペンサを使用することもできる。
【0031】
吐出開口は、閉鎖しないでおいてもよい。この場合、排出開口は、有利には脆弱ゾーンを設けた蓋によって閉鎖されており、まだ開口が閉じられている新しい薄膜カートリッジをディスペンサに挿入し圧力を加えたとき、内圧が、脆弱ゾーンを開放するのに必要な力を超えるようにすることができる。このようにして、新たに挿入された薄膜カートリッジは自動的に、制御されて開放される。
【0032】
通路の横断面および/または第1開口もしくは排出開口の横断面の形状により、異なるチャンバからの個々の充填材の絞り作用を引き起こすことができ、これにより、それぞれ吐出される充填材の量を極めて正確に調節することができる。このようにして個々の充填材のレオロジーが異なる場合に流れの差を設けることができる。
【0033】
例えば上記のような薄膜カートリッジを作製するための方法では、次のステップが実施される:
カバーと薄膜チューブとの結合により少なくとも1つのチャンバを作製するステップ、
カバーの第1開口を介してチャンバに充填材を充填するステップ、および
第1開口を閉じるステップを実施する。
【0034】
薄膜カートリッジは、完成してから充填される。場合によって設けられた底部も既に挿入され、第1開口、場合によっては他の排出開口を除いてチャンバが完全に閉鎖される。第2ステップとして、次いで充填材がチャンバに充填され、充填は空の薄膜カートリッジを作製するのとは別の機械で実施される。充填後に第1開口は閉じれられ、これにより、薄膜カートリッジは気密に閉鎖される。
【0035】
充填材を吐出するための混合管のための収容部を有する上記ヘッド部は、充填前または充填後にカバーに堅固に結合することができる。
【0036】
ヘッド部を取り付けた後に充填が行われる場合、有利にはカバーとヘッド部との間の通路にも充填材が充填される。
【0037】
ヘッド部が充填後に取り付けられる場合、充填は第1開口を介して行われ、第1開口は充填後にヘッド部の固定前に閉じられる。
【0038】
ヘッド部を取り付けた後に充填を行う場合、第1開口および/または排出開口は開いたままであってもよく、ヘッド部の開口(充填開口および吐出開口)のみが閉じられる。
【0039】
カバーが各チャンバに対応する付加的な排出開口を備える場合、有利にはヘッド部の第1開口と一直線に並ぶ別の充填開口が設けられている。
【0040】
充填は、有利には、第1開口を通ってチャンバに挿入される注入ランスを介して行われ、表面下充填が行われる。充填レベルの上昇に伴い、充填の間に注入ランスは徐々に引き戻される。これにより、チャンバを気泡なしに充填することが可能である。充填プロセスは、真空または対向圧力によって支援することもできる。これは、特に吐出開口までの通路も充填すべき場合には有効である。
【0041】
チャンバ内の空気は、例えば、排出開口が設けられている場合にはこれらの排出開口を通って逃れることができる。充填時にヘッド部が取り付けられている場合に、ヘッド部の充填開口を、第1開口よりも小さい横断面により形成することも可能であり、これにより、注入ランスが充填開口に密に接触していても空気が第1開口の隙間を通って充填時にチャンバから逃れることができる。
【0042】
薄膜カートリッジは簡単に開放することができる。なぜなら、蓋として使用される薄膜は、工具なしに簡単に引き裂くことができるか、または薄膜カートリッジに所定の力を加えた場合に押出工具によって外側から所定のように裂断されるからである。所定の開口が常に生じるので、塗布プロセスのために不可欠な力が開放時および充填材の吐出時に一様に保持される。
【0043】
次に添付の図面に関して複数の実施例に基づき本発明を詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明による薄膜カートリッジの第1実施形態を示す概略図である。
【図2】図1の薄膜カートリッジの一部を示す概略斜視図である。
【図3】図1の薄膜カートリッジの上部を示す概略断面図である。
【図4】図3の概略的な詳細図である。
【図5】本発明による薄膜カートリッジのための蓋を示す概略図である。
【図6】本発明による薄膜カートリッジの薄膜チューブの下部を示す概略図である。
【図7】本発明による薄膜カートリッジの薄膜チューブの下部を示す概略図である。
【図8】本発明による薄膜カートリッジの第2実施形態を示す概略図である。
