説明

薬剤容器

【課題】水溶性薬剤による効果を安定して持続することができる薬剤容器を提供する。
【解決手段】水溶性薬剤22から揮散した芳香成分を、容器本体21上部の側方開口部131から外部に放出する。容器本体21下部の供給水をトレー脚部51で吸収し、この供給水によってトレー33上に載置された水溶性薬剤22をその底面側から徐々に溶解する。側方開口部131を側方へ向けて開口することで、カランからの供給水が容器本体21上方から供給された場合であっても、当該供給水の側方開口部131を介した容器本体21内部への浸入を防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水溶性薬剤を収容した薬剤容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トイレにおいて、貯水タンクに配置して使用する芳香洗浄剤が知られている(例えば、特許文献1から特許文献4参照。)。
【0003】
この芳香洗浄剤は、容器本体を備えており、該容器本体内には、固形状の水溶性薬剤が収容されている。前記容器本体は、上部構成部と下部構成部とによって構成されており、上部構成部を着脱することで、前記水溶性薬剤を交換できるように構成されている。
【0004】
前記上部構成部の天面には、内部に水を取り入れるための取入口が開設されており、前記下部構成部は、流入した水を排出する排出口が開設されている。
【0005】
この芳香洗浄剤を使用する際には、前記貯水タンク上部に設けられた手洗い部に前記芳香洗浄剤を載置するとともに、該芳香洗浄剤を、手洗い用のカランの下部に配置する。この状態において、トイレを使用して水を流すと、前記カランから供給された水が前記芳香洗浄剤上に流れ落ちる。
【0006】
このとき、前記容器本体の前記上部構成部には、前記取入口が開口しており、前記カランからの水が前記取入口を介して前記容器本体内に取り込まれる。すると、該容器本体に収容された前記水溶性薬剤が、その外周部からゆっくりと溶解し、当該水溶性薬剤に含まれた洗浄成分の溶け込んだ水が前記タンク内に貯留されるように構成されている。一方、前記水溶性薬剤の上面からは、芳香成分が揮散するように構成されており、揮散した芳香成分は、前記取入口を介して外部に放出されるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実開平6−008470公報
【特許文献2】実開平6−067574公報
【特許文献3】特開平11−241388公報
【特許文献4】特開2001−073432公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、このような従来の薬剤容器にあっては、天面の取入口から取り込まれた水によって内部の水溶性薬剤を溶解する構造上、溶解過程において、前記水溶性薬剤は、その外周部から溶解して小さくなる。
【0009】
このため、この水溶性薬剤は、水と接する周面の表面積が徐々に狭くなり、経時的に溶解量が少なくなってしまう。
【0010】
また、外周部から溶解して小さくなるため、上面の表面積が徐々に狭くなる。これにより、芳香成分の揮散量が経時的に低下するという問題があった。
【0011】
本発明は、このような従来の課題に鑑みてなされたものであり、水溶性薬剤による効果を安定して持続することができる薬剤容器を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するために本発明の請求項1の薬剤容器にあっては、貯水タンクの手洗い部に配置され、容器本体内に収容された水溶性薬剤を前記貯水タンクに設けられた手洗い用カランからの供給水で溶解する薬剤容器において、前記水溶性薬剤を載置する載置部を前記供給水が浸透する浸透部材で構成し、該載置部の少なくとも一部が前記容器本体の底面より下方へ突出するように構成する一方、前記容器本体の上部に側方へ向けて開口する側方開口部を開設した。
【0013】
すなわち、トレイには、水洗用の貯水タンクが設けられており、該貯水タンクの上部には、手を洗うための手洗い部が設けられている。この手洗い部には、手洗い用カランが設けられており、該カランからは、トレイを流す度に水が供給されるように構成されている。
【0014】
前記薬剤容器を使用する際には、前記容器本体を前記貯水タンクの前記手洗い部に配置する。この状態において、トイレの水を流す。すると、前記カランからは、手洗い用の水が供給され、前記手洗い部で受けられる。
【0015】
