説明

薄膜磁気ヘッドの製造方法および薄膜磁気ヘッド並びにヘッドジンバルアセンブリおよびハードディスク装置

【課題】垂直磁気記録方式で磁気記録動作を行う薄膜磁気ヘッドの製造方法およびその薄膜磁気ヘッド並びにHGAおよびHDDにおいて、多重シールド層に起因したATEやWATEを改善する。
【解決手段】薄膜磁気ヘッド300の製造方法は下部シールド層40を形成する下部シールド層形成工程を有している。この工程は、ABS30に沿った予定ラインを含む下部シールド予定領域にリーディングシールド部47を形成する工程と、予定ラインを含む下部除外ゾーンを除いた下部形成ゾーン上に配置される部分配置構造を備えた部分下部シード層を形成する工程と、部分下部シード層上にサイドシールド部を形成する工程とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、垂直磁気記録方式で磁気記録動作を行う薄膜磁気ヘッドの製造方法およびその薄膜磁気ヘッド並びにヘッドジンバルアセンブリおよびハードディスク装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ハードディスク装置は、大容量の記録容量を備え、ストレージ装置の中心として広く用いられている。ハードディスク装置は、薄膜磁気ヘッドによってハードディスク(記録媒体)に対するデータの記録再生を行う。
【0003】
薄膜磁気ヘッドは、記録方式により大別すると、長手磁気記録方式と垂直磁気記録方式とに分けることができる。長手磁気記録方式はハードディスク(記録媒体)の記録面内(長手)方向にデータを記録する方式であり、垂直磁気記録方式はハードディスクに形成する記録磁化の向きを記録面の垂直方向に形成してデータを記録する方式である。このうち、垂直磁気記録方式の薄膜磁気ヘッドは長手磁気記録方式に比べて格段に高い記録密度を実現できる上に、記録済のハードディスクが熱揺らぎの影響を受けにくいので、長手磁気記録方式よりも有望視されている。
【0004】
ところで、従来、垂直磁気記録方式の磁気ヘッド(perpendicular
magnetic recording head:以下「PMR」ともいう)は、磁極層と薄膜コイルとを有し、磁極層に薄膜コイルを巻き回した電磁石の構造を有している。
従来のPMRは、例えば記録媒体に対向する媒体対向面の側に磁極端面を有する主磁極層と、主磁極層の内部を通る磁界を発生する薄膜コイルと、連結部を介して主磁極層に連結されているリターン磁極層とを有している。
【0005】
一方、従来、主磁極層の近くにシールド層が形成されているPMRが知られていた。例えば、特許文献1には、主磁極層のリーディング側にシールド層が形成されたPMRが開示されている。このPMRでは、主磁極層の磁極端部とともに、シールド層の端面が媒体対向面内に配置されている。また、特許文献2には主磁極層のトレーリング側にシールド層が形成されたPMRが開示されている。このPMRも、主磁極層の磁極端部とともに、シールド層の端面が媒体対向面内に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−157303号公報
【特許文献2】特開2008−97826号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述した従来のPMRでは、主磁極層の近くに形成されているシールド層によって、磁極端面から放出された磁束が記録媒体上の記録対象となる領域とは別の領域に到達しないようにすることができる。そのため、前述した従来のPMRでは、記録対象となる領域とは別の領域に対する誤ったデータの記録や記録されているデータの消去といった不具合を低減することができる。
【0008】
しかし、前述した従来のPMRでは、シールド層が複数のシールド部を重ねた構造(このようなシールド層を多重シールド層ともいう)を有し、かかるシールド層が媒体対向面内において主磁極層の近くに形成されていたため、次のような課題が解決されていなかった。
【0009】
すなわち、多重シールド層を形成するときは、例えば、めっき法によって第1のシールド部を形成した後、その第1のシールド部に重なるように第2のシールド部をめっき法によって形成する。そして、第2のシールド部を形成するときは第2のシールド部の下地となるシード層を第1のシールド部上に形成し、そのシード層上にめっき膜を成長させて第2のシールド部を形成する。
【0010】
そして、第1のシールド部および第2のシールド部を形成するときは主に電解めっきが採用される。この場合、基板をめっき液中に浸漬し、そのめっき液中に電流を流すことによって、磁性材のめっき膜を基板上に成長させ、そのめっき膜によって第1のシールド部および第2のシールド部を形成する。
【0011】
これに対し、シード層はスパッタリング等により、溶液を用いないドライ環境下で形成される。そのため、第1のシールド部および第2のシールド部と、シード層とはそれぞれ同じ磁性材を用いて形成されていても、結晶の方向が異なっている。
【0012】
一般に、磁性材の磁気特性は結晶の方向によって異なり、透過しやすい磁束の方向が結晶の方向によって異なっている。そのため、媒体対向面において、第1のシールド部と第2のシールド部との間に、その両者とは磁気特性の異なるシード層が存在していると、磁極端面から放出された磁束の成分が吸収され難くなることがあった。
【0013】
つまり、記録磁界に応じた磁束が磁極端面から放出された後、その磁束のうちのトラック幅方向等に広がる成分が第1のシールド部または第2のシールド部によって吸収されずに残りやすくなることがあった。そうすると、その残った磁束によって、データを記録するトラックに隣接するトラックや、データを記録するトラックから数μm〜数十μm程度離れた位置にあるトラックに記録されているデータが消去される現象が生じやすくなる(これらの現象は隣接トラック消去(ATE)、広域トラック消去(WATE)ともいう)。
【0014】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、垂直磁気記録方式で磁気記録動作を行う薄膜磁気ヘッドの製造方法およびその薄膜磁気ヘッド並びにヘッドジンバルアセンブリおよびハードディスク装置において、多重シールド層に起因したATEやWATEを改善することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するため、本発明は記録媒体に対向する媒体対向面の側に磁極端面を有する主磁極層と、媒体対向面内に配置されたシールド端面をそれぞれ有し、かつ主磁極層を挟むように配置されている下部シールド層および上部シールド層と、主磁極層、下部シールド層または上部シールド層のいずれかの周りに巻回された薄膜コイルとが基板上に積層された構成を有する薄膜磁気ヘッドの製造方法であって、下部シールド層を形成する下部シールド層形成工程が、以下の(1)から(3)までの各工程を有する薄膜磁気ヘッドの製造方法を提供する。
(1)基板上の、媒体対向面が後に形成される媒体対向面に沿った予定ラインを含む下部シールド予定領域に、下部シールド層を構成する第1の下部シールド部を形成する第1の下部シールド部形成工程
(2)下部シールド層を構成する第2の下部シールド部を形成するための下部シード層を第1の下部シールド部上に形成するときに、予定ラインを含む下部除外ゾーンを除いた下部形成ゾーン上に配置される部分配置構造を備えた部分下部シード層を形成する下部シード層形成工程
(3)部分下部シード層上に第2の下部シールド部を形成する第2の下部シールド部形成工程
【0016】
上記製造方法によると、第2の下部シールド部を形成するときの下地となる部分下部シード層が部分配置構造を備えているから、部分下部シード層は予定ライン上には配置されない。そのため、予定ラインに沿って媒体対向面を形成すると媒体対向面に部分下部シード層が出現しないようにすることができる。
【0017】
上記薄膜磁気ヘッドの製造方法では、上部シールド層を形成する上部シールド層形成工程が以下の(4)から(5)までの各工程を有し、第1の上部シールド部形成工程において、第1の上部シールド部を部分上部シード層上に形成することが好ましい。
(4)上部シールド層を構成する第1の上部シールド部を形成するための上部シード層を主磁極層上に形成するときに、予定ラインを含む上部除外ゾーンを除いた上部形成ゾーン上に配置される部分配置構造を備えた部分上部シード層を形成する上部シード層形成工程
(5)第1の上部シールド部を形成する第1の上部シールド部形成工程
【0018】
上記製造方法によると、第1の上部シールド部を形成するときの下地となる部分上部シード層が部分配置構造を備えているから、部分上部シード層も予定ライン上には配置されない。そのため、部分上部シード層も媒体対向面に出現しないようにすることができる。
【0019】
また、上記薄膜磁気ヘッドの製造方法では、下部シード層形成工程が以下の(6)から(7)までの各工程を有することが好ましい。
(6)部分下部シード層を形成するときに、基板を含む積層体の上面の下部除外ゾーンおよび下部形成ゾーン上に配置されるワイド下部シード層を形成するワイド下部シード層形成工程
(7)ワイド下部シード層のうちの下部除外ゾーン上に形成された被除外下部シード層を除去する下部シード層除去工程
【0020】
上記製造方法によると、積層体の上面にワイド下部シード層を形成し、その後、被除外下部シード層を除去することによって、部分下部シード層が形成される。
【0021】
さらに、上記薄膜磁気ヘッドの製造方法では、上部シード層形成工程が以下の(8)から(9)までの各工程を有することが好ましい。
(8)部分上部シード層を形成するときに、基板を含む積層体の上面の上部除外ゾーンおよび上部形成ゾーン上に配置されるワイド上部シード層を形成するワイド上部シード層形成工程
(9)ワイド上部シード層のうちの上部除外ゾーン上に形成された被除外上部シード層を除去する上部シード層除去工程
【0022】
上記製造方法によると、積層体の上面にワイド上部シード層を形成し、その後、被除外上部シード層を除去することによって、部分上部シード層が形成される。
【0023】
さらに、上記薄膜磁気ヘッドの製造方法では、下部シード層形成工程において、下部除外ゾーンを予定ライン全体を含む媒体対向面に沿った帯状の領域に設定することが好ましい。
【0024】
この製造方法によると、予定ライン上のすべての部分に部分下部シード層が配置されなくなるため、媒体対向面に部分下部シード層が一切出現しないようにすることができる。
【0025】
また、上記薄膜磁気ヘッドの製造方法では、上部シード層形成工程において、上部除外ゾーンを予定ライン全体を含む媒体対向面に沿った帯状の領域に設定することが好ましい。
【0026】
この製造方法によると、予定ライン上のすべての部分に部分上部シード層が配置されなくなるため、媒体対向面に部分上部シード層が一切出現しないようにすることができる。
【0027】
さらに、上記薄膜磁気ヘッドの製造方法では、基板上の、薄膜コイルが形成される位置に向かって媒体対向面から離れる方向を奥行き方向としたときに、下部シード層形成工程において、下部除外ゾーンを予定ラインよりも外側から奥行き方向に沿って確保することが好ましい。
【0028】
また、上記薄膜磁気ヘッドの製造方法では、基板上の、薄膜コイルが形成される位置に向かって媒体対向面から離れる方向を奥行き方向としたときに、上部シード層形成工程において、上部除外ゾーンを予定ラインよりも外側から奥行き方向に沿って確保することが好ましい。
【0029】
さらに、上記薄膜磁気ヘッドの製造方法の場合、上部シールド層を形成する上部シールド層形成工程が、以下の(10)から(13)までの各工程を有することが好ましい。
(10)上部シールド層を構成する第1の上部シールド部を形成する第1の上部シールド部形成工程
(11)薄膜コイルを構成する導体層の媒体対向面側に、上部シールド層を構成する第2の上部シールド部を第1の上部シールド部に接続され、かつ媒体対向面内に配置されるように形成する第2の上部シールド部形成工程
(12)上部シールド層を構成する連結シールド部を第2の上部シールド部に接続され、かつ薄膜コイルを跨ぎ、さらに媒体対向面から離れるように媒体対向面から後退させて形成する連結シールド部形成工程
(13)第2の上部シールド部の連結シールド部によって被覆されていない媒体対向面側の一部分を切除するトリミング工程
【0030】
上記製造方法の場合、トリミング工程は、連結シールド部形成工程によって形成された連結シールド部をマスクに用いて、第2の上部シールド部の連結シールド部によって被覆されていない媒体対向面側の一部分を切除することが好ましい。
【0031】