【図9】図8の薄膜カートリッジの一部を示す概略斜視図である。
【図10】図8の薄膜カートリッジを示す概略断面図である。
【図11】図10の詳細図である。
【図12】本発明による薄膜カートリッジの蓋を示す概略図である。
【図13】本発明による薄膜カートリッジの第3実施形態を示す概略平面図である。
【図14】図13の薄膜カートリッジの一部を示す概略斜視図である。
【図15】本発明による薄膜カートリッジの蓋を示す概略図である。
【図16】図13の薄膜カートリッジの概略断面図である。
【図17】本発明による薄膜カートリッジの第4実施形態を示す概略図である。
【図18】図17の薄膜カートリッジの一部を示す概略斜視図である。
【図19】図17の薄膜カートリッジを示す概略断面図である。
【図20】図19の概略的な詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
図1は、第1実施形態による薄膜カートリッジ100を示す。この場合、薄膜カートリッジ100は、2つの薄膜コンテナ102およびヘッド部104(図3)を備える。ヘッド部104は、隣接して配置された2つの薄膜コンテナ102のそれぞれに軸線方向上端で結合されている。
【0046】
図2には、薄膜コンテナ102がさらに詳細に示されている。第1の外側の薄膜チューブ106は、仕切り108(図6および図7参照)によって、軸線方向Aに沿って相互に分離された並行した2つのチャンバ110,112に区画されている。図6および図7に示すように、2つのチャンバ110,112は等しい大きさまたは異なる大きさに形成されていてもよく、これは仕切り108の配置によって達成される。唯一の仕切り108の代わりに、複数の仕切り108を設けて薄膜チューブ106の横断面上に適宜延在させてもよい。
【0047】
図6および図7では、薄膜チューブ106と仕切り108とは単一の薄膜部材から作製されている。しかしながら、例えば押出成形によって作製した周囲の閉じられた薄膜チューブを使用し、仕切り108を内部に挿入することも可能である。薄膜チューブ106への仕切り108の固定は、ここでは接着または溶接によって行われるが、適宜ふさわしい方法を選んで行われる。
【0048】
薄膜チューブ106におけるヘッド部104と反対側の軸線方向端部は、ここにはさらに説明しない底部114によって閉じられている。底部114は、ここでは、薄膜チューブ106および仕切り108の軸線方向端部に接着または溶接によって結合された1つの薄膜部材であり、これにより、チャンバ110,112はこの端部で周囲に対して気密に閉鎖されている。
【0049】
軸線方向上端では、チャンバ110,112はカバー116によって閉じられており、カバー116は、底部114のように、接着または溶接によって薄膜チューブ106および仕切り108に堅固に結合されている。薄膜チューブ106、仕切り108、底部114およびカバー116はチャンバ110,112を画定するとともにこれらチャンバを完全に包囲している。
【0050】
しかしながら、カバー116には複数の開口が形成されており、この場合には、チャンバ110,112につき第1開口118およびこれとは別個の排出開口120が形成されている。カバー116は、ここでは比較的堅固な薄膜材料からなっている。この薄膜材料は、薄膜チューブ106のために使用される材料よりも堅固であってもよい。ヘッド部104は、ここではカバー116よりも堅固な材料から作製されており、薄膜カートリッジ100の軸線方向上端全体に形状安定性をもたらしている。特にヘッド部104は、(図示しない)ディスペンサに薄膜カートリッジ100を使用する場合にも開口の直径が一定に保持されるようにする役割を果たす。
【0051】
ヘッド部104には、同様に開口、すなわち1つの中央の吐出開口122、ならびに、それぞれのチャンバ110,112に対して、吐出開口122とは別個の充填開口124が形成されており、充填開口124と、カバー116の第1開口118とはそれぞれ整列している。図3には、各薄膜コンテナ102の1つのチャンバ112だけが見える状態が示されている。しかしながら、ヘッド部104はチャンバ110,112の全体およびすべての薄膜コンテナ102のために唯一の共通の吐出開口122を備える。
【0052】
ヘッド部104の内壁とカバー116の上面との間には、それぞれ排出開口120から吐出開口122まで通じる通路126が形成されている。