このとき、この手洗い部には、前記容器本体が載置されており、該容器本体内に収容された水溶性薬剤は、載置部に載置されている。この載置部は、供給水が浸透する浸透部材で構成されており、当該載置部の少なくとも一部は、前記容器本体の底面より下方へ突出するように構成されている。
【0016】
このため、前記カランから供給され前記容器本体の下部を流れる供給水は、前記載置部で吸水され、当該載置部上に載置された前記水溶性薬剤は、前記載置部に接する底面から徐々に溶解する。
【0017】
一方、前記容器本体の上部には、側方へ向けて開口する側方開口部が開設されている。このため、前記水溶性薬剤から揮散した揮散成分は、前記側方開口部を介して外部へ放出される。
【0018】
このとき、この側方開口部は、側方へ向けて開口している。このため、当該容器本体が前記カランの真下に配置され、当該カランからの供給水が容器本体上方から供給される場合であっても、当該供給水の前記側方開口部を介した容器本体内部への浸入が防止される。
【0019】
また、請求項2の薬剤容器においては、前記容器本体の少なくとも上部を、下方へ向かうに従って側方へ突出する傾斜部と、該傾斜部の上部中央部より上方へ向けて起立した筒状の起立部と、該起立部の上部を閉鎖する屋根部とで構成し、前記起立部に内部へ連通する前記側方開口部を設けた。
【0020】
すなわち、前記容器本体の少なくとも上部は、下方へ向かうに従って側方へ突出する傾斜部と、該傾斜部の上部中央部より上方へ向けて起立した筒状の起立部と、該起立部の上部を閉鎖する屋根部とによって構成されており、前記起立部に前記側方開口部が設けられている。
【0021】
このため、前記容器本体が前記カランの真下に配置され、該カランから供給水が供給された際には、供給水が前記容器本体の上部を構成する屋根部に沿って、その外周方向へ案内された後、傾斜部に沿って外周部へ向けて案内される。
【0022】
このとき、前記傾斜部の上部中央部には、上方へ向けて起立した起立部が起立しており、該起立部には、前記側方開口部が設けられている。このため、前記屋根部及び前記傾斜部に沿って流れる供給水は、前記側方開口部から離れる方向に案内される。
【0023】
さらに、請求項3の薬剤容器では、前記側方開口部の上部に側方へ向けて突出する庇部を設けた。
【0024】
すなわち、前記側方開口部の上部には、側方へ向けて突出する庇部が設けられており、前記カランからの供給水が前記側方開口部へ向けて流れた場合には、当該供給水は前記庇部によって側方へ案内される。
【0025】
加えて、請求項4の薬剤容器にあっては、前記屋根部の周縁部を前記起立部より側方へ突出して前記庇部を形成した。
【0026】
すなわち、前記屋根部は、その周縁部が前記起立部より側方へ突出しており、当該屋根部の周縁部によって前記庇部が形成されている。
【0027】
このため、前記屋根部の一部は、前記庇部として有効利用されてる。
【0028】
また、前記屋根部に落ちた前記供給水は、前記庇部を構成する部分によって前記側方開口部から離れる方向に案内される。
【発明の効果】
【0029】
以上説明したように本発明の請求項1の薬剤容器にあっては、容器本体の上部に開設された側方開口部は、側方へ向けて開口するように構成されている。
【0030】
このため、前記容器本体がカランの真下に配置され、当該カランからの供給水が容器本体上方から供給される場合であっても、前記側方開口部を介した容器本体内部への前記供給水の浸入を防止することができるとともに、前記水溶性薬剤からの揮散成分を前記側方開口部から外部へ放出することができる。
【0031】
そして、水洗時には、容器本体の下部を流れる供給水を載置部が吸収することで、該載置部に載置された水溶性薬剤を、当該載置部に接した底面から徐々に溶解することができる。
【0032】
このため、容器本体天面の取入口から取り込まれた水によって、内部の水溶性薬剤を外周部から溶解して小さくする構造上、溶解が進行するに連れて供給水と接する周面の表面積が徐々に小さくなる従来と比較して、経時的な溶解速度の低下を防止することができる。これにより、溶解時に放出する溶解成分の供給量を一定に保持することができる。
【0033】
また、前記水溶性薬剤が外周部から溶解して小さくなる構造上、揮散成分が揮散する上面の表面積が徐々に狭くなる従来と比較して、上面から揮散する揮散成分の揮散量の経時的な減少を防止することができる。これにより、揮散成分の揮散量を一定に保持することができる。
【0034】
したがって、水溶性薬剤による効果を最後まで安定して持続させることができる。
【0035】
また、請求項2の薬剤容器においては、カランからの供給水が容器本体の上部から供給された場合であっても、当該供給水を前記容器本体の上部を構成する屋根部に沿って、その外周方向へ流した後、傾斜部に沿って外周部へ向けて流すことができる。
