説明

薄葉紙ディスペンサー

【課題】薄葉紙が引き出し易く、引き出しがスムーズであると共に、薄葉紙が束になって取出されることを有効に防止した薄葉紙ディスペンサーを提供する。
【解決手段】 後面部11と、後面部の両側から前方に延びる内側面部12,13とを有する筐体部10と、筐体部の下部に設けられ、薄葉紙を取出し可能な取出口25を有する薄葉紙支持部20と、前面部31と、前面部の両側から後方に延びる外側面部32,33とを有し、筐体部の開口を覆う開閉自在な蓋部30と、を備え、薄葉紙の積層体80を収容した薄葉紙ディスペンサー100であって、取出口は、内側面部同士が並ぶ横方向Wに平行に延びる細長孔であり、薄葉紙支持部の内面は、前面部と後面部とが並ぶ厚み方向Dにおいて下方に向かって先細りつつ取出口に繋がり、薄葉紙支持部の内側面22,23には、内側に向かって突出しつつ段状に形成された段部40,50が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自身の内部空間に収容した薄葉紙の積層体を、下部から取出す薄葉紙ディスペンサーに関する。
【背景技術】
【0002】
全体として略箱形をなし、下部に設けられた取出口から、自身の内部空間に収容した薄葉紙(キッチンペーパー、ペーパータオル等)の積層体を1枚ずつ取出す薄葉紙ディスペンサーが店舗等で種々用いられている。
このような薄葉紙ディスペンサーにおいては、薄葉紙が1枚でなく束になって取出される点が従来から問題となっていた。そこで、取出口に向かう薄葉紙ディスペンサーの内面に所定の傾斜角を設定し、薄葉紙をそれら傾斜面で適度に支持することで、薄葉紙が束になって取出される事故を低減した技術が提案されている(特許文献1参照)。
又、取出口に向かう薄葉紙ディスペンサーの内側面に、内側に突出する突出部を設け、薄葉紙の引き出し時に適度な抵抗を与えてスムーズな引き出しを実現し、薄葉紙が束になって取出される事故を低減した技術が提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-29511号公報
【特許文献2】特開2009-136586号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、依然として薄葉紙が束になって取出されることを有効に防止することは困難であった。また、これらのディスペンサーはほぼ真下に向かってシートを引き出す構造となっており、収納されたシートが満載に近い状態と少ない状態とでシートの引き出し抵抗が異なることがある。そのため、シート満載時には抵抗が大きくシートが千切れやすく、あるいは人間の習性上、真下よりはむしろ手前に引っ張る傾向にあるため、斜め引きとなってやはりシートの抵抗が大きくなる、千切れ易い原因となっている。
すなわち、本発明は、薄葉紙が引き出し易く、引き出しがスムーズであると共に、薄葉紙が束になって取出されることを有効に防止した薄葉紙ディスペンサーの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明の薄葉紙ディスペンサーは、後面部と、該後面部の両側から前方に延びる内側面部とを有する筐体部と、前記筐体部の下部に設けられ、自身の上面に載置された薄葉紙を取出し可能な取出口を有する薄葉紙支持部と、前面部と、該前面部の両側から後方に延びる外側面部とを有し、前記外側面部が前記内側面部の外側に位置しつつ、各外側面部が前記筐体部の前記内側面部に対して回動自在に軸支され、前記前面部が前記筐体部の後面部に対向して該筐体部の前面開口を覆う開閉自在な蓋部と、を備え、自身の内部空間に前記薄葉紙の積層体を収容した薄葉紙ディスペンサーであって、前記取出口は、前記内側面部同士が並ぶ横方向に平行に延びる細長孔であり、前記薄葉紙支持部の内面は、前記前面部と前記後面部とが並ぶ厚み方向において下方に向かって先細りつつ前記取出口に繋がり、前記薄葉紙支持部の内側面には、内側に向かって突出しつつ段状に形成された段部が設けられている。