【0053】
吐出開口122は、チャンバ110,112に収容された充填材を吐出するための混合管を収容する管状の収容部128の端部に配置されている。
【0054】
ヘッド部104の壁部とカバー116との間の内室に設けられた通路126を画定する隔壁130は、吐出開口122まで真っ直ぐに延びており、これにより、通路126はチャンバが設けられているのと同じ数に効果的に区画される。
【0055】
薄膜カートリッジ100を使用する前には、吐出開口122は蓋132によって密に閉鎖されている。ここに示した実施例では、蓋132は薄膜であり、薄膜は、それぞれのチャンバ110,112に対応して脆弱ゾーン134を備え、この脆弱ゾーンは、吐出開口122の領域で1つの通路126の中央に配置されている(図5参照)。
【0056】
チャンバ110,112は全て、薄膜カートリッジ100の使用前に周囲に対して密閉されている。個々のチャンバ110,112における異なる充填材料の混合は、この状態では行われない。
【0057】
充填開口124は蓋136によって同様に密閉されている。蓋136はここでは同様には薄膜であり、この薄膜には、製品名、個々のチャンバ110,112に含まれる充填材、バッチ番号および薄膜カートリッジの使用期限が印刷されており、これにより、薄膜カートリッジ100のラベリングの役割を果たす。
【0058】
蓋136として金属小プレートまたは射出成形部材を使用することも可能である。いずれの場合にも、蓋136は、充填材がチャンバ110,112から流出することができないように充填開口124を完全に密閉する。
【0059】
ヘッド部104には、充填通路138が充填開口124の縁部からカバー116の第1開口118まで真っ直ぐに延在している。充填通路は、充填開口124の縁部を形成する領域に円錐状のテーパ部140を有し、このテーパ部140は周方向リップ142で終端している。リップ142は充填通路138の最小径横断面の領域を規定する。
【0060】
薄膜カートリッジ100の作製時には、まず薄膜コンテナ102が作製される。このために、薄膜チューブ106は平坦な薄膜部分または周囲が閉じられた薄膜チューブとして作製される。適宜設けられた仕切り108は、薄膜チューブ106の内部で固定される。軸線方向下端には、底部114が挿入され、接着されるか、または超音波、レーザまたは熱間溶接によって固定される。軸線方向の反対側の端部には、同様にカバー116が固定される。この場合、仕切り108も底部114およびカバー116で固定され、これにより、閉じられたチャンバ110,112が形成される。第1開口118および排出開口120はまだ開かれている。
【0061】
次にヘッド部104は、例えば接着または溶接によってカバー116に堅固に結合される。
【0062】
次いで、通路126もカバー116とヘッド部104との間に形成される。吐出開口122は充填開口124と同様にまだ開かれている。この時点で、薄膜カートリッジ100はあらかじめ作製された製品として充填のための準備が完了する。充填は製造とは異なる機械で行ってもよい。
【0063】
充填開口124および第1開口118を介して、いま(図示しない)注入ランスがそれぞれのチャンバ110,112に挿入され、チャンバ110,112ごとに予め決まっている充填材が注入される。注入ランスは、この場合チャンバ110,112の底部から始まって充填状態が進むにつれて徐々に引き戻され、これにより、気泡なしの表面下充填(Unterspiegelbefuellung)が達成される。円錐状のテーパ部140は充填開口124における注入ランスのセンタリングをもたらし、充填開口124が注入ランスによって実質的にシールされるようにする役割を果たす。チャンバ110,112から排出されるべき空気は、排出開口120および吐出開口122を通って逃れる。注入ランスは、充填プロセスで徐々に引き戻され、リップ142は余分な充填材を充填装置内に到達しないように注入ランスから拭い取る。軸線方向に連続して配置された複数のリップ142を充填通路138に設けてもよいが、ここでは1つのみのリップが図示されている。
【0064】
充填は、充填材が排出開口120から流出し、通路126も吐出開口122まで充たされるまで行われる。
【0065】
吐出開口122を真空状態とするか、または背圧分を付加して加圧することにより充填を容易にすることができる。