【0036】
このとき、前記傾斜部の上部中央部には、上方へ向けて起立した起立部が起立しており、この起立部に、前記側方開口部が設けられている。このため、前記屋根部及び前記傾斜部に沿って流れる供給水を、前記側方開口部から離れる方向に案内することができ、前記側方開口部からの浸入を防止することができる。
【0037】
さらに、請求項3の薬剤容器では、前記側方開口部の上部に、側方へ向けて突出した庇部が設けられており、前記カランからの供給水が前記側方開口部へ向けて流れた場合であっても、当該供給水を前記庇部によって側方へ流し落とすことができる。
【0038】
これにより、前記側方開口部からの前記供給水の浸入を確実に防止することができる。
【0039】
加えて、請求項4の薬剤容器にあっては、前記屋根部の周縁部が前記起立部より側方へ突出するように構成されており、当該屋根部の周縁部によって前記庇部が形成されている。
【0040】
このため、前記屋根部の一部を、前記庇部として有効利用することができる。
【0041】
また、前記屋根部に落ちた前記供給水を、前記庇部を構成する前記屋根部の周縁部によって、直接的に前記側方開口部から離れる方向へ案内して流し落とすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の一実施の形態を示す一部断面図である。
【図2】同実施の形態の上容器を示す説明図である。
【図3】同実施の形態の下容器を示す説明図である。
【図4】同実施の形態のトレーを示す説明図である。
【図5】同実施の形態の要部の断面を示す拡大図である。
【図6】図2のA部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、本発明の一実施の形態を図に従って説明する。
【0044】
図1は、本実施の形態にかかる薬剤容器1を示す図であり、該薬剤容器1は、トイレで使用されるものである。
【0045】
すなわち、トイレには、水洗用の水を貯留する貯水タンク11が設けられており、該貯水タンク11の天部には、手洗い用の手洗い部12が設けられている。該手洗い部12には、手洗い用のカランが設けられており、前記貯水タンク11に設けられた水洗レバーを操作時に、前記カランから水が供給されるように構成されている。このカランから供給された供給水は、前記手洗い部12で受けられ、該手洗い部12に沿って流れるとともに、当該手洗い部12に設けられた開口部を介して前記貯水タンク内に貯留されるように構成されている。
【0046】
前記薬剤容器1は、容器本体21によって構成されており、該容器本体21には、固形状の水溶性薬剤22が収容されている。該水溶性薬剤22は、芳香機能を有した芳香成分と、便器の洗浄機能を有した洗浄成分とを含有しており、前記芳香成分を揮散するように構成されている。また、前記水溶性薬剤22は、前記カランからの供給水で溶解して前記洗浄成分を前記供給水に溶出するように構成されており、当該供給水が前記貯水タンク11より便器へ流される際に当該便器を洗浄できるように構成されている。
【0047】
前記容器本体21内には、図2にも示すような上容器31と、図3にも示すような下容器32とによって構成されており、当該容器本体21内部には、図4にも示すような載置部としてのトレー33が収容されている。
【0048】
該トレー33は、図1及び図4に示したように、上方へ向けて開口した円形容器状のトレー本体41からなり、該トレー本体41は、円形状のトレー底面42と該トレー底面42の周縁より起立したトレー周壁43とによって構成されている。該トレー周壁43の上縁からは、トレーフランジ44が側方へ向けて延出しており、当該トレーフランジ44は、前記トレー本体41の全周に渡って一体形成されている。該トレーフランジ44には、対向する部位に矩形状の矩形切欠部45,45が形成されており、当該トレー33を位置決めできるように構成されている。
【0049】
前記トレー底面42には、複数のトレー脚部51,・・・が一体形成されている。各トレー脚部51,・・・は、楕円形状に形成されており、前記トレー底面42より下方へ向けて膨出形成されている。このトレー底面42には、前記水溶性薬剤22が載置されるように構成されており、当該水溶性薬剤22は、図1に示したように、使用前状態においては、容器状のカップ52に収容された状態で前記トレー33上に載置されている。
【0050】
このトレー33は、水を浸透する浸透部材である不織布によって形成されており、当該薬剤容器1を前記貯水タンク11の前記手洗い部12に載置した状態で、当該手洗い部12に沿って流れる供給水を吸収して吸い上げるように構成されている。
