説明

薄膜太陽電池基板

【課題】本発明は、高い耐熱性を有し、光閉じ込め効果の高い薄膜太陽電池基板を得ることを目的とする。
【解決手段】基材層上に電極層が形成された薄膜太陽電池基板であって、該電極層の厚みが100nm以上500nm以下であり、該電極層の表面の凹凸の平均面粗さRaが20nm以上200nm以下であることを特徴とする薄膜太陽電池基板

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は薄膜太陽電池の基板材料として有用な凹凸基板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化防止などの環境対策や、化石燃料代替などのエネルギー対策として、太陽電池が注目されている。
【0003】
太陽電池には、単結晶シリコン系太陽電池、多結晶シリコン系太陽電池、薄膜シリコン系太陽電池、化合物半導体系太陽電池、色素増感太陽電池などがある。さらに、前記薄膜シリコン系太陽電池には、アモルファスシリコン太陽電池からなる単接合型太陽電池、アモルファスシリコン太陽電池と微結晶シリコン太陽電池を積層した2接合型太陽電池、さらに3つの太陽電池を積層した3接合型太陽電池などがある。
【0004】
上記の薄膜シリコン系太陽電池では、変換効率(光電変換効率)を向上させることが共通の課題となっている。この課題を解決するために、平坦基板上に凹凸を有した樹脂からなる透光層を形成したのち、透明電極層、非晶質半導体層、および裏面電極層を順次積層して、入射光をこの凹凸によって散乱させることにより、光電変換層を通過する光路長を長くして吸収光量を増加させる光閉じ込め効果を持たせた薄膜太陽電池が知られている。しかしながら、凹凸を有した樹脂からなる透光層は熱劣化により透光性が悪化して変換効率の高い太陽電池を実現することが困難であった。(特許文献1、2)
一方、透光層に耐熱性を持たせる方法として、平坦基板上の無機マトリックス材料に無機粒子を分散させて凹凸層を形成したのち、透明電極層、非晶質半導体層、および裏面電極層を順次積層した薄膜太陽電池が知られているが、透明導電層表面が平坦性を有することにより、透光層と透明電極層の界面での光散乱が小さく変換効率の高い太陽電池を実現することが困難であった。(特許文献3)
また、凹凸を有した透光層に耐熱性を持たせる別の手段として、基板上に金属酸化物からなる不連続な凹凸を形成した上に、透明電極層を形成する太陽電池基板が知られているが、凹凸の頂部と谷部に角があるため、光電変換層が薄くなる部位が生じやすく太陽電池が短絡する場合があり変換効率の高い太陽電池を実現することが困難であった。(特許文献4)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−191632号公報
【特許文献2】特開2009−260270号公報
【特許文献3】特開2009−212507号公報
【特許文献4】特開2009−140930号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、高い耐熱性を有し、光閉じ込め効果の高い薄膜太陽電池基板を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した目的を達成する本発明の薄膜太陽電池基板は、基材層上に電極層が形成された薄膜太陽電池基板であって、該電極層の厚みが100nm以上500nm以下であり、該電極層の表面の凹凸の平均面粗さRaが20nm以上200nm以下であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、薄膜太陽電池基板の電極層の表面に光閉じ込め効果の高い凹凸を形成することで、発電層で吸収される光量を増やすことができ、変換効率の高い薄膜太陽電池を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の薄膜太陽電池基板を用いた薄膜太陽電池の断面模式図である。
【図2】本発明の薄膜太陽電池基板の一例を示す断面模式図である。
【図3】本発明の薄膜太陽電池基板の一例を示す斜視模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面等を参照しながら、本発明の薄膜太陽電池基板についてさらに詳しく説明する。
[基材層/電極層からなる薄膜太陽電池基板]
本発明の薄膜太陽電池基板は、例えば、図1に示すような基材層6/電極層3により薄膜太陽電池基板7が構成される。
本発明における基材層6の、電極層3が形成される側の表面形状は、多数のドーム状突起が存在したものであることが好ましい。基材層6のドーム状突起形成方法は特に限定されないが、ウェットエッチング、ドライエッチング、熱式インプリント等の手段を用いることができる。基材層6の材質、表面処理、及びドーム状突起の詳細な説明は後述する。
【0011】
本発明の電極層3の表面には凹凸が形成されている。電極層3の表面の凹凸は本発明で規定されるものであれば、凹凸形成方法は特に限定されない。電極層3の詳細な説明は後述する。
【0012】
[平坦基板層/テクスチャ層/電極層からなる薄膜太陽電池基板]
薄膜太陽電池基板は、例えば図2及び図3に示すように、基材層6が平坦基板層1とテクスチャ層2の積層により構成されても良い。この場合は、平坦基板層1/テクスチャ層2/電極層3により薄膜太陽電池基板7が構成される。図2の薄膜太陽電池基板はテクスチャ層2がマトリックス材料10と球形粒子11からなる形態であり、図3の薄膜太陽電池基板はテクスチャ層2にレンズアレイ12が賦形された形態である。レンズアレイとは、多数のレンズが2次元状に配列したものである。以下では、図2に示すような薄膜太陽電池基板7について説明する。
【0013】
[平坦基板層]