そして、本発明は、記録媒体に対向する媒体対向面の側に磁極端面を有する主磁極層と、媒体対向面内に配置されたシールド端面をそれぞれ有し、かつ主磁極層を挟むように配置されている下部シールド層および上部シールド層と、主磁極層、下部シールド層または上部シールド層のいずれかの周りに巻回された薄膜コイルとが基板上に積層された構成を有する薄膜磁気ヘッドであって、下部シールド層を構成する第1の下部シールド部と、下部シールド層を構成し、かつ第1の下部シールド部上に形成されている第2の下部シールド部と、第2の下部シールド部をめっきにより形成するための下部シード層とを有し、その下部シード層が、媒体対向面から後退している下部形成ゾーン上だけに配置される部分配置構造を備えた部分下部シード層として形成されている薄膜磁気ヘッドを提供する。
【0032】
また、上記薄膜磁気ヘッドの場合、上部シールド層を構成し、かつ主磁極層上に形成されている第1の上部シールド部と、主磁極層と第1の上部シールド部の間に配置され、第1の上部シールド部をめっきにより形成するための上部シード層とを更に有し、その上部シード層が、媒体対向面から後退している上部形成ゾーン上だけに配置される部分配置構造を備えた部分上部シード層として形成されていることが好ましい。
【0033】
さらに、上記薄膜磁気ヘッドの場合、第1の下部シールド部と第2の下部シールド部との間に下部シード層の存在しない下部不存在ゾーンが形成され、部分下部シード層の端面が媒体対向面に出現することなく下部不存在ゾーンに出現していることが好ましい。
【0034】
主磁極層と第1の上部シールド部との間に上部シード層の存在しない上部不存在ゾーンが形成され、部分上部シード層の端面が媒体対向面に出現することなく上部不存在ゾーンに出現しているようにすることができる。
【0035】
また、上記薄膜磁気ヘッドの場合、下部不存在ゾーンが媒体対向面から下部形成ゾーンまでの間の媒体対向面に沿った媒体対向面の幅方向全体にわたる帯状の領域に設定されていることが好ましい。
【0036】
上部不存在ゾーンが媒体対向面から上部形成ゾーンまでの間の媒体対向面に沿った媒体対向面の幅方向全体にわたる帯状の領域に設定されているようにすることができる。
【0037】
そして、本発明は、基台上に形成された薄膜磁気ヘッドと、基台を固定するジンバルとを備え、薄膜磁気ヘッドは、記録媒体に対向する媒体対向面の側に磁極端面を有する主磁極層と、媒体対向面内に配置されたシールド端面をそれぞれ有し、かつ主磁極層を挟むように配置されている下部シールド層および上部シールド層と、主磁極層、下部シールド層または上部シールド層のいずれかの周りに巻回された薄膜コイルとが基板上に積層された構成を有し、下部シールド層を構成する第1の下部シールド部と、下部シールド層を構成し、かつ第1の下部シールド部上に形成されている第2の下部シールド部と、第2の下部シールド部をめっきにより形成するための下部シード層とを有し、その下部シード層が、媒体対向面から後退している下部形成ゾーン上だけに配置される部分配置構造を備えた部分下部シード層として形成されているヘッドジンバルアセンブリを提供する。
【0038】
また、本発明は、薄膜磁気ヘッドを有するヘッドジンバルアセンブリと、薄膜磁気ヘッドに対向する記録媒体とを備え、薄膜磁気ヘッドは、記録媒体に対向する媒体対向面の側に磁極端面を有する主磁極層と、媒体対向面内に配置されたシールド端面をそれぞれ有し、かつ主磁極層を挟むように配置されている下部シールド層および上部シールド層と、主磁極層、下部シールド層または上部シールド層のいずれかの周りに巻回された薄膜コイルとが基板上に積層された構成を有し、下部シールド層を構成する第1の下部シールド部と、下部シールド層を構成し、かつ第1の下部シールド部上に形成されている第2の下部シールド部と、第2の下部シールド部をめっきにより形成するための下部シード層とを有し、その下部シード層が、媒体対向面から後退している下部形成ゾーン上だけに配置される部分配置構造を備えた部分下部シード層として形成されているハードディスク装置を提供する。
【発明の効果】
【0039】
以上詳述したように、本発明によれば、垂直磁気記録方式で磁気記録動作を行う薄膜磁気ヘッドの製造方法およびその薄膜磁気ヘッド並びにヘッドジンバルアセンブリおよびハードディスク装置において、多重シールド層に起因したATEやWATEを改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドのエアベアリング面と交差する方向に沿った図2の1-1線断面図である。
【図2】薄膜磁気ヘッドのABSを示す正面図である。
【図3】下部薄膜コイルを示す平面図である。
【図4】上部薄膜コイルを示す平面図である。
【図5】下部薄膜コイルの要部を示す平面図である。
【図6】対向シールド部、上部前側シールド部および連結シールド部の要部を示す斜視図である。
【図7】トリム前シールド部と上部前側シールド部とを示す側面図である。
【図8】上部前側シールド部の変形例を示し、(a)は横平坦部を有しない場合、(b)は縦平坦部を有しない場合の側面図である。
【図9】図1の要部を示す断面図である。
【図10】図1に示した薄膜磁気ヘッドの製造工程を示し、(a)は図1に対応した断面図、(b)は図2に対応した正面図である。
【図11】図10の後続の工程を示し、(a)は図1に対応した断面図、(b)は図2に対応した正面図である。
【図12】図11の後続の工程を示し、(a)は図1に対応した断面図、(b)は図2に対応した正面図である。
【図13】図12の後続の工程を示し、(a)は図1に対応した断面図、(b)は図2に対応した正面図である。
【図14】図13の後続の工程を示し、(a)は図1に対応した断面図、(b)は図2に対応した正面図である。
【図15】第1の実施の形態に係る薄膜磁気ヘッド300の製造工程における積層体の要部を示す平面図である。
【図16】図15の後続の工程における積層体の要部を示す平面図である。
【図17】図16の後続の工程における積層体の要部を示す平面図である。
【図18】図17の後続の工程における積層体の要部を示す平面図である。
【図19】図18の後続の工程における積層体の要部を示す平面図である。
【図20】図19の後続の工程における積層体の要部を示す平面図である。
【図21】(a)は図16の21a−21a線断面図、(b)は図17の21b−21b線断面図である。
【図22】(a)は図18の22a−22a線断面図、(b)は図19の22b−22b線断面図である。
【図23】(a)は、第1の実施の形態に係る薄膜磁気ヘッド300の製造工程において、積層体を予定ラインに沿って切断したときの要部を示す断面図、(b)は、図23(a)の後続の工程において、積層体を予定ラインに沿って切断したときの要部を示す断面図である。
【図24】(a)は、図23(b)の後続の工程において、積層体を予定ラインに沿って切断したときの要部を示す断面図、(b)は、図24(a)の後続の工程において、積層体を予定ラインに沿って切断したときの要部を示す断面図である。
【図25】(a)は、図24(b)の後続の工程において、積層体を予定ラインに沿って切断したときの要部を示す断面図、(b)は、図25(a)の後続の工程において、積層体を予定ラインに沿って切断したときの要部を示す断面図である。
【図26】図14の後続の工程を示し、(a)は図1に対応した断面図、(b)は図2に対応した正面図である。
【図27】図25(b)の後続の工程において、積層体を予定ラインに沿って切断したときの要部を示す断面図である。
【図28】図26の後続の工程を示し、(a)は図1に対応した断面図、(b)は図2に対応した正面図である。
【図29】第1の実施の形態に係る薄膜磁気ヘッド300の製造工程における積層体の要部を示す平面図である。
【図30】図27の後続の工程において、積層体を予定ラインに沿って切断したときの要部を示す断面図である。
【図31】図30の後続の工程において、積層体を予定ラインに沿って切断したときの要部を示す断面図である。
【図32】図28の後続の工程を示し、(a)は図1に対応した断面図、(b)は図2に対応した正面図である。
【図33】図32の後続の工程を示し、(a)は図1に対応した断面図、(b)は図2に対応した正面図である。
【図34】図33の後続の工程を示し、(a)は図1に対応した断面図、(b)は図2に対応した正面図である。
【図35】図34の後続の工程を示し、(a)は図1に対応した断面図、(b)は図2に対応した正面図である。
【図36】図35の後続の工程を示し、(a)は図1に対応した断面図、(b)は図2に対応した正面図である。
【図37】図36の後続の工程を示し、(a)は図1に対応した断面図、(b)は図2に対応した正面図である。
【図38】第2の実施の形態に係る薄膜磁気ヘッド300の製造工程における積層体の要部を示す平面図である。
【図39】図38の後続の工程における積層体の要部を示す平面図である。
【図40】第2の実施の形態に係る薄膜磁気ヘッド300の製造工程において、積層体を予定ラインに沿って切断したときの要部を示す断面図である。
【図41】(a)は本発明の実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドを備えたハードディスク装置を示す斜視図、(b)はHGAの裏面側を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、同一要素には同一符号を用い、重複する説明は省略する。
第1の実施の形態
(薄膜磁気ヘッドの構造)
まず、図1〜図9を参照して本発明の第1の実施の形態に係る垂直磁気記録方式の薄膜磁気ヘッドの構造について説明する。ここで、図1は本発明の第1の実施の形態に係る薄膜磁気ヘッド300のエアベアリング面(以下「ABS」という)と交差する方向に沿った図2の1-1線断面図、図2は薄膜磁気ヘッド300のABS30を示す正面図である。図3は下部薄膜コイル11を示す平面図、図4は上部薄膜コイル51を示す平面図である。図5は下部薄膜コイル11の要部を示す平面図である。図6は対向シールド部61、上部前側シールド部62および連結シールド部63の要部を示す斜視図である。図7は、トリム前シールド部62Aと上部前側シールド部62とを示す側面図である。図8は、上部前側シールド部62の変形例を示し、(a)は横平坦部を有しない場合、(b)は縦平坦部を有しない場合の側面図である。図9は図1の要部を示す断面図である。
【0042】
薄膜磁気ヘッド300は、基板1と、基板1に積層された再生ヘッドおよび記録ヘッドを有し、記録媒体に対向する媒体対向面としてのABS30を有している。なお、以下では、薄膜磁気ヘッド300の主要部の構造について説明し、主要部以外の部分の構造は後述する製造工程の中で説明する。
【0043】
再生ヘッドは、ABS30の近傍に配置された磁気的信号検出用のMR素子5を有している。また、再生ヘッドは、基板1上に形成されている絶縁層2と、磁性材料からなる下部シールド層3と、MR素子5をシールドしているシールドギャップ膜4とを有している。さらに、再生ヘッドは、シールドギャップ膜4の上に形成されている磁性材料からなる上部シールド層6と、上部シールド層6の上に形成されている絶縁層7とを有している。再生ヘッドは、記録ヘッドよりも基板1に近い位置に配置されている。
【0044】
MR素子5は、AMR(異方性磁気抵抗効果)素子、GMR(巨大磁気抵抗効果)素子、TMR(トンネル磁気抵抗効果)素子などの磁気抵抗効果を示す感磁膜によって構成されている。
【0045】
上部シールド層6は中間に絶縁部6bを有している。また、絶縁部6bよりも下側に第1のシールド部6aが形成され、上側に第2のシールド部6cが形成されている。
【0046】
薄膜磁気ヘッド300では、加熱部8が絶縁層2に形成されている。加熱部8はDFH(Disk
flying heater)とも呼ばれ、電流が流されることによって発熱し、その熱を上部シールド層6などに伝達させる機能を有している。また、感熱部9が絶縁層7に形成されている。感熱部9はHDI(Head Disk Interlayer)センサとも呼ばれる。感熱部9は上部シールド層6付近の熱(温度)を感知し、その感知した熱に応じて抵抗値が変化する素子を用いて形成されている。
【0047】
そして、薄膜磁気ヘッド300では、加熱部8によって上部シールド層6や下部シールド層3を加熱する。上部シールド層6や下部シールド層3は加熱部8から受けた熱によって体積が膨張する。その結果、上部シールド層6や下部シールド層3が図1には図示しない記録媒体に接触したとすると、上部シールド層6や下部シールド層3のABS30付近が摩擦によって熱を帯びる。薄膜磁気ヘッド300ではこの摩擦熱に伴う感熱部9の抵抗値の変化を検出することによって、上部シールド層6や下部シールド層3が記録媒体に接触したかどうかの判定が行われる。また、その判定結果に応じて加熱部8に流れる電流値を制御しながらフライングハイトを制御している。
【0048】