【0051】
これにより、前記トレー底面42上に載置された前記水溶性薬剤22を、前記手洗い部12より浮かせた状態に維持しつつ、当該トレー33で吸い上げられた前記供給水によって前記トレー底面42に接した底部から前記水溶性薬剤22を溶解できるように構成されている。
【0052】
前記容器本体21の下部を構成する前記下容器32は、図1及び図3に示したように、やや横長の楕円形の下容器底面61と、該下容器底面61の周縁より上方へ向けて延出した下容器側面62とによって上方へ向けて開口した容器状に形成されており、該下容器側面62は、上方へ向かうに従って側方へ膨出した曲面状に形成されている。
【0053】
前記下容器底面61には、楕円形状の底面開口部71が開設されており、当該下容器底面61は、前記底面開口部71を包囲する楕円リング状に形成されている。この下容器底面61には、下容器脚部72,・・・が四ヶ所に形成されており、各下容器脚部72,・・・は、下方へ向けて突出した半円板状に形成されている。
【0054】
前記下容器底面61の長手方向対向部位には、矩形状の切欠部81,81が形成されており、該切欠部81,81の奥側の縁からは、板状の起立壁82,82が上方へ向けて延出している。各起立壁82,82の上端部には、内側へ向けて突出した爪部83,83が一体形成されており、当該起立壁82,82の横幅は、前記トレー33に設けられた前記矩形切欠部45,45の幅寸法よりやや細めに設定されている。
【0055】
これにより、図1にも示したように、前記トレー33の前記トレーフランジ44に形成された前記矩形切欠部45,45を前記下容器32の前記起立壁82,82に合わせってセットすることで、当該トレー33の不用意な回転を防止できるように構成されている。また、前記起立壁82,82の前記爪部83,83が前記トレー33の前記トレー周壁43上縁に係合することで、当該トレー33の不用意な離脱を防止できるように構成されており、前記トレー33は、当該トレー33の前記トレー周壁43上縁が前記起立壁82,82の前記爪部83,83に当接した時点で上方への移動が規制されるように構成されている。
【0056】
前記トレー33は、前記トレー底面42が前記下容器32の前記下容器底面61に支持されるように構成されており、当該トレー33は、前記トレー底面42が前記下容器32の前記下容器底面61に支持された状態で下方への移動が規制されるように構成されている。
【0057】
これにより、前記トレー33は、前記トレー底面42が前記下容器底面61に支持された状態から前記トレー周壁43上縁が前記爪部83,83に当接した状態までの範囲内において上下動できるように構成されており、当該トレー33は、前記手洗い部12の載置面の形状に追従して上下動できるように構成されている。
【0058】
また、前記トレー33は、前記トレー底面42が前記下容器32の前記下容器底面61に支持された状態で、前記各トレー脚部51,・・・が前記下容器32の前記下容器脚部72,・・・より下方へ突出するように、その突出量が設定されている。
【0059】
このため、当該薬剤容器1を前記手洗い部12の載置面に載置した際には、前記トレー底面42より下方に突出した前記トレー脚部51,・・・が前記載置面に当接することで、当該トレー33が上動する。そして、前記容器底面61より下方へ突出した前記下容器脚部72,・・・が前記手洗い部12の載置面に当接することで当該薬剤容器1の載置状態が形成される。このとき、前記トレー33は、上下動自在なため、前記トレー脚部51,・・・が前記載置面に接した状態を維持することができる。
【0060】
これにより、前記容器底面61の前記下容器脚部72,・・・が前記手洗い部12の載置面に接するとともに、前記トレー33の前記トレー脚部51,・・・が前記載置面に接した状態を形成することができ、載置状態の安定性を高めることができる。
【0061】
また、前記手洗い部12が平坦面であるか傾斜面であるか等の載置面の形状に関わらず、前記トレー33の前記トレー脚部51,・・・を前記載置面に接触させることができるので、当該前記トレー脚部51,・・・を、前記手洗い部12を流れる水に必ず接触させることができる。
【0062】
前記下容器側面62の上縁には、図3及び図5に示すように、下容器薄肉部91が外側面の延長上に形成されており、該下容器薄肉部91の上縁部には、内側へ向けて突出した下凸部92が一体形成されている。
【0063】
前記容器本体21の上部を構成する前記上容器31は、図1及び図2に示したように、下側を形成する胴部101と、上側を形成する頭部102とによって構成されている。