薄膜太陽電池基板を構成する平坦基板層1は、特に限定はなく、ケイ酸塩系ガラス、ホウ酸系ガラス、リン酸系ガラス等の酸化物ガラス等を使用できる。これらの中で、平坦基板層1に含まれるアルカリ成分溶出による半導体の劣化を防止できるという理由から、アルカリ成分を含まない、いわゆる白板ガラスを使用することが好ましい。一方、アルカリ成分を含むいわゆる青板ガラスを使用する際には、平坦基板層1の表面にシリカなどからなるアルカリバリア層が形成されたものを用いることができる。また、平坦基板層1の密着性を向上させるために、平坦基板層1の表面を処理することもできる。平坦基板層1の表面処理としては、例えばシランカップリング剤コーティング、UV処理、オゾン処理、プラズマ処理、酸・アルカリ処理等が挙げられるが特に限定はない。
【0014】
[テクスチャ層]
上記テクスチャ層2は、平坦基板層1の表面に積層されて凹凸を形成するのに好ましい。本願においてテクスチャとは、屈折率差のある界面での光反射による損失を減らして太陽電池の光吸収を増加させる機能や、屈折率差のある界面での光散乱により光路長を長くして太陽電池の光吸収を増加させる機能を得るための形状である。テクスチャ層2は少なくともマトリックス材料10と球形粒子11からなるものが好ましく例示される。球形粒子11の球形とは、真球度で表すことができ、その真球度が0.8以上のものが好ましく、0.9以上のものがより好ましい。真球度の上限は1である。真球度が0.8未満であると、テクスチャ層2の表面に角や突起が形成されやすく太陽電池が短絡する場合がある。ここでいう真球度とは、走査型電子顕微鏡にて、粒子を観察して短径を長径で除算した比を算出したときの、粒子30個の平均値である。球形粒子11は、テクスチャ層2の表面が凹凸となるように一部はマトリックス材料10から露出していることが好ましい。このような構成にすることによって、テクスチャ層2の表面に多数の凹凸を設けることができる。
【0015】
テクスチャ層2の材料には、電極層3や図1に示すような光電変換層4および裏面電極層5を形成するプロセスへの適性として耐熱性と低脱ガス性が求められ、また太陽電池の適性として耐紫外線性と長期耐熱性が求められる。これらの観点から、テクスチャ層2のマトリックス材料10としては、ポリシロキサンを質量比80%以上の成分とすること、テクスチャ層2の球形粒子11としては、シリカ粒子を質量比80%以上の成分とすることが好ましい。ポリシロキサンとは、下記一般式(1)で表されるオルガノシランの1種類以上を加水分解・重縮合反応させることによって合成される、シロキサン骨格をもつものである。
【0016】
(R1)−Si−(OR2)4−n (1)
式中、R1は水素、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数6〜15のアリール基のいずれかを表し、複数のR1はそれぞれ同じでも異なっていてもよい。R2は水素、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数2〜6のアシル基、炭素数6〜15のアリール基のいずれかを表し、複数のR2はそれぞれ同じでも異なっていてもよい。nは0から3の整数を表す。
【0017】
一般式(1)で表されるオルガノシランにおいて、R1のアルキル基、アルケニル基、アリール基はいずれも無置換体、置換体のどちらでもよく、組成物の特性に応じて選択できる。アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプルピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、n−デシル基、トリフルオロメチル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、3−グリシドキシプロピル基、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基、[(3−エチル3−オキセタニル)メトキシ]プロピル基、3−アミノプロピル基、3−メルカプトプロピル基、3−イソシアネートプロピル基が挙げられる。アルケニル基の具体例としては、ビニル基、3−アクリロキシプロピル基、3−メタクリロキシプロピル基が挙げられる。アリール基の具体例としては、フェニル基、トリル基、p−ヒドロキシフェニル基、1−(p−ヒドロキシフェニル)エチル基、2−(p−ヒドロキシフェニル)エチル基、4−ヒドロキシ−5−(p−ヒドロキシフェニルカルボニルオキシ)ペンチル基、ナフチル基が挙げられる。
【0018】
一般式(1)で表されるオルガノシランにおいてR2のアルキル基、アシル基、アリール基はいずれも無置換体、置換体のどちらでもよく、組成物の特性に応じて選択できる。アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基が挙げられる。アシル基の具体例としては、アセチル基が挙げられる。アリール基の具体例としてはフェニル基が挙げられる。
【0019】
一般式(1)の、n=0の場合は4官能性シラン、n=1の場合は3官能性シラン、n=2の場合は2官能性シラン、n=3の場合は1官能性シランである。
【0020】
一般式(1)で表されるオルガノシランの具体例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラアセトキシシラン、テトラフェノキシシランなどの4官能性シラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、メチルトリn−ブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリn−ブトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、n−ブチルトリエトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、トリフルオロメチルトリメトキシシラン、トリフルオロメチルトリエトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシランなどの3官能性シラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジアセトキシシラン、ジn−ブチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシランなどの2官能性シラン、トリメチルメトキシシラン、トリn−ブチルエトキシシランなどの1官能性シランが挙げられる。