記録ヘッドは、下部薄膜コイル11と、主磁極層26と、ギャップ層29と、下部シールド層40と、上部薄膜コイル51と、ライトシールド層60と、上部ヨーク層65、変位抑制層85および保護絶縁層90を有し、これらが基板1上に積層された構成を有している。
【0049】
薄膜磁気ヘッド300では、下部薄膜コイル11と上部薄膜コイル51とによって一連の薄膜コイルが形成されている。下部薄膜コイル11は、この一連の薄膜コイルのうちの主磁極層26と基板1との間に配置されている部分に対応している。
【0050】
図3に示すように下部薄膜コイル11は3つのターン部11b、11d、11fを有している。ターン部11b、11d、11fは後述する接続シールド部41と第1の後側シールド部44との間に配置されている。下部薄膜コイル11はターン部11b、11d、11fがフォトレジスト層15を介して並んだ構造を有している。ターン部11b、11d、11fのうち、ターン部11bがABS30に最も近い位置に配置されているので、ターン部11bが前側ターン部に対応している。ターン部11fが後側ターン部に対応している。
【0051】
そして、下部薄膜コイル11は、リード部13Aからターン部11bにつながるループ部11aと、ターン部11bからターン部11dにつながるワンループ部11cと、ターン部11dからターン部11fにつながるワンループ部11eと、ターン部11fから接続部11hまでのハーフループ部11gを有している。
【0052】
下部薄膜コイル11はリード部13Aから接続部11hまでが一本につながることによって下部シールド層40の回りに平面渦巻き状に巻回され、全体で3ターンループを形成している。なお、図示の都合上、図1では、下部薄膜コイル11について、ターン部11b、11d、11f、接続部11hのみが示されている。ターン部11b、11d、11fは横幅よりも厚さ(ABS30に沿った方向(上下方向)の高さ)の大きい縦長の構造を有している。なお、本実施の形態において、横幅とはABS30と交差する方向(交差方向)の幅を意味している。
【0053】
また、下部薄膜コイル11は、図5に示すように、ワンループ部11cがABS30に接近するにしたがい漸次幅が狭まり、ABS30に最も近い箇所で最も幅が狭まる可変幅構造を有している。すなわち、図5に示すようにして、ワンループ部11cの幅をWd1、Wd2、Wd0を定めたときにWd1>Wd2>Wd0となっている。そして、ワンループ部11cのうちの最も幅の狭い部分がターン部11dとなっている。ループ部11aおよびワンループ部11eもワンループ部11cと同様の可変幅構造を有し、最も幅の狭い部分がそれぞれターン部11b、11fとなっている。ここで、ターン部11b、11d、11fの幅はそれぞれWb0(約0.9μm)、Wd0(約0.9μm)、Wf0(約0.9μm)である。
【0054】
そして、下部薄膜コイル11は、次のような一連の3ターンループを形成している。すなわち、リード部13Aから、ループ部11a、ワンループ部11c、ワンループ部11e、ハーフループ部11gを通って接続部11hにつながることによって、3ターンループが形成されている。
【0055】
なお、図5において、ターン部11bの前側面11bfからABS30までの距離は、下部薄膜コイル11の前側距離を示している。また、ターン部11fの後側面11frからABS30までの距離は、下部薄膜コイル11の後側距離を示している。
【0056】
次に、上部薄膜コイル51について説明する。図4に示すように、上部薄膜コイル51は3つのターン部51g、51e、51cを有している。ターン部51g、51e、51cは、後述する上部前側シールド部62と、後側シールド部64との間に配置されている。上部薄膜コイル51はターン部51g、51e、51cがフォトレジスト層55を介して並んだ構造を有している。ターン部51g、51e、51cのうち、ターン部51gがABS30に最も近い位置に配置されているので、ターン部51gが前側ターン部に対応している。ターン部51cが後側ターン部に対応している。
【0057】
そして、上部薄膜コイル51は、接続部51aからターン部51cにつながるループ部51bと、ターン部51cからターン部51eにつながるワンループ部51dと、ターン部51eからターン部51gにつながるワンループ部51fと、ターン部51gからリード部14Aまでのハーフループ部51hを有している。
【0058】
上部薄膜コイル51は接続部51aからリード部14Aまでが一本につながることによってライトシールド層60の回りに平面渦巻き状に巻回され、全体で3ターンループを形成している。なお、図示の都合上、図1では、上部薄膜コイル51について、ターン部51g、51e、51c、接続部51aのみが示されている。ターン部51g、51e、51cはターン部11b、11d、11fと同様に縦長の構造および可変幅構造を有している。そして、ワンループ部51f、ワンループ部51d、ループ部51bのうち、最も幅の狭い部分がそれぞれターン部51g、51e、51cとなっている。
【0059】
そして、上部薄膜コイル51は、次のような一連の3ターンループを形成している。すなわち、接続部51aから、ループ部51b、ワンループ部51d、ワンループ部51f、ハーフループ部51hを通ってリード部14Aにつながることにより、3ターンループが形成されている。
【0060】
また、図1に示したように、上部薄膜コイル51は上端面51Aを有している。上端面51Aは基板1から最も離れた位置に配置されている。この上端面51Aは後述するシールド上端面62fと段差なく形成され、シールド上端面62fとともに共通平坦面59(図35参照)を形成している。さらに、上部薄膜コイル51は層間絶縁膜32だけを介して後述する上部ヨーク層65の上面に接続されている。上部薄膜コイル51は磁性材からなる磁性層を介することなく上部ヨーク層65に接続されている。
【0061】
薄膜磁気ヘッド300では、下部薄膜コイル11の接続部11hが上部薄膜コイル51の接続部51aに接続されている。これにより、下部薄膜コイル11と上部薄膜コイル51とは一連のコイルを形成している。下部薄膜コイル11と上部薄膜コイル51とには、記録媒体に記録されるデータに応じた電流が流され、その電流によって記録磁界が発生する。
【0062】
次に、主磁極層26について説明する。主磁極層26は、NiFe、CoNiFe、CoFe等の強磁性体からなる磁性材を用いて形成されている。NiFe、CoNiFe、CoFe等の強磁性体は透磁率(magnetic permeability)が高い。したがって、主磁極層26は、磁束が透過しやすく、より多くの磁束が通る。そのため、記録磁界に応じたより強い磁束が主磁極層26からABS30に向かって放出される。
【0063】
主磁極層26は、図2、図9に示すように、ABS30側に磁極端面26aを有している。磁極端面26aは下部薄膜コイル11側よりも上部薄膜コイル51側の幅が広く、その幅が下部薄膜コイル11に近づくにつれて漸次狭まるベベル形状に形成されている。磁極端面26aの上部薄膜コイル51側の幅がトラック幅を規定している。トラック幅は例えば0.06〜0.12μm程度である。磁極端面26aはABS30内に配置されている。
【0064】
主磁極層26は磁極端面26aを有するトラック幅規定部と、幅広部と、拡幅部とを有している。トラック幅規定部はABS30からの距離に応じて変化しない一定の幅を有している。また、幅広部はトラック幅規定部よりもABS30から離れた位置に配置され、トラック幅規定部よりも幅広に形成されている。また、幅広部はトラック幅規定部との境界部分でトラック幅規定部と同じ大きさの幅を有するとともに、その幅がABS30から離れるにしたがい漸次広がっている。拡幅部は幅広部よりも大きい一定の幅を有している。本実施の形態では、磁極端面26aから、幅が大きくなり始めるまでの部分をトラック幅規定部としている。
【0065】
また、図9に示すように、主磁極層26では、トラック幅規定部に、上傾斜面26cと、下傾斜面26eとが形成されている。
【0066】
上傾斜面26cはABS30から離れるにしたがい基板1から離れるような上り傾斜状に形成されている。上傾斜面26cは磁極端面26aと、上端面26dとに接続されている。
【0067】
下傾斜面26eはABS30から離れるにしたがい基板1に近づくような下り傾斜状に形成されている。下傾斜面26eは磁極端面26aと、幅広部の下端面26fとに接続されている。下傾斜面26eは,トラック幅規定部から幅広部まで形成されている。下端面26fは主磁極層26の中で基板1に最も近い位置に配置されている。
【0068】
また、図1にも示すように、主磁極層26には、上端面26d上の、後述する対向シールド部61と上部ヨーク層65との間の部分に非磁性層27,28が積層されている。
【0069】
なお、前述のトラック幅規定部におけるABS30からの長さをネックハイトという。ネックハイトは例えば0.05〜0.3μm程度である。
【0070】
ギャップ層29は主磁極層26の上傾斜面26cおよび上端面26dに沿って、対向シールド部61および絶縁層31と、主磁極層26および非磁性層27,28との間に形成されている。ギャップ層29は、上傾斜面26cおよび上端面26dを被覆するようにして形成されている。ギャップ層29は、アルミナ(Al)等の非磁性の絶縁材やRu,NiCu、Ta等の非磁性導電材料を用いて形成されている。
【0071】
次に、下部シールド層40とライトシールド層60とについて説明する。図1、図9に示すように、下部シールド層40と、ライトシールド層60とは、主磁極層26を挟むように配置されている。
【0072】
そして、下部シールド層40は主磁極層26の基板1側に配置されている。この下部シールド層40は、図2にも示すように、ABS30に配置されているリーディングシールド部47およびサイドシールド部47Aを有し、その2つのシールド部が重なった多重シールド層である。
【0073】
また、下部シールド層40は、リーディングシールド部47とサイドシールド部47Aとに加え、接続シールド部41と、下部前側シールド部42と、連結シールド部43と、第1の後側シールド部44と、第2の後側シールド部45と、第3の後側シールド部46と、部分下部シード層91とを有している。下部シールド層40は、NiFe、CoNiFe、CoFe等の強磁性体からなる磁性材を用いて形成されている。
【0074】
接続シールド部41と、下部前側シールド部42とは、下部薄膜コイル11よりもABS30側に配置されている。また、接続シールド部41の上に下部前側シールド部42の一部分が重なっている。接続シールド部41はABS30から離れた位置に形成されている。しかし、下部前側シールド部42は、ABS30内に配置されたシールド端面42aを有している(図9参照)。
【0075】
連結シールド部43は、下部薄膜コイル11のターン部11b、11d、11fを跨ぐようにして形成され、接続シールド部41と第1の後側シールド部44とを接続している。連結シールド部43は、主磁極層26から放出された磁束を還流させるリターン磁極としての機能を有している。
【0076】
第1、第2、第3の後側シールド部44、45、46は、いずれも下部薄膜コイル11のターン部11b、11d、11fよりもABS30から離れた位置に配置されている。また、第1の後側シールド部44の上に第2の後側シールド部45が重なり、第2の後側シールド部45の上に第3の後側シールド部46が重なっている。第1、第2、第3の後側シールド部44、45、46はABS30に近い前側面からABS30までの距離の等しい三段構造を形成している。第1、第2、第3の後側シールド部44、45、46は、連結シールド部43を主磁極層26に連結する連結部としての機能を有している。
【0077】
リーディングシールド部47は本発明の実施の形態にかかる第1の下部シールド部に対応している。リーディングシールド部47は下部前側シールド部42に接続され、その反対側上面にサイドシールド部47A,47Aが形成されている。リーディングシールド部47はABS30内に配置されたシールド端面47aを有している(図9参照)。
【0078】
サイドシールド部47A,47Aは本発明の実施の形態にかかる第2の下部シールド部に対応している。サイドシールド部47A,47Aはリーディングシールド部47上に形成されている。サイドシールド部47A,47Aのそれぞれが主磁極層26のトラック幅方向の両側に配置されている。サイドシールド部47A,47Aも、それぞれABS30内に配置されたシールド端面47Aaを有している(図2参照)。サイドシールド部47A,47Aおよびリーディングシールド部47は非磁性薄膜25を介して磁極端面26aを取り囲むように形成され、主磁極層26の近傍に配置されている。
【0079】
