薄膜太陽電池用基板、その製造方法及び薄膜太陽電池
【課題】シート抵抗値が低く、光線吸収が少なく、かつ、表面になだらかで均一な凹凸が形成された透明導電膜が、基板温度300℃以下となる条件で形成された薄膜太陽電池用基板の提供。
【解決手段】ガラス基板上に、それぞれ、酸化亜鉛を主成分とし、ドーパントとしてAlおよびGaの少なくとも一方を含む第一層および第二層がこの順に形成された二層構造の透明導電膜を有し、該二層構造の透明導電膜の表面には酸またはアルカリ溶液でのエッチングにより凹凸が設けられており、前記第一層、前記第二層の形成時の基板温度をそれぞれT1、T2とするとき、230℃≦T1,T2≦300℃を満たし、前記第一層は、Zn、AlおよびGaの総量に対するAlおよびGaの合計量の原子比として定義されるドーパント含有量が3.4〜7.0at%で、膜厚が50〜200nmであり、前記第二層は、Zn、AlおよびGaの総量に対するAlおよびGaの合計量の原子比として定義されるドーパント含有量が0.3〜1.0at%で、膜厚が700〜1500nmであり、前記透明導電膜について、X線回折装置で測定したZnO結晶の(002)面のピークと、(101)面のピークと、のピーク比((002)面のピーク/(101)面ピーク)が400倍以上であることを特徴とする薄膜太陽電池用基板。
【解決手段】ガラス基板上に、それぞれ、酸化亜鉛を主成分とし、ドーパントとしてAlおよびGaの少なくとも一方を含む第一層および第二層がこの順に形成された二層構造の透明導電膜を有し、該二層構造の透明導電膜の表面には酸またはアルカリ溶液でのエッチングにより凹凸が設けられており、前記第一層、前記第二層の形成時の基板温度をそれぞれT1、T2とするとき、230℃≦T1,T2≦300℃を満たし、前記第一層は、Zn、AlおよびGaの総量に対するAlおよびGaの合計量の原子比として定義されるドーパント含有量が3.4〜7.0at%で、膜厚が50〜200nmであり、前記第二層は、Zn、AlおよびGaの総量に対するAlおよびGaの合計量の原子比として定義されるドーパント含有量が0.3〜1.0at%で、膜厚が700〜1500nmであり、前記透明導電膜について、X線回折装置で測定したZnO結晶の(002)面のピークと、(101)面のピークと、のピーク比((002)面のピーク/(101)面ピーク)が400倍以上であることを特徴とする薄膜太陽電池用基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は薄膜太陽電池用基板、その製造方法及び薄膜太陽電池に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、太陽電池には、単結晶または多結晶シリコンが多く用いられてきた。しかし太陽電池に使用するこれらのシリコンでは、結晶の成長に多くのエネルギーと時間とを要し、かつ、続く製造工程においても複雑な工程が必要となるため量産効率が上がりにくく、低価格の太陽電池を提供することが困難であった。一方、アモルファスシリコン半導体、微結晶シリコン半導体、あるいは、アモルファスシリコンと微結晶シリコンを接合させたタンデム構造を有する半導体を用いたいわゆる薄膜半導体太陽電池(以下、本明細書において「薄膜太陽電池」と記載)は、ガラス基板またはステンレススチール製基板などの安価な基板上に、光電変換層である半導体層を必要なだけ形成すればよい。したがって、この薄膜太陽電池は、薄型で軽量、製造コストの安さ、大面積化が容易であることなどから、今後の太陽電池の主流になると考えられている。しかし薄膜太陽電池は、その変換効率が結晶シリコン太陽電池に比べて低く、これまで本格的に使用されてこなかった。そこで薄膜太陽電池の性能を改善するため、様々な工夫が現在なされている。
【0003】
近年、太陽電池の効率を上げるため、光拡散にて短絡電流密度を高める検討がなされている。これに使用される材料として、主に、導電性をもつSnO2テクスチャー付ガラス基板が用いられており、このようなガラス基板は、通常、ガラス基板上に常圧CVD法によりSnO2膜を形成することにより得られる。
しかし、この方法ではプロセス的には簡便な方法であるが、SnO2膜の形成時に基板温度を少なくとも400℃以上の高温とする必要があり、プロセスの制約となっていた。
【0004】
上記の問題点を解決するため、特許文献1では基板上に、表面に酸又はアルカリ溶液でのエッチングによる凹凸を有する酸化亜鉛からなる透明導電膜を備えてなる太陽電池用基板が提案されている。特許文献1に記載の太陽電池用基板は、基板表面に、表面に凹凸を有する透明導電層を備えるため、光拡散効果による短絡電流密度を飛躍的に向上させることができ、ひいては、太陽電池の変換効率を向上させることができるとされている。特許文献1では、特に、表面の凹凸が、0.1〜1.2μmの高さを有し、0.1〜10μmのピッチを有する場合、透明導電膜が、Ga又はAlを不純物として含有するZnO膜である場合、なかでもこの透明導電膜が、結晶状態の異なる2層以上の積層膜である場合、この透明導電膜が、基板に遠い層から近い層にかけてC軸配向性が高くなる場合には、さらに太陽電池の変換効率を飛躍的に向上させることができるとされている。
【0005】
また、特許文献2には、少なくとも高導電性の第一層と導電性がかなり低い第二層を備える、透明導電性酸化物コーティング、特に薄片太陽電池用の透明コンタクトとしての透明導電性酸化物層を生成する方法であって、該第二層が、酸化亜鉛と、更にアルミニウム、インジウム、ガリウム又はホウ素又はこれらの組合わせを持つ少なくとも一つのターゲットのDCスパッタリングによって生成され、プロセス雰囲気が酸素を含有することを特徴とする方法が提案されている。
特許文献2に記載の方法において、透明導電性酸化物層を酸化亜鉛ベースの二層構造とするのは、このような構造とすることでITO層に匹敵する光学特性と電気特性を示すことが知られているからである。
【0006】
また、特許文献3には、透明導電膜を基板に設けた透明導電膜付き基板において、前記透明導電膜は、前記基板に積層形成された複数の透明導電層を有しており、前記複数の透明導電層の中の前記基板に最も近い透明導電層は、前記複数の透明導電層の中の前記基板から最も遠い透明導電層より高い形成温度にて形成されていることを特徴とする透明導電膜付き基板が開示されており、複数の透明導電層の具体例として、GaドープのZnO膜を基板上に二層積層することで、該基板上に透明導電膜を形成することが示されている(請求項1)。
特許文献3の段落番号[0021]には、透明導電膜のエッチング性に関して、「スパッタリング法によって形成されたZnO膜は、酸によるエッチングによって、表面に容易に凹凸が形成される。これは、スパッタリング法によって形成されたZnO膜には多結晶部分と非晶質部分とが混在しており、エッチングされ易い非晶質部分がエッチングによって選択的に除去されるからである。」と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−233800号公報
【特許文献2】特開2009−21607号公報
【特許文献3】特開2002−25350号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した点から明らかなように、薄膜太陽電池用基板の酸化亜鉛からなる透明導電膜の表面にエッチングによる凹凸を形成することで、光拡散効果による短絡電流密度を飛躍的に向上させることができ、ひいては、薄膜太陽電池の変換効率を向上させることができる。ここで、透明導電膜の表面になだらかで均一な凹凸を形成することが、波長800nm以上の長波長側での光閉じ込め効果に優れた光散乱層が得られることから好ましい。
また、透明導電膜の表面になだらかな凹凸を形成することは、光電変換層形成時に光電変換層内に発生する欠陥の発生防止の観点からも好ましい。ここで、なだらかな凹凸とは、凹凸を構成する面が、曲面もしくは小さな平面の組合せで構成されていることをいう。これに対してなだらかでない凹凸とは、凸部がピラミッド型、三角錐型、四角錐型をしているものをいう。
【0009】
また、薄膜太陽電池用基板の透明導電膜は、シート抵抗値が低いことが好ましい、具体的には、シート抵抗値が10Ω/□以下であることが好ましい。
【0010】
また、薄膜太陽電池用基板の透明導電膜は、光線吸収が少ないことが好ましい。具体的には、波長500nmでの光線吸収率が10%以下、波長800nmでの光線吸収率が5%以下、および、波長1000nmでの光線吸収率が10%以下であることが好ましい。
【0011】
また、薄膜太陽電池用基板の製造時、酸化亜鉛を主成分とする透明導電膜の成膜には、大面積に均一に成膜でき、また膜厚の制御が比較的安易であることからスパッタリング法を用いることが好ましい。特に、装置コストの低いDCマグネトロンスパッタリング法が好ましい。
また、生産性、製造コストの点で酸化亜鉛を主成分とする透明導電膜の成膜はより低温で実施することが好ましい。また、酸化亜鉛を主成分とする透明導電膜の成膜を低温で行うことは、加熱によるガラスの変形(反り)などを考慮する必要が減る点でも好ましい。低温での成膜に関して、具体的には、基板温度が300℃以下となる条件で酸化亜鉛を主成分とする透明導電膜の成膜を実施することが好ましい。
【0012】
本発明は、上記した従来技術における課題を解決するため、シート抵抗値が低く、光線吸収が少なく、かつ、表面になだらかで均一な凹凸が形成された透明導電膜が、基板温度300℃以下となる条件で形成された薄膜太陽電池用基板、および、その製造方法、ならびに、該薄膜太陽電池用基板を用いた薄膜太陽電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本願発明者らは、上記の課題を解決するため、鋭意検討した結果、酸化亜鉛を主成分とする透明導電膜の表面に酸やアルカリ溶液でのエッチングによって、なだらかで均一な凹凸を形成するためには、該透明導電膜がC軸配向性に優れた結晶性の膜であることが好ましいことを見出した。
また、酸化亜鉛を主成分とする透明導電膜をC軸配向性に優れた結晶性の膜とするためには、酸化亜鉛を主成分とする透明導電膜に、AlおよびGaのうち少なくとも一方をドーパントとして含めることが好ましいことを見出した。ここで、透明導電膜のC軸配向性を高めるためには、透明導電膜において、上記のドーパントの含有量を高めることが好ましい。しかしながら、透明導電膜における上記ドーパントの含有量を高めると、透明導電膜の光線吸収が増加するので問題となる。
この点に関して、本願発明者らは、酸化亜鉛を主成分とする透明導電膜の第一層を、AlおよびGaのうち少なくとも一方のドーパント含有量の高い層として、透明導電膜のC軸配向性を高め、該第一層の上に、AlおよびGaのうち少なくとも一方のドーパント含有量の低い、酸化亜鉛を主成分とする透明導電膜の第二層を形成することにより、透明導電膜の光線吸収を増加することなしに、C軸配向性を高めることができることを見出した。
【0014】
上記の知見は、本願発明者によって初めて見出されたものであり、以下に述べるように、特許文献1〜3には記載も示唆もされていない。
【0015】
特許文献1の段落番号[0010]では、透明導電膜が2層以上の積層膜で形成されている場合には、基板に遠い層から近い層にかけてC軸配向性が連続的に又は段階的に高くなるように形成されることが好ましいとされている。これは言いかえると、基板に近い層から遠い層にかけてC軸配向性が低くなることが好ましいことになる。
しかしながら、C軸配向性に優れた結晶性の膜で、エッチングによりその表面になだらかで均一な凹凸を形成できるのは、膜の表面付近、すなわち、基板から遠い層もC軸配向性に優れるからである。
また、特許文献1の段落番号[0065]には、透明導電膜がGaまたはAlを不純物として含有するZnO膜である場合、太陽電池の光電変換効率を向上させることができると記載されているが、しかしながら、透明導電膜におけるこれらの元素の含有量を高めた場合に、透明導電膜の光線吸収が増加することは記載も示唆もされていない。
【0016】