【0021】
これらのオルガノシランは単独で使用しても、2種類以上を組み合わせて使用してもよいが、テクスチャ層のクラック防止の観点から3官能性シランと2官能性シランを組み合わせることが好ましい。
【0022】
テクスチャ層2の表面の凹凸を構成する球形粒子11の材料は、例えば、ガラス粒子、シリカ粒子、硫酸バリウム粒子、酸化チタン粒子、硫酸マグネシウム粒子、炭酸マグネシウム粒子、炭酸カルシウム粒子等の無機粒子、またはアクリル系樹脂粒子、有機シリコーン系樹脂粒子、ポリスチレン系樹脂粒子、ポリオレフィン系樹脂粒子、ポリエステル系樹脂粒子、尿素樹脂粒子、ホルムアルデヒド縮合物粒子、フッ素樹脂粒子等の有機粒子などが挙げられるが、低光吸収性およびマトリックス材料10に分散したときの高光透過性の観点からシリカ粒子が好ましい。
【0023】
テクスチャ層2の表面の凹凸を構成する球形粒子11の数平均粒径は、150nm〜500nmが好ましく、200nm〜400nmがより好ましい。数平均粒径が150nm未満であると光散乱が弱く太陽電池の効率が低くなる場合があり、500nm超であると凹凸が大きくなり太陽電池の短絡が増加する場合がある。
【0024】
テクスチャ層2の表面の凹凸を構成する球形粒子11の含有量は、10〜60質量%が好ましく、20〜50質量%がより好ましい。10質量%未満であると、テクスチャ層2の表面に球形粒子11が露出できずに平滑になり、凹凸を形成できない場合がある。60質量%を超えると、マトリックス材料10が不足することでテクスチャ層2の強度が低下し、擦過などにより球形粒子11が脱落する場合がある。
【0025】
平坦基板層1の表面にテクスチャ層2を形成するのに使用するマトリックス材料10、球形粒子11、溶媒からなる溶液を塗工する方法としては、例えばグラビアコート、ロールコート、スピンコート、スリットコート、リバースコート、バーコート、スクリーンコート、ブレードコート、エアーナイフコート、ディップコートなど特に限定はない。塗工後、マトリックス材料10の重合を進行させてガラス化するために高温熱処理することもできる。高温熱処理する際は、平坦基板層1の表面にテクスチャ層2を形成してから熱処理を行なう。熱処理温度は150℃以上1000℃以下が好ましく、200℃以上800℃以下がより好ましく、250℃以上400℃以下がさらに好ましい。150℃未満で処理した場合、十分に縮合が進行せず、十分に固化できずに耐熱性や密着性が悪くなる場合がある。一方、1000℃より高い温度で熱処理した場合、収縮によるクラックや層剥れが起こる場合がある。また、高温熱処理の前に、処理温度よりも低い温度でプレベークしても良い。
【0026】
また、テクスチャ層2を形成するのに使用する塗液は必要に応じてシランカップリング剤、界面活性剤、架橋剤、反応促進剤等の添加剤を含むことができる。シランカップリング剤を含有する場合、平坦基板層1とテクスチャ層2の密着性が向上する。
【0027】
テクスチャ層2の体積平均厚みは0.15μm〜5μmであることが好ましく、0.2μm〜3μmであることがより好ましい。0.15μmより薄い場合、シロキサンゾルの塗工においてマトリックス材料10が球形粒子11に対して不足して、球形粒子11が脱落する場合がある。一方5μmより厚い場合、収縮によるクラックや層剥れが起こる場合がある。
テクスチャ層2の表面の凹凸の平均面粗さRaは、20nm以上200nm以下が好ましい。20nm未満の場合、光散乱が弱く太陽電池の光吸収が減少する場合がある。200nmを越えると凹凸の突起が大きく太陽電池の短絡が増加する場合がある。
テクスチャ層2には、テクスチャ層2の表面の凹凸を構成する球形粒子11とは異なる、直径が100nm未満の粒子を含むことができる。直径が100nm未満の粒子を含有する場合、太陽電池の感度である波長300nm以上の光に対する透過率及び散乱には影響を及ぼさずに、テクスチャ層2の高温熱処理時の耐クラック性が良好になり、またテクスチャ層2の屈折率の調整も可能であり、テクスチャ層2の物性の改質に好適に使用することができる。
【0028】
[電極層]
電極層3の製法はスパッタリング法もしくはCVD法が好ましく、スパッタリング法がより好ましい。スパッタリング法は、電極層3の凹凸の平均面粗さRaが製膜の過程で小さくなりやすく、光散乱が弱くなり太陽電池の効率を損なう場合がある。CVD法は、電極層3の凹凸の平均面粗さRaが製膜の過程で大きくなりやすく、凹凸の突起が大きくなり太陽電池が短絡する場合がある。
薄膜太陽電池基板を構成する電極層3の厚みは100nm以上500nm以下である。より好ましくは150nm以上450nm以下である。100nmより薄いとテクスチャ層2上の電極層3のカバレッジが悪くなり、部分的に薄いところでは電気抵抗の増加、部分的にテクスチャ層2が露出したところでは短絡が生じて太陽電池の効率を損なう。500nmより厚いと、スパッタリング法では電極層3の凹凸の平均面粗さRaが小さくなり、CVD法では電極層3の凹凸の平均面粗さRaが大きくなることで太陽電池の効率を損なう。
【0029】
電極層3の凹凸の平均面粗さRaは、20nm以上200nm以下である。20nm未満の場合、光散乱が弱く太陽電池の光吸収が減少する。200nmを越えると凹凸の突起が大きく太陽電池の短絡が増加する。
【0030】
電極層3の材料は、酸化亜鉛系の導電性金属酸化物を挙げることができる。また、導電性金属酸化物に不純物をドープしてもよい。例えば、酸化亜鉛にインジウム、アルミニウム、ガリウムをドープしたりすることもできる。特に、例えば図1に示すような光電変換層4の作製工程において、導電性金属酸化物が水素プラズマに曝されて還元され透明性を損なわない観点で、酸化亜鉛にインジウム、アルミニウム、ガリウムをドープした還元雰囲気に強い酸化亜鉛系材料からなる、インジウム亜鉛酸化物(IZO)、アルミニウム亜鉛酸化物(AZO)、ガリウム亜鉛酸化物(GZO)が特に好ましい。
【0031】
[ドーム状突起]
薄膜太陽電池基板を構成する基材層6の表面には、例えば図3に示すような多数のドーム状突起が存在していることが好ましい。
【0032】