部分下部シード層91は、サイドシールド部47A,47Aをリーディングシールド部47上に電解めっきによって形成するときに下地として用いられる金属層である。部分下部シード層91は、スパッタリング等によってドライ環境下で形成されている。部分下部シード層91は、CoNiFe、CoFe、NiFeといった磁性材を用いて形成されている。
【0080】
また、部分下部シード層91は、リーディングシールド部47と、サイドシールド部47A,47Aとによって挟まれたごく薄い厚さを有する下部薄膜状空間のうちの部分的な領域にだけ形成されている。部分下部シード層91の全体がABS30から離れた位置に配置されている。
【0081】
さらに詳しくは、部分下部シード層91は、部分配置構造を有している。すなわち、図17、図18に示すように、部分下部シード層91は、後述する下部形成ゾーン92B上だけに配置されている。下部形成ゾーン92Bは、ABS30の形成前の段階において、積層体の表面のうちの下部除外ゾーン92A1を除いた領域に対応している。また、ABS30の形成後の段階では、積層体の表面のうちの下部不存在ゾーン92A2を除いた領域に対応し、ABS30から後退している。
【0082】
薄膜磁気ヘッド300では、この下部不存在ゾーン92A2の表面から、サイドシールド部47A,47Aを形成するときの下地となるシード層がすべて除去されている。下部不存在ゾーン92A2は前述した下部薄膜状空間に配置されていて、後述する予定ライン(またはABS30)から後述する奥行き方向に沿った奥行きD2を有する矩形状の領域に対応している。この下部不存在ゾーン92A2に部分下部シード層91の端面91aが出現している(図17、図21(b)参照)。端面91aはABS30には出現していない(図27、図30、図31参照)。
【0083】
次に、ライトシールド層60について説明する。ライトシールド層60は、本発明の実施の形態に係る上部シールド層に対応している。ライトシールド層60は対向シールド部61と、上部前側シールド部62と、連結シールド部63と、後側シールド部64と、ワイド上部シード層93とを有している。
【0084】
対向シールド部61は本発明の実施の形態にかかる第1の上部シールド部に対応している。対向シールド部61はABS30内に配置されたシールド端面61aを有している(図9参照)。また、対向シールド部61はABS30内においてリーディングシールド部47に対峙している。また、対向シールド部61のシールド端面61aにギャップ層29が配置される微小スペースが形成されている。その微小スペースにギャップ層29のABS30側部分が形成されている。対向シールド部61はギャップ層29を挟んでABS30側から順に主磁極層26、非磁性層27、非磁性層28に対向するようにして形成されている。また、対向シールド部61は上端面が平坦になっていて、その上端面に上部前側シールド部62が接続されている。
【0085】
上部前側シールド部62は上部薄膜コイル51よりもABS30側に配置されている。この上部前側シールド部62について、図6、図7を参照して詳しく説明する。
【0086】
上部前側シールド部62はシールド前端面62bと、シールド上端面62fと、シールド接続部62cと、シールド下端面62rとを有している。シールド前端面62bはABS30内に配置されている。シールド前端面62bはABS30内に露出している。図6において、網掛けした部分がシールド前端面62bを示している。シールド上端面62fはシールド前端面62bよりも基板1から離れた位置に配置されている。基板1から離れる側を上側、基板1に近づく側を下側ともいう。シールド上端面62fは、連結シールド部63に接続されている。シールド上端面62fは、ABS30の交差方向に沿って形成されている。しかも、シールド上端面62fは、ABS30から離れて形成されている。シールド上端面62fは、シールド下端面62rよりも小さい大きさを有している。
【0087】
シールド接続部62cはシールド前端面62bとシールド上端面62fとを接続する部分である。シールド接続部62cは、シールド前端面62bとの接続部62xを除くすべての部分がABS30から離れた位置に配置されている。
【0088】
シールド接続部62cは接続部62xから、シールド上端面62fに接続される接続部62yに近づくにしたがい、ABS30から漸次離れるように傾斜した傾斜構造を有している。接続部62xはABS30内に配置されているが、接続部62yはABS30から離れた位置に配置され、ABS30から後退している。
【0089】
そして、図7に示すように、この接続部62xと接続部62yとを結ぶ仮想的な平坦面99を考えた場合、この平坦面99はシールド前端面62bとシールド上端面62fとを最短距離で結ぶ平坦面である。この平坦面99よりも、シールド接続部62cはABS30から離れるように傾斜した後退傾斜構造を有している。さらに、シールド接続部62cは横平坦部62c1と、縦平坦部62c2と、湾曲部62c3とを有し、これらが滑らかにつながり一体となった構造を有している。横平坦部62c1は概ねABS30の交差方向に沿って形成されている。縦平坦部62c2は概ねABS30に沿って形成されている。
【0090】
シールド下端面62rはABS30の交差方向に沿って形成されている。シールド下端面62rはABS30に達する大きさを有している。シールド下端面62rはシールド上端面62fよりも大きい大きさを有している。シールド下端面62rはABS30側に対向シールド部61が接続され、そのABS30から離れた後側に絶縁層31が接続されている。
【0091】
上部前側シールド部62は以上のような構造を有しているので、トリム前前側シールド部62A(図7の上側)よりも、ABS30内に配置されている端面の大きさが小さく、体積も小さい。トリム前前側シールド部62Aは、後述するトリミング工程を実行することによって形成される直前の前側シールド部である。トリム前前側シールド部62Aは、シールド上端面62fがABS30に達し、トリム前前端面62aを有している。そして、トリム前前端面62aとシールド前端面62bの大きさを比較すると、シールド前端面62b<トリム前前端面62aである。
【0092】
次に、連結シールド部63について説明する。連結シールド部63は、上部薄膜コイル51のターン部51g、51e、51cを跨ぐようにして形成されている。連結シールド部63はABS30から離れて形成されている。連結シールド部63は上部前側シールド部62と、後側シールド部64とに接続されている。
【0093】
後側シールド部64は上部薄膜コイル51のターン部51g、51e、51cよりもABS30から離れた位置に配置されている。後側シールド部64は、連結シールド部63と、上部ヨーク層65とに接続されている。後側シールド部64は上部前側シールド部62と等しい高さに形成されている。そのため、後側シールド部64は、上部薄膜コイル51およびシールド上端面62fとともに共通平坦面59を形成している。
【0094】
上部ヨーク層65は主磁極層26の上端面26dのうちの非磁性層27,28よりもABS30から離れた後側に接続されている。上部ヨーク層65の上端面は対向シールド部61の上端面と段差なく形成されている。上部ヨーク層65の上端面は対向シールド部61の上端面とともに共通平坦面59A(図32参照)を形成している。
【0095】
ワイド上部シード層93は、対向シールド部61を主磁極層26上に電解めっきによって形成するときに下地として用いられる金属層である。ワイド上部シード層93は、主磁極層26および非磁性層27,28と、対向シールド部61とによって挟まれたごく薄い厚さを有する上部薄膜状空間に形成されている。図30、図31に示すように、ワイド上部シード層93は部分配置構造を有していないので、ABS30に出現している。
【0096】
その他、薄膜磁気ヘッド300は、変位抑制層85を有している。変位抑制層85は連結シールド部63の上端面に接続されている。変位抑制層85は線熱膨張係数の小さい非磁性材料によって形成されている。例えば、変位抑制層85は無機材料または金属材料を用いることが好ましく、例えばSiC,AlN,Si,W(タングステン)を用いることができる。特に、変位抑制層85は硬度の大きい非磁性材料を用いることが好ましい。例えば、SiCはアルミナに比べてビッカース硬度が大きいため、変位抑制層85はSiCを用いることが好ましい。
【0097】
さらに、薄膜磁気ヘッド300は保護絶縁層90を有している。保護絶縁層90はアルミナ(Al)等の絶縁材料を用いて形成されている。保護絶縁層90は埋込部90aと、カバー部90bとを有し、埋込部90aとカバー部90bとが一体となっている。埋込部90aは、シールド接続部62cの全体に接し、かつシールド接続部62cとABS30との間に隙間なく埋め込まれている。カバー部90bは連結シールド部63および変位抑制層85を覆うように形成されている。
【0098】
(薄膜磁気ヘッドの製造方法)
次に、前述の図1、図2、図9とともに、図10(a),図10(b)〜図14(a),図14(b)、図15〜図20、図21(a),図21(b)〜図26(a),図26(b)、図27、図28(a),図28(b)、図29〜図31、図32(a),図32(b)〜図37(a),図37(b)を参照して、前述の構造を有する薄膜磁気ヘッド300の製造方法について説明する。
【0099】
ここで、図10(a)〜図14(a),図26(a)、図28(a)、図32(a)〜図37(a)は、薄膜磁気ヘッド300の各製造工程における図1に対応した断面図である。また、図10(b)〜図14(b)、図26(b),図28(b)、図32(b)〜図37(b)は、同じく図2に対応した正面図である。図15〜図20、図29は、薄膜磁気ヘッド300の各製造工程における積層体の要部を示す平面図である。図21(a),図21(b)〜図22(a),図22(b)はそれぞれ図16〜図19の21a−21a線、21b−21b線、22a−22a線、22b−22b線断面図である。図23(a)、図23(b)〜図25(a)、図25(b)、図27、図30〜図31は薄膜磁気ヘッド300の各製造工程において、積層体を予定ラインに沿って切断したときの要部を示す断面図である。なお、各図において“ABS”とは、ABS30が後に形成される予定ラインを示している。
【0100】
まず、アルミニウムオキサイド・チタニウムカーバイド(Al・TiC)等のセラミック材料からなる基板1を準備する。そして、図10(a)、図10(b)に示すように、その基板1の上に、アルミナ(Al)等の絶縁材料からなる絶縁層2と、磁性材料からなる下部シールド層3を順に形成する。絶縁層2を形成するときに加熱部8が形成される。
【0101】
次に、MR素子5をシールドするように絶縁材料を用いてシールドギャップ膜4を形成する。このとき、MR素子5に接続される図示しないリードを形成し、MR素子5およびリードをシールドギャップ膜4で覆う。それから、磁性材料と絶縁材料とを用いてシールドギャップ膜4の上に上部シールド層6(第1のシールド部6a、絶縁部6b、第2のシールド部6c)を形成する。
【0102】
次に、上部シールド層6の上にアルミナ(Al)等の絶縁材料を用いて、上部シールド層6と、後に形成される記録ヘッドとを分離するための絶縁層7を形成する。絶縁層7を形成するときに感熱部9が形成される。これまでの工程で記録ヘッドを形成するための積層体が得られる。
【0103】
続いて、下部シールド層形成工程を実行することによって下部シールド層40を形成する。本実施の形態において、下部シールド層形成工程は、後述する第1の下部シールド部形成工程と、下部シード層形成工程と、第2の下部シールド部形成工程とを有している。
【0104】
そして、下部シールド層40を形成するときは、まず、NiFeまたはCoNiFe等の磁性材を用いて連結シールド部43を形成するための磁性層(厚さは0.6μm程度)を形成して、積層体表面に絶縁層を形成し、化学機械研摩(以下「CMP」という)によって積層体表面の平坦化を行う。すると、対向絶縁層17と連結シールド部43が形成される。このとき、連結シールド部43はABS30から0.3μm〜1μm(本実施の形態では、0.5μm程度)離して形成する。
【0105】
続いて、積層体の表面全体にアルミナ(Al)の絶縁層18(膜厚は0.1μm〜0.3μm程度)を形成する。それから、積層体の表面全体にフォトレジストを塗布した上で、所定のフォトマスクを用いたパターニングを行い、レジストパターン(図示せず)を形成する。このレジストパターンをマスクに用いて例えばRIE等のエッチングを行い、絶縁層18を選択的に開口する。
【0106】
次に、接続シールド部形成工程を実行する。この工程では、フレームめっき法により、NiFeまたはCoNiFe等の強磁性体からなる磁性材を用いて接続シールド部41,第1の後側シールド部44を厚さ1〜1.5μm程度で形成する。
【0107】