【0066】
充填終了後、吐出開口122は蓋132によって密閉され、これによって、個々の通路126も相互に完全に分離される。
【0067】
充填開口124も蓋136によって密閉される。第1開口118および排出開口120はこの実施例では閉じられていない。
【0068】
作製された薄膜カートリッジ100は、この形態でディスペンサに挿入することができ、最初に加えられた圧力は、吐出開口122の蓋13に設けられた脆弱ゾーン134を裂断する役割を果たす。この時点から既に充填材は全てのチャンバ110,112から所望の混合比で吐出される。
【0069】
蓋132はディスペンサ内への挿入前に使用者によって引き離されるように構成してもよい。
【0070】
通路126の形状および排出開口120の大きさは、チャンバ110,112で使用される充填材に関係して、開口および通路126が、より大きい充填粒子を有する充填材が妨げられることなく流出するのに十分であるか、または、充填材の容量が少なく、および/または、さらさらした充填材であっても絞り作用が実施されるのに十分であるように選択される。それぞれの通路126はこの意味で異なるように構成されていてもよい。ヘッド部104および隔壁130の形態により変化態様が得られる。
【0071】
図示の実施例では、4成分カートリッジが実施されており、2つの薄膜コンテナ102のチャンバ110,112のそれぞれは異なる充填材を含む。充填材は、まず吐出開口122からの吐出時に相互接触し、吐出開口122に取り付けられた混合管内で混合される。
【0072】
図8〜図12には、薄膜カートリッジ200の第2実施形態が示されている。
【0073】
第1実施形態と同一の素子については既に付した符号を保持する。
【0074】
この場合、第2薄膜チューブ206を第1薄膜チューブ106に挿入することにより分離されたチャンバ110,112および113が実現されている。付加的に、ここでは第1実施形態と同様に、第1薄膜チューブ106の壁部と第2薄膜チューブ206の壁部との間に位置するさらにもう1つの仕切り108が設けられており、これにより、全部で3つのチャンバが形成されている。複数の第2薄膜チューブ206を設けるか、またはこれら第2薄膜チューブを仕切りによってさらに区画することも可能である。
【0075】
第1実施形態のように、それぞれのチャンバ110,112,113には、カバー216に第1開口118が配設されている。
【0076】
この配置は2つの薄膜コンテナ202についてあてはまる(図8参照)。
【0077】
第1実施形態とは反対に、ここでは独立した排出開口は設けられていない。代わりに、通路226が、第1開口118から吐出開口122まで通じるようにヘッド部204に形成されている。その他の点では、ヘッド部204は第1実施形態のヘッド部104と同様に構成されている。ヘッド部204の充填開口124には円錐状のテーパ部140および環状のリップ142が設けられている。しかしながら、この場合、第1開口118の直径はリップ142の領域における充填通路138の直径よりも大きく、これにより、充填する際、空気を充填中のチャンバから逃がすことができる。
【0078】
薄膜コンテナ202につき、ここではそれぞれ3つのチャンバ110,112,113が設けられているので、吐出開口122の蓋132には6つの脆弱ゾーンが分配されており、吐出開口122は6つの通路226に区画されている。
【0079】
薄膜カートリッジ200を作製するためには、第1実施形態のように、まず薄膜コンテナ202が作製され、ヘッド部204に結合される。個々のチャンバ110,112,113の充填は、ヘッド部204の充填開口124およびカバー216の第1開口118を介して行われる。ここでも充填は、充填材が通路126を吐出開口122まで充たすまで行われる。充填後、蓋132が吐出開口122に取り付けられ、蓋136が充填開口124に取り付けられる。
【0080】
個々のチャンバ110,112,113には、6成分の混合物が生じるようにそれぞれ異なる充填材を収容してもよい。しかしながら、より高い混合比を得るために複数のチャンバに同じ充填材を充填することも可能である。薄膜コンテナ202の外形を変更する必要なしに1:1から1:50までの混合比を実施することが可能である。
【0081】
図13〜図16には薄膜カートリッジ300の第3実施形態が示されている。