基材層6のドーム状突起の数平均直径は50nm以上700nm以下が好ましい。50nm未満の場合、光散乱が弱く太陽電池の光吸収が減少する場合がある。700nmを越えるとドーム状突起が大きく太陽電池の短絡が増加する場合がある。基材層6のドーム状突起の数平均直径は、球形粒子11のサイズを調整したり、マトリックス材料10から球形粒子11が突出する量をコーティングで調整する手段が好ましく例示されるが、特に限定されない。
【0033】
[薄膜太陽電池基板の光吸収率]
薄膜太陽電池基板7は、基材層6の電極層3とは反対側の表面から垂直に光入射したときの350nm波長の光吸収率は40%以下が好ましい。40%を超えると薄膜太陽電池基板7の光吸収が多くなり太陽電池の効率を損なう場合がある。
[薄膜太陽電池基板を用いることができる薄膜太陽電池]
例えば図1に示すような薄膜太陽電池基板において、好適に用いることができる太陽電池の光電変換層4を構成する材料は、薄膜シリコン系太陽電池、化合物半導体系太陽電池が挙げられる。また、太陽電池の光電変換層の積層数は特に限定されず、複数の異なるバンドギャップを持つ光電変換層4を積み重ねた多接合構造でも構わない。
【実施例】
【0034】
本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明は実施例のみに限定されるものではない。
【0035】
(1)電極層の厚み
薄膜太陽電池基板の断面を日立ハイテクノロジーズ社製SEM型番S−3400Nで撮像し、基材層の厚みと直交する方向に11等分した場合に境界となる10点について、テクスチャ層の表面から、電極層の表面までを、基板層と直交する方向で実測して、10点の平均厚みを電極層の厚みとした。撮像の倍率は、電極層の厚みが0.1μm未満の場合は50000倍、0.1μm以上の場合は20000倍とする。
【0036】
(2)電極層、テクスチャ層の平均面粗さRa
薄膜太陽電池を作製する工程中で、平坦基板層にテクスチャ層を形成した際にテクスチャ層の表面を、次いでテクスチャ層に電極層を形成した際に電極層の表面を、原子間力顕微鏡(AFM)を使用して下記条件で凹凸を測定して解析した。解析は□10μmの平均面粗さRaを測定したが、異物等により凹凸より明らかに大きな突起物が□10μmに存在する場合は、視野を再選択してから測定した。
システム:デジタルインスツルメンツ社製NanoScopeIIIa/MMAFM
スキャナ:AS−130(J−Scanner)
プローブ:NCH−W型 単結晶シリコン(ナノワールド社製)
走査モード:タッピングモード
走査範囲:□10μm
走査速度:0.3Hz
(3)基材層のドーム状突起の数平均直径
薄膜太陽電池を作製する工程中で、平坦基板層にテクスチャ層を形成して基材層を作製した際に、基材層のドーム状突起の表面を、原子間力顕微鏡(AFM)を使用して下記条件で測定して解析した。解析は、基材層と水平方向をXY、また基材層と垂直方向をZとして、3次元プロファイル形状を確認したときに、1個のドーム状突起の周囲のZ極小部で作られる外縁に注目して、この外縁のXY平面に平行な長さが最大になる長軸について、XY平面内での最大長さをドーム状突起の直径として計測し、ドーム状突起50個以上の直径の平均値を数平均直径とした。また、異物等によりドーム状突起より明らかに大きな突起物が□10μmに存在する場合は、視野を再選択してから測定した。
システム:デジタルインスツルメンツ社製NanoScopeIIIa/MMAFM
スキャナ:AS−130(J−Scanner)
プローブ:NCH−W型 単結晶シリコン(ナノワールド社製)
走査モード:タッピングモード
走査範囲:□10μm
走査速度:0.3Hz
(4)テクスチャ層中の球形粒子の数平均粒径
薄膜太陽電池基板の断面をTOPCON社製miniSEM型番ABT−32で観察して、倍率5000〜40000倍の範囲で球形粒子が観察できる倍率を選択して、球形粒子を観察した。観察箇所を変えて粒子の最大径が0.1μm以上の粒子個数50個以上について粒径を測長し、その平均値を数平均粒径とした。
【0037】
(5)薄膜太陽電池基板の光吸収率
島津製作所製の紫外可視赤外分光光度計、型番UV−3150を使用して、薄膜太陽電池基板を基材層側から垂直に光入射するように配置して、350nmの全光透過率と相対反射率を測定して下式により光吸収率を算出することで、350nm波長の光吸収率を求めた。
光吸収率(350nm)=100−全光透過率(350nm)−相対反射率(350nm)
(6)太陽電池特性の評価
25℃の雰囲気中で、ソーラーシミュレータによってAM1.5、100mW/cmの擬似太陽光を作り出し、これを作製した太陽電池モジュールサンプルに照射し、太陽電池モジュールサンプルに掃引電圧を印加しながら電流値を測定することによってIV特性曲線を得て、開放電圧、曲線因子、短絡電流、および変換効率を計算した。
実施例および比較例では、電圧0Vのときの電流値、すなわち短絡電流値を評価値とした。ここで短絡電流とは、抵抗値がゼロの時の電流値、すなわち太陽電池セル内での電荷の発生量である。そのため、この短絡電流値が大きくなれば、薄膜太陽電池基板によって光電変換層での光吸収量が増加したことになり、効果的な光閉じ込めが得られたと言える。
テクスチャ層による短絡電流値の増減について以下のように評価した。
○:平坦基板層/電極層からなるテクスチャ層を設けていない太陽電池基板による薄膜太陽電池に対して、短絡電流の増加が15%以上。
△:平坦基板層/電極層からなるテクスチャ層を設けていない太陽電池基板による薄膜太陽電池に対して、短絡電流の増加が0%以上15%未満。
×:平坦基板層/電極層からなるテクスチャ層を設けていない太陽電池基板による薄膜太陽電池に対して、短絡電流の増加が0%未満。
【0038】
〔実施例1〕
