説明

薄膜太陽電池およびその製造方法

【課題】薄膜太陽電池においてポイントコンタクトを実現する。
【解決手段】透明導電膜(4)および金属裏面電極層(2)間に薄膜の光吸収層(3)を配置した薄膜太陽電池において、前記金属裏面電極層(2)と前記光吸収層(3)との界面に、少なくともその表面が絶縁体であるナノ粒子(6、6・・・)を含むナノ粒子分散層(5)を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄膜太陽電池およびその製造方法に関し、特に、高い光電変換効率を達成することが可能な薄膜太陽電池およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、アモルファスシリコン或いはカルコゲナイド系化合物を材料とする、薄膜太陽電池が注目されている。このような太陽電池は、材料費が安価で、しかも、大型の太陽電池パネルの生産が容易であるという優れた特性を有している一方で、一般に、その光電変換効率は結晶系太陽電池に比べて劣り、一層の改善が望まれている。
【0003】
シリコンウエハを材料とする結晶系太陽電池では、その光電変換効率を更に向上させるために、電極層をポイントコンタクト構造とすることが提案され、実用化されている。半導体層と電極層との接触界面は、ダングリングボンドおよびその他の結晶欠陥の密度が高く、キャリアの再結合速度が最も早くなる部分である。そこで、従来技術では、光吸収層(半導体層)と電極層とをポイントでコンタクトさせて表面再結合の割合を減らし、光電変換効率を向上させている。具体的には、光吸収層と電極層との間の大部分に、パッシベート膜として機能する表面再結合速度の小さい良質な酸化膜や窒化膜を形成することでポイントコンタクトを実現し、キャリアの再結合割合を低減している(例えば、特許文献1参照)。これによって、太陽電池特性の一つである開放電圧が高くなり、光電変換効率が向上することが知られている。
【0004】
しかしながら、現状の薄膜太陽電池では上記の様なポイントコンタクト構造は実現されていない。結晶シリコン太陽電池に対する上記の技術を、例えば、CIS系薄膜太陽電池に応用する場合、半導体層と電極層との間に欠陥の少ない絶縁膜を形成する必要があるが、このような絶縁膜を形成する技術は実現されていない。今後の技術革新により実現する可能性はあるが、その場合でも製造工程が複雑化し、製造コストの増加を招くと考えられる。
【0005】
従って、薄膜太陽電池において、光吸収層と電極層間に形成が容易なポイントコンタクト構造を実現できれば、製造コストの増加を招くことなく、薄膜太陽電池の光電変換効率の向上が達成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−283779
【特許文献2】特開2009−246025
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の目的は、光吸収層と電極層間に形成の容易なポイントコンタクトを備えた、薄膜太陽電池を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明の第1の態様では、透明導電膜および金属裏面電極層間に薄膜の光吸収層を配置した薄膜太陽電池において、前記金属裏面電極層と前記光吸収層との界面に、少なくともその表面が絶縁体であるナノ粒子を含むナノ粒子分散層を設けたことを特徴とする、薄膜太陽電池を提供する。
【0009】
第1の態様において、前記ナノ粒子は、全体が前記絶縁体で形成されている粒子、内部が中空の粒子、または金属粒子の表面を前記絶縁体で被覆した粒子の何れかであって良い。この場合、前記絶縁体は、シリカ、アルミナ、シリコンナイトライドまたはソーダライムガラスの何れかである。また、前記絶縁体の屈折率が前記光吸収層の屈折率よりも小さい場合、前記ナノ粒子の粒径は100nm以上500nm以下とすることができる。
【0010】
更に、前記ナノ粒子が金属粒子の表面を前記絶縁体で被覆した粒子である場合、前記ナノ粒子の粒径は100nm以下とすることができる。この場合、前記金属粒子はAu、AgまたはCuである。
【0011】
更に、前記ナノ粒子分散層を、前記金属裏面電極層と前記光吸収層間の界面の前記光吸収層側に形成しても良い。あるいは、前記ナノ粒子分散層を、前記金属裏面電極層と前記光吸収層間の界面の前記金属裏面電極層側に形成しても良い。
【0012】