【0064】
前記胴部101は、下方へ向けて開口した半球容器状に形成されており、その外周面は、下方へ向かうに従って側方へ突出する緩やかなカーブを描いた傾斜部111を構成している。該傾斜部111の下縁には、図2及び図5に示したように、上容器薄肉部112が内側面の延長上に形成されており、該上容器薄肉部112の下縁部には、外側へ向けて突出した上凸部113が一体形成されている。
【0065】
これにより、前記上容器31を前記下容器32にセットした際には、図5に示したように、当該上容器31の前記上容器薄肉部112が前記下容器32の前記下容器薄肉部91の内側に配置されるとともに、前記上容器薄肉部112の前記上凸部113が前記下容器薄肉部91の前記下凸部92より下方に配置されることによって、当該上容器31と前記下容器32とが結合されるように構成されている。
【0066】
この胴部101より上方に延出した前記頭部102は、図2に示したように、前記傾斜部111の上部中央部より上方へ向けて起立した円筒状の起立部121と、該起立部121の上部を閉鎖する屋根部123とによって構成されている。前記起立部121は、前記傾斜部111と連続して形成されており、前記起立部121及び前記屋根部123で包囲された空間は、前記傾斜部111を有した前記胴部101内に連通している。
【0067】
前記起立部121には、当該上容器31の側方へ向けて開口してスリット状の側方開口部131,・・・が等間隔をおいた四ヶ所に形成されており、各側方開口部131,・・・によって当該上容器31の内部と外部とが連通している。
【0068】
前記屋根部123は、円形状に形成されており、中央へ向かうに従って上方へ突出した球面状に形成されている。この屋根部123は、図2及び図6にも示すように、その周縁部が前記起立部121より側方へ突出するように構成されており、当該屋根部123の周縁部は、前記起立部121より側方へ延出するように構成されている。この延出部分は、前記側方開口部131,・・・の上部において当該側方開口部131,・・・の開口面より側方へ突出するように構成されており、各側方開口部131,・・・の上部に延出した庇部141を構成している。
【0069】
以上の構成にかかる本実施において、前記薬剤容器1を使用する際には、下容器32から上容器31を分離し、収容された水溶性薬剤22を取り出すとともに、当該水溶性薬剤22からカップ52を取り外す。そして、このカップ52が取り外された水溶性薬剤22をトレー33のトレー底面42上に載置して、前記上容器31を前記下容器32に固定するとともに、当該薬剤容器1をトイレの貯水タンク11上に設けられた手洗い部12に載置する。
【0070】
このとき、前記水溶性薬剤22の表面からは、芳香成分の揮散が開始されており、揮散された芳香成分は、前記容器本体21の上部に設けられた側方開口部131,・・・を介して外部に放出される。
【0071】
この状態において、前記貯水タンク11に設けられた水洗レバーを操作してトレイの水を流すと、当該貯水タンク11のカランから供給水が供給され、前記手洗い部12で受けられる。
【0072】
このとき、この手洗い部12には、前記容器本体21が載置されており、該容器本体21内に収容された水溶性薬剤22は、載置部を構成するトレー33に載置されている。そして、このトレー33は、前記供給水が浸透する浸透部材としての不織布で構成されており、当該トレー33の少なくとも一部であるトレー脚部51,・・・は、前記容器本体21の底面を構成する下容器底面61より下方へ突出するように構成されている。
【0073】
このため、前記カランから供給され当該容器本体21の下部を流れる供給水を、前記トレー33で吸水し、この吸収した供給水によって前記トレー33上に載置された前記水溶性薬剤22を前記トレー底面42に接する底面側から徐々に溶解することができる。
【0074】
このとき、前記側方開口部131,・・・は、前記容器本体21の上部に設けられており、側方へ向けて開口している。このため、当該容器本体21が前記カランの真下に配置され、当該カランからの供給水が容器本体21上方から供給された場合であっても、当該供給水の前記側方開口部131,・・・を介した容器本体21内部への浸入を防止することができる。
【0075】
このため、前記容器本体天面の取入口から取り込まれた水によって、内部の水溶性薬剤を外周部から溶解して小さくする構造上、溶解が進行するに連れて供給水と接する周面の表面積が徐々に小さくなる従来と比較して、経時的な溶解速度の低下を防止することができる。これにより、溶解時に放出する洗浄成分の供給量を一定に保持することができる。