メチルトリメトキシシランを加水分解・重縮合して得られるメチルシロキサンと、フェニルトリメトキシシランを加水分解・重縮合して得られるフェニルシロキサンと、ジメチルジメトキシシランを加水分解・重縮合して得られるジメチルシロキサンと、数平均粒径20nmのシリカ粒子を、質量比17.5:50:5:27.5で混合してマトリックス材料を得た。次に、数平均粒径300nmのシリカ球形粒子と、マトリックス材料を、質量比4:6で混合して、ジアセトンアルコールで固形分12質量%に希釈してコーティング溶液を得た。次に、1辺30mm四方で厚さ1.1mmの低アルカリケイ酸塩ガラス基板(コーニング1737)の表面に、コーティング溶液をスピンコート法により1500rpmで塗布し、120℃で5分間プレベークした後、270℃で1時間キュアすることによって平坦基板層/テクスチャ層を得た。次に、スパッタ装置を用いて、テクスチャ層の上にガリウム亜鉛酸化物(GZO)を製膜して電極層を形成して薄膜太陽電池基板を得た。
次に、プラズマCVD装置を用いて、電極層の上に、膜厚15nmのp型アモルファスシリコン層、膜厚400nmのi型アモルファスシリコン層、膜厚30nmのn型アモルファスシリコン層をこの順序で成膜し、p−i−n型の光電変換層を形成した。次に、スパッタ装置を用いて膜厚100nmのインジウム錫酸化物(ITO)を成膜して、次いで真空蒸着装置により膜厚200nmの銀を成膜して、透明電極と金属電極とからなる裏面電極層を形成して、「スーパーストレートタイプ」の太陽電池サンプルを作製した。結果を表1に示す。
【0039】
〔実施例2〕
メチルトリメトキシシランを加水分解・重縮合して得られるメチルシロキサンと、フェニルトリメトキシシランを加水分解・重縮合して得られるフェニルシロキサンと、ジメチルジメトキシシランを加水分解・重縮合して得られるジメチルシロキサンと、数平均粒径20nmのシリカ粒子を、質量比17.5:50:5:27.5で混合してマトリックス材料を得た。次に、数平均粒径300nmのシリカ球形粒子と、マトリックス材料を、質量比4:6で混合して、ジアセトンアルコールで固形分9質量%に希釈してコーティング溶液を得た。次に、1辺30mm四方で厚さ1.1mmの低アルカリケイ酸塩ガラス基板(コーニング1737)の表面に、コーティング溶液をスピンコート法により1500rpmで塗布し、120℃で5分間プレベークした後、270℃で1時間キュアすることによって平坦基板層/テクスチャ層を得た。次に、スパッタ装置を用いて、テクスチャ層の上にガリウム亜鉛酸化物(GZO)を製膜して電極層を形成して薄膜太陽電池基板を得た。
次に、プラズマCVD装置を用いて、電極層の上に、膜厚15nmのp型アモルファスシリコン層、膜厚400nmのi型アモルファスシリコン層、膜厚30nmのn型アモルファスシリコン層をこの順序で成膜し、p−i−n型の光電変換層を形成した。次に、スパッタ装置を用いて膜厚100nmのインジウム錫酸化物(ITO)を成膜して、次いで真空蒸着装置により膜厚200nmの銀を成膜して、透明電極と金属電極とからなる裏面電極層を形成して、「スーパーストレートタイプ」の太陽電池サンプルを作製した。結果を表1に示す。
【0040】
〔実施例3〕
メチルトリメトキシシランを加水分解・重縮合して得られるメチルシロキサンと、フェニルトリメトキシシランを加水分解・重縮合して得られるフェニルシロキサンと、ジメチルジメトキシシランを加水分解・重縮合して得られるジメチルシロキサンと、数平均粒径20nmのシリカ粒子を、質量比17.5:50:5:27.5で混合してマトリックス材料を得た。次に、数平均粒径300nmのシリカ球形粒子と、マトリックス材料を、質量比45:55で混合して、ジアセトンアルコールで固形分10質量%に希釈してコーティング溶液を得た。次に、1辺30mm四方で厚さ1.1mmの低アルカリケイ酸塩ガラス基板(コーニング1737)の表面に、コーティング溶液をスピンコート法により1500rpmで塗布し、120℃で5分間プレベークした後、270℃で1時間キュアすることによって平坦基板層/テクスチャ層を得た。次に、スパッタ装置を用いて、テクスチャ層の上にガリウム亜鉛酸化物(GZO)を製膜して電極層を形成して薄膜太陽電池基板を得た。
次に、プラズマCVD装置を用いて、電極層の上に、膜厚15nmのp型アモルファスシリコン層、膜厚400nmのi型アモルファスシリコン層、膜厚30nmのn型アモルファスシリコン層をこの順序で成膜し、p−i−n型の光電変換層を形成した。次に、スパッタ装置を用いて膜厚100nmのインジウム錫酸化物(ITO)を成膜して、次いで真空蒸着装置により膜厚200nmの銀を成膜して、透明電極と金属電極とからなる裏面電極層を形成して、「スーパーストレートタイプ」の太陽電池サンプルを作製した。結果を表1に示す。
【0041】
〔実施例4〕
メチルトリメトキシシランを加水分解・重縮合して得られるメチルシロキサンと、フェニルトリメトキシシランを加水分解・重縮合して得られるフェニルシロキサンと、ジメチルジメトキシシランを加水分解・重縮合して得られるジメチルシロキサンと、数平均粒径20nmのシリカ粒子を、質量比17.5:50:5:27.5で混合してマトリックス材料を得た。次に、数平均粒径300nmのシリカ球形粒子と、マトリックス材料を、質量比4:6で混合して、ジアセトンアルコールで固形分9質量%に希釈してコーティング溶液を得た。次に、1辺30mm四方で厚さ1.1mmの低アルカリケイ酸塩ガラス基板(コーニング1737)の表面に、コーティング溶液をスピンコート法により1500rpmで塗布し、120℃で5分間プレベークした後、270℃で1時間キュアすることによって平坦基板層/テクスチャ層を得た。次に、CVD装置を用いて、テクスチャ層の上にアルミニウム亜鉛酸化物(AZO)を製膜して電極層を形成して薄膜太陽電池基板を得た。
次に、プラズマCVD装置を用いて、電極層の上に、膜厚15nmのp型アモルファスシリコン層、膜厚400nmのi型アモルファスシリコン層、膜厚30nmのn型アモルファスシリコン層をこの順序で成膜し、p−i−n型の光電変換層を形成した。次に、スパッタ装置を用いて膜厚100nmのインジウム錫酸化物(ITO)を成膜して、次いで真空蒸着装置により膜厚200nmの銀を成膜して、透明電極と金属電極とからなる裏面電極層を形成して、「スーパーストレートタイプ」の太陽電池サンプルを作製した。結果を表1に示す。
【0042】
〔実施例5〕