このような構成とすると、取出口から最下層の薄葉紙が取り出されると、その上の薄葉紙も下方に引張られ、段状の段部に衝突するときの衝撃力で薄葉紙がばらけて1枚ずつ分離する。このようにして、取出口25の薄葉紙積層体がばらけるので、薄葉紙が束になって取出されることを有効に防止することができる。
【0006】
前記薄葉紙支持部が前記筐体部に対し、前記厚み方向に傾角可変に固定されるとよい。
前記段部は2段以上の段状に形成され、各段は下方に向かうほど内側に突出するとよい。
前記段部の各段は、下方に向かうほど前記厚み方向にも突出するとよい。
前記前面部の内面の前記横方向の中心部が周囲より後方に凹み、当該凹部と前記後面部の内面とに前記薄葉紙の積層体が接するとよい。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、薄葉紙が引き出し易く、引き出しがスムーズであると共に、薄葉紙が束になって取出されることを有効に防止した薄葉紙ディスペンサーが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る薄葉紙ディスペンサーの蓋部を開いたときの斜視図である。
【図2】薄葉紙ディスペンサーの蓋部を閉じたときの正面図である。
【図3】薄葉紙ディスペンサーの蓋部を開閉したときの側面図である。
【図4】薄葉紙ディスペンサーの蓋部を閉じたときの上面図である。
【図5】薄葉紙支持部の正面図である。
【図6】薄葉紙支持部の側面図である。
【図7】本発明の第2の実施形態に係る薄葉紙ディスペンサーの側面図である。
【図8】第2の実施形態における薄葉紙支持部の側面図である。
【図9】薄葉紙支持部の上面図である。
【図10】段部を設けることによる作用を示す図である。
【図11】従来の薄葉紙ディスペンサーの突起による作用を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る薄葉紙ディスペンサー100の蓋部30を開いたときの斜視図を示す。薄葉紙ディスペンサー100はABS樹脂等の樹脂製であり、筐体部10と、筐体部10の下部に設けられた薄葉紙支持部20と、筐体部10の前面開口を覆う開閉自在な蓋部30とを備えている。
なお、筐体部10の後面部11が壁面等の取付け対象に取り付けられ、薄葉紙ディスペンサー100自身は取付け対象から手前側へ突出する。従って、後面部11から手前側へ向かう方向を「前方」と称し、手前側から後面部11へ向かう方向を「後方」と称する。又、薄葉紙ディスペンサー100の薄葉紙支持部20側を「下側、下方」とし、反対側を「上側、上面」とする。
又、以下の内側面部12、13同士が並ぶ方向を横方向Wとし、以下の前面部31と後面部11とが並ぶ方向を厚み方向Dとする。又、上下方向を符号Hで表す。
【0010】
筐体部10は、平板状の後面部11と、後面部11の両側から前方にそれぞれ直角に延びる2つの内側面部12、13と、内側面部12、13の上端後方側及び後面部11上端を接続する上面部14とを有する。そして、上面部14より前方側の内側面部12、13の上端は半円形の角部12R,13Rを形成している。
筐体部10の前面及び下面は開口され、この前面開口から筐体部10内に薄葉紙の積層体80を収容可能になっている。又、薄葉紙の積層体80は、その積層面が薄葉紙支持部20に近い領域で徐々に傾斜するようにして収容される。
薄葉紙としては、抄紙や不織布等からなるキッチンペーパー、ペーパータオル、ワイパー等が例示される。薄葉紙は、横方向Wに沿って例えば2つ折りされ、隣接する薄葉紙の折り返し縁同士を重ねている。このため、薄葉紙を1枚取り出すと、次の薄葉紙の一部が引き出され、次回の取出しが容易になっている。なお、薄葉紙の折り方は2つ折りに限定されず、公知の折り方(例えばZ折り)を採用することができる。
【0011】