また、特許文献1において、2層構造の透明導電膜に関する実施例11では、第一層成膜時の基板温度150℃に対し、第二層成膜時の基板温度が300℃と高くなっているが、基板を二段階で加熱する製造プロセスのため、生産性、製造コストの点で好ましくないと考えられる。
また、特許文献1では、透明導電膜の形成後、該透明導電膜表面をエッチングする前にアニールしてもよいとしているが、形成後の透明導電膜をアニールすることは、製造時間が長くなり、プロセス増加のため製造コストの点で好ましくないと考えられる。
【0017】
一方、特許文献2に記載の透明導電性酸化物層の場合、該層の表面にエッチングによって凹凸を形成することが記載も示唆もされておらず、該透明導電性酸化物層のC軸配向性についても記載も示唆もされていない。
【0018】
上述したように、特許文献3の段落番号[0021]には、透明導電膜のエッチング性に関して、多結晶部分と非結晶部分が混在しているZnO膜では、エッチングされ易い非晶質部分がエッチングによって選択的に除去されると記載されている。しかしながら、多結晶部分と非結晶部分が存在する場合は、エッチングされ易い非晶質部分とエッチングされにくい多結晶部分と、のエッチング速度の違いにより、エッチング後の凹凸の形状が急峻になる。
これに対し、C軸配向性に優れた結晶性の膜は、多結晶部分と非結晶部分が混在している膜に比べてエッチング性は低いが、エッチング性の低い方がなだらかで均一で凹凸形状を形成するのに有利である。
また、特許文献3の段落番号[0049]の実施例では高い光透過率による大きい短絡電流ISCを得るためには、第2透明導電層層の厚さは2000Å以下であることが好ましいと記載されている。すなわち、透明導電膜の光線吸収を減らすためには、第2透明導電層層の厚さを小さくする必要があるとされている。
【0019】
本発明は、上記の知見に基づいてなされたものであり、本発明は、ガラス基板上に、それぞれ、酸化亜鉛(ZnO)を主成分とし、ドーパントとしてAlおよびGaの少なくとも一方を含む第一層および第二層がこの順に形成された二層構造の透明導電膜を有し、該二層構造の透明導電膜の表面には酸またはアルカリ溶液でのエッチングにより凹凸が設けられており、前記第一層、前記第二層の形成時の基板温度をそれぞれT1、T2とするとき、230℃≦T1,T2≦300℃を満たし、
前記第一層は、Zn、AlおよびGaの総量に対するAlおよびGaの合計量の原子比として定義されるドーパント含有量が3.4〜7.0at%で、膜厚が50〜200nmであり、
前記第二層は、Zn、AlおよびGaの総量に対するAlおよびGaの合計量の原子比として定義されるドーパント含有量が0.3〜1.0at%で、膜厚が700〜1500nmであり、
前記透明導電膜について、X線回折装置で測定したZnO結晶の(002)面のピークと、(101)面のピークと、のピーク比((002)面のピーク/(101)面のピーク))が、400倍以上であることを特徴とする薄膜太陽電池用基板を提供する。
【0020】
本発明の薄膜太陽電池用基板において、前記透明導電膜表面に設けられた凹凸が0.1〜1.2μmの高さ、および、0.1〜10μmのピッチを有することが好ましい。
【0021】
また、本発明の薄膜太陽電池用基板において、前記透明導電膜のシート抵抗値が10Ω/□以下であることが好ましい。
【0022】
また、本発明の薄膜太陽電池用基板において、前記透明導電膜は、波長500nmでの光線吸収率が10%以下、波長800nmでの光線吸収率が5%以下、および、波長1000nmでの光線吸収率が10%以下であることが好ましい。
【0023】
また、本発明は、ガラス基板上に、それぞれ、酸化亜鉛(ZnO)を主成分とし、ドーパントとしてAlおよびGaの少なくとも一方を含む第一層および第二層をスパッタリング法により形成して、該第一層および第二層からなる透明導電膜を形成した後、該透明導電膜を酸またはアルカリ溶液でエッチングすることにより、該透明導電膜の表面に凹凸を設ける薄膜太陽電池用基板の製造方法であって、
前記第一層、前記第二層の形成時の基板温度をそれぞれT1、T2とするとき、230℃≦T1,T2≦300℃を満たし、
前記第一層は、Zn、AlおよびGaの総量に対するAlおよびGaの合計量の原子比として定義されるドーパント含有量が3.4〜7.0at%で、膜厚が50〜200nmであり、
前記第二層は、Zn、AlおよびGaの総量に対するAlおよびGaの合計量の原子比として定義されるドーパント含有量が0.3〜1.0at%で、膜厚が700〜1500nmであることを特徴とする薄膜太陽電池用基板の製造方法を提供する。
【0024】
また、本発明は、本発明の薄膜太陽電池用基板の前記透明導電膜上にアモルファルシリコンまたはアモルファスシリコン合金のp層、i層およびn層が形成され、該n層上に導電層が積層されてなる薄膜太陽電池を提供する。
【発明の効果】
【0025】
本発明の薄膜太陽電池用基板は、ガラス基板上に形成された透明導電膜が、C軸配向性に優れた結晶性の膜であるため、酸またはアルカリ溶液でエッチングすることによって、該透明導電膜表面になだらかで均一な凹凸を形成することができる。透明導電膜表面になだらかで均一な凹凸が形成されていることによって、波長800nm以上の長波長側での光閉じ込め効果に優れた光散乱層として機能する。これにより、光拡散効果による短絡電流密度が飛躍的に向上し、薄膜太陽電池の変換効率を向上させることができる。
また、透明導電膜表面になだらかで均一な凹凸が形成されていることによって、薄膜太陽電池製造時におけるクラックの発生を防止できる。
本発明の薄膜太陽電池用基板は、透明導電膜のシート抵抗値が10Ω/□以下と低い。また、透明導電膜の波長500nmでの光線吸収率が10%以下、波長800nmでの光線吸収率が5%以下、および、波長1000nmでの光線吸収率が10%以下と低い。これらは、薄膜太陽電池用基板の透明導電膜として好ましい特性である。
【0026】
本発明では、ドーパント含有量が3.4〜7.0at%の第一層の膜厚を50〜200nmと小さくし、ドーパント含有量が0.3〜1.0at%の第二層の膜厚を700〜1500nmと大きくすることにより、C軸結晶性が高いにもかかわらず、透明導電膜での光線吸収を低減できる。
【0027】
また、本発明では、透明導電膜の各層(第一層、第二層)形成時の基板温度が230〜300℃であるので、透明導電膜形成時の基板温度を400℃以上にする必要があった従来のテクスチャー構造を有した透明導電膜と比べて、生産性向上、製造コスト削減の点で優れている。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1は、本発明の薄膜太陽電池用基板の一構成例を示した模式図である。
【図2】図2は、図1の第二層22の表面をエッチングする前の状態を示した模式図である。
【図3】図3(a),(b)は、第二層22表面付近のエッチング前後の状態を示した模式図である。
【図4】図4(a),(b)は、例1におけるエッチング前後の透明導電膜表面のSEM画像であり、図4(a)はエッチング前、図4(b)はエッチング後の透明導電膜表面を示している。
【図5】図5(a),(b)は、例1におけるエッチング前後の透明導電膜表面のSEM画像であり、図5(a)はエッチング前、図5(b)はエッチング後の透明導電膜表面を示している。
【図6】図6は、例2におけるエッチング後の透明導電膜表面のSEM画像である。
【図7】図7は、例2におけるエッチング後の透明導電膜表面のSEM画像である。
【図8】図8(a),(b)は、例4におけるエッチング前後の透明導電膜表面のSEM画像であり、図8(a)はエッチング前、図8(b)はエッチング後の透明導電膜表面を示している。
【図9】図9(a),(b)は、例4におけるエッチング前後の透明導電膜表面のSEM画像であり、図9(a)はエッチング前、図9(b)はエッチング後の透明導電膜表面を示している。
【図10】図10(a),(b)は、例6におけるエッチング前後の透明導電膜表面のSEM画像であり、図10(a)はエッチング前、図10(b)はエッチング後の透明導電膜表面を示している。
【図11】図11(a),(b)は、例6におけるエッチング前後の透明導電膜表面のSEM画像であり、図11(a)はエッチング前、図11(b)はエッチング後の透明導電膜表面を示している。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照して本発明の薄膜太陽電池用基板を説明する。
図1は、本発明の薄膜太陽電池用基板の一構成例を示した模式図である。
図1において、ガラス基板10上には、第一層21および第二層22がこの順に形成された二層構造の透明導電膜20が設けられている。該透明導電膜20の表面(第二層22の表面)には凹凸23が設けられている。本発明の薄膜太陽電池用基板の個々の構成について、以下に説明する。
【0030】
<ガラス基板10>
本発明の薄膜太陽電池用基板では、透光性、強度および耐熱性に優れることから、透明導電膜を形成する基板としてガラス基板を用いる。ガラス基板は、必ずしも平面で板状である必要はなく、曲面でも異型状でもよい。ガラス基板としては、無色透明なソーダライムシリケートガラス、アルミノシリケートガラス、ボレートガラス、リチウムアルミノシリケートガラス、石英ガラス、ホウ珪酸ガラス基板、無アルカリガラス基板、その他の各種ガラスからなる透明ガラス板を用いることができる。
ガラス基板の厚さは0. 2〜6. 0mmであることが好ましい。この範囲であると、ガラス基板の強度が強く、透光性が高い。
透光性に関して、ガラス基板は、350〜1000nmの波長領域において高い透過率、例えば80%以上の透過率を有することが好ましい。
また、ガラス基板は、十分絶縁性で、かつ化学的、物理的耐久性が高いことが望ましい。
なお、ソーダライムシリケートガラスなどのナトリウムを含有するガラスからなるガラス基板、または低アルカリ含有ガラスからなるガラス基板の場合には、ガラスからその上面に形成される透明導電膜へのアルカリ成分の拡散を最小限にするために、酸化ケイ素膜、酸化アルミニウム膜、酸化ジルコニウム膜などのアルカリバリア層をガラス基板面に施してもよい。
また、ガラス基板の表面に、ガラス基板の表面と、その上に設けられる層との屈折率の差異を軽減するための層をさらに有していてもよい。
【0031】
ソーダライムガラス基板上に形成するアルカリバリア層は、SiO2や、SiO2とSnO2の混合酸化物膜や多層膜などであり、その膜厚は20〜100nmであることが好ましい。膜厚がこの範囲であると、ガラス基板からの透過光の反射および吸収を制御することができる。多層膜の例としては、ソーダライムガラス基板上にSnO2膜とSiO2膜を順次積層した膜が挙げられ、膜厚はそれぞれ20〜30nm、20〜40nmであることが好ましい。特に、該アルカリバリア層の膜厚は、40〜60nmであることが好ましい。
【0032】
<透明導電膜>
透明導電膜20を構成する第一層21および第二層22は、酸化亜鉛を主成分とし、ドーパントとしてAlおよびGaの少なくとも一方を含有する。以下、本明細書において、酸化亜鉛を主成分とし、ドーパントとしてAlおよびGaの少なくとも一方を含有する膜のことを、「(Al,Ga)ドープZnO膜」と言う。
透明導電膜20を構成する各層(第一層21、第二層22)として、(Al,Ga)ドープZnO膜を用いるのは、ZnOが安価な材料であり、ドーパントとしてAlおよびGaの少なくとも一方を含有することで容易に低抵抗な膜を得ることができるという理由による。
ここで、第一層21および第二層22は、ドーパントとして、AlおよびGaのうち、一方のみを含有してもよく、両方を含有してもよい。また、第一層21および第二層22は、ドーパントとして、同一の元素を含有してもよいし、異なる元素を含有してもよい。たとえば、第一層21および第二層22がいずれもドーパントとして、Al(あるいはGa)を含有してもよい。また、第一層21がドーパントとして、Al(あるいはGa)を含有するのに対して、第二層22がドーパントとして、Ga(あるいはAl)を含有してもよい。
透明導電膜20を構成する各層(第一層21、第二層22)は、ドーパント含有量および膜厚が以下に述べる点を満たす。
【0033】