メチルトリメトキシシランを加水分解・重縮合して得られるメチルシロキサンと、フェニルトリメトキシシランを加水分解・重縮合して得られるフェニルシロキサンと、ジメチルジメトキシシランを加水分解・重縮合して得られるジメチルシロキサンと、数平均粒径20nmのシリカ粒子を、質量比17.5:50:5:27.5で混合してマトリックス材料を得た。次に、数平均粒径300nmのシリカ球形粒子と、マトリックス材料を、質量比4:6で混合して、ジアセトンアルコールで固形分9質量%に希釈してコーティング溶液を得た。次に、1辺30mm四方で厚さ1.1mmの低アルカリケイ酸塩ガラス基板(コーニング1737)の表面に、コーティング溶液をスピンコート法により1500rpmで塗布し、120℃で5分間プレベークした後、270℃で1時間キュアすることによって平坦基板層/テクスチャ層を得た。次に、スパッタ装置を用いて、テクスチャ層の上にガリウム亜鉛酸化物(GZO)を製膜して電極層を形成して薄膜太陽電池基板を得た。
【0043】
次に、プラズマCVD装置を用いて、電極層の上に、膜厚15nmのp型アモルファスシリコン層、膜厚400nmのi型アモルファスシリコン層、膜厚30nmのn型アモルファスシリコン層をこの順序で成膜し、p−i−n型の光電変換層を形成した。次に、スパッタ装置を用いて膜厚100nmのインジウム錫酸化物(ITO)を成膜して、次いで真空蒸着装置により膜厚200nmの銀を成膜して、透明電極と金属電極とからなる裏面電極層を形成して、「スーパーストレートタイプ」の太陽電池サンプルを作製した。結果を表1に示す。
【0044】
[実施例6]
メチルトリメトキシシランを加水分解・重縮合して得られるメチルシロキサンと、フェニルトリメトキシシランを加水分解・重縮合して得られるフェニルシロキサンと、ジメチルジメトキシシランを加水分解・重縮合して得られるジメチルシロキサンと、数平均粒径20nmのシリカ粒子を、質量比17.5:50:5:27.5で混合してマトリックス材料を得た。次に、数平均粒径300nmのシリカ球形粒子と、マトリックス材料を、質量比4:6で混合して、ジアセトンアルコールで固形分9質量%に希釈してコーティング溶液を得た。次に、1辺30mm四方で厚さ1.1mmの低アルカリケイ酸塩ガラス基板(コーニング1737)の表面に、コーティング溶液をスピンコート法により1500rpmで塗布し、120℃で5分間プレベークした後、270℃で1時間キュアすることによって平坦基板層/テクスチャ層を得た。次に、スパッタ装置を用いて、テクスチャ層の上にガリウム亜鉛酸化物(GZO)を製膜して電極層を形成して薄膜太陽電池基板を得た。
次に、プラズマCVD装置を用いて、電極層の上に、膜厚15nmのp型アモルファスシリコン層、膜厚400nmのi型アモルファスシリコン層、膜厚30nmのn型アモルファスシリコン層をこの順序で成膜し、p−i−n型の光電変換層を形成した。次に、スパッタ装置を用いて膜厚100nmのインジウム錫酸化物(ITO)を成膜して、次いで真空蒸着装置により膜厚200nmの銀を成膜して、透明電極と金属電極とからなる裏面電極層を形成して、「スーパーストレートタイプ」の太陽電池サンプルを作製した。結果を表1に示す。
【0045】
〔実施例7〕
メチルトリメトキシシランを加水分解・重縮合して得られるメチルシロキサンと、フェニルトリメトキシシランを加水分解・重縮合して得られるフェニルシロキサンと、ジメチルジメトキシシランを加水分解・重縮合して得られるジメチルシロキサンと、数平均粒径20nmのシリカ粒子を、質量比17.5:50:5:27.5で混合してマトリックス材料を得た。次に、数平均粒径300nmのシリカ球形粒子と、マトリックス材料を、質量比4:6で混合して、ジアセトンアルコールで固形分10質量%に希釈してコーティング溶液を得た。次に、1辺30mm四方で厚さ1.1mmの低アルカリケイ酸塩ガラス基板(コーニング1737)の表面に、コーティング溶液をスピンコート法により1500rpmで塗布し、120℃で5分間プレベークした後、270℃で1時間キュアすることによって平坦基板層/テクスチャ層を得た。次に、スパッタ装置を用いて、テクスチャ層の上にアルミニウム亜鉛酸化物(AZO)を製膜して電極層を形成して薄膜太陽電池基板を得た。
次に、プラズマCVD装置を用いて、電極層の上に、膜厚15nmのp型アモルファスシリコン層、膜厚400nmのi型アモルファスシリコン層、膜厚30nmのn型アモルファスシリコン層をこの順序で成膜し、p−i−n型の光電変換層を形成した。次に、スパッタ装置を用いて膜厚100nmのインジウム錫酸化物(ITO)を成膜して、次いで真空蒸着装置により膜厚200nmの銀を成膜して、透明電極と金属電極とからなる裏面電極層を形成して、「スーパーストレートタイプ」の太陽電池サンプルを作製した。結果を表1に示す。
【0046】
〔比較例1〕
一辺30mm四方で厚さ1.1mmの低アルカリケイ酸塩ガラス基板(コーニング製1737)に、テクスチャ層を作製しないで、スパッタ装置を用いて、基板の上にガリウム亜鉛酸化物(GZO)を製膜して電極層を形成することで、平坦基板層/平坦電極層からなる薄膜太陽電池基板を得た。
次に、プラズマCVD装置を用いて、電極層の上に、膜厚15nmのp型アモルファスシリコン層、膜厚400nmのi型アモルファスシリコン層、膜厚30nmのn型アモルファスシリコン層をこの順序で成膜し、p−i−n型の光電変換層を形成した。次に、スパッタ装置を用いて膜厚100nmのインジウム錫酸化物(ITO)を成膜して、次いで真空蒸着装置により膜厚200nmの銀を成膜して、透明電極と金属電極とからなる裏面電極層を形成して、「スーパーストレートタイプ」の太陽電池サンプルを作製した。結果を表1に示す。
【0047】
〔比較例2〕
メチルトリメトキシシランを加水分解・重縮合して得られるメチルシロキサンと、フェニルトリメトキシシランを加水分解・重縮合して得られるフェニルシロキサンと、ジメチルジメトキシシランを加水分解・重縮合して得られるジメチルシロキサンと、数平均粒径20nmのシリカ粒子を、質量比17.5:50:5:27.5で混合してマトリックス材料を得た。次に、数平均粒径300nmのシリカ球形粒子と、マトリックス材料を、質量比4:6で混合して、ジアセトンアルコールで固形分9質量%に希釈してコーティング溶液を得た。次に、1辺30mm四方で厚さ1.1mmの低アルカリケイ酸塩ガラス基板(コーニング1737)の表面に、コーティング溶液をスピンコート法により1500rpmで塗布し、120℃で5分間プレベークした後、270℃で1時間キュアすることによって平坦基板層/テクスチャ層を得た。次に、スパッタ装置を用いて、テクスチャ層の上にガリウム亜鉛酸化物(GZO)を製膜して電極層を形成して薄膜太陽電池基板を得た。