筐体部10の下面開口を閉塞するようにして、略半円筒状の薄葉紙支持部20が内側面部12、13の間に前後方向(厚み方向D)の傾角が可変となるように固定されている。より詳しくは、薄葉紙支持部20の筒面の軸方向を横方向Wと平行にしつつ、薄葉紙支持部20の両側部22、23を筐体部10の内側面部12、13の内側に所定の傾角で固定するようになっている。このとき、上記傾角は、0°(つまり、取出口25の開口面25aが上下方向Hに垂直;図6参照)から、+30°(つまり、取出口25の開口面25aが上下方向Hから30°手前側に傾いている;図8参照)の範囲で任意の角度とすることができる。なお、第1の実施形態においては、傾角を0°としている。
このため、両側部22、23は外側に突出する係合部28a(図5参照)を備え、内側面部12、13には該係合部28aを遊嵌しつつ傾角の調整が可能な長円状の係合孔12f、13f(図3には13fを表示)が設けられ、係合孔12f、13fは係合部28aより大きくなっている。又、両側部22、23は外側に突出する円柱状の軸28b(図5参照)を備え、内側面部12、13には軸28bを軸支する丸い係合孔23bが設けられている。そして、係合孔23bで軸28bを軸支しつつ、係合孔12f、13fに遊嵌した係合部28aを軸28b周りに回動させて所望の傾角に調整する。その後、両側部22、23にネジ止めされた雄ネジ28cを内側面部12、13に向かって突出させ当接させることで、薄葉紙支持部20が所定の傾角で位置決めされつつ筐体部10の下面に固定される。
なお、この実施形態では、筐体部10と薄葉紙支持部20とを別体としているが、一体成形等により両者を一体としてもよい。但し、この場合、薄葉紙支持部20の前後方向の傾角は一定の値に固定される。又、この実施形態では、内側面部12、13の間に薄葉紙支持部20を固定しているが、両者を固定する場合の態様はこれに限られない。
【0012】
さらに、薄葉紙支持部20の最下面には、横方向Wに平行に延びる取出口25が開口し、取出口25はスリット状の細長孔をなしている。又、取出口25の横方向W中央部は上部に向かって略台形状に切り欠けられて凹欠部26を形成している。そして、薄葉紙支持部20の上面に薄葉紙の積層体80を載置して使用を開始する際、凹欠部26から積層面に触れて最初の1枚の薄葉紙を掴み易いという利点がある。
又、詳しくは後述するが、薄葉紙支持部20の両側部(内側面)22、23には、内側に向かって突出する段部40、50がそれぞれ設けられている。各段部40、50は、2段以上の段状に形成され、各段は下方に向かうほど内側に突出するようになっている。
【0013】
蓋部30は、前面部31と、前面部31の両側からそれぞれ後方に直角に延びる2つの外側面部32、33とを有している。前面部31の上端及び下端は後方に向かって湾曲し、前面部31の上端湾曲部は蓋部30の上面を形成している。一方、前面部31の下端湾曲部は下面側が解放されている。又、前面部31の中央部には、内面に向かって凹む凹部34が形成されている。
外側面部32、33の内面同士の間隔は、筐体部10の内側面部12、13の外面同士の間隔よりわずかに広幅になっていて、外側面部32、33の間に筐体部10の内側面部12、13を収容可能になっている。そして、外側面部32、33の下方の内面には内側に突出する円柱状の突起32a、33a(図2参照)が形成されている。一方、内側面部12、13の下方の外面にはこの突起が嵌合される円孔22a、23a(23aのみ図示)が形成され、外側面部32、33の間に筐体部10の内側面部12、13を収容しつつ、突起を円孔22a、23aに嵌合することで、外側面部32、33(及び蓋部30)が内側面部12、13(及び筐体部10)に対して回動自在に軸支される。
【0014】
そして、図1のA方向に沿って蓋部30を上方に回動すると、蓋部30の前面部31が筐体部10の後面部11に対向しつつ、筐体部10の前面開口を覆う。ここで、蓋部30の上面をなす湾曲部は、筐体部10の内側面部12、13の角部12R,13Rにほぼ沿って湾曲しており、蓋部30上面の内面部分に角部12R,13Rが接触しないようになっている。一方、蓋部30の下面側の解放部から、薄葉紙支持部20の取出口25が露出するようになっている。