第一層21は、Zn、AlおよびGaの総量に対するAlおよびGaの合計量の原子比として定義されるドーパント含有量(以下、本明細書において、同様)が、3.4〜7.0at%である。
(Al,Ga)ドープZnO膜では、ドーパント含有量が増加するほど、膜のC軸配向性が高くなる。しかしながら、ドーパント含有量が増加するにつれて、膜の光線吸収が増加する。
第一層21は、ドーパント含有量を高めに設定することで、C軸配向性が高い結晶性の膜となる。詳しくは後述するが、C軸配向性の高い第一層21を下地層として、第二層22を形成することで、第二層22のC軸配向性が向上する。
第一層21におけるドーパント含有量が3.4at%未満だと、(Al,Ga)ドープZnO膜のC軸配向性が低くなり、第一層21を下地層として形成する第二層22のC軸配向性を向上させることができない。また、第二層22のドーパント含有量にもよるが、透明導電膜20全体としてのシート抵抗値が増加するおそれがある。
一方、第一層21におけるドーパント含有量が7.0at%超だと、第一層21の光線吸収が増加し透明導電膜20全体としての光線吸収が増加するおそれがある。なお、後述するように、透明導電膜20全体としての光線吸収の観点から、第二層22のドーパント含有量にも制約がある。
また、第一層21におけるドーパント含有量が多くなると、ドーパントの偏析などにより、電気特性及び結晶性の点でも問題が起きる可能性がある。
第一層21におけるドーパント含有量は、3.4〜7.0at%であることが好ましく、4.0〜6.6at%であることがより好ましく、4.5〜5.5at%であることがさらに好ましい。
【0034】
第一層21は、膜厚が50〜200nmである。第一層21の膜厚が50nm未満だと、透明導電膜20全体としてのシート抵抗値が増加するおそれがある。
一方、第一層21の膜厚が200nm超だと、透明導電膜20全体としての光線吸収が増加するおそれがある。
第一層21の膜厚は、50〜200nmであることが好ましく、80〜150nmであることがより好ましく、90〜120nmであることがさらに好ましい。
【0035】
第二層22は、ドーパント含有量が、0.3〜1.0at%である。
ドーパント含有量が上記範囲の(Al,Ga)ドープZnO膜をガラス基板上に直接形成した場合、ドーパント含有量が低いため、膜のC軸配向性が低くなる。
しかし、本発明では、C軸配向性が高い第一層21を下地層とすることで、図2に示すように、下地層の上に形成される第二層22((Al,Ga)ドープZnO膜)のC軸配向性が向上する。図2では、第一層21および第二層22を構成する(Al,Ga)ドープZnO膜が、C軸配向性が高い結晶質の膜であることを柱状構造の膜として示している。
第二層22におけるドーパント含有量が0.3at%未満だと、C軸配向性が低くなる。詳しくは後述するが、第二層22のC軸配向性が低くなると、透明導電膜20をエッチングした際に、該透明導電膜22表面になだらかで均一な凹凸23を形成することができない。また、透明導電膜20全体としてのシート抵抗値が増加するおそれがある。
一方、第二層22におけるドーパント含有量が1.0at%超だと、透明導電膜20全体としての光線吸収が増加するおそれがある。
第二層22におけるドーパント含有量は、0.3〜1.0at%であることが好ましく、0.5〜0.9at%であることがより好ましい。
なお、第一層21におけるドーパント種はガリウム(Ga)が好ましく、第二層22におけるドーパント種はアルミニウム(Al)が好ましい。
【0036】
第二層22は、膜厚が700〜1500nmである。第二層22の膜厚が700nm未満だと、透明導電膜20全体としてのシート抵抗値が増加するおそれがある。
一方、第二層22の膜厚が1500nm超だと、透明導電膜20全体としての光線吸収が増加するおそれがある。
また、本発明の薄膜太陽電池用基板では、ドーパント含有量の高い第一層21の膜厚を小さくし、その上に形成されるドーパント含有量の低い第二層22の膜厚を大きくすることで、透明導電膜の光線吸収を増加することなしに、C軸配向性を高めるため、第二層22の膜厚は700nm以上が必須である。
第二層22の膜厚は、700〜1500nmであることが好ましく、1000〜1400nmであることがより好ましく、1100〜1300nmであることがさらに好ましい。
【0037】
第一層21および第二層22を構成する(Al,Ga)ドープZnO膜は、AlおよびGaのうち少なくとも一方と、Znと、を含む合金ターゲットや、これらの元素の酸化物を含むターゲットを用いたスパッタリング法により形成できる。
本発明では、第一層21、第二層22の形成時の基板温度をそれぞれT1、T2とするとき、230℃≦T1,T2≦300℃を満たすことで、形成される透明導電膜20がC軸配向性の高い結晶質の膜となり、かつ、シート抵抗値が低く、光線吸収の少ない膜となる。
第一層21、第二層22の形成時の基板温度が230℃未満の場合、形成される透明導電膜20がC軸配向性の高い結晶質の膜とならないおそれがある。また、透明導電膜20全体のシート抵抗値が増加するおそれがある。
一方、第一層21、第二層22の形成時の基板温度が300℃超の場合、生産性低下、製造コスト増加の問題がある。
【0038】
第一層21、第二層22の形成時において、基板温度(T1,T2)以外の条件は特に限定されないが、例えば、後述する実施例では、成膜圧力を0.4Paとし、成膜ガスはArとし、必要に応じてO2ガスを添加し、パワー密度は5W/cm2とし、成膜を行った。
【0039】
第一層21および第二層22の二層構造の透明導電膜20は、上記を満たすことで、二層構造の透明導電膜20全体がC軸配向性の高い結晶質の膜となる。(Al,Ga)ドープZnO膜により構成される透明導電膜のC軸配向性は、X線回折装置で測定したZnO結晶の(002)面のピークと、(101)面のピークと、のピーク比((002)面のピーク/(101)面のピーク))(以下、本明細書において、「ピーク比(002)/(101)」と記載する。)によって確認することができる。
本発明における透明導電膜20は、(Al,Ga)ドープZnO膜のピーク比(002)/(101)が400倍以上であり、C軸配向性がきわめて高い結晶質の膜である。
本発明における透明導電膜20は、(Al,Ga)ドープZnO膜のピーク比(002)/(101)が750倍以上であることが好ましく、900倍以上であることがより好ましい。
【0040】
本発明における透明導電膜20は、上述したようなC軸配向性の高い結晶質の膜であるため、酸またはアルカリ溶液でエッチングすることにより、その表面、すなわち、第二層22の表面になだらかで均一な凹凸23を形成することができる。図3(a),(b)は、第二層22表面付近のエッチング前後の状態を示した模式図である。図3(a)に示すように、透明導電膜の第二層22はC軸配向性が高い結晶質の膜であるため、酸またはアルカリ溶液でエッチングすることにより、図3(b)に示すように、その表面になだらかで均一な凹凸23を形成することができる。透明導電膜のC軸配向性が低いと、エッチングにより形成される凹凸が急峻な結晶エッジを有するものとなる。
エッチングに使用する酸溶液としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、フッ酸、酢酸、蟻酸等の1種又は2種以上の混合物が挙げられる。なかでも塩酸、酢酸が好ましい。また、エッチングに使用するアルカリ溶液としては、水酸化ナトリウム、アンモニア、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等の1種又は2種以上の混合物が挙げられる。なかでも水酸化ナトリウムが好ましい。これら酸溶液は、例えば0.05質量%〜5質量%程度の濃度で使用することができ、特にこれらのうち比較的弱い酸の場合には、0.1質量%〜5質量%程度の濃度であることが好ましい。アルカリ溶液は、1質量%〜10質量%程度の濃度であることが好ましい。
【0041】
透明導電膜20表面、より具体的には第二層22表面に形成される凹凸23は、可視光領域の光の波長程度の高さ、具体的には0.1〜1.2μm程度の高さを有していることが好ましく、より好ましくは、0.1〜1.0μm程度、さらに好ましくは、可視光領域の光の波長の半分程度の高さ、具体的には0.1〜0.6μm程度の高さを有している。また、凹凸23は、0.1〜10μmのピッチを有することが好ましい。
【0042】
第一層21および第二層22の二層構造の透明導電膜20は、上記を満たすことでシート抵抗値が低い。具体的には、シート抵抗値が10Ω/□以下であることが好ましく、8Ω/□以下であることがより好ましい。なお、ここでいう透明導電膜20のシート抵抗値とは、酸またはアルカリ溶液でのエッチングにより表面に凹凸を形成した後の二層構造の透明導電膜20全体のシート抵抗値である。
【0043】
第一層21および第二層22の二層構造の透明導電膜20は、上記を満たすことで光線吸収が少ない。具体的には、波長500nmでの光線吸収率が10%以下であることが好ましく、より好ましくは8%以下、さらに好ましくは7.5%以下、さらに好ましくは5.5%以下である。また、波長800nmでの光線吸収率が5%以下であることが好ましく、より好ましくは4.5%以下、さらに好ましくは4%以下である。また、波長1000nmでの光線吸収率が10%以下であることが好ましく、より好ましくは9%以下である。なお、ここでいう透明導電膜20の光線吸収率とは、酸またはアルカリ溶液でのエッチングにより表面に凹凸を形成した後の二層構造の透明導電膜20全体の光線吸収率である。
【0044】
本発明における透明導電膜20は、表面になだらかで均一な凹凸が形成されていることにより、波長800nm以上の長波長側での光閉じ込め効果に優れている。この点については、透明導電膜20のヘイズ率を測定することで確認できる。具体的には、波長500〜1000nmにおけるヘイズ率が10〜80%であることが好ましい。特に波長1000nmにおけるヘイズ率が10〜30%であることがより好ましく、波長800nmにおけるヘイズ率が20〜40%であることがさらに好ましい。
透明導電膜表面の凹凸が急峻な結晶エッジを有するものである場合は、波長800nm以上の長波長側での光閉じ込め効果が低下する。
【0045】
また、本発明における透明導電膜20は、表面になだらかで均一な凹凸が形成されていることにより、光電変換層形成時の欠陥の発生を防止できる。透明導電膜表面の凹凸が急峻な結晶エッジを有するものである場合は、光電変換層形成時に欠陥が発生するおそれがある。透明導電膜の表面になだらかな凹凸を形成することは、光電変換層形成時の欠陥の発生防止の観点からも好ましい。
【0046】
次に、本発明の薄膜太陽電池について説明する。
また、本発明は、上述した本発明の薄膜太陽電池用基板の透明導電膜上に、アモルファスシリコン又はアモルファスシリコン合金のp層、i層及びn層(以下、「p−i−n層」という。)、導電層が積層されてなる。なお、ガラス基板上に形成された透明導電膜と、p−i−n層と、の間に、金属による電極層やその他の導電層等を形成してもよい。また、p−i−n層を構成する各層の間にはシリコンによるバッファ層や中間層等を形成してもよい。さらに、p−i−n層と、導電層と、の間にも透明電極層やその他の導電層を形成してもよい。
【0047】
p−i−n層を構成する各層は、公知の方法、例えばCVD法等の方法により通常の膜厚、通常の不純物種、不純物濃度で形成することができる。上記半導体素子の具体的な構成としては、例えば、本発明の太陽電池用基板の透明導電膜上に、アモルファスシリコン又はアモルファスシリコン合金のp層、i層及びn層をこの順で形成し、さらにこの上に導電層として、透明導電層及び金属膜からなる電極層を形成したものが挙げられる。ここで、p−i−n層上に形成する透明導電層としては、ZnOのほか、SnO2 、ITO等を使用することができる。また、金属膜としては、通常電極として使用できる導電膜、例えば、金、白金、銀、銅、アルミニウム等を使用することができる。これらの膜厚は、半導体素子の使用態様に応じて適宜選択することができる。
【実施例】
【0048】