次に、図11(a)、図11(b)に示すように、アルミナ(Al)からなる絶縁層19(膜厚は0.02μm〜0.3μm程度、好ましくは0.1μm〜0.2μm程度)をアトミックレイヤー法によるCVD(Chemical Vapor Deposition)法で積層体の表面全体に形成する。絶縁層19は、接続シールド部41、第1の後側シールド部44を被覆するように形成される。
【0108】
それから、導体層形成工程を実行して導体層70を形成する。導体層70は、下部薄膜コイル11を形成するために形成する。この工程では、まず、フレームめっき法によって、接続シールド部41と第1の後側シールド部44との間に導体層70を形成する。導体層70は、2つの間隙部70aを備え、かつ絶縁層19を介して接続シールド部41と第1の後側シールド部44とに隙間なく接触するようにして形成する。導体層70は間隙部70aを備えているから間欠導体層である。
【0109】
次に、図12(a)、図12(b)に示すように、導体層70における2つの間隙部70aを埋めるようにフォトレジスト層80(膜厚は1.5μm〜2.5μm程度)を形成する。次いで、アルミナ(Al)を用いて積層体の表面をカバーし得る絶縁膜20を3μm〜4μm程度の厚さで形成する。それから、接続シールド部41と第1の後側シールド部44が現われるまで積層体の表面をCMPにより研摩して積層体表面の平坦化を行う。
【0110】
すると、図13(a)、図13(b)に示すように、下部薄膜コイル11が形成される。また、接続シールド部41よりもABS30側に対向絶縁層20も形成される。
【0111】
続いて、図14(a)、図14(b)に示すように、積層体の表面全体にアルミナ(Al)からなる絶縁層21(膜厚は0.3μm〜0.7μm程度)を形成する。その後、この絶縁層21を選択的に開口する。
【0112】
NiFeまたはCoNiFe等の強磁性体からなる磁性材を用いて、フレームめっき法によって、開口した部分に重ねて下部前側シールド部42と、第2の後側シールド部45とをともに厚さ0.5μm〜1.2μm程度で形成する。その後、積層体の表面をCMPにより研摩して積層体表面の平坦化を行う。
【0113】
それから、図26(a)、図26(b)に示すように、アルミナ(Al)等の絶縁材料を用いてベース絶縁層24を形成する。ベース絶縁層24を形成するときに加熱部23が形成される。その後、ベース絶縁層24を選択的に開口する。
【0114】
次に、第1の下部シールド部形成工程を実行してリーディングシールド部47を形成する。この場合、図15に示すように、NiFeまたはCoNiFe等の強磁性体からなる磁性材を用いてフレームめっき法により、下部シールド予定領域47Bにリーディングシールド部47を厚さ0.5μm〜1.0μm程度で形成する。下部シールド予定領域47Bは後述する予定ラインを含む領域であり、図26に示すように、開口した部分のABS30側に配置されている。また、開口した部分のABS30から離れた部分には第3の後側シールド部46が形成される。
【0115】
すると、図15に示すように、積層体の上面にリーディングシールド部47が形成される。ただし、この時点では、まだ、ABS30が形成されていない。そのため、積層体の表面には、図15に示すように予定ラインを想定することができる。図15において、点線で示されたライン(“ABS”で示されるライン)が予定ラインを示している。予定ラインは、後に形成されるABS30に沿った直線上に形成されている。この時点のリーディングシールド部47は、予定ラインを含み、完成時点では除去されてしまう部分も含まれているので、完成時点よりも大きい大きさを有している。
【0116】
次に、下部シード層形成工程を実行することによって、部分下部シード層91を形成する。本実施の形態において、下部シード層形成工程は、後述するワイド下部シード層形成工程と、下部シード層除去工程とを有している。
【0117】
そして、ワイド下部シード層形成工程では、図16に示すように、積層体の上面にワイド下部シード層91Aを形成する。ワイド下部シード層91Aは、後にサイドシールド部47Aを電解めっきによって形成するときに下地として用いられる金属層である。ワイド下部シード層91Aは、積層体の上面の、後述する下部除外ゾーン92A1および下部形成ゾーン92B上に配置されている。
【0118】
続いて、下部シード層除去工程を実行する。この工程では、図17に示すようにワイド下部シード層91Aのうちの被除外下部シード層91Bをエッチング等によって除去する。被除外下部シード層91Bは図16のドットを付された部分に対応している。被除外下部シード層91Bは、ワイド下部シード層91Aのうちの下部除外ゾーン92A1上に形成された部分に対応している。被除外下部シード層91Bが除去されたことによって、ワイド下部シード層91Aは部分下部シード層91になる。被除外下部シード層91Bを除去したときの積層体を予定ラインに沿って切断すると、図24(a)に示すように、その切断面の背後にある部分下部シード層91の端面91aが視認される。
【0119】
そして、下部シード層除去工程では、図17に示すように、下部除外ゾーン92A1が予定ラインの全体を含むABS30に沿った帯状の領域に設定されている。また、図21(b)にも示すように、下部除外ゾーン92A1として、除外スタートラインS1から、奥行き方向に沿った奥行きD1を有する矩形状の領域を確保している(奥行きD1は奥行きD2よりも大きいので、D1>D2)。奥行き方向とは、基板1上の(詳しくは積層体の表面上の)後に上部薄膜コイル51が形成される位置に向かってABS30から離れる方向を意味している。除外スタートラインS1は、予定ラインよりも外側に(奥行き方向とは反対方向に向かって)例えば0.01〜0.1μm程度移動した部分に設定されている。
【0120】
下部シード層除去工程が実行されたことにより、リーディングシールド部47の表面のうちの予定ラインの全体を含む領域からシード層が除去され、シード層の存在しない領域(前述した下部不存在ゾーン92A2よりもやや広い領域)が予定ラインに沿って形成されている。この時点で、リーディングシールド部47の予定ライン全体を含む領域において、表面がシード層によって覆われることなく露出している。
【0121】
次に、第2の下部シールド部形成工程を実行して、図18、図22(a)、図24(b)に示すように、サイドシールド部47A、47Aを形成する。この場合、NiFeまたはCoNiFe等の強磁性体からなる磁性材を用いて、フレームめっき法によって、下部シールド予定領域47Aにサイドシールド部47A、47Aを厚さ0.5μm〜1.0μm程度で形成する。図18において、ドットの付された部分がサイドシールド部47A、47Aに対応している。
【0122】
この場合、下部シード層除去工程が実行された後でも、下部シールド予定領域47Aの一部に部分下部シード層91が形成されている。そのため、その部分下部シード層91を下地とするめっき膜の成長によって、部分下部シード層91上にサイドシールド部47A、47Aが形成される。
【0123】
なお、サイドシールド部47A、47Aは、図18に示す極細領域95には形成されていない。極細領域95は、後に主磁極層26の磁極端面26aが配置される幅の狭い領域を意味している。
【0124】
続いて、図19、図25(a)に示すように,ベース絶縁層24およびサイドシールド部47A、47Aを被覆するようにして非磁性薄膜25を形成する。非磁性薄膜25はRu,NiCr,NiCu等の非磁性金属材料や、アルミナ等の絶縁材料を用いてスパッタリングによって形成する。非磁性薄膜25は極細領域95にも形成される。
【0125】
ここで、図18、図22(a)に示すように、極細領域95には、サイドシールド部47A、47Aの側面が出現している。その側面上、および極細領域95内の部分下部シード層91上にも非磁性薄膜25が形成される。そのため、極細領域95を通る奥行き方向に沿った積層体の断面を図示すると、図22(b)に示すように、その断面に非磁性薄膜25の表面および断面が出現する。
【0126】
続いて、図28(a)、図28(b)に示すように、CoNiFe、CoFe、NiFeなどの強磁性体からなる磁性材を用いて、フレームめっきによって0.4〜0.8μm程度の厚さで磁性層75を形成する。この磁性層75によって後に主磁極層26が形成される。
【0127】
その後、積層体の表面に例えばスパッタリングにより、Ru,NiCr,NiCu等の金属材料を用いて非磁性層77(厚さは約0.04〜0.1μm程度)を形成する。非磁性層77は後に一部がエッチングされることによって、前述の非磁性層27となる。さらに、積層体の表面全体に、アルミナ(Al)、シリコン酸化物等の無機絶縁材料を用いて非磁性層78(厚さは約0.1〜0.3μm程度)を形成する。非磁性層78は、後に一部がエッチングされることによって、前述の非磁性層28となる。
【0128】
続いて、積層体の表面全体にフォトレジストを塗布した上で、所定のフォトマスクを用いたパターニングを行い、レジストパターン81をABS30の近傍に形成する。
【0129】
次に、レジストパターン81をマスクに用いて例えばRIE等のエッチングを行い、非磁性層78の一部を除去する。この場合のエッチングは、エッチングによって形成された溝の底部が非磁性層77の上面に到達した時点で停止するようにして行われる。そのため、非磁性層78には、非磁性層77と比べて非磁性層78をエッチングする際のエッチングレートの小さい材料を用いる。
【0130】
それからレジストパターン81を除去する。続いて、残された非磁性層78をマスクに用いて例えばIBEによって、非磁性層77の一部をエッチングして除去する。さらに、残された非磁性層77をマスクに用いて例えばIBEにより、磁性層75の一部をエッチングして除去する。この工程を経ることによって、磁性層75のABS側に上傾斜面26cが形成され、図25(b)に示すように、主磁極層26が形成される。
【0131】
続いて、図27、図32(a)、図32(b)に示すように、積層体の表面全体にアルミナ(Al)等の絶縁材料、好ましくは、Ru,NiCu、Ta等の非磁性導電材料を用いてスパッタ法またはCVDによってギャップ層29(厚さは約250Å〜350Å程度)を形成する。
【0132】
さらに、例えばスパッタ法により図示しないストッパ膜を形成し、その上に非磁性膜を形成する。その上で、積層体の表面全体に図示しないフォトレジストを塗布する。そして、所定のフォトマスクを用いたパターニングを行い、図示しないレジストパターンを形成する。このレジストパターンをマスクに用いて、例えばRIE等のエッチングを行い、非磁性膜をエッチングする。このエッチングはエッチングによって形成された溝の底部がストッパ膜の上面に到達した時点で停止するようにして行われる。それから、図示しないレジストパターンを除去した後、残された非磁性膜をマスクに用いてRIE等のエッチングを行い、ギャップ層29、非磁性層77および非磁性層78の一部を除去する。ここで、ギャップ層29、非磁性層77および非磁性層78の一部を除去することによって、上部ヨーク層65を形成するためのスペースを確保している。
【0133】
続いて、上部シールド層形成工程を実行することによって、ライトシールド層60を形成する。本実施の形態において、上部シールド層形成工程は、後述する第1の上部シールド部形成工程と、第2の上部シールド部形成工程と、連結シールド部形成工程と、トリミング工程とを有している。
【0134】
まず、第1の上部シールド部形成工程を実行することによって、対向シールド部61を形成する。この工程では、まず、ワイド上部シード層形成工程を実行することによって、図29、図30に示すように、ワイド上部シード層93を積層体の表面の主磁極層26上に形成する。続いて、このワイド上部シード層93を下地とする電解めっきを行い、積層体の表面に磁性層を形成する。この磁性層は、CoNiFe、CoFe、CoFeN,NiFeなどの強磁性体からなる磁性材を用いて、0.5〜1.2μm程度の厚さで形成する。この磁性層によって、後に対向シールド部61および上部ヨーク層65が形成される。
【0135】
続いて、積層体の表面全体にアルミナ(Al)等の絶縁材料を用いて絶縁層(厚さは1〜3μm程度)を形成する。さらに、磁性層の表面が露出するまで積層体の表面全体をCMPにより研磨して積層体表面の平坦化を行う。すると、図31、図32(a),図32(b)に示すように、対向シールド部61、上部ヨーク層65および絶縁層31が形成される。このとき、対向シールド部61の厚さが0.5〜1.0μm程度になるようにして積層体の表面を研磨する。
【0136】