なお、筐体部10の上面14には係合凸部14aが形成され、蓋部30の上面の内面側には係合片31aが形成されている。そして、図1のA方向に沿って蓋部30を上方に回動させると、係合片31aが係合凸部14aを乗り越えた時点で回動が終了し、蓋部30が筐体部10に係止されるようになっている。
蓋部30が筐体部10に係止され筐体部10の前面開口を覆ったときを「蓋部30を閉じた」と称し、蓋部30が筐体部10の前面開口を覆っていないときを「蓋部30を開いた」と称する。
【0015】
図2は、薄葉紙ディスペンサー100の蓋部30を閉じたときの正面図を示す。
蓋部30の前面部31の内面の横方向Wの中心部Ceが後方に凹み、凹部34が形成されている。凹部34により薄葉紙ディスペンサーの厚み方向の寸法を抑えることができ、省スペースとなる。又、蓋部30の下端縁31bが上に凸に湾曲し、蓋部30下端の解放部から、薄葉紙支持部20の取出口25及び凹欠部26が露出し、凹欠部26から薄葉紙積層体の積層面に触れることにより、最初の1枚の薄葉紙81が引き出されていることがわかる。
【0016】
図3は、薄葉紙ディスペンサー100の蓋部30を開閉したときの側面図を示す。蓋部30の前面部31の下方内側に、横方向Wに並ぶ2つのガイドリブ35が形成され(1つのみ図示)、ガイドリブ35は内面側に突出している。又、蓋部30を閉じたときにガイドリブ35に対向するよう、筐体部10の後面部11の下方内側に、横方向Wに並ぶ2つのガイドリブ15が形成され(1つのみ図示)、ガイドリブ15は内面側に突出している。
各ガイドリブ15、35は、下方に向かって突出量が連続的に増えるよう、三角形状の片をなしている。そして、薄葉紙積層体80の厚み方向Dの寸法をD80とすると、対向するガイドリブ15、35の厚み方向Dの隙間Dgは下方側でD80より小さくなり、薄葉紙積層体80の下面がガイドリブ15、35に当接して支持されると共に撓み、薄葉紙積層体80の上側部分の荷重が下側部分にかかり難くなる。このため、下側部分の薄葉紙を取出したときに、上側部分の薄葉紙積層体80が束になって落下することを抑制する。
【0017】
図4は、薄葉紙ディスペンサー100の蓋部30を閉じたときの上面図を示す。蓋部30の前面部31の下方内側に、横方向Wに並ぶ2つのガイドリブ35が形成され(1つのみ図示)、ガイドリブ35は内面側に突出している。又、蓋部30を閉じたときにガイドリブ35に対向するよう、筐体部10の後面部11の下方内側に、横方向Wに並ぶ2つのガイドリブ15が形成され(1つのみ図示)、ガイドリブ15は内面側に突出している。
又、前面部31の内面の横方向Wの中心部Ceが周囲より後方に凹み、凹部34が形成されていることがわかる。ここで、凹部34と後面部11の内面との間隔は、薄葉紙積層体80の寸法D80より若干狭く、凹部34と後面部11の内面とに薄葉紙積層体80を接しさせると、薄葉紙積層体80の一部が凹部34と後面部11に当接して支持され、薄葉紙積層体80の上側部分の荷重が下側部分にかかり難くなり、ガイドリブ15と同様の効果が生じる。又、前面部31内面を横方向Wの中心部Ceに向かって湾曲させ、中心部Ce近傍のみを薄葉紙積層体80と接触させることで、前面部31内面の横方向Wの端部側では薄葉紙積層体80と離間するため、薄葉紙積層体80と前面部31内面との摩擦が過度に高くならず、薄葉紙積層体80が円滑に落下する。
【0018】
図5は、薄葉紙支持部20の正面図を示す。薄葉紙支持部20の両側部(内側面)22、23には、内側に向かって突出する段部40、50がそれぞれ設けられている。段部40は、上側から順に、上側基部41、上側基部41の垂直側面から段状に(水平に)内側に突出する第1段42、第1段42の垂直側面から段状に内側に突出する第2段43、第2段43の垂直側面から段状に内側に突出する第3段44を備えている。上側基部41及び各段42〜44の角部は湾曲している。同様に段部50は、上側から順に、上側基部51及び第1段52〜第3段54を備えている。従って、各段部40,50の間隔は下方に向かうほど狭くなり、第3段44、54の間隔が最も狭くなっている。