以下、実施例により本発明を詳述するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例では以下に示す手順でガラス基板上に透明導電膜が形成された太陽電池用基板を作製し、透明導電膜のシート抵抗値、ピーク比(002)/(101)、光線吸収率、ヘイズ率を評価した。また、透明導電膜表面を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察した。なお、以下に示す例1〜8のうち、例1〜3が実施例、例4〜8が比較例である。
【0049】
(例1)
ガラス基板として、SiO2膜のアルカリバリア層が付いたソーダライムガラス基板を使用した。ガラス基板上に、透明導電膜の第一層として、GaドープZnO膜(Ga含有量5at%)をDCマグネトロンスパッタリング法により形成した。
GaドープZnO膜形成時の条件は以下の通りである。
基板温度:300℃
ターゲット:Ga2O3を5.7wt%含有するZnOターゲットを使用した。
スパッタガス:Arガス(ガス圧0.4Pa)
投入パワー密度:5W/cm2
膜厚:100nm
次に、透明導電膜の第二層として、AlドープZnO膜(Al含有量0.8at%)をDCマグネトロンスパッタリング法により形成した。AlドープZnO膜形成時の条件は以下の通りである。
基板温度:300℃
ターゲット:Al2O3を0.5wt%含有するZnOターゲットを使用した。
スパッタガス:Arガス(ガス圧0.4Pa)
投入パワー密度:5W/cm2
膜厚:1200nm
【0050】
上記の手順で形成された二層構造の透明導電膜のシート抵抗値を4端子法で測定した。
また、透明導電膜に対しX線回折装置(XRD)による測定を実施し、得られたZnO結晶の(002)面と(101)面のピークから、(Al,Ga)ドープZnO膜のピーク比(002)/(101)を算出した。結果を下記表に示した。
【0051】
次いで、液温25℃の液温に保持し、200rpmの速度で攪拌した0.36質量%の塩酸水溶液に上記手順で透明導電膜を形成したガラス基板を20秒間浸漬した。その後、ガラス基板を流水に浸し、エッチング反応を停止させた。
エッチング前後に透明導電膜表面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した。結果を図4、5に示した。図4(a)および図5(a)がエッチング前、図4(b)および図5(b)がエッチング後の透明導電膜表面を示している。図4(a)および図5(a)に示すように、エッチング前の透明導電膜表面は平滑であった。図4(b)および図5(b)に示すように、エッチング後の透明導電膜表面にはなだらかで均一な凹凸が形成されていることが確認された。
また、エッチング後の透明導電膜のシート抵抗値を4端子法で測定した。結果を下記表に示す。
また、エッチング後の透明導電膜について、分光透過率ならびに反射率を測定して、波長500nm、800nmおよび1000nmでの光線吸収率を算出した。結果を下記表に示す。なお、分光透過率、反射率の測定は、分光光度計を装着して行った。
また、エッチング後の透明導電膜について、波長500nm、800nmおよび1000nmでのヘイズ率を分光光度計を用いて測定した。まず光入射面をガラス面として、正透過法で透過率を測定した。このときの各波長における透過率をTd(λ)とする。次にサンプルの膜面を積分球に密着させて、積分球透過率を測定した。このときの各波長における透過率をTt(λ)とする。以上の測定結果からヘイズ率Hz(λ)を以下の式により算出した。
Hz(λ)=(Tt(λ)−Td(λ))×100/Tt(λ)(%)
【0052】
(例2)
第一層および第二層形成時の基板温度を270℃とした以外は例1と同様の手順を実施した。なお、例2については、エッチング後の透明導電膜表面のみをSEMで観察した。結果を図6、7に示した。図6、7に示すように、エッチング後の透明導電膜表面にはなだらかで均一な凹凸が形成されていることが確認された。
【0053】
(例3)
第一層および第二層形成時の基板温度を250℃とした以外は例1と同様の手順を実施した。なお、例3については、SEMによる透明導電膜表面の観察は行わなかった。
【0054】
(例4)
例1と同様の条件で第一層を膜厚900nmとなるように形成し、第二層を形成しなかった以外は例1と同様の手順を実施した。例4については、エッチング前後に透明導電膜表面をSEMで観察した。結果を図8、9に示した。図8(a)および図9(a)がエッチング前、図8(b)および図9(b)がエッチング後の透明導電膜表面を示している。図8(a)および図9(a)に示すように、エッチング前の透明導電膜表面は平滑であった。図8(b)および図9(b)に示すように、エッチング後の透明導電膜表面にはなだらかで均一な凹凸が形成されていることが確認された。例4については、ヘイズ率の測定は実施しなかった。
【0055】
(例5)
第一層形成時の基板温度を150℃とし、膜厚900nmとなるように第一層を形成し、第二層を形成しなかった以外は例1と同様の手順を実施した。例5についてはSEMによる透明導電膜表面の観察と、ヘイズ率の測定は行わなかった。
【0056】
(例6)
例1の第二層と同様の条件で第一層としてAlドープZnO膜(Al含有量0.8at%)を形成した。但し、基板温度は400℃とし、第一層の膜厚を1200nmとした。第二層は形成しなかった。例6については、エッチング前後に透明導電膜表面をSEMで観察した。結果を図10、11に示した。図10(a)および図11(a)がエッチング前、図10(b)および図11(b)がエッチング後の透明導電膜表面を示している。図10(a)および図11(a)に示すように、エッチング前の透明導電膜表面は凹凸が存在する粗い面であった。その結果、図10(b)および図11(b)に示すように、エッチング後の透明導電膜表面には不均一でかつ、急峻な結晶エッジを有する凹凸が形成されていることが確認された。例6については、エッチング後のシート抵抗値、光線吸収率およびヘイズ率の測定は実施しなかった。
【0057】
(例7)
例1の第二層と同様の条件で第一層としてAlドープZnO膜(Al含有量3.2at%、膜厚100nm)を形成した。但し、基板温度は360℃とした。例1と同様の条件で第二層として、AlドープZnO膜(Al含有量0.8at%、膜厚1200nm)を形成した。但し、基板温度は360℃とした。例7についてはSEMによる透明導電膜表面の観察と、エッチング後のシート抵抗値、光線吸収率およびヘイズ率の測定は行わなかった。
【0058】
(例8)
第一層および第二層形成時の基板温度を200℃とした以外は例1と同様の手順を実施した。例8についてはSEMによる透明導電膜表面の観察と、(Al,Ga)ドープZnO膜の(002)/(101)ピーク比、エッチング後のシート抵抗値、光線吸収率およびヘイズ率の測定は行わなかった。
【0059】
【表1】
【0060】
【表2】
【0061】
例1〜3はいずれも、(Al,Ga)ドープZnO膜の(002)/(101)ピーク比が400倍以上であり、透明導電膜はC軸配向性がきわめて高い結晶質の膜であることが確認された。その結果、図4(b)、図5(b)、図6および図7に示すように、エッチングにより透明導電膜表面になだらかで均一な凹凸を形成することができた。ヘイズ率の測定結果は、波長800nm以上の長波長側での光閉じ込め効果に優れた光散乱層であることを示している。
また、例1〜3はいずれも、シート抵抗値が10Ω/□以下であり、波長500nmでの光線吸収率が10%以下、波長800nmでの光線吸収率が5%以下、および、波長1000nmでの光線吸収率が10%以下であった。
【0062】
第一層としてGaドープZnO膜(Ga含有量5at%)を膜厚900nmとなるように形成し、第二層を形成しなかった例4は、GaドープZnO膜の(002)/(101)ピーク比が400倍以上であり、透明導電膜はC軸配向性がきわめて高い結晶質の膜であることが確認された。その結果、図8(b)および図9(b)に示すように、エッチングにより透明導電膜表面になだらかで均一な凹凸を形成することができた。だが、波長800nm、1000nmでの光線吸収率がいずれも10%超であった。
【0063】
第一層としてGaドープZnO膜(Ga含有量5at%)を膜厚900nmとなるように基板温度150℃で形成し、第二層を形成しなかった例5は、GaドープZnO膜の(002)/(101)ピーク比が400倍未満であり、透明導電膜はC軸配向性が低い膜であることが確認された。また、波長800nm、1000nmでの光線吸収率がいずれも10%超であった。
【0064】
第一層としてAlドープZnO膜(Al含有量0.8at%)を膜厚1200nmとなるように基板温度400℃で形成し、第二層を形成しなかった例6は、AlドープZnO膜の(002)/(101)ピーク比が400倍未満であり、透明導電膜はC軸配向性が低い膜であることが確認された。その結果、図10(a)および図11(a)に示すように、エッチング前の透明導電膜表面が、凹凸が存在する粗い面となり、図10(b)および図11(b)に示すように、エッチング後の透明導電膜表面には不均一で、かつ、急峻な結晶エッジを有する凹凸が形成された。また、シート抵抗値も10Ω/□超であった。
【0065】
第一層としてAlドープZnO膜(Al含有量3.2at%)を膜厚100nmとなるように基板温度360℃で形成し、第二層としてAlドープZnO膜(Al含有量0.8at%)を膜厚1200nmとなるように基板温度360℃で形成した例7は、AlドープZnO膜の(002)/(101)ピーク比が400倍未満であり、透明導電膜はC軸配向性が低い膜であることが確認された。また、シート抵抗値も10Ω/□超であった。
【0066】
第一層としてGaドープZnO膜(Ga含有量5at%)を膜厚100nmとなるように基板温度200℃で形成し、第二層としてAlドープZnO膜(Al含有量0.8at%)を膜厚1200nmとなるように基板温度200℃で形成した例8はシート抵抗値が10Ω/□超であった。
【符号の説明】
【0067】
10:ガラス基板
20:透明導電膜
21:第一層
22:第二層
23:凹凸
【技術分野】
【0001】
本発明は薄膜太陽電池用基板、その製造方法及び薄膜太陽電池に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、太陽電池には、単結晶または多結晶シリコンが多く用いられてきた。しかし太陽電池に使用するこれらのシリコンでは、結晶の成長に多くのエネルギーと時間とを要し、かつ、続く製造工程においても複雑な工程が必要となるため量産効率が上がりにくく、低価格の太陽電池を提供することが困難であった。一方、アモルファスシリコン半導体、微結晶シリコン半導体、あるいは、アモルファスシリコンと微結晶シリコンを接合させたタンデム構造を有する半導体を用いたいわゆる薄膜半導体太陽電池(以下、本明細書において「薄膜太陽電池」と記載)は、ガラス基板またはステンレススチール製基板などの安価な基板上に、光電変換層である半導体層を必要なだけ形成すればよい。したがって、この薄膜太陽電池は、薄型で軽量、製造コストの安さ、大面積化が容易であることなどから、今後の太陽電池の主流になると考えられている。しかし薄膜太陽電池は、その変換効率が結晶シリコン太陽電池に比べて低く、これまで本格的に使用されてこなかった。そこで薄膜太陽電池の性能を改善するため、様々な工夫が現在なされている。
【0003】
近年、太陽電池の効率を上げるため、光拡散にて短絡電流密度を高める検討がなされている。これに使用される材料として、主に、導電性をもつSnO2テクスチャー付ガラス基板が用いられており、このようなガラス基板は、通常、ガラス基板上に常圧CVD法によりSnO2膜を形成することにより得られる。
しかし、この方法ではプロセス的には簡便な方法であるが、SnO2膜の形成時に基板温度を少なくとも400℃以上の高温とする必要があり、プロセスの制約となっていた。
【0004】