前記課題を解決するために、本発明の第2の態様では、基板上に金属裏面電極層を形成し、少なくとも表面が絶縁体であるナノ粒子を含む溶液を、前記金属裏面電極層表面に塗布し乾燥させることによって、前記金属裏面電極層上にナノ粒子分散層を形成し、前記ナノ粒子分散層を含む前記金属裏面電極層上に薄膜のp型光吸収層を形成し、前記光吸収層上にn型透明導電膜を形成する、各ステップを備える、薄膜太陽電池の製造方法を提供する。
【0013】
第2の態様において、前記金属裏面電極層をMoで構成し、前記p型光吸収層を化合物半導体で構成しても良い。
【0014】
前記課題を解決するために、本発明の第3の態様では、透明基板上に透明導電膜を形成し、前記透明導電膜上に少なくともpn接合を含む薄膜の光吸収層を形成し、少なくとも表面が絶縁体であるナノ粒子を含む溶液を、前記光吸収層表面に塗布し乾燥させることによって、前記光吸収層上にナノ粒子分散層を形成し、前記ナノ粒子分散層を含む前記光吸収層上に金属裏面電極層を形成する、各ステップを備える、薄膜太陽電池の製造方法を提供する。
【0015】
第2、第3の態様において、前記ナノ粒子は、全体が前記絶縁体で形成されている粒子、内部が中空の粒子、または金属粒子の表面を前記絶縁体で被覆した粒子の何れかとすることができる。
【0016】
また、前記ナノ粒子が金属粒子の表面を前記絶縁体で被覆した粒子である場合、前記ナノ粒子の粒径を100nm以下としても良い。
【0017】
更に、前記絶縁体を、シリカ、アルミナ、シリコンナイトライドまたはソーダライムガラスの何れかとしても良い。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、金属裏面電極層とp型光吸収層との界面に、表面が絶縁体のナノ粒子を含むナノ粒子分散層が形成され、それによって、金属裏面電極層とp型光吸収層との接触面積が大幅に制限され、ポイントコンタクトが実現できる。このポイントコンタクトによって、金属裏面電極層とp型光吸収層間の界面でのキャリアの再結合速度が大幅に低下し、入射光によって生成されたキャリアは、再結合することなく効率よく各電極に到達するので、薄膜太陽電池の光電変換効率が向上する。更に、ナノ粒子表面の絶縁体の屈折率が光吸収層の屈折率よりも小さい場合、ナノ粒子の粒径を100nm以上とすることによって、ナノ粒子分散層がBSR(Back Surface Reflector)構造として機能し、薄膜太陽電池の光電変換効率を更に向上させる。
【0019】
また、例えば、金(Au)または銀(Ag)粒子を絶縁膜で被覆したナノ粒子によってナノ粒子分散層を形成する場合、ナノ粒子の粒径を100nm以下とすることによって、ナノ粒子分散層において表面プラズモン共鳴が発生し、薄膜太陽電池の光電変換効率が更に向上する。
【0020】
ナノ粒子分散層は、金属裏面電極層上或いは光吸収層上に、ナノ粒子を含んだ溶液を塗布し乾燥させることによって、容易に形成することができる。従って、本発明によって、薄膜太陽電池に簡単にポイントコンタクトを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態1に係るCIS系薄膜太陽電池の概略構成を示す断面図。
【図2】図1に示すCIS系薄膜太陽電池の製造工程の一部を示す図。
【図3】図1に示すCIS系薄膜太陽電池の製造工程の一部であって、図2の後の工程を示す図。
【図4】本発明の実施形態2に係るアモルファスシリコン薄膜太陽電池の概略構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明の種々の実施形態を図面を参照して説明する。なお、以下の図面において概略図と記載されたものは、理解を容易にするために各層の関係を実際のものとは異なった大きさで表している。また、各図面において、同一の符号は同一又は類似の構成要素を示す。
【0023】
[実施形態1]
図1は、本発明の第1の実施形態に係る、サブストレート構造の薄膜太陽電池の概略構造を示す断面図であり、特に、p型光吸収層としてCIS系半導体を用いた薄膜太陽電池の構造を示している。図において、1は基板であり、ガラス、プラスティック、金属板等で構成される。2はMo、Ti、Cr等を材料とする金属裏面電極層、3はCIS系半導体で構成されるp型光吸収層、4はZnO、ITO等を材料とするn型透明導電膜であり、この太陽電池の窓層を構成する。なお、p型光吸収層3とn型透明導電膜4間に、Zn(O、S、OH)、CdS、In23等を材料とする高抵抗バッファ層を設けても良い。p型光吸収層3は、Cu(In、Ga)Se2、Cu(In、Ga)(Se、S)2、CuInS2等で構成される。