次に、第2の上部シールド部形成工程を実行する。この工程では、図33(a),図33(b)に示すように、積層体の表面のうちの上部前側シールド部62と後側シールド部64とを形成しようとする部分にそれぞれトリム前前側シールド部62Aと後側シールド部64とを形成する。このとき、トリム前前側シールド部62AがABS30内に配置されるので、本発明の実施の形態に係る第2の上部シールド部に対応している。第2のシールド部形成工程では、NiFeまたはCoNiFe等の強磁性体からなる磁性材を用いてトリム前前側シールド部62Aおよび後側シールド部64を例えばフレームめっき法によって形成する。このとき、トリム前前側シールド部62Aと後側シールド部64との間隔が3.0μmから3.5μm程度となるようにする。
【0137】
そして、トリム前前側シールド部62Aは対向シールド部61に接続され、かつABS30内に配置されるように形成する。トリム前前側シールド部62Aは、図7の上側に示したような形状を有している。このトリム前前側シールド部62Aでは、前端面62aのすべてがABS30内に配置されている。
【0138】
それから、図34(a),図34(b)に示すように、積層体の表面における第1のシールド部(トリム前前側シールド部62A)と後側シールド部64との間に導体層71を形成する。この導体層71によって、後に上部薄膜コイル51が形成される。導体層71は2つの間隙部71aを備え、かつ第1のシールド部(トリム前前側シールド部62A)と後側シールド部64に層間絶縁膜32を介して隙間なく接触するようにして形成する。導体層71は、間隙部71aを備えているから間欠導体層である。
【0139】
その後、導体層71における2つの間隙部71aを覆うようにフォトレジスト層55(膜厚は2μm〜3μm程度)を形成し、アルミナ(Al)を用いて積層体の表面をカバーし得る図示しないカバー絶縁膜を3μm〜4μm程度の厚さで形成する。それから、トリム前前側シールド部62Aと後側シールド部64が現われるまで積層体の表面をCMPにより研摩して積層体表面の平坦化を行う。
【0140】
すると、図35(a),図35(b)に示すように、上部薄膜コイル51およびフォトレジスト層55が形成される。このとき、上部薄膜コイル51の厚さが1.0μm〜1.8μm程度となるように、積層体表面の平坦化を行う。また、積層体表面の平坦化が行われたことによって、前述した共通平坦面59が形成される。
【0141】
続いて、図36(a),図36(b)に示すように、積層体の表面全体にアルミナ(Al)等の絶縁材料を用いて絶縁層34を形成し、絶縁層34を部分的に開口する。その後、連結シールド部形成工程を実行する。この工程では、NiFeまたはCoNiFe等の強磁性体からなる磁性材を用いて、フレームめっき法によって連結シールド部63を形成する。連結シールド部63は、トリム前シールド部62Aに接続されるように形成する。連結シールド部63は、絶縁層34を介して上部薄膜コイル51のターン部51g、51e、51cを跨ぐようにして形成する。
【0142】
また、連結シールド部63は前端面30hから後退させて(ABS30からも後退させて)ABS30から離れた位置に形成する。すなわち、ABS30との間に後退スペース63hが確保されるような位置に連結シールド部63を形成する。後退スペース63hはABS30に沿った例えば0.4μmから0.7μm程度の幅を有し、かつ連結シールド部63と同じ高さを備えた細長い部分になる。
【0143】
次に、トリミング工程を実行する。この工程では、図37(a),図37(b)に示すように、連結シールド部63をマスクに用いてイオンビームIBを上方向から照射してIBEを行い、トリム前前側シールド部62Aの連結シールド部63によって被覆されていない部分を切除する。トリム前前側シールド部62Aは、連結シールド部63によってABS30側部分が被覆されていないので、IBEを行うとトリム前前側シールド部62AのABS30側の一部分が切除される。このとき、IBEは、トリム前前側シールド部62AのABS30内に配置されるトリム前前端面62aの一部を残すようにして実行する。こうすることで、図7に示したように、トリム前前端面62aのうち、切除されずに残された部分によって前述したシールド前端面62bが形成される。さらに、IBEは前述の後退傾斜構造を備えたシールド接続部62cが出現するようにして実行する。
【0144】
前述のトリミング工程では、連結シールド部63自体をマスクに用いているが、連結シールド部63を用いる代わりに連結シールド部63の上面をカバーするフォトレジスト等のマスクを用いてもよい。すなわち、連結シールド部63と大きさの等しいマスクをフォトレジスト等を用いて連結シールド部63の上面に形成し、そのマスクを用いて、トリム前前側シールド部62Aの連結シールド部63によって被覆されていない部分を切除してもよい。
【0145】
また、エッチングに用いるガスプラズマの化学的な作用が伴うと、トリム前前側シールド部62Aの垂直方向(図37の縦方向)だけでなく、水平方向((図37の横方向)にもエッチングが進行するおそれがある。そのため、トリミング工程では、ノンリアクティブなIBE、すなわち、イオンミリングを行うことが好ましい。不活性なイオンを照射したときの物理的な衝撃を利用して行うエッチングをリアクティブイオンエッチングと区別するため、イオンミリングともいう。
【0146】
続いて、図1に示したように変位抑制層85を形成する。それから、アルミナ(Al)等の絶縁材料を用いて変位抑制層85をカバーするようにして保護絶縁層90を形成する。その後、前端面30hに対する研磨加工や機械加工を行い、ABS30を形成すると、薄膜磁気ヘッド300が完成する。
【0147】
保護絶縁層90は、シールド接続部62cの全体に接し、かつシールド接続部62cとABS30との間に隙間なく埋め込まれるように形成する。
【0148】
(薄膜磁気ヘッド300の作用効果)
以上のように、薄膜磁気ヘッド300はリーディングシールド部47と、サイドシールド部47A,47Aとが重なった多重シールド層を有する。そのサイドシールド部47A,47Aが部分下部シード層91を介してリーディングシールド部47上に形成されている。この部分下部シード層91は、下部形成ゾーン92Bだけに配置される部分配置構造を有し、ABS30から後退している。そのため、ABS30のリーディングシールド部47とサイドシールド部47A,47Aとの接合部分には、部分下部シード層91が出現していない。
【0149】
そして、薄膜磁気ヘッド300では、リーディングシールド部47とサイドシールド部47A,47Aとの間に下部不存在ゾーン92A2が形成され、部分下部シード層91の端面91aがABS30に出現することなく下部不存在ゾーン92A2に出現している(図31参照)。
【0150】
リーディングシールド部47と、サイドシールド部47A,47Aとは、主として電解めっきによって形成されているため、磁性材の結晶の方向が共通している。しかし、部分下部シード層91はスパッタリング等によって形成されているため、リーディングシールド部47およびサイドシールド部47A,47Aとは、磁性材の結晶の方向が異なり、磁気特性が異なっている。
【0151】
ところが、薄膜磁気ヘッド300では、部分下部シード層91が部分配置構造を有しているため、ABS30のリーディングシールド部47とサイドシールド部47A,47Aとの間に、これらとは磁気特性の異なるシード層が存在していない。そのため、磁極端面26aから放出された磁束のうちのトラック幅方向の広がる成分がリーディングシールド部47またはサイドシールド部47A,47Aによって吸収されずに残る現象(本実施の形態において、この現象を磁束の残留ともいう)が発生し難い。
【0152】
したがって、リーディングシールド部47またはサイドシールド部47A,47Aによって吸収されずに残る磁束によって、記録媒体に記録されているデータが消去されたり、書きかえられる現象は発生し難い。
【0153】
このように、薄膜磁気ヘッド300は、多重シールド層を有し、それがABS30に配置されているが、その多重シールド層に起因したATEやWATEを改善することができる。
【0154】
一方、シード層をABS30から部分的に後退させるだけでも、磁束の残留を防止する効果が得られる。しかし、磁束の残留をより確実に防止するためには、薄膜磁気ヘッド300のように、下部不存在ゾーン92A2をABS30の幅方向全体にわたる帯状の領域に設定することが好ましい。このようにすると、部分下部シード層91の端面91aのすべての部分が下部不存在ゾーン92A2に出現し、ABS30には出現しなくなる。そのため、リーディングシールド部47と、サイドシールド部47A,47Aとの間に、それらとは磁気特性が異なるシード層が一切存在していない構造が得られる。こうすると、確実に磁束の残留を防止することができるから、ATEやWATEをより確実に改善することができる。
【0155】
一方、薄膜磁気ヘッド300は、対向シールド部61と、連結シールド部63との間に配置される磁性層として、上部前側シールド部62だけが形成されている。そのため、対向シールド部61と連結シールド部63との間に、2つの磁性層が形成されている場合に比べて、薄膜磁気ヘッド300は、上下方向に沿った磁路の長さが短くなり、その分、磁路長を短縮することができる。
【0156】
よって、薄膜磁気ヘッド300は記録ヘッドの磁束立ち上がり時間(Flux Rize Time)や、非線形トランジションシフト(Non-linear Transition Shift:NLTS)特性、重ね書き(Over Write)特性等を改善でき、周波数が高く変化の速い記録信号のすばやい変化に追従することが可能になる。そのため、薄膜磁気ヘッド300は、特にサーバに搭載されるハードディスク装置の記録ヘッドとして好適である。
【0157】
その上、上部前側シールド部62は、ABS30から、層間絶縁膜32を介して上部薄膜コイル51に到達し得るだけの横幅を有している。そのため、ライトシールド層60が異距離構造を有しているにもかかわらず、上部前側シールド部62は対向シールド部61と連結シールド部63の双方に確実に接続されている。したがって、主磁極層26に対向する対向シールド部61と、上部薄膜コイル51のターン部51g、51e、51cを跨ぐ連結シールド部63とが1本につながり、1本につながった磁気回路を形成することができる。なお、異距離構造とは、対向シールド部61がABS30内に配置され、かつ連結シールド部63がABS30から後退していることによって、対向シールド部61、連結シールド部63それぞれのABS30からの距離が異なっている構造を意味している。
【0158】
ここで、ライトシールド層60が異距離構造を有しているなかで、上部前側シールド部62によって対向シールド部61と連結シールド部63の双方を確実に接続するための構造を考える。トリム前前側シールド部62Aのように、前端面のすべての部分がABS30内に配置されているときに上端面と下端面の大きさが最大になるから、前述の構造を実現するためには、トリム前前側シールド部62Aのように前端面のすべてがABS30内に配置されていることが望ましい。
【0159】
しかし、そうすると、トリム前前端面62aがABS30に大きく露出してしまう。上部前側シールド部62もトリム前前側シールド部62Aも、CoNiFe、CoFe、CoFeN、NiFe等の強磁性体からなる磁性材により形成されている。そのため、トリム前前側シールド部62Aのようにトリム前前端面62aの全体がABS30に露出していると、上部薄膜コイル51の発熱によってフォトレジスト層55が膨張したときの影響をトリム前前側シールド部62Aがより強く受けてしまう。
【0160】
フライングハイトは極めて微小なので、トリム前前端面62aの限られた微小部分が突出しただけでも、薄膜磁気ヘッド300と記録媒体との衝突が発生してしまう可能性がある。トリム前前端面62aの全体がABS30に露出しているということは、突出の対象となりえるそのような微小部分がABS30内にたくさん存在しているということを意味し、それだけ、記録媒体に衝突し得る突出の態様が多く、薄膜磁気ヘッド300と記録媒体との衝突が発生しやすいということを意味している。
【0161】
そこで、薄膜磁気ヘッド300では、図7の下側に示したような構造の上部前側シールド部62を形成している。こうして、ABS30に露出する部分がシールド前端面62bになるようにしている。
【0162】
そして、上部前側シールド部62では、シールド上端面62fがシールド前端面62bよりも基板1から離れた位置に配置されていて、そのシールド前端面62bとシールド上端面62fとを接続するシール接続部62cを上部前側シールド部62が有している。このような構造では、シールド上端面62fがABS30に到達している場合、すなわち、図7の上側に示したようなトリム前前側シールド部62AよりもABS30内に配置される前端面の大きさが小さくなる。そのため、上部前側シールド部62を有することによって、薄膜磁気ヘッド300が記録媒体と衝突する事態を抑制できるようになる。