【0076】
また、前記水溶性薬剤22が外周部から溶解して小さくなる構造上、芳香成分が揮散する上面の表面積が徐々に狭くなる従来と比較して、水溶性薬剤22上面から揮散する芳香成分の揮散量の経時的な減少を防止することができる。これにより、芳香成分の揮散量を一定に保持することができる。
【0077】
したがって、前記水溶性薬剤22による効果を最後まで安定して持続させることができる。
【0078】
そして、前記容器本体21の上部を構成する上容器31は、胴部101と頭部102とで構成されており、下側を構成する前記胴部101は、下方へ向かうに従って側方へ突出する傾斜部111を備えてなる。また、上側を構成する前記頭部101は、前記傾斜部111の上部中央部より上方へ向けて起立した筒状の起立部121と、該起立部121の上部を閉鎖する屋根部123とによって構成されており、前記起立部121に前記側方開口部131,・・・が設けられている。
【0079】
このため、前記容器本体21が前記カランの真下に配置され、該カランから供給水が供給された際には、当該供給水を、前記容器本体21の天部を構成する前記屋根部123に沿って、その外周方向へ流した後、前記傾斜部111に沿って外周部へ向けて流すことができる。
【0080】
このとき、前記傾斜部111の上部中央部には、上方へ向けて起立した前記起立部121が起立しており、この起立部121に、前記側方開口部131,・・・が設けられている。このため、前記屋根部123及び前記傾斜部111に沿って流れる供給水を、前記側方開口部131,・・・から離れる方向に案内することができ、当該側方開口部131,・・・からの浸入を防止することができる。
【0081】
さらに、前記側方開口部131,・・・の上部には、側方へ向けて突出した庇部141が設けられており、前記カランからの供給水が前記側方開口部131,・・・へ向けて流れた場合であっても、当該供給水を前記庇部141によって側方へ流し落とすことができる。
【0082】
これにより、前記側方開口部131,・・・からの前記供給水の浸入を確実に防止することができる。
【0083】
そして、本実施の形態にあっては、前記屋根部123の周縁部が前記起立部121より側方へ突出するように構成されており、当該屋根部123の周縁部によって前記庇部141が形成されている。
【0084】
このため、前記屋根部123の一部を、前記庇部141として有効利用することができる。
【0085】
また、前記屋根部123に落ちた前記供給水を、前記庇部141を構成する前記屋根部123の周縁部によって、直接的に前記側方開口部131,・・・から離れる方向へ案内して流し落とすことができる。
【符号の説明】
【0086】
1 薬剤容器
11 貯水タンク
12 容器本体
21 容器本体
22 水溶性薬剤
33 トレー
61 下容器底面
111 傾斜部
121 起立部
123 屋根部
131 側方開口部
141 庇部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯水タンクの手洗い部に配置され、容器本体内に収容された水溶性薬剤を前記貯水タンクに設けられた手洗い用カランからの供給水で溶解する薬剤容器において、
前記水溶性薬剤を載置する載置部を前記供給水が浸透する浸透部材で構成し、該載置部の少なくとも一部が前記容器本体の底面より下方へ突出するように構成する一方、
前記容器本体の上部に側方へ向けて開口する側方開口部を開設したことを特徴とする薬剤容器。
【請求項2】
前記容器本体の少なくとも上部を、下方へ向かうに従って側方へ突出する傾斜部と、該傾斜部の上部中央部より上方へ向けて起立した筒状の起立部と、該起立部の上部を閉鎖する屋根部とで構成し、前記起立部に内部へ連通する前記側方開口部を設けたことを特徴とする請求項1記載の薬剤容器。
【請求項3】
前記側方開口部の上部に側方へ向けて突出する庇部を設けたことを特徴とする請求項1又は2記載の薬剤容器。
【請求項4】
前記屋根部の周縁部を前記起立部より側方へ突出して前記庇部を形成したことを特徴とする請求項3記載の薬剤容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−208481(P2011−208481A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−79963(P2010−79963)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000102544)エステー株式会社 (127)
【Fターム(参考)】