【0024】
一例として、金属裏面電極層2の層厚は200〜500nm、p型光吸収層3の層厚は1.0〜1.5μm、n型透明導電膜4の膜厚は0.5〜2.5μmである。
【0025】
図1において、5は、金属裏面電極層2とp型光吸収層3との界面に設けられたナノ粒子分散層であって、少なくともその表面が絶縁体で形成された、10nm〜500nm程度の粒径を有するナノ粒子6、6・・・を、金属裏面電極層2上に分散させることによって形成されている。ナノ粒子分散層5におけるナノ粒子6の金属裏面電極層2表面のカバー率(界面カバー率)は、20%〜95%程度とされている。ナノ粒子分散層5は、金属裏面電極層2上にナノ粒子を含有した溶液(例えば、純水)を塗布し、これを乾燥することによって形成される。界面カバー率は、溶液中のナノ粒子濃度を調節することにより制御が可能である。
【0026】
p型光吸収層3は、金属裏面電極層2上にナノ粒子分散層5を形成した後に形成される。そのため、金属裏面電極層2とp型光吸収層3間の接触面積は、ナノ粒子分散層5におけるナノ粒子6の存在によって制限され、著しく小さくなる。それに伴ってp型光吸収層3と金属裏面電極層2との界面におけるキャリアの表面再結合速度も低下する。その結果、この構造によって金属裏面電極側にポイントコンタクトが実現される。
【0027】
なお、ナノ粒子6を被覆する絶縁体、或いはナノ粒子6自体を構成する絶縁体として、シリカ(SiO)、アルミナ(Al)、シリコンナイトライド(Si)或いはソーダライムガラスを使用することができ、これらは、CIS系光吸収層3を形成する場合の熱処理温度(500℃〜700℃)において溶融することなく安定している。
【0028】
ナノ粒子6としては、必要に応じて、以下に示す形態1〜形態3のものを使用することができる。
[形態1]
形態1のナノ粒子6は、単一の物質、例えば、アルミナ、シリカ、SLG(ソーダライムガラス)、シリコンナイトライドの絶縁体で形成されるナノ粒子であって、ポイントコンタクト効果を生じるために、その直径を10nm〜500nm程度にされている。このようなナノ粒子として、市販されているものを使用することができる(例えば、http://www.sigmaaldrich.com/japan/materialscience/nano−materials/nanopowders.html参照)。
【0029】
図1に示すCIS系薄膜太陽電池の場合、CIS系p型光吸収層3の屈折率は3.0程度であり、また、ナノ粒子を被覆するアルミナ(Al)、シリカ(SiO)、ソーダライムガラスの屈折率は1.5前後であり、シリコンナイトライドの屈折率は2.0前後であるため、形態1のナノ粒子で構成されるナノ粒子分散層5は、裏面反射(BSR)機能を備えるようになる。BSR機能を効果的に得るためには、ナノ粒子6の粒径を100nm以上とすることが好ましい。
【0030】
即ち、形態1のナノ粒子において、粒径が100nm以上のものを用いることにより、ナノ粒子分散層5によってポイントコンタクト効果と共に裏面反射効果を期待することができ、薄膜太陽電池の光電変換効率をさらに向上させることができる。
【0031】
[形態2]
形態2のナノ粒子6は、金属(例えば、Au、Ag、Cu)のナノ粒子を、アルミナ、シリカ、SLG、シリコンナイトライド等で被覆し、粒子表面を絶縁体としたものであり、ポイントコンタクト効果を生じるために、粒子径を10nm〜500nm程度とする。このようなナノ粒子は、その粒子径を100nm以下(入射光の波長に対して充分に小さい大きさ)とすることによって、ナノ粒子分散層5において、可視領域での表面プラズモン共鳴の発生を期待できる。ナノ粒子分散層5で表面プラズモン共鳴が発生すると、局所的に大きな電界が発生して光の強度を増加させ、大きな光電流を発生する。その結果、光の吸収効率が増大し、太陽電池の光電変換効率が向上する(特許文献2の段落[0017]参照)。従って、粒径が100nm以下の形態2のナノ粒子でナノ粒子分散層5を形成することによって、ポイントコンタクト効果と共に表面プラズモン効果によって、薄膜太陽電池の光電変換効率を更に向上させることができる。金属粒子をシリカ等の絶縁物で被覆した形態2のナノ粒子およびその表面プラズモン共鳴については、例えば、http://www.chem.tsukuba.ac.jp/teranisi/research/Opt.htmlを参照することができる。
【0032】
[形態3]