【0082】
これまでに説明した実施形態とは異なり、ここではヘッド部304をカバー316に固定する前にまず薄膜コンテナ302が充填される。2つの薄膜コンテナ302の構成および区画は実質的に第1実施形態に対応している。
【0083】
ヘッド部304は吐出開口122の他には開口を備えていない。薄膜カートリッジ300の作製時には、まず薄膜コンテナ302を完成させる。薄膜コンテナ302は第1開口118を介して充填され、開口118の縁部には、上述の開口124の縁部と同様に円錐状のテーパ部およびシールリップを形成してもよい(図20参照)。チャンバ110,112が完全に充填された後、第1開口118は蓋340によって閉じられる。蓋340はここでは、図15に概略的に示すように脆弱ゾーン342を有する薄膜の形態で形成されている。次いでヘッド部304は、例えば接着または溶接によって薄膜コンテナ302に堅固に結合される。吐出開口122の蓋132は、ヘッド部304を薄膜コンテナ302に取り付ける前後に閉鎖することができる。
【0084】
図17〜図22は、薄膜カートリッジ400の第4実施形態を示す。
【0085】
ここでは、第2実施形態のように、チャンバ110,112,113は、第1薄膜チューブ106の内部に第2薄膜チューブ206を配置することによって形成されている。これに対して、ヘッド部404および第1開口118の構成は、先ほど説明した第3実施形態と同様である。
【0086】
この場合にも、まず薄膜コンテナ402の作製後に個々のチャンバ110,112,113が充填され、蓋440によって第1開口118が閉じられる。次いでヘッド部404はカバー416に堅固に結合される。
【0087】
最後の2つの実施形態では、通路326,426は薄膜カートリッジ300,400を使用する前には充填材を充填されていない。
【0088】
したがって、これらの実施形態では、吐出開口122を閉じないでおくことも可能である。
【0089】
これらの実施形態では、チャンバ110,112,113を充填するために使用する第1開口118は、縁部に円錐状のテーパ部140ならびに充填材を注入ランスから拭い取るための環状のリップ142を備えている。
【0090】
すべての実施形態において、通路126〜426は中間ヘッド部およびカバーに形成されており、これによって、個々のチャンバから吐出される充填材は吐出開口122を離れた時はじめて混合される。
【0091】
開口118,120,122および124は、それぞれ円形または楕円形に構成されていてもよい。
【0092】
脆弱ゾーンは破線または実線により線形、円形、十字形または楕円形に構成してもよい。
【0093】
個々の実施形態のすべての特徴は、専門家の裁量により適宜に相互に組み合わせるか、または相互に交換することもできる。
【符号の説明】
【0094】
104,204,304,404 ヘッド部
106,206 薄膜チューブ
110,112,113 チャンバ
116,216,316,416 カバー
118 開口
122 吐出開口
124 充填開口
126,226,326,426 通路
128 収容部
136,340,440 蓋
140 テーパ部
142 リップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのチャンバ(110,112,113)を周方向に包囲する薄膜チューブ(106;206)と、
該薄膜チューブ(106;206)とは別個の、薄膜チューブ(106;206)の軸線方向端部を閉鎖するカバー(116;216;316;416)であって、該チャンバ(110,112,113)に充填材を充填することができる少なくとも1つの第1開口(118)が各チャンバ(110,112,113)に対応して形成されたカバー(116;216;316;416)と、
前記第1開口(118)を閉鎖する蓋(136;340;440)と
を有することを特徴とする、薄膜カートリッジ。
【請求項2】
複数の前記チャンバ(110,112,113)は、前記薄膜チューブ(106)を区画することによって軸線方向(A)に沿って相互に分離されて設けられている請求項1に記載のカートリッジ。
【請求項3】
複数の前記チャンバ(110,112,113)は、少なくとも1つの別の薄膜チューブ(206)によって形成されて設けられており、第1の薄膜チューブ(106)が第2の薄膜チューブ(206)に対して並行に延在するように、第2の薄膜チューブ(206)が第1の薄膜チューブ(106)内に配置されている、請求項1または2に記載の薄膜カートリッジ。