上記の問題点を解決するため、特許文献1では基板上に、表面に酸又はアルカリ溶液でのエッチングによる凹凸を有する酸化亜鉛からなる透明導電膜を備えてなる太陽電池用基板が提案されている。特許文献1に記載の太陽電池用基板は、基板表面に、表面に凹凸を有する透明導電層を備えるため、光拡散効果による短絡電流密度を飛躍的に向上させることができ、ひいては、太陽電池の変換効率を向上させることができるとされている。特許文献1では、特に、表面の凹凸が、0.1〜1.2μmの高さを有し、0.1〜10μmのピッチを有する場合、透明導電膜が、Ga又はAlを不純物として含有するZnO膜である場合、なかでもこの透明導電膜が、結晶状態の異なる2層以上の積層膜である場合、この透明導電膜が、基板に遠い層から近い層にかけてC軸配向性が高くなる場合には、さらに太陽電池の変換効率を飛躍的に向上させることができるとされている。
【0005】
また、特許文献2には、少なくとも高導電性の第一層と導電性がかなり低い第二層を備える、透明導電性酸化物コーティング、特に薄片太陽電池用の透明コンタクトとしての透明導電性酸化物層を生成する方法であって、該第二層が、酸化亜鉛と、更にアルミニウム、インジウム、ガリウム又はホウ素又はこれらの組合わせを持つ少なくとも一つのターゲットのDCスパッタリングによって生成され、プロセス雰囲気が酸素を含有することを特徴とする方法が提案されている。
特許文献2に記載の方法において、透明導電性酸化物層を酸化亜鉛ベースの二層構造とするのは、このような構造とすることでITO層に匹敵する光学特性と電気特性を示すことが知られているからである。
【0006】
また、特許文献3には、透明導電膜を基板に設けた透明導電膜付き基板において、前記透明導電膜は、前記基板に積層形成された複数の透明導電層を有しており、前記複数の透明導電層の中の前記基板に最も近い透明導電層は、前記複数の透明導電層の中の前記基板から最も遠い透明導電層より高い形成温度にて形成されていることを特徴とする透明導電膜付き基板が開示されており、複数の透明導電層の具体例として、GaドープのZnO膜を基板上に二層積層することで、該基板上に透明導電膜を形成することが示されている(請求項1)。
特許文献3の段落番号[0021]には、透明導電膜のエッチング性に関して、「スパッタリング法によって形成されたZnO膜は、酸によるエッチングによって、表面に容易に凹凸が形成される。これは、スパッタリング法によって形成されたZnO膜には多結晶部分と非晶質部分とが混在しており、エッチングされ易い非晶質部分がエッチングによって選択的に除去されるからである。」と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−233800号公報
【特許文献2】特開2009−21607号公報
【特許文献3】特開2002−25350号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した点から明らかなように、薄膜太陽電池用基板の酸化亜鉛からなる透明導電膜の表面にエッチングによる凹凸を形成することで、光拡散効果による短絡電流密度を飛躍的に向上させることができ、ひいては、薄膜太陽電池の変換効率を向上させることができる。ここで、透明導電膜の表面になだらかで均一な凹凸を形成することが、波長800nm以上の長波長側での光閉じ込め効果に優れた光散乱層が得られることから好ましい。
また、透明導電膜の表面になだらかな凹凸を形成することは、光電変換層形成時に光電変換層内に発生する欠陥の発生防止の観点からも好ましい。ここで、なだらかな凹凸とは、凹凸を構成する面が、曲面もしくは小さな平面の組合せで構成されていることをいう。これに対してなだらかでない凹凸とは、凸部がピラミッド型、三角錐型、四角錐型をしているものをいう。
【0009】
また、薄膜太陽電池用基板の透明導電膜は、シート抵抗値が低いことが好ましい、具体的には、シート抵抗値が10Ω/□以下であることが好ましい。
【0010】
また、薄膜太陽電池用基板の透明導電膜は、光線吸収が少ないことが好ましい。具体的には、波長500nmでの光線吸収率が10%以下、波長800nmでの光線吸収率が5%以下、および、波長1000nmでの光線吸収率が10%以下であることが好ましい。
【0011】
また、薄膜太陽電池用基板の製造時、酸化亜鉛を主成分とする透明導電膜の成膜には、大面積に均一に成膜でき、また膜厚の制御が比較的安易であることからスパッタリング法を用いることが好ましい。特に、装置コストの低いDCマグネトロンスパッタリング法が好ましい。
また、生産性、製造コストの点で酸化亜鉛を主成分とする透明導電膜の成膜はより低温で実施することが好ましい。また、酸化亜鉛を主成分とする透明導電膜の成膜を低温で行うことは、加熱によるガラスの変形(反り)などを考慮する必要が減る点でも好ましい。低温での成膜に関して、具体的には、基板温度が300℃以下となる条件で酸化亜鉛を主成分とする透明導電膜の成膜を実施することが好ましい。
【0012】
本発明は、上記した従来技術における課題を解決するため、シート抵抗値が低く、光線吸収が少なく、かつ、表面になだらかで均一な凹凸が形成された透明導電膜が、基板温度300℃以下となる条件で形成された薄膜太陽電池用基板、および、その製造方法、ならびに、該薄膜太陽電池用基板を用いた薄膜太陽電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本願発明者らは、上記の課題を解決するため、鋭意検討した結果、酸化亜鉛を主成分とする透明導電膜の表面に酸やアルカリ溶液でのエッチングによって、なだらかで均一な凹凸を形成するためには、該透明導電膜がC軸配向性に優れた結晶性の膜であることが好ましいことを見出した。
また、酸化亜鉛を主成分とする透明導電膜をC軸配向性に優れた結晶性の膜とするためには、酸化亜鉛を主成分とする透明導電膜に、AlおよびGaのうち少なくとも一方をドーパントとして含めることが好ましいことを見出した。ここで、透明導電膜のC軸配向性を高めるためには、透明導電膜において、上記のドーパントの含有量を高めることが好ましい。しかしながら、透明導電膜における上記ドーパントの含有量を高めると、透明導電膜の光線吸収が増加するので問題となる。
この点に関して、本願発明者らは、酸化亜鉛を主成分とする透明導電膜の第一層を、AlおよびGaのうち少なくとも一方のドーパント含有量の高い層として、透明導電膜のC軸配向性を高め、該第一層の上に、AlおよびGaのうち少なくとも一方のドーパント含有量の低い、酸化亜鉛を主成分とする透明導電膜の第二層を形成することにより、透明導電膜の光線吸収を増加することなしに、C軸配向性を高めることができることを見出した。
【0014】
上記の知見は、本願発明者によって初めて見出されたものであり、以下に述べるように、特許文献1〜3には記載も示唆もされていない。
【0015】
特許文献1の段落番号[0010]では、透明導電膜が2層以上の積層膜で形成されている場合には、基板に遠い層から近い層にかけてC軸配向性が連続的に又は段階的に高くなるように形成されることが好ましいとされている。これは言いかえると、基板に近い層から遠い層にかけてC軸配向性が低くなることが好ましいことになる。
しかしながら、C軸配向性に優れた結晶性の膜で、エッチングによりその表面になだらかで均一な凹凸を形成できるのは、膜の表面付近、すなわち、基板から遠い層もC軸配向性に優れるからである。
また、特許文献1の段落番号[0065]には、透明導電膜がGaまたはAlを不純物として含有するZnO膜である場合、太陽電池の光電変換効率を向上させることができると記載されているが、しかしながら、透明導電膜におけるこれらの元素の含有量を高めた場合に、透明導電膜の光線吸収が増加することは記載も示唆もされていない。
【0016】
また、特許文献1において、2層構造の透明導電膜に関する実施例11では、第一層成膜時の基板温度150℃に対し、第二層成膜時の基板温度が300℃と高くなっているが、基板を二段階で加熱する製造プロセスのため、生産性、製造コストの点で好ましくないと考えられる。
また、特許文献1では、透明導電膜の形成後、該透明導電膜表面をエッチングする前にアニールしてもよいとしているが、形成後の透明導電膜をアニールすることは、製造時間が長くなり、プロセス増加のため製造コストの点で好ましくないと考えられる。
【0017】
一方、特許文献2に記載の透明導電性酸化物層の場合、該層の表面にエッチングによって凹凸を形成することが記載も示唆もされておらず、該透明導電性酸化物層のC軸配向性についても記載も示唆もされていない。
【0018】
上述したように、特許文献3の段落番号[0021]には、透明導電膜のエッチング性に関して、多結晶部分と非結晶部分が混在しているZnO膜では、エッチングされ易い非晶質部分がエッチングによって選択的に除去されると記載されている。しかしながら、多結晶部分と非結晶部分が存在する場合は、エッチングされ易い非晶質部分とエッチングされにくい多結晶部分と、のエッチング速度の違いにより、エッチング後の凹凸の形状が急峻になる。
これに対し、C軸配向性に優れた結晶性の膜は、多結晶部分と非結晶部分が混在している膜に比べてエッチング性は低いが、エッチング性の低い方がなだらかで均一で凹凸形状を形成するのに有利である。
また、特許文献3の段落番号[0049]の実施例では高い光透過率による大きい短絡電流ISCを得るためには、第2透明導電層層の厚さは2000Å以下であることが好ましいと記載されている。すなわち、透明導電膜の光線吸収を減らすためには、第2透明導電層層の厚さを小さくする必要があるとされている。
【0019】
本発明は、上記の知見に基づいてなされたものであり、本発明は、ガラス基板上に、それぞれ、酸化亜鉛(ZnO)を主成分とし、ドーパントとしてAlおよびGaの少なくとも一方を含む第一層および第二層がこの順に形成された二層構造の透明導電膜を有し、該二層構造の透明導電膜の表面には酸またはアルカリ溶液でのエッチングにより凹凸が設けられており、前記第一層、前記第二層の形成時の基板温度をそれぞれT1、T2とするとき、230℃≦T1,T2≦300℃を満たし、
前記第一層は、Zn、AlおよびGaの総量に対するAlおよびGaの合計量の原子比として定義されるドーパント含有量が3.4〜7.0at%で、膜厚が50〜200nmであり、
前記第二層は、Zn、AlおよびGaの総量に対するAlおよびGaの合計量の原子比として定義されるドーパント含有量が0.3〜1.0at%で、膜厚が700〜1500nmであり、
前記透明導電膜について、X線回折装置で測定したZnO結晶の(002)面のピークと、(101)面のピークと、のピーク比((002)面のピーク/(101)面のピーク))が、400倍以上であることを特徴とする薄膜太陽電池用基板を提供する。
【0020】
本発明の薄膜太陽電池用基板において、前記透明導電膜表面に設けられた凹凸が0.1〜1.2μmの高さ、および、0.1〜10μmのピッチを有することが好ましい。
【0021】
また、本発明の薄膜太陽電池用基板において、前記透明導電膜のシート抵抗値が10Ω/□以下であることが好ましい。
【0022】
また、本発明の薄膜太陽電池用基板において、前記透明導電膜は、波長500nmでの光線吸収率が10%以下、波長800nmでの光線吸収率が5%以下、および、波長1000nmでの光線吸収率が10%以下であることが好ましい。
【0023】
また、本発明は、ガラス基板上に、それぞれ、酸化亜鉛(ZnO)を主成分とし、ドーパントとしてAlおよびGaの少なくとも一方を含む第一層および第二層をスパッタリング法により形成して、該第一層および第二層からなる透明導電膜を形成した後、該透明導電膜を酸またはアルカリ溶液でエッチングすることにより、該透明導電膜の表面に凹凸を設ける薄膜太陽電池用基板の製造方法であって、
前記第一層、前記第二層の形成時の基板温度をそれぞれT1、T2とするとき、230℃≦T1,T2≦300℃を満たし、
前記第一層は、Zn、AlおよびGaの総量に対するAlおよびGaの合計量の原子比として定義されるドーパント含有量が3.4〜7.0at%で、膜厚が50〜200nmであり、
前記第二層は、Zn、AlおよびGaの総量に対するAlおよびGaの合計量の原子比として定義されるドーパント含有量が0.3〜1.0at%で、膜厚が700〜1500nmであることを特徴とする薄膜太陽電池用基板の製造方法を提供する。
【0024】