【0163】
よって、薄膜磁気ヘッド300では、特に上部薄膜コイル51の発熱に伴いライトシールド層60が突出することを抑制することができる。そのため、薄膜磁気ヘッド300は、記録ヘッドの突出に伴う破損のおそれが極めて少なくなるから、記録メディアに接近させることができる。
【0164】
そして、薄膜磁気ヘッド300は、図示しないスライダに組み込まれるが、そのスライダの記録媒体表面からの浮上量(フライングハイト)を縮小することができる。よって、薄膜磁気ヘッド300は、記録ヘッドおよび再生ヘッドの解像度(resolution)を高め、信号対雑音比を向上させることができる。また、薄膜磁気ヘッド300は、記録密度を高めることができる。
【0165】
一方、上部前側シールド部62は、連結シールド部63を形成した後、連結シールド部63が接触していないABS30側の一部分を切除することによって形成されている。そのため、ABS30に露出する部分が小さいにもかかわらず、シールド上端面62fが確実に確保されており、上部前側シールド部62と連結シールド部63とが確実に接続され得る構造となっている。
【0166】
また、上部前側シールド部62のABS30側を切除する際、シールド前端面62bが確保され、トリム前前端面62aのすべてが切除されることなくその一部がシールド前端面62bとして残るようにしている。トリム前前側シールド部62AのABS30側を切除する際、シールド前端面62bが確保されなくなるまでIBEを進めると、シールド下端面62rまでもが切除されるおそれがある。この場合、対向シールド部61に接続される部分が小さくなってしまい、対向シールド部61と、上部前側シールド部62との接続が不十分になるおそれがある。しかし、薄膜磁気ヘッド300では、そのようなおそれは皆無である。
【0167】
そして、上部前側シールド部62はシールド接続部62cを有しているが、このシールド接続部62cは傾斜構造を有している。そのため、上部前側シールド部62は前述の上方向からのIBEによって確実に形成できる構造を有している。傾斜構造を有していない場合、例えば、シールド前端面62bからシールド上端面62fにつながる表面部分がS字状に屈曲していると、IBEによって、上部前側シールド部62を形成するのは困難である。しかし、薄膜磁気ヘッド300では、そのようなおそれは皆無であり、上方向からのIBEによって確実に上部前側シールド部62を形成することができる。
【0168】
また、シールド接続部62cは後退傾斜構造を有しているため、後退傾斜構造を有していない場合に比べて上部前側シールド部62の体積が縮減されている。したがって、上部前側シールド部62が突出する可能性がいっそう抑制されている。
【0169】
さらに、シールド接続部62cは横平坦部62c1を有している。横平坦部62c1は、概ねABS30の交差方向に沿って形成されている。したがって、横平坦部62c1を有していない場合よりも、保護絶縁層90の埋込部90aから縦方向に受ける圧力をシールド接続部62cがより確実に受け止めることができる。よって、薄膜磁気ヘッド300では、保護絶縁層90の埋め込み状態が安定化している。
【0170】
しかも、シールド接続部62cは縦平坦部62c2を有している。縦平坦部62c2は、概ねABS30に沿って形成されている。したがって、上部前側シールド部62は、トリム前前側シールド部62Aに対する上方向からのIBE等によって確実に形成できる構造となっている。
【0171】
以上のように、薄膜磁気ヘッド300は、磁路長を短縮することができ、しかもABS30の一部が突出することを抑制できるから、媒体対向面の一部が突出することを抑制することと、磁路長の短縮とを両立できる。そのため、薄膜磁気ヘッド300は、磁路長の短縮に影響を及ぼすことなくABS30の一部の突出を抑制できるようになっている。
【0172】
そして、下部薄膜コイル11、上部薄膜コイル51が上述のような可変幅構造を有しているから、電流の流れを妨げることが少なく、抵抗値の上昇を抑制することができる。したがって、薄膜磁気ヘッド300は、下部薄膜コイル11、上部薄膜コイル51の熱の発生を効果的に抑制することができる。
【0173】
(変形例1)
薄膜磁気ヘッド300は、前述した上部前側シールド部62の代わりに図8(a)に示すような上部前側シールド部62Bを有していてもよい。上部前側シールド部62Bは上部前側シールド部62と比べてシールド接続部62cの代わりにシールド接続部62dを有する点で相違している。シールド接続部62dは、シールド接続部62cと比べて横平坦部62c1を有していない点で相違している。
【0174】
また、薄膜磁気ヘッド300は、上部前側シールド部62の代わりに図8(b)に示すような上部前側シールド部62Dを有していてもよい。上部前側シールド部62Dは上部前側シールド部62と比べてシールド接続部62cの代わりにシールド接続部62eを有する点で相違している。シールド接続部62eは、シールド接続部62cと比べて縦平坦部62c2を有していない点で相違している。
【0175】
上部前側シールド部62Bを有する場合、上部前側シールド部62Dを有する場合のいずれも、ABS30内にシールド前端面62bが配置され、ABS30内に露出している部分の大きさがトリム前前側シールド部62Aよりも縮減されている。そのため、トリム前前側シールド部62Aよりも、上部前側シールド部62B、62Dが突出する可能性は確実に抑制されている。したがって、上部前側シールド部62Bを有する場合、上部前側シールド部62Dを有する場合のいずれも媒体対向面の一部の突出を抑制することと、磁路長の短縮とを両立することができる。
【0176】
(変形例2)
前述した実施形態では、ワイド下部シード層形成工程と、下部シード層除去工程とを実行することによって、部分下部シード層91を形成している。すなわち、積層体の表面にワイド下部シード層91Aを形成したのち、そのワイド下部シード層91Aの不要な部分を除去することによって、部分下部シード層91を形成している。
【0177】
しかしながら、部分下部シード層91は、次のようにして形成することもできる。すなわち、フォトレジスト等を用いて下部除外ゾーン92A1に予めマスクを形成しておき、それからスパッタリングを行い、その後、マスクを除去する。こうすることで、必要とされる領域にだけシード層が形成されるため、その形成されたシード層を部分下部シード層91とすることができる。こうすると、シード層の不要な部分を除去する必要がなくなるので、シード層の材料の無駄を防止することができる。
【0178】
第2の実施の形態
前述した薄膜磁気ヘッド300はライトシールド層60を有し、そのライトシールド層60は対向シールド部61を有していた。対向シールド部61は、主磁極層26上のワイド上部シード層93上に形成されている。しかしながら、ワイド上部シード層93は部分下部シード層91のような部分配置構造を有していない。そのため、図30、図31に示したように、ABS30にワイド上部シード層93が出現していた。
【0179】
このような薄膜磁気ヘッド300の場合、主磁極層26よりも基板1側の磁束の残留(下部残留ともいう)を防止できたしても、主磁極層26よりも基板1から離れた側の磁束の残留(上部残留ともいう)を防止できないおそれがある。
【0180】
そこで、上部残留を防止するためには、主磁極層26よりも基板1から離れた側についても部分配置構造を有するシード層を形成することが好ましい。例えば、前述したワイド上部シード層93の代わりに、図38に示す部分上部シード層93Aを形成することが好ましい。
【0181】
この部分上部シード層93Aは主磁極層26と、対向シールド部61との間の、ごく薄い厚さを有する上部薄膜状空間のうちの部分的な領域にだけ形成されている。また、部分上部シード層93Aの全体がABS30から離れた位置に配置されている。
【0182】
部分上部シード層93Aは後述する上部形成ゾーン94B上だけに配置された部分配置構造を有している。上部形成ゾーン94Bは、ABS30の形成前の段階において、積層体の表面のうちの上部除外ゾーン94A1を除いた領域に対応している。ABS30の形成後の段階では、積層体の表面のうちの上部不存在ゾーン94A2を除いた領域に対応し、ABS30から後退している。本実施の形態では、上部不存在ゾーン94A2が下部不存在ゾーン92A2と形状が等しく大きさも等しい領域に設定されている。
【0183】
そして、薄膜磁気ヘッド300では、この上部不存在ゾーン94A2の表面からシード層がすべて除去されている。上部不存在ゾーン94A2は、前述した上部薄膜状空間に配置されていて、この上部不存在ゾーン94A2に部分上部シード層93Aの端面93aが出現している。端面93aはABS30には出現していない(図40参照)。
【0184】
薄膜磁気ヘッド300が部分上部シード層93Aを有するときは、前述した上部シールド層形成工程において、後述する上部シード層形成工程を実行する。また、第1の上部シールド部形成工程において、部分上部シード層93A上に対向シールド部61を形成する。さらに、上部シード層形成工程では、ワイド上部シード層形成工程と、上部シード層除去工程とを実行する。
【0185】
そして、ワイド上部シード層形成工程を第1の実施の形態の場合と同様に実行することによって、第1の実施の形態の場合と同様のワイド上部シード層93を形成する。次に、上部シード層除去工程を実行することによって、図39に示したように、ワイド上部シード層93のうちの被除外上部シード層(図示せず)を除去する。被除外上部シード層は、ワイド上部シード層93のうちの上部除外ゾーン94A1上に形成されている部分に対応している。上部除外ゾーン94A1は、前述した下部除外ゾーン92A1と形状が等しく大きさも等しい領域に設定されている。
【0186】
以上のようにすることで、部分上部シード層93Aが得られる。その後は、上記同様の工程を得て、薄膜磁気ヘッド300を製造する。
【0187】
この薄膜磁気ヘッド300の場合、部分上部シード層93Aが部分下部シード層91と同様の部分配置構造を有しているから、ABS30には部分上部シード層93Aが出現していない。したがって、この薄膜磁気ヘッド300は、下部残留はもちろん、上部残留も確実に防止できる。そのため、多重シールド層に起因したATEやWATEをより確実に改善することができる。
【0188】
この薄膜磁気ヘッド300の場合、主磁極層26上に部分上部シード層93Aが存在しない構造になる。このような構造において、対向シールド部61が主磁極層26上に形成されるように、めっき膜の成長を促進するため、ギャップ層29はRu,NiCu、Ta等の非磁性導電材料を用いて形成し、メタルギャップ層にすることが好ましい。
【0189】
(ヘッドジンバルアセンブリおよびハードディスク装置の実施の形態)
次に、ヘッドジンバルアセンブリおよびハードディスク装置の実施の形態について、図41を参照して説明する。
【0190】
図41の(a)は、上述の薄膜磁気ヘッド300を備えたハードディスク装置201を示す斜視図である。また、図41の(b)はHGA210の裏面側を示す斜視図である。図41(a)に示すように、ハードディスク装置201は、高速回転するハードディスク(磁気記録媒体)202と、ヘッドジンバルアセンブリ(HGA:Head Gimbals Assembly)210とを有している。ハードディスク装置201は、HGA210を作動させて、ハードディスク202の記録面に、データの記録および再生を行う装置である。ハードディスク202は、複数枚(図では4枚)のディスクを有している。各ディスクは、それぞれの記録面が薄膜磁気ヘッド300に対向している。
【0191】
ハードディスク装置201は、アセンブリキャリッジ装置203によって、図41(b)に示すスライダ208をトラック上に位置決めする。このスライダ208に薄膜磁気ヘッド300が形成されている。また、ハードディスク装置201は、複数の駆動アーム209を有している。各駆動アームは、ボイスコイルモータ(VCM)205によってピボットベアリング軸206を中心に回動し、ピボットベアリング軸206に沿った方向にスタックされている。そして、各駆動アームの先端にHGA210が取りつけられている。
【0192】
さらに、ハードディスク装置201は、記録再生を制御する制御回路(control circuit)204を有している。
【0193】
次に、HGA210について図41(b)を参照して説明する。HGA210は、サスペンション220の先端部分にスライダ208が固着されている。また、HGA210では、配線部材224の一端部がスライダ208の端子電極に電気的に接続されている。
【0194】
そして、サスペンション220は、ロードビーム222と、ロードビーム222の基部に設けられているベースプレート221と、ロードビーム222上の先端側からベースプレート221の手前側にかけて固着して支持され、弾性を備えたフレクシャ223と、配線部材224とを有している。配線部材224はリード導体およびその両端に電気的に接続された接続パッドを有している。