形態3のナノ粒子6は、中空の絶縁体(例えば、アルミナ、シリカ、SLG、シリコンナイトライド等)からなるナノ粒子である。粒径が10nm〜500nmのこのようなナノ粒子を用いてナノ粒子分散層5を形成することによって、金属電極層側でポイントコンタクト効果を得ることができる。また、CIS系薄膜太陽電池、CZTS系薄膜太陽電池において、粒径が100nm以上の形態3のナノ粒子でナノ粒子分散層5を形成することによって、ポイントコンタクト効果と共に裏面反射効果を得ることができ、薄膜太陽電池の光電変換効率を更に向上させることができる。形態3のナノ粒子については、例えば、http://www.nittetsukou.co.jp/rdd/tech/tech_silinax.htmlに記載されている。
【0033】
[製造方法]
図2および図3を参照して、図1に示すサブストレート構造のCIS系薄膜太陽電池の製造方法を説明する。
【0034】
図2(a)に示すように、先ず、ガラス、プラスティック、金属板等の基板1上に、Mo等の金属裏面電極層2をDCスパッタ等によって形成する。金属裏面電極層2の膜厚は200〜500nmである。金属裏面電極層2の表面上にナノ粒子を含有した溶液(例えば、純水)を塗布し、乾燥させることによって、図2(b)に示すようにナノ粒子分散層5を形成する。ナノ粒子分散層5中の各ナノ粒子6、6・・・による金属裏面電極層2表面のカバー率は、20%〜95%である。溶液中に含有させるナノ粒子の濃度制御により、所望のカバー率を達成することができる。
【0035】
次に、図2(c)に示すように、CIS系p型光吸収層3を形成するために、先ず、CuGa層3aをスパッタにより堆積し、その後、In層3bをスパッタによって同様に堆積して、金属プリカーサー膜30を形成する。CuGa層3aは、スパッタ源にCuGaを用いて形成しても良い。更に、金属プリカーサー膜30は、Gaを使用せずCuとInとで形成しても良く、或いは、Cu−Ga−Inをスパッタ源として形成しても良い。
【0036】
以上のようにして形成された金属プリカーサー膜30に対して、次に、セレン化/硫化を行う。先ず、金属プリカーサー膜30が形成された基板を反応炉内に収容してN2ガス等で希釈されたH2Seガスを導入し、その後、基板を400℃程度まで昇温することによりCuGa、InとSeとの反応を促す。金属プリカーサー膜30の硫化を行う場合は、セレン化の後、H2Seガスを希釈H2Sガスに変えてセレン化物の硫化を促す。この結果、図3(a)に示すように、Cu(In、Ga)Se2、Cu(In、Ga)(Se、S)2等のp型光吸収層3がナノ粒子分散層5と金属裏面電極層2上に形成される。CIS系p型光吸収層3の層厚は、一般に、1.0〜1.5μmである。
【0037】
なお、形成後のCIS系薄膜太陽電池において高い光電変換効率を得るためには、CIS系p型光吸収層3がNa等のアルカリ金属を含んでいる必要がある。従って、金属プリカーサー膜の形成時にスパッタ材料中にNaを混入させておくか、或いは、金属プリカーサー膜の形成後にこの膜中にNaを添加する必要がある。或いは、基板1をSLG(ソーダライムガラス)で形成することにより、基板1からp型光吸収層3中にNaを供給するようにしても良い。更に、ナノ粒子6をSLGで形成する場合は、ナノ粒子6がp型光吸収層3へのNaの供給源ともなる。
【0038】
次に、図3(b)に示すように、CIS系p型光吸収層3上に、ZnO、ITO等を材料とするn型透明導電膜4をスパッタ等により形成し、窓層とする。なお、CIS系p型光吸収層3とn型透明導電膜4間に、Zn(O、S、OH)、CdS、In23等を材料とする高抵抗バッファ層を設けても良い。n型透明導電膜4の膜厚は、一般に、0.5〜2.5μmである。
【0039】
なお、図2および図3を参照して説明した薄膜太陽電池は、p型光吸収層3をCIS系半導体で構成しているが、これをCZTS系半導体で構成しても良い。CZTSは、Cu,Zn,Sn,Sを含む、I2−II−IV−VI4族化合物半導体であり、代表的なものとして、Cu2ZnSnS4等がある。さらに、CdTe等のII−VI族化合物半導体で光吸収層を構成することも可能である。
【0040】
上記実施形態1に示したサブストレート構造(基板上に、金属裏面電極層、光吸収層、透明導電膜を順に積層した構造)の薄膜太陽電池では、金属裏面電極上にナノ粒子の分散層を形成し、その上にp型光吸収層、透明導電膜を順に製膜するため、p型光吸収層は表面に凹凸があるナノ粒子分散層を下地として形成されることになる。そのため、製膜後のp型光吸収層の表面には、下地であるナノ粒子分散層表面の影響を受けて、同様に凹凸が形成される。この凹凸によって、受光面側から入射し透明導電膜を透過した光がp型光吸収層表面で反射され再び外部に放射される割合が低減され、より多くの光がp型光吸収層内に達するようになる。その結果として、薄膜太陽電池の発電効率がより向上する。