次に、プラズマCVD装置を用いて、電極層の上に、膜厚15nmのp型アモルファスシリコン層、膜厚400nmのi型アモルファスシリコン層、膜厚30nmのn型アモルファスシリコン層をこの順序で成膜し、p−i−n型の光電変換層を形成した。次に、スパッタ装置を用いて膜厚100nmのインジウム錫酸化物(ITO)を成膜して、次いで真空蒸着装置により膜厚200nmの銀を成膜して、透明電極と金属電極とからなる裏面電極層を形成して、「スーパーストレートタイプ」の太陽電池サンプルを作製した。結果を表1に示す。
【0048】
〔比較例3〕
メチルトリメトキシシランを加水分解・重縮合して得られるメチルシロキサンと、フェニルトリメトキシシランを加水分解・重縮合して得られるフェニルシロキサンと、ジメチルジメトキシシランを加水分解・重縮合して得られるジメチルシロキサンと、数平均粒径20nmのシリカ粒子を、質量比17.5:50:5:27.5で混合してマトリックス材料を得た。次に、数平均粒径300nmのシリカ球形粒子と、マトリックス材料を、質量比4:6で混合して、ジアセトンアルコールで固形分12質量%に希釈してコーティング溶液を得た。次に、1辺30mm四方で厚さ1.1mmの低アルカリケイ酸塩ガラス基板(コーニング1737)の表面に、コーティング溶液をスピンコート法により1500rpmで塗布し、120℃で5分間プレベークした後、270℃で1時間キュアすることによって平坦基板層/テクスチャ層を得た。次に、スパッタ装置を用いて、テクスチャ層の上にガリウム亜鉛酸化物(GZO)を製膜して電極層を形成して薄膜太陽電池基板を得た。
次に、プラズマCVD装置を用いて、電極層の上に、膜厚15nmのp型アモルファスシリコン層、膜厚400nmのi型アモルファスシリコン層、膜厚30nmのn型アモルファスシリコン層をこの順序で成膜し、p−i−n型の光電変換層を形成した。次に、スパッタ装置を用いて膜厚100nmのインジウム錫酸化物(ITO)を成膜して、次いで真空蒸着装置により膜厚200nmの銀を成膜して、透明電極と金属電極とからなる裏面電極層を形成して、「スーパーストレートタイプ」の太陽電池サンプルを作製した。結果を表1に示す。
【0049】
〔比較例4〕
メチルトリメトキシシランを加水分解・重縮合して得られるメチルシロキサンと、フェニルトリメトキシシランを加水分解・重縮合して得られるフェニルシロキサンと、ジメチルジメトキシシランを加水分解・重縮合して得られるジメチルシロキサンと、数平均粒径20nmのシリカ粒子を、質量比17.5:50:5:27.5で混合してマトリックス材料を得た。次に、数平均粒径300nmのシリカ球形粒子と、マトリックス材料を、質量比4:6で混合して、ジアセトンアルコールで固形分9質量%に希釈してコーティング溶液を得た。次に、1辺30mm四方で厚さ1.1mmの低アルカリケイ酸塩ガラス基板(コーニング1737)の表面に、コーティング溶液をスピンコート法により1500rpmで塗布し、120℃で5分間プレベークした後、270℃で1時間キュアすることによって平坦基板層/テクスチャ層を得た。次に、スパッタ装置を用いて、テクスチャ層の上にアルミニウム亜鉛酸化物(AZO)を製膜して電極層を形成して薄膜太陽電池基板を得た。
次に、プラズマCVD装置を用いて、電極層の上に、膜厚15nmのp型アモルファスシリコン層、膜厚400nmのi型アモルファスシリコン層、膜厚30nmのn型アモルファスシリコン層をこの順序で成膜し、p−i−n型の光電変換層を形成した。次に、スパッタ装置を用いて膜厚100nmのインジウム錫酸化物(ITO)を成膜して、次いで真空蒸着装置により膜厚200nmの銀を成膜して、透明電極と金属電極とからなる裏面電極層を形成して、「スーパーストレートタイプ」の太陽電池サンプルを作製した。結果を表1に示す。
【0050】
〔比較例5〕
メチルトリメトキシシランを加水分解・重縮合して得られるメチルシロキサンと、フェニルトリメトキシシランを加水分解・重縮合して得られるフェニルシロキサンと、ジメチルジメトキシシランを加水分解・重縮合して得られるジメチルシロキサンを、質量比45:50:5で混合してマトリックス材料を得た。次に、数平均粒径55nmのシリカ球形粒子と、マトリックス材料を、質量比4:6で混合して、ジアセトンアルコールで固形分12質量%に希釈してコーティング溶液を得た。次に、1辺30mm四方で厚さ1.1mmの低アルカリケイ酸塩ガラス基板(コーニング1737)の表面に、コーティング溶液をスピンコート法により1500rpmで塗布し、120℃で5分間プレベークした後、270℃で1時間キュアすることによって平坦基板層/テクスチャ層を得た。次に、スパッタ装置を用いて、テクスチャ層の上にガリウム亜鉛酸化物(GZO)を製膜して電極層を形成して薄膜太陽電池基板を得た。
次に、プラズマCVD装置を用いて、電極層の上に、膜厚15nmのp型アモルファスシリコン層、膜厚400nmのi型アモルファスシリコン層、膜厚30nmのn型アモルファスシリコン層をこの順序で成膜し、p−i−n型の光電変換層を形成した。次に、スパッタ装置を用いて膜厚100nmのインジウム錫酸化物(ITO)を成膜して、次いで真空蒸着装置により膜厚200nmの銀を成膜して、透明電極と金属電極とからなる裏面電極層を形成して、「スーパーストレートタイプ」の太陽電池サンプルを作製した。結果を表1に示す。
【0051】
〔比較例6〕