【0195】
ハードディスク装置201は、HGA210を回転させると、スライダ208がハードディスク202の半径方向、すなわち、トラックラインを横切る方向に移動する。
【0196】
このようなHGA210およびハードディスク装置201は薄膜磁気ヘッド300を有しているから、多重シールド層に起因したATEやWATEを改善することができる。
【0197】
なお、以上の各実施の形態では、変位抑制層を有する薄膜磁気ヘッドを例にとって説明しているが、本発明は、変位抑制層を有しない薄膜磁気ヘッドについても適用することができる。また、薄膜コイルが下部シールド層40、ライトシールド層60の周りに平面渦巻き状に巻回されているが、主磁極層26の周りに螺旋状に巻回されていてもよい。
【0198】
以上の説明は、本発明の実施の形態についての説明であって、この発明の装置及び方法を限定するものではなく、様々な変形例を容易に実施することができる。又、各実施形態における構成要素、機能、特徴あるいは方法ステップを適宜組み合わせて構成される装置又は方法も本発明に含まれるものである。
【産業上の利用可能性】
【0199】
本発明を適用することにより、多重シールド層に起因したATEやWATEを改善することができる。本発明は垂直磁気記録方式で磁気記録動作を行う薄膜磁気ヘッドの製造方法およびその薄膜磁気ヘッド並びにヘッドジンバルアセンブリおよびハードディスク装置において利用することができる。
【符号の説明】
【0200】
1…基板、11…下部薄膜コイル、26…主磁極層、26a…磁極端面、29…ギャップ層、30…ABS、40…下部シールド層、41…接続シールド部、42…下部前側シールド部、42a…シールド端面、47…リーディングシールド部、47A…サイドシールド部、47B…下部シールド予定領域、51…上部薄膜コイル、60…ライトシールド層、61…対向シールド部、61a…シールド端面、62…上部前側シールド部、65…上部ヨーク層、91…部分下部シード層、91A…ワイド下部シード層、92A1…下部除外ゾーン、92B…下部形成ゾーン、92A2…下部不存在ゾーン、93…ワイド上部シード層、93A…部分上部シード層、94A2…上部不存在ゾーン、94B…下部形成ゾーン、201…ハードディスク装置、202…ハードディスク、210…HGA、300…薄膜磁気ヘッド。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体に対向する媒体対向面の側に磁極端面を有する主磁極層と、前記媒体対向面内に配置されたシールド端面をそれぞれ有し、かつ前記主磁極層を挟むように配置されている下部シールド層および上部シールド層と、前記主磁極層、前記下部シールド層または前記上部シールド層のいずれかの周りに巻回された薄膜コイルとが基板上に積層された構成を有する薄膜磁気ヘッドの製造方法であって、
前記下部シールド層を形成する下部シールド層形成工程が、
前記基板上の、前記媒体対向面が後に形成される前記媒体対向面に沿った予定ラインを含む下部シールド予定領域に、前記下部シールド層を構成する第1の下部シールド部を形成する第1の下部シールド部形成工程と、
前記下部シールド層を構成する第2の下部シールド部を形成するための下部シード層を前記第1の下部シールド部上に形成するときに、前記予定ラインを含む下部除外ゾーンを除いた下部形成ゾーン上に配置される部分配置構造を備えた部分下部シード層を形成する下部シード層形成工程と、
前記部分下部シード層上に前記第2の下部シールド部を形成する第2の下部シールド部形成工程とを有する薄膜磁気ヘッドの製造方法。
【請求項2】
前記上部シールド層を形成する上部シールド層形成工程が、
前記上部シールド層を構成する第1の上部シールド部を形成するための上部シード層を前記主磁極層上に形成するときに、前記予定ラインを含む上部除外ゾーンを除いた上部形成ゾーン上に配置される部分配置構造を備えた部分上部シード層を形成する上部シード層形成工程と、
前記第1の上部シールド部を形成する第1の上部シールド部形成工程とを有し、
該第1の上部シールド部形成工程において、前記第1の上部シールド部を前記部分上部シード層上に形成する請求項1記載の薄膜磁気ヘッドの製造方法。
【請求項3】
前記下部シード層形成工程は、
前記部分下部シード層を形成するときに、前記基板を含む積層体の上面の前記下部除外ゾーンおよび前記下部形成ゾーン上に配置されるワイド下部シード層を形成するワイド下部シード層形成工程と、
前記ワイド下部シード層のうちの前記下部除外ゾーン上に形成された被除外下部シード層を除去する下部シード層除去工程とを有する請求項1または2記載の薄膜磁気ヘッドの製造方法。
【請求項4】
前記上部シード層形成工程は、
前記部分上部シード層を形成するときに、前記基板を含む積層体の上面の前記上部除外ゾーンおよび前記上部形成ゾーン上に配置されるワイド上部シード層を形成するワイド上部シード層形成工程と、
前記ワイド上部シード層のうちの前記上部除外ゾーン上に形成された被除外上部シード層を除去する上部シード層除去工程とを有する請求項2または3記載の薄膜磁気ヘッドの製造方法。
【請求項5】
前記下部シード層形成工程において、前記下部除外ゾーンを前記予定ライン全体を含む前記媒体対向面に沿った帯状の領域に設定する請求項1〜4のいずれか一項記載の薄膜磁気ヘッドの製造方法。
【請求項6】
前記上部シード層形成工程において、前記上部除外ゾーンを前記予定ライン全体を含む前記媒体対向面に沿った帯状の領域に設定する請求項2〜5のいずれか一項記載の薄膜磁気ヘッドの製造方法。
【請求項7】
前記基板上の、前記薄膜コイルが形成される位置に向かって前記媒体対向面から離れる方向を奥行き方向としたときに、前記下部シード層形成工程において、前記下部除外ゾーンを前記予定ラインよりも外側から前記奥行き方向に沿って確保する請求項1〜6のいずれか一項記載の薄膜磁気ヘッドの製造方法。
【請求項8】
前記基板上の、前記薄膜コイルが形成される位置に向かって前記媒体対向面から離れる方向を奥行き方向としたときに、前記上部シード層形成工程において、前記上部除外ゾーンを前記予定ラインよりも外側から前記奥行き方向に沿って確保する請求項2〜7のいずれか一項記載の薄膜磁気ヘッドの製造方法。
【請求項9】
前記上部シールド層を形成する上部シールド層形成工程が、
前記上部シールド層を構成する第1の上部シールド部を形成する第1の上部シールド部形成工程と、
前記薄膜コイルを構成する導体層の前記媒体対向面側に、前記上部シールド層を構成する第2の上部シールド部を前記第1の上部シールド部に接続され、かつ前記媒体対向面内に配置されるように形成する第2の上部シールド部形成工程と、
前記上部シールド層を構成する連結シールド部を前記第2の上部シールド部に接続され、かつ前記薄膜コイルを跨ぎ、さらに前記媒体対向面から離れるように前記媒体対向面から後退させて形成する連結シールド部形成工程と、
前記第2の上部シールド部の前記連結シールド部によって被覆されていない前記媒体対向面側の一部分を切除するトリミング工程とを有する請求項1〜8のいずれか一項記載の薄膜磁気ヘッドの製造方法。
【請求項10】
前記トリミング工程は、前記連結シールド部形成工程によって形成された前記連結シールド部をマスクに用いて、前記第2の上部シールド部の前記連結シールド部によって被覆されていない前記媒体対向面側の一部分を切除する請求項9記載の薄膜磁気ヘッドの製造方法。
【請求項11】
記録媒体に対向する媒体対向面の側に磁極端面を有する主磁極層と、前記媒体対向面内に配置されたシールド端面をそれぞれ有し、かつ前記主磁極層を挟むように配置されている下部シールド層および上部シールド層と、前記主磁極層、前記下部シールド層または前記上部シールド層のいずれかの周りに巻回された薄膜コイルとが基板上に積層された構成を有する薄膜磁気ヘッドであって、
前記下部シールド層を構成する第1の下部シールド部と、
前記下部シールド層を構成し、かつ前記第1の下部シールド部上に形成されている第2の下部シールド部と、
前記第2の下部シールド部をめっきにより形成するための下部シード層とを有し、
該下部シード層が、前記媒体対向面から後退している下部形成ゾーン上だけに配置される部分配置構造を備えた部分下部シード層として形成されている薄膜磁気ヘッド。
【請求項12】
前記上部シールド層を構成し、かつ前記主磁極層上に形成されている第1の上部シールド部と、
前記主磁極層と前記第1の上部シールド部の間に配置され、前記第1の上部シールド部をめっきにより形成するための上部シード層とを更に有し、
該上部シード層が、前記媒体対向面から後退している上部形成ゾーン上だけに配置される部分配置構造を備えた部分上部シード層として形成されている請求項11記載の薄膜磁気ヘッド。
【請求項13】
前記第1の下部シールド部と前記第2の下部シールド部との間に前記下部シード層の存在しない下部不存在ゾーンが形成され、
前記部分下部シード層の端面が前記媒体対向面に出現することなく前記下部不存在ゾーンに出現している請求項11または12記載の薄膜磁気ヘッド。
【請求項14】
前記主磁極層と前記第1の上部シールド部との間に前記上部シード層の存在しない上部不存在ゾーンが形成され、
前記部分上部シード層の端面が前記媒体対向面に出現することなく前記上部不存在ゾーンに出現している請求項12または13記載の薄膜磁気ヘッド。
【請求項15】
前記下部不存在ゾーンが前記媒体対向面から前記下部形成ゾーンまでの間の前記媒体対向面に沿った前記媒体対向面の幅方向全体にわたる帯状の領域に設定されている請求項13または14記載の薄膜磁気ヘッド。
【請求項16】
前記上部不存在ゾーンが前記媒体対向面から前記上部形成ゾーンまでの間の前記媒体対向面に沿った前記媒体対向面の幅方向全体にわたる帯状の領域に設定されている請求項14または15記載の薄膜磁気ヘッド。
【請求項17】
基台上に形成された薄膜磁気ヘッドと、前記基台を固定するジンバルとを備え、
前記薄膜磁気ヘッドは、記録媒体に対向する媒体対向面の側に磁極端面を有する主磁極層と、前記媒体対向面内に配置されたシールド端面をそれぞれ有し、かつ前記主磁極層を挟むように配置されている下部シールド層および上部シールド層と、前記主磁極層、前記下部シールド層または前記上部シールド層のいずれかの周りに巻回された薄膜コイルとが基板上に積層された構成を有し、
前記下部シールド層を構成する第1の下部シールド部と、
前記下部シールド層を構成し、かつ前記第1の下部シールド部上に形成されている第2の下部シールド部と、
前記第2の下部シールド部をめっきにより形成するための下部シード層とを有し、
該下部シード層が、前記媒体対向面から後退している下部形成ゾーン上だけに配置される部分配置構造を備えた部分下部シード層として形成されているヘッドジンバルアセンブリ。
【請求項18】
薄膜磁気ヘッドを有するヘッドジンバルアセンブリと、前記薄膜磁気ヘッドに対向する記録媒体とを備え、
前記薄膜磁気ヘッドは、記録媒体に対向する媒体対向面の側に磁極端面を有する主磁極層と、前記媒体対向面内に配置されたシールド端面をそれぞれ有し、かつ前記主磁極層を挟むように配置されている下部シールド層および上部シールド層と、前記主磁極層、前記下部シールド層または前記上部シールド層のいずれかの周りに巻回された薄膜コイルとが基板上に積層された構成を有し、
前記下部シールド層を構成する第1の下部シールド部と、
前記下部シールド層を構成し、かつ前記第1の下部シールド部上に形成されている第2の下部シールド部と、
前記第2の下部シールド部をめっきにより形成するための下部シード層とを有し、
該下部シード層が、前記媒体対向面から後退している下部形成ゾーン上だけに配置される部分配置構造を備えた部分下部シード層として形成されているハードディスク装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【公開番号】特開2013−93089(P2013−93089A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−181561(P2012−181561)
【出願日】平成24年8月20日(2012.8.20)
【出願人】(500475649)ヘッドウェイテクノロジーズ インコーポレイテッド (251)
【出願人】(500393893)新科實業有限公司 (361)
【氏名又は名称原語表記】SAE Magnetics(H.K.)Ltd.
【住所又は居所原語表記】SAE Technology Centre, 6 Science Park East Avenue, Hong Kong Science Park, Shatin, N.T., Hong Kong
【Fターム(参考)】