【0041】
[実施形態2]
図4は、本発明の実施形態2に係る、スーパーストレート構造の薄膜太陽電池の概略構造を示す断面図であり、特に、アモルファスシリコンで構成した薄膜太陽電池の構造を示している。図4において、10はガラス等の透明基板、11はITO等の透明導電膜、12はp型アモルファスシリコン層、13はi型アモルファスシリコン層、14はn型アモルファスシリコン層を示す。透明導電膜11は基板上にスパッタ等によりITO膜を製膜して形成される。p型アモルファスシリコン層12、i型アモルファスシリコン層13およびn型アモルファスシリコン層14は光吸収層を構成し、p、i、n型のアモルファスシリコンをそれぞれ、プラズマCVD等により透明導電膜11上に製膜して形成される。
【0042】
15は、n型アモルファスシリコン層14上に形成されたナノ粒子分散層である。層15は、n型アモルファスシリコン層14上に、ナノ粒子16、16・・・を含んだ溶液(例えば、純水)を塗布し、乾燥させることによって形成される。界面カバー率は、20%〜95%が適切であり、溶液中の粒子濃度を調節することにより、カバー率の制御が可能である。ナノ粒子分散層15が形成されると、その上に、AgやAl等をスパッタして金属裏面電極層17を形成して、アモルファスシリコン薄膜太陽電池を完成する。
【0043】
図4のスーパーストレート構造の薄膜太陽電池では、入射光は基板10側から透明導電膜11を介して、p−i−n光吸収層中に入射する。
【0044】
本実施形態のナノ粒子16、16・・・は、実施形態1のナノ粒子6、6・・・と同様の形態1、形態2および形態3を取りうる。しかしながら、スーパーストレート構造では、Au、Al等の光反射性の金属で金属裏面電極層17を形成しているので、電極層17自体が裏面反射機能を有する。そのため、第1の実施形態のように、裏面反射機能を得るために、ナノ粒子16、16・・・の粒径を100nm以上とする必要は無い。
【0045】
実施形態2に係る薄膜太陽電池では、図4に示すように、p−i−n光吸収層と金属裏面電極層17の界面の金属裏面電極層17側に、ナノ粒子分散層15が形成されるため、p−i−n光吸収層と金属裏面電極層17との接触面積が大きく減少し、その結果として、第1の実施形態に係る薄膜太陽電池の場合と同様に、界面にポイントコンタクトが形成される。これによって、当該薄膜太陽電池の光電変換効率が大きく向上する。また、粒径が100nm以下の形態2のナノ粒子によってナノ粒子分散層15を形成することにより、界面に表面プラズモン共鳴が生じ、入射光の吸収率が増加して高い光電変換効率を得ることができる。
【0046】
なお、実施形態1および実施形態2の両者において、表面プラズモン共鳴が太陽電池の光電変換効率に及ぼす影響については、上記特許文献2の、特に段落(0017)に記載されている。
【0047】
また更に、実施形態1では、p型光吸収層3としてI−III−VI2族化合物からなる半導体層を使用しているが、本発明はこのような薄膜太陽電池に限定されるものではない。例えば、CdTe等のII−VI族化合物半導体による薄膜太陽電池等において、光吸収層と金属裏面電極層間に上記実施形態1と同様のナノ粒子分散層を形成することにより、金属裏面電極層側でポイントコンタクトを実現し開放電圧の向上を図ることができる。さらに、実施形態2では、光吸収層として、アモルファスシリコンのp−i−n構造を示しているが、アモルファスシリコンの代わりに微結晶シリコンであってもよく、CdTeやCdS等のII−VI族化合物半導体からなるp−n構造であっても良い。
【符号の説明】
【0048】
1 基板
2 金属裏面電極層
3 CIS系p型光吸収層
4 透明導電膜
5 ナノ粒子分散層
6 ナノ粒子
10 透明基板
11 透明導電膜
12 p型アモルファスシリコン層
13 i型アモルファスシリコン層
14 n型アモルファスシリコン層
15 ナノ粒子分散層
16 ナノ粒子
17 金属裏面電極層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明導電膜および金属裏面電極層間に薄膜の光吸収層を配置した薄膜太陽電池において、前記金属裏面電極層と前記光吸収層との界面に、少なくともその表面が絶縁体であるナノ粒子を含むナノ粒子分散層を設けたことを特徴とする、薄膜太陽電池。