メチルトリメトキシシランを加水分解・重縮合して得られるメチルシロキサンと、フェニルトリメトキシシランを加水分解・重縮合して得られるフェニルシロキサンと、ジメチルジメトキシシランを加水分解・重縮合して得られるジメチルシロキサンと、数平均粒径20nmのシリカ粒子を、質量比17.5:50:5:27.5で混合してマトリックス材料を得た。次に、数平均粒径300nmのシリカ球形粒子と、マトリックス材料を、質量比45:55で混合して、ジアセトンアルコールで固形分10質量%に希釈してコーティング溶液を得た。次に、1辺30mm四方で厚さ1.1mmの低アルカリケイ酸塩ガラス基板(コーニング1737)の表面に、コーティング溶液をスピンコート法により1500rpmで塗布し、120℃で5分間プレベークした後、270℃で1時間キュアすることによって平坦基板層/テクスチャ層を得た。次に、スパッタ装置を用いて、テクスチャ層の上にガリウム亜鉛酸化物(GZO)を製膜して電極層を形成して薄膜太陽電池基板を得た。
次に、プラズマCVD装置を用いて、電極層の上に、膜厚15nmのp型アモルファスシリコン層、膜厚400nmのi型アモルファスシリコン層、膜厚30nmのn型アモルファスシリコン層をこの順序で成膜し、p−i−n型の光電変換層を形成した。次に、スパッタ装置を用いて膜厚100nmのインジウム錫酸化物(ITO)を成膜して、次いで真空蒸着装置により膜厚200nmの銀を成膜して、透明電極と金属電極とからなる裏面電極層を形成して、「スーパーストレートタイプ」の太陽電池サンプルを作製した。結果を表1に示す。
【0052】
〔比較例7〕
メチルトリメトキシシランを加水分解・重縮合して得られるメチルシロキサンと、フェニルトリメトキシシランを加水分解・重縮合して得られるフェニルシロキサンと、ジメチルジメトキシシランを加水分解・重縮合して得られるジメチルシロキサンと、数平均粒径20nmのシリカ粒子を、質量比17.5:50:5:27.5で混合してマトリックス材料を得た。次に、数平均粒径550nmのシリカ球形粒子と、マトリックス材料を、質量比4:6で混合して、ジアセトンアルコールで固形分9質量%に希釈してコーティング溶液を得た。次に、1辺30mm四方で厚さ1.1mmの低アルカリケイ酸塩ガラス基板(コーニング1737)の表面に、コーティング溶液をスピンコート法により1500rpmで塗布し、120℃で5分間プレベークした後、270℃で1時間キュアすることによって平坦基板層/テクスチャ層を得た。次に、スパッタ装置を用いて、テクスチャ層の上にガリウム亜鉛酸化物(GZO)を製膜して電極層を形成して薄膜太陽電池基板を得た。
次に、プラズマCVD装置を用いて、電極層の上に、膜厚15nmのp型アモルファスシリコン層、膜厚400nmのi型アモルファスシリコン層、膜厚30nmのn型アモルファスシリコン層をこの順序で成膜し、p−i−n型の光電変換層を形成した。次に、スパッタ装置を用いて膜厚100nmのインジウム錫酸化物(ITO)を成膜して、次いで真空蒸着装置により膜厚200nmの銀を成膜して、透明電極と金属電極とからなる裏面電極層を形成して、「スーパーストレートタイプ」の太陽電池サンプルを作製した。結果を表1に示す。
【0053】
[評価結果]
実施例1〜7の薄膜シリコン太陽電池は、基材層及び電極層の表面が平坦な他は実施例1と同様な水準の比較例1に対して、いずれも短絡電流が15%以上向上した。実施例1〜7の薄膜太陽電池基板は、優れた光閉じ込めにより短絡電流が大きく増加することがわかる。
【0054】
一方、比較例1は基板層及び電極層に凹凸がなく光散乱が弱いため短絡電流が小さいと考えられる。比較例2及び3は、電極層が薄く凹凸の突起が鋭いために短絡不良を起こしたと考えられる。比較例4は、電極層が厚いので基板層に対して電極層の平均面粗さRaが小さくなり電極層と光電変換層の界面の光散乱が弱く短絡電流が減少したと考えられる。比較例5は、テクスチャ層の数平均粒子径が小さいためマトリックス材料からの球形粒子の露出量が低くなり光散乱が弱く短絡電流が減少したと考えられる。比較例6は、電極層の平均面粗さRaが大きいので光反射が多く光電変換層に到達する光量が少ないため短絡電流の増加が小さいと考えられる。比較例7は、基材層の数平均粒子径が大きいことから電極層の平均面粗さRaが大きくなり光反射が多いので短絡電流の増加が少ないと考えられる。
【0055】
【表1】

【符号の説明】
【0056】
1:平坦基板層
2:テクスチャ層
3:電極層
4:光電変換層
5:裏面電極層
6:基材層
7:薄膜太陽電池基板
10:マトリックス材料
11:球形粒子
12:レンズアレイ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層上に電極層が形成された薄膜太陽電池基板であって、該電極層の厚みが100nm以上500nm以下であり、該電極層の表面の凹凸の平均面粗さRaが20nm以上200nm以下であることを特徴とする薄膜太陽電池基板。
【請求項2】
該基材層の表面に多数のドーム状突起が存在しており、該ドーム状突起の数平均直径が50〜700nmである請求項1に記載の薄膜太陽電池基板。
【請求項3】
該基材層が、平坦基板層と凹凸を形成するテクスチャ層からなる請求項1または2に記載の薄膜太陽電池基板。
【請求項4】
該テクスチャ層が、マトリックス材料と球形粒子からなる請求項3に記載の薄膜太陽電池基板。
【請求項5】
該マトリックス材料がポリシロキサンからなり、該球形粒子はシリカ粒子であり、該シリカ粒子の数平均粒径が150nm以上500nm以下であり、該テクスチャ層の表面の凹凸の平均面粗さRaが20nm以上200nm以下である請求項4に記載の薄膜太陽電池基板。
【請求項6】
該電極層は、酸化亜鉛系材料を用いてスパッタ製法により得られるものである請求項1〜5のいずれかに記載の薄膜太陽電池基板。
【請求項7】
基材層の電極層とは反対側の表面側から垂直に光入射したときの350nm波長の光吸収が40%以下である請求項1〜6のいずれかに記載の薄膜太陽電池基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−102064(P2013−102064A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−245099(P2011−245099)
【出願日】平成23年11月9日(2011.11.9)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】