また、本発明は、本発明の薄膜太陽電池用基板の前記透明導電膜上にアモルファルシリコンまたはアモルファスシリコン合金のp層、i層およびn層が形成され、該n層上に導電層が積層されてなる薄膜太陽電池を提供する。
【発明の効果】
【0025】
本発明の薄膜太陽電池用基板は、ガラス基板上に形成された透明導電膜が、C軸配向性に優れた結晶性の膜であるため、酸またはアルカリ溶液でエッチングすることによって、該透明導電膜表面になだらかで均一な凹凸を形成することができる。透明導電膜表面になだらかで均一な凹凸が形成されていることによって、波長800nm以上の長波長側での光閉じ込め効果に優れた光散乱層として機能する。これにより、光拡散効果による短絡電流密度が飛躍的に向上し、薄膜太陽電池の変換効率を向上させることができる。
また、透明導電膜表面になだらかで均一な凹凸が形成されていることによって、薄膜太陽電池製造時におけるクラックの発生を防止できる。
本発明の薄膜太陽電池用基板は、透明導電膜のシート抵抗値が10Ω/□以下と低い。また、透明導電膜の波長500nmでの光線吸収率が10%以下、波長800nmでの光線吸収率が5%以下、および、波長1000nmでの光線吸収率が10%以下と低い。これらは、薄膜太陽電池用基板の透明導電膜として好ましい特性である。
【0026】
本発明では、ドーパント含有量が3.4〜7.0at%の第一層の膜厚を50〜200nmと小さくし、ドーパント含有量が0.3〜1.0at%の第二層の膜厚を700〜1500nmと大きくすることにより、C軸結晶性が高いにもかかわらず、透明導電膜での光線吸収を低減できる。
【0027】
また、本発明では、透明導電膜の各層(第一層、第二層)形成時の基板温度が230〜300℃であるので、透明導電膜形成時の基板温度を400℃以上にする必要があった従来のテクスチャー構造を有した透明導電膜と比べて、生産性向上、製造コスト削減の点で優れている。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1は、本発明の薄膜太陽電池用基板の一構成例を示した模式図である。
【図2】図2は、図1の第二層22の表面をエッチングする前の状態を示した模式図である。
【図3】図3(a),(b)は、第二層22表面付近のエッチング前後の状態を示した模式図である。
【図4】図4(a),(b)は、例1におけるエッチング前後の透明導電膜表面のSEM画像であり、図4(a)はエッチング前、図4(b)はエッチング後の透明導電膜表面を示している。
【図5】図5(a),(b)は、例1におけるエッチング前後の透明導電膜表面のSEM画像であり、図5(a)はエッチング前、図5(b)はエッチング後の透明導電膜表面を示している。
【図6】図6は、例2におけるエッチング後の透明導電膜表面のSEM画像である。
【図7】図7は、例2におけるエッチング後の透明導電膜表面のSEM画像である。
【図8】図8(a),(b)は、例4におけるエッチング前後の透明導電膜表面のSEM画像であり、図8(a)はエッチング前、図8(b)はエッチング後の透明導電膜表面を示している。
【図9】図9(a),(b)は、例4におけるエッチング前後の透明導電膜表面のSEM画像であり、図9(a)はエッチング前、図9(b)はエッチング後の透明導電膜表面を示している。
【図10】図10(a),(b)は、例6におけるエッチング前後の透明導電膜表面のSEM画像であり、図10(a)はエッチング前、図10(b)はエッチング後の透明導電膜表面を示している。
【図11】図11(a),(b)は、例6におけるエッチング前後の透明導電膜表面のSEM画像であり、図11(a)はエッチング前、図11(b)はエッチング後の透明導電膜表面を示している。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照して本発明の薄膜太陽電池用基板を説明する。
図1は、本発明の薄膜太陽電池用基板の一構成例を示した模式図である。
図1において、ガラス基板10上には、第一層21および第二層22がこの順に形成された二層構造の透明導電膜20が設けられている。該透明導電膜20の表面(第二層22の表面)には凹凸23が設けられている。本発明の薄膜太陽電池用基板の個々の構成について、以下に説明する。
【0030】
<ガラス基板10>
本発明の薄膜太陽電池用基板では、透光性、強度および耐熱性に優れることから、透明導電膜を形成する基板としてガラス基板を用いる。ガラス基板は、必ずしも平面で板状である必要はなく、曲面でも異型状でもよい。ガラス基板としては、無色透明なソーダライムシリケートガラス、アルミノシリケートガラス、ボレートガラス、リチウムアルミノシリケートガラス、石英ガラス、ホウ珪酸ガラス基板、無アルカリガラス基板、その他の各種ガラスからなる透明ガラス板を用いることができる。
ガラス基板の厚さは0. 2〜6. 0mmであることが好ましい。この範囲であると、ガラス基板の強度が強く、透光性が高い。
透光性に関して、ガラス基板は、350〜1000nmの波長領域において高い透過率、例えば80%以上の透過率を有することが好ましい。
また、ガラス基板は、十分絶縁性で、かつ化学的、物理的耐久性が高いことが望ましい。
なお、ソーダライムシリケートガラスなどのナトリウムを含有するガラスからなるガラス基板、または低アルカリ含有ガラスからなるガラス基板の場合には、ガラスからその上面に形成される透明導電膜へのアルカリ成分の拡散を最小限にするために、酸化ケイ素膜、酸化アルミニウム膜、酸化ジルコニウム膜などのアルカリバリア層をガラス基板面に施してもよい。
また、ガラス基板の表面に、ガラス基板の表面と、その上に設けられる層との屈折率の差異を軽減するための層をさらに有していてもよい。
【0031】
ソーダライムガラス基板上に形成するアルカリバリア層は、SiO2や、SiO2とSnO2の混合酸化物膜や多層膜などであり、その膜厚は20〜100nmであることが好ましい。膜厚がこの範囲であると、ガラス基板からの透過光の反射および吸収を制御することができる。多層膜の例としては、ソーダライムガラス基板上にSnO2膜とSiO2膜を順次積層した膜が挙げられ、膜厚はそれぞれ20〜30nm、20〜40nmであることが好ましい。特に、該アルカリバリア層の膜厚は、40〜60nmであることが好ましい。
【0032】
<透明導電膜>
透明導電膜20を構成する第一層21および第二層22は、酸化亜鉛を主成分とし、ドーパントとしてAlおよびGaの少なくとも一方を含有する。以下、本明細書において、酸化亜鉛を主成分とし、ドーパントとしてAlおよびGaの少なくとも一方を含有する膜のことを、「(Al,Ga)ドープZnO膜」と言う。
透明導電膜20を構成する各層(第一層21、第二層22)として、(Al,Ga)ドープZnO膜を用いるのは、ZnOが安価な材料であり、ドーパントとしてAlおよびGaの少なくとも一方を含有することで容易に低抵抗な膜を得ることができるという理由による。
ここで、第一層21および第二層22は、ドーパントとして、AlおよびGaのうち、一方のみを含有してもよく、両方を含有してもよい。また、第一層21および第二層22は、ドーパントとして、同一の元素を含有してもよいし、異なる元素を含有してもよい。たとえば、第一層21および第二層22がいずれもドーパントとして、Al(あるいはGa)を含有してもよい。また、第一層21がドーパントとして、Al(あるいはGa)を含有するのに対して、第二層22がドーパントとして、Ga(あるいはAl)を含有してもよい。
透明導電膜20を構成する各層(第一層21、第二層22)は、ドーパント含有量および膜厚が以下に述べる点を満たす。
【0033】
第一層21は、Zn、AlおよびGaの総量に対するAlおよびGaの合計量の原子比として定義されるドーパント含有量(以下、本明細書において、同様)が、3.4〜7.0at%である。
(Al,Ga)ドープZnO膜では、ドーパント含有量が増加するほど、膜のC軸配向性が高くなる。しかしながら、ドーパント含有量が増加するにつれて、膜の光線吸収が増加する。
第一層21は、ドーパント含有量を高めに設定することで、C軸配向性が高い結晶性の膜となる。詳しくは後述するが、C軸配向性の高い第一層21を下地層として、第二層22を形成することで、第二層22のC軸配向性が向上する。
第一層21におけるドーパント含有量が3.4at%未満だと、(Al,Ga)ドープZnO膜のC軸配向性が低くなり、第一層21を下地層として形成する第二層22のC軸配向性を向上させることができない。また、第二層22のドーパント含有量にもよるが、透明導電膜20全体としてのシート抵抗値が増加するおそれがある。
一方、第一層21におけるドーパント含有量が7.0at%超だと、第一層21の光線吸収が増加し透明導電膜20全体としての光線吸収が増加するおそれがある。なお、後述するように、透明導電膜20全体としての光線吸収の観点から、第二層22のドーパント含有量にも制約がある。
また、第一層21におけるドーパント含有量が多くなると、ドーパントの偏析などにより、電気特性及び結晶性の点でも問題が起きる可能性がある。
第一層21におけるドーパント含有量は、3.4〜7.0at%であることが好ましく、4.0〜6.6at%であることがより好ましく、4.5〜5.5at%であることがさらに好ましい。
【0034】
第一層21は、膜厚が50〜200nmである。第一層21の膜厚が50nm未満だと、透明導電膜20全体としてのシート抵抗値が増加するおそれがある。
一方、第一層21の膜厚が200nm超だと、透明導電膜20全体としての光線吸収が増加するおそれがある。
第一層21の膜厚は、50〜200nmであることが好ましく、80〜150nmであることがより好ましく、90〜120nmであることがさらに好ましい。
【0035】
第二層22は、ドーパント含有量が、0.3〜1.0at%である。
ドーパント含有量が上記範囲の(Al,Ga)ドープZnO膜をガラス基板上に直接形成した場合、ドーパント含有量が低いため、膜のC軸配向性が低くなる。
しかし、本発明では、C軸配向性が高い第一層21を下地層とすることで、図2に示すように、下地層の上に形成される第二層22((Al,Ga)ドープZnO膜)のC軸配向性が向上する。図2では、第一層21および第二層22を構成する(Al,Ga)ドープZnO膜が、C軸配向性が高い結晶質の膜であることを柱状構造の膜として示している。
第二層22におけるドーパント含有量が0.3at%未満だと、C軸配向性が低くなる。詳しくは後述するが、第二層22のC軸配向性が低くなると、透明導電膜20をエッチングした際に、該透明導電膜22表面になだらかで均一な凹凸23を形成することができない。また、透明導電膜20全体としてのシート抵抗値が増加するおそれがある。
一方、第二層22におけるドーパント含有量が1.0at%超だと、透明導電膜20全体としての光線吸収が増加するおそれがある。
第二層22におけるドーパント含有量は、0.3〜1.0at%であることが好ましく、0.5〜0.9at%であることがより好ましい。
なお、第一層21におけるドーパント種はガリウム(Ga)が好ましく、第二層22におけるドーパント種はアルミニウム(Al)が好ましい。
【0036】
第二層22は、膜厚が700〜1500nmである。第二層22の膜厚が700nm未満だと、透明導電膜20全体としてのシート抵抗値が増加するおそれがある。
一方、第二層22の膜厚が1500nm超だと、透明導電膜20全体としての光線吸収が増加するおそれがある。
また、本発明の薄膜太陽電池用基板では、ドーパント含有量の高い第一層21の膜厚を小さくし、その上に形成されるドーパント含有量の低い第二層22の膜厚を大きくすることで、透明導電膜の光線吸収を増加することなしに、C軸配向性を高めるため、第二層22の膜厚は700nm以上が必須である。
第二層22の膜厚は、700〜1500nmであることが好ましく、1000〜1400nmであることがより好ましく、1100〜1300nmであることがさらに好ましい。
【0037】
第一層21および第二層22を構成する(Al,Ga)ドープZnO膜は、AlおよびGaのうち少なくとも一方と、Znと、を含む合金ターゲットや、これらの元素の酸化物を含むターゲットを用いたスパッタリング法により形成できる。