【請求項4】
前記カバー(116;216;316;416)に堅固に結合されており、充填材を吐出するための混合管を収容する収容部(128)に設けられた吐出開口(122)を備えるヘッド部(104;204;304;404)が設けられている、請求項1から3までのいずれか一項に記載の薄膜カートリッジ。
【請求項5】
前記カバー(116;216;316;416)と前記ヘッド部(104;204;304;404)の内壁との間に、充填材を前記吐出開口(122)に案内するための少なくとも1つの通路(126:226:326:426)が形成されている、請求項3または4に記載の薄膜カートリッジ。
【請求項6】
前記チャンバ(110,112,113)につき、前記第1開口(118)とは別個の1つの排出開口(120)が設けられている、請求項1から5までのいずれか一項に記載の薄膜カートリッジ。
【請求項7】
前記蓋(136;340;440)が薄膜である、請求項1から6までのいずれか一項に記載の薄膜カートリッジ。
【請求項8】
前記カバー(116;216;316;416)の前記第1開口(118)および/または前記ヘッド部(104;204;304;404)の充填開口(124)の縁部が、円錐状のテーパ部(140)を備える、請求項1から7までのいずれか一項に記載の薄膜カートリッジ。
【請求項9】
前記カバー(116;216;316;416)の前記第1開口(118)および/または前記ヘッド部(104;204;304;404)の充填開口(124)の縁部に、少なくとも1つのリップ(142)が形成されている、請求項1から8までのいずれか一項に記載の薄膜カートリッジ。
【請求項10】
薄膜チューブ(106;206)と、少なくとも1つの第1開口(118)を備えるカバー(116;216;316;416)とを有する、特に請求項1から9までのいずれか一項に記載の薄膜カートリッジを作製するための方法において、
前記カバー(116;216;316;416)と薄膜チューブ(106;206)とを結合することにより少なくとも1つのチャンバ(110,112,113)を作製するステップ、
前記カバー(116;216;316;416)の前記第1開口(118)を介して前記チャンバ(110,112,113)に充填材を充填するステップ、および
前記第1開口(118)を閉じるステップを含むことを特徴とする、薄膜カートリッジを作製するための方法。
【請求項11】
充填材を吐出するための混合管を収容する収容部(128)を備えたヘッド部(104;204;304;304)を、充填材の充填前に前記カバー(116;216;316;416)に堅固に結合する請求項10に記載の方法。
【請求項12】
充填材を吐出するための混合管を収容する収容部(128)を備えたヘッド部(104;204;304;304)を、充填材の充填後に前記カバー(116;216;316;416)に堅固に結合する請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記第1開口(118)に直接取り付けた蓋(340;440)によって前記第1開口(18)を閉鎖する、請求項10から12までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
注入ランスを介して充填を行い、前記第1開口(118)を通過させて前記注入ランスを前記チャンバ(110,112,113)に挿入し、表面下充填を行う、請求項10から13までのいずれか一項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2012−224397(P2012−224397A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−90929(P2012−90929)
【出願日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【出願人】(591010170)ヒルティ アクチエンゲゼルシャフト (339)
【住所又は居所原語表記】Feldkircherstrasse 100, 9494 Schaan, LIECHTENSTEIN
【Fターム(参考)】