【請求項2】
請求項1に記載の薄膜太陽電池において、前記ナノ粒子は、全体が前記絶縁体で形成されている粒子、内部が中空の粒子、または金属粒子の表面を前記絶縁体で被覆した粒子の何れかである、薄膜太陽電池。
【請求項3】
請求項2に記載の薄膜太陽電池において、前記絶縁体は、シリカ、アルミナ、シリコンナイトライドまたはソーダライムガラスの何れかである、薄膜太陽電池。
【請求項4】
請求項2または3に記載の薄膜太陽電池において、前記絶縁体の屈折率が前記光吸収層の屈折率よりも小さい場合、前記ナノ粒子の粒径は100nm以上500nm以下である、薄膜太陽電池。
【請求項5】
請求項2に記載の薄膜太陽電池において、前記ナノ粒子が金属粒子の表面を前記絶縁体で被覆した粒子である場合、前記ナノ粒子の粒径は100nm以下である、薄膜太陽電池。
【請求項6】
請求項5に記載の薄膜太陽電池において、前記金属粒子はAu、AgまたはCuである、薄膜太陽電池。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れか1項に記載の薄膜太陽電池において、前記ナノ粒子分散層は、前記金属裏面電極層と前記光吸収層間の界面の前記光吸収層側に形成される、薄膜太陽電池。
【請求項8】
請求項1乃至6の何れか1項に記載の薄膜太陽電池において、前記ナノ粒子分散層は、前記金属裏面電極層と前記光吸収層間の界面の前記金属裏面電極層側に形成される、薄膜太陽電池。
【請求項9】
基板上に金属裏面電極層を形成し、
少なくとも表面が絶縁体であるナノ粒子を含む溶液を、前記金属裏面電極層表面に塗布し乾燥させることによって、前記金属裏面電極層上にナノ粒子分散層を形成し、
前記ナノ粒子分散層を含む前記金属裏面電極層上に薄膜のp型光吸収層を形成し、
前記光吸収層上にn型透明導電膜を形成する、各ステップを備える、薄膜太陽電池の製造方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法において、前記金属裏面電極層はMoで構成され、前記p型光吸収層は化合物半導体で構成される、薄膜太陽電池の製造方法。
【請求項11】
透明基板上に透明導電膜を形成し、
前記透明導電膜上に少なくともpn接合を含む薄膜の光吸収層を形成し、
少なくとも表面が絶縁体であるナノ粒子を含む溶液を、前記光吸収層表面に塗布し乾燥させることによって、前記光吸収層上にナノ粒子分散層を形成し、
前記ナノ粒子分散層を含む前記光吸収層上に金属裏面電極層を形成する、各ステップを備える、薄膜太陽電池の製造方法。
【請求項12】
請求項9乃至11の何れか1項に記載の方法において、前記ナノ粒子は、全体が前記絶縁体で形成されている粒子、内部が中空の粒子、または金属粒子の表面を前記絶縁体で被覆した粒子の何れかである、薄膜太陽電池の製造方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法において、前記ナノ粒子が金属粒子の表面を前記絶縁体で被覆した粒子である場合、前記ナノ粒子の粒径は100nm以下である、薄膜太陽電池の製造方法。
【請求項14】
請求項9乃至13の何れか1項に記載の方法において、前記絶縁体は、シリカ、アルミナまたはソーダライムガラスの何れかである、薄膜太陽電池の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−55178(P2013−55178A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−191451(P2011−191451)
【出願日】平成23年9月2日(2011.9.2)
【特許番号】特許第5116869号(P5116869)
【特許公報発行日】平成25年1月9日(2013.1.9)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成23年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「太陽エネルギー技術研究開発 太陽光発電システム次世代高性能技術の開発 CIS系薄膜太陽電池の高効率化技術の研究開発」共同研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000186913)昭和シェル石油株式会社 (322)
【Fターム(参考)】