本発明では、第一層21、第二層22の形成時の基板温度をそれぞれT1、T2とするとき、230℃≦T1,T2≦300℃を満たすことで、形成される透明導電膜20がC軸配向性の高い結晶質の膜となり、かつ、シート抵抗値が低く、光線吸収の少ない膜となる。
第一層21、第二層22の形成時の基板温度が230℃未満の場合、形成される透明導電膜20がC軸配向性の高い結晶質の膜とならないおそれがある。また、透明導電膜20全体のシート抵抗値が増加するおそれがある。
一方、第一層21、第二層22の形成時の基板温度が300℃超の場合、生産性低下、製造コスト増加の問題がある。
【0038】
第一層21、第二層22の形成時において、基板温度(T1,T2)以外の条件は特に限定されないが、例えば、後述する実施例では、成膜圧力を0.4Paとし、成膜ガスはArとし、必要に応じてO2ガスを添加し、パワー密度は5W/cm2とし、成膜を行った。
【0039】
第一層21および第二層22の二層構造の透明導電膜20は、上記を満たすことで、二層構造の透明導電膜20全体がC軸配向性の高い結晶質の膜となる。(Al,Ga)ドープZnO膜により構成される透明導電膜のC軸配向性は、X線回折装置で測定したZnO結晶の(002)面のピークと、(101)面のピークと、のピーク比((002)面のピーク/(101)面のピーク))(以下、本明細書において、「ピーク比(002)/(101)」と記載する。)によって確認することができる。
本発明における透明導電膜20は、(Al,Ga)ドープZnO膜のピーク比(002)/(101)が400倍以上であり、C軸配向性がきわめて高い結晶質の膜である。
本発明における透明導電膜20は、(Al,Ga)ドープZnO膜のピーク比(002)/(101)が750倍以上であることが好ましく、900倍以上であることがより好ましい。
【0040】
本発明における透明導電膜20は、上述したようなC軸配向性の高い結晶質の膜であるため、酸またはアルカリ溶液でエッチングすることにより、その表面、すなわち、第二層22の表面になだらかで均一な凹凸23を形成することができる。図3(a),(b)は、第二層22表面付近のエッチング前後の状態を示した模式図である。図3(a)に示すように、透明導電膜の第二層22はC軸配向性が高い結晶質の膜であるため、酸またはアルカリ溶液でエッチングすることにより、図3(b)に示すように、その表面になだらかで均一な凹凸23を形成することができる。透明導電膜のC軸配向性が低いと、エッチングにより形成される凹凸が急峻な結晶エッジを有するものとなる。
エッチングに使用する酸溶液としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、フッ酸、酢酸、蟻酸等の1種又は2種以上の混合物が挙げられる。なかでも塩酸、酢酸が好ましい。また、エッチングに使用するアルカリ溶液としては、水酸化ナトリウム、アンモニア、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等の1種又は2種以上の混合物が挙げられる。なかでも水酸化ナトリウムが好ましい。これら酸溶液は、例えば0.05質量%〜5質量%程度の濃度で使用することができ、特にこれらのうち比較的弱い酸の場合には、0.1質量%〜5質量%程度の濃度であることが好ましい。アルカリ溶液は、1質量%〜10質量%程度の濃度であることが好ましい。
【0041】
透明導電膜20表面、より具体的には第二層22表面に形成される凹凸23は、可視光領域の光の波長程度の高さ、具体的には0.1〜1.2μm程度の高さを有していることが好ましく、より好ましくは、0.1〜1.0μm程度、さらに好ましくは、可視光領域の光の波長の半分程度の高さ、具体的には0.1〜0.6μm程度の高さを有している。また、凹凸23は、0.1〜10μmのピッチを有することが好ましい。
【0042】
第一層21および第二層22の二層構造の透明導電膜20は、上記を満たすことでシート抵抗値が低い。具体的には、シート抵抗値が10Ω/□以下であることが好ましく、8Ω/□以下であることがより好ましい。なお、ここでいう透明導電膜20のシート抵抗値とは、酸またはアルカリ溶液でのエッチングにより表面に凹凸を形成した後の二層構造の透明導電膜20全体のシート抵抗値である。
【0043】
第一層21および第二層22の二層構造の透明導電膜20は、上記を満たすことで光線吸収が少ない。具体的には、波長500nmでの光線吸収率が10%以下であることが好ましく、より好ましくは8%以下、さらに好ましくは7.5%以下、さらに好ましくは5.5%以下である。また、波長800nmでの光線吸収率が5%以下であることが好ましく、より好ましくは4.5%以下、さらに好ましくは4%以下である。また、波長1000nmでの光線吸収率が10%以下であることが好ましく、より好ましくは9%以下である。なお、ここでいう透明導電膜20の光線吸収率とは、酸またはアルカリ溶液でのエッチングにより表面に凹凸を形成した後の二層構造の透明導電膜20全体の光線吸収率である。
【0044】
本発明における透明導電膜20は、表面になだらかで均一な凹凸が形成されていることにより、波長800nm以上の長波長側での光閉じ込め効果に優れている。この点については、透明導電膜20のヘイズ率を測定することで確認できる。具体的には、波長500〜1000nmにおけるヘイズ率が10〜80%であることが好ましい。特に波長1000nmにおけるヘイズ率が10〜30%であることがより好ましく、波長800nmにおけるヘイズ率が20〜40%であることがさらに好ましい。
透明導電膜表面の凹凸が急峻な結晶エッジを有するものである場合は、波長800nm以上の長波長側での光閉じ込め効果が低下する。
【0045】
また、本発明における透明導電膜20は、表面になだらかで均一な凹凸が形成されていることにより、光電変換層形成時の欠陥の発生を防止できる。透明導電膜表面の凹凸が急峻な結晶エッジを有するものである場合は、光電変換層形成時に欠陥が発生するおそれがある。透明導電膜の表面になだらかな凹凸を形成することは、光電変換層形成時の欠陥の発生防止の観点からも好ましい。
【0046】
次に、本発明の薄膜太陽電池について説明する。
また、本発明は、上述した本発明の薄膜太陽電池用基板の透明導電膜上に、アモルファスシリコン又はアモルファスシリコン合金のp層、i層及びn層(以下、「p−i−n層」という。)、導電層が積層されてなる。なお、ガラス基板上に形成された透明導電膜と、p−i−n層と、の間に、金属による電極層やその他の導電層等を形成してもよい。また、p−i−n層を構成する各層の間にはシリコンによるバッファ層や中間層等を形成してもよい。さらに、p−i−n層と、導電層と、の間にも透明電極層やその他の導電層を形成してもよい。
【0047】
p−i−n層を構成する各層は、公知の方法、例えばCVD法等の方法により通常の膜厚、通常の不純物種、不純物濃度で形成することができる。上記半導体素子の具体的な構成としては、例えば、本発明の太陽電池用基板の透明導電膜上に、アモルファスシリコン又はアモルファスシリコン合金のp層、i層及びn層をこの順で形成し、さらにこの上に導電層として、透明導電層及び金属膜からなる電極層を形成したものが挙げられる。ここで、p−i−n層上に形成する透明導電層としては、ZnOのほか、SnO2 、ITO等を使用することができる。また、金属膜としては、通常電極として使用できる導電膜、例えば、金、白金、銀、銅、アルミニウム等を使用することができる。これらの膜厚は、半導体素子の使用態様に応じて適宜選択することができる。
【実施例】
【0048】
以下、実施例により本発明を詳述するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例では以下に示す手順でガラス基板上に透明導電膜が形成された太陽電池用基板を作製し、透明導電膜のシート抵抗値、ピーク比(002)/(101)、光線吸収率、ヘイズ率を評価した。また、透明導電膜表面を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察した。なお、以下に示す例1〜8のうち、例1〜3が実施例、例4〜8が比較例である。
【0049】
(例1)
ガラス基板として、SiO2膜のアルカリバリア層が付いたソーダライムガラス基板を使用した。ガラス基板上に、透明導電膜の第一層として、GaドープZnO膜(Ga含有量5at%)をDCマグネトロンスパッタリング法により形成した。
GaドープZnO膜形成時の条件は以下の通りである。
基板温度:300℃
ターゲット:Ga2O3を5.7wt%含有するZnOターゲットを使用した。
スパッタガス:Arガス(ガス圧0.4Pa)
投入パワー密度:5W/cm2
膜厚:100nm
次に、透明導電膜の第二層として、AlドープZnO膜(Al含有量0.8at%)をDCマグネトロンスパッタリング法により形成した。AlドープZnO膜形成時の条件は以下の通りである。
基板温度:300℃
ターゲット:Al2O3を0.5wt%含有するZnOターゲットを使用した。
スパッタガス:Arガス(ガス圧0.4Pa)
投入パワー密度:5W/cm2
膜厚:1200nm
【0050】
上記の手順で形成された二層構造の透明導電膜のシート抵抗値を4端子法で測定した。
また、透明導電膜に対しX線回折装置(XRD)による測定を実施し、得られたZnO結晶の(002)面と(101)面のピークから、(Al,Ga)ドープZnO膜のピーク比(002)/(101)を算出した。結果を下記表に示した。
【0051】
次いで、液温25℃の液温に保持し、200rpmの速度で攪拌した0.36質量%の塩酸水溶液に上記手順で透明導電膜を形成したガラス基板を20秒間浸漬した。その後、ガラス基板を流水に浸し、エッチング反応を停止させた。
エッチング前後に透明導電膜表面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した。結果を図4、5に示した。図4(a)および図5(a)がエッチング前、図4(b)および図5(b)がエッチング後の透明導電膜表面を示している。図4(a)および図5(a)に示すように、エッチング前の透明導電膜表面は平滑であった。図4(b)および図5(b)に示すように、エッチング後の透明導電膜表面にはなだらかで均一な凹凸が形成されていることが確認された。
また、エッチング後の透明導電膜のシート抵抗値を4端子法で測定した。結果を下記表に示す。
また、エッチング後の透明導電膜について、分光透過率ならびに反射率を測定して、波長500nm、800nmおよび1000nmでの光線吸収率を算出した。結果を下記表に示す。なお、分光透過率、反射率の測定は、分光光度計を装着して行った。
また、エッチング後の透明導電膜について、波長500nm、800nmおよび1000nmでのヘイズ率を分光光度計を用いて測定した。まず光入射面をガラス面として、正透過法で透過率を測定した。このときの各波長における透過率をTd(λ)とする。次にサンプルの膜面を積分球に密着させて、積分球透過率を測定した。このときの各波長における透過率をTt(λ)とする。以上の測定結果からヘイズ率Hz(λ)を以下の式により算出した。
Hz(λ)=(Tt(λ)−Td(λ))×100/Tt(λ)(%)
【0052】
(例2)
第一層および第二層形成時の基板温度を270℃とした以外は例1と同様の手順を実施した。なお、例2については、エッチング後の透明導電膜表面のみをSEMで観察した。結果を図6、7に示した。図6、7に示すように、エッチング後の透明導電膜表面にはなだらかで均一な凹凸が形成されていることが確認された。
【0053】
(例3)
第一層および第二層形成時の基板温度を250℃とした以外は例1と同様の手順を実施した。なお、例3については、SEMによる透明導電膜表面の観察は行わなかった。
【0054】
(例4)
例1と同様の条件で第一層を膜厚900nmとなるように形成し、第二層を形成しなかった以外は例1と同様の手順を実施した。例4については、エッチング前後に透明導電膜表面をSEMで観察した。結果を図8、9に示した。図8(a)および図9(a)がエッチング前、図8(b)および図9(b)がエッチング後の透明導電膜表面を示している。図8(a)および図9(a)に示すように、エッチング前の透明導電膜表面は平滑であった。図8(b)および図9(b)に示すように、エッチング後の透明導電膜表面にはなだらかで均一な凹凸が形成されていることが確認された。例4については、ヘイズ率の測定は実施しなかった。