【0019】
図6は、薄葉紙支持部20の側面図を示す。側面から見て薄葉紙支持部20は略半円状をなしている。そして、前方側の内面20aが下方に向かって半円弧状に後方側に湾曲し、上下方向Hに水平な下端縁20cに繋がっている。同様に、後方側の内面20bが下方に向かって半円弧状に前方側に湾曲し、上下方向Hに水平な下端縁20cに繋がっている。下端縁20cで囲まれるスリット状の細長孔が取出口25を形成する。
このように、厚み方向Dにおいて、薄葉紙支持部20の内面20a、20bは下方に向かって弧状に滑らかに先細りつつ取出口25に繋がっている。このため、薄葉紙積層体80が内面20a、20bにスムーズに案内され、取出口25から取り出し易くなる。
【0020】
又、この実施形態では、内面20a、20bの曲率が略同一である。又、段部50(段部40も同様)の各段52〜54は、下方に向かうほど厚み方向Dにも突出する。これにより、薄葉紙積層体50が下方に移動するにつれて段との薄葉紙の支持面積を増やし、段による薄葉紙の保持効果を高めるので、最下方の薄葉紙を引き出す際に、薄葉紙積層体が連続して取り出され難く、隣接する薄葉紙の分離効果が高まる。
【0021】
次に、図7、図8を参照し、本発明の第2の実施形態に係る薄葉紙ディスペンサー110について説明する。図7は、薄葉紙ディスペンサー110の蓋部30を閉じたときの側面図を示し、図8は、薄葉紙支持部20の側面図を示す。但し、第2の実施形態は、薄葉紙支持部20の傾角θを+30°としたこと以外は第1の実施形態と同一であるので、第1の実施形態と同一部分については同一符号を付して説明を省略する。
図7、図8に示すように、第2の実施形態においては、取出口25の開口面が上下方向Hから30°手前側に傾いており、引出し側20aが係合孔23bを中心に30°傾き、後側20bよりやや高くなっている。従って、薄葉紙支持部20の内面20a、20bに案内された薄葉紙積層体80は、急斜面の内面20b側で落下量が大きくなり、前方側を上にして斜めになる。その結果、凹欠部26を見下ろす位置にある使用者は、薄葉紙積層体80の積層側面及び薄葉紙の底面を凹欠部26からほぼ同時に見ることになり、薄葉紙の有無の確認や薄葉紙の引き出し端部が見えやすくなる。また、薄葉紙支持部20の内面20a、20bに案内された薄葉紙積層体は、前方側に押し出され、使用者は、下方から手前側に薄葉紙を引出し易くなる。
【0022】
図9は、薄葉紙支持部20の上面図を示す。横方向Wに平行に取出口25が延び、取出口25の横方向W中央部は上部に向かって略台形状に切り欠けられて凹欠部26を形成している。
又、厚み方向Dにおいて、各段部40,50の厚みは取出口25の幅と略同一になっている。
【0023】
次に、図10、図11を参照し、各段部40,50を設けることによる作用について説明する。なお、簡単のため、左側の段部40のみ表示するが、段部50についても同様である。
図10に示すように、薄葉紙積層体80の下側の薄葉紙81、82は、まず段部40の上側基部41の上面に引っ掛かる。この状態で、取出口25(図示せず)から最下層の薄葉紙が取り出されると、薄葉紙81、82も下方に引張られ、上側基部41から一気に第1段42の上面に衝突する。すると、このときの衝撃力で薄葉紙81、82がばらけて1枚ずつ分離する。具体的には、上方の薄葉紙82が第1段42の上面に引っ掛かる一方、下方の薄葉紙81は第1段42に衝突した衝撃でさらに下方の第2段43の上面に引っ掛かる。
このようにして、各段部40,50により、取出口25近傍の下側の薄葉紙積層体80がばらけるので、薄葉紙が束になって取出されることを有効に防止することができる。
【0024】