【0055】
(例5)
第一層形成時の基板温度を150℃とし、膜厚900nmとなるように第一層を形成し、第二層を形成しなかった以外は例1と同様の手順を実施した。例5についてはSEMによる透明導電膜表面の観察と、ヘイズ率の測定は行わなかった。
【0056】
(例6)
例1の第二層と同様の条件で第一層としてAlドープZnO膜(Al含有量0.8at%)を形成した。但し、基板温度は400℃とし、第一層の膜厚を1200nmとした。第二層は形成しなかった。例6については、エッチング前後に透明導電膜表面をSEMで観察した。結果を図10、11に示した。図10(a)および図11(a)がエッチング前、図10(b)および図11(b)がエッチング後の透明導電膜表面を示している。図10(a)および図11(a)に示すように、エッチング前の透明導電膜表面は凹凸が存在する粗い面であった。その結果、図10(b)および図11(b)に示すように、エッチング後の透明導電膜表面には不均一でかつ、急峻な結晶エッジを有する凹凸が形成されていることが確認された。例6については、エッチング後のシート抵抗値、光線吸収率およびヘイズ率の測定は実施しなかった。
【0057】
(例7)
例1の第二層と同様の条件で第一層としてAlドープZnO膜(Al含有量3.2at%、膜厚100nm)を形成した。但し、基板温度は360℃とした。例1と同様の条件で第二層として、AlドープZnO膜(Al含有量0.8at%、膜厚1200nm)を形成した。但し、基板温度は360℃とした。例7についてはSEMによる透明導電膜表面の観察と、エッチング後のシート抵抗値、光線吸収率およびヘイズ率の測定は行わなかった。
【0058】
(例8)
第一層および第二層形成時の基板温度を200℃とした以外は例1と同様の手順を実施した。例8についてはSEMによる透明導電膜表面の観察と、(Al,Ga)ドープZnO膜の(002)/(101)ピーク比、エッチング後のシート抵抗値、光線吸収率およびヘイズ率の測定は行わなかった。
【0059】
【表1】
【0060】
【表2】
【0061】
例1〜3はいずれも、(Al,Ga)ドープZnO膜の(002)/(101)ピーク比が400倍以上であり、透明導電膜はC軸配向性がきわめて高い結晶質の膜であることが確認された。その結果、図4(b)、図5(b)、図6および図7に示すように、エッチングにより透明導電膜表面になだらかで均一な凹凸を形成することができた。ヘイズ率の測定結果は、波長800nm以上の長波長側での光閉じ込め効果に優れた光散乱層であることを示している。
また、例1〜3はいずれも、シート抵抗値が10Ω/□以下であり、波長500nmでの光線吸収率が10%以下、波長800nmでの光線吸収率が5%以下、および、波長1000nmでの光線吸収率が10%以下であった。
【0062】
第一層としてGaドープZnO膜(Ga含有量5at%)を膜厚900nmとなるように形成し、第二層を形成しなかった例4は、GaドープZnO膜の(002)/(101)ピーク比が400倍以上であり、透明導電膜はC軸配向性がきわめて高い結晶質の膜であることが確認された。その結果、図8(b)および図9(b)に示すように、エッチングにより透明導電膜表面になだらかで均一な凹凸を形成することができた。だが、波長800nm、1000nmでの光線吸収率がいずれも10%超であった。
【0063】
第一層としてGaドープZnO膜(Ga含有量5at%)を膜厚900nmとなるように基板温度150℃で形成し、第二層を形成しなかった例5は、GaドープZnO膜の(002)/(101)ピーク比が400倍未満であり、透明導電膜はC軸配向性が低い膜であることが確認された。また、波長800nm、1000nmでの光線吸収率がいずれも10%超であった。
【0064】
第一層としてAlドープZnO膜(Al含有量0.8at%)を膜厚1200nmとなるように基板温度400℃で形成し、第二層を形成しなかった例6は、AlドープZnO膜の(002)/(101)ピーク比が400倍未満であり、透明導電膜はC軸配向性が低い膜であることが確認された。その結果、図10(a)および図11(a)に示すように、エッチング前の透明導電膜表面が、凹凸が存在する粗い面となり、図10(b)および図11(b)に示すように、エッチング後の透明導電膜表面には不均一で、かつ、急峻な結晶エッジを有する凹凸が形成された。また、シート抵抗値も10Ω/□超であった。
【0065】
第一層としてAlドープZnO膜(Al含有量3.2at%)を膜厚100nmとなるように基板温度360℃で形成し、第二層としてAlドープZnO膜(Al含有量0.8at%)を膜厚1200nmとなるように基板温度360℃で形成した例7は、AlドープZnO膜の(002)/(101)ピーク比が400倍未満であり、透明導電膜はC軸配向性が低い膜であることが確認された。また、シート抵抗値も10Ω/□超であった。
【0066】
第一層としてGaドープZnO膜(Ga含有量5at%)を膜厚100nmとなるように基板温度200℃で形成し、第二層としてAlドープZnO膜(Al含有量0.8at%)を膜厚1200nmとなるように基板温度200℃で形成した例8はシート抵抗値が10Ω/□超であった。
【符号の説明】
【0067】
10:ガラス基板
20:透明導電膜
21:第一層
22:第二層
23:凹凸
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス基板上に、それぞれ、酸化亜鉛を主成分とし、ドーパントとしてAlおよびGaの少なくとも一方を含む第一層および第二層がこの順に形成された二層構造の透明導電膜を有し、該二層構造の透明導電膜の表面には酸またはアルカリ溶液でのエッチングにより凹凸が設けられており、
前記第一層、前記第二層の形成時の基板温度をそれぞれT1、T2とするとき、230℃≦T1,T2≦300℃を満たし、
前記第一層は、Zn、AlおよびGaの総量に対するAlおよびGaの合計量の原子比として定義されるドーパント含有量が3.4〜7.0at%で、膜厚が50〜200nmであり、
前記第二層は、Zn、AlおよびGaの総量に対するAlおよびGaの合計量の原子比として定義されるドーパント含有量が0.3〜1.0at%で、膜厚が700〜1500nmであり、
前記透明導電膜について、X線回折装置で測定したZnO結晶の(002)面のピークと、(101)面のピークと、のピーク比((002)面のピーク/(101)面ピーク)が400倍以上であることを特徴とする薄膜太陽電池用基板。
【請求項2】
前記透明導電膜表面に設けられた凹凸が0.1〜1.2μmの高さ、および、0.1〜10μmのピッチを有する、請求項1に記載の薄膜太陽電池用基板。
【請求項3】
前記透明導電膜のシート抵抗値が10Ω/□以下である、請求項1または2に記載の薄膜太陽電池用基板。
【請求項4】
前記透明導電膜が、波長500nmでの光線吸収率が10%以下、波長800nmでの光線吸収率が5%以下、および、波長1000nmでの光線吸収率が10%以下である、請求項1〜3のいずれかに記載の薄膜太陽電池用基板。
【請求項5】
ガラス基板上に、それぞれ、酸化亜鉛を主成分とし、ドーパントとしてAlおよびGaの少なくとも一方を含む第一層および第二層をスパッタリング法により成形して、該第一層および第二層からなる透明導電膜を形成した後、該透明導電膜を酸またはアルカリ溶液でエッチングすることにより、該透明導電膜の表面に凹凸を設ける薄膜太陽電池用基板の製造方法であって、
前記第一層、前記第二層の形成時の基板温度をそれぞれT1、T2とするとき、230℃≦T1,T2≦300℃を満たし、
前記第一層は、Zn、AlおよびGaの総量に対するAlおよびGaの合計量の原子比として定義されるドーパント含有量が3.4〜7.0at%で、膜厚が50〜200nmであり、
前記第二層は、Zn、AlおよびGaの総量に対するAlおよびGaの合計量の原子比として定義されるドーパント含有量が0.3〜1.0at%で、膜厚が700〜1500nmであることを特徴とする薄膜太陽電池用基板の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれかに記載の薄膜太陽電池用基板の前記透明導電膜上にアモルファルシリコンまたはアモルファスシリコン合金のp層、i層およびn層が形成され、該n層上に導電層が積層されてなる薄膜太陽電池。
【請求項1】
ガラス基板上に、それぞれ、酸化亜鉛を主成分とし、ドーパントとしてAlおよびGaの少なくとも一方を含む第一層および第二層がこの順に形成された二層構造の透明導電膜を有し、該二層構造の透明導電膜の表面には酸またはアルカリ溶液でのエッチングにより凹凸が設けられており、
前記第一層、前記第二層の形成時の基板温度をそれぞれT1、T2とするとき、230℃≦T1,T2≦300℃を満たし、
前記第一層は、Zn、AlおよびGaの総量に対するAlおよびGaの合計量の原子比として定義されるドーパント含有量が3.4〜7.0at%で、膜厚が50〜200nmであり、
前記第二層は、Zn、AlおよびGaの総量に対するAlおよびGaの合計量の原子比として定義されるドーパント含有量が0.3〜1.0at%で、膜厚が700〜1500nmであり、
前記透明導電膜について、X線回折装置で測定したZnO結晶の(002)面のピークと、(101)面のピークと、のピーク比((002)面のピーク/(101)面ピーク)が400倍以上であることを特徴とする薄膜太陽電池用基板。
【請求項2】
前記透明導電膜表面に設けられた凹凸が0.1〜1.2μmの高さ、および、0.1〜10μmのピッチを有する、請求項1に記載の薄膜太陽電池用基板。
【請求項3】
前記透明導電膜のシート抵抗値が10Ω/□以下である、請求項1または2に記載の薄膜太陽電池用基板。
【請求項4】
前記透明導電膜が、波長500nmでの光線吸収率が10%以下、波長800nmでの光線吸収率が5%以下、および、波長1000nmでの光線吸収率が10%以下である、請求項1〜3のいずれかに記載の薄膜太陽電池用基板。
【請求項5】
ガラス基板上に、それぞれ、酸化亜鉛を主成分とし、ドーパントとしてAlおよびGaの少なくとも一方を含む第一層および第二層をスパッタリング法により成形して、該第一層および第二層からなる透明導電膜を形成した後、該透明導電膜を酸またはアルカリ溶液でエッチングすることにより、該透明導電膜の表面に凹凸を設ける薄膜太陽電池用基板の製造方法であって、
前記第一層、前記第二層の形成時の基板温度をそれぞれT1、T2とするとき、230℃≦T1,T2≦300℃を満たし、
前記第一層は、Zn、AlおよびGaの総量に対するAlおよびGaの合計量の原子比として定義されるドーパント含有量が3.4〜7.0at%で、膜厚が50〜200nmであり、
前記第二層は、Zn、AlおよびGaの総量に対するAlおよびGaの合計量の原子比として定義されるドーパント含有量が0.3〜1.0at%で、膜厚が700〜1500nmであることを特徴とする薄膜太陽電池用基板の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれかに記載の薄膜太陽電池用基板の前記透明導電膜上にアモルファルシリコンまたはアモルファスシリコン合金のp層、i層およびn層が形成され、該n層上に導電層が積層されてなる薄膜太陽電池。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−244029(P2012−244029A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−114431(P2011−114431)
【出願日】平成23年5月23日(2011.5.23)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月23日(2011.5.23)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】
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