図11は、従来の薄葉紙ディスペンサーの突起400(例えば、特許文献2の図5、図6の突起29に相当)による作用を示す。
突起400は斜面400aを有しており、取出口25(図示せず)から最下層の薄葉紙が取り出されると、薄葉紙81、82は斜面400aに沿って下方に引張られるが、急峻な段差が存在しないため、大きな衝撃力が加わらず、薄葉紙81、82がばらけ難い。従って、依然として薄葉紙が束になって取出されることがある。
【0025】
なお、段差による衝撃力を薄葉紙積層体に加えるため、上側基部41や各段42〜44の側面(例えば、図10の上側基部41の側面41a)は垂直に切り立っていることが好ましいが、各段部40,50を樹脂成形等する場合の型抜きを容易にするため、垂直よりわずかに緩い角度をなしていてもよい。この角度は0°〜5°が好ましい。
又、各段部40,50は、両側部(内側面)22、23からそれぞれ内側に向かって突出する上側基部41、51を備えることを必須とし、この上側基部41、51から少なくも1段の段差を設けた第1段42、52を備えることを必須とする。このように、段は1つであってもよいが、2段以上の段(第1段42、第2段43等)を設けると、取出口25近傍の下側の薄葉紙積層体80がさらにばらけ易くなるので好ましい。
【0026】
本発明は上記した実施形態に限定されず、本発明の思想と範囲に含まれる様々な変形及び均等物に及ぶことはいうまでもない。
【符号の説明】
【0027】
10 筐体部
11 後面部
12,13 内側面部
20 薄葉紙支持部
22,23 薄葉紙支持部の内側面
25 取出口
30 蓋部
31 前面部
32,33 外側面部
34 凹部
40,50 段部
42〜44、52〜54 段
80 薄葉紙の積層体
100、110 薄葉紙ディスペンサー
W 内側面部同士が並ぶ横方向
D 前面部と後面部とが並ぶ厚み方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
後面部と、該後面部の両側から前方に延びる内側面部とを有する筐体部と、
前記筐体部の下部に設けられ、自身の上面に載置された薄葉紙を取出し可能な取出口を有する薄葉紙支持部と、
前面部と、該前面部の両側から後方に延びる外側面部とを有し、前記外側面部が前記内側面部の外側に位置しつつ、各外側面部が前記筐体部の前記内側面部に対して回動自在に軸支され、前記前面部が前記筐体部の後面部に対向して該筐体部の前面開口を覆う開閉自在な蓋部と、を備え、
自身の内部空間に前記薄葉紙の積層体を収容した薄葉紙ディスペンサーであって、
前記取出口は、前記内側面部同士が並ぶ横方向に平行に延びる細長孔であり、
前記薄葉紙支持部の内面は、前記前面部と前記後面部とが並ぶ厚み方向において下方に向かって先細りつつ前記取出口に繋がり、
前記薄葉紙支持部の内側面には、内側に向かって突出しつつ段状に形成された段部が設けられている薄葉紙ディスペンサー。
【請求項2】
前記薄葉紙支持部が前記筐体部に対し、前記厚み方向に傾角可変に固定される請求項1記載の薄葉紙ディスペンサー
【請求項3】
前記段部は2段以上の段状に形成され、各段は下方に向かうほど内側に突出する請求項2記載の薄葉紙ディスペンサー。
【請求項4】
前記段部の各段は、下方に向かうほど前記厚み方向にも突出する請求項2記載の薄葉紙ディスペンサー。
【請求項5】
前記前面部の内面の前記横方向の中心部が周囲より後方に凹み、当該凹部と前記後面部の内面とに前記薄葉紙の積層体が接する請求項1〜4のいずれかに記載の薄葉紙ディスペンサー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−20778(P2012−20778A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−161499(P2010−161499)
【出願日】平成22年7月16日(2010.7.16)
【出願人】(000183462)日本製紙クレシア株式会社 (112)
【Fターム(参考)】